特許第5926118号(P5926118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5926118バーナ、燃焼器、ガスタービン設備及び燃焼器の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926118
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】バーナ、燃焼器、ガスタービン設備及び燃焼器の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/28 20060101AFI20160516BHJP
   F23R 3/34 20060101ALI20160516BHJP
   F02C 7/22 20060101ALI20160516BHJP
   F02C 7/228 20060101ALI20160516BHJP
   F02C 9/34 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   F23R3/28 B
   F23R3/28 D
   F23R3/34
   F02C7/22 C
   F02C7/228
   F02C9/34
【請求項の数】15
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-116839(P2012-116839)
(22)【出願日】2012年5月22日
(65)【公開番号】特開2013-242114(P2013-242114A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】三浦 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】小金沢 知己
(72)【発明者】
【氏名】阿部 一幾
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 武雄
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−256003(JP,A)
【文献】 特開2012−037104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/22
F23R 3/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心円状の複数の空気孔列を有する空気孔プレートと、
前記空気孔プレートの対応する空気孔に向かってそれぞれ燃料を噴射する複数の燃料ノズルとを備え、
前記複数の空気孔列の全ての列において、周方向に隣接する空気孔間の距離が、同一の燃焼器に設けた複数の他のバーナの少なくとも一つへの燃料供給が遮断される運転条件下の火炎の消炎距離よりも長く設定されている
ことを特徴とするバーナ。
【請求項2】
全ての内側の空気孔列における前記空気孔間の距離が、同一の燃焼器に設けたバーナの全てに燃料が供給される運転条件下の前記消炎距離よりも短く設定されていることを特徴とする請求項1のバーナ。
【請求項3】
少なくとも最も外側の空気孔列における前記空気孔間の距離が、同一の燃焼器に設けたバーナの全てに燃料が供給される運転条件下の前記消炎距離よりも短く設定されていることを特徴とする請求項1のバーナ。
【請求項4】
も外側の空気孔列における空気孔間距離よりも最も内側の空気孔列における前記空気孔間距離が大きくしてあることを特徴とする請求項2又は3のバーナ。
【請求項5】
空気孔プレートに同心円状の複数の空気孔列、及び前記空気孔列の対応する空気孔に向かってそれぞれ燃料を噴射する複数の燃料ノズルをそれぞれ備えた複数のバーナと、
前記複数のバーナのうち少なくとも中央に配置したバーナを対象として、前記空気孔を介して燃焼室に噴出する予混合気の燃空比を調節して火炎の消炎距離を変化させ、当該バーナの少なくとも最も外側の空気孔列における周方向に隣接する空気孔間の距離と前記消炎距離との大小関係を変化させることで火炎形状を制御する制御装置と
を備えたことを特徴とする燃焼器。
【請求項6】
前記制御装置は、前記燃料ノズルへの燃料供給量を制御して燃空比を調節することを特徴とする請求項5の燃焼器。
【請求項7】
前記制御装置は、前記火炎形状制御の対象とするバーナ以外のバーナの少なくとも一つへの燃料供給を遮断する運転条件下では、当該対象バーナの全ての空気孔列における前記空気孔間の距離よりも前記消炎距離を短くし、全てのバーナに燃料を供給する運転条件下では、当該対象バーナの全ての空気孔列における前記空気孔間の距離よりも前記消炎距離を長くすることを特徴とする請求項5の燃焼器。
【請求項8】
前記火炎形状の制御対象となるバーナにおいては、最も外側の空気孔列における前記空気孔間距離よりも最も内側の空気孔列における前記空気孔間距離が大きくしてあり、
前記制御装置は、全てのバーナに燃料を供給する運転条件下では、当該対象バーナの前記最も内側の空気孔列の空気孔間距離よりもく前記最も外側の空気孔列の空気孔間距離よりもくなるように前記消炎距離を調節し、前記火炎形状制御の対象とするバーナ以外のバーナの少なくとも一つへの燃料供給を遮断する運転条件下では、当該対象バーナの全ての空気孔列における前記空気孔間の距離よりも前記消炎距離をくすることを特徴とする請求項5の燃焼器。
【請求項9】
前記火炎形状制御の対象とするバーナは、前記燃焼器の中央に配置したバーナであって、前記火炎形状制御の対象とするバーナ以外のバーナの少なくとも一つへの燃料供給を遮断する運転条件が、起動時の運転条件であることを特徴とする請求項7又は8の燃焼器。
【請求項10】
前記複数のバーナのうちの前記燃焼器の中央よりも外側に配置したバーナであって、前記火炎形状制御の対象とするバーナ以外のバーナの少なくとも一つへの燃料供給を遮断する運転条件が、部分負荷の運転条件であることを特徴とする請求項7又は8の燃焼器。
【請求項11】
前記火炎形状制御の対象とするバーナにおける内側の空気孔列に燃料を供給する一の燃料系統と、
前記火炎形状制御の対象とするバーナにおける外側の空気孔列に燃料を供給する他の燃料系統と
を備えていることを特徴とする請求項7又は8の燃焼器。
【請求項12】
圧縮機と、
この圧縮機で圧縮された空気とともに燃料を燃焼する請求項5の燃焼器と、
この燃焼器で発生した燃焼ガスで駆動するタービンと、
このガスタービンの回転動力で駆動する負荷機器と
を備えたことを特徴とするガスタービン設備。
【請求項13】
空気孔プレートに同心円状の複数の空気孔列、及び前記空気孔列の対応する空気孔に向かってそれぞれ燃料を噴射する複数の燃料ノズルをそれぞれ備えた複数のバーナを備えた燃焼器の制御方法であって、
前記複数のバーナのうち少なくとも中央に配置したバーナを対象として、前記空気孔を介して燃焼室に噴出する予混合気の燃空比を調節して火炎の消炎距離を変化させ、当該バーナの少なくとも最も外側の空気孔列における周方向に隣接する空気孔間の距離と前記消炎距離との大小関係を変化させることで火炎形状を制御する
ことを特徴とする燃焼器の制御方法。
【請求項14】
前記火炎形状制御の対象とするバーナ以外のバーナの少なくとも一つへの燃料供給を遮断する運転条件下では、当該対象バーナの全ての空気孔列における前記空気孔間の距離よりも前記消炎距離を短くし、
全てのバーナに燃料を供給する運転条件下では、当該対象バーナの全ての空気孔列における前記空気孔間の距離よりも前記消炎距離を長くする
ことを特徴とする請求項13の燃焼器の制御方法。
【請求項15】
全てのバーナに燃料を供給する運転条件下では、当該対象バーナの最も内側の空気孔列の空気孔間距離よりく最も外側の空気孔列の空気孔間距離よりくなるように前記消炎距離を調節し、
前記火炎形状制御の対象とするバーナ以外のバーナの少なくとも一つへの燃料供給を遮断する運転条件下では、当該対象バーナの全ての空気孔列における前記空気孔間の距離よりも前記消炎距離をくする
ことを特徴とする請求項13の燃焼器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナ、燃焼器、ガスタービン設備及び燃焼器の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境保護の観点からガスタービンにはさらなる低NOx化が求められている。燃焼器を低NOx化するための一方策として予混合燃焼方式の採用が挙げられるが、予混合燃焼器では火炎が逆流して予混合器内部に入り込む逆火現象が懸念される。
【0003】
それに対し、空気孔プレートに設けた多数の空気孔にそれぞれ対向するように多数の燃料ノズルを配置し、各燃料ノズルから対応する空気孔に向けて燃料を噴射する構成の燃焼器がある(特許文献1等参照)。この種の燃焼器では、空気孔を通過する際に空気と燃料とが混合されて燃焼室に噴出し、耐逆火性と低NOx燃焼の両立ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−148734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスタービンは、着火から定格負荷に移行するまでの幅広い運転条件で安定に稼働させる必要がある。そのため、燃焼器には、複数のバーナを設けたマルチバーナ方式が広く採用されている。マルチバーナ方式の燃焼器では、例えば燃料供給量が少ない着火時には中央に配置した1つのバーナのみから燃料を噴射し、燃料供給量が増す定格負荷運転時には全てのバーナから燃料を供給するといった運用ができる。
【0006】
ここで、例えば各バーナにおいて内側の空気孔を起点に形成される火炎と外側の空気孔との距離が確保できた方が、外側の空気孔から噴出した予混合気が火炎と反応して燃焼するまでに更に空気と混合される。そのため、低NOx燃焼の観点では、バーナにより形成される火炎は円錐状である方が有利である。
【0007】
しかしながら、着火時等のように中央のバーナのみに燃料を供給する場合、外側のバーナからは空気のみが噴出する。この場合、中央のバーナで円錐状の火炎を形成すると、この中央のバーナにおける外側の空気孔から噴出する予混合気には、火炎と反応する前に、外側のバーナから噴出した空気が干渉し得る。その結果、外側の空気孔から噴出する予混合気の燃空比が低下し、未燃分の排出量が増加し得る。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、未燃分の排出量を抑制しつつ低NOx燃焼を実現することができるバーナ、燃焼器、ガスタービン及び燃焼器の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、同心円状の複数の空気孔列を有する空気孔プレート、及び上記空気孔プレートの対応する空気孔に向かってそれぞれ燃料を噴射する複数の燃料ノズルを備えたバーナにおいて、全空気孔列における周方向に隣接する空気孔間の距離を、同一の燃焼器に設けた複数の他のバーナの少なくとも一つへの燃料供給が遮断される運転条件下の火炎の消炎距離よりも長く設定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、未燃分の排出量を抑制しつつ低NOx燃焼を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1に係るガスタービン設備の概略構成を示す系統図である。
図2】本発明の実施例1に係る燃焼器に備えられたマルチバーナの構造を表す断面図を燃料系統及び制御装置とともに表した図であって、中央バーナを単独で燃焼させている状態を表す図である。
図3】本発明の実施例1に係る燃焼器に備えられたマルチバーナの空気孔プレートを燃焼室側から見た正面図である。
図4】本発明の実施例1に係る燃焼器に備えられた外側バーナの断面図である。
図5】本発明の実施例1に係る燃焼器に備えられた外側バーナを燃焼室側から見た正面図である。
図6】メタンの当量比に対する消炎距離の関係を示す図である。
図7】本発明の実施例1に係る燃焼器に備えられた外側バーナの1列目の空気孔列のバーナ中心軸側から見た断面の展開図である。
図8】本発明の実施例1に係る燃焼器に備えられた中央バーナの断面図である。
図9】本発明の実施例1に係る燃焼器に備えられた中央バーナを燃焼室側から見た正面図である。
図10】本発明の実施例1に係る燃焼器に備えられた中央バーナの1列目の空気孔列のバーナ中心軸側から見た断面の展開図である。
図11】本発明の実施例1に係る燃焼器に備えられた制御装置による起動から定格運転に移行する際の火炎形状の制御手順を表すフローチャートである。
図12】本発明の実施例1に係る燃焼器に備えられたマルチバーナの構造を表す断面図を燃料系統及び制御装置とともに表した図であって、全バーナで燃焼させている状態を表す図である。
図13】本発明の実施例2に係る燃焼器に備えられたマルチバーナの空気孔プレートを燃焼室側から見た正面図であって実施例1の図3に対応する図である。
図14】本発明の実施例2に係る燃焼器に備えられたマルチバーナの部分負荷運転時の燃料供給対象を模式的に表した図である。
図15】本発明の実施例2に係る燃焼器に備えられた制御装置による起動から定格運転に移行する際の火炎形状の制御手順を表すフローチャートである。
図16】本発明の実施例3に係る燃焼器に備えられた中央バーナを燃焼室側から見た正面図であって実施例1の図9に対応する図である。
図17】本発明の実施例4に係る燃焼器に備えられた中央バーナの断面図であって実施例1の図8に対応する図である。
図18】本発明の実施例4に係る燃焼器に備えられた制御装置による起動から定格運転に移行する際の中央バーナへの燃料供給量の制御手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
1.バーナ
(1)本実施の形態のバーナは、複数の空気孔列を有する空気孔プレートと複数の燃料ノズルとを備えている。空気孔プレートは平板状の部材であり、燃焼室における燃焼ガスの流れ方向の上流側端部に蓋をするようにして配置されている。各空気孔列は空気孔プレートに環状に穿設した複数の空気孔からなるものであり、これら空気孔列は同心円状に設けられている。各空気孔列の空気孔は、バーナ中心軸線に対してバーナの周方向の一方側に傾斜しており、各空気孔列から噴出する空気噴流には旋回成分が付与され、燃焼室内でバーナの径方向に拡大する流れを形成する。燃料ノズルは、空気孔プレートを挟んで燃焼室と反対側において空気孔プレートに噴射孔を向けて配置されている。各燃料ノズルは、一対一の関係で対応する空気孔に向かってそれぞれ燃料を噴射する。燃料ノズルから噴射された燃料は、周囲の燃焼用空気に包囲されて空気孔に流入し、空気孔を通過する際の流路の急激な縮小及び拡大によって燃焼用空気と混合されて予混合気として燃焼室内に噴出する。空気孔は一般的な予混合気器に比べて口径が極めて小さく、流通する予混合気の流速が速いので、燃焼室で保持される火炎が空気孔を逆流することは困難であり、逆火現象は抑制される。
【0014】
上記バーナは同一の燃焼器に対して複数設けられていて、例えば燃焼室側から見て中央に配置した中央バーナ、及び中央バーナの周囲に設けた複数の外側バーナが備えられる。本実施の形態の特徴は、これら複数のバーナのうちの少なくとも中央バーナに適用される。具体的には、中央バーナのみに、又は中央バーナに加えて一部の外側バーナに本実施の形態の特徴が適用される。以下、同一の燃焼器のうちの本実施の形態の特徴を適用するバーナ(後述する火炎形状制御の対象とするバーナ)を「対象バーナ」、特徴が適用されないバーナ(対象バーナ以外のバーナ)を「非対象バーナ」という。
【0015】
(2)本実施の形態のバーナの最も大きな特徴は、対象バーナについて、空気孔プレートに設けた空気孔列における周方向に隣接する空気孔間の最短距離(以下「空気孔間距離d」)が、火炎の消炎距離(以下「消炎距離D」)を考慮して設定してある点である。具体的には、対象バーナの全ての空気孔列の空気孔間距離dが、一部のバーナに燃料を供給する運転条件下で形成される火炎の消炎距離Dよりも長く設定されている。ここでいう「一部のバーナに燃料を供給する運転条件」とは同一の燃焼器に設けた複数の他のバーナの少なくとも一つ(非対称バーナの少なくとも一つ)への燃料供給が遮断される運転条件のことである。具体的には、中央バーナのみを対象バーナとする場合には、例えば非対象バーナ(全ての外側バーナ)に燃料を供給しない(中央バーナのみに燃料を供給する)起動時の運転条件が該当する。また、中央バーナの他に一部の外側バーナも対象バーナに含まれる場合には、例えば非対象バーナ(対象バーナ以外の外側バーナ)に燃料を供給しない(中央バーナと一部の外側バーナのみに燃料を供給する)部分負荷の運転条件が該当する。
【0016】
ここで、「消炎距離」とは、例えば対向する2枚の板の間隔を狭めていくと当該2枚の板の間を火炎が伝播できなくなる場合に、火炎が伝播できなくなる2枚の板の間の距離の限界値をいう。一例として図6にメタンの当量比に対する消炎距離の関係を示す。メタンの場合には当量比0.9−1の間で消炎距離は最小値をとり、そこから当量比の値が離れていくにつれて消炎距離が長くなっていくことが一般的に知られている。従って、空気孔から燃焼室に噴出する予混合気の燃空比によって消炎距離Dは変動する。そして、燃焼室において各空気孔列から噴出する予混合気をバーナ中心軸側から見たとき、周方向に隣接する2つの予混合気の噴流は、消炎距離の上記の定義に当てはめれば「2枚の板」に該当する。これら2つの噴流は燃焼室に噴き出すと拡散するため、空気孔プレートから離れると合流するが、空気孔プレートの近傍においては空気孔プレートと2つの噴流とで確定される三角形状の空間が生じる。この三角形状の空間の幅(空気孔プレートの表面に沿ってバーナ周方向に採った幅)の最大値は空気孔間距離dである。空気孔列の内側の領域を基点として保持される火炎が、空気孔列を超えて空気孔列の外側に伝播するには、この空間を伝播しなければならない。言い換えれば、消炎距離Dが空気孔距離dよりも長ければ、空気孔列の内側から外側への火炎の伝播は抑止され、消炎距離Dが空気孔距離dよりも短ければ、空気孔列の内側から外側への火炎が伝播する。すなわち、前述した通り対象バーナについては、一部のバーナに燃料を供給する運転条件下では、全ての空気孔列の空気孔間距離dが火炎の消炎距離Dよりも長く設定されているため、最も内側の空気孔列の内側の領域を基点に形成される火炎が全ての空気孔列を超えて外側に伝播し、火炎の基部は最も外側の空気孔列の外側の領域まで拡大する。
【0017】
ここで、燃料の供給されない非対称バーナの空気孔からは燃焼用空気のみが燃焼室に噴出するが、非対象バーナから噴出した燃焼用空気は下流に向かって広がるため、隣接する対象バーナの最も外側の空気孔列から噴出した予混合気に干渉し得る。仮に対象バーナから噴出する燃焼前の予混合気に燃焼用空気が干渉すれば、対象バーナの燃空比が低下して未燃分の排出量が増加し得る。しかし、前述した通り対象バーナの形成する火炎は、一部のバーナに燃料を供給する条件下では、最も外側の空気孔列よりも外側にまで基部を広げる。そのため、対象バーナの全ての空気孔列から噴出する予混合気は燃焼室に噴出してから空気孔プレートの近傍で燃焼反応を開始し、燃焼前に非対象バーナからの燃焼用空気と干渉することによって燃空比が低下することは抑制される。よって、予混合気の燃焼によりNOxの抑制を実現しつつ、一部のバーナに燃料を供給する運転条件下で懸念される未燃分の排出量の増加を抑制することができる。
【0018】
(3)また、上記に加えて次のように空気孔間距離dを設定することで、更なるNOx抑制の効果が得られる。具体的には、一部のバーナに燃料を供給する運転条件下では上記のように対象バーナにおいて最も外側の空気孔列よりも外側に火炎の基部が広がるようにする一方で、非対象バーナを含めた全てのバーナに燃料を供給する定格負荷時の運転条件下では、少なくとも最も外側の空気孔列よりも内側の領域まで火炎の基部が縮小するようにする。この場合には、全てのバーナに燃料を供給する運転条件下では、少なくとも最も外側の空気孔列から噴出した予混合気については、燃焼室に噴出してから火炎と反応によって燃焼を開始するまでに燃焼室中を一定の距離進行するため、その間に空気との更なる混合が促進されてNOx発生量が抑えられる。
【0019】
(i)全てのバーナに燃料が供給される運転条件下において少なくとも最も外側の空気孔列よりも内側の領域まで火炎の基部を縮小させる構成としては、対象バーナの全ての空気孔列における空気孔間距離dを、全てのバーナに燃料が供給される運転条件下の消炎距離Dよりも短く設定する構成が例示できる。この場合には、全てのバーナに燃料が供給される運転条件下では、対象バーナの最も内側の空気孔列よりも内側の領域を基点とする円錐状の火炎が形成される。したがって、最も外側の空気孔列から噴出する予混合気のみならず、各空気孔列から噴出する燃焼前の予混合気と空気との更なる混合の機会が積極的に与えられる。火炎は円錐状であるため、火炎に到達するまでの空気との混合距離は外側の空気孔列から噴出する予混合気ほど長い。なお、全空気孔列における空気孔間距離dを全バーナに燃料を供給する運転条件下の消炎距離Lよりも短くする上では、例えば各空気孔列における空気孔間距離dが、同一であっても良いし適宜異なっていても良い。内側の空気孔列の空気孔間距離dが、外側の空気孔列の空気孔間距離dよりも長い又は短い構成であっても良い。
【0020】
(ii)また、別の例としては、例えば複数の空気孔列を内側の空気孔列と外側の空気孔列に分け、内側の空気孔列における空気孔間距離dを外側の空気孔列の空気孔間距離dよりも大きくし、内側の空気孔列の空気孔間距離dについては、全運転条件下で消炎距離Dよりも大きく、外側の空気孔列の空気孔間距離dについては、一部のバーナのみに燃料を供給する運転条件下の消炎距離Dよりは長く、かつ全バーナに燃料を供給する運転条件下の消炎距離Dよりは短い値に設定する構成が挙げられる。この場合、全てのバーナに燃料を供給する運転条件下では、対象バーナの外側の空気孔列よりも内側の領域を基点とする円錐状の火炎が形成される。したがって、少なくとも外側の空気孔列から噴出する予混合気には空気との更なる混合促進の機会が積極的に与えられる。なお、「内側の空気孔列」とは、最も内側の空気孔列を含む少なくとも1つの空気孔列をいい、「外側の空気孔列」とは、最も外側の空気孔列を含む少なくとも1つの空気孔列であって、内側の空気孔列の外側に位置する空気孔列をいう。内側の空気孔列が複数ある場合には、それらの空気孔間距離dが一致していても良いし異なっていても良い。
【0021】
2.燃焼器・制御方法
(1)本実施の形態の燃焼器は、複数のバーナ、複数の燃料系統、及び制御装置を備えている。複数のバーナは前述した対象バーナ及び非対象バーナを含む。複数の燃料系統は、対象バーナに燃料を供給する燃料系統、及び非対象バーナに燃料を供給する燃料系統を含む。対象バーナに中央バーナと外側バーナが含まれる場合には、対象バーナに燃料を供給する燃料系統は、中央バーナに燃料を供給する燃料系統、及び対象バーナのうちの外側バーナに燃料を供給する燃料系統にさらに分かれる。もっとも、対象バーナが中央バーナのみの場合であっても、非対象バーナである複数の外側バーナを複数の群に分けて、各群に燃料を供給する燃料系統を複数に分けることもある。
【0022】
(2)制御装置は、複数の燃料系統を制御するものであり、複数のバーナのうち少なくとも中央バーナを含む対象バーナの空気孔を介して燃焼室に噴出する予混合気の燃空比を調節して火炎の消炎距離Dを変化させ、当該バーナの少なくとも最も外側の空気孔列における周方向に隣接する空気孔間距離dと消炎距離Dとの大小関係を変化させることで火炎形状を制御する。制御装置による燃空比の調節と前述した対象バーナの空気孔間距離dの設定とは表裏の関係にあり、運転条件によって消炎距離Dと空気孔間距離dの大小関係を変化させるには、制御装置による燃空比の調節の結果、運転条件によって変わる消炎距離Dの変動幅の範囲内に空気孔間距離dが設定されている必要がある。言い換えれば、そのような観点で空気孔間距離dが設定されていれば、起動から定格負荷までの各々の運転条件によって、特定の空気孔列の空気孔間距離dに対して消炎距離Dを小さくしたり大きくしたりすることが可能となる。
【0023】
(3)前述したように、一部のバーナに燃料を供給する運転条件下の消炎距離Dよりも対象バーナの空気孔間距離dは長く設定されている。言い換えれば、定格負荷又はそれに準ずる負荷帯に到達するまでの間、消炎距離Dが対象バーナの空気孔間距離dを超えないように燃空比を調節することができるようになっている。この構成下において、制御装置は、一部のバーナに燃料を供給する運転条件下では対象バーナで形成する火炎の消炎距離Dを空気孔間距離dよりも短くなるように調節する。一部のバーナに燃料を供給する運転条件下では、定格運転時に比べて燃焼器に供給する燃料流量の総量は少ないが、非対象バーナの少なくとも一部への燃料の供給を遮断することによって対象バーナにおける予混合気の燃空比を局所的に上昇させることができる。具体的には、制御装置は、一部のバーナに燃料を供給する運転条件下で、対象バーナによる予混合気の燃空比が、消炎距離Dが空気孔間距離dより短くなる範囲で燃料の供給量を制御する。図6のメタンの例に当てはめると、仮に空気孔間距離dを0.4cmに設定したとして、空気孔間距離dよりも消炎距離Dを短くしようとすれば、例えば当量比が0.7−1.1となる範囲で対象バーナへの燃料供給量を制御すれば良い。
【0024】
(4)また、対象バーナの少なくとも最も外側の空気孔列の空気孔間距離dは、全てのバーナに燃料を供給する運転条件下の消炎距離Dよりも短く設定されている。言い換えれば、定格負荷又はそれに準ずる負荷帯に到達した後は、消炎距離Dが対象バーナの空気孔間距離dを超えるように燃空比を調節することができるようになっている。この構成下において、制御装置は、全てのバーナに燃料を供給する運転条件下では対象バーナで形成する火炎の消炎距離Dを少なくとも最も外側の空気孔列の空気孔間距離dよりも短くなるように調節する。全てのバーナに燃料を供給する運転条件下では、起動時や部分負荷運転時に比べて燃焼器に供給する燃料流量の総量は多いが、全てのバーナに燃料を分配することによって、対象バーナにおいては、一部のバーナに燃料を供給する場合に比べて予混合気の燃空比は低下する。具体的には、制御装置は、全てのバーナに燃料を供給する運転条件下で、対象バーナによる予混合気の燃空比が、少なくとも最も外側の空気孔列の空気孔間距離dより消炎距離Dが短くなる範囲で燃料の供給量を制御する。図6のメタンの例に当てはめると、仮に最も外側の空気孔列の空気孔間距離dが0.4cmであるとして、空気孔間距離dよりも消炎距離Dを長くしようとすれば、例えば当量比が0.6以下となる範囲で対象バーナへの燃料供給量を制御すれば良い。場合によっては、例えば当量比が1.2以上となる範囲で対象バーナへの燃料供給量を制御することも考えられる。
【0025】
バーナの構成で説明したように、対象バーナの少なくとも最も外側の空気孔列の空気孔間距離dが消炎距離Dよりも短くなる事象には、対象バーナの全空気孔列の空気孔間距離dが消炎距離Dよりも短い状態、及び消炎距離Dが「内側の空気孔列」の空気孔間距離dよりは短いが「外側の空気孔列」の空気孔間距離dよりは長い状態が含まれる。従って、全てのバーナに燃料を供給する運転条件下で少なくとも最も外側の空気孔列から噴出する予混合気が燃焼前に空気とより混合する機会を積極的に獲得するための制御態様には、全バーナに燃料を供給する運転条件下で対象バーナの全空気孔列の空気孔間距離dが消炎距離Dよりも短くなるように燃空比を調節する制御態様、及び同条件下で消炎距離Dが「内側の空気孔列」の空気孔間距離dよりは短いが「外側の空気孔列」の空気孔間距離dよりは長くなるように燃空比を調節する制御態様が含まれる。消炎距離Dが「内側の空気孔列」の空気孔間距離dより短く「外側の空気孔列」の空気孔間距離dより長くなるようにするには、「外側の空気孔列」における空気孔間距離dよりも「内側の空気孔列」における空気孔間距離dが大きくしてあれば良い。この場合、少なくとも、最も外側の空気孔列における空気孔間距離dよりも最も内側の空気孔列における空気孔間距離dが大きくなる。
【0026】
(5)なお、燃空比の調節は、空気流量に対する燃料流量の調節に限らず、燃料流量に対して空気流量を調節することでも実現し得る。例えば圧縮機から燃焼器のバーナまでの空気流路に抽気流路を接続しておき、この抽気流路に設けた制御弁を制御装置で制御することによって、バーナに供給される空気流量を制御することも考えられる。
【0027】
(6)また、全バーナに燃料を供給する運転条件下で、対象バーナの「内側の空気孔列」と「外側の空気孔列」との間に火炎の基部の外縁が来るようにする場合、上記の例では「内側の空気孔列」と「外側の空気孔列」とで空気孔間距離dに差を付ける構成を採ったが、これに限られない。具体的には、対象バーナに複数の燃料系統を接続し、空気孔列によって噴出する予混合気による火炎の消炎距離Dに差を付けることでも実現可能である。例えば「内側の空気孔列」に燃料を供給する一の燃料系統、及び「外側の空気孔列」に燃料を供給する他の燃料系統を設ける。そして、一部のバーナにのみ燃料を供給する運転条件下では「内側の空気孔列」と「外側の空気孔列」の双方において空気孔列dよりも消炎距離Dが短くなるように、両燃料系統の開度を調節して「内側の空気孔列」と「外側の空気孔列」とで空気孔1つ当たりの燃料噴射量を同程度に調節する。他方、全バーナに燃料を供給する運転条件下では「内側の空気孔列」では空気孔列dよりも消炎距離Dが短く「外側の空気孔列」では空気孔列dよりも消炎距離Dが長くなるように、例えば両燃料系統の開度を調節して「内側の空気孔列」に比べて「外側の空気孔列」の空気孔1つ当たりの燃料噴射量を少なくする。
【0028】
3.ガスタービン設備
本実施の形態におけるガスタービン設備は、ガスタービンとその負荷機器を備えている。負荷機器は、代表的には発電機である。ガスタービンは、上記燃焼室の他、圧縮機及びタービンを備えている。圧縮機は大気を吸い込んで圧縮するものである。燃焼器は、この圧縮機で圧縮された燃焼用空気とともに燃料を燃焼する。タービンは燃焼器で発生した燃焼ガスで駆動する。タービンの回転動力は、一部は圧縮機動力として使用され、一部は負荷機器の駆動力として使用される。負荷機器が発電機である場合、タービンによって発電機を駆動することによって電気エネルギーが得られる。なお、負荷機器として、例えばポンプ等もガスタービンに接続され得る。
【0029】
以下に図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0030】
1.ガスタービン設備
図1は本発明の実施例1に係るガスタービン設備の概略構成を示す系統図である。
【0031】
図1に例示したガスタービン設備9は発電プラントであり、原動機であるガスタービン、及び負荷機器である発電機8を備えている。ガスタービンは、圧縮機1、燃焼器2及びガスタービン3を備えている。圧縮機1、タービン3及び発電機8は、シャフト7で一体に連結されている。圧縮機1は、吸い込み空気15を圧縮して高圧空気16を生成する。燃焼器2は、圧縮機1で生成した高圧空気16とともにガス燃料50を燃焼させて高温燃焼ガス18を生成する。タービン3は、燃焼器2で生成した高温燃焼ガス18によって駆動される。タービン3で得られた回転動力は、シャフト7を介して圧縮機1及び発電機8に伝えられる。発電機8は、タービン3の回転動力によって駆動されて電力を発生させる。また、タービン3の回転動力の一部は圧縮機1の動力となる。タービン3を駆動した高温燃焼ガス18は、排気ガス19としてタービン3から排出される。
【0032】
2.燃焼器
本実施例に係る燃焼器2はガスタービンのケーシング4に格納されていて、図1では代表して一つのみを図示しているが、ガスタービンの周囲に複数設けられている。各燃焼器2は、マルチバーナ6、燃焼器ライナ10、フロースリーブ11、尾筒内筒12、尾筒外筒13、燃料系統51−53及び制御装置64を備えている。
【0033】
燃焼器ライナ10は多数の冷却孔(図示せず)を有する円筒状の部材であり、燃焼器ライナ10の内部が燃焼室5となる。燃焼室5は、燃料を燃焼させて燃焼ガス18を発生させる空間である。本願明細書において燃焼器2の「上流側」及び「下流側」といった場合には、燃焼器ライナ10内の燃焼ガス18の流れ方向の上流側(図1では左側)及び下流側(同右側)をいう。上記マルチバーナ6及び尾筒内筒12は、それぞれ燃焼器ライナ10の上流側及び下流側の端部に連結されていて、燃焼器ライナ10は尾筒内筒12を介してタービン3の入口に接続している。上記フロースリーブ11は燃焼器ライナ10よりも直径が大きな円筒状の部材であり、燃焼器ライナ10と同心状に配置されて燃焼器ライナ10及びマルチバーナ6を径方向外側から包囲している。このフロースリーブ11はケーシング4に固定されていて、上流側端部は焼器カバー14で閉止されている。また、上記尾筒外筒13はフロースリーブ11の下流側の端部に連結されていて、尾筒内筒12の外周を包囲している。尾筒内筒12と尾筒外筒13の間の環状の流路には圧縮機1で圧縮された高圧空気16が流入し、高圧空気16はさらに燃焼器ライナ10及びフロースリーブ11の間の環状の空気流路をマルチバーナ6に向かって流れる。
【0034】
燃料系統51−53はマルチバーナ6に接続されていて、マルチバーナ6に備えられた複数のバーナのうちの対応するものにガス燃料50を供給する。燃料系統51−53は燃料流量調整弁61−63をそれぞれ備えており、燃料流量調整弁61−63の開度を調節することによってそれぞれ燃料系統51−53による燃料供給量が制御され、ひいてはタービン出力、発電量が制御される。なお、特に図示していないが、燃料系統51−53には燃料流量調整弁61−63の下流側又は上流側に燃料止め弁が設けられる場合があり、燃料止め弁の開閉によって燃料系統51−53を連通及び遮断することができる。燃料流量調整弁61−63で燃料を遮断できる場合は、燃料止め弁を省略する場合もある。燃料流量調整弁61−63や燃料止め弁は制御装置64からの信号で駆動する。また、燃料系統51−53は1つの系統から3つに分岐したものであって、分岐部よりも上流側の部分には燃料遮断弁60が設けられていて、燃料遮断弁60を閉じることによって燃料系統51−53への燃料供給が遮断される。制御装置64による燃料制御やマルチバーナ6の構成については後述する。
【0035】
燃焼器2において、圧縮機1で圧縮された高圧空気16は、ケーシング4内に充満した後、尾筒内筒12と尾筒外筒13の間の空間に流入し、フロースリーブ11と燃焼器ライナ10との間に形成された環状の流路を燃焼器カバー14に向かって流れる。このとき、高圧空気16は、尾筒内筒12及び燃焼器ライナ10を外壁面から対流冷却するとともに、その一部は燃焼器ライナ10に設けた多数の冷却孔(図示せず)から燃焼器ライナ10の内側に流入し、燃焼器ライナ10をフィルム冷却する。燃焼器ライナ10のフィルム冷却に使用されなかった残りの高圧空気16は、空気孔プレート31に開けられた多数の空気孔32から燃焼用空気17として燃焼室5に流入する。空気孔32から燃焼器ライナ10に流入した燃焼用空気17は、燃料ノズル25から噴射される燃料とともに燃焼室5で燃焼して高温燃焼ガス18を生成する。この高温燃焼ガス18は尾筒内筒12を通ってタービン3に供給され、前述したようにタービン3を駆動する。
【0036】
3.マルチバーナ
図2は実施例1に係る燃焼器に備えられたマルチバーナの構造を表す断面図を燃料系統及び制御装置とともに表した図、図3図2に示したマルチバーナの空気孔プレートを燃焼室側から見た正面図である。これらの図において説明済みの部材については既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0037】
本実施例のマルチバーナ6は、中央バーナ33、及び複数(本例では6つ)の外側バーナ34を備えている。中央バーナ33及び外側バーナ34は、一対一の対応関係にある空気孔32及び燃料ノズル25を複数対備えている。空気孔32は空気孔プレート31に穿設されている。本実施例では、中央バーナ33及び外側バーナ34は1枚の空気孔プレート31を共用していて、中央バーナ33の一群の空気孔32は空気孔プレート31の中央の領域に、外側バーナ34の一群の空気孔32はその外周側の領域に配置されている。外側バーナ34は中央バーナ33を中心とする円上に一定のピッチ(本例では60°ピッチ)で配置されている。また、中央バーナ33及び外側バーナ34は、それぞれ同心円状の複数の空気孔列35を備えている。空気孔列35は複数の空気孔32を一定の間隔で環状に配置したものであり、本実施例では中央バーナ33及び外側バーナ34のそれぞれにおいて空気孔列35を3列設けてある。以下の説明では、中央バーナ33及び外側バーナ34のそれぞれにおいて、最も内側の空気孔列を「1列目の空気孔列」、最も外側の空気孔列を「3列目の空気孔列」、それらの間の空気孔列を「2列目の空気孔列」という。各空気孔32は平板状の空気孔プレート31の裏面(燃料ノズル25側の面)から表面(燃焼室5側の面)に貫通しており、それぞれ燃焼器ライナ10の中心軸線と平行な軸線に対して各々が属する空気孔列35の周方向の一方側に傾斜している。本実施例では、各空気孔列35のPCD(ピッチ円直径)を空気孔プレート31の表裏面で等しくしてある。
【0038】
中央バーナ33及び外側バーナ34の燃料ノズル25は燃料ヘッダ23a−23cに接続している。燃料ヘッダ23a−23cは燃料系統51−53と接続していて、それぞれ燃料系統51−53からのガス燃料50を分配して多数の燃料ノズル25に供給するものである。燃料ヘッダ23aは中央バーナ33の燃料ノズル25に接続している。また、複数の外側バーナ34は2つの群に区分されていて、燃料ヘッダ23b,23cはこれらの群にそれぞれ接続している。一例としては、環状に配置された複数の外側バーナ34に対して燃料ヘッダ23b,23cを交互に接続する構成である。
【0039】
ガスタービンは起動から定格負荷まで幅広い運転条件下で安定に駆動する必要があるため、起動から低負荷の運転条件下では中央バーナ33単独で運用し、負荷の上昇に伴って燃料を供給するバーナの個数を増やしていき、最後に全てのバーナに燃料を供給して定格運転に移行する。このような運転をすることでバーナそれぞれにおける燃空比を一定以上に保つことで安定に火炎を保持することができる。
【0040】
(1)外側バーナ
図4は外側バーナ34の断面図、図5は外側バーナ34を燃焼室側から見た正面図である。これらの図において説明済みの部材については既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0041】
前述したように、空気孔プレート31には同心円周状の3列の空気孔列35は設けられている。空気孔32はバーナ中心軸44に対して傾斜しているため、空気孔32から燃焼室5に噴出する燃焼用空気17は、バーナ中心軸44を含む二次元平面上に投影すると空気流線43として示したように外側バーナ34の径方向の外側に広がって流れる。このように空気流にバーナ周方向速度成分を付与することによって外側バーナ34の下流においてバーナ中心軸44周りに旋回流40が形成され、循環流41が形成される。この循環流41によって1列目の空気孔列35よりも内側の領域を起点にして、下流に向かって半径方向外側に広がる円錐状の火炎42が保炎される。
【0042】
このとき、1列目の空気孔列35において周方向に隣り合う空気孔32の出口間の最小間隙を空気孔間距離d、外側バーナ34から噴出する燃料によって形成される火炎の消炎距離をDと定義する。空気間距離dは空気孔列35によって異なっていても良いが、ここでは1−3列目の各空気孔列35で等しいこととする。本実施例においては、ガスタービンの起動から定格負荷までの全ての運転条件下で消炎距離Dが空気孔間距離dを超えないように、運転中に変動する火炎の消炎距離Dの最小値に対して空気孔間距離dを狭く設定してある(d<D)。
【0043】
ここで、「消炎距離」とは、例えば対向する2枚の板の間隔を狭めていくと当該2枚の板の間を火炎が伝播できなくなる場合に、火炎が伝播できなくなる限界値をいう。前述した通り一例として図6にメタンの当量比に対する消炎距離の関係を示す。メタンの場合には当量比0.9−1の間で消炎距離は最小値をとり、そこから当量比の値が離れていくにつれて消炎距離が長くなっていくことが一般的に知られている。従って、燃焼用空気17の流量に対するガス燃料50の噴射量が変化して燃空比が変化することで、消炎距離Dは変動する。次に、この消炎距離と空気孔間距離dとの関係が、本実施例に係るバーナにおいてどのように作用し得るかを説明する。
【0044】
図7は外側バーナ34の1列目の空気孔列35のバーナ中心軸44側から見た断面の展開図である。詳細には、図7は各空気孔32の中心線を含む外側バーナ34の円弧状断面を展開した図である。この図において説明済みの部材については既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0045】
図7に示したように、空気孔32から噴出した予混合気46は周囲に拡散しながら下流に向かって流れ、周方向に隣り合う空気孔32から噴出した予混合気46と合流する。すると、周方向に隣り合う2つの空気孔32を隔てる空気孔プレート31の近傍には、当該空気孔プレート31、及び当該空気孔プレート31の両側の空気孔32からの予混合気46の噴流に囲まれた、最大幅がdの空間47が生じる。この空間47には小さな循環流45が生じていて、予混合気46の一部が取り込まれて充満している。1列目の空気孔列35の内側(図7中の紙面に直交する方向の手前側)の領域を基点に保持される火炎が1列目の空気孔列35よりも外側(図7中の紙面に直交する方向の奥側)に伝播するには、この領域47を火炎が伝播しなければならない。前述した消炎距離の定義に当てはめる場合、周方向に隣り合う空気孔32から噴出する予混合気46の噴流が2枚の板に相当するため、予混合気46の噴流の間の空間47の幅の最大値と同等である空気孔間距離dが消炎距離Dよりも狭ければ、1列目の空気孔列35の内側に保持される火炎は1列目の空気孔列35の外側には理論上伝播しない。
【0046】
前述したように、本実施例においては、外側バーナ34の1列目の空気孔列35の空気孔間距離dは全ての運転条件下で消炎距離Dより狭くなるように設定されている。そのため、外側バーナ34の中央部に形成された火炎42(図4参照)は、これを取り囲む空気孔プレート31や予混合気46の噴流に熱を奪われて空間47を通過することができない。その結果、外側バーナ34では、ガスタービンの負荷によらず1列目の空気孔列35の内側の領域を起点に円錐状の火炎42が形成される。
【0047】
(2)中央バーナ
図8は中央バーナ33の断面図、図9は中央バーナ33を燃焼室側から見た正面図である。これらの図において説明済みの部材については既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0048】
外側バーナ34と同様に中央バーナ33の空気孔プレート31には空気孔32が3列の同心円周上に配置されている。空気孔32はバーナ中心軸44に対して傾斜しており、外側バーナ34と同様に空気孔32から噴出する空気噴流は空気流線43に示すように外側に広がって流れる。空気流にバーナ周方向速度成分を付与することによって中央バーナ33の下流域に旋回流40が形成され、バーナ中心軸44の周りに循環流41が形成される。中央バーナ33の各空気孔列35の空気孔間距離dは、起動時等の中央バーナ33のみに燃料を供給して運用する運転条件下で形成される火炎の消炎距離Dより広く、全てのバーナに燃料を供給し燃空比を低くして運用する運転条件下で形成される火炎の消炎距離Dより狭くしてある。空気孔間距離dは空気孔列35によって異なっていても良いが、本実施例では各空気孔列35において空気孔間距離dは等しいこととする。
【0049】
ここで、図10は中央バーナ33の1列目の空気孔列35のバーナ中心軸44側から見た断面の展開図である。この図において説明済みの部材については既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0050】
外側バーナ34と同様に、中央バーナ33において空気孔32から噴出した予混合気46は周囲に拡散しながら下流に向かって流れ、周方向に隣り合う予混合気46の噴流と合流する。空気孔プレート32における周方向に隣接する2つの空気孔32を隔てる部位と隣接する2つの予混合気噴流46とで囲まれた空間47には小さな循環流45が生じていて、予混合気の一部が取り込まれて充満している。制御装置65によって中央バーナ33に供給する燃料流量を調節し、d<Dとなるように制御することによって火炎が空間47を伝播できなくなり、1列目の空気孔列35の内側のみを起点にした円錐状の火炎42(図8参照)を形成することができる。一方、d>Dとなるように制御装置で燃料流量を調整すると、火炎42が空間47を伝播して2列目の空気孔列35の付近に到達する。2列目の空気孔列35でも空間47に小さな循環流が形成されているため、そこで安定的に火炎が形成され、2列目の空気孔列35の内側を起点に火炎が形成される。本実施例の場合、2列目及び3列目の空気孔列35においてもd>Dであるため、3列目の空気孔列35の外周部まで基部の外縁を広げた火炎42’(図8参照)が形成され、1列目−3列目の全ての空気孔32の出口周囲で保炎される。
【0051】
仮に2列目及び3列目の空気孔列35の空気孔間距離dを全バーナに燃料を供給する運転条件下の消炎距離Dに対して広くした場合、起動時に3列目の空気孔列35の外側まで広がった火炎42’が一旦形成されると、定格負荷に移行するにあたって燃空比を下げても火炎42’が残ってしまう。本実施例では、2列目及び3列目の空気孔列35においても定格負荷条件における燃空比の消炎距離Dより空気孔間距離dを狭くしてあり、起動時に火炎42’が形成されても、中央バーナ33の燃空比を下げることによって2列目及び3列目の空気孔列35においては空気孔32の出口周囲から火炎が浮き上がり、円錐状の火炎42に火炎形状を変えることができる。
【0052】
4.制御装置・制御方法
図11は起動から定格運転に移行する際の制御装置64による火炎形状の制御手順を表すフローチャートである。
【0053】
(ステップS101)
制御装置64は、起動後、燃焼器2に供給する燃料流量を定格運転に移行するまで定められた手順に従って徐々に増やしていく。起動時は燃焼器2に供給する燃料流量が少ないため、全てのバーナ33,34に燃料を供給すると個々のバーナの燃空比が低くなって火炎を保持できない。そこで、制御装置64により燃料流量調節弁61−63を制御して燃料系統52,53を遮断して燃料系統51のみを開き、中央バーナ33にのみ燃料を供給して局所的に燃空比を高くして運用する(図2参照)。前述したように、この段階では中央バーナ33で形成される火炎の消炎距離Dは同バーナの空気孔間距離dより小さいため、中央バーナ33では3列目の空気孔列35よりも外側まで基部が広がった火炎42’が形成される(同図参)。
【0054】
(ステップS102)
中央バーナ33のみに燃料を供給して運用している間、制御装置64は、中央バーナ33で形成する火炎42’の消炎距離Dが同バーナにおける空気孔間距離dを超えない範囲で中央バーナ33に供給される燃料流量が増すように、燃料系統51への燃料流量指令値S51を増大させて燃料流量調整弁61の開度を上げていく。この間、制御装置64は、燃料流量指令値S51がステップS102における目標値S511(設定値)に到達したかどうかを判定しており、燃料流量指令値S51が目標値S511に到達するまで中央バーナ33の燃料噴射量を増やしつつ中央バーナ33のみによる運用を継続する。そして、燃料流量指令値S51が目標値S511に到達したら、制御装置64は手順をステップS103に移す。
【0055】
(ステップS103)
ステップS103に手順を移すと、制御装置64は、燃料系統52,53を開いて外側バーナ34への燃料供給を開始し、全バーナによる運用に移行する。全バーナに燃料を供給することで、中央バーナ33の局所燃空比は起動時よりも低下する。そして、外側バーナ34はもとより中央バーナ33においても空気孔間距離dに対して火炎の消炎距離Dが長くなり、中央バーナ33の火炎形状は1列目の空気孔列35の内側を起点にした円錐状に切り替わる。火炎形状の切り替えの点では制御装置64による制御手順はこれで終了する。但し、全バーナに燃料を供給する運用に移行したあと定格負荷に達するまでの間、制御装置64は、中央バーナ33及び外側バーナ34の双方において火炎42の消炎距離Dが各バーナにおける空気孔間距離dを下回らない範囲で、それらバーナに供給される燃料流量が増すように、燃料系統51−53への燃料流量指令値S51−S53を増大させて燃料流量調整弁61−63の開度を上げていく。
【0056】
5.作用効果
本実施例によれば、予混合気を燃焼して燃焼ガスを発生させる方式であるためNOx排出量が拡散燃焼方式の燃焼器に比べて抑えられる。
【0057】
ここで、起動時のように中央バーナ33のみに燃料を供給する運転条件下では外側バーナ34には火炎が形成されないため、外側バーナ34から噴出した空気49(図2参照)が中央バーナ33から噴出する予混合気に干渉する。仮に定格負荷運転時のように中央バーナ33で形成する火炎が円錐状であると、中央バーナ33の2列目及び3列目の空気孔32から噴出して十分に燃焼する前の予混合気46に外側バーナ34からの空気が干渉する。そのため、局所の燃空比と温度が低下してしまい、燃焼反応が進まなくなって多量の未燃分が排出される恐れがある。
【0058】
それに対し、本実施例では、起動時を含めて中央バーナ33のみに燃料を供給する運転条件下では、同バーナで形成される火炎42’の消炎距離Dが同バーナの空気孔間距離dよりも短くなるため、当該火炎42’の基部の外縁は同バーナの3列目の空気孔列35よりも外側まで拡大する。そのため、1列目の空気孔列35から噴出する予混合気46のみならず2列目及び3列目の空気孔列35から噴出する予混合気46についても、空気孔32から燃焼室5に噴出して直ぐに火炎42’に到達して燃焼反応を開始する。したがって、外側バーナ34から噴出した燃焼用空気が中央バーナ33の3列目の空気孔列35から噴出した予混合気46に干渉する位置では当該予混合気46は燃焼反応が十分に進行し昇温した状態にあるため、外側バーナ34からの空気との混合によって燃空比を下げて未燃分の排出が壮大することを抑制することができる。
【0059】
一方、定格運転時を含めて全バーナに燃料を供給する運転条件下では、全バーナに燃料が分配されることで、中央バーナ33の局所燃空比は起動時よりも低下してNOx排出量が抑えられる。このとき、前述したように中央バーナ33で形成する火炎42の消炎距離Dは同バーナ33の空気孔間距離dよりも長くなるため、当該火炎42の基部の外縁は同バーナの1列目の空気孔列35よりも内側に縮小し、火炎42の形状は円錐形に変化する。この場合、中央バーナ33の2列目及び3列目の空気孔32から噴出した予混合気46が火炎42に到達するまでの距離を確保することができる。すなわち、2列目及び3列目の空気孔32から噴出する予混合気46は火炎42に到達するまでに更に均一に空気と混合し、均一な燃焼を促進することによって更にNOxを抑制することができる。外側バーナ34については、常に火炎形状が円錐形になるためNOxが抑えられている。また、全バーナで火炎が形成されているため、円錐状の火炎を形成しても空気によって燃焼反応を阻害されることがなく、未燃分の排出も増加しない。
【0060】
以上のように、一つのバーナ構造で火炎形状を変化させて燃焼モードを切り替えることが可能となり、起動時を含めた一部のバーナに燃料を供給する運転条件下の未燃分の排出量を抑制しつつ、定格負荷時を含めた全バーナに燃料を供給する運転条件下においては低NOx燃焼を達成することができる。
【実施例2】
【0061】
図13は実施例2に係る燃焼器に備えられたマルチバーナの空気孔プレートを燃焼室側から見た正面図、図14は同マルチバーナの部分負荷運転時の燃料供給対象を模式的に表した図である。図13は実施例1の図3に対応する図である。これらの図において説明済みの部材については既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0062】
本実施例が実施例1と相違する点は、中央バーナ33のみならず一部の外側バーナ34においても火炎形状を制御する点である。ガスタービンは起動から定格負荷まで幅広い条件を運転する必要があり、負荷の上昇とともに燃料流量が増加する。本実施例では、6つの外側バーナ34を周方向に交互に外側バーナ34a(図14においては網掛けで示した)と外側バーナ34bとに区分し、中央バーナ33及び外側バーナ34a,34bにはそれぞれ燃料系統51−53(図1参照)が接続されている。その他の構成は実施例1と同様である。
【0063】
そして、本実施例では、これら中央バーナ33及び2群の外側バーナ34a,34bの燃料供給スケジュールが分けてある。具体的には、負荷の低い条件では中央バーナ33(図14においてはハッチングで示した)を単独で燃焼させ、負荷が上昇し燃料流量が増加すると図14に示すように中央バーナ33に加えて3つの外側バーナ34aに燃料を供給し、さらに負荷が上昇し燃料流量が増加すると、残り3つの外側バーナ34bにも燃料を供給して全バーナに燃料を均等に供給する。
【0064】
図15は本実施例に係る燃焼器における起動から定格運転に移行する際の制御装置64による火炎形状の制御手順を表すフローチャートである。
【0065】
(ステップS201,S202)
ステップS201,S202は実施例1のステップS101,S102と同様である。本実施例において、制御装置64は、燃料流量指令値S51が同ステップにおける目標値S511に達したら、ステップS202からステップS203に手順を移す。
【0066】
(ステップS203,S204)
ステップS203に手順を移したら、制御装置64は、燃料系統52による外側バーナ34aへの燃料供給を開始して部分負荷運転を開始する。続くステップS204において、制御装置64は、中央バーナ33及び外側バーナ34aのみに燃料を供給して運用している間、中央バーナ33及び外側バーナ34aで形成する火炎42’(図8参照)の消炎距離Dがそれらバーナにおける空気孔間距離dを超えない範囲で、中央バーナ33及び外側バーナ34aに供給される燃料流量が増すように、燃料系統51,52への燃料流量指令値S51,S52を増大させて燃料流量調整弁61,62の開度を上げていく。この間、制御装置64は、燃料流量指令値S51,S52が同ステップにおける目標値S512,S521に到達したかどうかを判定しており、燃料流量指令値S51,S52が目標値S512,S521に到達するまで中央バーナ33及び外側バーナ34aの燃料噴射量を増やしつつ部分負荷運転を継続する。部分負荷運転の間、中央バーナ33及び外側バーナ34aの火炎42’は3列目の空気孔列35よりも外側まで基部の外縁を広げているため、外側バーナ34bからの燃焼用空気が流入しても燃空比の低下による未燃分の増加は抑えられる。そして、燃料流量指令値S51,S52が目標値S512,S521に到達したら、制御装置64は手順をステップS205に移す。
【0067】
(ステップS205)
ステップS205は実施例1のステップS103と実質的に同じであり、本ステップによって全バーナに燃料を供給する運転に移行する。この運転条件下では、全バーナにおいて空気孔間距離dよりも火炎の消炎距離Dが長くなり、全火炎が円錐状になる。火炎形状の切り替えの点では制御装置64による制御手順はこれで終了する。但し、全バーナに燃料を供給する運用に移行したあと定格負荷に達するまでの間、制御装置64は、中央バーナ33及び外側バーナ34a,34bにおいて火炎42の消炎距離Dが各バーナにおける空気孔間距離dを下回らない範囲でそれらバーナに供給される燃料流量が増すように、燃料系統51−53への燃料流量指令値S51−S53を増大させて燃料流量調整弁61−63の開度を上げていく。
【0068】
本実施例にように部分負荷運転時に中央バーナ33及び外側バーナ34aのみに燃料を供給する運転モードを実行する場合、残りの外側バーナ34bから中央バーナ33や外側バーナ34aに空気が流入し、仮に中央バーナ33及び外側バーナ34aの火炎が円錐状であれば燃料の未燃分が増加し得る。これに対し、本実施例は、起動時を含めた中央バーナ33の単独燃焼時は勿論、外側バーナ34aに燃料を供給する部分負荷運転時においても、万全に未燃分の排出を抑制することができる。
【実施例3】
【0069】
図16は実施例3に係る燃焼器に備えられた中央バーナを燃焼室側から見た正面図であり、実施例1の図9に対応する図である。この図において説明済みの部材については既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0070】
本実施例が実施例1と相違する点は、中央バーナ33の1−3列目の空気孔列35における各空気孔間距離d1−d3が異なる点である。具体的には、1列目の空気孔列35の空気孔間距離d1が、2列目及び3列目の空気孔列35の各空気孔間距離d2,d3より大きくしてある。そして、定格負荷条件等の全バーナに燃料を供給する運転条件下において、中央バーナ33における燃空比を調節して火炎の消炎距離Dを2,3列目の空気孔間距離d1,d2よりは長く、1列目の空気孔列35の空気孔間距離d1よりは短くなるように制御する(d2,d3<D<d1)。空気孔間距離d1,d2の大小関係は問わない。その他の点、例えばその他の構成や中央バーナ33を単独で燃焼させる運転条件下の運用については実施例1と同様である。すなわち、中央バーナ33を単独で燃焼させる運転条件下では、d1,d2,d3>Dとなるように燃料流量が制御される。
【0071】
本実施例によれば、全バーナに燃料を供給する運転条件下では、火炎の基部は1列目の空気孔列35の空間47(図7参照)を通過して1列目の空気孔列35の外側に広がるが、2列目の空気孔列35の領域47は通過することができない。そのため、基部の外縁が1,2列目の空気孔列35の間にある円錐状の火炎が形成される。そのため、3列目の空気孔32から噴出した予混合気46は空気との混合が更に促進され、NOxを抑制することができる。そして、1列目の空気孔列35の内側まで火炎の基部を狭める場合に比べて、保炎領域が広くなった分だけ燃焼安定性を強化することできる。NOx抑制の効果と燃焼安定性の効果の双方を考慮して実施例1と本実施例とを適宜選択することで、柔軟に燃焼器を設計することができる。
【0072】
なお、本実施例の特徴は、実施例2における外側バーナ34aの構成、及び部分負荷運転時の外側バーナ34aの運用にも適用可能である。また、火炎形状制御の非対象である外側バーナ34(実施例2では外側バーナ34b)についても、全バーナに燃料を供給する運転条件下では1列目と3列目の空気孔列35の間に火炎の基部の外縁が来るように各空気孔列35の空気孔間距離d1−d3を設定する構成とすることができる。
【実施例4】
【0073】
図17は実施例4に係る燃焼器に備えられた中央バーナ33の断面図であって実施例1の図8に対応する図である。この図において説明済みの部材については既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0074】
本実施例は実施例3と同じく、一部のバーナのみに燃料を供給する運転条件下において、燃料が供給されたバーナの火炎の基部の外縁が少なくとも1列目の空気孔列35の外側で且つ少なくとも3列目の空気孔列35の内側に来るようにする例である。すなわち、実施例3では、一部のバーナにのみ燃料を供給する運転条件下で形成される火炎の消炎距離Dに対して、1列目の空気孔列35の空気孔間距離d1を大きく、2,3列目の空気孔列35の空気孔間距離dを小さく設定する場合を例示した。それに対し、本実施例では、1−3列目の空気孔間距離dに対して、1列目の空気孔列35から噴出する予混合気46による消炎距離D1が短く、2,3列目の空気孔列35から噴出する予混合気46による消炎距離D2,D3が長くなるように燃料流量を制御する。1−3列目の空気孔列における各空気孔間距離dは、一部のバーナにのみ燃料を供給する運転条件下でD1−D3との大小関係が上記条件を満足する範囲内で適宜異なっていても良いし、同じであっても良い。一具体例として、本実施例では、中央バーナ33に接続する燃料系統51(図1参照)を燃料系統51a,51bに分岐させて、1列目の空気孔列35には対応する燃料ヘッダを介して燃料系統51aを、2,3列目の空気孔列35には対応する燃料ヘッダを介して燃料系統51bをそれぞれ接続してある。燃料流量調整弁についても、燃料系統51a,51bの各燃料流量を調整するものとして、燃料系統51a,51bにそれぞれ燃料流量調整弁61a,61bを設けてある。勿論、燃料流量調整弁61a,61bは制御装置64の信号によって制御される。その他の構成は実施例1と同様である。
【0075】
図18は本実施例に係る燃焼器における起動から定格運転に移行する際の制御装置64による中央バーナ33への燃料供給量の制御手順を表すフローチャートである。
【0076】
(ステップS301)
起動時には、前の各実施例と同様、中央バーナ33を単独で燃焼させる。その際、本実施例では、中央バーナ33の1−3列目の空気孔列35から噴出する予混合気46による各消炎距離D1−D3を空気孔間距離dよりも短く調節する。具体的には、燃料系統51a,51bの燃料流量調整弁61a,61bを制御して消炎距離D1−D3を調節する。この状態下では、中央バーナ33で形成される火炎は、図8の火炎42’のように基部の外縁が3列目の空気孔列35よりも外側に来る。
【0077】
(ステップS302)
中央バーナ33のみに燃料を供給して運用している間、制御装置64は、中央バーナ33における消炎距離D1−D3と空気孔間距離dとの間で上記関係(D1,D2,D3<d)を保つ範囲で中央バーナ33に供給される燃料流量が増すように、燃料系統51a,51bへの燃料流量指令値S51a,S51bを増大させて燃料流量調整弁61a,61bの開度を上げていく。この間、制御装置64は、燃料流量指令値S51a,S51bがステップS302における目標値S51a1,S51b1(設定値)に到達したかどうかを判定しており、燃料流量指令値S51a,S51bが目標値S51a1,S51b1に到達するまで中央バーナ33の燃料噴射量を増やしつつ中央バーナ33のみによる運用を継続する。そして、燃料流量指令値S51a,S51bが目標値S51a1,S51b1に到達したら、制御装置64は手順をステップS303に移す。
【0078】
(ステップS303)
ステップS303に手順を移すと、制御装置64は、燃料系統52,53(図1参照)を開いて外側バーナ34への燃料供給を開始し、全バーナによる運用に移行する。全バーナに燃料を供給することで、中央バーナ33の局所燃空比は起動時よりも低下する。これに伴って、中央バーナ33においては、2,3列目の空気孔列35から噴出する予混合気46による消炎距離D1が空気孔間距離dよりも短く、1列目の空気孔列35から噴出する予混合気46による消炎距離D2が空気孔間距離dよりも長くなるように燃料系統51a,51bの燃料流量の配分を調節する。具体的には、燃料系統51a,51bの燃料流量調整弁61a,61bを制御して、例えば、2,3列目の空気孔32から噴出する予混合気に対して1列目の空気孔32から噴出する予混合気46の燃空比を上げる。この状態下では、中央バーナ33で形成される火炎の形状は、基部の外縁が1列目及び2列目の空気孔列35の間に来る円錐状に切り替わる。火炎形状の切り替えの点では制御装置64による制御手順はこれで終了する。但し、全バーナに燃料を供給する運用に移行したあと定格負荷に達するまでの間、制御装置64は、中央バーナ33及び外側バーナ34の双方において火炎形状が変化しない範囲でそれらバーナに供給される燃料流量を増加させていく。
【0079】
本実施例においても実施例3と同様の効果が得られる。
【0080】
なお、本実施例の特徴は、実施例2における外側バーナ34aの構成、及び部分負荷運転時の外側バーナ34aの運用にも適用可能である。また、火炎形状制御の非対象である外側バーナ34(実施例2では外側バーナ34b)については、全バーナに燃料を供給する運転条件下で1列目と3列目の空気孔列35の間に火炎の基部の外縁が来るように各空気孔列35の空気孔間距離d1−d3を設定することで、全バーナに燃料を供給する運転条件下で中央バーナ33と同様の形状の火炎を非対象のバーナでも形成することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 圧縮機
3 タービン
8 発電機(負荷機器)
9 ガスタービン設備
2 燃焼器
25 燃料ノズル
31 空気孔プレート
32 空気孔
33 中央バーナ
34 外側バーナ
35 空気孔列
46 予混合気
50 ガス燃料(燃料)
51−53 燃料系統
64 制御装置
d,d1−d3 空気孔間距離
D,D1−D3 消炎距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18