(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926266
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】切り替え可能な動作形態を有するレーザ走査顕微鏡
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20160516BHJP
【FI】
G02B21/06
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-530617(P2013-530617)
(86)(22)【出願日】2011年9月29日
(65)【公表番号】特表2013-539079(P2013-539079A)
(43)【公表日】2013年10月17日
(86)【国際出願番号】EP2011004873
(87)【国際公開番号】WO2012041502
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2014年9月25日
(31)【優先権主張番号】102010047353.7
(32)【優先日】2010年10月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506151659
【氏名又は名称】カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS MICROSCOPY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】アンフート、ティーモ
(72)【発明者】
【氏名】カルクブレナー、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュヴェート、ダニエル
【審査官】
森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2003/0030901(US,A1)
【文献】
特開2001−91842(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/066253(WO,A2)
【文献】
特開2001−296469(JP,A)
【文献】
特開2007−127740(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/116901(WO,A2)
【文献】
特開2007−275908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 − 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる複数の動作モード間で切り替えることのできるレーザ走査顕微鏡であって、
前記異なる複数の動作モード間で切り替えるために照明ビームの第1のビーム路に設けられた電気光学的変調器(EOM)と、
該電気光学的変調器に対して前置された調整可能な第1の偏光回転素子と、
該電気光学的変調器に対して後置された調整可能な第2の偏光回転素子と、
該電気光学的変調器に対して後置され、前記第1のビーム路から分岐する第2のビーム路を形成するための少なくとも1つの第1の偏光スプリッタとを備える、レーザ走査顕微鏡。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ走査顕微鏡であって、
前記第1の偏光回転素子は、前記電気光学的変調器の動作モードに応じて調整され、
前記第2の偏光回転素子は、前記第1または前記第2のビーム路に応じて調整される、レーザ走査顕微鏡。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレーザ走査顕微鏡であって、
前記少なくとも1つの第1の偏光スプリッタに対して光方向で後置された第2の偏光スプリッタをさらに備え、
前記第2の偏光スプリッタは、前記第1および前記第2のビーム路の統合を行い、
前記電気光学的変調器は、少なくとも2つの動作状態(B1、B2)の間で切り替え可能であり、
前記少なくとも2つの動作状態の間で切り替えることは、
B1.偏光の切り替え、
B2.焦点変調(FMM)を形成するために電気光学的変調器の異なる領域を異なって変調することである、レーザ走査顕微鏡。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザ走査顕微鏡であって、
前記第1および第2の偏光回転素子は、λハーフプレートである、レーザ走査顕微鏡。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレーザ走査顕微鏡であって、
前記第2のビーム路には、照明ビームの形状を変更する光影響手段が設けられ、
前記光影響手段は、少なくとも2つの部分ビームへのビーム分割部を含む、レーザ走査顕微鏡。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のレーザ走査顕微鏡であって、
部分ビームは、互いに角度をなす、レーザ走査顕微鏡。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれか1項に記載のレーザ走査顕微鏡であって、
前記第2のビーム路中で前記光影響手段の前方および前記第1のビーム路中で前記第1および前記第2の偏光スプリッタの間のうちの少なくとも一方には制御可能な光シャッタが設けられている、レーザ走査顕微鏡。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のレーザ走査顕微鏡の構成要素を備える、レーザ走査顕微鏡の照明ビーム路における構成要素群。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のレーザ走査顕微鏡のための方法であって、
前記レーザ走査顕微鏡は、前記異なる複数の動作モードを、
・シングルスポットレーザ走査顕微鏡として動作する動作モード
・マルチスポットレーザ走査顕微鏡として動作する動作モード
・シングルスポット焦点変調として動作する動作モード
・マルチスポット焦点変調として動作する動作モード
・光褪色後蛍光回復法システムとして動作する動作モード、のうちの少なくとも2つの動作モードの間で切り替える、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
前記動作モードの切り替えは、ブリーチング過程または試料領域のマニピュレーションの後に、レーザ走査顕微鏡のマルチスポットの照明ビームを形成するマルチスポットモードへの切り替えが即時に行われるように実行される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
基本的問題
要求が変化する生物学的試料での顕微鏡、例えば進入深度が制限されていて、強く散乱した媒体中の顕微鏡および/または動的なプロセスを観察するための生体セル顕微鏡、または拡散プロセスを顕微鏡的に分析する際には、散乱した媒体への進入深度、試料保護(ブリーチング、光毒性)、画像記録速度およびROI(関心領域)マニピュレーションに関する柔軟性に高い要求が存在する。
【背景技術】
【0002】
2光子励起顕微鏡(特許文献2):
欠点は、レーザシステムが非常に高価であること、色素の選択が制限されること、試料負荷である。
【0003】
FRAP(光褪色後蛍光回復法):
ここでは所定の試料領域が目的通りにブリーチング(褪色)され、引き続きその回復特性を時間的に検知する。これに関して、蛍光がブリーチングするまで、試料の選択領域を目的通りにおよび高い強度で照射するためには個別スポットモード(シングルスポット)が必要である(特許文献3参照)。そして拡散過程による蛍光の回復が可能な限り高速の画像形成により測定される。そのためには、回復の勾配はブリーチングの終了直後が最大であるため、ブリーチング過程と画像形成過程とを高速に切り替えるのが有利である。
【0004】
[非特許文献1、非特許文献2、特許文献1]で公開されたような焦点変調顕微鏡(FMM)
FMMでは励起レーザ光の半分が(直径で)位相変調される。顕微鏡対物レンズによるフォーカシングの際に、この半分の位相変調が焦点容積内に強度変調を引き起こす。この強度変調は、焦点上にあるピンホールの後での例えばロックイン検出によって検出することができる。この方法の利点は、弾動光子、すなわち散乱されない光子であって、焦点に光分布を形成する光子だけがこの変調信号に関与し、これらの光子が信号光子の時間的強度変調を引き起こすことである。例えば強く散乱した媒体内で何度も散乱した光子はしっかりした位相関係を失い、焦点内での時間に依存する干渉構造には寄与せず、ひいてはロックイン復調された信号には寄与しない。これにより散乱された光によるバックグランドが強く低減され、レーザ共焦点顕微鏡に比較的正確に試料を結像することのできる深度が上昇する。
【0005】
これまでレーザ光の半分を位相変調するためには機械的アプローチが使用されている。[非特許文献1]ではレーザ光が分割されたミラーに偏向され、このミラーの一方の半分が圧電素子を介して他方の半分に対して相対的に移動される。
【0006】
[非特許文献2]では、ビームが半分まで、ガルバノメータスキャナ上にあるガラスディスクを通して導かれる。このディスクを回転することにより、ビームの一方の半分の位相が他方の半分に対して相対的に変調される。
【0007】
すべての機械的アプローチの基本的問題は変調率が低いことであり、この変調率は使用される調整素子の機械的共振周波数によって制限される([非特許文献1]と[非特許文献2]については5〜20kHz)。
【0008】
ロックイン検出法に対してはピクセル滞在時間ごとに最小数の変調期間が必要であるので、これにより画像記録レートが強く制限される。
FMMは、強く散乱した媒体内のレーザ走査顕微鏡(LSM)に対しては有利に使用することができ、多光子励起顕微鏡[特許文献2]に対する択一的手段を提供する。
【0009】
FMM解決手段はこれまで公知のように、進入深度に有利な変調モードのために設計されている。
しかしフレキシブルに使用可能なLSMについては、とりわけ生体セル研究での使用に対してさらなる要求が生じる。この要求の一部はLSM、とりわけ多光子励起顕微鏡の現行の形状と調和させるのが困難である。ここでは基準として、とくに記録速度(動的なプロセスの観察)と試料負荷(光毒性、動的なプロセスの長時間観察の際のブリーチング)を挙げられる。
【0010】
動的なプロセスを観察するためにLSMにおいて画像記録速度を上昇させることは、基本的に例えば共振スキャナによる高速走査によって達成することができる。しかしこのことは、短時間のピクセル滞在時間内で十分な蛍光信号を発生させるためには高い強度が必要であるため、試料保護の要求と調和させるのが困難である。
【0011】
画像記録速度を上昇させ、および/または試料負荷を低減するための別の可能性は、空間的に分割された複数の焦点を同時にラスタ化することである(マルチスポットLSM)(特許文献4、特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許国際公開第2009008838号
【特許文献2】欧州特許第500717号 Zweiphotonenmikroskopie
【特許文献3】ドイツ特許願第19829981号
【特許文献4】ドイツ特許願第19904592号
【特許文献5】米国特許第6028306号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】チェンら(Chen et al.),Opt.Express 16,18764(2008)
【非特許文献2】ウォンら(Wong et al.),Appl.Opt.48,3237(2009)
【非特許文献3】スエダら(Sueda et al.),Opt.Express 12,3548(2004)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明
本発明は、独立請求項の特徴部分によって特徴付けられる。
有利な改善形態は従属請求項の対象である。
【0015】
本発明で請求される解決手段は、具体的なFRAP課題設定にも、2つのビーム経路の高速の切り替えを必要とする択一的な画像形成モード間での高速切り替えにも関連する。ここでビーム経路の1つはマルチスポット発生を含むことができるが、含む必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】LSMのフレキシブルなマルチモードアプローチのためのビーム切り替えおよびビーム変調を実行する構成を示す。
【
図3】
図1に示した構成のための電気光学的変調器を斜視図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の種々の有利な実施形態を概略的に説明する。
図1は、LSMのフレキシブルなマルチモードアプローチのためのビーム切り替えおよびビーム変調を実行する構成を示す。図面および明細書に詳細に説明されたセグメント化されたEOM(s−EOM)によりマルチモードLSMが例えば、
・シングルスポットLSM
・マルチスポットLSM
・シングルスポットFMM
・マルチスポットFMM
・FRAPシステム
として駆動され、さらにこれらの動作状態の間を往復して高速に切り替えることができる。
【0018】
光源(レーザ)のビーム路には光電変調器S−EOMが設けられており、この光電変調器は有利には
図2に示されるように制御することができる。
S−EOMにはλ/2プレートP1とP2が前置および後置接続されている。
【0019】
プレートP2には偏光ビームスプリッタPBS1が続いており、PBS1の通過方向には別の偏光ビームスプリッタPBS2が続いている。
PBS1の反射方向には光シャッタS1と、レーザ光からマルチスポットを形成するためのMSモジュールとが設けられている。レーザ光はミラーを介してPBS2から走査モジュールを有する顕微鏡Mの方向に再び入力結合される。さらに透過方向で両方のPBSの間に第2の光シャッタS2を有利に配置することができる。
【0020】
プレートP1とP2は制御ユニットASを介して回転可能に構成されており(P1、P2)、P2はさらに外に旋回可能に構成することができる。
シャッタとS−EOMも同様に制御ユニットASと接続されており、制御ユニットは種々の動作モード間の切り替えを制御する。
【0021】
シャッタS1は、とりわけシングルスポット(LSM、FMM)モードでは、光がMSモジュールおよびPB2を介して試料に達し、それにより弱いゴーストイメージが形成され得ることを完全に回避するために用いられる。シャッタS2は、部分ビームの1つがマルチスポットモードで、急な遷移(ストライプ)に伴う不均等な画像明度の原因となり得る両方のPBSにより誤偏光されたレーザ光が氾濫することによる強調過多を回避するために用いられる。
【0022】
表1には、レーザ走査顕微鏡の前記動作形態に対する個々のエレメントの例として動作モードが示されている。
【0023】
【表1】
半波電圧とは、使用されるレーザ波長に対するEOMの動作電圧であり、この動作電圧は異方性に偏光されたレーザ光の成分の運動遅延を半分の波長において引き起こし、したがって偏光の回転は90度である。
【0024】
P1でのゼロ度と22.5度は、入射するレーザビームの偏光で前提にされた線形の配向と、半波プレートの異方性結晶軸との間の角度である。レーザビームは例えば前置されたAOTFにより前記線形の配向を受け、例えば垂直に配向することができる。
【0025】
焦点変調モード(3および4)では、電極E1ではなく電極E2を変調することも考えられる。
したがって表1の個々の動作モードについて、レーザビームは
図1に示したエレメントを介して以下のようにビーム経過する。
1. P1、EOM、P2、PBS1、S2、PBS2を介して方向Mに
2. P1、EOM、P2、PBS1、S1、MS、PBS2を介してMに
3. P1、EOM、P2、PBS1、S2、PBS2を介してMに
4. P1、EOM、P2、PBS1、S1、MS、PBS2を介してMに
5. P1、EOM、P2、PBS1、S2、PBS2を介してMに
図2は、電気光学的変調器(EOM)を示す。
【0026】
本発明では、EOMがFMMモードで、励起光線の少なくとも一部、好ましくは半分をとくに高速に非機械的に変調するために使用される。
励起光線の半分は、1つまたは複数のEOMの一部を逆極性に制御することにより異なって(逆相に)変調される。
【0027】
EOMの一部が異なって制御される場合、当業者には通常の絶縁層によって、セグメント化された電極の互いの影響を回避することができる。
電気光学的変調器は、二重屈折結晶内のポッケルス効果を利用する。ポッケルス効果では、電圧を結晶に印加することにより、その異方性屈折率が変化する。このことは、通過するレーザ光の偏光または位相を走査するのに利用される。ポッケルス効果はほとんど即時に生じ、これにより変調を結晶の種類と大きさに応じて非常に高速に行うことができる(最大数10MHz)。
【0028】
以下に、実施例についてどのようにFMM顕微鏡に有利に使用することができるかを説明する。
並置される、または互いにずらし、向き合って配置される電極により形成される逆相の場E1、E2を有するEOMが
図2に概略的に示されている。
【0029】
すべてのEOMベースの解決手段における基本的に重要な利点は、数10MHzの大きな変調速度である。
EOMは、非特許文献1、非特許文献2によれば照明ビーム路、有利には拡張された(視準化された)ビーム区間に配置される。
【0030】
ビーム拡張の大きさによりビーム横断面を結晶サイズに適合することができる。
図2の左では上方と下方の2つの半分ビームが、上側部分と下側部分とで逆相に極性付けられた電極により異なって変調される。
【0031】
変調された区間はレーザビームで上下に重なることができるが、重なる必要はない。
図2の右部分には側面図が概略的に示されており(左部分の矢印方向)、制御される区間は有利には互いに側面がずらされている。
【0032】
これは散乱場(EOMでは高電圧が必要)を回避するのに有利である。
逆相に極性付けられた実施例は、例えば結晶を変調すべきでないが、一方の側から他方の側へのクロストーク効果を回避すべき場合に有利である。逆相の制御により、さらに有利にはストローク間隔(逆に経過する振幅の間隔)が、単相の制御と比較して倍になる。所望の位相(ストローク)を区別する場合、これにより有利には結晶も短縮できる(伝搬長の短縮)。さらにEOMの制御される領域をずらして配置することにより、両方のビーム領域をオーバラップすることができる(半分を超えて)。
【0033】
マルチモード切り替えのためのアプローチ
後で明らかになるように、EOMは別の動作モードでも同じ構成で、シングルスポット変形例での駆動のために、好ましくはFRAPのために驚くことには有利に使用できる。
【0034】
図3は、
図1に示した構成のための電気光学的変調器を斜視図で示す。
交番電場を形成するための電極1と2は、結晶の下面に対応する対向電極を有する(分かりやすくするため図示されていない)。
【0035】
セグメント化された電極を備えるEOMの等方性結晶軸と異方性結晶軸とは互いに垂直であり、かつ光軸に対して垂直であり、図に示されているように、電場の軸に対して45°で配向されている。このことは線形に偏光されたレーザ光に対して以下の作用を有する。
【0036】
・異方性結晶軸に沿ったレーザ偏光→レーザ光は、電極に印加される電界強度にしたがいポッケルス効果のため遅延(運転期間が延長)される。
・(異方性)等方性結晶軸に対して45°でレーザ偏光→光は(異方性)等方性伝搬方向に均等に分割される。電極に印加される電圧に応じて(異方性伝搬成分の遅延)、結晶から出た後に両方の成分が重なると新たな位相状態が調整される。これは半波遅延では例えば線形の90°回転、または四分の一波遅延では円偏光である。
【0037】
動作モードFMM(3a)に対しては、レーザ偏光がEOMの高速結晶軸(すなわち異方性軸)に沿って入射される。この配向は、
図1でS−EOMに前置され、回転可能に構成された第1のλ/2プレートP1によって調整することができる。対応して偏光回転は行われないが、FMMに必要なように、EOMにおける半分ビームの位相変調または両方の半分ビームの逆相変調は必要である。
【0038】
第2のλ/2プレートP2(S−EOMの後方)の回転により、PBS1と関連して、レーザ出力をマルチスポットモードを介して導くのか(マルチスポットFMM)またはスキャンヘッド/顕微鏡の方向に直接導くのか(シングルスポットFMM)を調整することができる。
【0039】
S−EOMの前方にある第1のλ/2プレートP1が回転されると、レーザ偏光と(異方性)等方性結晶軸とが45°の角度を形成し(
図3(b))、セグメント化された電極が同相で制御される。これにより両方のビーム半分の間に位相差は存在せず、EOMは偏光スイッチとして機能し、例えば偏光を水平と垂直との間で、例えば矩形電圧の制御により高速に切り替える。すなわち、光がPBSを透過するか、またはここで反射されるかを設定する。その際、この動作モードに対しては、第2のλ/2プレートがビーム路から取り出されるか、またはその高速軸が後続のPBSの優位軸に対して平行になるよう配向される。この動作モードでは、このシステムを有利にはFRAPに使用することができる。高速の切り替えにより、スキャナと関連して任意のROI(関心領域、特許文献3)を目的通りにブリーチングすることができる。
【0040】
とりわけ生体セル画像形成のためには、高速観察のためのマルチスポットLSMとシングルスポットマニピュレーションとの魅力的な組み合わせが有利に可能である。直線通過(表T1の第5行)でのマニピュレーションイベントの後に、マルチスポットLSMモードで引き続き観察走査(表T1の第2行)を高速に行うことができ、これによりマニピュレーションによってトリガされた動的な事象(例えば色素の活性化)を高い時間的分解能で観察することができる。
【0041】
本発明は提示された経過に束縛されるものではない。むしろ当業者が取り扱う枠内で本発明を、異なる複数の動作モードの切り替えのために使用することができ、本発明はペアでもまたは多重の組み合わせでも有利に使用することができる。