特許第5926236号(P5926236)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926236
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】ネットワーク品質計測装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/70 20130101AFI20160516BHJP
【FI】
   H04L12/70 100Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-262466(P2013-262466)
(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-119384(P2015-119384A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】399040405
【氏名又は名称】東日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】築地 裕希
(72)【発明者】
【氏名】山本 高大
(72)【発明者】
【氏名】丸山 健一
【審査官】 菊地 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−236262(JP,A)
【文献】 特開2011−193412(JP,A)
【文献】 福田 晴元 他,インターネットQoSビジュアライザを用いた遅延とジッターの測定,情報処理学会研究報告,1997年 7月25日,第97巻 第71号,第55〜60頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向するルータ間のネットワークの品質を計測するネットワーク品質計測装置であって、
前記ルータそれぞれのLAN側でキャプチャしたパケットをそれぞれ記載した複数のキャプチャデータを入力する入力手段と、
前記ルータ間がVPN接続されていない場合は、前記複数のキャプチャデータから他方のルータのWAN側アドレスを宛先あるいは送信元とするパケットのみを抽出し、前記ルータ間がVPN接続されている場合は、他方のルータのLAN側アドレスを宛先あるいは送信元とするパケットのみを抽出する抽出手段と、
前記抽出手段が抽出したパケット間でパケットの転送中に変化しない情報を突合し、同一のパケットを特定する突合手段と、
前記突合手段の突合結果と前記同一のパケットそれぞれのキャプチャ時刻に基づいてネットワーク品質を計測する計測手段と、
を有することを特徴とするネットワーク品質計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク品質を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク品質を計測する主な方法として、アクティブ計測とパッシブ計測が存在する。アクティブ計測は、プローブパケットと呼ばれるパケットを送信し、その応答を観測することで、プローブパケットが通過したネットワークの品質を計測する方法である。パッシブ計測は、ネットワーク上を実際に流れているパケットを取得してネットワーク品質の計測に用いる方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−130000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アクティブ計測では、大量にプローブパケットを送信するとネットワークに負荷をかけるという問題があった。また、プローブパケットを送信する機器を配置する必要があり、ネットワーク障害が発生した時点のネットワーク品質を計測することも困難である。
【0005】
パッシブ計測では、ネットワークを流れるパケットを記録して用いるので、ネットワークに負荷をかけることはないが、記録された情報内での計測となることから、記録された情報によって計測の精度が左右されるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、パッシブ計測によりより精度良くネットワーク品質を計測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るネットワーク品質計測装置は、対向するルータ間のネットワークの品質を計測するネットワーク品質計測装置であって、前記ルータそれぞれのLAN側でキャプチャしたパケットをそれぞれ記載した複数のキャプチャデータを入力する入力手段と、前記ルータ間がVPN接続されていない場合は、前記複数のキャプチャデータから他方のルータのWAN側アドレスを宛先あるいは送信元とするパケットのみを抽出し、前記ルータ間がVPN接続されている場合は、他方のルータのLAN側アドレスを宛先あるいは送信元とするパケットのみを抽出する抽出手段と、前記抽出手段が抽出したパケット間でパケットの転送中に変化しない情報を突合し、同一のパケットを特定する突合手段と、前記突合手段の突合結果と前記同一のパケットそれぞれのキャプチャ時刻に基づいてネットワーク品質を計測する計測手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パッシブ計測によりより精度良くネットワーク品質を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態におけるネットワーク品質計測装置を含む全体構成図である。
図2】本実施の形態におけるネットワーク品質計測装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図3】パケットを突合する様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態におけるネットワーク品質計測装置1を含む全体構成図である。図1の左側のLAN200Aは、ルータ2Aを介してネットワーク100に接続され、右側のLAN200Bは、ルータ2Bを介してネットワーク100に接続される。LAN200AからLAN200Bへ送信されるパケットは、ルータ2A、ネットワーク100、ルータ2Bを経由してLAN200Bに届く。このパケットは、ルータ2AのLAN側に設定したキャプチャポイントとルータ2BのLAN側に設定したキャプチャポイントでキャプチャされ、キャプチャファイル3A,3Bそれぞれにキャプチャ時刻とともに記載される。LAN200BからLAN200Aへ送信されるパケットも同様に、ルータ2B、ネットワーク100、ルータ2Aを経由してLAN200Aに届き、上記2箇所のキャプチャポイントでキャプチャされてキャプチャファイル3A,3Bそれぞれに記載される。
【0013】
図1に示すネットワーク品質計測装置1は、入力部11、突合部12、計測部13、および出力部14を備える。ネットワーク品質計測装置1は、キャプチャファイル3A,3Bを入力し、キャプチャファイル3A,3BそれぞれからLAN200A,200B間で送受信されたパケットを抽出して突合し、パケットロス、順序逆転、ゆらぎ、遅延についてのネットワーク品質を計測する。ネットワーク品質計測装置1が備える各部は、演算処理装置、記憶装置等を備えたコンピュータにより構成して、各部の処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。このプログラムはネットワーク品質計測装置1が備える記憶装置に記憶されており、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0014】
入力部11は、異なる2点のキャプチャポイントでキャプチャしたパケットが記載されたキャプチャファイル3A,3Bを入力し、2点のキャプチャポイントの両方を通過するパケットを抽出する。
【0015】
突合部12は、パケットの同一性が認識でき、パケットが転送されている間に変化しない情報を用いてパケットを突合して同一のパケットを特定する。変化しない情報としては、例えば、IPヘッダの識別子、TCP/UDPヘッダのシーケンス番号がある。
【0016】
計測部13は、突合部12の突合結果と同一パケットそれぞれのキャプチャ時刻を用いて、パケットロス、順序逆転、ゆらぎ、遅延についてのネットワーク品質を計測する。
【0017】
出力部14は、計測部13の計測結果を出力する。
【0018】
次に、本実施の形態におけるネットワーク品質計測装置1の処理の流れについて説明する。
【0019】
図2は、本実施の形態におけるネットワーク品質計測装置1の処理の流れを示すフローチャートである。
【0020】
入力部11は、2つのキャプチャファイル3A,3Bを読み込み(ステップS11)、対向するルータ2A,2BのWAN側アドレスを宛先、送信元とするパケットを抽出する(ステップS12)。具体的には、キャプチャファイル3Aからは、ルータ2BのWAN側アドレスを宛先あるいは送信元とするパケットを抽出し、キャプチャファイル3Bからは、ルータ2AのWAN側アドレスを宛先あるいは送信元とするパケットを抽出する。なお、ルータ2A,2B間がVPN接続されている場合は、対向ルータ2A,2BのLAN側アドレスを宛先、送信元とするパケットを抽出する。
【0021】
続いて、突合部12が、キャプチャファイル3A,3Bそれぞれから抽出されたパケットを突合し、同一のパケットを特定する(ステップS13)。
【0022】
図3に、パケットを突合する様子を示す。同図の四角い枠それぞれが1つのパケットを示している。同図において数字が付されたパケットはLAN200A,200Bの間で送受信されたパケットであり、英字が付されたパケットは別のネットワークとの間で送受信されたパケットである。入力部11の処理により、図3の数字が付されたパケットのみがキャプチャファイル3A,3Bそれぞれから抽出される。突合部12は、キャプチャファイル3A,3Bそれぞれから抽出されたパケット間で、IPヘッダの識別子、TCP/UDPヘッダのシーケンス番号が同じものを同一のパケットとする。他方のキャプチャファイル3A,3BからIPヘッダの識別子、TCP/UDPヘッダのシーケンス番号が同じパケットが見つからない場合は、そのパケットはロスしたと判定する。
【0023】
パケットを突合する際に、IPヘッダの識別子、TCP/UDPヘッダのシーケンス番号のいずれかのみを用いてもよいし、両方を用いてもよい。また、パケットが1つ目のキャプチャポイントでキャプチャされてから2つ目のキャプチャポイントでキャプチャされるまでの間に変化しない情報であれば、突合に用いる情報は、IPヘッダの識別子、TCP/UDPヘッダのシーケンス番号に限らない。
【0024】
なお、IPヘッダの識別子、TCP/UDPヘッダのシーケンス番号は、全パケットで一意ではないので、同一でないパケットが同じIPヘッダの識別子、TCP/UDPヘッダのシーケンス番号を保持する可能性がある。その場合、パケット内の他の情報、キャプチャ時刻、パケットの順序などを用いて同一パケットを推定する。例えば、キャプチャファイル3Aの2つのパケットA1,A2とキャプチャファイル3Bの2つのパケットB1,B2のいずれも同じIPヘッダの識別子、TCP/UDPヘッダのシーケンス番号である場合、パケットA1と同一のパケットはパケットB1,B2のいずれであるか特定できない。このとき、パケットA1,A2のキャプチャ時刻がパケットが転送される時間に比べて離れていれば、パケットA1のキャプチャ時刻に近いキャプチャ時刻を持つパケットB1,B2をパケットA1と同一のパケットであると推定する。あるいは、パケットA1,A2,B1,B2それぞれが運ぶデータを比較して同一のパケットを推定してもよい。
【0025】
続いて、計測部13が突合して同一と判定されたパケットを用いてネットワーク品質を計測する(ステップS14)。例えば、パケットロスについては、上述したように、突合部12がキャプチャファイル3A,3Bの両方で発見できなかったパケットをロスとする。順序逆転については、送信元でキャプチャされたパケットをキャプチャ時刻の時系列順に並べるとともに、同一と判定された送信先でキャプチャされたパケットを順に並べて、送信先でキャプチャされたパケットのキャプチャ時刻が時系列順となっているか否か調べる。遅延については、同一パケットのキャプチャ時刻の差をとって計測する。IP電話などの一定間隔で送信されているパケットについては、パケット到達間隔のゆらぎをキャプチャ時刻に基づいて計測する。
【0026】
出力部14は、計測部13が計測したネットワーク品質を出力する(ステップS15)。出力先は、ディスプレイなどの表示装置でもよいし、ファイルに出力してもよい。
【0027】
以上説明したように、本実施の形態によれば、入力部11が異なるキャプチャポイントでキャプチャしたキャプチャファイル3A,3Bを入力し、突合部12がキャプチャファイル3A,3Bに記載されたパケットの転送中に変化しない情報を用いてパケットを突合して同一パケットを特定し、計測部13が突合部12の突合結果に基づいてネットワーク品質を計測することで、突合して特定した同一パケットがプローブパケットの役割を果たすので、プローブパケットをネットワークに送信しなくても、パケットロス、順序逆転、ゆらぎ、遅延についてのネットワーク品質をより精度良く計測することができる。
【符号の説明】
【0028】
1…ネットワーク品質計測装置
11…入力部
12…突合部
13…計測部
14…出力部
2A,2B…ルータ
100…ネットワーク
200A,200B…LAN
3A,3B…キャプチャファイル
図1
図2
図3