(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926386
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】情報オブジェクトのユーザにより拡張されるランキング
(51)【国際特許分類】
G06F 17/30 20060101AFI20160516BHJP
【FI】
G06F17/30 380E
G06F17/30 419B
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-532293(P2014-532293)
(86)(22)【出願日】2012年8月21日
(65)【公表番号】特表2014-531678(P2014-531678A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】EP2012066276
(87)【国際公開番号】WO2013045177
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2014年5月16日
(31)【優先権主張番号】11182967.7
(32)【優先日】2011年9月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100170601
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 孝
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ドイー
【審査官】
齊藤 貴孝
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−512403(JP,A)
【文献】
特開2002−312404(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/065111(WO,A1)
【文献】
特開2006−127529(JP,A)
【文献】
特開2008−245082(JP,A)
【文献】
特開2005−327225(JP,A)
【文献】
特表2008−537810(JP,A)
【文献】
特開2009−140148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報オブジェクトのユーザにより拡張されるランキングのための方法であって、
データベース・アクセス・モジュールによって、有向性リンクの集まりによって相互に関係する情報オブジェクトの集まりを含むコンピュータ・ベースのデータベース(21)にアクセスするステップであって、前記データベース(21)は、構造ベースのレイヤ(25)およびユーザ生成レイヤ(26)を含み、前記構造ベースのレイヤ(25)は前記情報オブジェクトの客観的な構造から結果として生じるリンクを含む、ステップと、
制御モジュールによって、ディスプレイ(13)上にグラフィカル・ユーザ・インターフェース(40)を生成するステップであって、前記グラフィカル・ユーザ・インターフェースはグラフ(41)を含み、前記グラフは、それぞれが前記情報オブジェクトの集まりの1つの情報オブジェクトを表す複数のアイコンと、前記アイコンを接続する複数の結合子(3、4、5;46)とを含み、各結合子は、リンクの集まりの少なくとも1つのリンクを表す、ステップと、
前記制御モジュールによって、ユーザ制御対話手段から受信されたグラフ変更コマンドに応じて前記アイコン間に追加の結合子(6、7;47)を生成することによって前記グラフを変更するステップと、
前記制御モジュールによって、前記追加の結合子に応じて前記データベース(21)に追加のリンクを格納するステップであって、前記追加のリンクは、前記追加の結合子によって接続された前記アイコンによって表される情報オブジェクトを相互に関係させ、前記ユーザ生成レイヤに格納される、ステップと、
ランク計算モジュールによって、前記ユーザ生成レイヤに格納された前記追加のリンクおよび前記情報オブジェクトの前記客観的な構造から結果として生じる前記リンクを含む前記リンクの集まりに応じて情報オブジェクトの集まりの1つの情報オブジェクトに対してリンク・ベースのランクを計算するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記制御モジュールによって、前記ユーザ生成レイヤ(26)に複数のユーザによって生成されたリンクを格納するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記制御モジュールによって、前記ユーザ生成レイヤ(26)に格納された前記リンク(6、7)のサブセットを選択するステップであって、前記リンク・ベースのランクは、前記ユーザ生成レイヤに格納された前記リンクの前記選択されたサブセットに応じて計算される、ステップをさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記リンクの前記サブセットは、前記複数のユーザによる投票、管理者の決定、およびリンク頻度測定の1つに応じて選択される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記構造ベースのレイヤは、ウェブ・サイトをクロールすることによって取得された情報オブジェクトおよびリンクを格納し、前記構造ベースのレイヤに格納された前記情報オブジェクトは、前記ウェブ・サイトで見つけられた文書を表し、前記構造ベースのレイヤに格納された前記リンクは、前記文書間のハイパーテキスト・リンクを表している請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記構造ベースのレイヤ(25)は、文献のインデックスを表す情報オブジェクトおよびリンクを格納し、前記情報オブジェクトは、文書および著者のプロファイルを含み、前記リンクは、文書を相互に関係させる引用リンク(3)と、著者のプロファイルを文書に相互に関係させる著者リンク(4、5)とを含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記追加のリンクはポジティブ・リンクを含み、前記リンク・ベースのランク計算は、前記ポジティブ・リンクによって指し示す前記情報オブジェクトの前記リンク・ベースのランクを上昇させるために、前記ポジティブ・リンクを考慮する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記追加のリンクはネガティブ・リンクを含み、前記リンク・ベースのランク計算は、前記ネガティブ・リンクによって指し示す前記情報オブジェクトの前記リンク・ベースのランクを低下させるために、前記ネガティブ・リンクを考慮する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
検索エンジン・モジュールによって、検索クエリを受信するステップと、
前記検索エンジン・モジュールによって、前記情報オブジェクトの集まりから前記検索クエリに一致する情報オブジェクトを取得するステップであって、前記グラフの前記アイコンは、前記検索クエリに一致する情報オブジェクトを単に表している、ステップと
をさらに含む請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ランク計算モジュールによって、前記検索クエリに一致する前記情報オブジェクトのリンク・ベースのランクを計算するステップであって、前記生成されたグラフは、前記グラフの中央部分に最も高いランクの情報オブジェクトを表すアイコン(49)を含む、ステップをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記生成されたグラフは、前記最も高いランクの情報オブジェクトより低いランクを持つ他の情報オブジェクトを表す他のアイコンを含み、前記他のアイコンは、前記グラフの前記中央部分の周りに配置される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
実行されたときに、請求項1乃至11のいずれか1項による方法を実行するコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータ・プログラム。
【請求項13】
情報オブジェクトのユーザにより拡張されるランキングのためのコンピュータ・システム(10、20)であって、
有向性リンクの集まりによって相互に関係する情報オブジェクトの集まりを含むコンピュータ・ベースのデータベース(21)であって、前記データベース(21)は構造ベースのレイヤ(25)およびユーザ生成レイヤ(26)を含み、前記構造ベースのレイヤ(25)は前記情報オブジェクトの客観的な構造から結果として生じるリンクを含む、データベースと、
ディスプレイ(13)と、
前記ディスプレイ上にグラフィカル・ユーザ・インターフェース(40)を生成するように構成された制御モジュール(35)であって、前記グラフィカル・ユーザ・インターフェースはグラフ(41)を含み、前記グラフは、それぞれが情報オブジェクトの前記集まりの1つの情報オブジェクトを表す複数のアイコン、および前記アイコンを接続する複数の結合子を含み、各結合子は、リンクの前記集まりの少なくとも1つのリンクを表す、制御モジュール(35)と、
前記制御モジュールにグラフ変更コマンドを送信するように構成されたユーザ制御対話手段(11、12、13)であって、前記制御モジュール(35)は、前記グラフ変更コマンドに応じて前記アイコン間に追加の結合子を生成することによって前記グラフを変更し、前記追加の結合子に応じて前記データベースの前記ユーザ生成レイヤ(26)に追加のリンク(6、7;47)を格納するように構成され、前記追加のリンクは、前記追加の結合子によって接続された前記アイコンによって表される情報オブジェクトを相互に関係させる、ユーザ制御対話手段(11、12、13)と、
前記ユーザ生成レイヤ(26)に格納された前記追加のリンクおよび前記情報オブジェクトの前記客観的な構造から結果として生じる前記リンクを含むリンクの前記集まりに応じて情報オブジェクトの前記集まりの1つの情報オブジェクトに対してリンク・ベースのランクを計算するように構成されたランク計算モジュール(33)と
を含むコンピュータ・システム(10、20)。
【請求項14】
前記ユーザ制御対話手段(11、12、13)は、前記制御モジュール(35)にグラフ・ナビゲーション・コマンドを送信するようにさらに構成され、前記制御モジュールは、前記グラフ・ナビゲーション・コマンドに応じて前記グラフの異なるビューを表示するように構成されている請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報オブジェクトのリンク・ベースのランキングの技術分野に関し、詳細には、文献データベース、ソーシャル・ネットワーク、またはウェブ・サイトなど、大規模なコンピュータ・ベースのデータベースでの情報取得に関する。
【背景技術】
【0002】
リンク・ベースのランク計算方法は、文書が格納されるデータベースのまさにその構造から文書の関連性または人気を表すスコアを計算するという着想に基づいている。PageRankは、よく知られているリンク・ベースのランク計算方法であり、その原理は米国特許第6285999号に開示されている。プログラマまたは数学者から見ると、PageRankによる方法は、ノードの有向グラフとしてリンクされたデータベースのモデルに依存しており、各ノードは、ウェブ・ページ文書に対応し、ノード間の有向接続は、ある文書から他の文書へのリンクに対応している。しかし、リンクされたデータベースのそのような基礎となるモデルは、エンド・ユーザに隠された状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6285999号
【特許文献2】欧州特許第11182453号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態では、本発明は、情報オブジェクトのユーザにより拡張されるランキングのための方法を提供し、
有向性リンクの集まりによって相互に関係する情報オブジェクトの集まりを含むコンピュータ・ベースのデータベースにアクセスするステップと、
ディスプレイ上にグラフィカル・ユーザ・インターフェースを生成するステップであって、グラフィカル・ユーザ・インターフェースはグラフを含み、グラフは、それぞれが情報オブジェクトの集まりの1つの情報オブジェクトを表す複数のアイコンと、アイコンを接続する複数の結合子とを含み、各結合子は、リンクの集まりの少なくとも1つのリンクを表す、ステップと、
ユーザ制御対話手段から受信されたグラフ変更コマンドに応じてアイコン間に追加の結合子を生成することによってグラフを変更するステップと、
追加の結合子に応じてデータベースに追加のリンクを格納するステップであって、追加のリンクは、追加の結合子によって接続されたアイコンによって表される情報オブジェクトを相互に関係させる、ステップと、
追加のリンクおよびリンクの集まりに応じて情報オブジェクトの集まりの1つの情報オブジェクトに対してリンク・ベースのランクを計算するステップと
を含む。
【0005】
実施形態によると、そのような方法は、以下に示す機能の1つまたは複数を含むことができる。
【0006】
一実施形態では、データベースは構造ベースのレイヤおよびユーザ生成レイヤを含み、追加のリンクは、ユーザ生成レイヤに格納される。一実施形態では、方法は、ユーザ生成レイヤに複数のユーザによって生成されたリンクを格納するステップをさらに含む。そのようなレイヤの分離により、エンド・ユーザによって追加されたリンクとは異なる方法で情報オブジェクトの構造に基づくリンクを処理することが可能になり、たとえば、柔軟で構成可能な方法での後者の共有が可能になる。
【0007】
一実施形態では、方法は、ユーザ生成レイヤに格納されたリンクのサブセットを選択するステップをさらに含み、リンク・ベースのランクは、ユーザ生成レイヤに格納されたリンクの選択されたサブセットに応じて計算される。
【0008】
ユーザ生成リンクの選択に関して多数のオプションが存在し、それらはランク計算において考慮するべきである。一実施形態では、リンクのサブセットは、複数のユーザによる投票、管理者の決定、およびリンク頻度測定(link repetition measurement)の1つに応じて選択される。
【0009】
そのような方法は、リンク・ベースのランク計算を実装できる多くのタイプのリンクされたデータベース、特に同種のデータベースまたは異種混合のデータベースに適用可能である。一実施形態では、構造ベースのレイヤは、検索エンジンのインデックスなど、ウェブ・サイトをクロールすることによって取得された情報オブジェクトおよびリンクを格納し、構造ベースのレイヤに格納された情報オブジェクトは、ウェブ・サイトで見つけられた文書を表し、構造ベースのレイヤに格納されたリンクは、文書間のハイパーテキスト・リンクを表している。
【0010】
一実施形態では、構造ベースのレイヤは、文献のインデックスを表す情報オブジェクトおよびリンクを格納し、情報オブジェクトは、文書および著者のプロファイルを含み、リンクは、
文書を互いにリンクする引用リンクと、
著者のプロファイルを文書にリンクする著者リンクと
を含む。
【0011】
一実施形態では、追加のリンクはポジティブ・リンクを含み、リンク・ベースのランク計算は、ポジティブ・リンクによって指し示された情報オブジェクトのリンク・ベースのランクを上昇させるために、ポジティブ・リンクを考慮する。
【0012】
一実施形態では、追加のリンクはネガティブ・リンクを含み、リンク・ベースのランク計算は、ネガティブ・リンクによって指し示された情報オブジェクトのリンク・ベースのランクを低下させるために、ネガティブ・リンクを考慮する。
【0013】
一実施形態では、方法は、
検索クエリを受信するステップと、
情報オブジェクトの集まりから検索クエリに一致する情報オブジェクトを取得するステップであって、グラフのアイコンは、検索クエリに一致する情報オブジェクトを単に表している、ステップと
を含む。
【0014】
一実施形態では、方法は、
検索クエリに一致する情報オブジェクトのリンク・ベースのランクを計算するステップであって、生成されたグラフは、グラフの中央部分に最も高いランクの情報オブジェクトを表すアイコンを含む、ステップ
を含む。
【0015】
一実施形態では、
生成されたグラフは、最も高いランクの情報オブジェクトより低いランクを持つ他の情報オブジェクトを表す他のアイコンを含み、他のアイコンは、グラフの中央部分の周りに配置される。
【0016】
一実施形態では、本発明は、また、実行されたときに前述の方法を実行するコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータ・プログラムを提供する。
【0017】
一実施形態では、本発明は、また、情報オブジェクトのユーザにより拡張されるランキングのためのコンピュータ・システムを提供し、
有向性リンクの集まりによって相互に関係する情報オブジェクトの集まりを含むコンピュータ・ベースのデータベースと、
ディスプレイと、
ディスプレイ上にグラフィカル・ユーザ・インターフェースを生成するように構成された制御モジュールであって、グラフィカル・ユーザ・インターフェースはグラフを含み、グラフは、それぞれが情報オブジェクトの集まりの1つの情報オブジェクトを表す複数のアイコン、およびアイコンを接続する複数の結合子を含み、各結合子は、リンクの集まりの少なくとも1つのリンクを表す、制御モジュールと、
制御モジュールにグラフ変更コマンドを送信するように構成されたユーザ制御対話手段であって、制御モジュールは、グラフ変更コマンドに応じてアイコン間に追加の結合子を生成することによってグラフを変更し、追加の結合子に応じてデータベースに追加のリンクを格納するように構成され、追加のリンクは、追加の結合子によって接続されたアイコンによって表される情報オブジェクトを相互に関係させる、ユーザ制御対話手段と、
追加のリンクおよびリンクの集まりに応じて情報オブジェクトの集まりの1つの情報オブジェクトに対してリンク・ベースのランクを計算するように構成されたランク計算モジュールと
を含む。
【0018】
一実施形態では、ユーザ制御対話手段は、制御モジュールにグラフ・ナビゲーション・コマンドを送信するようにさらに構成され、制御モジュールは、グラフ・ナビゲーション・コマンドに応じてグラフの異なるビューを表示するように構成されている。
【0019】
本発明の態様は、データベースに格納された情報、特に情報オブジェクト間の関係に関する情報を完成または洗練するために、1人または複数のエンド・ユーザからリンクされたデータベースの情報を収集する考えに基づく。
【0020】
本発明の態様は、自動的に集められない可能性がある追加情報、特にユーザの主観的な評価に関係する情報によりデータベースを豊かにするために、ランク計算の基になる有向グラフの完全または簡素化されたビューをエンド・ユーザに示すことで、エンド・ユーザによるデータベースへの直観的な対話を促進することになるという観察に由来する。そのような追加情報は、格納されたオブジェクト間の追加のリンク、またはたとえば、その主観的な価値についてなど、格納されたリンクに関する追加の情報を含むことができる。
【0021】
本発明のこれらおよび他の態様は、例示を目的として、図面に関して以下に記述した実施形態から明らかになり、それらを参照して解明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態を実装できるコンピュータ環境の機能を示す図である。
【
図2】
図1のコンピュータ環境に展開した制御モジュールの機能を示す図である。
【
図3】文献データベースからの抜粋を示すグラフである。
【
図4】エンド・ユーザによって追加された評価リンクを含む
図3のグラフである。
【
図6】クエリに対する検索エンジンの応答に対応する検索エンジン・インデックスからの抜粋を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1を参照すると、本発明の実施形態を実装できるコンピュータ環境は、コンピュータ10と、リンクされたデータベース21を格納するコンピュータ・ベースのデータ・リポジトリ20とを含む。リンクされたデータベース21は、リンクによって相互に関係させられた情報オブジェクトを含むため、リンク・ベースのランク計算方法を実行することができる。データ・リポジトリ20は、集中化することも、または任意の数の記憶ユニットに分散することもできる。データ・リポジトリ20は、コンピュータ10と同じ場所に配置することも、または離れた場所に配置することもできる。したがって、コンピュータ10とデータ・リポジトリ20との間のデータ接続22は、コンピュータ・バス、またはたとえば、ローカル・エリア・ネットワークもしくはワイド・エリア・ネットワークの有線もしくは無線のネットワーク・リンクでもよい。この点で、
図1の描写はいくぶん標準的である。代表的な実施例では、データ・リポジトリ20は、ワールド・ワイド・ウェブであり、相互に関係する情報オブジェクトはウェブ・ページの文書である。
【0024】
コンピュータ10は、
図2に機能的に描写した制御モジュール30を含む。制御モジュール30は、データベース21に対して読み取りおよび書き込みアクセスを行うためにデータベース・アクセス・モジュール31を含む。検索エンジン・モジュール32は、データベース21からクエリに一致する情報オブジェクトを取得するために、エンド・ユーザによって入力されたクエリに応じて検索機能を実行する。ランク計算モジュール33は、情報オブジェクトが相互に関係する有向リンクに応じてデータベースの情報オブジェクトの一部またはすべてのリンク・ベースのランクを計算する役目を果たす。入出力制御モジュール34は、ユーザ生成コマンドを受信するために、たとえばキーボード11、マウス12およびポインタ14、タッチ・スクリーンなど、入力用の周辺装置とインターフェースをとる役目を果たす。グラフィカル・ユーザ・インターフェース制御モジュール35は、リンクされたデータベース21から得たグラフ41をエンド・ユーザが視覚化および変更できるように、コンピュータ画面13上にグラフィカル・ユーザ・インターフェース40を生成する役目を果たす。
【0025】
グラフィカル・ユーザ・インターフェース40は、2つのカテゴリ、すなわち、グラフ・ナビゲーションおよびグラフ変更に一般的に分類できる機能を実行するために、ユーザ生成コマンドに反応する。それらの機能に対応するコマンド・トリガーは、たとえば、固定されたドロップ・リスト、ポインタが配置されたドロップ・リスト、クリック可能なボタンなど、よく知られている方法でグラフィカル・ユーザ・インターフェース40に実装することができる。
【0026】
グラフ・ナビゲーション機能は、全方向へのスクロール、ズームインおよびズームアウト、表示するアイテムの選択、非表示にするアイテムの選択、選択されたアイテムに関するビューの中央配置などを含む。選択可能なアイテムは、個々のアイコン(つまり個々のオブジェクトを表す)、アイコンのクラス(たとえば同じタイプのオブジェクトを表す)、個々の結合子(つまり個々のリンクを表す)、結合子のクラス(たとえば同じタイプのリンクを表す)、グラフのレイヤ、凡例などを含むことができる。
【0027】
グラフ変更機能は、グラフ41だけでなく、基礎をなすリンクされたデータベース21のコンテンツも完成または洗練するために、エンド・ユーザがグラフ41と対話することを可能にする機能である。したがって、GUI制御モジュール35は、原則として、図示したグラフが、データベースの現在の状態を相互に反映することを保証するために、データベース・アクセス・モジュール31と相互運用する。そのような変更機能は、
−データベースの2つの情報オブジェクトの間に選択されたリンク・タイプのリンクを追加するためにグラフに結合子を追加することと、
−データベースに選択されたオブジェクト・タイプの情報オブジェクトを追加するためにグラフにノードを追加することと、
−他のエンド・ユーザとコメントを共有するために、結合子またはノードに主観的なコメントを接続することと
の1つまたは複数を含む。
【0028】
図6を参照すると、グラフ変更機能の一例について、データ・リポジトリ20は、ワールド・ワイド・ウェブであり、相互に関係する情報オブジェクトは、ウェブ・ページ文書であり、リンク・ベースのランク計算はPageRankなどである一実施形態について記述する。
図6は、GUI40に表示されるグラフを示している。円形のアイコン45は、ウェブ・ページ文書を表し、矢印46は、ウェブ・ページ間のハイパーリンクまたはそのようなハイパーリンクの集まりを表している。
【0029】
両端に矢印がある結合子47は、2つのウェブ・ページが同様のコンテンツを持っているという意味を伝えるために、ポインタ14の助けを借りてエンド・ユーザによって追加された双方向リンクを表している。結合子47がGUI40に作成されたら、2つのウェブ・ページのそれぞれから他方に指し示すハイパーリンクがあるかのように、2つの対応する有向リンクがデータベース21に記録される。結果として、PageRankによるランク計算は、追加された双方向リンクによる影響を受ける。
【0030】
上記の例は、明瞭さのために非常に単純化したものである。それは、単一の追加のリンクを考慮して文書の全体的な集まりのランクを再計算するのに関連性がないと考えることができる。しかし、ユーザ生成大量の主観的なリンクで検索エンジン・インデックスのコンテンツを豊かにするために、ウェブ実装では、同様の機能を大規模なユーザのコミュニティに提供できることを理解されよう。さらに、グラフ生成、ナビゲーションおよび変更機能は、文書の集まり全体またはそのサブセットに適用することができる。
【0031】
対応する実施形態では、エンド・ユーザは、検索エンジン・モジュール32によって実行された検索の結果を洗練しコメントする。すなわち、グラフィカル・ユーザ・インターフェース40にもともと生成されたグラフ41は、ここでは、エンド・ユーザによって入力された検索クエリに応じて検索エンジン・モジュール32によって取得された、最も高いランクのウェブ・ページのリストを表している。ハイパーテキスト・リンクのリストとして結果を表示する代わりに、GUI40は、最も高いランクのウェブ・ページに対して中央のアイコン49、および他の重要なウェブ・ページについて、その周りに配置したアイコンを表示する。PageRankでは、それにリンクされた他のページからの貢献の合計として、最も高いランクのページのランクを計算することが可能である。比較的単純なグラフを示すために、最も高いランクのページのランクに重要な貢献をするウェブ・ページを表すアイコンだけを表示することを選択することができる。結果は、
図6に示すように表示することができる。アイコン45の横に、最も高いランクのページのランクに対応する貢献を割合(たとえば10%、15%など)で表示することができる。より多くの結果を表示するために、中央のアイコン49から離して2行目のアイコンも表示して、直接的な貢献者にリンクされることによって、最も高いランクのページのランクに重要だが間接的な貢献をしているウェブ・ページを表すことを選択することができる。
【0032】
タイプのグラフ変更コマンドに応じて、実際のウェブ・ページおよびそのハイパーリンクを変更することが可能ではない、または望ましくない場合がある。実際、検索エンジンは、一般的に、それがインデックス付けしているウェブ・ページのコンテンツにハイパーテキスト・リンクを追加することが許可されない。データベース21に格納されているウェブ・ページおよびハイパーリンクを変更する代わりに、一実施形態では、GUI40のユーザによって生成されたグラフ変更(たとえば追加的なリンク)を格納するためにデータベース21の特定の部分を提供する。この特定の部分は、データベース21のユーザ生成レイヤと呼ばれる。個別のユーザ生成レイヤは、ランキング・サービスの各ユーザに提供することができる。次に、グラフ41は、基本的なグラフ・レイヤを異なるユーザ生成レイヤに重ねることにより生成される。PageRankの場合には、基本的なグラフ・レイヤは、たとえば、ウェブ・クローラーによって収集されたインデックスされたウェブ・ページに見つかったハイパーリンクの構造に対応する。
【0033】
リンクされたウェブ・ページは、ランキング方法の唯一の応用分野ではない。異なる性質の情報オブジェクトの異種混合の集まりに対して構成されたリンク・ベースのランキング方法は、2011年9月23日に出願された同時係争中の欧州特許第11182453号に開示されている。情報オブジェクトにランク付けするその方法によると、情報オブジェクトの集まりは、たとえば著された論文など、第1の性質の情報オブジェクト、およびたとえば著者のプロファイルなど、第2の性質の情報オブジェクトを含む。リンクはそれぞれ、たとえば論文の間の引用リンクおよび著者と論文との間の著者リンクなど、複数のリンク・タイプ中から選択されたリンク・タイプに関連させられる。
【0034】
方法は、
各リンクに適正重みを割り当てるステップであって、割り当てられた重みは、リンクに関連するリンク・タイプに応じて規定される、ステップと、
情報オブジェクトの集まり内で複数の経路を選択するステップであって、各経路は、対応する一連のリンクによってリンクされた一連の情報オブジェクトを含み、経路の連続する各リンクは、第1の性質の各情報オブジェクトについて、リンク選択の確率を使用して、同じ情報オブジェクトから生じるリンクの中から任意に選択され、情報オブジェクトを指し示すリンクのそれぞれの貢献に応じて情報オブジェクトのスコアを計算し、リンクの貢献は、経路選択ステップでリンクが選択された回数およびリンクの適正重みに応じている、ステップと、
第1の性質の情報オブジェクトのそれぞれのスコアに応じて第1の性質の情報オブジェクトをランク付けするステップと
を含む。
【0035】
図3から
図5は、上記のランキング方法を使用できる科学的な文献データベースに対するGUI40のグラフ変更機能の代表的な適用を示している。簡単のために、文献データベースに格納された情報オブジェクトは、2つの性質、すなわち学術論文および著者からのものである。
図3から
図5において、論文は、円形のアイコンによって示され、著者は正方形アイコンによって示されている。それらの情報オブジェクトは、3つのリンク・タイプのリンクによってリンクされる。論文の間の引用リンク3は、第1の論文が第2の論文を引用しているという事実を表している。数字4は、その論文がその著者によって書かれたという事実を表すリンクであり、「著者(written by)」リンクと呼ばれる。数字5は、その著者がその論文を書いたという事実を表すリンクであり、「執筆(wrote)」リンクと呼ばれる。リンクには向きがあり、適正重みを持っている。引用リンク3および「著者」リンク4は、1に等しい適正重みを持つポジティブ・リンクである。「執筆」リンク5は中立であるため、ヌルの適正重みを持っている。
【0036】
図3は、GUI40に表示される文献データベースの一部に対応するグラフ41を示している。簡単のために、リンク3、4、および5を表す結合子は、リンク自体と同じ数字によって示している。コンピュータ10のユーザは、文献データベースに情報を追加するためにGUI40のグラフ変更機能を用いることができる。たとえば、引用している論文は、引用された論文に対する強烈な批判をいくぶん表現しているため、ユーザは、引用リンク3が引用された論文のポジティブな評価として理解されるべきでないと観察する。したがって、ユーザは、引用している論文と引用された論文との間にGUI40にネガティブ・リンクを表す結合子6を追加する。さらにまたはあるいは、ユーザは、引用している論文の著者と引用された論文と間にGUI40にネガティブ・リンクを表す結合子7を追加する。変更されたグラフ141を
図4に示している。したがって、追加的な2つのリンク、すなわち「嫌い(dislike)」タイプのリンク6およびリンク7が文献データベースに格納される。
【0037】
図5は、グラフ変更情報をデータベース21にどのように格納できるかを示している。構造ベースのレイヤ25は、文献データベースの客観的な構造から結果として生じるリンク、すなわち、論文に記録されるような著者リンクおよび引用リンクを含む。対照的に、GUI40のユーザの動作から結果として生じるリンクは、ユーザ生成レイヤ26に格納される。システムに、たとえばサービス加入者など、N人の異なる識別されたユーザがいる場合、N個の対応するユーザ生成レイヤをデータベース21に提供することができる。リンク・ベースのランクの計算について、ランク計算モジュール33は、構成に依存してグラフ・レイヤの一部またはすべてを考慮することができる。図示した例では、数学的なリンク・ベースのランク計算方法でリンク6および/または7を考慮することで、初期のスコアと比較して、引用された論文のランキング・スコアが低下する。すなわち、GUI40によって、構造ベースの情報および自動化された定量的評価を用いて集まりに適したグラフ形状でユーザの主観的な情報または評価を表すことができる。
【0038】
一実施形態では、各加入者は、たとえば信頼される加入者のレイヤなど、ランク計算に含まれるように意図されたユーザ生成レイヤの選択を個々に構成することができる。一実施形態では、統合されたユーザ生成レイヤは、ユーザのコミュニティ全体によって入力された最も関連するグラフ変更を集まりすることによって構成される。次に、コミュニティ・メンバーの中で最も関連性が高い主観的な評価を反映するランキング結果を取得するために、統合されたレイヤをコミュニティ全体によって共有することができる。統合プロセスは、統計によって管理された自動化されたプロセスでもよい。すなわち、繰り返し入力される変更は、より関連性が高いと見なされる。それは、人間による機関によって管理された、人間が制御するプロセスでもよい。それは投票により管理された集まり的なプロセスでも、またはこれらの解決策を合わせたものでもよい。
【0039】
GUI40に示すグラフでは、読みやすさを改善し、グラフについての理解を促進するために、異なる形状および色を使用することができる。特に、異なるリンク・タイプのリンクに対して、異なる結合子を使用するべきである。異なる性質の情報オブジェクトに対して、異なるアイコンを使用するべきである。
【0040】
制御モジュールなどの要素は、たとえば、たとえばASICなどのハードウェア手段、またはたとえば、ASICおよびFPGAなど、ハードウェアおよびソフトウェアの手段の組み合わせ、または少なくとも1つのマイクロプロセッサ、およびそこにソフトウェア・モジュールが配置された少なくとも1つのメモリでもよい。
【0041】
本発明は、記述した実施形態に限定されない。添付した請求項は、当業者が考えられる、本明細書に記述した基本的な教示に完全に含まれる、すべての変更および代替構造を具体化するものとして解釈されるべきである。
【0042】
「含む(comprise)」または「含む(include)」という動詞、およびその活用形の使用は、請求項に記載した以外の要素またはステップの存在を除外するものではない。さらに、要素またはステップの前における「1つの(a)」または「1つの(an)」という不定冠詞の使用は、複数のそのような要素またはステップの存在を除外するものではない。
【0043】
特許請求の範囲では、括弧内に配置された参照記号は、特許請求の範囲を制限するものとして解釈されないものとする。