(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン類およびオルガノポリシロキサン類から選択される少なくとも1種を、ポリカーボネート樹脂成分100重量部に対し、0.01〜5重量部含む、請求項1に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用樹脂組成物。
ポリカーボネート樹脂成分100重量部に対し、ガラスフィラー10〜100重量部およびレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤1〜30重量部を含み、前記ポリカーボネート樹脂成分は、100〜30重量%のポリカーボネート樹脂と、0〜70重量%のABS樹脂を含み、前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤は、銅を含み、さらに、タルクを、ポリカーボネート樹脂成分100重量部に対し、1〜30重量部含み、前記タルクは、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン類およびオルガノポリシロキサン類から選択される少なくとも1種で表面処理されている、レーザーダイレクトストラクチャリング用樹脂組成物。
さらに、リン系安定剤を、ポリカーボネート樹脂成分100重量部に対し、0.01〜5重量部含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用樹脂組成物。
前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤が、銅とクロムを含む酸化物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用樹脂組成物。
請求項1〜9のいずれか1項に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品の表面に、レーザーを照射後、金属を適用して、メッキ層を形成することを含む、メッキ層付樹脂成形品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本発明のレーザーダイレクトストラクチャリング用樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂成分100重量部に対し、ガラスフィラー10〜100重量部およびレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤1〜30重量部を含み、前記ポリカーボネート樹脂成分は、100〜30重量%のポリカーボネート樹脂と、0〜70重量%のスチレンを含み、前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤は、銅を含むことを特徴とする。
以下、本発明の樹脂組成物の詳細について説明する。
【0010】
<ポリカーボネート樹脂成分>
本発明におけるポリカーボネート樹脂成分は、100〜30重量%のポリカーボネート樹脂と、0〜70重量%のスチレン系樹脂からなる。本発明におけるポリカーボネート樹脂成分は、80〜30重量%のポリカーボネート樹脂と、20〜70重量%のスチレン系樹脂からなるか、ポリカーボネート樹脂からなることが好ましい。
好ましい第一の実施形態は、ポリカーボネート樹脂成分が、80〜30重量%のポリカーボネート樹脂と、20〜70重量%のスチレン系樹脂からなる態様である。第一の実施形態におけるポリカーボネート樹脂成分は、一種類だけのスチレン系樹脂だけを含んでいても良いし、二種類以上含んでいてもよい。第一の実施形態におけるポリカーボネート樹脂成分は、ポリカーボネート樹脂を一種類だけ含んでいても良いし、二種類以上含んでいても良い。第一の実施形態のポリカーボネート樹脂成分において、スチレン樹脂の割合は、20〜70重量%であり、25〜55重量%が好ましく、30〜48重量%がさらに好ましい。第一の実施形態のポリカーボネート樹脂成分において、ポリカーボネート樹脂の割合は、80〜30重量%であり、75〜45重量%が好ましく、70〜52重量%がさらに好ましい。
好ましい第二の実施形態は、ポリカーボネート樹脂成分がポリカーボネート樹脂からなる態様である。
第二の実施形態におけるポリカーボネート樹脂成分は、一種類のみのポリカーボネート樹脂からなっていてもよいし、二種類以上含んでいてもよい。
加えて、第一および第二の実施形態の両方に関するポリアミド樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の樹脂成分を含んでいても良い。他の樹脂成分は、全樹脂成分の5重量%以下があることが好ましい。
本発明の樹脂組成物において、ポリカーボネート樹脂成分を含む全ての樹脂の割合は、20〜90重量%が好ましく、30〜80重量%がより好ましく、40〜75重量%がさらに好ましい。
【0011】
<ポリカーボネート樹脂>
本発明で用いるポリカーボネート樹脂としては特に制限されず、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族−脂肪族ポリカーボネートのいずれも用いることができる。中でも芳香族ポリカーボネートが好ましく、さらに、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることによって得られる熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体がより好ましい。
【0012】
該芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−P−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。さらに、難燃性が高い組成物を調製する目的で、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物、またはシロキサン構造を有する両末端フェノール性OH基含有のポリマーもしくはオリゴマー等を、使用することができる。
【0013】
本発明で用いるポリカーボネート樹脂の好ましい例には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体;が含まれる。
【0014】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、14,000〜30,000であるのが好ましく、15,000〜28,000であるのがより好ましく、16,000〜26,000であるのがさらに好ましい。粘度平均分子量が前記範囲であると、機械的強度がより良好となり、且つ成形性もより良好となるので好ましい。
【0015】
ポリカーボネート樹脂の製造方法については、特に限定されるものではなく、本発明には、ホスゲン法(界面重合法)、および溶融法(エステル交換法)等の、いずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、本発明には、一般的な溶融法の製造工程を経た後に、末端基のOH基量を調整する工程を経て製造されたポリカーボネート樹脂を使用してもよい。
【0016】
さらに、本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、バージン原料としてのポリカーボネート樹脂のみならず、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂であってもよい。
【0017】
その他、本発明で用いるポリカーボネート樹脂については、例えば、特開2012−072338号公報の段落番号0018〜0066の記載を参酌でき、その内容は本願明細書に組み込まれる。
【0018】
<スチレン系樹脂>
本発明で用いるスチレン系樹脂は、ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)などが挙げられる。
【0019】
スチレン系樹脂とは、スチレン系単量体からなるスチレン系重合体、該スチレン系単量体と他の共重合可能なビニル系単量体との共重合体、ゴム質重合体の存在下に該スチレン系単量体を又は該スチレン系単量体と他の共重合可能なビニル系単量体との共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体を言う。これらの中でも、ゴム質重合体の存在下に該スチレン系単量体を又は該スチレン系単量体と他の共重合可能なビニル系単量体との共重合体を用いることが好ましい。
【0020】
スチレン系単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、P−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン、ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン等のスチレン誘導体が挙げられ、中でもスチレンが好ましい。尚、これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0021】
上記のスチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、へキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、へキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸アリールエステル、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸アリールエステル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、マレイミド、N,N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物等が挙げられる。
【0022】
さらにスチレン系単量体と共重合可能なゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンランダム共重合体及びブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエンランダム共重合体及びブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルとブタジエンとの共重合体、ポリブタジエン−ポリイソプレンジエン系共重合体、エチレン−イソプレンランダム共重合体及びブロック共重合体、エチレン−ブテンランダム共重合体及びブロック共重合体等のエチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体等のエチレンとα,β−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキサジエン共重合体等のエチレン−プロピレン−非共役ジエンターポリマー、アクリル系ゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレート又はメタクリレートゴムとからなる複合ゴム等が挙げられる。
【0023】
この様なスチレン系樹脂は、例えば、高衝撃ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)、スチレン−メチルメタクリレート共重合体(MS樹脂)、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0024】
これらの中でも、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)が好ましく、より好ましくはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)であり、特に好ましいのはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)である。
【0025】
上記のスチレン系樹脂は、乳化重合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合あるいは塊状・懸濁重合等の方法により製造されるが、本発明においては、いわゆるスチレン系重合体、又はスチレン系ランダム共重合体あるいはブロック共重合体の場合は塊状重合、懸濁重合又は塊状・懸濁重合により製造されたものが好適であり、スチレン系グラフト共重合体の場合は塊状重合、塊状・懸濁重合あるいは乳化重合によって製造されたものが好適である。
【0026】
本発明において、特に好適に用いられるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)とは、ブタジエンゴム成分にアクリロニトリルとスチレンをグラフト重合した熱可塑性グラフト共重合体とアクリロニトリルとスチレンの共重合体の混合物である。ブタジエンゴム成分は、ABS樹脂成分100重量%中、5〜40重量%であることが好ましく、中でも10〜35重量%、特に13〜25重量%であることが好ましい。またゴム粒子径は0.1〜5μmであることが好ましく、中でも0.2〜3μm、さらに0.3〜1.5μm、特に0.4〜0.9μmであることが好ましい。ゴム粒子径の分布は、単一分布でも二山以上の複数の分布を有するもののいずれであってもよい。
【0027】
<ガラスフィラー>
本発明の樹脂組成物は、ガラスフィラーを含む。ガラスフィラーとしては、ガラス繊維、板状ガラス、ガラスビーズ、ガラスフレークが挙げられる。
【0028】
ガラスフィラーは、Aガラス、Cガラス、Eガラスなどのガラス組成からなり、特に、Eガラス(無アルカリガラス)が樹脂成分に悪影響を及ぼさないので好ましい。
ガラス繊維とは、長さ方向に直角に切断した断面形状が真円状、多角形状で繊維状外嵌を呈するものをいう。ガラス繊維は、単繊維の平均繊維径が通常1〜25μm、好ましくは5〜17μmである。平均繊維径が1μm未満であると、樹脂組成物の成形加工性が損なわれる場合があり、平均繊維径が25μmを超えると、樹脂成形品の外観が損なわれ、補強効果も十分ではない場合がある。ガラス繊維は、単繊維または単繊維を複数本撚り合わせたものであってもよい。
ガラス繊維の形態は、単繊維や複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取った「ガラスロービング」、長さ1〜10mmに切りそろえた「チョップドストランド」、長さ10〜500μm程度に粉砕した「ミルドファイバー」などのいずれであってもよい。かかるガラス繊維としては、旭ファイバーグラス社より、「グラスロンチョップドストランド」や「グラスロンミルドファイバー」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
また、本発明ではガラス繊維として、異形断面形状を有するものも好ましい。この異形断面形状とは、繊維の長さ方向に直角な断面の長径をD2、短径をD1とするときの長径/短径比(D2/D1)で示される扁平率が、例えば、1.5〜10であり、中でも2.5〜10、更には2.5〜8、特に2.5〜5であることが好ましい。かかる扁平ガラスについては、特開2011−195820号公報の段落番号0065〜0072の記載を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0029】
ガラスビーズとは、外径10〜100μmの球状のものであり、例えば、ポッターズ・バロティーニ社より、商品名「EGB731」として市販されており、容易に入手可能である。また、ガラスフレークとは、厚さ1〜20μm、一辺の長さが0.05〜1mmの燐片状のものであり、例えば、日本板硝子社より、「フレカ」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。
【0030】
これらガラスフィラーは、本発明に係る樹脂組成物の特性を損なわない限り、樹脂成分との親和性を向上させるために、例えば、シラン系化合物、エポキシ系化合物、ウレタン系化合物などで表面処理したもの、酸化処理したものであってもよい。
【0031】
本発明の樹脂組成物におけるガラスフィラーの配合量は、樹脂成分100重量部に対し、10〜100重量部であり、10〜85重量部が好ましく、20〜70重量部がより好ましく、30〜65重量部がさらに好ましく、40〜60重量部が特に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、ガラスフィラーを1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物では、通常、ポリカーボネートとガラスフィラーで、全成分の70重量%以上を占める。
【0032】
<レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤>
本発明の樹脂組成物は、銅を含むLDS添加剤を含む。
本発明におけるLDS添加剤は、本発明におけるLDS添加剤は、ポリカーボネート樹脂60重 部とABS40重量部の混合樹脂に対し、LDS添加剤と考えられる添加剤を4重量部添加し、波長1064nmのYAGレーザーを用い、出力10W、周波数80kHz、速度3m/sにて照射し、その後のメッキ工程は無電解のMacDermid社製M−Copper85のメッキ槽にて実施し、該レーザー照射面に金属を適用したときに、メッキを形成できる化合物をいう。本発明で用いるLDS添加剤は、合成品であってもよいし、市販品を用いてもよい。また、市販品はLDS添加剤として市販されているものの他、本発明におけるLDS添加剤の要件を満たす限り、他の用途として販売されている物質であってもよい。
【0033】
LDS添加剤は、銅を含む限りその他の成分等は特に定めるものではないが、銅を含む酸化物であることが好ましく、銅とクロムを含む酸化物であることがより好ましく、金属成分として銅とクロムのみを含む酸化物であることがさらに好ましい。LDS添加剤における銅の含有量は、20〜95質量%であることが好ましい。
LDS添加剤の粒子径は、0.01〜50μmであることが好ましく、0.05〜30μmであることがより好ましい。このような構成とすることにより、メッキを適応した際のメッキ表面状態の均一性が良好になる傾向にある。
【0034】
本発明の樹脂組成物におけるLDS添加剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対し、1〜30重量部であり、5〜28重量部が好ましく、10〜22重量部がより好ましく、15〜22重量部がさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物は、LDS添加剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0035】
<タルク>
本発明の樹脂組成物はタルクを含んでいてもよい。本発明では、タルクを配合することにより、レーザーを照射した部分のメッキ性能が向上する傾向にある。
また、本発明で用いるタルクは、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン類およびオルガノポリシロキサン類から選択される化合物(以下、「シロキサン化合物」ということがある)の少なくとも1種で表面処理されたタルクであることが好ましい。この場合、シロキサン化合物の付着量は、タルクの0.1〜5重量%であることが好ましい。シロキサン化合物については、詳細を後述する。
本発明の樹脂組成物がタルクを含む場合、タルクの配合量は、樹脂成分100重量部に対し、1〜30重量部であることが好ましく、5〜28重量部がより好ましく、7〜22重量部がさらに好ましい。タルクが表面処理されている場合、表面処理された合計量が、上記範囲であることが好ましい。
【0036】
<ポリオルガノハイドロジェンシロキサン類およびオルガノポリシロキサン類>
本発明の樹脂組成物は、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン類およびオルガノポリシロキサン類から選択される化合物(シロキサン化合物)を含んでいてもよい。シロキサン化合物は、上述のとおり、タルクの表面をコーティングする態様で含まれていてもよいし、タルクとは別に添加されていてもよい。
【0037】
シロキサン化合物は、その分子量についても特に制限されず、オリゴマーおよびポリマーのいずれの群に属するものであってもよい。より具体的には、特公昭63−26140号公報に記載されている式(イ)〜式(ハ)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン類、および特公昭63−31513号公報に記載されている式(b)で表される炭化水素オキシシロキサン類などが好ましい。シロキサン化合物は、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン類から選択されるのが好ましい。例えば、下記式(I)を繰り返し単位とするポリシロキサン、ならびに式(II)および(III)で表される化合物を用いることが好ましい。
式(I)
(R)
a(H)
bSiO
((4-a-b)/2)
(式(I)中、Rは、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基であり、aおよびbは、それぞれ、4以下の整数である。)
【0038】
式(II)
【化1】
(式(II)中、AおよびBは、それぞれ、以下の群から選ばれる基であり、nは1〜500の整数である。)
【0040】
式(III)
【化3】
(式(III)中、AおよびBは、式(II)中におけるそれぞれと同義であり、mは1〜50の整数である。)
【0041】
シロキサン化合物は市販品を用いてもよく、例えば、SH1107(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製品等の商品名で市販されているシリコーンオイルを用いてもよい。
【0042】
本発明の樹脂組成物におけるがシロキサン化合物を含む場合、該シロキサン化合物の合計配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.01〜5重量部であることが好ましく、0.1〜3重量部がより好ましく、0.1〜1重量部がさらに好ましい。
【0043】
<エラストマー>
本発明の樹脂組成物は、エラストマーを含むことも好ましい。エラストマーを含有することで、樹脂組成物の耐衝撃性を改良することができる。
【0044】
本発明に用いるエラストマーは、ゴム成分にこれと共重合可能な単量体成分とをグラフト共重合したグラフト共重合体が好ましい。グラフト共重合体の製造方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などのいずれの製造方法であってもよく、共重合の方式は一段グラフトでも多段グラフトであってもよい。
【0045】
ゴム成分は、ガラス転移温度が通常0℃以下、中でも−20℃以下が好ましく、更には−30℃以下が好ましい。ゴム成分の具体例としては、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブチルアクリレートやポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート共重合体などのポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴムなどのシリコーン系ゴム、ブタジエン−アクリル複合ゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN(Interpenetrating Polymer Network)型複合ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴムやエチレン−ブテンゴム、エチレン−オクテンゴムなどのエチレン−α−オレフィン系ゴム、エチレン−アクリルゴム、フッ素ゴムなど挙げることができる。これらは、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、ポリブタジエンゴム、ポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴム、スチレン−ブタジエンゴムが好ましい。
【0046】
ゴム成分とグラフト共重合可能な単量体成分の具体例としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)などが挙げられる。これらの単量体成分は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステル化合物である。(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等を挙げることができる。
【0047】
ゴム成分を共重合したグラフト共重合体は、耐衝撃性や表面外観の点からコア/シェル型グラフト共重合体タイプのものが好ましい。なかでもポリブタジエン含有ゴム、ポリブチルアクリレート含有ゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム成分をコア層とし、その周囲に(メタ)アクリル酸エステルを共重合して形成されたシェル層からなる、コア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。上記コア/シェル型グラフト共重合体において、ゴム成分を40質量%以上含有するものが好ましく、60質量%以上含有するものがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル酸は、10質量%以上含有するものが好ましい。尚、本発明におけるコア/シェル型とは必ずしもコア層とシェル層が明確に区別できるものでは無なくてもよく、コアとなる部分の周囲にゴム成分をグラフト重合して得られる化合物を広く含む趣旨である。
【0048】
これらコア/シェル型グラフト共重合体の好ましい具体例としては、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体(MB)、メチルメタクリレート−アクリルゴム共重合体(MA)、メチルメタクリレート−アクリルゴム−スチレン共重合体(MAS)、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−(アクリル・シリコーンIPNゴム)共重合体等が挙げられる。このようなゴム性重合体は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0049】
このようなエラストマーとしては、例えば、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製の「パラロイド(登録商標、以下同じ)EXL2602」、「パラロイドEXL2603」、「パラロイドEXL2655」、「パラロイドEXL2311」、「パラロイドEXL2313」、「パラロイドEXL2315」、「パラロイドKM330」、「パラロイドKM336P」、「パラロイドKCZ201」、三菱レイヨン社製の「メタブレン(登録商標、以下同じ)C−223A」、「メタブレンE−901」、「メタブレンS−2001」、「メタブレンSRK−200」、カネカ社製の「カネエース(登録商標、以下同じ)M−511」、「カネエースM−600」、「カネエースM−400」、「カネエースM−580」、「カネエースM−711」、「カネエースMR−01」、宇部興産製の「UBESTA XPA」等が挙げられる。
【0050】
本発明の樹脂組成物がエラストマーを含む場合、該エラストマーの配合量は、樹脂成分100重量部に対し、1〜20重量部であり、5〜15重量部が好ましく、8〜12重量部がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、エラストマーを1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0051】
<リン系安定剤>
本発明の樹脂組成物は、リン系安定剤を含むことが好ましい。
リン系安定剤としては、リン酸エステルおよび亜リン酸エステルが好ましい。
【0052】
リン酸エステルとしては、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
一般式(3)
O=P(OH)
m(OR)
3-m・・・(3)
(一般式(3)中、Rはアルキル基またはアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。mは0〜2の整数である。)
Rは炭素数1〜25のアルキル基または、炭素数6〜12のアリール基であることが好ましい。
【0053】
リン酸エステルとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2−エチルフェニルジフェニルホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフエニレンホスフォナイト等が挙げられる。
【0054】
亜リン酸エステルとしては、下記一般式(4)で表される化合物が好ましい。
一般式(4)
【化4】
(一般式(4)中、R'は、アルキル基またはアリール基であり、各々同一でも異なっていてもよい。)
R'は炭素数1〜25のアルキル基または、炭素数6〜12のアリール基であることが好ましい。
【0055】
亜リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、モノブチルジフエニルホスファイト、モノオクチルジフエニルホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2.6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の亜リン酸のトリエステル、ジエステル、モノエステル等が挙げられる。
【0056】
本発明の樹脂組成物がリン系安定剤を含む場合、該リン系安定剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.01〜5重量部であり、0.05〜3重量部がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、リン系安定剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0057】
<酸化防止剤>
本発明の樹脂組成物は、酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤が好ましく、より具体的には、2,6−ジ−オブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4―ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4'−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、および3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。中でも、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが好ましい。
本発明の樹脂組成物が酸化防止剤を含む場合、該酸化防止剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.01〜5重量部であり、0.05〜3重量部がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は酸化防止剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0058】
<離型剤>
本発明の樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。離型剤は、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、および数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。中でも、脂肪族カルボン酸、および脂肪族カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましく用いられる。
【0059】
脂肪族カルボン酸としては、飽和または不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸を挙げることができる。本明細書では、脂肪族カルボン酸の用語は、脂環式カルボン酸も包含する意味で用いる。脂肪族カルボン酸の中でも、炭素数6〜36のモノまたはジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がより好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
【0060】
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和または不飽和の1価アルコール、飽和または不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価または多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコールまたは多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸および/またはアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができる。
【0061】
本発明の樹脂組成物が離型剤を含む場合、該離型剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.01〜5重量部であり、0.05〜3重量部がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は離型剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0062】
本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、リン系安定剤以外の安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、タルク以外の無機フィラー、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、防菌剤などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
これらの成分については、特開2007−314766号公報、特開2008−127485号公報および特開2009−51989号公報、特開2012−72338号公報等の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0063】
以下に、本発明の好ましい実施形態を示す。
(1)ポリカーボネート樹脂80〜30重量%とスチレン系樹脂20〜70重量%と他の樹脂0〜5重量%からなる樹脂成分40〜90重量%(好ましくは、45〜57重量%)と、ガラスフィラー5〜45重量%(好ましくは、9〜39重量%、より好ましくは23〜36重量%)と、LDS添加剤5〜15重量%(好ましくは8〜12重量%)と、エラストマー2〜10重量%(好ましくは2〜6重量%)を含む樹脂組成物。
(2)樹脂成分40〜90重量%(好ましくは、45〜57重量%)と、ガラスフィラー5〜45重量%(好ましくは、9〜39重量%、より好ましくは23〜36重量%)と、LDS添加剤5〜15重量%(好ましくは8〜12重量%)と、エラストマー2〜10重量%(好ましくは2〜6重量%)と、リン系安定剤0.05〜0.5重量%と、酸化防止剤0.05〜0.3重量%と、離型剤0.01〜0.5重量%を含む樹脂組成物。
(3)上記(1)または(2)において、さらに、タルクを2〜12重量%(好ましくは、2.5〜11重量%)を含む、樹脂組成物。
(4)上記(1)または(2)において、さらに、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン類およびオルガノポリシロキサン類から選択される少なくとも1種で表面処理されたタルクを2〜12重量%(好ましくは、4〜11重量%)を含む、樹脂組成物。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかにおいて、他の成分の配合量が3重量%以下(好ましくは、1重量%以下)である、樹脂組成物。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかにおいて、ガラスフィラーがチョップドストランドである、樹脂組成物。
(7)上記(1)〜(5)のいずれかにおいて、ガラスフィラーが扁平ガラスファィバーである、樹脂組成物。
(8)上記(1)〜(5)のいずれかにおいて、ガラスフィラーが約3〜8μm×約550〜650μmのガラスフレークである、樹脂組成物。
(9)上記(1)〜(8)のいずれかにおいて、リン系安定剤が、上述の一般式(3)または(4)で表される化合物である、樹脂組成物。
(10)上記(1)〜(9)のいずれかにおいて、酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤(好ましくはフィンダードフェノール系酸化防止剤)である、樹脂組成物。
(11)上記(1)〜(10)のいずれかにおいて、LDS添加剤が銅クロム酸化物である、樹脂組成物。
(12)上記(1)〜(11)のいずれかにおいて、樹脂成分が実質的に70〜52重量%のポリカーボネート樹脂と、30〜48重量%のスチレン系樹脂からなる、樹脂組成物。
(13)上記(1)〜(12)のいずれかにおいて、スチレン系樹脂がABS樹脂である、樹脂組成物。
(14)上記(1)〜(13)のいずれかの樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品を含む、携帯端末、スマートフォン、タブレットまたはパソコン。
(15)上記(14)において、樹脂成形品が黒色である、携帯端末、スマートフォン、タブレットまたはパソコン。
【0064】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に定めるものではなく、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。具体的には、各成分を、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどで溶融混練することによって樹脂組成物を製造することができる。
【0065】
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、本発明の樹脂組成物を製造することもできる。
さらに、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって本発明の樹脂組成物を製造することもできる。
【0066】
本発明の樹脂組成物から樹脂成形品を製造する方法は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂について一般に採用されている成形法、すなわち一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシストなどの中空成形法、断熱金型を用いた成形法、急速加熱金型を用いた成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサ−ト成形、IMC(インモ−ルドコ−ティング成形)成形法、押出成形法、シ−ト成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法等を採用することができる。また、ホットランナ−方式を用いた成形法を選択することもできる。
【0067】
次に、本発明の樹脂組成物を成形した樹脂成形品の表面にメッキを設ける工程を
図1に従って説明する。
図1は、レーザーダイレクトストラクチャリング技術によって、樹脂成形品1の表面にメッキを形成する工程を示す概略図である。
図1では、樹脂成形品1は、平坦な基板となっているが、必ずしも平坦な基板である必要はなく、一部または全部が曲面している樹脂成形品であってもよい。また、樹脂成形品は、最終製品に限らず、各種部品も含む趣旨である。本発明における樹脂成形品としては、携帯電子機器部品が好ましい。携帯電子機器部品は、高い耐衝撃特性と剛性、優れた耐熱性を併せ持つうえ、異方性が小さく、反りが小さいという特徴を有し、電子手帳、携帯用コンピューター等のPDA、ポケットベル、携帯電話、PHSなどの内部構造物および筐体として極めて有効であり、特に樹脂成形品がリブを除く平均肉厚が1.2mm以下(下限値は特に定めるものではないが、例えば、0.4mm以上)である平板形状の携帯電子機器用部品に適しており、中でも筐体として特に適している。
【0068】
再び
図1に戻り、樹脂成形品1にレーザー2を照射する。ここでのレーザーとは、特に定めるものではなく、YAGレーザー、エキシマレーザー、電磁線等の公知のレーザーから適宜選択することができ、YGAレーザーが好ましい。また、レーザーの波長も特に定めるものではない。好ましい波長範囲は、200nm〜1200nmである。特に好ましくは800〜1200nmである。
レーザーが照射されると、レーザーが照射された部分3のみ、樹脂成形品1が活性化される。この活性化された状態で、樹脂成形品1をメッキ液4に適用する。メッキ液4としては、特に定めるものではなく、公知のメッキ液を広く採用することができ、金属成分として銅、ニッケル、金、銀、パラジウムが混合されているものが好ましく、銅がより好ましい。
樹脂成形品1をメッキ液4に適用する方法についても、特に定めるものではないが、例えば、メッキ液を配合した液中に投入する方法が挙げられる。メッキ液を適用後の樹脂成形品は、レーザー照射した部分のみ、メッキ層5が形成される。
本発明の方法では、1mm以下、さらには、150μm以下の幅の回線間隔(下限値は特に定めるものではないが、例えば、30μm以上)を形成することができる。かかる回路は携帯電子機器部品のアンテナとして好ましく用いられる。すなわち、本発明の樹脂成形品の好ましい実施形態の一例として、携帯電子機器部品の表面に設けられたメッキ層が、アンテナとしての性能を保有する樹脂成形品が挙げられる。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0070】
<樹脂成分>
S−3000F:三菱エンジニアリングプラスチックス製、ポリカーボネート樹脂
AT−08:日本エイアンドエル製、ABS樹脂
【0071】
<ガラスフィラー>
T−571:日本電気硝子社製、直径が13μmのチョップドストランド
T−571H:日本電気硝子社製、直径が10μmのチョップドストランド
T−571DE:日本電気硝子社製、直径が6μmのチョップドストランド
3PA−820:日東紡績社製、長径28μm、短径7μm(長径と短径の比:4)である扁平ガラスファイバー
MEG160FYX(0173):日本板硝子社製、5μm厚×長径600μmのガラスフレーク
【0072】
<LDS添加剤>
Black1G:シェファードジャパン製、銅クロム酸化物
【0073】
<タルク>
5000S:林化成製
上記5000Sのメチルハイドロジェンシロキサン2%処理品:林化成社製
【0074】
<シロキサン化合物>
SH1107:東レダウコーニング製、メチルハイドロジェンシロキサン
【0075】
<エラストマー>
カネエースM−711:カネカ社製、ブタジエン系のコアと、アクリル系のシェルとからなるコア/シェル型エラストマー
パラロイドEXL2603:ロームアンドハース社製、ブタジエン系のコアと、アクリル系のシェルとからなるコア/シェル型エラストマー
パラロイドEXL2315:ロームアンドハース社製、アクリル系のコアと、アクリル系のシェルとからなるコア/シェル型エラストマー
UBESTA XPA:宇部興産社製、ナイロン12系熱可塑性エラストマー
【0076】
<リン系安定剤>
アデカスタブAS2112:旭電化工業製、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト
アデカスタブAX71:ADEKA製、モノおよびジステアリルアシッドフォスフェートのほぼ等モル混合物
【0077】
<酸化防止剤>
Irganox1076:BASF社製、オクタデシルー3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート
<離型剤>
VPG861:コグニスオレオケミカルズジャパン社製、ペンタエリスリトールテトラステアレート
【0078】
<実施例1−1〜1−16および比較例1−1〜1−5に関するコンパウンド>
後述する表に示す組成となるように、各成分をそれぞれ秤量し、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製(TEX30HSST)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/時間、バレル温度280℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0079】
<実施例2−1〜2−16および比較例2−1〜2−5に関するコンパウンド>
実施例2−1〜2−16および比較例2−1〜2−5は、バレル温度を280℃から300℃に変更したことを除き、実施例1−1〜1−16および比較例1−1〜1−5に関するコンパウンドと同様の方法で行った。
【0080】
<実施例1−1〜1−16および比較例1−1〜1−5に関する試験片の作製−ISOダンベル試験片>
上述の製造方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業製、SG75−MIIを用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形し、4mmtおよび3mmtのISOダンベル試験片を成形した。
【0081】
<実施例2−1〜2−16および比較例2−1〜2−5に関する試験片の作製−ISOダンベル試験片>
上述の製造方法で得られたペレットを100℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業製、SG75−MIIを用いて、シリンダー温度300℃、金型温度100℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形し、4mmtおよび3mmtのISOダンベル試験片を成形した。
【0082】
<実施例1−1〜1−16および比較例1−1〜1−5に関する試験片の作成−2mmt/3mmt2段プレート>
上述の製造方法で得られたペレットを100℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業製、J−50を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒の条件で射出成形し、2mmt/3mmt2段プレートを成形した。
【0083】
<実施例2−1〜2−16および比較例2−1〜2−5に関する試験片の作成−2mmt/3mmt2段プレート>
上述の製造方法で得られたペレットを100℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業製、J−50を用いて、シリンダー温度300℃、金型温度100℃、成形サイクル30秒の条件で射出成形し、2mmt/3mmt2段プレートを成形した。
【0084】
<曲げ強度および曲げ弾性率>
ISO178に準拠して、上記ISOダンベル試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で曲げ強度(単位:MPa)および、曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
【0085】
<シャルピー衝撃強度>
上述の方法で得られたISO引張試験片(3mm厚)を用い、ISO179に準拠し、23℃の条件で、ノッチ有シャルピー衝撃強度およびノッチ無シャルピー衝撃強度を測定した。結果を下記表に示す。
【0086】
<LDS活性−Plating Index>
2mmt/3mmt2段プレートの表面に1064nmのYAGレーザーを用い、出力10W、周波数80kHz、速度3m/sの条件でレーザー照射を行い、続いて、MacDermid社製M−Copper85のメッキ層にて無電解メッキを行った。銅メッキの厚みより、以下の通りLDS活性を評価した。
【0087】
<色相−グレイ明度>
マンセル社製のグレースケール無光沢版を使用し、W(白)からBk(黒)までスケールを用いて明度を測定した。白みの指標として、グレイ明度を示した。
【0088】
<実施例1−1〜1−16および比較例1−1〜1−5に関する分解−MVR>
東洋精機社製、MELTINDEXERF−F01を使用した。測定温度は280℃、荷重は2.16kgfにてMVR測定を実施した。MVRの値が高いものが分解していると判断した。分解度合いの指標とした。
【0089】
<実施例2−1〜2−16および比較例2−1〜2−5に関する分解−MVR>
東洋精機社製、MELTINDEXERF−F01を使用した。測定温度は300℃、荷重は1.2kgfにてMVR測定を実施した。MVRの値が高いものが分解していると判断した。分解度合いの指標とした。
【0090】
結果を下記表に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
上記表から明らかなとおり、本発明の組成物は、各種機械物性に優れ、かつ、LDS活性にも優れていることが分かった。これに対し、比較例の組成物は、機械物性が劣るか、LDS活性が得られなかった。
【0096】
本開示は、2012年6月6日出願の日本特許出願第2012−128618および2012年6月6日出願の日本特許出願第2012−128620に含まれる事項に関し、これらの内容は明確にその全体が参照することにより本願明細書に組み込まれる。本明細書において参酌されるすべての刊行物もまた、明確にその全体が参照することにより本願明細書に組み込まれる。
本発明の好ましい形態の前述の記載は、説明および記述の目的で示されたものであり、網羅的であることを意図しておらず、厳密に記載された形態に本発明が限定されるものではない。記載は、発明の原理を最も良く説明するために選択され、それらの実務的適用を、予期された特定の用途に適用するように、様々な実施形態や様々な修正において、当業者によって、発明を最も適切に利用させることが可能である。本発明の範囲は明細書に限定されるものではなく、以下に述べるクレームによって特定されることを意図している。