特許第5926452号(P5926452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5926452ワイヤレス通信ネットワークのネットワーク要素を運用する方法、およびネットワーク要素
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926452
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】ワイヤレス通信ネットワークのネットワーク要素を運用する方法、およびネットワーク要素
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/08 20090101AFI20160516BHJP
   H04W 24/02 20090101ALI20160516BHJP
   H04W 92/20 20090101ALI20160516BHJP
【FI】
   H04W28/08
   H04W24/02
   H04W92/20
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-513051(P2015-513051)
(86)(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公表番号】特表2015-523778(P2015-523778A)
(43)【公表日】2015年8月13日
(86)【国際出願番号】EP2013056124
(87)【国際公開番号】WO2013174544
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2015年1月14日
(31)【優先権主張番号】12305584.0
(32)【優先日】2012年5月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100170601
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】グロブ−リプスキー,ヘイドラン
(72)【発明者】
【氏名】デラクシャン,ファリボルツ
(72)【発明者】
【氏名】ハーバーラント,ベルント
【審査官】 東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−10254(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/127855(WO,A2)
【文献】 国際公開第2011/063740(WO,A1)
【文献】 特表2007−529926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
H04B 7/24− 7/26
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のベースバンド処理デバイス(13)を含むワイヤレス通信ネットワーク(11)、または前記ワイヤレス通信ネットワーク(11)のネットワーク要素(13)を運用するための方法(33)であって、
− 前記ネットワーク要素(13)と前記複数のベースバンド処理デバイス(13)の少なくとも1つのベースバンド処理デバイス(13)との間のネットワーク遅延に依存する遅延測定基準(RTT_BBU)を決定(39)するステップであって、前記少なくとも1つのベースバンド処理デバイス(13)の処理リソースの割り当てまたは再割り当てをトリガするイベント(e)が発生する前に前記遅延測定基準(RTT_BBU)が決定される、ステップと、
前記少なくとも1つのベースバンド処理デバイス(13)の処理リソースを使用することにより前記ネットワーク要素(13)に割り当てられたベースバンド処理タスクをリモートで処理するために、前記遅延測定基準(RTT_BBU)に依存して前記複数のベースバンド処理デバイス(13)の前記少なくとも1つのベースバンド処理デバイス(13)を選択(55、65)するステップと
を含む方法(33)。
【請求項2】
前記遅延測定基準(RTT_BBU)は、前記ネットワーク要素(13)と前記複数のベースバンド処理デバイス(13)の前記少なくとも1つのベースバンド処理デバイス(13)との間のラウンド・トリップ時間に依存する請求項1に記載の方法(33)。
【請求項3】
前記選択するステップは、前記イベント(e)の発生の前に決定された前記遅延測定基準(RTT_BBU)を第1の遅延しきい値(TH1)と比較するステップと、前記比較に依存して、候補ベースバンド処理デバイス(13)として少なくとも1つのベースバンド処理デバイス(13)を選択するステップとを含む請求項1または2に記載の方法(33)。
【請求項4】
候補ベースバンド処理デバイス(13)として選択された前記ベースバンド処理デバイス(13)を含む候補リスト(NL_INIT)を生成(55)するステップを含む請求項3に記載の方法(33)。
【請求項5】
前記遅延測定基準(RTT_BBU)は、さらに、ベースバンド処理リソースの割り当てまたは再割り当てをトリガする前記イベント(e)の発生時に決定され、前記遅延測定基準(RTT_BBU)は、少なくとも1つの候補ベースバンド処理デバイス(13)に対して決定される請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法(33)。
【請求項6】
前記選択するステップは、前記イベント(e)の発生時に決定された前記遅延測定基準(RTT_BBU)を第2の遅延しきい値(TH2)と比較するステップと、前記比較に依存して、前記リモートでの処理のために隣接するベースバンド処理デバイス(13)として候補ベースバンド処理デバイス(13)を選択するステップとを含む請求項5に記載の方法(33)。
【請求項7】
隣接するベースバンド処理デバイス(13)として選択された前記少なくとも1つのベースバンド処理デバイス(13)を含む隣接リスト(NL)を生成(65)するステップを含む請求項6に記載の方法(33)。
【請求項8】
前記ネットワーク要素(13)と少なくとも1つのリモート・ラジオ・ヘッド(15)との間のネットワーク遅延に依存するさらなる遅延測定基準(RRT_RRH)を決定(49)するステップと、前記さらなる遅延測定基準(RRT_RRH)に依存して、前記第1の遅延しきい値(TH1)を決定するステップとを含む請求項3または4に記載の方法(33)。
【請求項9】
前記ネットワーク要素(13)と少なくとも1つのリモート・ラジオ・ヘッド(15)との間のネットワーク遅延に依存するさらなる遅延測定基準(RRT_RRH)を決定(49)するステップと、前記さらなる遅延測定基準(RRT_RRH)に依存して、前記第2の遅延しきい値(TH2)を決定するステップとを含む請求項6または7に記載の方法(33)。
【請求項10】
複数のベースバンド処理デバイス(13)を含むワイヤレス通信ネットワーク(11)のためのネットワーク要素(13)であって、
− 前記ネットワーク要素(13)と前記複数のベースバンド処理デバイス(13)の少なくとも1つのベースバンド処理デバイス(13)との間のネットワーク遅延に依存する遅延測定基準(RTT_BBU)を決定(39)することであって、前記少なくとも1つのベースバンド処理デバイス(13)の処理リソースの割り当てまたは再割り当てをトリガするイベント(e)が発生する前に前記遅延測定基準(RTT_BBU)が決定される、決定することと、
前記少なくとも1つのベースバンド処理デバイス(13)の処理リソースを使用することにより前記ネットワーク要素(13)に割り当てられたベースバンド処理タスクをリモートで処理するために、前記遅延測定基準(RTT_BBU)に依存して、前記複数のベースバンド処理デバイス(13)の前記少なくとも1つのベースバンド処理デバイス(13)を選択(55、65)することと
を行うように動作可能なネットワーク要素(13)。
【請求項11】
前記ネットワーク要素(13)は、請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法(33)を実行するために動作可能である、請求項10に記載のネットワーク要素(13)。
【請求項12】
前記ネットワーク要素は、リモート・ラジオ・ヘッド(15)にベースバンド信号を送信するため、および/または前記リモート・ラジオ・ヘッド(15)からベースバンド信号を受信するために配置された、ワイヤレス通信ネットワーク(11)に対するベースバンド処理デバイス(13)である請求項10または11に記載のネットワーク要素(13)。
【請求項13】
ネットワーク要素(13)および複数のベースバンド処理デバイス(13)を含むワイヤレス通信ネットワーク(11)であって、ネットワーク(11)および/またはネットワーク(11)のネットワーク要素は、請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法(33)を実行するために動作可能である、ワイヤレス通信ネットワーク(11)。
【請求項14】
複数のベースバンド処理デバイス(13)を含むワイヤレス通信ネットワークのネットワーク要素(13)を運用するためプログラムを記憶したコンピュータ可読記憶媒体であって、前記プログラムは、前記ネットワーク要素(13)のプロセッサで実行された場合に、
− 前記ネットワーク要素(13)と前記複数のベースバンド処理デバイス(13)の少なくとも1つのベースバンド処理デバイス(13)との間のネットワーク遅延に依存する遅延測定基準(RTT_BBU)を決定(39)することであって、前記少なくとも1つのベースバンド処理デバイス(13)の処理リソースの割り当てまたは再割り当てをトリガするイベント(e)が発生する前に前記遅延測定基準(RTT_BBU)が決定される、決定することと、
前記少なくとも1つのベースバンド処理デバイス(13)の処理リソースを使用することにより前記ネットワーク要素(13)に割り当てられたベースバンド処理タスクをリモートで処理するために、前記遅延測定基準(RTT_BBU)に依存して、前記複数のベースバンド処理デバイス(13)の前記少なくとも1つのベースバンド処理デバイス(13)を選択(55、65)することと
を行うように動作可能である、コンピュータ可読記憶媒体
【請求項15】
前記プログラムは、請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法(33)を実行するために動作可能である、請求項14に記載のコンピュータ可読記憶媒体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のベースバンド処理デバイスを含むワイヤレス通信ネットワークを運用するための方法、またはそのワイヤレス通信ネットワークのネットワーク要素に関する。さらに、本発明は、そのようなネットワーク要素、そのような通信ネットワーク、およびネットワーク要素を運用するための方法を実行するためにプログラムされたコンピュータ・プログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野では、セル方式の無線アクセス・ネットワークなど、ワイヤレス通信ネットワークの基地局をベースバンド処理デバイスおよびベースバンド処理デバイスに接続された少なくとも1つのラジオ・ヘッドへと細分化することが知られている。典型的には、基地局は、ベースバンド処理デバイスに接続された複数のラジオ・ヘッドのクラスタを含む。通常、ベースバンド処理デバイスにリモート・ラジオ・ヘッドを接続するために、光リンクが使用される。ベースバンド処理デバイスとラジオ・ヘッドとの間の通信に使用されるインターフェースが指定されている(コモン・パブリック無線インターフェース:CPRI:Common Public Radio Interface)。
【0003】
ベースバンド処理デバイスおよびリモート・ラジオ・ヘッドを含むこの基地局の構造は、最近、複数のベースバンド処理デバイスの間でベースバンド処理タスクを分散するためのメカニズムを導入することによって拡張された。このメカニズムにより、比較的多数のリモート・ラジオ・ヘッドに対するベースバンド処理タスクを実行するベースバンド処理デバイスのプールを構築することが可能になる。ベースバンド処理デバイスをプールすることにより、ベースバンド処理デバイスの稼働率を高めることが可能になり、したがって、無線アクセス・ネットワークによって処理される特定の量の通信トラフィックを処理するために必要なベースバンド処理デバイスの総数が減る。さらに、ベースバンド処理デバイスの展開は、集中化することができる。結果として、ベースバンド処理デバイスのプールを用いて無線アクセス・ネットワークを設置および運用することは、個々のベースバンド処理デバイスに対してベースバンド処理タスクが固定的に割り当てられた無線アクセス・ネットワークよりコスト効果が高い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
ベースバンド処理デバイスのプールでは、複数のベースバンド処理デバイスが、特定のベースバンド処理タスクを実行するために相互に協働することができる。この協働のために、協働するベースバンド処理デバイス間の通信に追加的な遅延が生じる。しかし、ベースバンド処理タスクは、サービス要件の品質から生じるリアルタイム制約または無線アクセス・ネットワークで使用されるシグナリング手順でのタイミング制約に従わなければならない。
【0005】
したがって、本発明の目的は、ワイヤレス通信ネットワークを運用するための方法またはそのネットワーク要素を提供すること、およびリアルタイム制約が満たされるように複数のベースバンド処理デバイスを含むプールの複数の協働するベースバンド処理デバイスによって、ベースバンド処理タスクを実行することを可能にするようなネットワーク要素を提供することである。
【0006】
一実施形態によると、複数のベースバンド処理デバイスを含むワイヤレス通信ネットワークを運用するため、またはそのネットワークのネットワーク要素を運用するための方法が提供され、この方法は、ネットワーク要素と複数のベースバンド処理デバイスの少なくとも1つのベースバンド処理デバイスとの間のネットワーク遅延に依存する遅延測定基準を決定するステップと、遅延測定基準に依存して、リモート処理のために複数のベースバンド処理デバイスの少なくとも1つのベースバンド処理デバイスを選択するステップとを含む。少なくとも1つのベースバンド処理デバイスに対して遅延測定基準を決定し、遅延測定基準に依存してベースバンド処理デバイスを選択することによって、それらのベースバンド処理デバイスのみがリモート処理の対象に考慮され、ネットワーク要素とそれぞれのベースバンド処理デバイスとの間のネットワーク遅延は十分に小さいため、リモート・ベースバンド処理デバイスがネットワーク要素に対してリモート処理を実行する場合、リアルタイム制約を満たすことができる。
【0007】
一実施形態では、遅延測定基準は、ネットワーク要素と複数のベースバンド処理デバイスの少なくとも1つとのベースバンド処理デバイスの間のラウンド・トリップ時間に依存する。ラウンド・トリップ時間は、リモート・ノードに要求を送信した後に、リモート・ノード(たとえばベースバンド処理デバイス)から即時の応答を受信することを可能にする適切なプロトコルを使用して測定することができる。たとえば、エコー要求およびエコー応答のメッセージを、たとえば、レイヤ2(たとえばイーサネット)またはネットワーク・レイヤ(たとえばインターネット・プロトコル:IP)で適用することができる。
【0008】
好ましくは、遅延測定基準は、少なくとも1つのベースバンド処理デバイスの処理リソースの割り当てまたは再割り当てをトリガするイベントが発生する前に(たとえばネットワーク要素の初期化段階の間に)決定することができる。前記イベントは、たとえば、ネットワークで無線ベアラがセットアップされる場合、無線ベアラが修正または解体される場合、またはモバイル端末のハンドオーバがネットワークで実行される場合に発生する場合がある。
【0009】
一実施形態では、前記選択するステップは、イベントの発生の前に決定された遅延測定基準を第1の遅延しきい値と比較するステップと、前記比較に依存して、候補ベースバンド処理デバイスとして少なくとも1つのベースバンド処理デバイスを選択するステップとを含む。好ましくは、遅延測定基準が第1の遅延しきい値未満である場合、ベースバンド処理デバイスは、候補ベースバンド処理デバイスとして選択される。遅延測定基準および第1の遅延しきい値の両方は、一方向の遅延またはラウンド・トリップ時間に関係する場合がある。
【0010】
方法を効率的に実装するために、実施形態では、方法は、候補ベースバンド処理デバイスとして選択されたベースバンド処理デバイスを含む候補リストを生成するステップを含む。
【0011】
さらに、実施形態では、遅延測定基準は、ベースバンド処理リソースの割り当てまたは再割り当てをトリガするイベントの発生時に決定することができ、遅延測定基準は、少なくとも1つの候補ベースバンド処理デバイスに対して決定されるのが好ましい。遅延測定基準は、たとえば、初期化段階など、イベントの発生の前だけでなく、処理リソースの割り当てまたは再割り当てにつながる可能性があるイベントが発生する場合にも決定することができる。イベントが発生したときに遅延測定基準を再び決定することによって、イベントの発生時に計算された遅延測定基準は、ネットワーク要素および複数のベースバンド処理デバイスを相互に連結させる相互接続ネットワークの現在の状態を反映するため、方法の信頼性が向上する。好ましくは、遅延測定基準は、各候補ベースバンド処理デバイスに対するイベントの発生時に再び決定される。ネットワーク要素によって到達可能なすべてのベースバンド処理デバイスではなく、候補ベースバンド処理デバイスについてのみ、遅延測定基準を決定することによって、方法は、効率的に機能して、遅延測定基準の不必要な測定を回避する。
【0012】
一実施形態では、前記選択するステップは、イベントの発生時に決定された遅延測定基準を第2の遅延しきい値と比較するステップと、前記比較に依存して、リモート処理のために隣接するベースバンド処理デバイスとして候補ベースバンド処理デバイスを選択するステップとを含む。隣接するベースバンド処理デバイスは、上記のリアルタイム制約についてリモート処理のために使用するのに適したベースバンド処理デバイスである。第2の遅延しきい値は、一方向の遅延またはラウンド・トリップ時間に関係する場合がある。
【0013】
好ましくは、方法は、隣接するベースバンド処理デバイスとして選択された少なくとも1つのベースバンド処理デバイスを含む隣接リストを生成するステップを含むことができる。
【0014】
一実施形態では、方法は、ネットワーク要素とネットワークの少なくとも1つのリモート・ラジオ・ヘッドとの間のネットワーク遅延に依存するさらなる遅延測定基準を決定するステップと、さらなる遅延測定基準に依存して、第1の遅延しきい値および/または第2の遅延しきい値を決定するステップとを含む。リモート・ラジオ・ヘッドは、モバイル端末に無線信号を送信し、無線端末から無線信号を受信するための無線周波数回路を含む。しかし、リモート・ラジオ・ヘッドは、ネットワークと端末との間の無線伝送に必要な完全な信号処理回路、特にベースバンド・シグナリング処理回路を含んでいない。リモート・ラジオ・ヘッドは、たとえば光リンクを含むことができる通信構成物を使ってネットワーク要素に接続することができる。したがって、さらなる遅延測定基準は、通信構成物によって、特に光リンクによって引き起こされるネットワーク遅延を反映することができる。リモート・ラジオ・ヘッドで実行されない信号処理の部分について、ベースバンド処理デバイスの処理リソースが割り当てられる。一実施形態では、さらなる遅延測定基準は、ネットワーク要素とリモート・ラジオ・ヘッドとの間のネットワーク・ラウンド・トリップ時間の場合がある。
【0015】
他の実施形態によると、複数のベースバンド処理デバイスを含むワイヤレス通信ネットワークのネットワーク要素が提供され、ネットワーク要素は、ネットワーク要素と複数のベースバンド処理デバイスの少なくとも1つのベースバンド処理デバイスとの間のネットワーク遅延に依存する遅延測定基準を決定し、遅延測定基準に依存して、リモート処理のために複数のベースバンド処理デバイスの少なくとも1つのベースバンド処理デバイスを選択するために配置される。
【0016】
一実施形態では、ネットワーク要素は、本発明による方法を実行するために動作可能、好ましくはプログラムされており、その方法の実施形態について本明細書に記述している。
【0017】
一実施形態では、ネットワーク要素は、リモート・ラジオ・ヘッドにベースバンド信号を送信するため、および/またはリモート・ラジオ・ヘッドからベースバンド信号を受信するために配置された、ワイヤレス通信ネットワークに対するベースバンド処理デバイスである。
【0018】
他の実施形態によると、ネットワーク要素および複数のベースバンド処理デバイスを含むワイヤレス通信ネットワークが提供され、ネットワークおよび/またはネットワークのネットワーク要素は、ネットワーク要素と複数のベースバンド処理デバイスの少なくとも1つのベースバンド処理デバイスとの間のネットワーク遅延に依存する遅延測定基準を決定し、遅延測定基準に依存して、リモート処理のために複数のベースバンド処理デバイスの少なくとも1つのベースバンド処理デバイスを選択するように動作可能である。一実施形態では、ネットワークおよび/またはネットワーク要素は、本発明による方法を実行するために配置され、その実施形態について本明細書に記述している。
【0019】
さらに他の実施形態によると、ネットワーク要素および複数のベースバンド処理デバイスを含むワイヤレス通信ネットワークが提供され、ネットワーク要素は、本発明によるネットワーク要素である。本発明によるネットワーク要素の実施形態について本明細書に記述している。
【0020】
さらに他の実施形態によると、複数のベースバンド処理デバイスを含むワイヤレス通信ネットワークのネットワーク要素を運用するためにプログラムされた、コンピュータ・プログラム製品、好ましくはコンピュータ可読記憶媒体であって、前記ネットワーク要素のプロセッサで実行された場合に、ネットワーク要素と複数のベースバンド処理デバイスの少なくとも1つのベースバンド処理デバイスとの間のネットワーク遅延に依存する遅延測定基準を決定し、遅延測定基準に依存して、リモート処理のために複数のベースバンド処理デバイスの少なくとも1つのベースバンド処理デバイスを選択するためにプログラムされる。コンピュータ・プログラム製品は、半導体メモリまたは磁気的もしくは光学的な大容量記憶媒体など任意のタイプのコンピュータ記憶媒体を含むことができる。特に、ネットワーク要素は、ネットワーク要素を運用するときにプロセッサがそのコンピュータ・プログラムを実行するように、本発明による方法を実行するためのコンピュータ・プログラムが格納される記憶要素を含むことができる。
【0021】
一実施形態では、コンピュータ・プログラム製品は、本発明による方法を実行するためにプログラムされる。本発明による方法の実施形態について、本明細書に記述している。
【0022】
本発明の代表的な実施形態および他の利点を図に示し、以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ワイヤレス通信ネットワークを示す図である。
図2図1に示すネットワークのベースバンド処理デバイスなど、ネットワーク要素を運用する方法を示す流れ図である。
図3図1に示すネットワークのベースバンド処理デバイスとリモート・ラジオ・ヘッドとの間の遅延を決定するためのテスト・メッセージのメッセージ・シーケンスを示す図である。
図4図1に示したネットワークのベースバンド処理デバイスと他のベースバンド処理デバイスとの間の遅延を決定するためのテスト・メッセージのメッセージ・シーケンスを示す図である。
図5】ハンドオーバが、ベースバンド処理リソースの再割り当てをトリガするハンドオーバ・シナリオを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
記述および図面は、単に本発明の原理を示すものである。本明細書に明示的に記述して示していないが、本発明の原理を具体化し、その精神および範囲に含まれるさまざまな配置を当業者であれば考案できることを理解されるだろう。さらに、本明細書に詳述したすべての例は、原則として、読者が本発明の原理、およびその技術を推進する発明者らによって提供された概念を理解するのを支援するために、教育のみを目的とすることを明確に意図するものであり、そのような具体的に詳述された例および条件に限定しないものとして解釈するべきである。さらに、本明細書において、本発明の原理、態様、および実施形態を詳述するすべての記述、およびその特定の例は、その等価物を包含することを意図するものである。
【0025】
図1は、複数の帯域処理デバイス13および複数のリモート・ラジオ・ヘッド15を含むセル方式無線アクセス・ネットワーク11を示している。単一のラジオ・ヘッド15または複数のラジオ・ヘッド15のクラスタが、単一のベースバンド処理デバイス13に割り当てられる。特定のベースバンド処理デバイス13に割り当てられたリモート・ラジオ・ヘッド15は、適切な通信構成物を使って、そのベースバンド処理デバイス13に接続することができる。図示する実施形態において、通信構成物は、少なくとも1つの光リンク17を含む。図1の中央に示すように、通信構成物は、リモート・ラジオ・ヘッド15とベースバンド処理デバイス13との間に複数のポイント・ツー・ポイント・リンク17を含むことができ、結果として、通信構成物のツリー・トポロジ19が得られる。しかし、実施形態では、ポイント・ツー・マルチポイント・トポロジを適用することができる。たとえば、通信構成物は、パッシブ光ネットワーク(PON21)を含むことができる。さらに、通信構成物は、ベースバンド処理デバイス13に複数のリモート・ラジオ・ヘッド15を接続する1つまたは複数の光リング23を含むことができる。示した例では、図1の右上のベースバンド処理デバイス13は、2つの光リング23に接続されている。しかし、単一の光リング23または2つを超える光リング23を使用することが可能である。光リンク25と共に通信構成物を使用する場合、通信構成物の全体的な容量は、波長分割多重(WDM)を使用することによって増加することができる。さらに、通信構成物の利用可能度は、冗長なリンク17を使用することによって向上することができる。
【0026】
ベースバンド処理デバイス13は、1つまたは複数の相互接続リンク25を含む相互接続ネットワークを使って相互連結される。したがって、示した相互接続ネットワークは、ポイント・ツー・ポイント・リンク25のみを含む。しかし、他の実施形態では、異なるトポロジの相互接続ネットワークを使用することができる。たとえば、相互接続ネットワークは環状ネットワークの場合がある。
【0027】
相互接続ネットワーク11の少なくとも1つのベースバンド処理デバイス13または専用のスイッチ・ノード(図示せず)は、相互接続ネットワークの異なるリンク25間でデータを転送することができる。言い換えると、相互接続ネットワークは、パケット交換ネットワークの場合があり、スイッチ・ノードおよび/または少なくとも1つの専用のスイッチ・ノード(たとえば、イーサネット・スイッチまたはインターネット・プロトコル・ルータなど)として機能する少なくとも1つのベースバンド処理デバイス13を含むことができる。スイッチ・ノードは、1つのリンク25から受信され、他のリンク25に転送されるパケットを一時的に格納するためのパケット・バッファを持つことができる。パケット・バッファにパケットを一時的に格納すると、1つのベースバンド処理デバイス13から、相互接続ネットワークを介して、他のベースバンド処理デバイス13に送信されるパケットの伝達遅延に変化が生じる。一般的に、パケット・バッファの平均占有率は、瞬時負荷と共に増加するため、伝達遅延は、相互接続ネットワークの瞬時負荷に依存する。
【0028】
ネットワーク11のセル27は、少なくとも1つのリモート・ラジオ・ヘッド15の範囲に含まれている。セル27に登録された、ユーザ機器(UE)とも呼ばれるモバイル端末29は、端末29と、そのセル27を担当するリモート・ラジオ・ヘッド15との間で無線リンク31を介してネットワーク11と通信することができる。図示する実施形態において、無線アクセス・ネットワーク11は、GSM、UMTS、および/またはLTEなど複数の無線標準をサポートする。ベースバンド処理デバイス13は、異なる標準の異なるコア・ネットワーク(図示せず)に無線アクセス・ネットワーク11を接続するために複数のインターフェースを含むことができる。したがって、そのようなベースバンド処理デバイス13は、マルチサイド・マルチスタンダード・ベースバンド・ユニット(MSS−BBU:Multi−Side Multi−Standard BaseBand Units)とも呼ぶ。ベースバンド処理デバイス13、特にMSS−BBUは、ベースバンド処理のために動作可能な処理手段、たとえばプロセッサを含む少なくとも1つのベースバンド処理ユニット(図示せず)を含むことができる。
【0029】
ベースバンド処理デバイス13は、モバイル端末29にデータ(たとえばペイロード・データまたはシグナリング・データ)を送信するため、またはリモート・ラジオ・ヘッド15を介して端末29からデータを受信するために必要なベースバンド処理タスクを実行するために相互に協働する。ベースバンド処理は、変調、符号化など、ベースバンド信号処理を含むことができる。
【0030】
ベースバンド処理デバイス13とリモート・ラジオ・ヘッド15との間の通信は、コモン・パブリック無線インターフェース(CPRI)規格により実行することができる。しかし、本発明はCPRIに限定されない。ベースバンド処理デバイス13とリモート・ラジオ・ヘッド15との間の通信に、異なるインターフェースおよび/またはプロトコルを使用することができる。
【0031】
ネットワーク11を運用する場合、端末29は、無線リンク31を介して端末29によって到達可能なリモート・ラジオ・ヘッド15と通信することによって、ネットワーク11に登録することができる。このリモート・ラジオ・ヘッド15を、サービスを提供するRRHと呼ぶ。すなわち、ネットワーク11と端末29との間でペイロード・データを転送するリモート・ラジオ・ヘッド15は、サービスを提供するRRHである。したがって、サービスを提供するRRHは、端末29の現在の場所に主に依存している。サービスを提供するRRHに割り当てられるベースバンド処理デバイス13を特定の端末29のホーム・ベースバンド処理デバイス13と呼ぶ。
【0032】
端末29とネットワーク11の間のデータ送信について、無線ベアラRBをセットアップすることができる。無線ベアラRBをセットアップするときに、この無線ベアラRBに関してベースバンド処理に必要なベースバンド処理リソースが割り当てられる。場合によっては、無線ベアラRBを処理するために必要なすべてのベースバンド処理リソースが、ホーム・ベースバンド処理デバイス13に割り当てられる。しかし、他の場合には、たとえば、ホーム・ベースバンド処理デバイス13が無線ベアラを処理するために十分な利用可能な処理リソースを持っていない場合、無線ネットワーク11のホーム・ベースバンド処理デバイスは、その無線ベアラRBに関係するベースバンド処理のために異なるベースバンド処理デバイス13の処理リソースを使用することを決定することができる。このため、ホーム・ベースバンド処理デバイスは、リモート処理を他のベースバンド処理デバイス13に求めることを決定することができる。特定のホーム・ベースバンド処理デバイス13に対してリモート・ベースバンド処理を実行するベースバンド処理デバイス13は、また、そのホーム・ベースバンド処理デバイス13に関してリモート・ベースバンド処理デバイス13と呼ばれる。特定の端末29またはリモート・ラジオ・ヘッド13に対するホーム・ベースバンド処理デバイス13は、また、少なくとも1つの異なるホーム・ベースバンド処理デバイス13について、リモート・ベースバンド処理デバイス13として機能することができる。さらに、ネットワーク11は、任意のリモート・ラジオ・ヘッド15に接続されていない1つまたは複数のベースバンド処理デバイス13を含むことができる。これらのベースバンド処理デバイス13は、ホーム・ベースバンド処理デバイス13ではないが、少なくとも1つのホーム・ベースバンド処理デバイス13について、リモート・ベースバンド処理デバイス13として機能することができる。
【0033】
リモート処理を実行する場合、ホーム・ベースバンド処理デバイス13は、ダウンリンク・データ(たとえばシグナリング・データ)を単独で生成するか、またはダウンリンク・データをたとえば、コア・ネットワークから受信し(たとえばペイロード・データ)、リモート信号処理のためにリモート・ベースバンド処理デバイス13にダウンリンク・データを転送し、次にリモート・ベースバンド処理デバイス13から処理されたダウンリンク・データを受信して、サービスを提供するリモート・ラジオ・ヘッド15に処理されたダウンリンク・データを転送する。端末13によって送信されたアップリンク・データは、サービスを提供するリモート・ラジオ・ヘッド15によって受信され、ホーム・ベースバンド処理デバイス13に転送される。ホーム・ベースバンド処理デバイス13は、リモート・アップリンク処理のためにリモート・ベースバンド処理デバイス13にアップリンク・データを送信し、リモート・ベースバンド処理デバイス13から処理されたアップリンク・データを受信する。ホーム・ベースバンド処理デバイス13は、アップリンク・データのタイプに依存して、処理されたアップリンク・データ(たとえばシグナリング・データ)を消費するか、または処理されたアップリンク・データ(たとえばペイロード・データ)をたとえばコア・ネットワークに転送する。
【0034】
少なくとも1つのベースバンド処理デバイス13、好ましくはすべてのベースバンド処理デバイス13は、特定の無線ベアラについてリモート・ベースバンド処理を実行するものとするかどうか、およびホーム・ベースバンド処理デバイスとは異なるどのベースバンド処理デバイス13をリモート・ベースバンド処理のために使用するものとするかを決定する分散化されたクラウド・コントローラ(DCC)を含むことができる。このため、DCCは、リモート・ベースバンド処理に最も適したベースバンド処理デバイス13を選択する。サービス要件の事前定義された品質を満たし、無線リンク31で使用される、ハイブリッド自動再送要求(HARQ:Hybrid Automatic Repeat Request)など、シグナリング・プロトコルのタイミング制限を満たすために、ベースバンド処理の間にリアルタイム制約に従う必要があるため、相互接続ネットワークでのリモート・ベースバンド処理のために、ホーム・ベースバンド処理デバイス13とベースバンド処理デバイス13との間の送信遅延は、リモート・ベースバンド処理に使用されるベースバンド処理デバイス13を選択する場合に考慮するべき重要な特性である場合がある。特に、その遅延が大きすぎる場合、リアルタイム制約を満たすことができず、それぞれのベースバンド処理デバイスは、リモート・ベースバンド処理に使用することができない。
【0035】
図2は、ホーム・ベースバンド処理デバイスと、リモート・ベースバンド処理に使用されるリモート・ベースバンド処理デバイス13との間の遅延を特徴づける遅延測定基準に依存して、リモート・ベースバンド処理のために少なくとも1つのベースバンド処理デバイス13を選択する代表的な方法33の流れ図を示している。方法33は、ホーム・ベースバンド処理デバイス13によって、特に、そのベースバンド処理デバイス13のDCCによって実行することができる。ベースバンド処理デバイス13、特にそのDCCは、プロセッサおよび記憶要素を含むことができる。コンピュータ・プログラムは、ベースバンド処理デバイス13を運用する場合、プロセッサによって実行される記憶要素に格納することができる。プロセッサでコンピュータ・プログラムを実行する場合、ベースバンド処理デバイス13が本明細書に記述された方法33を実行するように、コンピュータ・プログラムをプログラムすることができる。
【0036】
一実施形態では、方法は、ホーム・ベースバンド処理デバイス13とは異なるベースバンド処理デバイス13など、異なるネットワーク要素によって実行することができる。特に、方法は、ネットワーク11の任意のベースバンド処理デバイス13のDCCによって実行することができる。さらに、複数のベースバンド処理デバイス13など複数のネットワーク要素は、分散された方法で方法33を実行するために相互に協働することができる。
【0037】
図2に見られるように、方法33は、方法33の開始37の後に入る初期化段階35を持つ。初期化段階35は、ネットワーク11の始動の間、たとえば、少なくとも1つのベースバンド処理デバイス13に電源を投入した後に実行することができる。無線ベアラなど特定の通信プロセスへのベースバンド伝送リソースの割り当てまたは再割り当てを必要とするイベントeがネットワーク11で発生する前に、初期化段階35を実行することができる。
【0038】
初期化段階35のステップ39は、方法33の開始37の後に実行される。ステップ39では、少なくとも1つのベースバンド処理デバイス13と、そのベースバンド処理デバイス13が割り当てられ、かつ/または接続される少なくとも1つのリモート・ラジオ・ヘッド15との間のすべての遅延が測定される。この遅延は、ラウンド・トリップ時間RTT_RRHの場合がある。
【0039】
図3に示すように、ベースバンド処理デバイス13は、それに対するラウンド・トリップ時間が測定される各リモート・ラジオ・ヘッド15に第1のテスト・メッセージ41を送信することによって、および第1のテスト・メッセージ41に応じてリモート・ラジオ・ヘッド15によって送信された第1の応答メッセージ43を受信することによって、少なくとも1つの接続されたリモート・ラジオ・ヘッド15、好ましくは各接続されたラジオ・ヘッド15へのラウンド・トリップ時間RTT_RRHを測定することができる。ベースバンド処理デバイス13は、それぞれの第1の応答メッセージ43の受信時間から第1のテスト・メッセージ41の送信時間を引くことによって、リモート・ラジオ・ヘッド15へのラウンド・トリップ時間RTT_RRHを決定することができる。
【0040】
ステップ45は、ベースバンド処理デバイス13と少なくとも1つの他のベースバンド処理デバイス13との間のネットワーク遅延を特徴づける遅延測定基準に対して第1の遅延しきい値TH1を決定するステップ39の後に実行される。この遅延測定基準は、他のラウンド・トリップ時間RTT_BBUの場合がある。
【0041】
第1の遅延しきい値TH1は、以下の等式により遅延バジェットを考慮することによって計算することができる。
TransportDelaymax=TRTT−ProcessingTimeBS−ProcessingTimeUE−RTT_AIR(1)
RTTは、HARQに関係するタイミング要件である。ロング・ターム・エボリューション(LTE)無線方式では、完全なHARQプロセスは、8つの送信時間間隔(TTI)を取り、各TTIは、1msの存続時間を持つ。HARQプロセスの間に、ネットワーク11は、そのHARQプロセスの第1のTTIにデータ・パケットを送信する。端末29は、データ・パケットを受信し処理するために利用可能な4つのTTIを持つ。5番目のTTIでは、端末は、肯定応答(ACK)または否定応答(NACK)を送信する必要がある。次に、ネットワーク11は、肯定応答または否定応答を受信するために利用可能な1つのTTIおよび受信された応答を処理するための3つのTTIを持つ。否定応答の場合には、ネットワーク11は、HARQプロセスの8番目のTTIでデータ・パケットを再送信する必要がある。すなわち、ネットワーク11は、3つのTTI、つまりTRTT=3msの肯定応答に応答するための合計遅延バジェットを持つ。
【0042】
ProcessingTimeBSおよびProcessingTimeUEは、基地局(つまり、ベースバンド処理デバイス13およびリモート・ラジオ・ヘッド15)で必要な信号処理時間および端末29で必要な信号処理時間にそれぞれ対応する。RTT_AIRは、リモート・ラジオ・ヘッド15と端末29との間の無線リンク31の伝播遅延である。実施形態では、無線リンク31の伝播遅延RTT_AIRを含む全体的な処理時間は、ProcessingTimeBs+ProcessingTimeUE+RTT_AIR=2.84325msである。したがって、LTEに関係するこの実施形態では、最大の伝達遅延は、TransportDelaymax=156.75μsである。異なるリアルタイム制約および/またはUMTSまたはGPSなど異なる移動体通信標準を考慮する場合、最大の伝達遅延TransportDelaymaxの異なる値につながる、最大の伝達遅延TransportDelaymaxの同様の計算を実行することができる。
【0043】
さらに、全体的な伝達遅延に対する以下の等式は有効である。
TransportDelaymax=RTT_RRH+RTT_BBU (2)
ベースバンド処理デバイス13と、その接続されているリモート・ラジオ・ヘッド15との間の遅延は、少なくとも本質的に一定である。しかし、異なるベースバンド処理デバイス13間の遅延は、一定および動的な部分を持つ。一定の部分は、ベースバンド処理デバイス13の間の距離に依存する。動的な部分は、上に記述するような相互接続リンク25に対するリンク負荷条件を変動させることによって決定される。
【0044】
一実施形態では、第1の遅延しきい値TH1は、以下のように計算することができる。
TH1=(TransportDelaymax−min(RTT_RRH))/2 (3)
min(RTT_RRH)という項は、ホーム・ベースバンド処理デバイス13と、そのホーム・ベースバンド処理デバイス13に接続されたリモート・ラジオ・ヘッド15との間の最小のすべての測定されたラウンド・トリップ時間値RTT_RRHを意味する。測定されたラウンド・トリップ時間RTT_BBUの最小に依存して第1の遅延しきい値TH1を計算することは、かなり多数の潜在的なリモート・ベースバンド処理デバイス13が初期化段階35の間に選択されるという効果がある。
【0045】
ステップ45の次には、すべての到達可能なベースバンド処理デバイス13を検出するステップ47が続く。次に、たとえば、ステップ47で検出されたベースバンド処理デバイス13へのラウンド・トリップ時間RRT_BBUなど、遅延測定基準を決定するステップ49が実行される。
【0046】
図4に示すように、このラウンド・トリップ時間RTT_BBUは、ステップ47で検出されたベースバンド処理デバイス13に第2のテスト・メッセージ51を送信し、第2のテスト・メッセージに応じて、ベースバンド処理デバイス13によって送信された第2の応答メッセージ53を受信することによって測定することができる。一実施形態では、第2のテスト・メッセージ51および第2の応答メッセージ53は、相互接続リンク25で使用されるイーサネット・プロトコルによるループバック・テスト・メッセージ(「イーサネットPing」)の場合がある。このループバック・テスト・メッセージは、インターネット・コントロール・メッセージ・プロトコル(ICMP)エコー要求メッセージおよびIPレイヤのICMPエコー応答メッセージに類似しているラウンド・トリップ遅延RTT_BBUを測定するために使用することができる。図4に示すように、ラウンド・トリップ時間RTT_BBUは、それぞれの第2の応答メッセージの受信時間から第2のテスト・メッセージ51の送信時間を引くことによって決定することができる。他の実施形態では、第1および/または第2のテスト・メッセージ41、51、ならびに第1および/または第2の応答メッセージ43、53は、それぞれICMPエコー要求およびICMPエコー応答の場合がある。
【0047】
ステップ55は、ステップ49の後に実行される。ステップ55は、リモート・ベースバンド処理のために、リモート・ベースバンド処理デバイス13として可能性として使用することができるベースバンド処理デバイス13の最初の隣接リストNL_INITを集計する。このため、ステップ55は、最初のリストNL_INITにそれらのベースバンド処理デバイス13のみを含み、その1方向の送信遅延は、第1の遅延しきい値TH1未満である。つまり、それらのベースバンド処理デバイス13のみが、以下の条件が有効な最初の隣接リストNL_INITに含まれる。
【0048】
【数1】
【0049】
最初の隣接リストNL_INITは、初期化段階35の結果である。したがって、示している実施形態では、ステップ55は、初期化段階35の最後のステップである。結果的に、方法33は、初期化段階35、特に初期化段階35のステップ55を完了した後に運用段階57に入る。
【0050】
運用段階57のステップ59は、ステップ55の後に実行される。無線ベアラRBなど特定の通信プロセスへのベースバンド処理リソースの割り当てまたは再割り当てをトリガするイベントeが発生するまで、ステップ59は待つ。そのようなイベントeは、新しい無線ベアラRBがセットアップされた場合、無線ベアラRBが修正または非アクティブ化された場合、または異なるサービスを提供するリモート・ラジオ・ヘッド15への端末29のハンドオーバが実行された場合に発生する場合がある。
【0051】
イベントeが発生した後、運用の段階57のステップ61は、遅延測定基準、たとえば、ホーム・ベースバンド処理デバイス13と、リストNL_INITに含まれる潜在的なリモート・ベースバンド処理デバイス13との間のラウンド・トリップ時間RRT_BBUを再び測定する。相互接続するネットワーク、特に相互接続リンク25の瞬間的な負荷状況および/またはバッファ占有率に対応する、このラウンド・トリップ時間RRT_BBUの最新の値が決定されるため、運用段階57のラウンド・トリップ時間RRT_BBUの測定を繰り返すことで、方法33の信頼性および正確性が高くなる。
【0052】
ステップ61の後に、上記の等式(2)、つまり
TH2=TransportDelaynax−RTT_RRH (5)
により第2の遅延しきい値TH2を決定する運用段階57のステップ63が続き、ここでRTT_RRHは、ホーム・ベースバンド処理デバイス13と、リモート・ベースバンド処理デバイス13が選択されるものとする通信プロセス(たとえば無線ベアラ)に関与するサービスを提供するラジオ・ヘッド15との間の(たとえば、ステップ39では測定された)ラウンド・トリップ時間を意味する。
【0053】
ステップ63の完了の後に、最初の隣接リストNL_INITの各潜在的なベースバンド処理デバイス13について、測定されたラウンド・トリップ時間RRT_BBUが第2の遅延しきい値TH2未満かどうかを検証するステップ65が実行される。その場合、それぞれのベースバンド処理デバイス13は、隣接リストNLに含まれる。そうでない場合、それぞれのベースバンド処理デバイス13は、隣接リストNLに含まれない。したがって、ステップ63の結果は、上記のリアルタイム制約についてリモート・ベースバンド処理に使用できるすべてのベースバンド処理デバイス13を含む隣接リストNLである。
【0054】
一実施形態では、リモート・ベースバンド処理のために隣接リストNLに存在するベースバンド処理デバイス13の中の1つのベースバンド処理デバイスNを選択するステップ67を提供することができる。ステップ67での選択について、本明細書に記述したリアルタイム制約に関係しない可能性がある他の選択基準を適用することができる。たとえば、隣接リストNLに存在するベースバンド処理デバイス13の負荷状況を考慮することができる。たとえば、意図したリモート・ベースバンド処理に利用可能な十分な処理リソースを持つベースバンド処理デバイスNをステップ67で選択することができる。ステップ67を完了した後に、方法33はステップ59に戻る。
【0055】
ステップ61、63、および65で隣接リストNLの再計算をトリガするイベントeは、移動通信システム、特に、典型的にはベースバンド処理リソースの割り当てまたは再割り当てをトリガするモバイル通信システムのアクセス・ネットワーク11で発生する可能性がある任意のイベントの場合がある。イベントeは、たとえば無線ベアラの確立、修正、または削除に対する要求の場合がある。さらに、イベントeは、アクセス・ネットワーク11の異なるセル27間のハンドオーバに関係する場合がある。
【0056】
たとえば、イベントeは、同じベースバンド処理デバイス13に接続された異なるセル27間の端末29のハンドオーバの場合がある。特に、イベントeは、そのようなハンドオーバに関係するハンドオーバ・コマンドの発生の場合がある。このタイプのハンドオーバは、リモート・ラジオ・ヘッド15の変更につながるが、ホーム・ベースバンド処理デバイス13は同じままである。リモート・ラジオ・ヘッド15が変更されたため、典型的には、ホーム・ベースバンド処理デバイス13とサービスを提供するリモート・ラジオ・ヘッド15との間のラウンド・トリップ時間RTT_RRHの異なる値を考慮する必要がある。通常、ハンドオーバは、第2の遅延しきい値TH2の修正につながり、次に、方法33の運用段階57が隣接リストNLを修正できるという効果がある場合があり、ここで、実際のリモート・ベースバンド処理デバイス13は隣接リストから消える。つまり、無線ベアラRBは、他のリモート・ベースバンド処理デバイス13によって、またはホーム・ベースバンド処理デバイス13によってさえ処理する必要がある。
【0057】
異なるベースバンド処理デバイス13に接続されたセル27間でハンドオーバが発生した場合、わずかに異なる状況が発生する。そのようなハンドオーバの結果として、ホーム・ベースバンド処理デバイス13が変更される。そのようなハンドオーバの代表的なシナリオを図5に示している。ホーム・ベースバンド処理デバイス13がこのタイプのハンドオーバにより変更されたため、ステップ61は、新しいホーム・ベースバンド処理デバイス13に対してラウンド・トリップ時間値RTT_BBUを計算する。第2の遅延しきい値TH2および隣接リストNLは、それに応じて再計算される。ステップ67は、リモート・ベースバンド処理のためにベースバンド処理デバイス13として再計算された隣接リストNLの1つの隣接Nを選択することができる。
【0058】
まとめると、本明細書に記述された方法33およびネットワーク要素、たとえば少なくとも1つのベースバンド処理デバイス13は、分散されたベースバンド処理のために複数のベースバンド処理デバイス13のクラスタを構成することを可能にする。分散された基地局の端末29およびコンポーネント13、15の処理時間、ならびにエア・インターフェース伝播遅延をたとえば3GPP LTEおよび高速パケット・アクセス(HSPA)のHARQタイミング要件から引いた後に、近隣関係NLは、移送に利用可能な遅延制約を満たす遅延の合計によって決定される。遅延の合計は、ホーム・ベースバンド処理デバイス13からサービスを提供するリモート・ラジオ・ヘッド15、およびホーム・ベースバンド処理デバイス13からリモート・ベースバンド処理デバイス13までの累積的な遅延全体から構成される。ネットワーク条件の変更(たとえばパケット・バッファ占有率)のために、隣接リストNLは、動的な変化の影響を受けやすい。方法33の運用段階57は、これらの動的な変化に隣接リストNLを適応させ、適用可能な場合はリモート・ベースバンド処理デバイス13を再選択することを可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5