(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
スーパーコンピュータなどの大型コンピュータシステムでは、膨大な情報量の信号をコンピュータ間で授受する必要がある。このような大型コンピュータシステムでは、計算処理を複数の装置で分担して行わせるため、コンピュータシステムを構成するコンピュータや周辺機器などの情報処理装置を、コネクタを有するケーブルによって接続する。
【0003】
一般に、コンピュータシステムなどで使用されるコネクタは、情報処理装置を搭載した基板からの信号をまとめるためのヘッドコネクタと、情報処理装置を別のユニットに接続するためのケーブルを有するケーブルコネクタとが対となっている。
【0004】
図7および8に示した特許文献1では、コネクタ装置の一例が開示されている。特許文献1のコネクタ装置80は、ケーブルコネクタ81を保持する操作部材84、85を、両コネクタの嵌合・離脱方向へ移動可能に収容するインナーフレーム82を備えている。インナーフレーム82は、駆動力を伝達する駆動力伝達装置86を有する。また、特許文献1のコネクタ装置80は、インナーフレーム82を、嵌合・離脱方向と直交する方向に沿って移動可能に支持するアウターフレーム83を備えている。ヘッドコネクタ91は、基板93に実装されており、アウターフレーム83を案内する連結部材92によって、ケーブルコネクタ81と嵌合する位置に設置される。
【0005】
アウターフレーム83のガイド溝87が連結部材92に嵌合し始め、インナーフレーム82が初期位置から嵌合完了位置へ移動したとき、操作部材84、85は、ヘッドコネクタ91の方へ案内され、ケーブルコネクタ81とヘッドコネクタ91とが嵌合する。
【0006】
特許文献1のコネクタ装置では、一方のコネクタの嵌合・離脱方向に十分な作業スペースがなくとも、コネクタ同士を高精度に嵌合することができる。
【0007】
一般に、大型コンピュータシステムを構成する装置の筐体は、装置を設置した後にサイズなどを変更することは難しい。また、計算速度を向上させるためには、ユニット間の接続部を増加させることが求められる。すなわち、筐体サイズを変更することなく、信号数の増大に対応しなければならない。そのため、信号数の増加に伴い、ユニットあたりのコネクタ数を増加することが求められている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、一部の図面は、構成要素の位置関係を明確にするため、透過図として示した。
【0016】
(構成)
図1は、本発明の第1の実施形態のコネクタ装置10の正面図である。
図2は、本発明の第1の実施形態のコネクタ装置10の斜視図である。
図1および
図2は、第1の実施形態のコネクタ装置10の駆動機構の構成を説明するための図である。
【0017】
図3は、本発明の第1の実施形態のユニットの正面図および斜視図である。
図3は、第1の実施形態におけるコネクタ装置10のヘッドコネクタ31周辺部の構成を説明するための図である。
【0018】
図4は、本発明の第1の実施形態のインナーフレーム1とアウターフレーム2との位置関係を明確にするための図である。
図4aは、インナーフレーム1が初期位置にある図である。
図4bは、インナーフレーム1が嵌合位置にある図である。また、
図4cは、インナーフレーム1を取り除いた場合のアウターフレーム2の内側面の図である。なお、本実施形態の図においては、インナーフレーム1が嵌合位置にあるように図示しているが、実際の動作においては、嵌合が開始されるまではインナーフレーム1は初期位置に位置している。
【0019】
本発明の第1の実施形態のコネクタ装置10において、第1の駆動機構11と第2の駆動機構12とは、嵌合方向に直行する第1の方向(
図2のDC方向)に沿って、ギャップgずれるようにパネル7に実装される。第1および第2の駆動機構11、12は、同一平面上にあることを想定しているが、同一のコネクタ装置における異なる平面上に実装されてもよい。また、パネル7は、駆動機構を実装さえできれば平面状ではなく曲面状であってもよい。なお、ラックなどに駆動機構を直接実装する場合は、パネル7は必ずしも必須の構成ではない。
【0020】
第1および第2の駆動機構11、12は、それぞれ単体では、特許文献1の駆動機構と同様の構成・動作を示す。これ以降、第1および第2の駆動機構11、12の区別をしない場合は、駆動機構と記載する。また、第1および第2の連結部材21、22についても、区別をしない場合は、連結部材と記載する。なお、第1の実施形態の駆動機構は、必ずしも特許文献1の駆動機構と一致なくてもよく、駆動機構をずらすことによって、嵌合力を分散することができればよい。
【0021】
第1の実施形態のコネクタ装置10の駆動機構は、ケーブルコネクタ5を保持する第1および第2の操作部材3、4を、両コネクタを嵌合・離脱する第2の方向(
図2のDF方向)へ移動可能に収容するインナーフレーム1を備えている。第1および第2の操作部材3、4は、ヘッドコネクタ31とケーブルコネクタ5を嵌合するように、DF方向に移動可能に設置されている。
【0022】
第1の実施形態の駆動機構は、インナーフレーム1に駆動力を伝達する駆動力伝達部6を備えている。また、第1の実施形態の駆動機構は、インナーフレーム1がDC方向に沿って移動できるように支持するアウターフレーム2を備えている。
【0023】
インナーフレーム1に面するアウターフレーム2の内側面には、インナーフレーム1がDC方向に移動することに連動して、操作部材3、4をDF方向に移動させるように、後述するモールドボス41a、41bが案内される内側ガイド溝43a、43bが形成されている(
図4c)。また、アウターフレーム2の外側面には、連結部材のガイド32に案内されるように形成されたガイド溝8が設けられている(
図2)。
【0024】
インナーフレーム1は、アウターフレーム2に移動可能に支持されており、両コネクタを嵌合するまでは、
図4aに示した初期位置に位置する。
【0025】
第1の実施形態においては、第1の操作部材3および第2の操作部材4は、それぞれ8個の同じ部品から構成されている。これらの部品は、それぞれ独立して移動できる。なお、第1の操作部材3、第2の操作部材4は、同じ構造をした操作部材の総称である。
【0026】
第1および第2の操作部材3、4を構成する部品には、それぞれ第1および第2のモールドボス41a、41bが両脇を挟むように付けられている。第1および第2のモールドビス41a、41bは、それぞれアウターフレーム2の第1および第2の内側ガイド溝43a、43bに案内されるように形成された凸部を有する。また、第1および第2の操作部材3、4には、それぞれ第1および第2の端子部42a、42bが設けられている。なお、第1の実施形態においては、それぞれの操作部材が8個からなるように構成しているが、本発明の操作部材の数を8個に限定するというわけではない。
【0027】
第1の実施形態のコネクタ装置10において、ヘッドコネクタ31は、ユニット30の中に収納された情報処理装置の基板35の裏面に設置されている。ヘッドコネクタ31は、アウターフレーム2を案内する連結部材によって、ケーブルコネクタ5と嵌合する位置に設置される。ハンドル36は、ユニット30を抜き差しする際に使用する。
【0028】
連結部材には、インナーフレーム1を案内するように設置されたガイド片33が設けられている。さらに、連結部材には、両コネクタを嵌合する際に、インナーフレーム1の移動を止める押圧片34が設けられている。なお、第1および第2の連結部材21、22の位置は、ずれていてもよく、ずれていなくてもよい。
【0029】
(動作)
図4および
図5を用いて、第1の実施形態のコネクタ装置10において、ケーブルコネクタ5とヘッドコネクタ31が嵌合する動作を説明する。
【0030】
図5に示したように、駆動機構を搭載したパネル7が固定されたラックなどに向けて、ユニット30を移動させることによって、両コネクタを嵌合させる。なお、駆動機構が固定されていない場合は、駆動機構を移動させて両コネクタを嵌合させてもよい。
【0031】
図5(a)のユニット30の窓孔52の位置には、第1および第2の駆動機構11、12と対応するように第1および第2の連結部材21、22が設置されている。第1および第2の駆動機構11、12を、それぞれ第1および第2の連結部材21、22に完全に嵌合させると、両コネクタは嵌合される。両コネクタを離脱するためには、ユニット30を嵌合方向とは反対向きに移動させる。
【0032】
第1の実施形態においては、
図1のように第1および第2の駆動機構11、12をずらして実装している。そのため、まず、第1の駆動機構11が第1の連結部材21に到達し、第1の駆動機構11と第1の連結部材21の嵌合が開始される。その後、第2の駆動機構12が第2の連結部材22に到達し、第2の駆動機構12と第2の連結部材22との嵌合が開始される。
【0033】
この際、第1の駆動機構11と第1の連結部材21の嵌合力のピークと、第2の駆動機構12と第2の連結部材22との嵌合力のピークがずれる。そのため、全体的な嵌合力のピーク値は、両駆動機構と両連結部材の嵌合が同時に起こる場合と比較して小さな値となる。なお、本発明に係る駆動機構のずらし方については、第1の実施形態のようなずらし方に限定されず、2つのコネクタ部分の嵌合力のピークがずれればよい。
【0034】
第1の駆動機構11と第1の連結部材21、第2の駆動機構12と第2の連結部材22のコネクタ部分の嵌合の動作は同様であるため、以下においてまとめて説明する。
【0035】
インナーフレーム1は、駆動力伝達部6が押圧片34に押されることによって、初期位置(
図4(a))から嵌合完了位置(
図4(b))へ移動する。インナーフレーム1が初期位置から嵌合完了位置まで移動する間、第1および第2のモールドビス41a、41bはそれぞれ第1および第2の内側ガイド溝43a、43bに案内されて移動する。第1および第2のモールドビス41a、41bの動きに連動し、第1および第2の操作部材3、4は両コネクタが嵌合する方向へと移動する。ケーブルコネクタ5の第1および第2の端子部42a、42bは、第1および第2の操作部材3、4と連結されているため、ヘッドコネクタ31の端子部と接続され、コネクタの嵌合が完了する。
【0036】
前段落の動作において、両コネクタ部分の端子部は、一度に嵌合されるわけではなく、順次嵌合されていく。すなわち、
図4においては、第2の操作部材4の端子部が順次嵌合されていき、第1の操作部材3の端子部が順次嵌合されていく。
【0037】
第1の実施形態のコネクタ装置10では、2つの駆動機構11、12が、DC方向にギャップgずれている。そのため、第1の駆動機構11が第1の連結部材21と嵌合し始める時期と、第2の駆動機構12が第2の連結部材22と嵌合し始める時期にずれが生じる。そのため、本実施形態の駆動機構では、全体的な嵌合力のピークが分散される。そのため、ギャップを設けない場合の嵌合力のピークと比較して、本実施形態の嵌合力のピークはより小さな値となる。
【0038】
実際に、本実施形態のようにギャップgを設けた場合と、ギャップを設けない場合とを比較検証したところ、本実施形態の嵌合力のピークは30%程度低減できることを確認できた。
【0039】
また、コネクタの嵌合と同様に、コネクタを離脱する際にも離脱力を分散させることができる。ただし、嵌合時と離脱時における力の分散の程度は、駆動機構の設計によって影響を受ける。そのため、同一の駆動機構を用いても、必ずしも嵌合時と離脱時とで同様の効果が得られるわけではない。
【0040】
このように、第1の駆動機構11と第2の駆動機構12の実装位置をDC方向にずらす事により、第1の駆動機構11の嵌合力・離脱力のピークが、第2の駆動機構12の嵌合力・離脱力のピークと重ならない様にすることができる。
【0041】
すなわち、本実施形態のコネクタ装置によれば、一つのユニットに対して2つの駆動機構を設ける際に、嵌合力のピークを低減することができる。
【0042】
スーパーコンピュータなどの大型コンピュータシステムにおいては、多くのユニットを短時間で交換するような場面も想定される。本実施形態のコネクタ装置によれば、嵌合力を低減できるために、ユニット交換の作業性を向上することができる。
【0043】
また、一つのユニットに対して2つのコネクタ装置を設けることができると、異なるユニット間で一度に授受できる信号量が増大する。そのため、情報処理速度を向上させることができる。
【0044】
実際のケーブルコネクタ5には、
図4に示したようにケーブル51が接続されている。スーパーコンピュータでは、膨大な信号処理を行うため、ケーブル51自体の重みも無視できず、コネクタ部分に応力をかけることになる。その結果、コネクタ部がケーブル51の自重によって歪むため、コネクタのかみ合わせが悪くなり、コネクタの嵌合力が大きくなることが予想される。
【0045】
本実施形態のコネクタ装置では、ケーブルの自重によって嵌合力が大きくなった場合であっても、嵌合力を分散させることができるため、実装位置をずらさない場合と比べるとコネクタ部分の嵌合・離脱を円滑に行うことができる。
【0046】
また、2つの駆動機構の嵌合力を低減させる方法は他にも考えうるが、そのためには駆動機構ごとに異なる金型を作製するなどのコストが発生する。本発明の第1の実施形態によれば、2つの駆動機構として同一のものを用いることができる。そのため、駆動機構の製造コストを増大させることなく、コネクタの端子数を増大させることが可能となる。
【0047】
(第2の実施形態)
図6には、第2の実施形態を示した。第2の実施形態は、2つのコネクタ装置61、62をラック65に搭載し、第1のユニット63と第2のユニット64を収容できるラックシステム60に関する。
【0048】
第2の実施形態のラックシステム60には、2つコネクタ装置(第1および第2のコネクタ装置61、62)が搭載されている。なお、第2の実施形態のラックシステム60に設置された第1および第2のコネクタ装置61、62は、第1の実施形態のコネクタ装置10と同様である。
【0049】
また、第2の実施形態のラックシステム60には、第1および第2のユニット63、64を支える役割をする棚板66が設置されている。なお、棚板66に関しては、ラック65の内側にコネクタ装置を支えるようなガイド機構さえあれば省略可能である。
【0050】
第1のユニット63と第2のユニット64は、それぞれ2つのヘッドコネクタを有し、それぞれ第1および第2のコネクタ装置61、62の駆動機構と嵌合可能に構成されている。第1および第2のユニット63、64を出し入れすることによって、コネクタを嵌合することができる。
【0051】
本実施形態によれば、2つのコネクタ装置を備えたラックシステムを構成することが可能となる。また、本実施形態によれば、ラックに3つ以上の複数のコネクタ装置を備えさせることも可能である。さらに、本実施形態のラックシステムを複数設けることにより、入れ替えたい情報処理装置を迅速に交換することができ、作業性に優れたコンピュータシステムを構築することが可能である。
【0052】
(第3の実施形態)
図7には、第3の実施形態を示した。第3の実施形態は、3つの駆動機構が搭載されたコネクタ装置70に関する。
【0053】
第3の実施形態のコネクタ装置70は、3つの駆動機構が備えられている。第1の実施形態の駆動機構と同様に、3つの駆動機構の実装位置はそれぞれずらしてある。そのため、3つのコネクタ部が嵌合する際の嵌合力のピークを分散させることができる。その結果、総合的な嵌合力のピークが小さくなるため、コネクタ装置70に向けてラック装置71を移動させることによって、コネクタを嵌合することができる。
【0054】
本実施形態によれば、3つの駆動機構を備えたコネクタ装置を構成することが可能となる。また、本実施形態によれば、4つ以上の複数の駆動機構を備えさせることも可能である。
【0055】
以上のように、本発明の実施形態によれば、複数の駆動機構を設けた場合の嵌合力を低減できるため、一つのユニットに対して複数の駆動機構を設けたコネクタ装置を提供することができる。
【0056】
また、本発明の実施形態のコネクタ装置は、ケーブルコネクタとヘッドコネクタからなるコネクタに関して記載したが、複数のコネクタ部を有するコネクタであれば、本発明の実施形態を同様の構成と効果を得ることができる。そのため、本発明は本実施形態によって限定されるものではない。