(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926352
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】ロボットを備えた射出成形システム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/42 20060101AFI20160516BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20160516BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
B29C45/42
B29C45/17
B29C45/76
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-217613(P2014-217613)
(22)【出願日】2014年10月24日
(65)【公開番号】特開2016-83823(P2016-83823A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2015年11月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】関 直朗
(72)【発明者】
【氏名】白石 亘
【審査官】
井上 由美子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−269789(JP,A)
【文献】
特開昭61−195815(JP,A)
【文献】
特開2000−117799(JP,A)
【文献】
特開2005−349762(JP,A)
【文献】
特開2000−190260(JP,A)
【文献】
特開2004−066682(JP,A)
【文献】
特開平05−192956(JP,A)
【文献】
特開平08−001721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−84
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機と多関節ロボットを備えた射出成形システムであって、
前記多関節ロボットが前記射出成形機の機台内部の型締装置の下部に固定され、
前記多関節ロボットの動作範囲が機台内部領域と金型動作範囲内の領域であり、
前記多関節ロボットの動作範囲を囲う射出成形機カバーが、前記多関節ロボットの安全柵として機能し、
前記多関節ロボットが、金型からの成形品取り出し又は金型へのインサートワークの挿入又は金型から落下した成形品の収集又は成形品のバリ取り又は成形品のゲートカット又はランナーの取り出しのうち少なくとも一つ以上の作業を行うことを特徴とする射出成形システム。
【請求項2】
前記射出成形機の制御装置は前記射出成形機が非常停止する際の射出成形機非常停止信号を出力する射出成形機側非常停止信号出力部を備え、
前記多関節ロボットの制御装置は前記ロボットに前記射出成形機非常停止信号を入力するロボット側非常停止信号入力部を備え、
前記多関節ロボットの制御装置は前記射出成形機非常停止信号に基づいて前記多関節ロボットを停止させることを特徴とした請求項1に記載の射出成形システム。
【請求項3】
前記多関節ロボットの制御装置は前記多関節ロボットが非常停止する際のロボット非常停止信号を出力するロボット側非常停止信号出力部を備え、
前記射出成形機の制御装置は前記射出成形機に前記ロボット非常停止信号を入力する射出成形機側非常停止信号入力部を備え、
前記射出成形機の制御装置は、前記ロボット非常停止信号に基づいて、少なくとも型締動作と成形品突出動作を行う駆動部を停止させることを特徴とする請求項1または2の何れか一つに記載の射出成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は射出成形機に関し、成形機の機台内部にロボットを備えた射出成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、型締ユニットと射出ユニットを機台上に対向して備え、型締ユニットの型締空間に金型を配置して型締し、射出ユニットのシリンダで溶融・混練した樹脂を金型に射出し、成形する(特許文献1)。インサート成形では、型開き時に成形空間へインサートワーク(インサート部品)を配置する作業が生じる。製品取出機やインサートワーク挿入装置を設置する際、射出成形機の周囲に製品取出機やインサートワーク挿入装置を設置して、ランナー取り出し、製品取り出し、インサートワークの挿入を行っていた。
【0003】
特許文献2には、射出成形機の金型の下方から側方に渡って配置される基台と、この基台上をスライド可能に配置され、射出成形機の移動プレートに連結されて金型の側方を型開き方向にスライドする第1プレートと、この第1プレート上をスライド可能に配置され、基台と第1プレートに連結されたリンク機構によって型開き方向と直角にスライドする第2プレートと、この第2プレート上に配置されるチャック機構とよりなる射出成形品取出装置が開示されている。
【0004】
特許文献3には、射出成形機とロボットとを組み合わせ、前記ロボットに金型の交換作業、成形品の取り出し作業などの作業を行わせる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−12720号公報
【特許文献2】特開昭63−247016号公報
【特許文献3】特開平6−155519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、製品取出機やインサートワーク挿入装置として多関節ロボットなどのロボットを用いてそれらの作業を行う場合、安全規制の面から安全柵設ける必要がある。その結果、射出成形機とロボットを備えた射出成形システムが占める面積が広くなるという問題があった。
また、工場のレイアウト変更により射出成形機を移設する際、射出成形機だけでなく製品取出機やインサートワーク挿入装置を取り外して移設する必要があり、射出成形機を設置後に再度各装置の設置を行う必要があった。
そこで本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、
多関節ロボットが射出成形機の機台内部に据え付けられ、前記
多関節ロボットの動作範囲が機台内部領域である、射出成形機と
多関節ロボットを備えた射出成形システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に係る発明は、射出成形機と
多関節ロボットを備えた射出成形システムであって、前記
多関節ロボットが前記射出成形機の機台内部
の型締装置の下部に固定され、前記
多関節ロボットの動作範囲が機台内部領域
と金型動作範囲内の領域であり、前記多関節ロボットの動作範囲を囲う射出成形機カバーが、前記多関節ロボットの安全柵として機能し、前記多関節ロボットが、金型からの成形品取り出し又は金型へのインサートワークの挿入又は金型から落下した成形品の収集又は成形品のバリ取り又は成形品のゲートカット又はランナーの取り出しのうち少なくとも一つ以上の作業を行うことを特徴とする射出成形システムである
。
【0008】
請求項
2に係る発明は、前記射出成形機の制御装置は前記射出成形機が非常停止する際の射出成形機非常停止信号を出力する射出成形機側非常停止信号出力部を備え、前記
多関節ロボットの制御装置は前記ロボットに前記射出成形機非常停止信号を入力するロボット側非常停止信号入力部を備え、前記
多関節ロボットの制御装置は前記射出成形機非常停止信号に基づいて前記多関節ロボットを停止させることを特徴と
する請求項
1に記載の射出成形システムである。
請求項
3に係る発明は、前記
多関節ロボットの制御装置は前記
多関節ロボットが非常停止する際のロボット非常停止信号を出力するロボット側非常停止信号出力部を備え、前記射出成形機の制御装置は前記射出成形機に前記ロボット非常停止信号を入力する射出成形機側非常停止信号入力部を備え、前記射出成形機の制御装置は、前記ロボット非常停止信号に基づいて、少なくとも型締動作と成形品突出動作を行う駆動部を停止させることを特徴とする請求項1
または2の何れか一つに記載の射出成形システムである。
【発明の効果】
【0009】
型開き時に成形空間へインサートワーク(インサート部品)を配置する作業が可能な
多関節ロボットを成形機の機台内部に設置することで、射出成形機を移設しても
多関節ロボットと射出成形機の相対位置関係がずれないため、移設後の両者の位置合わせが不要である。
また、射出成形機の機台内部に前記
多関節ロボットが設置されているため、機械を移設する際の玉掛け・クレーン操作時にスリングと干渉しないため、作業性が良い。さらに、従来必要であった
多関節ロボットのための安全柵が不要となるため、射出成形システムが占有する面積を縮小することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】機台内部にロボットを据え付けた射出成形システムを示す図である。
【
図2】射出成形システムの制御装置を示す図である。
【
図3】機台内部のロボットによるワークの取り出し作業を示す図である。
【
図4】機台内部のロボットによるバリ取り作業を示す図である。
【
図5】機台内部にロボットを固定した射出成形システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1に多関節ロボットなどのロボットを機台内部に据え付けた射出成形機を示す。
図1は型締装置側の部分図である。射出成形機1は、カバー2に覆われた射出装置と型締装置とを対向するように機台10の上部であってその長手方向に備えている。型締装置は固定側金型4を取り付ける固定プラテン3、可動側金型6を取り付ける可動プラテン5を備えている。可動プラテン5はタイバー7に案内されて固定プラテン3に対して進退自在である。
機台10は上枠11、下枠12、および上枠11を支える支柱13とで直方体構造を構成している。上枠11は、一対の長手部材14および横部材15を備えた構造である。下枠12は、一対の長手部材14および横部材15を備えた構造である。上枠11は下枠12から立設した複数本の支柱によって支持されている。上枠11と下枠12の側部がカバー16と斜線で示したカバー17によって覆われている。射出装置と型締装置が上枠11の一対の長手部材14に跨って、長手部材14の長手方向に配置され搭載されている。
【0012】
直方体構造を有する機台10の上枠11と下枠12で囲まれる空間に多関節ロボットなどのロボット20を据え付ける。
図1に示される例では、ロボット20を機台10の内部において型締装置の下部に射出成形機1とは独立して据え付ける。つまり、ロボット20を載せた架台を、射出成形機1が設置されている床面に据え付ける。作業員が機台内部に誤って進入しないように、前記カバー16,17を取り付ける。なお、
図1以外は、見やすくするため前記斜線で示したカバー17を図示していない。
【0013】
機台10の内部のロボット20の可動領域は、射出成形機1の機台10の内部、または、金型を開閉するための可動プラテン5と固定プラテン3との間であって金型が装着されて開閉が行われる金型動作範囲、または、その両方の空間内に限定される。従って、射出成形機1に取り付けられた前記カバー16、17がロボット20の安全柵として機能する。成形品の取り出しが金型から自由落下させる成形の場合は、ロボット20が金型内の成形品を掴む動作が無いため、ロボット20の可動範囲を機台内部のみに限定することもできる。ロボット20は、金型からの成形品取り出し、または、金型へのインサートワークの挿入、または、金型から落下した成形品の収集、または、成形品のバリ取り、または、成形品のゲートカット、または、ランナーの取り出しの作業のうち一つ以上の作業を行うことができる。
【0014】
図2は射出成形システムの制御装置を示す図である。本発明の射出成形システムでは、射出成形機1を制御する射出成形機用数値制御装置30と、ロボット20を制御するロボット用制御用数値制御装置40を備えている。射出成形機用数値制御装置30とロボット用制御用数値制御装置40は相互に信号を入力するための信号入出力部を備えている。射出成形機用数値制御装置30は、射出成形機側非常停止信号出力部31、射出成形機側非常停止信号入力部32を備えている。射出成形機側非常停止信号出力部31は、射出成形機1を非常停止する際の射出成形機非常停止信号を出力する。
【0015】
ロボットを制御するロボット用数値制御装置40は、射出成形機用数値制御装置30から出力される射出成形機非常停止信号を入力するロボット側非常停止信号入力部42と、ロボットを非常停止する際のロボット非常停止信号を出力するロボット側非常停止信号出力部41を備えている。
【0016】
これにより、射出成形機1の型締装置のカバーに設けられた前扉を開けた際などに、射出成形機1の射出成形機非常停止信号に基づいてロボット20を非常停止させることが可能となる。また、ロボット20が非常停止した場合に、ロボット用数値制御装置40からロボット非常停止信号を射出成形機用数値制御装置30に出力する。射出成形機用数値制御装置30は、入力したロボット非常停止信号に基づいて、射出成形機1の型締動作や成形品突出動作を行う駆動部を非常停止させることができる。これによって、金型破損などを防止することが可能となる。
【0017】
射出成形機1は、射出成形機用数値制御装置30が入力したロボット非常停止信号に基づいて、必要に応じて射出、スクリュ回転、型厚調整、射出ユニット前後進のための駆動部も停止させてもよい。また同様に金型温調器や成形材料搬送機などの周辺機器の制御も停止させて、成形システム全体を停止させるようにしてもよい。
【0018】
図3は機台内部のロボットによるワークの取り出し作業を示す図である。自動運転の際には、ロボット用数値制御装置40は、射出成形機1からロボット20へ出力される型内進入許可信号を取得した後、型開き完了信号やエジェクタ突き出し信号、エジェクタ後退信号などのトリガー信号で成形品の取り出しやインサートワークのセットを行う(
図3)。また、ロボット20が型内での作業を行う際は射出成形機1にインターロック信号を出力し、型閉じ工程に進まないようにすることで成形機と同期して動くことができる。
【0019】
機台10の内部に据え付けたロボットは成形品の取り出しだけでは無く、成形の前工程や後工程を機台内部で行ってもよい。前工程にはインサートワークのプレヒートアップを行う加熱炉にワークをセットし、温まったインサートワークを金型にセットするなどの工程がある。なお、
図3,
図4において、可動プラテン5の四隅を貫通するタイバー7については記載を略している。
【0020】
図4は機台内部のロボットによるバリ取り作業を示す図である。後工程には金型(可動側金型6)から取り出した製品をゲートカット装置(図示せず)にセットしてゲートカットを行ったり、成形品に発生したバリの除去をバリ取り装置24を用いて行い、バリを除去した成形品をコンベア25に整列して置くなどの工程がある。本発明の実施形態では、機台10の内部に据え付けられたロボット20によって、金型(可動側金型6)からの成形品の取り出し、バリ取り装置24への成形品への搬出、バリ取り装置24によりバリ取りされた成形品をコンベア25に整列させる作業を行う。
【0021】
図5は機台内部にロボットを固定した射出成形システムを示す図である。ロボット20の取り付け用の架台21を固定板22に固定し、固定板22を射出成形機1の機台10に固定ボルト23で固定する。ロボット20の可動領域及び非常停止回路については
図1〜
図4の範囲と同じである。また、ロボット20を機台10に直接固定してもよい。
図1に示される射出成形システムと同様に機台に安全柵を設けることができる。
【符号の説明】
【0022】
1 射出成形機
2 カバー
3 固定プラテン
4 固定側金型
5 可動プラテン
6 可動側金型
7 タイバー
10 機台
11 上枠
12 下枠
13 支柱
14 長手部材
15 横部材
16 カバー
17 カバー
20 ロボット
21 架台
22 固定板
23 固定ボルト
24 バリ取り装置
25 コンベア
30 射出成形機用数値制御装置
31 射出成形機側非常停止信号出力部
32 射出成形機側非常停止信号入力部
40 ロボット用数値制御装置
41 ロボット側非常停止信号出力部
42 ロボット側非常停止信号入力部