特許第5925995号(P5925995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5925995
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】フラッフ化パルプを含有する紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/16 20060101AFI20160516BHJP
   D21D 1/00 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   D21H11/16
   D21D1/00
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-77419(P2011-77419)
(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公開番号】特開2012-211411(P2012-211411A)
(43)【公開日】2012年11月1日
【審査請求日】2013年9月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】間篠 智恵子
(72)【発明者】
【氏名】菊池 紀幸
(72)【発明者】
【氏名】糸田川 哲
(72)【発明者】
【氏名】小野 克正
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−212690(JP,A)
【文献】 特開2000−211250(JP,A)
【文献】 特開平08−000667(JP,A)
【文献】 特開2007−046219(JP,A)
【文献】 特開2008−248453(JP,A)
【文献】 特開2004−003098(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0034891(US,A1)
【文献】 特開2011−005646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00−1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00−9/00
D21H 11/00−27/42
D21J 1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水率が2%以上35%以下であるシート状またはロール状の原料パルプを、歯付きシリンダーを有する解繊装置を用いる機械的処理により解繊して繊維内架橋されていないフラッフ化パルプを得る工程、および、該フラッフ化パルプを配合した紙料を用いて抄紙する工程、を含む、紙の製造方法であって、
前記フラッフ化パルプの平均繊維長が1.5mm以上である、上記方法。
【請求項2】
原料パルプの含水率が20%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原料パルプが針葉樹化学パルプからなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記フラッフ化パルプが、該パルプを用いてJIS P 8222に従って手抄きシートを作成した場合、該手抄きシートの白色度が82%以上かつ密度が0.4g/cm以下となるフラッフ化パルプである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記フラッフ化パルプを全パルプ重量に対して1〜50固形分重量%配合した紙料を用いて抄紙する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記紙が、印刷用紙、新聞用紙、情報記録用紙、塗工紙用原紙または包装用紙である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッフ化パルプを含有する紙に関し、特に嵩高で軽量な紙に関する。
【背景技術】
【0002】
環境保護気運の高まりに伴い、森林資源から製造される製紙用パルプを有効に活用するための、紙の軽量化は避けられない問題であり、紙への品質要求として、軽量化が求められている。ここで、紙の軽量化とは、紙の厚さは維持した上での軽量化、すなわち嵩高(低密度)化のことである。
紙の低密度化の方法として、紙の主原料であるパルプ性状の工夫が挙げられる。製紙用途のパルプとしては一般的に木材パルプが使用されているが、化学薬品により繊維中の補強成分であるリグニンを抽出した化学パルプよりも、薬品は使用せずグラインダーで木材を磨り潰す砕木パルプや、リファイナーで木材を叩解するサーモメカニカルパルプのような機械パルプの方が、剛直な繊維が得られ低密度化には効果的で、特に砕木パルプは低密度化への寄与が大きいとされる。
しかしながら、砕木パルプは、木材を磨り潰す際に多くのエネルギーを消費する課題があった。また、砕木パルプは、上質紙への配合は規格上問題があり、配合することによって、例えば紙製品の白色度を低下させることや退色と呼ばれる経時での白色度低下などといった問題が発生する。同様の理由で、サーモメカニカルパルプの上質紙への配合も問題がある。
【0003】
上質紙の場合、パルプの面では化学パルプのみの配合となるが、紙の密度は原料樹種により大きく影響を受ける。すなわち、木材繊維自体がより粗大な方が、より低密度化が可能となる。上質紙には、主に広葉樹材パルプが配合されているが、広葉樹材で比較的低密度化が可能な樹種としてはガムウッド、メープル、バーチ等が挙げられる。しかしながら、現在の環境保護気運が高まる中では、これら樹種のみを特定して集荷し、パルプ化することは困難である。
【0004】
一方、中質紙あるいは下級紙においては、原料として機械パルプを配合するため、通常、上質紙より低密度な紙となる。しかし、これら剛直な繊維の配合は、機械パルプに多く含まれる結束繊維が印刷時に版の方に引っ張られる現象、いわゆる紙ムケが起こるなどして、強度低下をもたらす原因となる。さらに、通常は漂白化学パルプより白色度の低い機械パルプの増配は紙の白色度を低下させるため、その配合量は制限される。
【0005】
また、近年の環境保護気運の高まりや、資源保護の必要性から古紙パルプの配合増が求められている。古紙パルプは、上質紙、新聞紙、雑誌、チラシ、塗工紙等品種に応じて明確に分類してパルプ化される場合は少なく、混合されたままパルプ化されるため、パルプの性質としてバージンの機械パルプよりも密度が高くなる傾向がある。この理由として、古紙パルプの繊維分は化学パルプ、機械パルプの混合物であることが挙げられる。
以上のように、樹種及びパルプ化工程の検討のみから十分な紙の低密度化を達成することは、木材資源の状況、紙の品質設計を考えた場合、従来の一般的な技術では非常に困難である。そこで、特殊なパルプを用いて紙を低密度化する方法が検討されている。
まず、マーセル化パルプやこれを配合した紙に関して、多くの文献で開示されている(特許文献1〜6)。一般にマーセル化パルプは極めて剛直で、また、パルプ繊維間の水素結合が生じにくいため、マーセル化パルプを使用した紙は低密度になる。マーセル化パルプとは、クラフトパルプやサルファイトパルプを強アルカリ溶液に浸漬処理した後、残留アルカリを除去するために十分に水洗して得られるパルプである。マーセル化によって、パルプセルロース中のヘミセルロース等が溶出し、単繊維強度が上昇することや繊維が極めて剛直になり、また、セルロース中の水酸基のほとんどがアルカリ処理によりアルカリ金属で置換されるためパルプ繊維間の水素結合が起きにくくなることが知られている。しかし、マーセル化パルプを製造する際には、強アルカリ溶液および大量の洗浄水が必要となるため製造コストや環境への負荷が高くなる。また、マーセル化パルプは、クラフトパルプやサルファイトパルプ等の原料パルプをそのまま強アルカリ溶液で処理して得られるものであるため、パルプ繊維の形状が大きく剛直であり、紙の平滑性が低下しやすく、叩解が容易でない。そのため、このマーセル化パルプを紙の原料パルプとして使用する従来技術は、未叩解の状態で高度な平滑性を要求されない用途に使用するか(特許文献1〜4)、多大なエネルギーををかけて叩解を行う必要がある(特許文献5、6)。
また、カールドファイバーにより紙を低密度化することが提案されている(特許文献7、8)。カールドファイバーとは、分子内架橋構造による化学反応によってカールやネジレのような変形を固定した、元の繊維の長さと比べて見かけの長さが小さくなったパルプ繊維のことをいい、パルプ繊維に架橋剤を添加した後機械的に攪拌し、加熱処理を行って繊維に変形を固定することにより製造することができる。しかし、カールドファイバーは、低密度化には効果があるものの、パルプに特殊な処理を施す必要があり、紙の製造において生産性に劣りコスト上昇を招く問題があった。
また、粉砕パルプにより紙を低密度化することも提案されている(特許文献9)。粉砕パルプとは、乾燥したパルプを粉砕機により粉砕したパルプ繊維のことをいい、平均繊維長が短くなるため紙としたときの引裂強度や不透明度に劣る問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−150911号公報
【特許文献2】特開平6−277148号公報
【特許文献3】特開平5−7714号公報
【特許文献4】特開平4−194095号公報
【特許文献5】特開2001−232931号公報
【特許文献6】特開2002−67485号公報
【特許文献7】特開2000−256986号公報
【特許文献8】特開2007−046219号公報
【特許文献9】特開2008−248453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上、これまでの技術では、低密度でありながら、かつ白色度やその他の紙質、強度に優れる紙を、少ないエネルギーで簡単な方法により製造することは困難であった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、低密度で白色度、強度に優れる紙をより簡易な方法で提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく本発明者が鋭意検討したところ、含水率が35%以下の原料パルプを機械的処理により解繊したフラッフ化パルプを使用することによって、低密度であるとともに良好な白色度や強度も備える紙が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
従来、フラッフ化パルプは、使い捨ておむつ等の吸収性物品の吸収性部材やエアレイド(air-laid)の不織布用材料として用いられているが(特開平8−010284号公報)、印刷用紙などの紙に使用されることは一般的でなかった。しかし、本発明者は、上述したように含水率の低いパルプを機械的処理により解繊してフラッフ化パルプを得て、このフラッフ化パルプを用いて抄紙すると、低密度な紙が得られることを驚くべきことに見出した。
以下に限定されるものではないが、本発明は以下の発明を包含する。
(1) 含水率35%以下の原料パルプを機械的処理により解繊してフラッフ化パルプを得る工程、および、該フラッフ化パルプを配合した紙料を用いて抄紙する工程、を含む、紙の製造方法。
(2) 前記原料パルプの含水率が20%以下である、(1)に記載の方法。
(3) 前記原料パルプが針葉樹化学パルプからなる、(1)または(2)に記載の方法。
(4) 前記フラッフ化パルプが、該パルプを用いてJIS P 8222に従って手抄きシートを作成した場合、該手抄きシートの白色度が82%以上かつ密度が0.4g/cm以下となるフラッフ化パルプである、(3)に記載の方法。
(5) 含水率35%以下の原料パルプを機械的処理により解繊したフラッフ化パルプを含有する紙。
【発明の効果】
【0009】
低密度で白色度、強度に優れる紙を簡易な方法で提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(フラッフ化パルプ)
本発明においてフラッフ化に使用する原料パルプの材種は特に限定されないが、針葉樹パルプが、嵩高性が良好でかつ高強度の紙を得ることができるため好ましい。
フラッフ化に使用する原料パルプのパルプ化法は特に限定されず、公知の方法により得られたパルプを使用できるが、亜硫酸塩パルプ化法(サルファイト法:SP法)又は硫酸塩パルプ化法(クラフト法:KP法)等により得られたパルプは、白色度が高く経時変化による退色が少ない紙が得られるので好ましい。
本発明におけるフラッフ化パルプは、原料パルプを機械的処理により繊維状に解繊して得られる。本発明において、フラッフ化する前のパルプの含水率は35%以下であり、好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である。含水率の下限は特に限定されないが、2%以上程度である。本発明の範囲に含水率を低くした、ドライな状態の原料パルプを解繊することにより、繊維間結合しにくく、それ自体嵩高なパルプが効率的に得られる。そして、このフラッフ化パルプを用いて製造した紙は、内部に隙間が生じ、低密度化すると考えられる。含水率が35%を超えると嵩高効果が小さくなる。本発明において原料パルプの形状は特に限定されないが、シート状にしたパルプ(いわゆるパルプシート)やシート状に漉き取ったパルプを巻取ロールのような状態にしたものが、取扱いが容易なため好ましい。
【0011】
本発明において、フラッフ化、すなわち解繊するための機械的処理に用いる装置は特に限定されないが、紙おむつ等の吸収性材料の製造時などに使用されている公知の解繊機を使用でき、機械的処理として摩擦力やせん断力を利用する解繊機を好適に使用できる。フラッフ化に使用する装置としては、例えば、歯付きシリンダーを有する解繊装置を好適に用いることができる(特許第2521577号公報参照)。本発明のフラッフ化パルプは、解繊機の歯付きシリンダーで原料パルプを削るように解繊するだけで製造でき、前述したカールドファイバーのように特殊な処理を施して繊維内架橋させる必要がないため、嵩高なパルプを容易に得ることができる。
このようにして得られたフラッフ化パルプは、これを用いてJIS P 8222に従いTappi標準丸型手抄き装置を用いて絶乾坪量60g/mを目標に手抄きした場合において、手抄きシートの白色度が82%以上、より好ましくは85%以上で、密度が0.4g/cm以下となるパルプであることが好ましい。このような品質を有するフラッフ化パルプを使用することにより、高白色度で低密度の紙を製造することができる。なお、手抄きシートの密度の下限は0.25g/cm程度である。また、得られたフラッフパルプの平均繊維長は、比引裂き強度が高い等の特徴を有するため、1.5mm以上が好ましい範囲である。
本発明のフラッフ化パルプは、必要に応じて、適宜叩解することができる。ただし、叩解処理によって繊維をフィブリル化させると、紙力が向上するものの紙が高密度化する傾向があるため、低密度化のためには叩解の程度を低くすることが望ましい。
本発明の紙に供するフラッフ化パルプの配合量は、全パルプ重量に対して、1〜50固形分重量%とすることが好ましい。1%未満の配合量であると十分な低密度効果が得られない。フラッフ化パルプの配合量は、5固形分重量%以上であることがより好ましい。
(紙料)
本発明においては、上記のように調製したフラップ化パルプを配合した紙料を用いるが、フラッフ化パルプ以外の原料は特に限定されない。本発明においてフラッフ化パルプと併用できる原料パルプは、特に限定されず、通常使用されるパルプを適宜使用することができるが、例えば、針葉樹の晒クラフトパルプ(NBKP)又は未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹の晒クラフトパルプ(LBKP)又は未晒クラフトパルプ(LUKP)等化学パルプ、グラウンドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)又はケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ、さらには脱墨パルプ(DIP)を、単独で、又は、複数種以上のパルプを任意の割合で混合して使用することができる。
本発明においては、必要に応じて填料を紙料に含有させてもよい。填料としては、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、合成樹脂填料等の公知の填料を、単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明においては、紙料に嵩高剤を添加することもできる。近年、紙の低密度化を促進する薬品(嵩高剤)として、例えば、高級アルコールのエチレン及び/又はプロピレンオキサイド付加物、多価アルコール型非イオン界面活性化剤、高級脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物のエチレンオキサイド付加物、あるいは脂肪酸ポリアミドアミン等が知られている。本発明においては、これらの嵩高剤をさらに併用してさらなる低密度化を図ることも可能である。
また、必要に応じて、硫酸バンド、サイズ剤、歩留まり向上剤、濾水性向上剤、着色剤、染料、消泡剤等を紙料に含有させてもよい。
【0012】
(抄紙)
本発明の紙は、公知の抄紙方法によって製造することができる。抄紙時のpHは酸性、中性、アルカリ性のいずれでもよい。
本発明の紙は、長網抄紙機、ギャップフォーマ又はハイブリッドフォーマ(オントップフォーマ)等の公知の抄紙機にて製造することができる。
また、紙の抄造時におけるプレス工程についても特に制限はないが、プレス圧を低くすると、紙を低密度化できるため好ましい。
(表面塗工)
本発明の紙は、必要に応じて表面強度やサイズ性の向上の目的で、バインダーやサイズ剤などの表面処理剤を塗工することができる。これら表面処理剤は、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ブレードコーター、ロッドメタリングコーター、スプレーコーター、またはカーテンコーターの塗工機によって塗布することができる。
【0013】
上記の表面処理剤は、澱粉、酸化澱粉、加工澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、スチレンブタジエン系ラテックス等の通常使用されるものを単独、あるいはこれらの混合物を使用することができる。また、表面処理剤の中には、水溶性高分子の他に耐水化、表面強度向上を目的とした紙力増強剤やサイズ性付与を目的とした外添サイズ剤を添加することができる。
また、本発明の紙は、必要に応じて、印刷適性の向上や表面強度の向上などを目的として、炭酸カルシウムやカオリン等の白色顔料を含む塗工液を塗工して、顔料塗工層を設けることができる。塗工液には、澱粉やラテックス等の接着剤、耐水化を目的としたサイズ剤等を配合することができる。これら塗工液は、ゲートロールコーター、ブレードコーター、ロットメタリングコーター、スプレーコーター、またはカーテンコーターなどの公知の塗工機によって塗工することができる。
(カレンダー)
本発明の紙は、必要に応じて、表面性の向上等を目的として、チルドカレンダー、スーパーカレンダー、ホットソフトニップカレンダー等のカレンダー設備によって表面処理することができる。ただし、カレンダー処理によって紙が高密度化するため、カレンダー圧を低くするか、カレンダー処理を行なわないことが好ましい。
【0014】
本発明の紙の用途は、特に限定はないが、例えば、上質または中質印刷用紙を始めとする印刷用紙、新聞用紙、情報記録用紙、塗工紙用原紙、包装用紙等として、嵩高で軽量さが求められる各種用途の紙に使用することができる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例にて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、特にことわらない限り、部および%は重量部および重量%を表す。
製造したフラッフ化パルプの物性および手抄きシートの紙質を表1に示し、実施例および比較例にて得られた紙の評価結果を表2に示す。
【0016】
[実施例1]
(フラッフ化パルプの製造)
ろ水度(CSF)720mlの針葉樹晒クラフトパルプ(以下、NBKPと記述する)からなる坪量1,200g/mのパルプシート(含水率:5%)を、歯付きシリンダーを有する解繊機(株式会社瑞光製)を用いて、回転数:3,600rpm、速度:15m/min(シートのフィード量)、クリアランス:0.8mmで解繊し、フラッフ化パルプ(以下、Nフラッフと記述する)を製造した。
得られたフラッフ化パルプは、ろ水度(CSF)が745mlだった。Nフラッフを100%配合して、JIS P 8222に従いTappi標準丸型手抄き装置を用いて手抄きシートを作製したところ、手抄きシートの密度は0.37g/cm、ISO白色度85.2%であった。また、得られたパルプ繊維の平均繊維長は2.13mmであった。
(紙の製造)
このNフラッフを10固形分重量%とCSFが350mlである広葉樹晒クラフトパルプ(以下、LBKPと記述する)を90固形分重量%配合した混合パルプスラリーを作成し、対パルプ固形分当たり硫酸バンドをアルミナ純分で800ppm、および、カチオン性ポリアクリルアミドを300ppm配合して、紙料を調成した。
この紙料を用いて、Tappi標準丸型手抄き装置を用いて絶乾坪量60g/cmを目標に抄紙し、プレス処理(4.18kg/cm、5分)した後、シリンダードライヤー(表面温度120℃)を用いて乾燥した。
このようにして得られた紙の紙質測定結果を表2に示した。密度が0.50g/cmと低密度で、白色度は83.1%と高く良好であった。また、比引裂き強度が高く良好であった。
【0017】
[実施例2]
Nフラッフの配合量を20固形分重量%、LBKPを80固形分重量%とした以外は、実施例1と同様の手法にて紙を作製した。このようにして得られた紙は、密度が0.48g/cmと低密度で、白色度は84.3%と高かった。また、比引裂き強度が高かった。
【0018】
[比較例1]
CSF350mlであるLBKPが100固形分重量%からなるパルプのみを使用したこと以外は、実施例1と同様の手法で手抄き紙を作製した。このようにして得られた手抄き紙は、密度が0.55g/cm、白色度が81.9%であった。実施例1と比較して明らかに紙厚が低く高密度であった。
【0019】
[比較例2]
実施例1においてNフラッフ10固形分重量配合する代わりにCSF720mlのフラッフ化処理を行っていないNBKPを10固形分重量%配合したこと以外は、実施例1と同様の手法で紙を作製した。このようにして得られた紙は、密度が0.53g/cm、白色度が81.9%であった。実施例1と比較して、明らかに紙厚が低く、高密度であった。
【0020】
[比較例3]
白色度66.8%、CSF148mlである針葉樹(N)材由来のサーモメカニカルパルプ(以下、N−TMPと記述する)が10固形分重量%、LBKPが90固形分重量%からなるパルプを使用したこと以外は、実施例1と同様の方法にて紙を作製した。このようにして得られた紙は、密度が0.50g/cm、白色度が77.9%であった。実施例1と比較すると、白色度が低く比引裂き強度も低く劣っていた。
【0021】
[比較例4]
嵩高剤としてアニオン性飽和脂肪酸モノアミドを全パルプ固形分重量あたり0.4%配合したこと以外は、比較例1と同様の方法にて紙を作製した。このようにして得られた紙は密度が0.53g/cm、白色度が82.5%であり、低密度化効果がフラッフ化パルプに対して劣っていた。また、比引裂き強度も劣っていた。
【0022】
【表1】
【表2】
(評価方法)
表1および表2中の評価基準は以下のとおりである。
・坪量:JIS P 8124に従い測定した。
・紙厚、密度:JIS P 8118に従い測定した。
・白色度:JIS P 8148 (ISO 白色度)に従い測定した。
・比引裂き強度:JIS P 8116−2000に従い測定した。
・平均繊維長:ファイバーテスター(Lorentzen & Wettre社製)を用いて測定した長さ加重平均。本発明において平均繊維長とは、長さ加重平均繊維長のことを示す。
(評価結果)
上記の結果から、本発明のフラッフ化パルプを使用した実施例1、2では、低密度で白色度に優れるとともに、嵩高でありながら強度の高い紙が得られることがわかる。一方、フラッフ化パルプを含有せずLBKPまたはNBKPをそれぞれ単独で使用した比較例1,2は、密度が高く、TMPを単独で使用した比較例3は、低密度であるものの強度が低く白色度も劣っていた。さらに、LBKPに嵩高剤を併用した比較例4は、低密度化が十分でなく、強度も低かった。