(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を用いて説明する。なお、本発明は、これら実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【0017】
実施形態1は、主に請求項1から3、7から14などに関する。実施形態2は、主に請求項4などに関する。実施形態3は、主に請求項5、6などに関する。
<実施形態1>
<実施形態1 概要>
【0018】
本実施形態の廃棄物処理装置が処理対象として主に想定する廃棄物は、紙片、食品残渣、油脂、し尿、血液、組織片、ガーゼなどと、それらが収められていた容器やそれらと接触した器具などが混在する廃棄物である。容器や器具にはプラスティックが用いられていることが多いことから、処理対象として主に想定する廃棄物は、プラスティックとプラスティック以外のごみである非プラスティックごみとが混在するものである。
【0019】
図1は、廃棄物に含まれるプラスティックと非プラスティックごみの温度に応じた相を示す概念図である。図示するように、プラスティックは相対的に中程度の高温の状態で軟化する。なお、軟相は技術的用語ではないが、説明の便宜上、液相には至らないものの軟化が生じている状態を意味する。本装置においては、プラスティックが瞬間的に軟相に至る程度の熱を上限として加える。このような加熱の範囲を、図中において両端矢印で示す。このように加熱の上限を定めることにより、プラスティックは熱分解により塩素や炭化水素などが発生することはなく、ダイオキシン類や二酸化炭素などの生成反応が生じない。
【0020】
かかる範囲での加熱が非プラスティックごみに与える作用を説明する。まず、非プラスティックごみのうち、紙片、組織片、ゴムなどの常温にて固形物であったものは、チャンバー内に充満している常温〜100℃前後程度の雰囲気において、強酸化性気体(オゾンなど)により破砕片の表面が連続酸化乾燥され脆弱化すると共に、内部の水分が過熱され爆発的な蒸発ないしは急激な蒸発により、それらのごみが粉砕され、微小化し全体として減量化する。さらに脱水作用によりごみの組織が脆化し組織の分解や崩壊に至る。プラスティックの表面に付着している非プラスティックごみについては、このような脱水による脆化や崩壊によりプラスティック表面から脱離することになる。また、非プラスティックごみに菌類や微生物が含まれている場合には、それらの菌類や微生物は加熱によりほとんど死滅する。このように、非プラスティックごみは上述した範囲での加熱による脱水や組織脆化などにより減量化及び無害化され、非プラスティックごみが付着したプラスティックについては浄化及び無害化される。
【0021】
また、ごみの種類によっては液化や気化に至る場合もあり、ガスが生じることもある。また、加熱により化学的な分解が生じ分解ガスが発生する場合もある。また、血液、液状の食品残渣、薬液、し尿などのように常温においてその構成のほとんどを液体で占める非プラスティックについては、加熱により非プラスティックを構成する含有水分は蒸発し、あるいは気化することになる。これらの過程においても加熱による分解ガスや気化することでガスが生じる。これらのガスとしては、例えば、水素、酸素、塩素、窒素、炭化水素、酸化炭素などが挙げられる。これらのガスは活性な状態で生じるため、発生したガスが互いに反応しダイオキシン類や二酸化炭素などを生成する場合がある。
【0022】
そこで、本廃棄物処理装置では、これらのガスが発生し得る加熱箇所の近辺に酸化剤と中和剤である反応剤を供給し、発生したガスと反応剤とを反応させて安定な化合物を生成させることで、ダイオキシン類などへ至る反応を阻止する。さらにガスが発生し得る加熱箇所の近辺に冷却のための空気混合ガスを供給することにより、ダイオキシン類へ至る反応をただちに終息させる。
【0023】
以上のように、本廃棄物処理装置は、非プラスティックごみから発生する塩素や炭化水素などを含むガスをただちに酸化剤で中和しつつ瞬間的な加熱を繰り返すことでダイオキシン類や二酸化炭素を生成させずに非プラスティックごみを減量化及び無害化し、併せてプラスティックを浄化及び無害化することでリサイクルを可能とする。
<実施形態1 構成>
【0024】
本実施形態の廃棄物処理装置の主たる構成は、「チャンバー」と「破砕片供給口」と「破砕片瞬間昇温体」と「ヒータ制御部」と「反応剤供給部」と「空気混合ガス供給部」と「排気部」とを有する。各構成について、
図2及び
図3を用いて以下に説明する。
図2は本実施形態の廃棄物処理装置の一例を示す概念図である。また、
図3は、
図2に示した本装置の破砕片の搬送方向視における断面図とその一部についての拡大図である。
【0025】
本実施形態の「廃棄物処理装置」(0200)は、廃棄物を加熱処理するための「チャンバー」(0201)を有する。加熱処理に耐え得る材質及び構造を有する限りにおいて特段の限定はなく、公知の技術に則したものでよい。また、チャンバー内の雰囲気は主として窒素などの不活性ガスであることが好ましい。本装置は後述するように廃棄物を加熱するが、燃焼を目的とするものではないからである。また、後述するようにチャンバー内を負圧状態にするため、稼働時において気密性を備える。
【0026】
「排気部」は、チャンバー内を負圧にしてチャンバー内の気体を外部に排出する「負圧排出口」(0207)を有し、「ポンプ」(0208)などによりチャンバー内を負圧にする。後述するように本装置は反応剤と空気混合ガスとが破砕片瞬間昇温体近傍などに供給される。チャンバー内を負圧状態にすることにより、供給される反応剤と空気混合ガスに排出口へ向かう流動性を付与することになる。これによる作用については、反応剤供給部や空気混合ガス供給部についての説明において詳述する。
【0027】
排気部はチャンバー内の気体を外部に排出するにあたりフィルターや触媒を介してから排出することも大気汚染をより抑制するうえで好ましい。また、チャンバー内から排出した気体をさらに別の気体浄化装置などに搬送してもよい。
【0028】
「破砕片供給口」(0202)は、廃棄物の破砕片をチャンバーに供給するために備わる。
図2において廃棄物を破砕するための破砕機を備えたものとしている。本装置と別の破砕機によりすでに破砕された廃棄物を供給する場合には、破砕片供給口に破砕機を備える必要はない。なお、破砕片は略5〜10mm程度に小さく破砕されたものが効率よく処理するうえで好ましい。また、破砕片の非供給時には気密性が保たれるように構成される。
【0029】
また、破砕片の供給は破砕片供給口から自由落下により供給してもよいし、アクチュエータなどを用い破砕片を搬送すべき方向に押圧しながら供給してもよい。押し込んで供給することにより、破砕片が密になった状態で処理される処理効率を向上させることができる。また、押し込むことで破砕片の搬送をより強化することができ、処理速度と処理効率の向上を図ることが可能となる。
【0030】
本装置の処理対象として主に想定している廃棄物は、紙片、食品残渣、油脂、し尿、血液、組織片、ガーゼなどと、それらが収められていた容器やそれらと接触した器具などが混在する廃棄物である。すなわち、容器や器具に用いられていることが多いプラスティックであって、その内容物などにより表面が汚染されているプラスティックごみと、紙片、食品残渣、油脂、し尿、血液、組織片、ガーゼなどプラスティック以外のごみである非プラスティックごみとが混在する廃棄物である。
【0031】
チャンバーには、破砕片を撹拌しながら搬送する手段として「スクリューコンベア」(0203)が備わり、破砕片供給口から供給される破砕片は、図中の白抜き矢印で示されるように図に向かって右方向に搬送されながら処理される。
【0032】
チャンバーの底面には、供給された破砕片の瞬間的な昇温を反復して行うためのヒータにて加熱される「破砕片瞬間昇温体」(0204)が備わる。破砕片瞬間昇温体については、
図3も用いて説明する。
図3(a)に示すように「チャンバー」(0301)内には供給される破砕片を撹拌しながら搬送する「スクリューコンベア」(0302)が備わり、チャンバーの「底面」(0303)はスクリューの最外周とわずかに離隔して形成されている。
【0033】
図3(b)は、スクリューとチャンバーの底面とが接近する部分(0304)を拡大した図である。この図に示すように、チャンバーの底部には穴が開けられ「破砕片瞬間昇温体」(0305)がスクリューに向いて底面からわずかに突出する状態で配置される。また、穴の縁には「遮熱材」(0306)が配置され破砕瞬間昇温体の熱がチャンバーの底面に伝わることを抑制している。
【0034】
破砕片瞬間昇温体は図示省略したヒータにより、処理すべき有機廃棄物の内容物などに応じて、例えば、120〜300℃に加熱される。特別のケースでは処理対象がわずかな有機物(たとえば有機物の含有量が重量%で5%以下の場合)を含む無機質の多い残渣を処理する場合、瞬時加熱温度が300℃を超えても良い場合、たとえば500℃から600℃でよい場合もある。その場合は本装置の処理プロセスの特長を生かして、一般産業廃棄物、特定の生産工程から発生する残渣、塩類の不純物などを回収目的として利用される。その場合、塩類を含有する無機質が多いとき、その塩など無機質の融点に近づくように加熱温度を高めに設定することによって、回収とする無機質塩に混じれている不純有機物を加熱することによって、不純有機物が滲み出し、揮発され、塩類が純化され、回収されるというリサイクル工法がある。ただし、塩をたくさん含み、不純有機物が一定の濃度以下の場合は、利用できる工法であり、その場合は測定とテスト試験が必要な場合もある。このような破砕片昇温体がチャンバーに多数配置され、例えば、10cm四方の領域当たり2から10程度配置される。また、
図2の例においては、チャンバー底面とスクリュー最外周との離隔距離は10mm弱であり、破砕片瞬間昇温体はチャンバー底面より5mm程の高さ(h)で突出するように構成している。また、破砕片瞬間昇温体の搬送方向の長さは例えば10〜30mm程度である。
【0035】
破砕片はスクリューコンベアによりチャンバー内を撹拌されながら搬送され、また、破砕片瞬間昇温体は搬送方向の長さが10〜30mm程度であって複数の破砕片瞬間昇温体のそれぞれは離散して配置される。さらに遮熱材により破砕片瞬間昇温体が配置されないチャンバー底面は破砕片瞬間昇温体よりも低い温度となっているため、破砕片は破砕片瞬間昇温体と接触した瞬間に限って相対的に高温での加熱に晒されて昇温し、破砕片瞬間昇温体と離隔すると速やかに降温する。したがって、破砕片瞬間昇温体による破砕片の昇温は極めて短い時間であって瞬間的な昇温であると言える。そして、破砕片は搬送されるなかで上述したような破砕片昇温体との接触と離隔とを繰り返すことで、瞬間的な昇温が反復される。なお、スクリューコンベアの搬送速度は、概ね0.1cm/秒から15cm/秒であって、破砕片の種類や量などに応じて適宜選択される。
【0036】
ここで、破砕片瞬間昇温体を加熱するヒータはヒータ制御部によって制御される。ヒータ制御部は、プラスティックからなる破砕片が破砕片瞬間昇温体によってその軟化温度近傍に瞬間的に昇温するようにヒータを制御する。軟化温度とはプラスティックが加熱されることにより軟化する温度であり、軟化温度近傍に瞬間的に昇温するということは破砕片のごく表面のみを軟化させる程度に昇温することを意味する。ごく表面のみを軟化させるとは、破砕片表面から深さ方向において5〜1000μm程度を軟化することを意味する。なお、ポリ塩化ビニルの軟化点は170℃であり、ポリエチレンの軟化点は95〜140℃であり、ポリスチレンの軟化点は略100℃であり、ポリエチレンテレフタラートの軟化点は255℃である。破砕片をこれらの軟化点にわずかの間到達させることで、破砕片をその軟化温度近傍に瞬間的に昇温させることができる。
【0037】
プラスティックからなる破砕片をその軟化温度近傍に瞬間的に昇温するためには、破砕片瞬間昇温体の温度が軟化温度近傍よりも高い温度となるようにヒータを制御する。破砕片瞬間昇温体の構成や処理対象などに応じたものとなるが、例えば、プラスティックの軟化温度より40℃〜70℃程度高い温度に破砕片昇温体がなるように設定する。より具体的には、ポリ塩化ビニルの場合は210℃〜230℃に制御し、ポリエチレンの場合は135℃〜160℃に制御し、ポリスチレンの場合は140℃から155℃に制御し、ポリエチレンテレフタラートの場合は、295℃〜320℃に制御するといった具合である。なお、処理すべき廃棄物中のプラスティックを1種に特定できる場合には特定したその種のプラスティックの軟化温度に応じてヒータ制御すればよいが、複数種のプラスティックが混在する場合には、それらのうち最も高い軟化温度に応じた制御をする。この場合に低い軟化温度のプラスティックからのガスの発生が懸念されるが、実際にはプラスティック類の軟化温度の温度差が100℃から150℃程度の場合には、ガスの発生がするわけでなく、軟化の量が軟化温度の低いプラスティックに多く生じるに過ぎない。つまり、高い軟化温度を有するプラスティックの軟化を優先すればよい。
【0038】
このように制御されるヒータによって加熱される破砕片瞬間昇温体が破砕片に及ぼす作用であるが、破砕片が紙片や木片、ガーゼなどの繊維などである場合には、それら破砕片に含まれる水分は加熱され蒸発し、それらを構成する残りの炭素化合物などは分解し軟化する。したがって、それらの破砕片を減量化することができる。また、菌類などが破砕片に染み込んだりその表面に付着していたとしても加熱されることによりそれらの菌類は死滅する。したがって、これらの非プラスティックごみは破砕片瞬間昇温体により減量化と無害化が図られる。
【0039】
次に、破砕片が、表面に血液や組織片あるいは食品残渣などの非プラスティックごみが付着しているプラスティックである場合について、
図4を用いて説明する。
図4は、破砕片瞬間昇温体との接触により生じる破砕片の作用を説明するための概念図である。図中にて、表面に付着物を有するプラスティックである破砕片(0401)と、その破砕片のA−A線での断面(0402)を示している。図示するように、プラスティックの表面には付着物(0403、0404、0405)が付着している。この破砕片が破砕片瞬間昇温体に接触するとその接触した部分(0406)は高温化する。すると付着物(0407)については、上述したように破砕片瞬間昇温体と接触することで乾燥し水分蒸発及び組織崩壊が生じプラスティック表面との接着力が低下する。また、プラスティックの表面(0408)が破砕片瞬間昇温体との接触で昇温し軟化が生じ得ることも、付着物との接着力の低下に寄与し得る。これらの作用により付着物はプラスティックの表面から脱離する。このように表面に付着物を有するプラスティックからなる破砕片については、破砕片瞬間昇温体との接触により表面に付着した血液や組織片などの有機化合物とプラスティックとを分離することで、プラスティックを浄化及び無害化してリサイクルすることができる。
【0040】
なお、破砕片は
図4に示すような塊状であるとは限らない。例えば、薄板状であったり屈曲した板状であったりする。そのような場合破砕片が破砕片瞬間昇温体と接触したとしても、その破砕片に付着するプラスティックごみについては破砕片瞬間昇温体と直接的に接触しない場合もある。しかしながら、破砕片瞬間昇温体の加熱によりその破砕片が昇温することでその破砕片に付着する非プラスティックごみは加熱され、脱水や組織崩壊などが生じその破砕片を構成するプラスティックの浄化と無害化が図られる。
【0041】
ここで、プラスティックの表面の付着物は加熱されることにより分解反応が生じ塩素、水素、炭化水素などのガスが発生する場合がある。これらのガスはさらに反応しダイオキシン類や二酸化炭素などに至る。そこで、本廃棄物処理装置では、これらのガスが発生し得る加熱箇所の近辺に酸化剤と中和剤などの反応剤を供給し、発生したガスと酸化剤と中和剤である反応剤とを反応させて安定な化合物を生成させることで、ダイオキシン類へ至るダイオキシン類前駆体ガスなどの生成を阻止し、ダイオキシン類などが発生することを阻止する。
【0042】
より一般化して説明すると、破砕片に含まれる非プラスティックごみを加熱した場合、塩素や水素や一酸化炭素や種々の炭化水素などが生じる場合がある。これらの物質はアルカリ性若しくは酸性であっていずれも活性な状態で生じる。したがって、これらの物質が互いに様々な反応を起こしダイオキシン類のような有害物質や、意図しない物質あるいは不明な物質を生成するおそれがある。意図しない物質や不明な物質が生成した場合には、無害化のための適切な処理を行うことが困難になる。また、ダイオキシン類を無害化することは既に説明したように高コストである。
【0043】
そこで、破砕片に含まれる非プラスティックごみを加熱することにより生じる酸性又はアルカリ性の活性な物質に対して中和剤及び酸化剤を速やかに供給し不活性で安定な塩を生成する反応を促す。これにより上述した好ましくない種々の反応を阻害する。
【0044】
そのため本装置は、中和剤や酸化剤などの反応剤を供給する反応剤供給部を有する。反応剤供給部は、昇温によって破砕片から生じるガスを破砕片瞬間昇温体の近傍で反応させるための破砕片瞬間昇温体の近傍に配置される反応剤供給穴を含む。
図2において、「反応剤供給穴」(0205)は、チャンバー底面に設けられる。
【0045】
図5は、チャンバーの底部に設けられる反応剤供給穴と破砕片瞬間昇温体の一例を示す概念図である。左図は「チャンバーの底部」(0501)の外観を簡略して示すものであり、白抜き矢印は破砕片が搬送される方向である。また、その一領域(0502)について拡大して示すのが右図である。右図に示すように、チャンバー底部には「破砕片瞬間昇温体」(0503)が複数配置され、その搬送方向下流側の近辺には多数の「反応剤供給穴」(0504)が設けられている。破砕片瞬間昇温体は、例えば短手方向の長さaが10mm程度で長手方向の長さbが30mm程度であり、チャンバー底面から5mm程度の高さを有する。また、破砕片瞬間昇温体の横方向の間隔cは40mm程度である。反応剤供給穴の内径は1〜5mm程度である。また、破砕片瞬間昇温体の搬送方向の最下流端から最近傍列の反応剤供給穴までの距離dは15mm程度で、次に近傍の列の反応剤供給穴までの距離eは30mm程度で、最も遠い列の反応剤供給穴までの距離fは45mm程度である。
【0046】
なお、上記の破砕片瞬間昇温体及びその配置についての値は一例を示すものである、チャンバーの寸法及び容量や処理すべき廃棄物の種類や量などに応じて適宜定めることができる。例えば、破砕片瞬間昇温体の短手方向の長さaは5mmから50mm、長手方向の長さbは10mmから100mm、チャンバー底面からの高さは2mmから10mm、といった範囲内で適宜定めることができ、また、破砕片瞬間昇温体の横方向の間隔cは20mmから80mm、反応剤供給穴の内径は0.5mmから10mm、破砕片瞬間昇温体の搬送方向の最下流端から最近傍列の反応剤供給穴までの距離dは10mmから50mm、次に近傍の列の反応剤供給穴までの距離eは20mmから100mm、最も遠い列の反応剤供給穴までの距離fは30mmから150mm、といった範囲内で適宜定めることができる。
【0047】
供給される酸化剤と中和剤などの反応剤は処理すべき廃棄物の内容物などに応じて種々考えられるが、例えば、オゾン、アンモニア、水酸化ナトリウム、尿素などのガスが好ましい。オゾンは酸化剤として機能し、アンモニア及び水酸化ナトリウムは中和剤として機能する。尿素は破砕片瞬間昇温体の近傍に供給されると、周囲の温度により加熱され160℃を超えるとシアン酸とアンモニアに分解される。シアン酸は酸化剤でありアンモニアが中和剤であるため尿素を供給することにより酸化剤と中和剤の双方を供給することになる。
【0048】
反応剤供給部により供給される反応剤は一種類には限られず複数種の反応剤を併せて供給してもよい。また、図示するように複数の反応剤供給穴を有する場合には反応剤供給穴によって供給される反応剤が異なるように構成してもよい。
【0049】
供給する反応剤の温度は、破砕片となるプラスティックの軟化温度よりも低温であることが好ましく、例えば常温〜100℃とすることが好ましい。このような温度の反応剤を供給することで、瞬間的に昇温した破砕片を速やかに冷却し、軟化や分解が生じ得る時間を短くし、塩素などの好ましくない物質の発生を抑制することができる。
【0050】
破砕片に含まれる非プラスチックごみが破砕片瞬間昇温体により加熱されることにより、硫化水素、一酸化炭素、水素、炭化水素類などの各種ガスが生じる。一方、破砕片瞬間昇温体の近傍に供給される尿素は160℃以上に加熱されることでアンモニアイオンとシアン酸イオンに瞬時に分解され、併せて活性化オゾンなどの強酸化剤も反応剤として供給される。破砕片瞬間昇温体の近傍にこれらの反応剤が供給されることで、破砕片瞬間昇温体による加熱によって発生する各種ガスは、その発生とほとんど同時に反応剤と接触する。反応剤及び各種ガスはいずれも活性状態にあるため互いに接触により酸化反応や還元反応がただちに進み安定な塩となるためダイオキシン類などが発生する余地はなくなる。
【0051】
このような反応の例を挙げると、尿素が反応剤として供給され破砕片から塩素が生じた場合には、まず尿素がアンモニアとシアン酸に分解しさらに塩素などの酸性物質と反応して塩化アンモニウムなどの塩が生成する。また、瞬時に分解されたシアン酸とアンモニアがイオンの状態で活性状態のオゾンなどの強い酸化剤とともに触媒の役割も有する。また、非プラスティックごみが付着している破砕片が加熱されることで生じた微量の活性状態の炭化水素などと酸化剤として供給されるオゾンなどとが反応し、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどが生成する。また、オゾンなどの強い酸化剤は、一酸化炭素と反応して二酸化炭素を生成し、あるいは水素と反応して水を生成する。また、オゾンを供給することで殺菌作用や消臭作用も期待できる。また、特別な場合に強アルカリ性の水酸化ナトリウムなどの水酸化物を反応剤として供給することもあり得る。また、破砕片の昇温により塩化水素などの酸性の物質が生じることもあり、アルカリ性の水酸化物を供給することで、生じた酸性の物質を中和することができる。上述のような多元的なイオン反応による化合分子は気流に残留する場合、本装置の下流に設ける低温pH調整結露床装置によって酸化物と塩化物にされ回収される。
【0052】
また、反応剤供給穴は破砕片瞬間昇温体の近傍に配置されるが、これは、破砕片瞬間昇温体と接触した破砕片から生じる分解ガスの近くに反応剤を速やかに届くようにするためである。上述した多元的なイオン反応よって破砕片から生じる分解ガスを無害化することができる。
【0053】
また、破砕片瞬間昇温体と反応剤供給穴とをチャンバーの底部に設けることにより、昇温により生じたガスと反応剤との反応をより促進することができる。チャンバーの底部においては、破砕片昇温体と接触し得る破砕片の上に破砕片が堆積した状態となっている。すなわち、チャンバー底辺よりやや上方は堆積する破砕片により覆われた状態となっている。一方、チャンバー内は排気部により負圧状態となっているため、チャンバーの底部において破砕片から生じたガスや供給される反応剤には、上方を覆う破砕片により減衰されつつも排出口へ向かう流動性がある程度付与される。このような流動性をもつガスと反応剤とは、破砕片の堆積により狭められる流路を流れるなかで高い頻度で相互に接触することになる。したがって、破砕片から生じたガスと反応剤との反応が高頻度かつ優先的に起こるため、破砕片から生じたガスからダイオキシン類へ至る反応が進む余地がなくなり、結果としてダイオキシン類が生成されることがなくなる。
【0054】
また、反応剤供給部は、反応剤供給穴の目詰まりを防止する手段を備えてもよい。例えば、反応剤供給穴からチャンバー内へ反応剤を供給するために配設される管内に反応剤を供給する方向と順方向に圧縮ガスを噴射することで、反応剤供給穴に堆積する破砕片などを排出除去することが可能となる。圧縮ガスは反応剤を圧縮することで得てもよいし、その他のガスを圧縮して得てもよい。また、反応剤を供給する管内に流量計を備え、反応剤の流量を観察することにより目詰まりを検知し、圧縮ガスの噴射などを行い目詰まりが解消されるように構成してもよい。
【0055】
「空気混合ガス供給部」(0206)は、破砕片瞬間昇温体に近接することで瞬間的に昇温された破砕片が破砕片瞬間昇温体から離隔した瞬間に離隔した破砕片の冷却が可能な空気混合ガスをチャンバーに対して供給する。
図2においては、空気混合ガス供給部をチャンバーの天井に設けている。
【0056】
空気混合ガス供給部により供給される空気混合ガスは、空気と空気以外のガスが混合してなるガスであり、例えば、チャンバー内を不活性雰囲気にするために通常の空気よりも窒素の含有濃度を高くしたガスが好ましい。また、反応剤供給部により供給される反応剤を含むものとしてもよい。また、空気混合ガス供給部は、空気にオゾンを混合するオゾン混合手段を有するものとし、オゾンを混合した空気混合ガスを供給することも好ましい。また、本装置はチャンバー内で有機廃棄物を乾燥させて含有水分の蒸発により減量化を図るものでもあるので、空気混合ガスは乾燥したガスであることが好ましい。
【0057】
また、空気混合ガスは昇温した破砕片が破砕片瞬間昇温体から離隔した瞬間にその破砕片を冷却する機能を果たすものであるので、破砕片となるプラスティックの軟化温度よりも低温であることが好ましく、例えば、常温〜100℃とすることが好ましい。このような温度の空気混合ガスをチャンバー内に満たすことで、破砕片瞬間昇温体と近接することで破砕片がその軟化温度を超えて軟化や分解が生じた場合にも、破砕片瞬間昇温体と離隔した瞬間に冷却されるため軟化や分解が速やかに終息し、塩素などの好ましくない物質の発生を抑制することができる。また、場合によっては常温以下の空気混合ガスを供給するようにしてもよい。チャンバー内の温度やガスの成分及び濃度をモニタリング可能に構成するとともに、チャンバー内で過剰な発熱や燃焼などの予定していない事態が生じた場合に常温以下の空気混合ガスを供給することで、そのような事態の速やかな終息を図ることができる。
【0058】
空気混合ガス供給部は、天井などのチャンバーの上部に設ける代わりに、あるいはチャンバーの上部に設けるとともにチャンバーの下部に設けてもよい。チャンバー内は負圧状態となっているため、チャンバーの下部から空気混合ガスを供給すると反応剤について説明したのと同様に流動性が付与され、チャンバー内にむらなく空気混合ガスが行き渡る。
【0059】
また、破砕片瞬間昇温体の近傍に空気混合ガスを供給するようにしてもよい。例えば、
図5で示したようにチャンバー底部に穴を設けチャンバー内に空気混合ガスを供給してもよい。また、チャンバーに設けた穴を反応剤の供給と空気混合ガスの供給のいずれにも用いることができるように及び空気混合ガス供給部を構成してもよい。このように構成することで、破砕片瞬間昇温体から隔離した破砕片と速やかに接触することができ昇温された破砕片をただちに冷却することができる。
【0060】
そして、チャンバーの下に処理済みの有機廃棄物を回収するための「回収部」(0209)が備わる。これまで説明してきた処理を経ることで、廃棄物に含まれる非プラスティックごみは脱水や組織脆化などにより減量化及び無害化され、非プラスティックごみが付着したプラスティックは浄化及び無害化される。したがって、廃棄物全体としての減量化及び無害化が叶うとともに、リサイクルしやすい状態でプラスティックを回収することができる。
【0061】
なお、
図2においてチャンバーは1体のスクリューコンベアを備える構成としたが、このチャンバーを上段と下段の二段に配置して有機廃棄物を搬送するよう構成してもよい。また、2体以上のスクリューコンベアを並列にチャンバーに配置する構成としてもよい。また、往復搬送による処理を行ってもよい。すなわち、供給した破砕片がスクリューコンベアの他端まで搬送された後に、スクリューの回転を逆転させ反対方向に搬送しながらの処理を繰り返して行うようにしてもよい。
【0062】
本装置は有機廃棄物を連続処理又はバッチ処理のいずれにも対応する構成とすることができるが、バッチ処理を行う場合には、スクリューコンベアにおいてすでに処理すべき破砕片が通過した領域では、破砕片瞬間昇温体を加熱するためのヒータの稼働や反応剤の供給を休止して処理に要するエネルギー消費を抑制するように構成してもよい。
【0063】
本実施形態における廃棄物処理装置における処理プロセスの一例を
図6にフロー図で示す。図示するように、有機廃棄物の処理プロセスは、プラスティックを含む有機廃棄物を小片に破砕する(S0601 破砕ステップ)。そして、破砕ステップにて破砕された小片を瞬間的に軟化温度程度の温度に昇温する(S0602 瞬間昇温ステップ)。この破砕された小片は、上述の廃棄物処理装置における破砕片と意味するところは同じである。また、破砕された小片は、上述の破砕片瞬間昇温体によって瞬間的に昇温される。小片が瞬間的に昇温することによる作用は、廃棄物処理装置において破砕片が破砕片瞬間昇温体により昇温する場合と同様である。
【0064】
そして、瞬間昇温ステップにて瞬間的に昇温された瞬間に当該昇温された小片の近辺に尿素を出し、その近辺の温度にて尿素をアンモニアガスとシアン酸の中間体に分解する(S0603 分解ステップ)。上述したように昇温された小片の近辺に出された尿素は、概ね160℃以上でアンモニアガスとシアン酸に分解する。尿素を昇温された小片の近辺に出すための手段としては、例えば、上述の廃棄物処理装置における反応剤供給部が該当する。
【0065】
そして、分解ステップにて分解された両物質と、瞬間的に昇温された小片から発生する各種ガスとを反応させる(S0604 反応ステップ)。例えば、小片から塩素が生じた場合、分解して生成したアンモニア及びシアン酸と反応して塩化アンモニウムが生成する。小片から発生した活性な塩素を直ちに反応させて安定な塩化アンモニウムとすることにより、塩素が有機廃棄物に含まれ炭化水素や有機廃棄物から生じた炭化水素などと反応して無害化する。
【0066】
そして、反応ステップにて反応した物質を冷却する(S0605 冷却ステップ)。例えば、反応ステップにて塩化アンモニウムが生成した場合には、冷却されることによりさらなる反応を抑制することができる。また、近辺の昇温した小片を冷却する効果もあり、昇温したことによる小片の軟化や分解を抑えることもできる。なお、反応ステップと冷却ステップは、必ずしも反応ステップが先に行われるわけではなく、逆の順に行われることもあるし、両ステップが並行して行われることもある。
【0067】
また、反応ステップにおいては、さらに水酸化物を小片の近辺に出して反させる水酸化物反応サブステップを有していてもよい。小片を昇温することで塩化水素などの酸性物質が生成される場合がある。そこで、水酸化ナトリウムなどの水酸化物を小片の近辺に出すことにより、生成した酸性物質を中和することができる。
【0068】
また、本実施形態の廃棄物処理装置において行われている処理プロセスは、廃棄物である破砕片の処理方法として、以下のように表現することもできる。すなわち、廃棄物である破砕片の処理方法であって、前記破砕片の表面近傍を瞬間的に軟化点近傍にまで昇温する瞬間昇温ステップと、瞬間昇温された前記破砕片の表面近傍を瞬間的に降温する降温ステップと、瞬間的に昇温された前記破砕片の表面近傍に酸化ガスと中和ガスである反応ガスを供給する反応ガス供給ステップと、を有する廃棄物である破砕片の処理方法として表現することができる。瞬間昇温ステップは、主に破砕片瞬間昇温体などの構成により行われる。そして、降温ステップは、主に空気混合ガス供給部などの構成により行われる。そして、反応ガス供給ステップは、主に反応剤供給部などの構成により行われる。
【0069】
また、廃棄物である破砕片の処理方法であって、前記破砕片の表面近傍を瞬間的に軟化点近傍にまで昇温する瞬間昇温ステップと、瞬間的に昇温された前記破砕片の表面近傍に軟化点近傍温度よりも相対的に低温である酸化ガスと中和ガスである反応ガスを供給し、瞬間昇温された前記破砕片の表面近傍を瞬間的に降温する反応ガス供給ステップと、を有する廃棄物である破砕片の処理方法と表現することもできる。瞬間昇温ステップは、主に破砕片瞬間昇温体などの構成により行われ、反応ガス供給ステップは、主に反応剤供給部などの構成により行われる。
【0070】
また、廃棄物である破砕片の処理方法であって、前記破砕片の表面近傍を瞬間的に軟化点近傍にまで昇温する瞬間昇温ステップと、瞬間的に昇温された前記破砕片の表面近傍に酸化ガスと中和ガスである反応ガスを供給し、破砕片の表面近傍から発生する活性ガスを反応させる反応ガス供給ステップと、瞬間昇温された前記破砕片の表面近傍を瞬間的に降温する降温ステップと、を有する廃棄物である破砕片の処理方法と表現することもできる。瞬間昇温ステップは、主に破砕片瞬間昇温体などの構成により行われ、反応ガス供給ステップは、主に反応剤供給部などの構成により行われ、降温ステップは、主に空気混合ガス供給部により行われる。
【0071】
また、廃棄物である破砕片の処理方法であって、前記破砕片の表面近傍を瞬間的に軟化点近傍にまで昇温する瞬間昇温ステップと、瞬間的に昇温された前記破砕片の表面近傍に軟化点近傍温度よりも相対的に低温である酸化ガスと中和ガスである反応ガスを供給し、破砕片の表面近傍から発生する活性ガスを反応させるとともに、瞬間昇温された前記破砕片の表面近傍を瞬間的に降温する反応ガス供給ステップと、を有する廃棄物である破砕片の処理方法と表現することもできる。瞬間昇温ステップは、主に破砕片瞬間昇温体などの構成により行われ、反応ガス供給ステップは、主に反応剤供給部などの構成により行われる。
<他の構成>
【0072】
図7(a)は、実施形態1の他の態様における廃棄物処理装置の一例を示す概念図である。また、
図7(b)は、
図7(a)に示した本装置の破砕片の搬送方向視における断面図である。なお、
図7(b)については反応剤や空気混合ガスを供給するための管の図示は省略している。
【0073】
「廃棄物処理装置」(0700)は、廃棄物を加熱処理するための「チャンバー」(0701)を有する。この態様においては「スクリューコンベア」(0703)を有するチャンバーを上下の二段で構成している。標準化製品では一段構成の場合もある。「破砕片供給口」(0702)は、
図2などで示した先の態様における破砕片供給口と同様であるため説明を省略する。
【0074】
「破砕片瞬間昇温体」は、チャンバー内に供給された破砕片の瞬間的な昇温を反復して行うためのヒータにて加熱されるものである。
図7においては、「ヒータ」(0704)が配置される「チャンバー底部」(0705)が破砕片瞬間昇温体に該当する。
図7(a)及び
図7(b)に示すように、チャンバーの底部外側に近接して棒状の「ヒータ」(0704)が搬送方向に沿って設置される。また、チャンバーの底部であって2本のスクリューの間にも棒状の「ヒータ」(0706)が設置される。
【0075】
チャンバーの底面のうちヒータ近傍の箇所はヒータにより加熱され、チャンバー内を搬送される破砕片が当該箇所(以下、ヒータ近傍箇所ともいう)と接触した時に破砕片は加熱される。ヒータ近傍箇所はチャンバー底面の一部であり、破砕片は撹拌されながら搬送されるので、破砕片はヒータ近傍箇所と常に接触することはなく時に接触し時に離間しながら搬送される。このように破砕片を搬送することにより、破砕片の瞬間的な昇温を反復して行うことができる。このような瞬間的な昇温を反復させるためには、スクリューコンベアのように破砕片を撹拌する機構を備えることが好ましい。スクリューコンベア以外の搬送手段としては、対象を振動させながら搬送する振動コンベアを用いてもよい。
【0076】
なお、ヒータの設置は上記の態様に限定されるものではなく、例えば、チャンバーの底面に沿う棒状のヒータを搬送方向と略直交する向きで間隔をおいて枕木のように並べて設置してもよい。また、ヒータは熱を発し得るものであればよく燃料も問わない。
【0077】
また、チャンバーの底部に管を配設し管内にヒータによって加熱したオイルを導入してもよい。ヒータを制御するヒータ制御部は、先の態様などで説明したヒータ制御部と同様であるので説明を省略する。
【0078】
反応剤供給部は、昇温によって破砕片から生じるガスを破砕片瞬間昇温体の近傍で反応させるための破砕片瞬間昇温体の近傍に配置される反応剤供給穴を含む。
図7においては、スクリューコンベアのスクリューの軸には複数の「反応剤供給穴」(0707)が設けられている。また、反応剤供給穴はスクリューの軸に備わる場合のほか、例えば、チャンバー底部に備わるヒータの近傍に配置するように構成してもよい。供給される反応剤や供給の態様、供給する反応剤による作用については、すでに説明したので省略する。
【0079】
「空気混合ガス供給部」(0708)は、破砕片瞬間昇温体に近接することで瞬間的に昇温された破砕片が破砕片瞬間昇温体から離隔した瞬間に離隔した破砕片の冷却が可能な空気混合ガスをチャンバーに対して供給する。
図7においては、空気混合ガス供給部をチャンバーの天井に設けるだけでなく、各段のチャンバーの側壁部分にも設けている(0709、0710)。この空気混合ガス供給部についても先の態様などで示した空気混合ガス供給部と基本的には同様であるので説明を省略する。
【0080】
また、「負圧排出口」(0711)や「ポンプ」(0712)などにより構成する排気部や、処理済みの有機廃棄物を回収し得ることについても、先の態様と同様であるので説明を省略する。
【0081】
以上の通り、本実施形態の廃棄物処理装置及び廃棄物処理方法は、廃棄物の無害化及び減量化を図るとともにダイオキシン類の発生が無くなるだけでなく、高温燃焼・高温酸化焼却を使わないことによって油と天然ガスの助燃も省かれ、また廃棄物中の金属類は勿論、低温無害化処理によってプラスティック類のリサイクルも可能にする斬新なものである。また装置を稼働させるエネルギー源としてソーラー発電機を用いることで、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の発生抑制及び削減を可能にし、地球温暖化の阻止に貢献できる。
<実施形態1 効果>
【0082】
廃棄物の無害化及び減量化を図るとともにダイオキシン類などの有害物質を排出することなくプラスティック類のリサイクルを可能にする廃棄物処理装置及び廃棄物処理方法を提供することができる。
<実施形態2>
<実施形態2 概要>
【0083】
本実施形態の廃棄物処理装置は、実施形態1を基本とし、チャンバー内のガスを分析する手段を有し、その分析結果に応じてヒータの制御などを行うことを特徴とする。
<実施形態2 構成>
【0084】
本実施形態の廃棄物処理装置は、チャンバー内ガス分析部を有し、ヒータ制御部はチャンバー内ガス分析部でのチャンバー内ガスの分析結果に応じてヒータの制御をするチャンバー内ガス依存制御手段を有する。
【0085】
チャンバー内ガス分析部は、具体的には既知のガス濃度センサなどを分析対象となる各種のガスに応じて設けることになる。分析の対象となるガスとしては、塩素ガス、水素ガス、一酸化炭素ガスなどが主として挙げられる。実施形態1において述べたように、塩素ガスはダイオキシン類などの有害物質生成の原因となる物質である。また、水素ガスは燃焼性や爆発性に極めて富んだ物質であるので監視すべきガスである。一酸化炭素も地球温暖化の原因となる二酸化炭素の素となる物質であるため監視すべきガスである。また、ダイオキシン類や二酸化炭素そのものを分析対象としてもよい。
【0086】
チャンバー内ガス分析部を廃棄物処理装置に設ける具体的態様は種々考えられ一の態様に特定するものではない。例えば、分析対象となるガスを検知するセンサなどの検知手段は、チャンバー内に設けてもよいし、負圧排出口を経てチャンバー外へ排出されたガスを検知手段に導入するように構成してもよい。
【0087】
チャンバー内ガス依存制御手段は、例えば分析結果において塩素ガスの濃度が予定されている濃度よりも高い場合にはヒータの加熱を抑え破砕片が破砕片瞬間昇温体による昇温の程度を抑える。水素や一酸化炭素を分析対象ガスとする場合においても同様である。
【0088】
また、チャンバー内ガス分析部及びチャンバー内ガス依存制御手段は、処理すべき廃棄物の内容に応じて分析対象とすべきガスの種類や分析結果に応じたヒータ制御の態様を適宜選択し得るように構成してもよい。処理対象となる有機廃棄物は様々な廃棄物が混在し、その態様によって生じるガスが異なる場合もあるし、ガス毎に想定される濃度や許容可能な濃度などが異なる場合があるため、処理すべき廃棄物に応じてチャンバー内ガスの分析とその結果に応じたヒータ制御を行うことが好ましい。
【0089】
また、本実施形態の廃棄物処理装置は、ヒータの制御だけでなく反応剤の供給や空気混合ガスの供給をチャンバー内ガスの分析結果に応じて制御するように構成してもよい。すなわち、反応剤供給部はチャンバー内ガス分析部でのチャンバー内ガスの分析結果に応じて反応剤の供給を制御するチャンバー内ガス依存中和剤供給制御手段を有し、空気混合ガス供給部はチャンバー内ガス分析部でのチャンバー内ガスの分析結果に応じて空気混合ガスの供給を制御するチャンバー内ガス依存空気混合ガス供給制御手段を有してもよい。
【0090】
例えば、チャンバー内ガス依存中和剤供給制御手段による制御の態様としては、分析結果において塩素ガス濃度が予定している範囲や許容し得る範囲を超えている場合には、これを反応させるための尿素の供給量を増やすといった具合である。また、供給することのできる反応剤が複数ある場合には、いずれの反応剤を供給するかといったことを制御したり、複数の反応剤を併せて供給する場合には、それぞれの反応剤の供給比率を制御することも好ましい。また、チャンバー内ガス依存空気混合ガス供給制御手段における制御の態様も同様である。
【0091】
また、スクリューコンベアなどの搬送手段の搬送速度をチャンバー内ガスの分析結果に応じて制御してもよい。また、破砕片の搬送を往復して行う場合には、チャンバー内ガスの分析結果に応じて往復搬送を継続するか否かを制御してもよい。また、チャンバー内ガスの分析結果に応じて廃棄物処理を終了するタイミングを制御するようにしてもよい。
<実施形態2 効果>
【0092】
チャンバー内ガス分析部での分析結果をフィードバックして各部の制御を行うことにより、廃棄物を安全かつ予定された態様で処理することがより可能となる。
<実施形態3>
<実施形態3 概要>
【0093】
本実施形態の廃棄物処理装置は実施形態1又は2を基本とし、破砕片瞬間昇温体がチャンバー内の破砕片に対して抜き差し動作をするニードル体であることを特徴とする。
<実施形態3 構成>
【0094】
図8は本実施形態の廃棄物処理装置の一例を示す概念図である。本図はスクリューコンベアの搬送方向視における断面図である。本実施形態における破砕片瞬間昇温体は、チャンバー内の破砕片に対して抜差し動作をするニードル体である。図示するように、「ニードル体」(0801)は、「チャンバー」(0802)内に向かって抜差し動作をするようにチャンバーの側面に備わる。ニードル体が抜差し動作をするための構成について限定するものではないが、例えば動力源となるモータとカム及びシャフトなどの要素を組み合わせて構成することができる。
【0095】
図9は、
図8の有機廃棄物処理装置を上方視した概念図である。図示するように「ニードル体」(0901)は、「チャンバー」(0902)内に向けて抜差し動作するよう構成され、多数のニードル体が備わっている。
【0096】
抜差しの早さは処理対象や処理量に応じて適宜選択すればよく、例えば、1分あたり20往復から100往復程度で抜差し動作をさせると好適である。また、実施形態2で説明したチャンバー内ガス分析部を設けるとともに、その分析結果に応じて抜差しの動作タイミングやニードル体の温度などを調整するように構成してもよい。
【0097】
上述のように破砕片瞬間昇温体を構成した場合、スクリューにより撹拌されながら搬送される破砕片に対してニードル体の抜差し動作により極めて短い時間で破砕片とニードル体とが接触することで接触した破砕片を瞬間的に昇温させることを効果的に行うことが可能となる。
【0098】
また、ニードル体に反応剤供給穴を設けてもよい。
図10は、反応剤供給穴を設けるニードル体の一例を示す概念図である。
図10(a)においては、「ニードル体」(1001)は、チャンバーの内側壁に設けられる「管状部材」(1002)から出たり入ったりすることで抜差し動作を行う。この管状部材内から反応剤を供給する。すなわち、「管状部材の内壁面とニードル体との隙間」(1003)が、反応剤供給穴となる。
【0099】
また、
図10(b)においては、「ニードル体」(1004)は、その軸方向に貫通する「穴」(1005)が一つ備わり、この穴が反応剤供給穴となる。また、
図10(c)に示すように、「ニードル体」(1006)の軸方向に貫通する「二つの穴」(1007、1008)を設けて反応剤供給穴としてもよい。このように複数の穴を備える場合には、異なる反応剤をそれぞれの穴から供給してもよいし、一の穴から反応剤を供給するとともに他の穴から空気混合ガスを供給するようにしてもよい。
【0100】
反応剤供給穴からの反応剤の供給は廃棄物の処理行っている間は常時供給するようにしてもよいし、ニードル体の抜差し動作に応じたタイミングで供給するようにしてもよい。例えば、ニードル体が管状部材から出ていく動作をしている間は反応剤の供給を行わず、管状部材に戻る動作をしている間において反応剤の供給を行うように構成してもよい。ニードル体が戻る動作をすることでそれまで接触していた破砕片から離間することになるが、このとき反応剤を供給することで昇温により生じたガスを速やかに反応させることが可能となり好適である。
<実施形態3 効果>
【0101】
本実施形態により、破砕片を瞬間的に昇温させることや昇温した破砕片の冷却や生じたガスの中和をより速やかに行うことが可能となる。
【課題】ダイオキシン類の生成を極力抑えつつ廃棄物の無害化及び減量化を図るとともにプラスチック類のリサイクルを可能にする廃棄物処理装置を提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題を解決するために、瞬間的な加熱により廃棄物に含まれる非プラスティックごみから発生する塩素や炭化水素などを含むガスをただちに酸化剤や中和剤と反応させるための反応剤を供給しつつ、瞬間的な加熱を繰り返すことでダイオキシン類や二酸化炭素を生成させずに非プラスティックごみを減量化及び無害化し、併せてプラスティックを浄化及び無害化することでリサイクルを可能とする廃棄物処理装置を提供する。