(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも水、着色剤、キサンタンガム、界面活性剤からなる水性ボールペン用インキ組成物において、前記界面活性剤がパーフルオロアルキルエチレンオシド付加物を有するフッ素系界面活性剤で、前記着色剤が吸油量50〜80(g/100g)のカーボンブラックであり、かつ、前記水性ボールペン用インキ組成物の表面張力は、20℃の環境下において、10〜25mN/mであり、20℃の環境下で、ずり速度500(sec-1)の回転剪断を加えた前記水性ボールペン用インキ組成物を、20℃の環境下で、ずり速度0.1(sec-1)のインキ粘度の測定開始時点を0(sec)とした場合、A(sec)時間経過後のずり速度0.1(sec-1)のインキ粘度をVA(Pa・s)、B(sec)時間経過後のずり速度0.1(sec-1)のインキ粘度を VB(Pa・s)とすると、前記経過時間とインキ粘度の関係が、0.01≦(VB−VA/B-A)≦0.7であり、前記インキ粘度VA(Pa・s)、VB(Pa・s)が、6〜12(Pa・s)であることを特徴とする水性ボールペン用インキ組成物(A、Bは整数、A<Bで、0<A、B≦10とする)をインキ収容筒に直詰めし、前記インキ収容筒の先端部に、チップ本体のボール抱持室にボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又はチップホルダーを介して具備したボールペンレフィルを、軸筒内に摺動自在に配設した水性ボールペンとし、筆記角度65°、筆記荷重100g、筆記速度4m/minの条件において、前記水性ボールペンの100mあたりのインキ消費量が、80〜250mg/100mとしたことを特徴とする水性ボールペン。
前記パーフルオロアルキルエチレンオシド付加物を有するフッ素系界面活性剤の含有量が、インキ組成物全量に対し、0.01〜1.0質量%であることを特徴とする請求項1に記載の水性ボールペン。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の特徴としては、少なくとも水、着色剤、擬塑性付与剤からなる水性ボールペン用インキ組成物において、20℃の環境下で、ずり速度500(sec
-1)の回転剪断を加えた前記水性ボールペン用インキ組成物を、20℃の環境下で、ずり速度0.1(sec
-1)のインキ粘度の測定開始時点を0(sec)とした場合、A(sec)時間経過後のずり速度0.1(sec
-1)のインキ粘度をV
A(Pa・s)、B(sec)時間経過後のずり速度0.1(sec
-1)のインキ粘度をV
B(Pa・s)とすると、前記経過時間とインキ粘度の関係が、0.01≦(V
B−V
A/(B-A)≦1.0であり、前記インキ粘度V
A(Pa・s)、V
B(Pa・s)が、6〜30(Pa・s)であることを特徴とする水性ボールペン用インキ組成物。(A、Bは整数、A<Bで、0<A、B≦10とする)
【0013】
本発明は、前記水性ボールペン用インキ組成物にずり速度500(sec
-1)の回転剪断を加えた前記水性ボールペン用インキ組成物を、20℃の環境下で、ずり速度0.1(sec
-1)のインキ粘度の測定開始時点を0(sec)とした場合の、インキ粘度の挙動について、新たに着目することで、筆記後の筆跡擦過性能と、泣きボテ性能を向上することが可能となることが解った。
【0014】
これは、筆記時の筆跡擦過性能と、泣きボテ性能の向上するために、筆記時から筆記終了後の筆跡乾燥までの一連のインキ粘度の挙動を検討するには、筆記時では、ボールの回転剪断が掛かっている状態をずり速度500(sec
-1)のインキ粘度とし、筆記終了後の紙面上のインキについては、静止時のずり速度0.0(sec
-1)のインキ粘度を近似値のずり速度0.1(sec
-1)のインキ粘度として、着目検討した。
【0015】
そこで、本願発明者は、鋭意研究した結果、前記ずり速度におけるインキ粘度の挙動と擦過性能、泣きボテ性能との相関性があることが解り、前記時間A(sec)、時間B(sec)のインキ粘度V
A(Pa・s)、V
B(Pa・s)を、0.01≦(V
B−V
A/B-A)≦1.0とすることで、緩やかにインキ粘度が回復することで、インキ流動性が良好になるため、紙面に対するインキ浸透性を向上して、擦過性能の向上や、ボール面のインキリターンを良好となり、泣きボテ性能が向上して、みずみずしい筆跡も得られることが解った。さらに、手脂の付着した紙面に対しても良好に浸透するため、手脂性能も向上することも可能となる。一方、(V
B−V
A/B-A)>1.0だと、インキ粘度の回復が早すぎて、インキ浸透性が劣り、ボール面のインキリターンも悪く、所望の擦過性能、泣きボテ性能が得られない。ここで、本発明の評価方法としては、JIS P3105には、筆跡擦過性試験について、筆記後20秒の擦過性の適合性を規定しているが、本発明では、より筆跡擦過性能の向上を目指しているため、筆記後10秒での擦過性の適合性を測定評価するものとする(A、Bは整数、A<Bで、0<A、B≦10とする)。
【0016】
よりインキ流動性を向上して、擦過性能、泣きボテ性能の向上する傾向を考慮すれば、0.01≦(V
B−V
A/B-A)≦0.7が好ましく、最も好ましくは、0.01≦(V
B−V
A/B-A)≦0.5が好ましい。
【0017】
また、前記インキ粘度V
A(Pa・s)、V
B(Pa・s)については、20℃の環境下において、ずり速度を0.1(sec
-1)において、6〜30(Pa・s)とする。前記インキ粘度が6(Pa・s)未満だと、インキ粘度が低過ぎて、インキ垂れ下がりが劣ってしまい、30(Pa・s)を越えると、擦過性能、泣きボテ性能、インキ追従性が劣ってしまうためである。より擦過性能、泣きボテ性能、インキ追従性を向上する傾向を考慮すれば、6〜12(Pa・s)が好ましい。
【0018】
さらに、前記0.01≦(V
B−V
A/B-A)≦1.0のような、緩やかにインキ粘度が回復する挙動を示す水性ボールペン用インキ組成物で、より擦過性能を向上し、手脂性能を向上させるには、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩の中から選ばれる1種以上の界面活性剤を選択し、含有することが好ましい。これは、表面張力を低減しやすく、紙面への浸透性を高めることで、擦過性能、 手脂性能をより向上させる傾向があるためである。また前記界面活性剤の中でも、擦過性能、 手脂性能をより向上させるために、フッ素系界面活性剤を用いることが好ましい。これは、前記フッ素系界面活性剤は、最も表面張力を低減することが可能で、 濡れ性を向上させる効果があり、インキを広がりやすくし、疎水性表面となっている手脂が付着した筆記面においても、良好な筆跡が得られ易いためである。そのため、前記インキ粘度の回復挙動を示し、前記界面活性剤を併用することで、より擦過性能、手脂性能を向上させる効果が得られる。
【0019】
また、シリコーン系界面活性剤は、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、フッ素変性、ジメチル、メチルフェニルなどのシリコーンオイル等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、パーフルオロ基ブチルスルホン酸塩、パーフルオロ基含有カルボン酸塩、パーフルオロ基含有リン酸エステル、パーフルオロ基含有リン酸エステル型配合物、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロ基・親水性基・親油性基含有オリゴマー、パーフルオロ基・親水性基含有オリゴマー、パーフルオロ基・親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物等が挙げられる。その中でも、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物を用いる方が好ましい。これは、エチレンオキシドがあると、親水性が強いため、水に対して溶解しやすく、経時安定性が安定する傾向にあるためである。さらに、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物のフッ素系界面活性剤は、手脂が付着した筆記面においても、筆跡に線とび、カスレなどを抑制することが可能なため、好ましく用いることができる。
【0020】
また、前記界面活性剤について、シリコーン系界面活性剤の具体例としては、KF-351、KF-352、KF-353、KF-354、KF-355、KF-615、KF-618、KF−642、KF-643、KF-945、KF-6004(信越化学工業(株))、FZ−2104、FZ−2110、FZ2163、FZ−2191、FZ−7002、FZ−720、SILWETL−7001、L−7002、Y−7006、L−7604(東レ・ダウコーニング(株))、TSF4445(東芝シリコーン(株))が挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤の具体例としては、ダイノール604、サーフィノール104H、同104A、同104BC、同104DPM、同104PA、同104S、同420、同440、同SE、同SE−F、同61等(エアープロダクツ ジャパン(株)社製)が挙げられる。フッ素系界面活性剤の具体例としては、メガファックF−447、F−410、F−444、F−445、F−552、F−553、F−554(DIC(株))、DSN−403N(ダイキン工業(株))、FC−170C、FC−430、ノベック FC−4430、FC−4432(住友スリーエム(株))等が挙げられる。ジアルキルスルホコハク酸塩具体例としては、ネオコールSW−C、ネオコールYSW−CE、ネオコールYSK(第一工業製薬(株))、ペレックスOT−P、ペレックスTR、ペレックスCS、ペレックスTA(花王(株))、エアロールOB−70(東邦化学工業(株))、エアロゾ−ルMA−80、エアロゾ−ルAY−100(三井サイアナミド(株))、アデカコールEC((株)アデカ)等が挙げられる。これらは、単独または2種以上混合して使用してもよい。
【0021】
前記界面活性剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.01〜5.0質量%が好ましい。この範囲より低いと、表面張力を十分に下げることができにくく、この範囲を越えると、筆跡に滲みが発生したり、インキ経時が不安定となりやすいため、0.01〜5.0質量%が好ましい。より筆跡滲みを向上する傾向を考慮すれば、0.1〜3.0質量%が好ましく、最も好ましくは0.1〜1.0質量%である。
【0022】
また、本発明の水性インキ組成物の表面張力は、20℃の環境下において、10〜35mN/mがより好ましい。この範囲を下まわると、筆跡に滲み、紙への裏抜けが発生しやすくなる傾向があり、この範囲を越えると、手脂性能に影響が出やすくなる傾向があるため、表面張力は、10〜35mN/mである方が好ましい。より手脂性能を向上する傾向を考慮すれば、10〜25mN/mが好ましい。
【0023】
また、着色剤は、染料、顔料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。染料については、直接染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料、及び各種造塩タイプ染料等が採用可能である。顔料については、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ギオキサジン系、アルミ顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、補色顔料等が挙げられる。これらの染料および顔料は、単独または2種以上組み合わせて使用してもかまわない。含有量は、インキ組成物全量に対し、1〜20質量%が好ましい。
【0024】
その中でも着色剤については、手脂性能を向上するためには、吸油量が1〜100gのカーボンブラックを用いるのが好ましい。カーボンブラックの吸油量は、カーボンブラックのストラクチャーを示す特性であり、乾燥された一定量のカーボンブラックがDBP(ジブチルフタレート)を吸収する量をいいJISK6221に規定される試験方法で測定される。 吸油量はカーボンブラックのつながりであるストラクチャーをあらわす代替特性であり、吸油量が大きいほどストラクチャーは大きくなる。特に、吸油量が100
gを越えるカーボンブラックを含有すると、ストラクチャーが大き過ぎるため、紙面への浸透性が劣る傾向にあり、手脂の付着した紙面に対しては顕著に効果が出やすいため、所望の手脂性能が得られにくい傾向となる。そのため、ストラクチャーを適度に調整した、吸油量が1〜100gのカーボンブラックを含有すると、手脂の付着した紙面に対しても良好に浸透し、更には筆跡のカスレ、線とびを抑制する傾向がある。さらに、より分散安定性を考慮すると、吸油量が、50〜100g(/100g)が好ましく、より手脂性能を考慮すれば、50〜80g(/100g)が最も好ましい。そのため、前記インキ粘度の回復挙動を示し、前記吸油量が1〜100 gのカーボンブラックを併用することで、より手脂性能をより向上させる効果が得られる傾向がある。
【0025】
また、擬塑性付与剤としては、多糖類として、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、グアーガム、ローカストビーンガム、λ−カラギーナン、セルロース誘導体、ダイユータンガムや、ポリアクリル酸が挙げられる。
【0026】
その中でも、キサンタンガムを少なくとも用いる方が好ましいが、これは、 前記インキ粘度の挙動が、0.01≦(V
B−V
A/B-A)≦1.0のような緩やかにインキ粘度が回復しやすい傾向があるためである。さらに、筆跡にボテがあると、筆跡擦過性が遅くなる要因となるため、キサンタンガムは、ボテが発生しづらい傾向があり、より擦過性の向上に用いることができるためである。
【0027】
また、擬塑性付与剤の含有量は、インキ組成物全量に対して、0.1質量〜1.0質量%が好ましい。この範囲より低いと、所望のインキ粘度が得られにくく、この範囲を越えるとインキ追従性能が劣ってしまう傾向があるためである。
【0028】
また、本発明の水性インキ組成物の表面張力は、20℃の環境下において、10〜35mN/mがより好ましい。この範囲を下まわると、筆跡に滲み、紙への裏抜けが発生しやすくなる傾向があり、この範囲を越えると、手脂性能に影響が出やすくなる傾向があるため、表面張力は、10〜35mN/mである方が好ましい。より手脂性能を向上する傾向を考慮すれば、10〜25mN/mが好ましい。
【0029】
その他として、水分の溶解安定性、水分蒸発乾燥防止するために、エチレングリコール、グリセリンなどのグリコール類などの水溶性有機溶剤や、着色剤の経時安定性や潤滑性を向上させるために、pH調整剤や潤滑剤として、リン酸エステル系界面活性剤、脂肪酸等、1,2ベンゾイソチアゾリン−3−オン等の防菌剤、尿素、ソルビット等の保湿剤、ベンゾトリアゾール等の防錆剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤を添加することができる。また、分散剤も適宜添加可能で、水溶性樹脂として、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等や、樹脂エマルジョンとして、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂などを添加することができる。これらは単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
次に実施例を示して本発明を説明する。
実施例1
水 67.0質量部
顔料(吸油量:69g(/100g)) 6.0質量部
水溶性溶剤(グリセリン) 10.0質量部
水溶性溶剤(エチレングリコール) 10.0質量部
分散剤(スチレン-アクリル樹脂) 3.0質量部
フッ素系界面活性剤(パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物) 1.0質量部
潤滑剤(リン酸エステル系界面活性剤) 1.0質量部
pH調整剤(トリエタノールアミン) 3.0質量部
防錆剤(ベンゾトリアゾール) 0.5質量部
防菌剤(1,2ベンゾイソチアゾリン−3−オン)0.5質量部
擬塑性付与剤(キサンタンガム) 0.40質量部
【0031】
まず、顔料、分散剤、水溶性溶剤、水、pH調整剤を適量採取し、ビーズミル、ボールミル、ロールミルなどの分散機を使用し、充分に分散した後、遠心分離を行い、粗粒分を除去して顔料分散体を得る。その後、作製した顔料分散体、水溶性溶剤、水、潤滑剤、pH調整剤、防錆剤、防菌剤をマグネットホットスターラーで加温撹拌等してベースインキを作成する。
【0032】
その後、上記作製したベースインキを加温しながら、増粘剤を投入してホモジナイザー攪拌機を用いて均一な状態となるまで充分に混合攪拌した後、濾紙を用い濾過を行って、実施例1の水性ボールペン用インキ組成物を得た。また、表面張力を、20℃の環境下において、協和界面科学株式会社製の表面張力計測器を用い、ガラスプレートを用いて、垂直平板法によって測定したところ、約18mN/mであった。
【0033】
実施例2〜6
表1に示すように各成分を配合に変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2〜の水性インキ組成物を得た。
【0034】
比較例1〜3
表2に示すように各成分を配合に変更した以外は、実施例1と同様な手順で比較例2〜6の水性インキ組成物を得た。
【0035】
(インキ粘度(Pa・s)と時間(sec)との関係(V
B−V
A/B-A)の測定方法)
実施例1で作製した水性ボールペン用インキ組成物の、インキ粘度は、TAインスツルメント社製レオメーターAR−G2粘度計(コーンプレート40mm・角度2°、測定温度20℃)を用いて、20℃の環境下で、ずり速度500(sec
-1)の回転剪断を60秒加えた後、ずり速度を0.1(sec
-1)に回転剪断を下げて、1秒ごとに10秒間測定したところ、5秒、10秒(A=5、B=10)では、V
A=6.5、V
B=9.55であり、(V
B−V
A/B−A)=0.61であった。実施例2〜6、比較例1〜3でも、同様な測定方法で測定値を算出した。なお、5秒、10秒(A=5、B=10)での(V
B−V
A/B-A)の測定値を算出した結果および評価を表1、2に示した。また、実施例1〜6のインキ粘度は、6〜30(Pa・s)の範囲であった。
【0037】
試験および評価
実施例1〜6及び比較例1〜3で作製した水性インキ組成物を、インキ収容筒の先端にボール径が0.5mmのボールを回転自在に抱持したボールペンチップをチップホルダーに介して具備したインキ収容筒内(ポリプロピレン製)に充填したノック式ボールペンを作製し、以下の試験および評価を行った。尚、擦過性能試験、泣きボテ性能試験、手脂性能試験の評価は、筆記試験用紙としてJIS P3201 筆記用紙Aを用い、以下のような試験方法で評価を行った。また、手脂性能試験に用いる人工皮脂は、スクワラン3.0重量部、イソプロピルミリステート6.0重量部、オリーブ油12.0重量部、コレステロール0.6重量部、パルミチン酸0.6重量部、オレイン酸3.9重量部、イソステアリン酸3.9重量部、アセトン70.0重量を撹拌混合して人工皮脂を作製したものを用いた。
【0038】
擦過性能試験:紙面上に筆記後、指で擦過し、筆跡乾燥性を観察した。
筆記5秒未満で、筆跡が乾燥したもの ・・・◎
筆記5〜10秒で、筆跡が乾燥したもの ・・・○
筆記10秒越えても、筆跡が乾燥しなかったもの ・・・×
【0039】
泣きボテ性能試験:紙面上に筆記後、筆跡を観察した。
泣きボテがないもの ・・・◎
泣きボテがあっても、実用上問題ないレベルのもの・・・○
泣きボテがひどく、実用性に乏しいもの ・・・×
【0040】
手脂性能試験: 人工皮脂を付着させた 紙面に筆記した筆跡を観察した。
筆跡に線とび、カスレがないもの ・・・◎
筆跡に若干線とび、カスレがあるもの ・・・○
筆跡に線とび、カスレがあるが、実用上問題ないもの ・・・△
筆跡に線とび、カスレがあるがひどく、実用性に乏しいもの・・・×
【0041】
表1の結果より、実施例1〜6では、擦過性能試験、泣きボテ性能試験、手脂性能試験ともに良好もしくは、実用上問題のないレベルの性能が得られた。
【0042】
比較例1では、インキ粘度(Pa・s)と時間(sec)との関係(V
B−V
A/B-A)は、5秒、10秒(A=5、B=10)では、V
A=14.0、V
B=21.3で、(V
B−V
A/B−A)=1.46であった(V
B−V
A/B-A)>1.0であったため、筆跡乾燥性が悪く、泣きボテがひどかった。比較例2、3でも同様に、(V
B−V
A/B-A)>1.0であったため、筆跡乾燥性が悪く、泣きボテがひどかった。
【0043】
さらに、比較例3では、(V
B−V
A/B-A)>1.0であり、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩の中から選ばれる1種以上の界面活性剤がないため、手脂性能試験において、筆跡に線とび、カスレがひどかった。
【0044】
特に、水性ボールペン用インキ組成物を直詰めしたインキ収容筒の先端部に、チップ本体のボール抱持室にボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又はチップホルダーを介して具備したボールペンレフィルを、軸筒内に摺動自在に配設し、前記ボールペンチップを前記軸筒の先端開口部から出没可能としたことを特徴とするノック式水性ボールペンや回転繰り出し式水性ボールペン等においては、インキ垂れ下がりが問題になるため、本発明のような20℃の環境下、ずり速度0.1(sec
-1)において、インキ粘度が6〜30(Pa・s)である水性ボールペン用インキ組成物を好適に用いることが可能である。
【0045】
本実施例では、ボールペンチップ先端縁の内壁に、ボールを押圧するコイルスプリングを配設していないが、コイルスプリングを配設することによって、インキ垂れ下がりの抑制効果が向上するため、より好ましい。
【0046】
また、インキ消費量については、本発明の水性ボールペン用インキ組成物をインキ収容筒内に直詰めした水性ボールペンとして使用し、筆記用紙として、JIS P3201筆記用紙A上に筆記角度65°、筆記荷重100gの条件にて、筆記速度4m/minの速度で、試験サンプル5本用いて、らせん筆記試験を行い、その100mあたりのインキ消費量の平均値を、100mあたりのインキ消費量と定義すれば、100mあたりのインキ消費量については、50〜300mg/100mであることが、好ましい。この範囲以下だと、インキ消費量が少ないので、筆跡にカスレが発生しやすく、この範囲を越えると、インキ消費量が多いので、筆跡擦過性に影響を及ぼす可能性もある。より、好ましくは、80〜250mg/100mである。