(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウォーターサーバーの運転中、貯留タンク内の水位は水位センサによって監視されている。ウォーターサーバーの制御部は、その下限検出のセンサ入力によってポンプを始動し、その上限検出のセンサ入力によってポンプを停止するようになっている。貯留タンクの上限検出は、貯留タンクのオーバーフローを防ぐ水位に設定するが、水位センサが何らかの理由で上限水位を正常に検出できなくなると、オーバーフローが起り得る。
【0005】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、ウォーターサーバーの水位センサが上限水位を正常に検出できなくなっても、貯留タンクからのオーバーフローを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するため、筐体に設けられた貯留タンクへ交換式の原水容器の水をポンプで汲み上げる給水路と、前記貯留タンクの水を注ぐための注水路と、前記貯留タンク内の下限検出と上限検出とを行う水位センサと、前記ポンプを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記下限検出のセンサ入力によって前記ポンプを始動し、前記上限検出のセンサ入力によって前記ポンプを停止するウォーターサーバーにおいて、前記制御部は、前記始動からの経過時間を計測し、前記上限検出の水位を超え、かつ前記貯留タンクからオーバーフローする前の所定経過時刻に前記ポンプを停止するようにした。
【0007】
制御部が下限検出のセンサ入力を受けてポンプを始動してから、貯留タンク内が上限検出の水位になるまでに要する時間、及び貯留タンクからオーバーフローするまでに要する時間は、汲み上げ性能に基いて決まり、実験値として求めることができる。ポンプ始動から上限検出の水位になるまでの時間が経過後、ポンプ運転が継続していることは、オーバーフローに至る異常な運転時間となる。したがって、ポンプ始動からの経過時間を計測し、上限検出の水位を超え、かつ貯留タンクからオーバーフローする前の所定経過時刻にポンプを停止する制御部の採用により、水位センサが上限水位を正常に検出できなくなっても、貯留タンクからのオーバーフローを防止することができる。
【0008】
前記水位センサとしてフロートセンサを採用することができる。この発明において、フロートセンサとは、水面の昇降に従って上下するフロート(浮子)により下限検出用スイッチ、上限検出用スイッチを開閉するように設けられた自動スイッチであって、フロートを案内するガイド(例えばステム、揺動アーム)をタンク側に具備するものをいう。諸条件が重なると、フロートの動きが一時的に渋くなったり、止まったりする異常が起り、前記の所定経過時刻でのポンプ停止に至る可能性がある。ただし、この後の水位減少、温度変化等で諸条件が崩れると、フロートセンサが機能回復する場合が起り得る。この場合にまでポンプ運転が不可能なままにロックされると、ウォーターサーバーのユーザにとって不便である。前記制御部が前記ポンプを停止すると、前記水位センサからの入力状態をリセットするようにしておけば、この場合のロックを避けることができる。
【発明の効果】
【0009】
上述のように、この発明は、筐体に設けられた貯留タンクへ交換式の原水容器の水をポンプで汲み上げる給水路と、前記貯留タンクの水を注ぐための注水路と、前記貯留タンク内の下限検出と上限検出とを行う水位センサと、前記ポンプを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記下限検出のセンサ入力によって前記ポンプを始動し、前記上限検出のセンサ入力によって前記ポンプを停止するウォーターサーバーにおいて、前記制御部は、前記始動からの経過時間を計測し、前記上限検出の水位を超え、かつ前記貯留タンクからオーバーフローする前の所定経過時刻に前記ポンプを停止する構成の採用により、水位センサが上限水位を正常に検出できなくなっても、貯留タンクからのオーバーフローを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明に係るウォーターサーバーの一例である実施形態(以下、単に「このウォーターサーバー」と呼ぶ)を添付図面に基づいて説明する。
図2に示すように、このウォーターサーバーは、筐体10の下部に配置される原水容器20と、筐体10に設けられた貯留タンク30へ原水容器20の水をポンプ41で汲み上げる給水路40と、貯留タンク30の水を注ぐための注水路50と、貯留タンク30内の下限検出と上限検出とを行う水位センサ60と、ポンプ41を制御する制御部70とを備えている。
【0012】
原水容器20として、残水量の減少に伴って大気圧で縮み得る側周壁をもった軟質容器が採用されている。
【0013】
筐体10は、縦置き機枠からなる。筐体10の下部には、スライド台11を出し入れする引き出し口が設けられている。筐体10の下部とは、筐体10の地上高における下側をいう。以下、高さの概念は、地上高の意味で用いる。スライド台11は、筐体10の底板上に立てられたガイドレールに沿って水平な直線方向にスライド可能となっている。スライド台11は、上下逆様で載置する原水容器20の栓を上方に押し込む突刺し部12をもっている。突刺し部12は、内部で給水路40の一端部と吸気路80の一端部とに分割されている。図示の突刺し部12は、固定式のものを例示したが、特許文献2のように可動式の突刺し部を採用することもできる。
【0014】
図2、
図3に示すように、貯留タンク30は、貯留水の温度を調整する一時貯留タンクになっている。図示の貯留タンク30は、貯留水を熱交換器31で冷却する冷水タンク32と、貯留水をヒータ33で加熱する温水タンク34と、移流路35とに分けられている。移流路35は、給水路40からの水の下降を邪魔するバッフル36に通されている。給水路40で汲み上げられた原水容器20の水は、冷水タンク32に送られ、冷水タンク32の上部の水が移流路35を介して温水タンク34へ流れるようになっている。
【0015】
貯留タンク30に繋がる注水路50も、冷水タンク32に繋がる冷水系と、温水タンク34に繋がる温水系の独立2系統からなる。注水路50の冷水系又は温水系と貯留タンク30との境界になる弁(図示省略)がユーザの操作によって開くと、冷水系又は温水系から冷水タンク32のバッフル36下の冷水層(図中にドットで現す)又は温水タンク34の上部の水が流出し、この流出した水をカップ等に注ぐことができるようになっている。貯留タンク30は、冷水タンク又は温水タンクの片方のみにすることもできる。
【0016】
給水路40の途中にポンプ41が組み込まれている。ポンプ41には、例えば、プランジャポンプや、ギヤポンプを用いることができる。
【0017】
吸気路80の上行管81の他端は、エアチャンバ90に接続されている。吸気路80の他端部82は、大気に通じているエアチャンバ90の大気取込み口となっている。吸気路80は、原水容器20内と大気との間に亘って常時開通している。なお、吸気路80内とエアチャンバ90内の大気にそれぞれ殺菌性気体を混在させる殺菌装置を備えている。殺菌装置として、例えば、取り込んだ大気中の酸素からオゾンを生成するオゾン発生装置を採用することができる。殺菌装置の稼動制御は、ポンプ41の運転と連動するようになっている。
【0018】
前記貯留タンク30に空気穴37が設けられている。空気穴37は、吸気路80の上行管81及びエアチャンバ90に常時通じている。貯留タンク30内の水位が下ると、貯留タンク30は、大気圧の上行管81、エアチャンバ90から空気穴37を介して殺菌性気体混じりの大気を吸い込み、貯留タンク30内の水位が上がると、貯留タンク30内の空気が空気穴37からエアチャンバ90を通じて大気へ出て行くようになっている。この貯留タンク30から最初に水が溢れるオーバーフローの高さは、空気穴37の越流高さと、給水路40の越流高さのうち、低い方である給水路40の越流高さHとなっている。
【0019】
水位センサ60は、フロートセンサからなる。制御部70は、ポンプ41等を制御するシーケンサからなる。
【0020】
水位センサ60は、貯留タンク30の水面に浮かぶフロート61をもち、フロート61側の永久磁石の磁界によってステム62内のリードスイッチのON/OFFが切り替わるレベルスイッチからなる。給水路40は、冷水タンク32内の上限検出水位WL1より高い位置に、ポンプ41の加圧で汲み上げた水をタンク内へ出す他端部42をもっている。水位センサ60の上限検出スイッチは、越流高さHより低く、かつ給水路40の他端部42より低い水位WL1でフロート61側の永久磁石の磁界によって切り替わる。この切り替わりによって生成された上限検出信号は、
図4に示す制御部70の入力部71に送信される。また、
図3に示す水位センサ60の下限検出スイッチは、バッフル36より高い水位WL2で同様に切り替わり、これによって生成された下限検出信号は、
図4に示す制御部70の入力部71に送信される。
【0021】
図2、
図4に示す制御部70の入力部71は、水位センサ60、操作スイッチ等のセンサからの信号(センサ入力)を演算制御部72に伝える。演算制御部72は、プログラムメモリに記憶されたタイマ、カウンタ等の各種プログラムを実行する。演算制御部72は、プログラム処理により、センサ入力を入力イメージメモリに書き込んだり、生成した出力データを出力ラッチメモリに書き込んだりする。出力部73は、出力ラッチメモリに書き込まれた出力データ、演算制御部72からのデータをポンプ41等の外部機器への信号に変換する。
【0022】
演算制御部72は、水位センサ60の下限検出のセンサ入力によって、ポンプ41を始動し、水位センサ60の上限検出のセンサ入力によって、ポンプ41を停止するプログラム処理と、水位センサ60の下限検出のセンサ入力によるポンプ41の始動からの経過時間を計測するプログラム処理と、所定経過時刻にポンプ41を停止するプログラム処理とを実行するここで、前記の所定経過時刻は、
図3に示す水位WL2から水位WL1になるまでポンプ41で汲み上げるのに要する前記の経過時間の実験値と、水位WL2から水位Hになるまでポンプ41で汲み上げるのに要する前記の経過時間の実験値との時刻差を越えず、下限検出のセンサ入力からポンプ41が汲み上げ能力を喪失するまでに要する遅れ時間を見越して、水位Hに達することがないよう早めに設定された値となっている。この値は、
図2、
図4に示す制御部70のプログラムメモリに条件判別用のデータとして予め登録されている。一般的な貯留タンク30の容量、ポンプ41の汲み上げ能力だと、水位WL1をフロート61が貯留タンク30の天井に支える上死点高さから30mm程度とすれば、前記の所定経過時刻は、水位WL2から水位WL1になるまでポンプ41で汲み上げるのに要する前記の経過時間の実験値に対して、20%程度長い時間に設定することができる。
【0023】
制御部70のポンプ制御に関する具体的な動作を
図1のフローチャートに基いて説明する(適宜、
図2〜
図4を参照すること。)。前提として、演算制御部72は、このウォーターサーバーの電源ONにより、水位センサ60から入力部71を経て伝送される信号を待ち、伝送された信号を入力イメージメモリに書き込む状態になっている(スタート)。この後、演算制御部72は、水位センサ60の下限検出を示すデータが入力イメージメモリに書き込まれているか否かの監視を開始する(ステップS1)。
【0024】
演算制御部72は、前記(ステップS1)で当該書き込みを確認すると、ポンプ41のONデータを生成し、出力部73がポンプ41の制御回路にON信号を送信する。また、演算制御部72は(ステップS1)で当該書き込みを確認すると、経過時間の計測を開始する(ステップS2)。これらにより、制御部70は、ポンプ41を始動すると共に、この始動からの経過時間の計測を開始する。
【0025】
演算制御部72は、(ステップS2)の実行後、水位センサ60の上限検出を示すデータが入力イメージメモリに書き込まれているか否かの監視を開始する(ステップS3)。また、演算制御部72は、(ステップS2)の実行後、前記の経過時間が所定経過時刻に到達したか否かを監視する(ステップS4)。
【0026】
演算制御部72は、(ステップS3)で当該書き込みを確認すると、ポンプ41のOFFデータを生成し、出力部73が当該OFF信号を送信する。これにより、制御部70は、ポンプ41を停止する。また、演算制御部72は、(ステップS3)で当該書き込みを確認すると、前記経過時間の計測を止め、タイマをリセットする(ステップS5)。
【0027】
また、演算制御部72は、(ステップS4)で当該所定経過時刻の到達を確認すると、ポンプ41のOFFデータを生成し、出力部73が当該OFF信号を送信する(ステップS3)。これにより、制御部70は、ポンプ41を停止する。前記の所定経過時刻の設定により、貯留タンク30の上限検出の水位WL1を超え、かつオーバーフロー水位Hとなる前の時期に、ポンプ41が汲み上げ能力を喪失する。したがって、このウォーターサーバーは、水温、タンク内圧、ステム62に付着した水垢等の諸条件が偶然に重なって、フロート61の動きが一時的に渋くなったり、フロート61がステム62に固着したりする異常が起り、水位センサ60が上限水位を正常に検出できなくなっても、貯留タンク30からのオーバーフローを防止することができる。
【0028】
また、演算制御部72は、(ステップS4)で当該書き込みを確認すると、前記経過時間の計測を止め、タイマをリセットする(ステップS5)。
【0029】
演算制御部72は、(ステップS5)の処理を終えると、入力イメージメモリに書き込まれている前記下限検出を示すデータ、及び前記上限検出を示すデータの各格納部をクリアし、(スタート)に復帰する(ステップS6)。これにより、制御部70は、水位センサからの入力状態をリセットする。(ステップS6)の後、貯留タンク30の水が消費され、水面、水温、タンク内圧が変動することにより、前記の諸条件が崩れ、フロート61がステム62に対して正常に動くようになると、水位センサ60の下限検出が可能となる。この場合、制御部70は、新たな下限検出のセンサ入力を入力イメージメモリに書き込むことができるので、ロックを避け、(ステップS1)〜(ステップS5)の処理により、再び、ポンプ41の始動、停止を実行することができる。なお、フロート61の動きが正常に戻らない限り、水位センサ60の下限検出が起こることもないので、上限検出ができない異常な状態のままポンプ41が再び始動される心配はない。
【0030】
(このウォーターサーバーの原水容器20交換後の初期動作)
新品の原水容器20をスライド台11ごと筐体10の定位置に収めた後、ポンプ41の運転ON操作がなされる。制御部70は、前記運転ON操作を示すセンサ入力を確認すると、ポンプ41を始動する。これにより、原水容器20から貯留タンク30へ最初の汲み上げが開始される。原水容器20内の残水量が次第に減少し、大気圧で原水容器20の側周壁が次第に縮むため、原水容器20の高さが次第に低くなって行く。原水容器20が縮んで内部空間が減少する間は、ポンプ41で強引に汲み上げることがない。ポンプ41の運転中は殺菌装置も稼動するため、上行管81内、エアチャンバ90内における殺菌性気体の量が増える。水位センサ60の上限検出のセンサ入力が制御部70に送信されると、前記(ステップS1)で確認した制御部70は、前記ポンプ41の停止関連の処理(ステップS2)〜(ステップS6)の他に、殺菌装置の停止、貯留タンク30の温度調節機能(熱交換器31、ヒータ33)の運転開始を行う。
【0031】
(このウォーターサーバーの貯留タンク30への水補充動作)
前記初期動作の後、注水路50からの注水が繰り返され、水位センサ60の下限検出のセンサ入力が制御部70に送信されるたび、制御部70は、前記(ステップS1)〜(ステップS6)を実行するので、貯留タンク30からのオーバフローを防止することができる。原水容器20の側周壁の縮みが進み、ここの剛性が大気圧に勝って原水容器20の縮みが止まった後は、原水容器20内の残水量が減ることに伴い、原水容器20内の負圧化を解消する方向の釣合い作用が得られる。このため、原水容器20は、吸気路80から大気の自発吸い込みを行うようになる。原水容器20の自吸により、原水容器20の容積が減少せずとも原水容器20内外が大気圧に釣り合うので、ポンプ41による強引な汲み上げが生じない。原水容器20内の水位が給水路40の一端部開口未満になると、原水容器20が使い切られた状態となる。このウォーターサーバーは、使い切り状態を検知するセンサを備え、このセンサ入力が制御部70に送信されることにより、制御部70は、前記(ステップS3)、(ステップS4)の処理を一時中断し、また、ポンプ41を停止し、また、原水容器20の交換を促す報知、例えばランプ点灯を行う。この後、制御部70は、前記(交換初期動作)の運転ON操作を示すセンサ入力を確認すると、前記(ステップS3)、(ステップS4)の処理を再開し、(ステップS4)における経過時間の計測を続行する。
【0032】
このウォーターサーバーは、吸気路80によって原水容器20の自吸を可能として大気圧との差圧によるポンプ41による強引な汲み上げを無くしているが、ポンプ41による強引な汲み上げを完全に無くすことができる訳ではない。すなわち、縮み切った原水容器20が弾性回復しようとする復元力は、ポンプ41の汲み上げに対する抵抗になる。この抵抗は、原水容器20の自吸開始の直前(すなわち原水容器20が縮み切って最小容積になったとき)に最大になり、ポンプ41の始動後、上限検出の水位になるまでに要する時間を増大側へ狂わす原因になる。例えば、ポンプ41の汲み上げ能力が比較的小さい場合、最初の汲み上げ回において定常運転するポンプ41の毎秒当たりの汲み上げ量を100としたとき、原水容器20の自吸開始の直前には、その汲み上げ量が25程度に減少する仕様になり得る。このウォーターサーバーは、前記の抵抗に対して、ポンプ41の汲み上げ能力が十分に大きいため、毎汲み上げ回で同じ前記の所定経過時刻を用いても、オーバーフローを防止することができるようになっている。仮に、ポンプ41の汲み上げ能力が足りず、毎汲み上げ回で同じ所定経過時刻を用いることができない場合、汲み上げ回ごとに前記の各実験値を確認し、汲み上げ回数に応じて適切に設定した複数の所定経過時刻を制御部70に登録しておき、制御部70が最初の汲み上げ回から汲み上げ回数をカウントし、(ステップS4)で条件判別に用いる所定経過時刻を当該カウント値に応じて変更するようにすればよい。
【0033】
この発明の技術的範囲は、上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載に基く技術的思想の範囲内での全ての変更を含むものである。例えば、ポンプ41、水位センサ60といった制御対象について、制御部70に断線等の電気的トラブルを検出する機能を持たせることができる。