(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926230
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】注入ノズル、注入ノズルの押し付け装置及び鋳造装置
(51)【国際特許分類】
B22D 41/56 20060101AFI20160516BHJP
B22D 41/50 20060101ALI20160516BHJP
B22D 11/10 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
B22D41/56
B22D41/50 520
B22D11/10 320F
B22D11/10 330K
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-233449(P2013-233449)
(22)【出願日】2013年11月11日
(62)【分割の表示】特願2011-58475(P2011-58475)の分割
【原出願日】2004年1月19日
(65)【公開番号】特開2014-28406(P2014-28406A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2013年11月11日
(31)【優先権主張番号】03447014.6
(32)【優先日】2003年1月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500180226
【氏名又は名称】ベスビウス グループ,ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100113918
【弁理士】
【氏名又は名称】亀松 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100140121
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 朝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(72)【発明者】
【氏名】アンス,エリック
(72)【発明者】
【氏名】タブリオー,ステファヌ
【審査官】
酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−153950(JP,A)
【文献】
特開平02−280950(JP,A)
【文献】
実開昭48−062309(JP,U)
【文献】
特開平10−286658(JP,A)
【文献】
実開平03−120949(JP,U)
【文献】
特開平05−050196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 41/50−41/62,11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入ノズル(1)であって、該ノズルは、
(a) 注入路(6)を規定する管状部(3)と、その上端に、
(b) 注入路(6)を規定する孔を有するプレート(2)を有し、前記プレート(2)は、上面を有し、更に、プレートの上面と対向する側に位置し、注入路の両側に位置した二つの平坦な支承面(5)を有しており、
該ノズルは、注入ノズルの二つの支承面を受けることができ、且つ、新しい注入ノズルを鋳造位置に挿入、スライドさせ、消耗した注入ノズルを鋳造位置の向こうに排出することのできるレールガイドシステムと、さらに、注入ノズルの支承面に、注入路の軸に対して斜めの方向であり、注入路に向かう方向の力を付与することができる押し付け装置とを有する形式のノズルの挿入及び除去装置への使用に適するものであって、前記二つの支承面(5)は注入路の軸(7)と45°の角度βをなすことを特徴とする。
【請求項2】
請求項1に記載の注入ノズル用の挿入及び除去装置であって、
(a)請求項1に記載の注入ノズルの2つの支承面を受け、前記注入ノズルを鋳造位置に挿入し、消耗した注入ノズルを前記鋳造位置の向こうに排出するためのレールガイドシステムであって、前記注入ノズルのプレートの支承面が注入路の軸となす角度βと等しい、注入ノズルの注入路の軸と45°の角度βをなす支承面を有するレールガイドシステムと、
(b)注入ノズルが鋳造位置にあるときに、ノズルのプレートの上面と注入路の上流部材(9)との密着性を確保するために、前記注入ノズルのノズルプレートの二つの平坦な支承面(5)に、注入路の軸に対して斜めの方向であり、注入路に向かう方向の力を付与するための押し付け装置(8)、ただし、前記力は注入路の軸と45°の角度αをなす方向に付与される、と、
を有する。
【請求項3】
前記力が支承面(5)に対してバネにより付与されることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
(a)請求項1に記載の注入ノズル(1)と、(b)請求項2に記載のノズルの挿入及び除去装置(8)とを有する鋳造装置であって、注入ノズルの軸と、注入ノズル(1)の支承面(5)及び装置(8)の支承面とがなす角度は、互いに同じであることを特徴とする鋳造装置。
【請求項5】
請求項3に記載の支承面(5)に前記力が直接、ばねにより付与される押し付け装置(8)を有し、前記力が直接ばねにより直接付与されることを特徴とする請求項4に記載の鋳造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属を上方の冶金容器から下方の冶金容器に移すための注入ノズルに関する。特に、溶鋼をタンディッシュから鋼塊鋳型へ、或いは、鋳造取鍋からタンディッシュに移すための耐火物製の注入ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
金属を化学的な攻撃に対して保護し、周辺の雰囲気から熱的に遮蔽ながら、冶金容器の一方から他方に移すための注入ノズルは、強く応力を受け磨耗する部材であり、その寿命が鋳造時間を制限するほどである。
最近、技術水準に記載されているノズルの挿入/除去装置が、この問題を解決してきた。(例えば、欧州特許192,019号および441,927号参照)。
例えば、メニスカス近傍でノズル外壁の侵食が一定のレベルに達すると、直ちに、鋳造を中断する必要のない十分短い時間で、磨耗したノズルが新しいノズルに交換される。
【0003】
通常、これらの装置においては、注入路を規定する管状部とその上端で注入路を規定する孔を備えたプレートとで構成された注入ノズルを使用する。前記プレートは、注入路の上流部材に接触する上面と、ノズルの下部と界面を形成する下面を備えている。前記下面は、鋳造路の両側に配置された2つの平坦な支承面を備えている。
【0004】
ノズルは、ガイド内で、インナーノズルのような注入孔、或いは、そのような注入孔に取り付けられた底板、或いは注入孔(例えば、インナーノズル)と注入ノズルとの間に挿入された鋳造流れ制御装置に取り付けられた固定プレート、のいずれの平坦な下面に対しても摺動するようになっている。
本発明において、注入ノズルという場合、これはインナーノズルのような固定されたノズルではなく、装置内を摺動するようになっているノズルとする。
【0005】
公知の装置及び、特にEP192019号公報に開示されている装置は、上向きにスラスト力を伝達できる (押し付け装置) ガイド内に摺動する注入ノズルを有している。このスラスト力は、注入孔の一定の距離に配置されたバネにより得られ、てこ或いはロッカーによって起動する。
これらが、スラスト力を注入ノズルプレートの平坦な面に伝える。
この上向きのスラスト力が、注入ノズルプレートを上流の耐火性部材、特にインナーノズル或いは耐火性プレート、に相対的にしっかりと押し付ける。
【0006】
注入ノズルは、一体ブロックであり、あるいは数個の耐火性部材を組み合わせて構成されうる。
【0007】
ほとんどの場合、プレートの下面、およびノズルの管状部の上端は、金属缶により保護されている。
【0008】
しかしながら、管状部材の上端に位置した管状部材とプレートの接合の位置に、亀裂や微小亀裂がしばしば現れることがある。
これらの亀裂は、ノズルが供され或いは使用中に発生することがある。
亀裂は、過度の熱的応力、機械的応力或いは熱−機械的応力が起源となりうる。
これらの応力は、このノズルを装置内に維持するために加えられた力、振動或いは溶融金属流によって発生する。
【0009】
ある場合には、これらの亀裂が部材の破壊を引き起こす。他の場合には、これらの亀裂のサイズが小さくても、これらを考慮しておくことが必要である。ノズル中の液体金属の流れによって生じる絞りは、まさに低圧を発生させ、結果的に周辺の空気をかなり吸引させることになる。
雰囲気の酸素或いは窒素でさえも、液体金属、特に鋼にとっては重大な汚染源となる。さらに、酸素と高温が組み合わさった作用の下では、耐火性材料は、酸素侵入レベル、すなわち、亀裂のレベルでかなり劣化する。
この劣化がさらに耐火性材料の局部的な劣化を増加させ、鋳造を停止せざるを得ない程度にまで亀裂を拡大する。
【0010】
現状の技術において、ノズルの亀裂に対する抵抗性を増加させるためのいくつかの方法が提案されている。
【0011】
亀裂に対して優れた抵抗性を有する耐火性材料が知られている。しかし、これらの材料は、一般に浸食や腐食のような他の現象に対して敏感である。
【0012】
WO00/35614号公報は、剛性を増加させる機械的な手段によりその下部が補強された金属缶を使用する他の解決手段を開示している。
【0013】
EP1133373号公報には、金属缶と耐火性ノズルとの間に衝撃吸収中間領域を備えたノズルが記載されている。
この領域は、周辺温度では固体であるが高温では変形に従うような熱特性を有する材料で構成される。この緩衝領域は、鋳造の開始時に現れる熱-機械的応力によって発生する亀裂や微小亀裂の形成の危険性を減少させる。
【0014】
上記の解決手段及びここ数年続けられてきたそれらの改善により、この技術は有利なものになったものの、まだいくつかの問題がある。
【0015】
ノズル挿入及び/又は除去のための公知の装置では、プレートは、管状部の上端における亀裂形成の原因となるかなりの曲げ応力を常に受けている。
上部プレートが、前記プレートが摺動するガイドの方向に平行な軸の周りの曲げにより、変形しうることが確かに見られてきた。
【0016】
上述の解決手段は、これらの曲げ応力を阻止し、或いはいこれら曲げ応力を緩和し、材料自体またはノズル組み立て技術に反映させることによって、これらの曲げ応力を低下させるものである。
これらの解決手段は、費用がかかり、かつ十分満足のいくものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、使用によって加えられる応力及び、特に装置へのノズルの維持に関連した応力、に良く抵抗するようになされた形状の注入ノズルを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このノズルは、好適な応力パターンを生じる押し付け装置を受けるようになされた形状も備えている。
【0019】
特に、本発明は、ノズルの挿入及び/又は除去装置用の注入ノズルに関し、そのノズルは、注入路を規定する管状部と、その上端で注入路を規定する孔を有するプレートとを備えており、前記プレートは、注入路の上流部材と接触する上面と、ノズルの管状部と界面を形成する下面を備え、且つ、前記プレートは、該プレートの上面と対向する側に配置され、且つ、注入路の両側に配置された2つの平坦な支承面を備えている。
このノズルは、前記2つの面が注入路の軸と20〜80℃の角度βをなすことを特徴とする。
管状部は、通常、円筒形、楕円形或いは円錐形とすることができる。
プレートは、好ましくは正方形或いは長方形である。
【0020】
本発明におけるプレートの形状は、亀裂に敏感な領域の材料の量を増やす必要もなく亀裂に対する抵抗性を向上させる。これによって、妨げとなる寸法(hindering dimension)は、従来技術のノズルと実質的に同じままである。
【0021】
本発明のノズルが挿入及び/又は除去装置に導入される場合、前記2つの支承面はノズルの射線方向(firing direction)と平行である。
【0022】
角度βが30〜60°、特に角度が約45°では、亀裂抵抗性および応力パターンの結果が良好であることが判った。
角度45°で注入ノズルの臨界領域レベルで測定した引張応力は、従来技術に相当する角度90°で見られた場合より40〜50%低い。
【0023】
本発明の一つの実施形態によれば、ノズルのプレートが、ノズルプレートの支承面に垂直で且つ、注入路の軸を含む面に関して非対称である。
そのため、プレートの使用面は、この面の両側で異なっている。
これにより、ノズルを2つの位置、プレートの孔が上流の注入路と対応している一つの鋳造位置および、孔を塞ぐためにプレートの孔が上流の注入路と通じていない中間位置、に挿入することが可能となる。
これは、例えばストッパーにより確保されている上流の閉鎖システムが不完全な場合に役に立つ。
また、ノズルプレート自体により閉鎖が確保されるので、安全プレートの使用を回避することもできる。
【0024】
本発明のノズルの形状は、従来の技術で使用されるものとは異なる押し付け装置の使用も可能である。
【0025】
このように本発明は、ノズルの挿入及び除去装置用の注入ノズルにも関連する。本発明の押し付け装置は、生じるスラスト力を、注入路の軸に対して10〜70°の角度αをなす方向に加えることが特徴である。
【0026】
この押し付け装置は、スラスト力を、従来装置の場合のように注入路の軸に平行で、かつ上向きではなく、注入路の軸に対して斜めで、かつ鋳造路の方向に向けられた注入ノズルの支承面に加える。
【0027】
このような装置によって注入ノズルに発生する曲げ応力は、従来の装置の場合よりも低い。生じるスラスト力は、上流部材との密着を確保する垂直成分と水平成分とを有する。この水平成分は、耐火性材料を圧縮状態とし、それによって亀裂の発生及び/又はその拡大を低減させるので好ましい。
【0028】
本発明の押し付け装置の生じるスラスト力は、10〜70°の角度αで加えられなければならない。10°未満の角度は、公知の装置の場合のように、実質的には垂直な力を加えるのに相当し、亀裂現象に対して有意義で積極的な効果はない。
その力が70°より大きい角度で加えられると、力の垂直成分がノズルプレートと上流部材との間の良好な接触や密着性を確保するのに十分ではなくなる。
【0029】
スラスト角度αが30〜60°、特に約45°の角度の場合、亀裂抵抗性及び応力パターンに関して優れた結果が得られることが認められている。角度45°で注入ノズルの臨界領域レベルで測定した引張応力は、従来技術に相当する角度90°で測定された場合より40〜50%低い。
45°の角度は、密着性を確保するスラスト力の垂直成分と水平成分との間の良い折衷である
ノズルと上流部材との間を密接な接触とするために最小限の垂直成分は必要である。角度αが増えるほど、同じ垂直成分を確保するためにスラスト力も増やさなければならない。
スラスト力が大きすぎると、特にスプリングを増す必要や、それらの寿命低下など、無視できない機械的な問題が生じやすい。
【0030】
45°の角度であると、注入ノズルや押し付け装置の製作も容易になる。
【0031】
スラスト力は、例えばバネにより、或いはロッカーのような部材の中間体を介して、注入ノズルのプレートの支承面に直接加えることができる。
【0032】
本発明の他の形態は、ノズル挿入及び交換装置、および本発明の注入ノズルを備えた鋳造装置に関する。
【0033】
注入ノズルは、押し付け装置により上流の鋳造部材に密着して維持される。
押し付け装置のスラスト力は、注入ノズルプレートの両方の平坦な支承面に加えられる。
鋳造装置は、注入ノズルの2つの支承面を受けることができ、かつ新しい注入ノズルを鋳造位置に挿入し、磨耗した注入ノズルを鋳造位置の向こうに排出することができるレールガイドシステムも備えている。
【0034】
レールガイドシステムは、注入軸となす角度が、注入ノズルプレートの支承面と前記注入軸により形成された角度βと実質的に等しい角度の支承面を提供する。
【0035】
本発明をより理解しやすくするために、本発明の一実施形態を示す図面を参照して記述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【0037】
図のうち、
図1は、従来技術の注入ノズルおよび、平坦な支承面に加えられた生じる垂直なスラスト力を示している。
図2は、本発明の注入ノズルおよび、平坦な支承面に加えられた生じるスラスト力を示している。
図3は、本発明の注入ノズルを示しており、角度α及びβは、生じるスラスト力が注入路の軸となす角度、平坦な支承面が注入路の軸となす角度をそれぞれ表す。
図4は、従来技術の押し付け装置を示している。
図5及び
図6は、本発明の押し付け装置の実施形態を示す。
【0038】
図1は、プレート(2)と管状部(3)を備えた従来技術の注入ノズル(1)を示している。平坦な支承面(5)は、注入路の軸(7)と90°の角度βをなしている。スラスト力(4)は、垂直であり、注入路の軸(7)と平行である。
従来技術の注入ノズルに発生する応力は、管状部(3)の上端での亀裂の形成の原因となりうる。
【0039】
図2及び
図3は本発明の注入ノズル(1)を示す。注入ノズル(1)のプレート(2)は何らかの方法で先端が切られている。平坦な支承面(5)は、20〜80°の角度βをなしており、プレート(2)の材料の量を増やす必要がない。
【0040】
図3は、角度α及びβを示している。生じるスラスト力と注入路の軸は、21°の角度αをなしている。平坦な支承面と注入路の軸は、69°の角度βをなしている。
【0041】
図4は、従来技術の押し付け装置(8)を示している。生じるスラスト力(4)は垂直に、且つ注入路の軸(7)に平行に、ロッカー(10)を介して加えられる。
【0042】
図5は、本発明の押し付け装置(8)を示している。発生するスラスト力(4)は、ロッカー(10)を介して加えられる。
【0043】
図6は、本発明の押し付け装置(8)を示している。発生するスラスト力(4)は、バネ(11)を介して支承面に直接加えられる。
【符号の説明】
【0044】
1 注入ノズル
2 プレート
3 管状部
4 発生するスラスト力
5 平坦な支承面
6 注入路
7 注入軸
8 押し付け装置
9 インナーノズル
10 ロッカー
11 バネ