特許第5926295号(P5926295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5926295ヒドロクロロフルオロカーボンの触媒接触脱塩化水素化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926295
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】ヒドロクロロフルオロカーボンの触媒接触脱塩化水素化
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/25 20060101AFI20160516BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20160516BHJP
   B01J 27/12 20060101ALI20160516BHJP
   B01J 27/10 20060101ALI20160516BHJP
   B01J 37/06 20060101ALI20160516BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160516BHJP
【FI】
   C07C17/25
   C07C21/18
   B01J27/12 ZZAB
   B01J27/10 Z
   B01J37/06
   !C07B61/00 300
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-555479(P2013-555479)
(86)(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公表番号】特表2014-513673(P2014-513673A)
(43)【公表日】2014年6月5日
(86)【国際出願番号】US2012025871
(87)【国際公開番号】WO2012115930
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2015年1月23日
(31)【優先権主張番号】61/444,879
(32)【優先日】2011年2月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スン シューフイ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ジョセフ ナッパ
【審査官】 品川 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−532762(JP,A)
【文献】 特表2010−535698(JP,A)
【文献】 米国特許第07829748(US,B1)
【文献】 特開2008−110980(JP,A)
【文献】 特表2010−535206(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0088593(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/155029(WO,A1)
【文献】 特開2010−047573(JP,A)
【文献】 特表2009−522365(JP,A)
【文献】 国際公開第93/025510(WO,A1)
【文献】 特表2010−510221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/25
B01J 23/02
C07C 21/18
B01J 37/06
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱塩化水素化プロセスであって、
反応域においてCFClCHXを触媒と接触させて、CF=CHXを含む生成混合物を生成させるステップを含み、
前記触媒は、カーボンに担持されたMYにより示されるアルカリ金属ハロゲン化物塩を含み、
式中、
は、過フッ化アルキル基、
Xは、H、F、Cl、またはBr、
Mは、K、Na、またはCs、および
Yは、F、Cl、またはBr、であり、
前記触媒は、アルカリ金属ハロゲン化物塩とカーボンとの合計量に対して5重量%〜40重量%のアルカリ金属ハロゲン化物塩を含有する、
ことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記カーボンは、活性炭であることを特徴とする請求項1に記載の脱塩化水素化プロセス。
【請求項3】
前記カーボンは、酸洗浄した活性炭であることを特徴とする請求項2に記載の脱塩化水素化プロセス。
【請求項4】
Mは、Kであり、
Yは、FまたはCl、
であることを特徴とする請求項1に記載の脱塩化水素化プロセス。
【請求項5】
前記反応域の温度は、200℃から500℃であることを特徴とする請求項1に記載の脱塩化水素化プロセス。
【請求項6】
前記反応域の温度は、320℃から380℃であることを特徴とする請求項5に記載の脱塩化水素化プロセス。
【請求項7】
CF=CHXに対する生成物選択性は、少なくとも90モル%であることを特徴とする請求項1に記載の脱塩化水素化プロセス。
【請求項8】
CF=CHXに対する生成物選択性は、少なくとも96モル%であることを特徴とする請求項1に記載の脱塩化水素化プロセス。
【請求項9】
CFClCHXは、CFCFClCHClであり、
CF=CHXは、CFCF=CHClである、
ことを特徴とする請求項1に記載の脱塩化水素化プロセス。
【請求項10】
CFClCHXは、CFCFClCHであり、
CF=CHXは、CFCF=CHである、
ことを特徴とする請求項1に記載の脱塩化水素化プロセス。
【請求項11】
前記触媒を不活性ガスでパージするステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の脱塩化水素化プロセス。
【請求項12】
前記不活性ガスは、Nであることを特徴とする請求項11に記載の脱塩化水素化プロセス。
【請求項13】
前記触媒は、アルカリ金属ハロゲン化物塩とカーボンとの合計量に対して10重量%〜30重量%のアルカリ金属ハロゲン化物塩を含有することを特徴とする請求項1に記載の脱塩化水素化プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ヒドロフルオロオレフィンを作製するためのヒドロクロロフルオロカーボンの触媒接触脱塩化水素化に関する。より詳細には、触媒は、カーボンに担持されたアルカリ金属化合物である。
【背景技術】
【0002】
冷蔵産業は、過去数十年間、モントリオール議定書を受けて段階的に廃止されるとされているオゾン破壊性のクロロフルオロカーボン(CFC)およびヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)に替わる冷媒の発見に努めてきた。ほとんどの冷媒製造元にとっての解決法は、ヒドロフルオロカーボン(HFC)冷媒の商業化であった。現在もっとも広く使用されている新規なHFC冷媒のHFC−134a(CFCHF)は、オゾン破壊係数がゼロであることから、モントリオール議定書を受けての現行の段階的廃止規制による影響を受けることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2135855号明細書
【特許文献2】米国特許第4,978,649号明細書
【特許文献3】米国特許第5,136,113号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オゾン破壊の懸念に加えて、地球温暖化はもう一つの環境問題である。したがって、オゾン破壊係数が低いだけでなく、地球温暖化係数も低い熱伝達組成物が必要とされている。あるヒドロフルオロオレフィン(HFO)は、双方の目標を満たしている。したがって、現行の商業的冷蔵製品よりも低い地球温暖化係数を有するヒドロフルオロオレフィンの作製が必要とされている。HFO−1234yf(CFCF=CH)は、こうしたヒドロフルオロオレフィンの1種である。
【0005】
ヒドロフルオロオレフィンは、冷媒としてだけでなく、溶媒、発泡剤、清浄剤、エアロゾル噴射剤、誘電体、消火剤、およびパワーサイクル作動流体としても用途を見出すことができる。例えば、HCFO−1224yd(CFCF=CHCl)は、発泡剤、消火剤、冷媒などとして使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、脱塩化水素化プロセスを提供する。このプロセスは、反応域においてRCFClCHXを触媒と接触させて、RCF=CHXを含む生成混合物を生成させるステップを含み、前記触媒は、カーボンに担持されたMYを含み、式中、Rは、過フッ化アルキル基、Xは、H、F、Cl、Br、またはI、Mは、K、Na、またはCs、およびYは、F、Cl、またはBrである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例5記載の触媒接触脱塩化水素化プロセスが継続し、かつ触媒を窒素ガスでパージした後の、HCFC−244bbの転換速度、およびHFO−1234yfに対する生成物選択性の変化を示すグラフである。
図2】実施例7記載の触媒接触脱塩化水素化プロセスの分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前述の全般的説明および以下の詳細な説明は例示的および説明的なものにすぎず、特許請求の範囲において特定されている本発明を限定するものではない。実施形態のいずれか1種または複数の他の特徴および利益は、以下の詳細な説明、および特許請求の範囲から明らかであろう。
【0009】
本明細書で使用する用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「包含する(includes)」、「包含する(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、またはそれらの他のどの変形も、非排他的な包含を網羅することを意図している。例えば、元素の一覧を含むプロセス、方法、品物、または備品は、必ずしもそれら元素のみに限定されず、明確には列挙されていない他の元素、またはそのようなプロセス、方法、品物、または備品に固有の元素を包含することができる。さらに、明確に否定されていない限り、「または」は、包含的な「または」を意味し、排他的な「または」を意味しない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つに当てはまる:Aは真(または存在)、Bは偽(または非存在)であり、Aは偽(または非存在)、Bは真(または存在)であり、或いはAとBの双方が真(または存在)である。
【0010】
また、「a」または「an」は、本明細書に記載の元素および成分を記載するのに使用する。これは単に便宜上なされており、本発明の範囲の一般的な意味を示すためになされている。この記述は、1つまたは少なくとも1つを包含するとして読まれるべきであり、単数は、また、明らかにそうではないことを意味していない限り、複数を包含する。
【0011】
別段の定義がない限り、本明細書に使用する技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載しているものと類似または同等な方法および材料が本発明の実施形態の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を下記に記載する。本明細書に挙げた出版物、特許出願、特許、および他の参考文献はすべて、特別な引用を挙げない限り、参照としてそれらの全体が本明細書に援用されている。矛盾する場合は、定義を包含する本明細書が規制する。さらに、材料、方法、および例は例示のみを目的としており、限定する意図はない。
【0012】
量、濃度、または他の値もしくはパラメーターが、範囲、好ましい範囲、または好ましい値より高い値および/または好ましい値より低い値の一覧として示される場合、これは、範囲を別個に開示しているか否かに関わらず、任意の上限範囲または好ましい値、および任意の下限範囲または好ましい値の任意の対から形成されたすべての範囲を具体的に開示していると理解されたい。ある範囲の数値が本明細書に記載されている場合、別段の指示がない限り、その範囲はその終点、ならびにその範囲内のすべての整数および分数を包含することを意図している。
【0013】
本明細書で使用する用語「脱塩化水素化」は、分子中の隣接する炭素上の水素および塩素を除去するプロセスを意味する。
【0014】
本明細書で使用する用語「ヒドロフルオロオレフィン」は、水素、炭素、フッ素、および少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含有している分子を意味する。本開示のヒドロフルオロオレフィンは、フッ素以外の、塩素、臭素、およびヨウ素などのハロゲンを含有することができる。本開示の例示的なヒドロフルオロオレフィンはHFO−1234yf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1224ydを包含する。
【0015】
本明細書で使用する用語「アルキル」は、単独または「過フッ化アルキル基」などの複合語において、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、またはそれらの様々な異性体などの、環状または非環状および直鎖または分岐のアルキル基を包含する。
【0016】
本明細書で使用する用語「過フッ化アルキル基」は、炭素原子上のすべての水素がフッ素で置換されたアルキル基を意味する。過フッ化アルキル基の例には、−CFおよび−CFCFが包含される。
【0017】
本明細書で使用する用語「RCF=CHXに対する生成物選択性」は、得られた全生成物の合計モル量と比較した、プロセスで得られたRCF=CHXのモル百分率を意味する。
【0018】
本明細書で使用する用語「高温」は、室温より高い温度を意味する。
【0019】
脱塩化水素化プロセスであって、反応域においてRCFClCHXを触媒と接触させて、RCF=CHXを含む生成混合物を生成させるステップを含み、前記触媒は、カーボンに担持されたMYを含み、式中、Rは、過フッ化アルキル基、Xは、H、F、Cl、Br、またはI、Mは、K、Na、またはCs、およびYは、F、Cl、またはBrであるプロセスを開示している。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態では、Rは、−CFまたは−CFCFである。本発明のいくつかの実施形態では、RCFClCHXは、CFCFClCHであり、RCF=CHXは、CFCF=CHである(すなわち、RはCF、XはHである)。本発明のいくつかの実施形態では、RCFClCHXは、CFCFClCHClであり、RCF=CHXは、CFCF=CHClである(すなわち、RはCF、XはClである)。
【0021】
本開示のいくつかのヒドロフルオロオレフィン、例えば、CFCF=CHClは、様々な立体配置異性体または立体異性体として存在する。特定の異性体を明示していない場合、本開示は、単一の立体配置異性体、単一の立体異性体、またはそれらの任意の組合せをすべて包含することを意図している。例えば、HCFO−1224yd(CFCF=CHCl)は、E−異性体、Z−異性体、または両異性体の任意の比での任意の組合せもしくは混合物を意味する。
【0022】
本開示における脱塩化水素化プロセスの出発材料、すなわち、RCFClCHXは、当技術分野で周知の方法によって合成することができる。例えば、HCFC−244bb(CFCClFCH)は、特許文献1に開示されるように、約25から約99.9モル%の五塩化アンチモンと約0.1から約75モル%のルイス酸金属とを有する触媒の存在下においてHCFO−1233xf(CFCCl=CH)をHFと接触させることによって調製することができる。他の例では、HCFC−234ba(CFCClFCHCl)は、HFO−1234yfをClと反応させることによって、またはCF=CFClをCHFClと付加反応させることによって調製することができる。
【0023】
脱塩化水素化プロセスは、液相または気相において、連続、半連続、またはバッチ操作を包含する周知の化学工学方法を使用して実施することができる。反応域の温度は、一般に約200℃から約500℃である。本発明のいくつかの実施形態では、反応域の温度は、約320℃から約380℃である。脱塩化水素化プロセスは、大気圧より高い圧力、大気圧、または大気圧より低い圧力で行うことができる。出発材料RCFClCHXと触媒との接触時間は、概して変えることができる。一般に、接触時間は、約10秒から約150秒である。本発明のいくつかの実施形態では、接触時間は、約40秒から約100秒である。
【0024】
本発明の接触ステップは、当技術分野で周知の方法によって実施することができる。本発明のいくつかの実施形態では、出発材料RCFClCHXを、場合により不活性ガスと共に、触媒を含有する反応器に供給する。本発明のいくつかの実施形態では、出発材料RCFClCHXを、場合により不活性ガスと共に、反応器中の触媒ベッドに通す。本発明のいくつかの実施形態では、出発材料RCFClCHXを、場合により不活性ガスと共に、撹拌または揺動しながら反応器中で触媒と混合させることができる。
【0025】
脱塩化水素化プロセスは、He、Ar、またはNなどの不活性ガスの存在下で行うことができる。本発明のいくつかの実施形態では、不活性ガスを出発材料と同時に反応器に供給する。
【0026】
本発明によれば、脱塩化水素化に適した触媒を提供する。前記触媒は、カーボン担持の、式MYによって表されるアルカリ金属ハロゲン化物塩を含み、式中、Mは、K、Na、またはCs、およびYは、F、Cl、またはBrである。本発明のいくつかの実施形態では、MYは、KFである。本発明のいくつかの実施形態では、MYは、KClである。
【0027】
アルカリ金属ハロゲン化物塩は、当技術分野で周知の堆積技術を使用して、カーボン担体に堆積させることができる。例えば、アルカリ金属ハロゲン化物塩を脱イオン水に溶解させ、次いで、新たに乾燥させた酸洗浄済み活性炭と混合することができる。アルカリ金属ハロゲン化物塩の溶液が活性炭に完全に吸収されるまで、混合物を穏やかに撹拌することができる。最後に、付加させた活性炭を、高温で乾燥させ、触媒として使用するためにシール容器に保存する。本発明のいくつかの実施形態では、触媒は、アルカリ金属ハロゲン化物塩とカーボンとの合計量に対して約5wt%(重量%)から約40wt%のアルカリ金属ハロゲン化物塩を含有する。本発明のいくつかの実施形態では、触媒は、アルカリ金属ハロゲン化物塩とカーボンとの合計量に対して約10wt%から約30wt%のアルカリ金属ハロゲン化物塩を含有する。
【0028】
本発明の諸実施形態で使用するカーボンは、次の源のうちのいずれからでもよい:木、泥炭、石炭、ココナッツ殻、骨、褐炭、石油系残渣、および糖。使用することができる市販のカーボンは、次の商標で販売されるものを包含する:Barneby&Sutcliffe(商標)、Darco(商標)、Nucharm、ColumbiaJXN(商標)、ColumbiaLCK(商標)、Calgon(商標)PCB、Calgon(商標)BPL、Westvaco(商標)、Norit(商標)、Takeda(商標)およびBarnaby Cheny NB(商標)。
【0029】
カーボンは、また、三次元のマトリクス多孔性炭素質材料を包含する。その例は、特許文献2に記載されるものである。本発明の一実施形態では、カーボンは、気体状または蒸気状の炭素含有化合物(例えば、炭化水素)を多量の炭素質材料(例えば、カーボンブラック)の粒に導入し;炭素含有化合物を分解して、粒の表面に炭素を堆積させ;得られた材料を水蒸気を含む活性化剤ガスで処理して、多孔性炭素質材料を生じさせることによって得られる三次元のマトリクス炭素質材料を包含する。炭素−炭素コンポジット材料はこのように形成される。
【0030】
カーボンには、非洗浄および酸洗浄されたカーボンが包含される。本発明のいくつかの実施形態では、適切な触媒は、触媒担体として使用されるカーボンを、HNO、HCl、HF、HSO、HClO、CHCOOH、およびそれらの組合せなどの酸で処理することによって調製することができる。酸処理は、一般に、1000ppm未満の灰を含有するカーボンを提供するのに十分である。いくつかの適切なカーボンの酸処理は、特許文献3に記載されている。本発明のいくつかの実施形態では、活性炭を高温で乾燥させ、次いで、1から12重量%のHNO中において時々撹拌しながら8から24時間浸漬させる。浸漬プロセスは、室温から80℃の温度範囲で行うことができる。次いで、活性炭をろ過し、洗浄液が4.0超のpHを有するまで、または洗浄液のpHが変わらなくなるまで、脱イオン水で洗浄する。最後に、活性炭を高温で乾燥させる。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態では、カーボンは、活性炭である。本発明のいくつかの実施形態では、カーボンは、酸洗浄された活性炭である。カーボンは、粉末、粒状、またはペレットなどの形とすることができる。
【0032】
反応域からの流出物は、一般に、残存する出発材料RCFClCHX、所望のヒドロフルオロオレフィン生成物RCF=CHX、およびいくつかの副生成物を包含する。所望の生成物RCF=CHXは、従来の方法によって生成混合物から回収することができる。本発明のいくつかの実施形態では、生成物RCF=CHXは、蒸留によって精製または回収することができる。
【0033】
本開示の触媒接触脱塩化水素化プロセスが、高選択性を有する所望の生成物を生成したことが実験を通して判明した。本発明のいくつかの実施形態では、RCF=CHXに対する生成物選択性は、少なくとも90モル%である。本発明のいくつかの実施形態では、RCF=CHXに対する生成物選択性は、少なくとも96モル%である。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、脱塩化水素化プロセスが継続するにつれて、触媒の活性が減少する可能性がある。不活性ガスでパージすることによって、触媒を再生させ得ること、または触媒の活性を回復させ得ることが実験を通して判明した。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、脱塩化水素化プロセスは、触媒を不活性ガスでパージするステップをさらに含む。不活性ガスは、He、Ar、N、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択することができる。本発明のいくつかの実施形態では、脱塩化水素化プロセスは、触媒をNでパージするステップをさらに含む。
【0035】
パージングプロセスは、高温で不活性ガスを触媒に通すことによって行うことができる。本発明のいくつかの実施形態では、温度は、約200℃から約500℃である。本発明のいくつかの実施形態では、温度は、約320℃から約380℃である。本発明のいくつかの実施形態では、パージングプロセス中の温度は、脱塩化水素化段階とほぼ同じである。本発明のいくつかの実施形態では、パージングプロセス中の不活性ガスの流速は、脱塩化水素化段階中のRCFClCHXの流速の約5倍から約50倍である。本発明のいくつかの実施形態では、パージングプロセス中の不活性ガスの流速は、脱塩化水素化段階中のRCFClCHXの流速の約10倍から約30倍である。パージ時間は、触媒活性の回復速度に応じて変わる。一般に、パージ時間は、約1時間から約12時間である。
【0036】
一般に、パージングプロセス中、出発材料RCFClCHXを反応器に供給するのを停止する。本発明のいくつかの実施形態では、触媒活性の著しい低下を検知した後、反応器へのRCFClCHXの流入を中止し、不活性ガスと交換するが、その不活性ガスの流入速度は、先のRCFClCHXの流入速度の約5倍から約50倍であり、その間、反応器の温度は同じままである。パージプロセスの終わりに、パージ用の不活性ガスを中止し、RCFClCHXの流入を再開する。
【0037】
本発明の実施形態のプロセスの適用に使用する反応器、蒸留塔、およびそれらの関連供給ライン、流出ライン、ならびに関連ユニットは、耐食性の材料で構成することができる。典型的な構成材料には、テフロン(登録商標)およびガラスが包含される。また、典型的な構成材料には、ステンレス鋼、特にオーステナイトタイプのもの、Monel(商標)ニッケル−銅合金、Hastelloy(商標)ニッケルベース合金、およびInconel(商標)ニッケル−クロム合金などの周知の高ニッケル合金、ならびに銅−クラッド鋼も包含される。
【0038】
多くの態様および実施形態を上記に記載したが、これらは単なる例示であり、限定するものではない。本明細書の記載から、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の態様および実施形態が可能であることを理解されたい。
【0039】
(実施例)
以下の実施例において本明細書に記載した概念をさらに説明するが、これらは、特許請求の範囲に記載した本発明の範囲を限定するものではない。
【0040】
(HNO洗浄済みカーボンの調製)
表面積が約1200から約1500m/gの範囲にある活性炭を、1wt%のHNO水溶液に室温で12時間浸漬させ、その後、脱イオン水で十分に洗浄し、120℃で12時間乾燥させた。上記で調製したHNO洗浄済み活性炭のいくらかにKFを付加させ、実施例1で使用し、いくらかにKClを付加させ、実施例2および3で使用した。
【0041】
(HNO洗浄済みTakeda(商標)カーボンの調製)
表面積が約1000m/gから約1200m/gの範囲にあるTakeda(商標)活性炭を、1wt%のHNO水溶液に室温で12時間浸漬させ、その後、脱イオン水で十分に洗浄し、120℃で12時間乾燥させた。次いで、HNO洗浄済みTakeda(商標)カーボンにKClを付加させ、実施例4および5で使用した。
【0042】
(HNO洗浄済みTakeda(商標)カーボンの調製)
表面積が約1000m/gから約1200m/gの範囲にあるTakeda(商標)活性炭を、8wt%のHNO水溶液に60℃で12時間浸漬させ、その後、脱イオン水で十分に洗浄し、120℃で12時間乾燥させた。次いで、上記で調製したTakeda(商標)カーボンにKClを付加させ、実施例7で使用した。
【実施例1】
【0043】
実施例1は、HCFC−244bbを、酸洗浄済み活性炭に担持されたKFと接触させて、HFO−1234yfを生成させることを実証する。
【0044】
10cc(立方センチメートル)の、20wt%KF/酸洗浄済み活性炭の触媒粒を、0.43インチのI.D.Monel(商標)反応器チューブに装填して、触媒ベッドを形成した。98.8モル%のHCFC−244bbと1.2モル%のHCFO−1233xf(CFCCl=CH)とのガス状混合物を、4.3ml/分のNと共に、1.1g/時間の速度で触媒ベッドに通した。背圧は、ほぼ大気圧であった。反応器チューブからの流出物をGCおよびGC−MSによって分析した。出発材料HCFC−244bbの転換速度およびHFO−1234yfに対する生成物選択性を以下の表1に列挙した。これは、広範囲の温度にわたるHFO−1234yfに対する良好な生成物選択性を示している。
【0045】
【表1】
【0046】
触媒の安定性を、上記に記載したのと同一のプロセス条件下、約385℃で試験した。毎時間の終わりに、反応器チューブからの流出物をGCおよびGC−MSによって分析した。結果を以下の表2に列挙した。
【0047】
【表2】
【実施例2】
【0048】
実施例2は、HCFC−244bbを、酸洗浄済み活性炭に担持されたKClと接触させて、HFO−1234yfを生成させることを実証する。
【0049】
10cc(立方センチメートル)の、25wt%KCl/酸洗浄済み活性炭の触媒粒を、0.43インチのI.D.Monel(商標)反応器チューブに装填して、触媒ベッドを形成した。99.7モル%のHCFC−244bbと0.3モル%のHCFO−1233xfとのガス状混合物を、4.3ml/分のNと共に、1.1g/時間の速度で触媒ベッドに通した。背圧は、ほぼ大気圧であった。反応器チューブからの流出物をGCおよびGC−MSによって分析した。出発材料HCFC−244bbの転換速度およびHFO−1234yfに対する生成物選択性を以下の表3に列挙した。これは、広範囲の温度にわたるHFO−1234yfに対する良好な生成物選択性を示している。
【0050】
【表3】
【0051】
触媒の安定性を、上記に記載したのと同一のプロセス条件下、約385℃で試験した。毎時間の終わりに、反応器チューブからの流出物をGCおよびGC−MSによって分析した。結果を以下の表4に列挙した。
【0052】
【表4】
【実施例3】
【0053】
実施例3は、カーボン担持KCl触媒が、高背圧下で良好に作用することを実証する。
【0054】
プロセス条件はすべて、ここでの背圧が45psig(ポンド毎平方インチゲージ圧)であること以外、実施例2と同じであった。反応器チューブからの流出物の分析結果を以下の表5に列挙した。
【0055】
【表5】
【実施例4】
【0056】
実施例4は、HCFC−234baを、酸洗浄済みTakeda(商標)カーボンに担持されたKClと接触させて、HCFO−1224ydを生成させることを実証する。
【0057】
10cc(立方センチメートル)の、25wt%KCl/酸洗浄済みTakeda(商標)カーボンの触媒粒を、0.43インチのI.D.Monel(商標)反応器チューブに装填して、触媒ベッドを形成した。96モル%のHCFC−234baと4モル%のHFO−1234yfとのガス状混合物を、4.3ml/分のNと共に、1.1g/時間の速度で触媒ベッドに通した。背圧は、ほぼ大気圧であった。反応器チューブからの流出物をGCおよびGC−MSによって分析した。出発材料HCFC−234baの転換速度およびHCFO−1224ydに対する生成物選択性を以下の表6に列挙した。これは、広範囲の温度にわたるHCFC−234baの高い転換速度およびHCFO−1224ydに対する良好な生成物選択性を示している。
【0058】
【表6】
【実施例5】
【0059】
実施例5は、Nパージが、カーボン担持KCl触媒を再生して、出発材料HCFC−244bbの転換速度を回復させ得ることを実証する。
【0060】
10cc(立方センチメートル)の、25wt%KCl/酸洗浄済みTakeda(商標)カーボンの触媒粒を、0.43インチのI.D.Monel(商標)反応器チューブに装填して、触媒ベッドを形成した。99.4モル%のHCFC−244bbと0.6モル%のHCFO−1233xfとのガス状混合物を、4.3ml/分のNと共に、1.1g/時間の速度で触媒ベッドに通した。背圧は、ほぼ大気圧であった。反応器チューブからの流出物をGCおよびGC−MSによって分析した。
【0061】
触媒の安定性を約350℃で試験した。113時間の実行時間後、HCFC−244bbの転換速度が、約40モル%から約25モル%に低下したことが分かった。触媒ベッドを通過するHCFC−244bb/HCFO−1233xf/Nの流入を中止し、次いで、触媒を、150sccm(立方センチメートル毎分(標準状態下))のNを用いて約350℃で3時間パージした。パージ後、HCFC−244bb/HCFO−1233xf/Nの流入を再開し、転換速度が約38モル%に戻ったことが分かった。HFO−1234yfに対する生成物選択性は、130時間の全実行時間の試験中、一貫して約95モル%のレベルであった。結果を図1に示している。
【実施例6】
【0062】
実施例6は、HCFC−244bbを、非洗浄の活性炭に担持されたKClと接触させて、HFO−1234yfを生成させることを実証する。
【0063】
10ccの、25wt%KCl/非洗浄カルゴンカーボンCOCOプラス(Calgon Carbon COCO Plus)(約900m/gから約1200m/gの範囲の表面積を有する活性炭)の触媒粒(6〜10メッシュ)を、0.43インチのI.D.Monel(商標)反応器チューブに装填して、触媒ベッドを形成した。99.7モル%のHCFC−244bbと0.3モル%のHCFO−1233xfとのガス状混合物を、4.3ml/分のNと共に、1.1g/時間の速度で触媒ベッドに通した。背圧は、ほぼ大気圧であった。反応器チューブからの流出物をGCおよびGC−MSによって分析した。出発材料HCFC−244bbの転換速度およびHFO−1234yfに対する生成物選択性を実行時間と共に以下の表7に列挙した。
【0064】
【表7】
【実施例7】
【0065】
実施例7は、HCFC−244bbを、5wt%KCl/酸洗浄済みTakeda(商標)カーボンと接触させて、HFO−1234yfを生成させることを実証する。
【0066】
10ccの、5wt%KCl/酸洗浄済みTakeda(商標)カーボンの触媒粒(6〜10メッシュ)を、0.43インチのI.D.Monel(商標)反応器チューブに装填して、触媒ベッドを形成した。99.7モル%のHCFC−244bbと0.3モル%のHCFO−1233xfとのガス状混合物を、7.3sccmの速度で触媒ベッドに通した。背圧は、ほぼ大気圧であった。反応器チューブからの流出物をGCおよびGC−MSによって分析した。出発材料HCFC−244bbの転換速度およびHFO−1234yfに対する生成物選択性を温度および実行時間と共に図2に示した。触媒は、325℃においてHFO−1234yfに対する良好な選択性(90モル%超)および良好な安定性を示した。
【0067】
全般的な説明または実施例において上述の作業のすべてが必要ではないこと、特定の作業の一部が必要ではない可能性があること、および記載した作業に加えて1つまたは複数のさらなる作業を実施する可能性があることに注意されたい。さらに、作業が列挙されている順序は、必ずしもそれらの作業が実施される順序ではない。
【0068】
以上の詳述において、特定の実施形態に関してその概念を記載した。しかし、様々な改変および変更が、以下の特許請求の範囲に説明する本発明の範囲から逸脱することなく行い得ることを当業者なら理解されるであろう。したがって、明細書は、限定的意味ではなく例示的なものと見なすべきであり、こうした改変はすべて、本発明の範囲内に包含されることが意図されている。
【0069】
利益、他の利点、および問題に対する解決法を、特定の実施形態に関して上記に説明した。しかし、利益、利点、問題に対する解決法、ならびに、いずれの利益、利点、もしくは解決法を生じさせ得る、またはそれらをより明白にし得るいずれの特徴も、特許請求の範囲の請求項のいずれかまたはすべての重要、必要、または不可欠な特徴として解釈すべきではない。
【0070】
ある特徴を、明確にするため、本明細書で別個の実施形態の文脈において記載しているが、一つの実施形態において組み合わせて提供し得ることも理解されたい。逆に、簡潔にするために一つの実施形態の文脈において記載している様々な特徴はまた、別個にまたは任意の副次的組合せにおいて提供することができる。
図1
図2