特許第5926013号(P5926013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926013
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】錠前の施・解錠モード切替え装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 47/00 20060101AFI20160516BHJP
【FI】
   E05B47/00 M
   E05B47/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-178462(P2011-178462)
(22)【出願日】2011年8月17日
(65)【公開番号】特開2013-40511(P2013-40511A)
(43)【公開日】2013年2月28日
【審査請求日】2014年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(72)【発明者】
【氏名】児島 龍一
【審査官】 川島 陵司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−133656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠箱内に、駆動源(51)と、前記錠箱の後壁に向かって伸縮する該駆動源の作動杆(52)と水平方向に共働する駆動片(55)と、横軸(67)に中央部或は中央部寄りの部位が軸支された長片状の主切替えレバー(66)と該主切替えレバーと連係する補助切替えレバー(70)とを有する錠前の施・解錠モード切替え手段(65)を配設し
前記錠箱内には、さらに、前記駆動片の少なくとも一側に併設された状態で該駆動片に形成された水平方向の逃がし穴(58)内に位置する固定軸(60)に軸支されていると共に、下端部がハンドルロック部材(13)の上方の第1係合部と係合或は連係しかつ該駆動片が前記駆動力で水平方向に位置変位すると前記補助切替えレバーに設けた係合突起(71)を介して回転する従動片(61)を設け、
前記補助切替えレバーは、その下端部に前記従動片の従動長孔(63)及び前記駆動片の垂直長孔(56)の両方に係合する前記係合突起(71)、中間部に前記駆動片の垂直長孔の垂直線上の縦溝(57)に係合する案内突起(72)及びその上端部に前記主切替えレバーの後端部と連係する連係部(73)を有し、
前記錠箱に形成された切替え用開口から前記主切替えレバーの先端部を上下方向に切替えると、前記固定軸(60)を基準として、前記補助切替えレバーの前記係合突起(71)が上下方向に位置変位し、錠前の施・解錠モードが切替る錠前の施・解錠モード切替え装置。
【請求項2】
請求項1に於いて、ハンドルロック部材の中間部が軸支され、下方の第2係合部を介してハンドルカム部材の錠片と直接係合する腕状係合部の上端部と係脱することを特徴とする錠前の施・解錠モード切替え装置。
【請求項3】
請求項1に於いて、ハンドルロック部材は、L字形状或はブーメラン形状のいずれかに形成されていることを特徴とする錠前の施・解錠モード切替え装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、錠前の施・解錠モード切替え装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、出願人が提案したものである。特許文献1には、錠前の一例として、電気的な錠前が記載されている。すなわち、特許文献1は、「扉開閉端の縦枠17に設けられ閉扉にて錠ケース19から錠ボルト25を突出させるプッシュプル電気錠100であって、扉面11aに垂直な軸回りで回動自在となって前記錠ケース19に内設される駆動カム55と、開扉方向aと同方向の押し引き操作力を扉面11aに垂直な軸回りの回転操作力として該駆動カム55に入力する変換機構65と、扉面11aに垂直な軸回りで揺動自在に支持され錠ボルト突出状態で揺動先端63aを前記駆動カム55の外周に形成された凹部55aに半径方向外側から挿入して前記駆動カム55を回転規制するロックピース63と、前記駆動カム55の回転で前記縦枠17の長手方向にスライドされ斜め穴73に係合させた前記錠ボルト25を後退方向に従動させるスライドカム板31と、前記錠ケース19に設けられ該スライドカム板31の上端移動位置で該スライドカム板31に係止して該スライドカム板31を前記上端移動位置に保持するラッチ体79と、閉扉にて被施錠体から磁気反発力を受けて作動し該ラッチ体79の前記スライドカム板31に対する保持を解除するリリーサ95と、電気信号の印加にてソレノイド143を励磁し前記錠ボルト25の進退方向bにプランジャ145を直動させる電磁プランジャ144と、前記プランジャ145に連結され前記直動方向にスライドされる駆動コネクタ147と、扉面11aに垂直な軸回りで揺動自在に支持され先端係合部159aが前記ロックピース63の揺動基端63bに連結されるとともに基端連結部159bが該駆動コネクタ147に連結される切替え5カム159と、を具備したことを特徴とする電気錠」が開示されている。
【0003】
そして、該特許文献1には、本願発明の主要部に相当する「錠前の施・解錠モード切替え装置の具体的構成」が、段落0071乃至段落0085まで、図5及び図6(Tモード)、図12(Tモード又はRモードに切替えるスライド片177、切替えカム159等の切替え手段)、図14(Rモード)等が図面と共に記載されている。
【0004】
しかしながら、該特許文献1は、電気錠自体の構成が、部品点数が多くて複雑である、また錠前の施・解錠モード切替え装置の、該手動式切替え手段を、錠片をハンドルカム部材で直接後退動させる錠前に適用することができない等の問題点があった(符号は特許文献1のもの)。なお、本願発明が登場した技術的背景は、特許文献1、特許文献2等に記載されている通りである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−270307号公報
【特許文献2】特開2009−256907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明の所期の目的は、錠前の販売時、或は錠前を扉に装着する施工時に、錠箱に形成した開口(少なくともフロント裏板に形成した開口、又は幅広側壁に形成した開口のいずれか)を利用して錠前のモードを簡単、かつ確実に切替えることができる、部品点数が少ない次世代型の施・解錠モード切替え装置を提供することである。第2の目的は、駆動源の作動杆が錠箱の後壁に向かって伸縮する場合であっても、適用することができることである。第3の目的は、錠片をハンドルカム部材で直接後退動させる錠前に適用することができることである。その他、極力構成部品点数を少なくし、かつ機構をユニット化することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の錠前の施・解錠モード切替え装置は、錠箱内に、駆動源(51)と、前記錠箱の後壁に向かって伸縮する該駆動源の作動杆(52)と水平方向に共働する駆動片(55)と、横軸(67)に中央部或は中央部寄りの部位が軸支された長片状の主切替えレバー(66)と該主切替えレバーと連係する補助切替えレバー(70)とを有する錠前の施・解錠モード切替え手段(65)を配設し前記錠箱内には、さらに、前記駆動片の少なくとも一側に併設された状態で該駆動片に形成された水平方向の逃がし穴(58)内に位置する固定軸(60)に軸支されていると共に、下端部がハンドルロック部材(13)の上方の第1係合部と係合或は連係しかつ該駆動片が前記駆動力で水平方向に位置変位すると前記補助切替えレバーに設けた係合突起(71)を介して回転する従動片(61)を設け、前記補助切替えレバーは、その下端部に前記従動片の従動長孔(63)及び前記駆動片の垂直長孔(56)の両方に係合する前記係合突起(71)、中間部に前記駆動片の垂直長孔の垂直線上の縦溝(57)に係合する案内突起(72)及びその上端部に前記主切替えレバーの後端部と連係する連係部(73)を有し、前記錠箱に形成された切替え用開口から前記主切替えレバーの先端部を上下方向に切替えると、前記固定軸(60)を基準として、前記補助切替えレバーの前記係合突起(71)が上下方向に位置変位し、錠前の施・解錠モードが切替ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
(a)請求項1に記載の発明は、部品点数が少ない次世代型の施・解錠モード切替え装置である。また、例えば錠前のフロント裏板部から手動で錠前のモードを簡単かつ確実に切替えることができる。特に、本願発明では、切替え手段が、その先端部が錠箱の裏板開口や幅広側壁に形成した開口から見え、かつ中央部或は中央部寄りの部位が軸支された長片状の主切替えレバーと、該主切替えレバーと連係する補助切替えレバーとから成り、該補助切替えレバーは、その下端部に従動片の従動長孔及び駆動片の垂直長孔の両方に係合する係合突起、中間部に前記駆動片の垂直長孔の垂直線上に形成された縦溝に係合する案内突起、及び上端部に連係長孔を有するので、切替え手段がユニット化されていると共に、駆動源の作動杆が錠箱の後壁に向かって伸縮する場合であっても適用することができる。
(b)請求項2に記載の発明は、錠片をハンドルカム部材で直接後退動させる錠前に適用することができる。
(c)その他、ハンドルロック部材が、L字形状或はブーメラン形状のいずれかに形成されている実施形態の場合には、構成部品点数が少ないと共に、機構をユニット化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1乃至図13は、本願発明の実施形態の一例を示す各説明図である。図15及び図16は、錠箱に形成した切替え用開口の他の実施形態を示す各説明図。
図1】本願発明を適用する錠前の一例を示し、ロック部材がハンドルカム部材をロックしている状態の概略説明図。
図2】通電時施錠モード(Rモード)の概略説明図。
図3】駆動源と駆動片の説明図。
図4図3の4−4線端面図。
図5】駆動片と従動片の説明図。
図6】駆動片と補助切替えレバーの説明図。
図7】主切替えレバーと補助切替えレバーの説明図。
図8】支持枠と主切替えレバーの説明図。
図9】フロントを外した後、支持枠の可動枠体を上方に回転させた説明図。
図10図2のRモードに於いて、電源をOFFにし、解錠状態になった概略説明図。
図11】通電時解錠モード(Tモード)の概略説明図。
図12図11のTモードモードに於いて、電源をOFFにし、施錠状態になった概略説明図。
図13図1の施錠状態からハンドルカム部材を矢印方向へ回転させ、制御レバーが上昇している説明図。
図14図1の施錠状態からハンドルカム部材を矢印方向へ回転させ、錠片の後退動中に制御レバーが下降すると共に、錠片を後退させている説明図。
図15】錠箱に形成した切替え用開口の他の実施形態の幅広側面から見た要部の概略説明図。
図16】平面視からの要部の概略断面の説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(1)本願発明を適用する錠前
図1は、本願発明の錠前の施・解錠モード切替え装置Yを適用する錠前の一例を示した概略説明図である。まず、錠前Xの構成部材を説明する。この錠前Xは幾つかの機構を内装する錠箱1を有し、該錠箱1は、周知のようにフロント1a、裏板1b、後壁1c、上壁1d、底壁1eでもって縦長箱状に形成されている。フロント1aは裏板1bから取り外すことができ、該フロント1aを裏板1bから取り外すと、裏板1bの開口部に設けた後述の回転自在な可動枠体82及び上下方向に切替え可能な主切替えレバー66の先端部が見える(図9参照)。
【0011】
本実施形態の錠箱1は、扉の幅の狭い縦框cに取り付けられる。したがって、この錠箱1は、例えば、前記狭縦框の幅に対応して縦長状に形成されている。付言すると、特許文献1の記載の扉(例えばガラス扉)に適合する。しかし、本願発明の錠前Xはガラス扉に限定されるものではない。
【0012】
次に、2は錠箱1に進退動自在に設けられた錠片(例えば、デッドラッチ、ラッチボルト、錠ボルトなど称される係合部材)で、該錠片2はその後端部2aにハンドルカム部材3と係合する貫通状あるいは凹所状の不番の係合部を有する。ハンドルカム部材3は、その基端部3aが錠片2よりも下方に位置する第1固定軸(実施形態によって、ノブやレバーハンドルのハンドル軸)4に軸支され、該基端部3aの下側には、図示しない内外の操作部材(例えば、プッシュ・プルハンドル)の内端部にそれぞれ設けられた内外の突片5,6と係合する短片状第1係合部3bが半径外方向に延在している。また該基端部3aの上側には、腕状第2係合部3cが延在し、該腕状第2係合部3cは前述した錠片2の後端部2aの係合部と貫通状態に係合する。そして、腕状第2係合部3cの錠片2から突出する先細り状先端部3dには、小さなローラ7が回転自在に設けられている。
【0013】
11は、錠片2よりも多少上方に位置する第2固定軸12に軸支された錠片用ストッパー片で、この錠片用ストッパー片11の下辺に形成した下向き弧状の切欠状係合部には、前述したハンドルカム部材3の小ローラ7が係脱する。13は、錠片用ストッパー片11と同様に前記第2固定軸12に軸支されたハンドルカム部材用ロック部材で、このロック部材13は、いわば、右手の親指と人差指とを左向きに開いた格好のL字形状に形成され、錠片2の施錠時、前記右手の親指に相当する、或は左右方向(斜め方向も含む)を指向する下方の第2係合部13bは、ハンドルカム部材3の先細り状先端部3dに係合して該ハンドルカム部材3の回転を阻止する。このように、本実施形態のハンドルロック部材は、L字形状或はブーメラン形状のいずれかに形成されている一つのロックピースである。
【0014】
一方、前記人差指に相当する、或は上方向を指向する上方の第1係合部13aの上端部には、水平方向に突出する可動ピン14が設けられ、該可動ピン14は後述の動力変換部材の制御バー23に形成した切欠状係合制御部24に係合する。
【0015】
ここで、説明の便宜上、図13図14を参照にして、図示しない操作部材の一例としてのプッシュブルハンドルの操作部材の操作力によって、前述の錠片用ストッパー片11がどのように作動するかについて簡単に説明する。
【0016】
上記構成に於いて、例えば外側の操作部材を操作すると、外側の突片6がハンドルカム部材3の短片状第1係合部3bの側面を押圧し、また同様に、内側の操作部材を操作すると、内側の突片5がハンドルカム部材3の短片状第1係合部3bを押圧する。図14では、外側の操作部材の操作力によって外側の突片6が矢印方向へと水平移動し、これによりハンドルカム部材3が第1固定軸4を支点に時計方向である矢印方向へと回転することになる。
【0017】
したがって、ハンドルカム部材3に対するロック部材13が存在しない限り、ハンドルカム部材3の小ローラ7が錠片用ストッパー片11の弧状切欠状係合部を滑動して該錠片用ストッパー片11を、第2固定軸12を支点にして上方へと押し上げるので、錠片用ストッパー片11の係合先端部は錠片2の上辺に段差状に形成した被係合部から矢印の上方方向へと離れ、ハンドルカム部材3は矢印の時計方向へと回転可能となり、その結果、錠片2は、ハンドルカム部材3の腕状第2係合部3cを介して矢印の後退方向へと後退動可能である。
【0018】
しかしながら、図1の施錠状態では、ハンドルカム部材用ロック部材13の下方の第2係合部13bがハンドルカム部材3の先細り状先端部3dに係合し、該ハンドルカム部材3の回転を阻止している。そこで、錠片2を施錠状態から解錠状態にするためには、その前提条件として、ハンドルカム部材に対するロック部材のロック状態が解消する必要がある。
【0019】
そこで、この次世代型錠前Xは、本願発明の主要部(図2乃至図12)の他に、(A)ハンドルカム部材3に対するロック部材13のロック状態を解消させる手段21、22、23、(B)及びハンドルカム部材3に対するロック部材13のロック状態が解消させた場合に、一時的にロック部材13のロック状態の解消を維持する手段31を錠箱1内に組み込んでいる。本明細書では、該(A)及び(B)の各事項は、発明の限定要件ではないが、説明の便宜上説明する。
【0020】
さて、錠箱1の上方に付してある符号20は、縦長錠箱1の内部空間の一番上方に横方向に配設された施錠用付勢手段で、この付勢手段20は、ラック付勢バネ20aと、該ラック付勢バネ20aの付勢力により、ピニオン及び複数の係合部を有するダルマ21を元の回転位置へ戻す方向へと付勢するダルマラック20bとから構成されている。
【0021】
また22、23は、ダルマ22の回転力を直線運動に変換する動力変換部材で、ダルマ21の突片状押圧部21aに係合すると共に、その中央部が上方固定軸28に軸支された回転レバー22と、該回転レバーと共働して上下方向に移動する制御レバー23とから成る。
【0022】
付言すると、前記回転レバー22は、例えば右手の親指を上方に向け、一方、人差し指を左向きに向けた格好のL型に形成され、前記親指に相当する山形状係合受け部22aはダルマ22の突片状押圧部21aと係合可能であり、また前記人差し指に相当する係合碗部22bは、制御レバー23の連係部25に係合する係合ピン22cを有する。
【0023】
また前記制御レバー23は、垂直板部23aと水平板部23bを有し、前記垂直板部23aの下端部には、横方向に湾曲状に切欠された係合制御部24が形成され、該係合制御部24は、上述したハンドルカム部材用ロック部材13の上方の第1係合部13a(実施形態では可動ピン14)が係合する。そして、前記制御レバー23の垂直板部23aの上端部には連係部25が連設形成され、該連係部25は回転レバー22の係合ピン22cと係合している。であるから、回転レバー22が上方固定軸28を支点に時計方向に回転するならば、制御レバー23は該回転レバー22に共働して上昇可能である図13を参照)
【0024】
ところで、実施形態では、さらに、前記制御レバー23の垂直板部23aの下端部の切欠状係合制御部24の付近に係合突起26を設け、該下端部に設けた或は形成した係合突起26を、復帰バネ36のバネ力により左右方向に往復動すると共に、矩形状開口部32を形成する枠状フレーム部分31aに、前記開口部32内へ水平方向にやや突出する支持突起33を有する一つのロック状態解消維持片31に係合させている。このロック状態解消維持片31の前記枠状フレーム部分31aに横方向に連設する非開口部分31bには、さらに、小孔状の被係合部35が形成され、該被係合部35には、逆向き「く」の字形状のロック解除レバー41の上端部41aが係合しており、実施形態では、該ロック解除レバー41の中央部を軸支する第3固定軸42に復帰バネ36の中心部が巻装されている。また、ロック解除レバー41の下端部41bは錠片用ストッパー片11の先端部の上辺に係合しており、錠片用ストッパー片11に連動して同方向に回転可能である。
【0025】
上記構成に於いて、ダルマ21が図示しないシリンダ錠又はサムターン側の操作力によりロックを解消する方向に回転した作動時、図13で示すように、制御レバー23が該ダルマに連動して上昇し始める。そうすると、ハンドルロック部材13は、前記制御レバー23の係合制御部24の傾斜面24a及びその上方の第1係合部13aの可動ピン14を介して、ハンドルカム部材3のロックを解く時計方向へと回転し、その下方の第2係合部13bがハンドルカム部材3の先細り状先端部3dから外れる。
【0026】
一方、維持片31は、その支持突起33が上方に位置変位する制御レバー23の係合突起26に押圧されることにより、その復帰バネ36のバネ力に抗して右方向へ位置変位すると共に、該係合突起26が該支持突起33を越えた瞬間に、該復帰バネ36のバネ力によって左方向へと戻され、該係合突起26は該支持突起33に一時的に支持されることにより、ロック部材13のロック状態の解消を維持する。
【0027】
そして、実施形態では、錠片用ストッパー片11に連動して、その復帰バネ36のバネ力に抗して回転するロック解除レバー41が介在するので、維持片31の支持突起33に乗っかった係合突起26は、一時的にロック部材13のロック状態の解消を維持しているものの、錠片用ストッパー片11の先端部の上辺に押し上げられて矢印で示す時計方向へと回転すると、維持片31は矢印で示す右方向へ復帰バネ36のバネ力に抗して一旦スライドするので、前記係合突起26は支持突起33から外され、その結果、制御レバー23は下方へと下降する図14を参照)。したがって、係合突起26は、維持片31の矩形状開口32の下方領域に戻る。そして、閉扉時、錠片2は付勢手段20の付勢力により、施錠位置へと自動的に戻る図1を参照)
【0028】
(2)本願発明の主要部
さて、図2乃至図12を参照にして、本願発明の主要部を説明する。なお、本願発明の主要部の説明に当って、駆動源51、該駆動源に連結される駆動片55及び従動片61の具体的構成は、特許文献1、特許文献2等に記載によって周知事項なので、該周知事項の詳細は極力割愛し、その相違点を指摘する。
【0029】
また、図2図10図11等では、一つの駆動片55に対して手前側に一つの従動片61を、一方、該駆動片の向こう側に他の従動片を省略して、一つの切替え手段65(主切替えレバーと補助切替えレバー)を描いているが、これは本願発明の技術的思想を理解するために、便宜上、他の従動片及び切替え手段を省略している。実施化レベルでは、一つの駆動片55の両サイドに内外の従動片61が存在し、また、内外の従動片61に併設された状態で内外の切替え手段が存在する。したがって、従動片61が係脱するロック部材13も内外に独立して存在する。
【0030】
まず図2は、通電時施錠モード(Rモード)の概略説明図である(作動杆52は収縮)。これに対して、図10は、前記Rモードに於いて、電源をOFFにし、解錠状態になった概略説明図である(作動杆52は伸長)。一方、図11は通電時解錠モード(Tモード)の概略説明図である。これに対して、図12は、前記Tモードに於いて、電源をOFFにし、施錠状態になった概略説明図である。
【0031】
図2のRモード及び図11のTモードの各態様は、特許文献1や特許文献2と同様に、「非通電状態」の場合に於いて、それぞれ電気信号を印加した時に、駆動源51の作動杆52が、復帰用圧縮バネ53のバネ力に抗して矢印方向へと伸長する
したがって、図10のRモード及び図12のTモードの場合に於いて、それぞれ電源が「OFF」になれば、駆動源51の作動杆52は、復帰用圧縮バネ53のバネ力によって矢印方向に伸縮する。実施形態では、駆動源51は長箱状の錠箱1の内部空間の略中央部に固定的に横設され、該駆動源51の作動杆52は、錠箱1の後壁1cに対して水平状態に指向している(特許文献1と異なる点)。
【0032】
なお、特許文献1では、さらに、アンチパニックモード(Aモード)についても言及をしているが、もちろん、本願発明の主要部に該Aモードの切替え手段等を加味しても良い。ここでは、Aモードは本願発明の必須要件ではないので、その説明は割愛する。
【0033】
次に図3は、駆動源51と駆動片55の説明図である。駆動源51は電磁プランジャを採用している。もちろん、電磁プランジャに代えて駆動モータ、伝導歯車等を用いることもできる。特許文献1に記載されているように、電磁プランジャのソレノイドに電気信号を印加することで、その作動杆52は水平方向に所定量移動する。駆動片(特許文献1の図11の駆動コネクタ147と同様)55は、全体の縦断面形状がピストル形状であり、握り部に相当の横方向に突出する連結部55aは、作動杆52の突出先端部52aに連結されている。したがって、駆動片55は該駆動源51の作動杆52と共働する。
【0034】
この駆動片55が特許文献1の動コネクタ147と主に異なる所は、垂直長孔56を有する縦長駆動板部分55bの上端部に、該垂直長孔56の垂直線上に縦溝57が形成されている点である(図4参照)。また、前記駆動片55が水平方向に所定量伸縮動するのを許容する比較的大径の逃がし穴58が前記垂直長孔56に連通形成され、かつ該逃がし穴58を横方向の固定軸60が遊びを有して貫通している点である。
【0035】
次に図5は、駆動片55と従動片61の説明図である。従動片61は、駆動片55の少なくとも一側面(垂直側面)に併設された状態で駆動片55の逃がし穴58を貫通する固定軸60に回転自在に軸支されている。この従動片61は、特許文献1と同様に軸孔62を有する中心部位61aと、該中心部位に耳状に形成されていると共に、くの字形状の従動長孔63を有する連設部位61bと、該連設部位よりも下方に延在する指状下端部(連結爪161に相当)61cとから成る点で、この点は特許文献1の図11の切替えカム159と略同様であり、また駆動源51の駆動力で駆動片55と共に水平方向に位置変位する。
【0036】
しかしながら、この従動片61が特許文献1の切替えカム159と異なる点は、該従動片61の指状下端部(下端係合部)61cは下方を指向し、前述したハンドルロック部材13の上方向の腕状係合部13aと係合或は連係する点である。
【0037】
次に図6は、駆動片55と切替え手段65を構成する補助切替えレバー70の説明図である。また図7は、切替え手段65を構成する主切替えレバー66と前記補助切替えレバー70の説明図である。切替え手段65が一つの実施形態の場合には、例えば図2で示したように、一つのハンドルロック部材13に対する一つの従動片61を駆動片55の一側面(例えば手前の垂直側面)に併設し、一方、一つの従動片61の他側面(向こう前の垂直側面)に補助切替えレバー70を直接的に併設することができるが、普通一般に実施化レベルでは、扉の内外の壁面に内外の操作部材がそれぞれ設けられているので、前記補助切替えレバー70は内外用に一対存在し、これら内外の補助切替えレバー70はそれぞれ内外の従動片61を介して駆動片55の両側面に併設される。したがって、実施化レベルでは、一つの駆動片55の大きさや形態は、内外の従動片の形状・構造を考慮して適宜に設計される。
【0038】
しかして、本実施形態では、切替え手段65は、その先端部66aが錠箱1のフロント裏板1bに形成した不番の切替え用開口に直接、又は裏板1bの切替え用開口に矩形状の支持枠80が固定的に装着されている(実施形態)場合には、該支持枠80の開口81内に位置(裏板1bの開口に間接的に位置)し、かつ中央部或は中央部寄りの部位66bが横軸67に軸支された長片状の主切替えレバー66と、該主切替えレバーの後端部66cと連係部(例えば係合突起、係合穴、二つの連係爪など)を介して連係する補助切替えレバー70とから成り、前記補助切替えレバー70は、その下端部70aに従動片61の従動長孔63及び駆動片55の垂直長孔56の両方に係合する係合突起71、中間部に前記駆動片55の垂直長孔56の垂直線上に形成された縦溝57に係合する案内突起72及び上端部に連係長孔73をそれぞれ有する。そして、望ましくは、補助切替えレバー70は、略直角状体のアングル形状に形成される。
【0039】
また、図9で示すように、支持枠80には、上端部が軸支され、かつ切替えられた主切替えレバー66の先端部66aを選択的に支持する格子状可動枠体82が設けられている。この格子状可動枠体82及び前記長片状の主切替えレバー66は公知事項である(特開2003−239586)が、該公知事項の切替えレバーと主に異なる事項は、本願発明の切替え手段65は新規な補助切替えレバー70が存在する点である。なお、主切替えレバー66に設けたリクック片66dや錠箱1内に設けられたクリック感用の突起部分85は公知事項なので、詳細な説明は割愛する。
【0040】
上記構成に於いて、まず、例えば扉の木口に錠前の装着する前にフロント1aを外し、次に、格子状可動枠体82を上方に上げるようにして開き、主切替えレバーを上下方向に手動で切替えると、前述した逃がし穴58内に位置する固定軸60を基準として、補助切替えレバー70の係合突起71がくの字形状の従動長孔63の範囲内で上下方向に位置変位し、錠前の施・解錠モードが切替る(なお、この実施形態の場合には、扉の木口に錠前の装着した後にも可能である)。
【0041】
そして、図2図10図11及び図12で示すように、切替え手段65で切替えられた従動片61の指先状端部61cは、ロック部材13の可動ピン14と係合する。
【実施例】
【0042】
本願発明の実施化レベルでは、一つの駆動片55の両サイドに内外の従動片61、61が存在し、また、これら内外の従動片61、61にそれぞれ係合するように内外の切替え手段の補助切替えレバー70、70の一部が前記一つの駆動片55内に併設状態に入り込んでいる。
【0043】
したがって、内外の従動片61、61がそれぞれ係合するロック部材13、13も内外に独立して存在し、これら内外のロック部材13、13がそれぞれ係脱するハンドルカム部材3、3も内外に独立して存在する。
【0044】
また、実施形態では、錠箱1の裏板1bの不番開口に矩形状の支持枠80が固定的に装着されているが、必ずしも、該支持枠80を裏板1bに取り付ける必要はない。また、支持枠80を裏板1bの不番開口に装着する場合には、その係着構造は適宜に採用し得る事項である。また、制御レバー23の形態も適宜に設計変更し得る事項である。また本実施形態では、操作部材の一例としてのプッシュブルハンドルを挙げたが、もちろん、操作部材は図示しないレバーハンドルやノブであっても良い。さらに、ハンドルロック部材をロック方向に付勢するバネ15は、適宜に設けることができる。
【0045】
なお、錠前Xの細部的事項、例えばプッシュプルハンドル、レバーハンドル等の操作部材、該操作部材用復帰バネ、錠片用案内手段、ロック状態解消維持片用案内手段、固着具等は省略してある。
【0046】
また、図15及び図16は、錠箱1に形成した切替え用開口17の他の実施形態を示す各説明図で、この第2実施形態では、前記切替え用開口17、17が錠箱1の左右の幅広側壁1f、1fのフロント裏板1b寄りの部位にそれぞれ形成されている。
【0047】
そして、切替え手段65が、アンチパニックモード(Aモード)用の切替え手段(図16では中間に位置する主切替えレバー66)を備えている場合には、アンチパニックモード用の主切替えレバー66は、他の主切替えレバー66の先端部66aよりもやや突出している)。
【0048】
したがって、本実施形態では、錠前の販売時、或は錠前を扉に装着する施工時に、錠箱に形成した開口(少なくともフロント裏板1bに形成した開口、又は幅広側壁1fに形成した少なくとも一つの開口17のいずれか)を利用して錠前のモードを簡単、かつ確実に切替えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本願発明は、錠前や建具の分野で利用される。
【符号の説明】
【0050】
X…錠前、Y…錠前の施・解錠モード切替え装置、1…錠箱、1b…裏板、2…錠片、3…ハンドルカム部材、5…内側の突片、6…外側の突片、7…ローラ、11…錠片用ストッパー片、13…ハンドルロック部材、13a…第1係合部、13b…第2係合部、17…切替え用開口、20…付勢手段、21…ダルマ、22…回転レバー、23…制御レバー、24…係合制御部、26…係合突起、31…ロック状態解消維持片、32…開口部、33…支持突起、36…復帰バネ、41…ロック解除レバー、51…駆動源、52…作動杆、53…復帰用圧縮バネ、55…駆動片、56…垂直長孔、57…縦溝、58…逃がし穴、60…固定軸、61…従動片、61c…指状下端部、63…従動長孔、65…切替え手段、66…主切替えレバー、70…補助切替えレバー、71…係合突起、72…案内突起、73…連係部(連係長孔)、80…支持枠、81…支持枠の開口、82…格子状可動枠体。
図1
図2
図3
図4
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図9
図10
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図16