(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
MRIは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF: radio frequency)信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生する核磁気共鳴(NMR: nuclear magnetic resonance)信号から画像を再構成する撮像法である。
【0003】
この磁気共鳴イメージングの分野において、ハーフフーリエイメージング(HFI: half Fourier imaging)法が知られている。HFI法は、k空間におけるデータの複素対称性を利用して、k空間上においてデータが収集されていない領域のデータを、収集されたk空間データに基づいて補填することによって画像化する方法である。
【0004】
HFIにおける従来のデータ処理では、収集されたk空間データに基づいてk空間上において収集されていないデータを補填するHFI処理が実行される。これにより、全空間のデータが生成される。
【0005】
HFI処理は、以下の手順で実行される。ここでは、k空間のkz方向における高周波領域がk空間データの非サンプリング領域であるものとする。
【0006】
まず、k空間のkz方向に対して、Homodyneフィルタ(Homodyne filter) fhとローパスフィルタ(LPF: low pass filter) flの2種類のフィルタ処理を行う。Homodyneフィルタfhは、非サンプリング領域に複素共役データを補填する処理と等価なフィルタ処理を施すフィルタである。すなわち式(1-1)及び式(1-2)に示すように、k空間データKに対して、Homodyneフィルタ処理fh及びローパスフィルタ処理flがそれぞれ実行され、フィルタ処理後のk空間データKh(kx, ky, kz)、Kl(kx, ky, kz) がそれぞれ生成される。
K(kx, ky, kz)fh → Kh(kx, ky, kz) (1-1)
K(kx, ky, kz)fl → Kl(kx, ky, kz) (1-2)
【0007】
次に、3次元(3D: three dimensional)の高速フーリエ変換(FFT: Fast Fourier Transform)を行って、r空間(実空間)のデータにする。すなわち式(2-1)及び式(2-2)に示すように、フィルタ処理後のk空間データKh(kx, ky, kz) 及びKl(kx, ky, kz) にそれぞれ3D FFTを行って、r空間データVh(x, y, z) , Vl(x, y, z) が生成される。
FFT{Kh(kx, ky, kz)} → Vh(x, y, z) (2-1)
FFT{Kl(kx, ky, kz)} → Vl(x, y, z) (2-2)
【0008】
次に、Homodyneフィルタ処理fh後のr空間データVhに対する位相補正処理及び誤差分を取り除くためのREAL化処理を行う。式(3)に示すように位相補正処理及びREAL化処理が実行され、位相補正後のr空間データV(x, y, z) が生成される。
V(x, y, z) = REAL{Vh(x, y, z)*Vl
*(x, y, z)/|Vl(x, y, z)|} (3)
ここで、Vl
*は Vlの複素共役(complex conjugation)を示し、REAL()は実部をとる関数である。さらに、式(4)に示すように、r空間データV(x, y, z) を3D高速逆フーリエ変換(IFFT: Inverse Fast Fourier Transform)して得られるk空間データIFFT{V(x, y, z)}と元のk空間データK(kx, ky, kz) とが重み付け係数αを用いて重み付け加算される。
K(kx, ky, kz) = αIFFT{V(x, y, z)}+(1-α)K(kx, ky, kz) (4)
【0009】
そして、重み付け加算の結果が、再びr空間データV(x, y, z) を計算するためのk空間データK(kx, ky, kz) とされ、k空間での補填処理の精度を向上させるために式(1-1)、式(1-2)、式(2-1)、式(2-2)、式(3)及び式(4)で示されるHFI処理が1〜4回程度繰返し実行される。すなわち、フィルタ処理、3D FFT、位相補正処理及び重み付け加算処理が繰り返される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置を示す構成図である。
【0016】
磁気共鳴イメージング装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石21、静磁場用磁石21の内部に設けられたシムコイル22、傾斜磁場コイル23及びRFコイル24を備える。
【0017】
また、磁気共鳴イメージング装置20は、制御系25を備える。制御系25は、静磁場電源26、傾斜磁場電源27、シムコイル電源28、送信器29、受信器30、シーケンスコントローラ31及びコンピュータ32を備える。制御系25の傾斜磁場電源27は、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zで構成される。また、コンピュータ32は、入力装置33、表示装置34、演算装置35及び記憶装置36を備える。
【0018】
静磁場用磁石21は、静磁場電源26と接続され、静磁場電源26から供給される電流により撮像領域に静磁場を形成する。静磁場用磁石21は、例えば、超伝導コイルで構成されうる。静磁場用磁石21は、励磁の際に静磁場電源26と接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は、非接続状態とされるのが一般的である。また、静磁場用磁石21を永久磁石で構成し、静磁場電源26が設けられない場合もある。
【0019】
また、静磁場用磁石21の内側には、同軸上に筒状のシムコイル22が設けられる。シムコイル22は、シムコイル電源28と接続され、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて、静磁場が均一化されるように構成される。
【0020】
傾斜磁場コイル23は、X軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zで構成され、静磁場用磁石21の内部において筒状に形成される。傾斜磁場コイル23の内側には、寝台37が設けられて撮像領域とされ、寝台37に被検体Pがセットされる。RFコイル24には、ガントリに内蔵されたRF信号の送受信用の全身用コイル(WBC: whole body coil)、寝台37や被検体P近傍に設けられるRF信号の受信用の局所コイルなどがある。
【0021】
また、傾斜磁場コイル23は、傾斜磁場電源27と接続される。傾斜磁場コイル23のX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zはそれぞれ、傾斜磁場電源27のX軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zと接続される。
【0022】
そして、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zからそれぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zに電流が供給される。これにより、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzが形成される。
【0023】
RFコイル24は、送信器29及び受信器30の少なくとも一方と接続される。送信用のRFコイル24は、送信器29からRF信号を受けて被検体Pに送信する。受信用のRFコイル24は、被検体P内部の原子核スピンのRF信号による励起に伴って発生したMR信号を受信して受信器30に与える。
【0024】
一方、制御系25のシーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30と接続される。シーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源27に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報を記憶する。また、シーケンスコントローラ31は、記憶したシーケンス情報に従って、傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させることにより、X軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy、Z軸傾斜磁場Gz及びRF信号を発生させる。
【0025】
また、シーケンスコントローラ31は、受信器30におけるMR信号の検波及びA/D (analog to digital)変換により得られた複素データである生データ(raw data)を受けてコンピュータ32に与えるように構成される。
【0026】
送信器29は、シーケンスコントローラ31から受けた制御情報に基づいてRF信号をRFコイル24に与える。受信器30は、RFコイル24から受けたMR信号を検波して信号処理を実行するとともに、A/D変換することにより、デジタル化された複素データである生データを生成し、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える。RFコイル24が複数のコイル要素で構成される場合には、各コイル要素から出力されるMR信号をそれぞれ受信チャネルに入力させて処理してもよいし、複数のコイル要素のうち2つ以上のコイル要素から出力されるMR信号を合成して受信チャネルに入力させて処理してもよい。
【0027】
また、コンピュータ32の記憶装置36に記憶されたプログラムを演算装置35で実行することにより、コンピュータ32に各種機能が実現されうる。ただし、プログラムに限定されず、各種機能を有する回路を磁気共鳴イメージング装置20に設けてもよい。
【0028】
図2は、
図1に示すコンピュータ32の機能ブロック図である。
【0029】
コンピュータ32は、演算装置35がプログラムを実行することにより、撮像条件設定部40、シーケンスコントローラ制御部41、k空間データベース42、HFI処理部43及び画像処理部44として機能しうる。
【0030】
撮像条件設定部40は、入力装置33からの指示情報に基づいて、3D HFI用の撮像条件を設定し、設定した撮像条件をシーケンスコントローラ制御部41に与える。3D-HFI法は、3Dのk空間において位相エンコード(PE: phase encode)方向又はスライスエンコード(SE: slice encode)方向に非対称となるようにMRデータを収集し、k空間におけるデータの複素対称性を利用して、MRデータが収集されていない非サンプリング領域のk空間データを、収集されたMRデータ(サンプリング領域におけるk空間データ)に基づいて補填することによって画像化する方法である。従って、3D HFI法用の撮像条件として、PE方向又はSE方向における正側又は負側の高周波領域に対応するMRデータが収集されない3Dデータ収集条件が設定される。尚、HFI用のパルスシーケンスとしてはFASE (fast asymmetric spin echo又はfast advanced spin echo)シーケンスなどがある。
【0031】
シーケンスコントローラ制御部41は、入力装置33からのスキャン開始指示情報に基づいて、シーケンスコントローラ31にパルスシーケンスを含む撮像条件を与えることにより駆動制御させる。また、シーケンスコントローラ制御部41は、シーケンスコントローラ31から生データを受けてk空間データベース42に形成されたk空間に配置する。
【0032】
従って、3D-HFI用の撮像条件に従って3次元のk空間におけるMR信号が収集された場合には、PE方向又はSE方向における正側又は負側の高周波領域のMRデータが存在しないk空間データがk空間データベース42に形成されたk空間に配置されることとなる。
【0033】
HFI処理部43は、k空間データベース42から取得したk空間データに基づいて、ハーフフーリエ(half Fourier)法において最終画像データを生成するために必要となる処理(HFI処理)を実行する機能を有する。HFI処理は、k空間の非サンプリング領域におけるk空間データを、サンプリング領域におけるk空間データに基づいて補填するためのフィルタ処理及び位相補正処理を含む処理である。
【0034】
尚、位相補正処理は、位相分布の影響によって実際には成立しない複素共役の対称性を確保するために実施される。位相補正量を算出するための位相分布は、サンプリング領域における全部又は一部のk空間データに基づいて推定することができる。特に位相分布を高精度に推定する観点からは、k空間データが対称にサンプリングされた低周波領域におけるk空間データに基づいて位相分布を推定することが望ましい。この場合には、サンプリング領域におけるk空間データから低周波領域のk空間データを抽出するためのLPF処理が位相補正に先だって実施される。
【0035】
但し、位相補正処理を行っても、位相補正のエラー、つまり、複素信号の虚部がゼロにならない場合がある。そこで、データ補填前後におけるk空間データの重み付け加算によって得られるk空間データを初期データとしてデータの補填処理及び位相補正処理を繰り返すループ処理によって位相補正エラーの低減及びデータ補填の精度を向上させることができる。
【0036】
この他、低周波領域におけるk空間データに加え、k空間データが非対称にサンプリングされた高周波領域におけるk空間データを用いて位相分布を推定することによっても、位相補正のエラーを低減できる場合がある。この場合には、LPFの代わりに、サンプリング領域におけるk空間データから高周波領域及び低周波領域の双方のk空間データを抽出するためのフィルタ処理を位相補正に先だって実行すればよい。
【0037】
更に、非サンプリング領域におけるデータの補填に先だって、位相補正を実施することによっても、位相補正エラーを低減できる場合がある。また、データ補填のためのフィルタ処理をループ処理に含めずに、データ補填後に位相補正及び重み付け加算を含むループ処理を繰り返すHFI処理も知られている。
【0038】
このようにHFI処理には、位相補正用の位相分布の推定のために低周波領域のk空間データのみを用いるか、或いは、高周波領域のk空間データも用いるか、位相補正を非サンプリング領域におけるデータの補填処理の前処理として行うか、後処理として行うか、位相補正エラーの低減のためのループ処理を行うか否か、データ補填のためのフィルタ処理をループ処理に含めるかなどの種々のバリエーションがある。
【0039】
以降では、一例として、低周波領域のk空間データのみを用いて位相分布を推定し、かつ位相補正を非サンプリング領域におけるデータの補填処理の後処理として、データ補填処理及び位相補正を含むループ処理を繰り返す場合について説明する。もちろん、他の方法によるHFI処理についても同様に以降の処理を適用することができる。
【0040】
この場合、HFI処理は、k空間の非サンプリング領域におけるデータ補填のためのフィルタ処理、位相分布の推定用の低周波領域におけるデータ抽出のためのフィルタ処理、実空間データに対する位相補正処理、位相補正後における実空間データの実部をとるREAL化処理、k空間データの重み付け加算処理などの複数の処理を所定回数繰り返すことによって、実空間データの虚部をゼロに収束させる処理となる。従って、HFI処理部43には、上述の処理の他、k空間データを実空間データに変換するFT処理又はFFT処理や実空間データである画像データをk空間データに変換するIFT処理又はIFFT処理など、HFI処理を構成する各種処理を実行する機能が備えられる。
【0041】
特に、HFI処理部43は、3Dのサンプリング領域における収集されたMRデータ(k空間データ)の全てを用いずに一部のMRデータに基づいて位相分布の推定を行うことによって、HFI処理量及びHFI処理時間を従来よりも低減できるように構成されている。そのために、HFI処理部43は、第1の位相補正量算出部43A、第2の位相補正量決定部43B及び診断画像生成部43Cを有する。
【0042】
第1の位相補正量算出部43Aは、3D HFI用の撮像条件に従って収集された3Dのk空間におけるMR信号の一部を抽出することによって、収集されたMR信号よりも少ないMR信号を位相補正用の第1の位相補正量を求めるためのk空間データとして設定する機能、k空間における複素対称性を利用した非サンプリング領域へのデータ補填のための複素共役をとるフィルタ処理及び第1の位相補正量を求めるためのk空間データに基づく位相補正を含む処理を3Dのk空間におけるMR信号に対して繰返し実行する第1のHFI処理によって第1の位相補正量を求める機能を有する。
【0043】
図3は、
図2に示す第1の位相補正量算出部43Aにおいて実行される第1のHFI処理の一例を示す図である。
【0044】
図3(A)に示すように、3Dデータ収集によって、実空間のPE方向、SE方向及び読出し(RO: readout)方向にそれぞれ対応するk空間のkpe方向、kse方向及びkro方向の3軸方向を有する空間的なk空間データが収集される。但し、HFIでは、PE方向又はSE方向に非対称な3D-k空間データが収集される。
図3(A)は、SE方向の負極側の高周波領域を非サンプリング領域とした例を示している。従って、SE方向の低周波領域及び正極側の高周波領域のみがサンプリング領域となり、kpe ≧ -Kaの領域にk空間データが充填される。
【0045】
PE方向、SE方向及びRO方向は、それぞれ診断目的に応じてx軸、y軸、z軸及び斜め方向の軸など任意の空間座標軸に設定される。
図3(A)は、実空間においてPE方向、SE方向及びRO方向を、それぞれy軸、z軸及びx軸に設定した例を示している。従って、k空間におけるkpe方向、kse方向及びkro方向は、それぞれky方向、kz方向及びkx方向となっている。
【0046】
図3(A)に示す3D-k空間データにHomodyneフィルタを施すと、非サンプリング領域にk空間データを補填したk空間データと等価なk空間データが生成される。尚、Homodyneフィルタは、非サンプリング領域にサンプリング領域の複素共役データを補填する処理と等価なフィルタ処理を施すフィルタである。
【0047】
図4は、
図2に示すHFI処理部43において用いられるHomodyneフィルタの特性の一例を示す図である。
【0048】
図4(A)において横軸はkz方向を示し、縦軸はHomodyneフィルタの強度を示す。また
図4(B)において横軸はkz方向を示し、縦軸はkx方向を示す。
【0049】
図3に示すように、kz方向に非対称な3D-k空間データが収集されている場合には、例えば
図4(A)に示すようなkz方向の強度分布を有し、かつkx方向及びky方向における強度分布が一定であるHomodyneフィルタをフィルタ処理に用いることができる。すなわち、k空間データが収集されていない負極側の高周波領域-Kmax ≦ kz ≦ -Kaの範囲では強度がゼロ、k空間データが収集されている低周波領域-Ka < kz < Kaの範囲では強度が1.0、k空間データが収集されている正極側の高周波領域Ka ≦ kz ≦ Kmaxの範囲では強度が2.0となる強度プロファイルを有するHomodyneフィルタをフィルタ処理に用いることができる。
【0050】
図4(A)に示すHomodyneフィルタの強度分布は一定値の間において直線的に変化する例を示しているが、強度が滑らかに変化するように曲線形状の強度分布を有するHomodyneフィルタをフィルタ処理に用いてもよい。
【0051】
図4(A)に示すような強度分布を有するHomodyneフィルタを用いてkz方向に非対称に収集された3D-k空間データのフィルタ処理を行うと、
図4(B)に示すようなHomodyneフィルタ処理後のk空間データが得られる。
【0052】
そして、Homodyneフィルタ処理後の3D-k空間データに対して3D-FFTを実行すると、
図3(B)に示すような複数の2D-r空間データがスライス画像データとして生成される。
【0053】
一方、
図3(A)に示す3D-k空間データから1枚の2D-k空間データを抽出し、位相補正用の第1の位相補正量を求めるためのk空間データとして設定することができる。第1の位相補正量を高精度に求める観点からは、少なくともSNR (signal to noise ratio)が最も良好なエンコード量がゼロの2D-k空間データを位相補正量の算出用に選択することが重要である。但し、第1の位相補正量を算出するためには非対称な方向におけるk空間データの位相分布を推定する必要がある。このため、非対称な方向についてはエンコード量をゼロにすることはできない。
【0054】
従って、PE方向に非対称なMR信号を収集されている場合には、SE方向におけるエンコード量が0である2D-k空間データを第1の位相補正量を求めるためのk空間データとすることが好適である。一方、SE方向に非対称なMR信号を収集されている場合には、PE方向におけるエンコード量が0である2D-k空間データを第1の位相補正量を求めるためのk空間データとすることが好適である。
【0055】
図3(A)は、SE方向に非対称なMR信号が収集されている例を示している。このため、
図3(A)に示す例では、PE量がゼロ、つまりkpe=0となる2D-k空間データが第1の位相補正量を求めるためのk空間データとして選択されている。
【0056】
第1の位相補正量を求めるための2D-k空間データにはLPFが施される。これにより、2D-k空間データの低周波領域におけるk空間データを抽出し、抽出した低周波領域における2D-k空間データを位相分布の推定用に用いることが可能となる。
【0057】
図5は、
図2に示すHFI処理部43において用いられるLPFの特性の一例を示す図である。
【0058】
図5(A)において横軸はkz方向を示し、縦軸はLPFの強度を示す。また
図5(B)において横軸はkz方向を示し、縦軸はkx方向を示す。
【0059】
図3に示すように、kz方向に非対称な3D-k空間データが収集されている場合には、例えば
図5(A)に示すようなkz方向の強度分布を有し、かつkx方向及びky方向における強度分布が一定であるLPFをフィルタ処理に用いることができる。すなわち、k空間データが収集されている低周波領域-Ka < kz < Kaの範囲では強度が1.0、k空間データが収集されていない負極側の高周波領域-Kmax ≦ kz ≦ -Kaの範囲及びk空間データが収集されている正極側の高周波領域Ka ≦ kz ≦ Kmaxの範囲では強度がゼロとなる強度プロファイルを有するLPFをフィルタ処理に用いることができる。
【0060】
図5(A)に示すLPFの強度分布は一定値の間において直線的に変化する例を示しているが、強度が滑らかに変化するように曲線形状の強度分布を有するLPFをフィルタ処理に用いてもよい。
【0061】
図5(A)に示すような強度分布を有するLPFを用いて第1の位相補正量を求めるための2D-k空間データのフィルタ処理を行うと、
図5(B)に示すようなLPF処理後のk空間データが得られる。すなわち、低周波領域における2D-k空間データが位相分布の推定用に抽出される。
【0062】
そして、LPF処理後の位相分布の推定用の2D-k空間データに対して2D-FFTを実行すると、
図3(C)に示すような1枚の2D-r空間データがスライス画像データとして生成される。更に、位相分布の推定用の2D-r空間データの複素共役データを絶対値で除算することによって、低周波領域における位相分布を算出することができる。
【0063】
次に、PE=0に対応する2D-r空間データに基づいて算出された位相分布を用いて、Homodyneフィルタ処理及び3D-FFTによって生成された複数の2D-r空間データの位相補正が行われる。この結果、非サンプリング領域へのデータ補填及び位相補正後におけるマルチスライス画像データを得ることができる。
【0064】
但し、位相分布に誤差があると、位相補正後における2D-r空間データの虚部がゼロとならない。そこで、データ補填前後におけるk空間データの重み付け加算によって得られるk空間データを初期データとして、繰返しデータ補填及び位相補正が実行される。つまり位相補正後における2D-r空間データの虚部をゼロに収束させるためのループ処理が実行される。
【0065】
具体的には、位相補正後における複数の2D-r空間データの虚部を除去してそれぞれ実部をとることによって誤差分を取り除くためのREAL化処理が実行される。次に、REAL化処理後における複数の2D-r空間データの2D IFFTによってデータ補填後の全周波数領域における3Dk空間データが生成される。次に、データ補填前後における3D-k空間データの重み付け加算が実行される。この重み付け加算の結果として得られる3D-k空間データは、再びHomodyneフィルタによるデータ補填処理及び第1の位相補正量を求めるためのkpe=0に対応する2D-k空間データの抽出の対象となる初期データとして用いられる。
【0066】
そして、経験的又はシミュレーション等によって予め決定された所定回数だけ上述のループ処理を繰り返すことによって、位相補正後におけるr空間データの虚部をゼロに近づけることができる。換言すれば、収集されたMRデータの位相とループ処理後におけるデータの位相との差を位相補正に適切な第1の位相補正量として算出することが可能となる。
【0067】
図3に示す第1のHFI処理では、位相分布の推定用に3D-k空間データではなく、単一の2D-k空間データが用いられる。従って、位相分布の推定に必要な処理が従来のような位相分布の推定用の3D-k空間データに対する3D-FFTではなく2D-k空間データに対する2D-FFTとなる。このため、第1の位相補正量の算出に要するデータ処理量を、従来よりも低減させることができる。特に、ループ処理の回数が多い場合には、FFTが繰り返されるため、データ処理量及びデータ処理時間の低減量が顕著となる。
【0068】
更に、複数のコイル要素を用いてMRデータの収集を行う場合には、複数の受信チャネルに対応する複数の3D-k空間データに対してそれぞれHFI処理が実行される。このため、位相分布の推定のためのデータ処理量及びデータ処理時間を一層低減させることができる。
【0069】
図3には、1枚の2D-k空間データを用いて位相補正用の位相分布を推定する例を示したが、複数枚の2D-k空間データを用いて位相補正用の位相分布を推定するようにすることもできる。1枚の2D-k空間データを用いて位相分布を推定する場合には、位相補正対象となるr空間データの位相分布の代表値が1つ推定されることとなる。
【0070】
これに対して、複数枚の2D-k空間データを用いて位相補正用の位相分布を推定すれば、位相補正対象となるr空間データの位相分布の複数の代表値を推定することが可能となる。このため、より高精度な位相補正を行って最終的なMR画像データを生成することが可能となる。
【0071】
図6は、
図2に示す第1の位相補正量算出部43Aにおいて実行される第1のHFI処理の別の一例を示す図である。
【0072】
図6に示す第1のHFI処理は、(A)に示すように3D-k空間データから複数枚の2D-k空間データを抽出し、第1の位相補正量を求めるためのk空間データとして設定するようにした点が
図3に示す第1のHFI処理と相違する。このため、共通する内容については、説明を省略する。
【0073】
図6は、kpe=-kpe1, 0, +kpe1に対応する3枚の2D-k空間データを、第1の位相補正量を求めるためのk空間データとして設定した例を示している。この場合、LPFによって得られる3枚の低周波領域における2D-k空間データが抽出される。そして、3枚の低周波領域における2D-k空間データに対する3D-FFTによって、(C)に示すように3枚の2D-r空間データが位相分布の推定用に生成される。
【0074】
従って、3枚の2D-r空間データに基づいて、互いに異なるkpe方向の位置に対応する3つの位相分布の推定値を算出することができる。これは、(A)に示す3Dのk空間をkpe方向に3分割し、分割領域ごとに位相分布を推定することに相当する。このため、位相補正の対象となる2D-r空間データは、同一の分割領域に対応する位相分布推定用の2D-r空間データ、つまり最も近い位相分布推定用の2D-r空間データから推定された位相分布を用いて位相補正される。
【0075】
このように、収集されるMRデータが対称となるエンコード方向において互いにエンコード量が異なる複数の2D-k空間データを、第1の位相補正量を求めるためのk空間データとすれば、より高精度に位相分布の推定及び位相補正を行うことができる。すなわち、少なくともエンコード量がゼロでない2D-k空間データを含む複数の2D-k空間データを第1の位相補正量を求めるためのk空間データとすることによって、互いに異なるエンコード量に対応する複数の第1の位相補正量を求めることができる。
【0076】
一方、第1の位相補正量を求めるためのk空間データを、収集されたMRデータよりも少ないk空間データとすることによって、位相分布を算出するための3D-FFTのデータ処理量及びデータ処理時間を低減させることができる。従って、第1の位相補正量を求めるための2D-k空間データの数及び位置を調整することによって、トレードオフの関係にある位相補正の精度及びデータ処理量を最適化することが可能である。
【0077】
第2の位相補正量決定部43Bは、3D-HFI用の撮像条件に従って収集された3Dのk空間におけるMR信号に対して実行される3次元の位相補正に用いる第2の位相補正量を、第1の位相補正量に基づいて決定する機能を有する。
【0078】
例えば、第1の位相補正量が単一の値として算出され、かつ収集されるMRデータが対称となるエンコード方向において第2の位相補正量を一定とする場合には、第1の位相補正量をそのまま第2の位相補正量に決定することができる。
【0079】
また、収集されるMRデータが対称となるエンコード方向において異なるエンコード量ごとに複数の第1の位相補正量が算出されている場合においても、そのまま各エンコード量に対応する複数の第2の位相補正量に決定することができる。例えば、
図6に示す例であれば、kpe方向の複数の位置に対応する複数の第1の位相補正量をそのままkpe方向の複数の位置に対応する第2の位相補正量に決定することができる。
【0080】
一方、収集されるMRデータが対称となるエンコード方向におけるエンコード量に応じた複数の第2の位相補正量を設定する場合には、第1の位相補正量算出部43Aにおいて算出された単一又は複数の第1の位相補正量に基づいて、エンコード量に応じた複数の第2の位相補正量を求めることができる。
【0081】
例えば、収集されるMRデータが対称となるエンコード方向において、第2の位相補正量がエンコード量に比例して線形に変化するとみなせば、1つの第1の位相補正量を線形に変化させるか、或いは複数の第1の位相補正量の補間又はフィッティングによって任意の複数のエンコード量に対応する複数の第2の位相補正量を算出することができる。例えば、
図3又は
図6に示す例であれば、異なる複数のkpe方向の位置に対応する第2の位相補正量を算出することができる。尚、第2の位相補正量を計算するための係数については、経験的又はシミュレーションによって予め決定することができる。
【0082】
診断画像生成部43Cは、3次元の複素共役をとることによる非サンプリング領域へのデータ補填のためのフィルタ処理、第1の位相補正量に基づく第2の位相補正量を用いた位相補正及び画像再構成処理を含む第2のHFI処理を、3D-HFI用の撮像条件に従って収集された3Dのk空間におけるMR信号に対して実行することによって診断用のMR画像データを生成する機能を有する。すなわち、第2のHFI処理では、位相補正量が定まっている。このため、位相分布の推定用のk空間データの抽出及び位相分布の推定は実行されない。また、位相補正エラーを低減させるためのループ処理についても必ずしも必要ではない。
【0083】
また、画像処理部44は、HFI処理部43から取得したHFI処理後のMR画像データに、歪み補正処理等の必要な画像処理を施して、表示装置34に表示させる機能を有する。
【0084】
次に磁気共鳴イメージング装置20の動作について説明する。
【0085】
図7は、
図1に示す磁気共鳴イメージング装置20において、HFIにより被検体Pの画像データを取得する際の流れを示すフローチャートを示す図である。
【0086】
ステップS1では、撮像条件設定部40は、HFI用の撮像条件を設定する。すなわち、FASEシーケンス等のパルスシーケンスによってSE方向又はPE方向に非対称な3D MRデータを収集する撮像条件が設定される。
【0087】
ステップS2では、撮像条件設定部40で設定された撮像条件に従ってMRデータの収集が行われる。すなわち、寝台37に被検体Pがセットされ、静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21(超伝導磁石)の撮像領域に静磁場が形成される。
【0088】
また、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて撮像領域に形成された静磁場が均一化される。そして、入力装置33からシーケンスコントローラ制御部41にスキャン開始指示が与えられると、シーケンスコントローラ制御部41は、撮像条件設定部40から取得したパルスシーケンスを含む撮像条件をシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、シーケンスコントローラ制御部41から与えられたパルスシーケンスに従って、傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させることにより、被検体Pがセットされた撮像領域に傾斜磁場を形成させるとともに、RFコイル24からRF信号を発生させる。
【0089】
これにより被検体Pの内部における磁気共鳴により生じたMR信号は、RFコイル24により受信されて受信器30に与えられる。受信器30は、RFコイル24からMR信号を受けて、信号処理を実行した後、A/D変換することにより、デジタルデータのMR信号である3次元の生データを生成する。
【0090】
ここでは、HFI用のデータ収集条件に従って、3次元のk空間の一部のMRデータが収集されないように、シーケンスコントローラ制御部41で制御される。収集されないk空間のデータは、後述するHFI処理により補填される。
【0091】
受信器30は、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、生データをシーケンスコントローラ制御部41に与え、シーケンスコントローラ制御部41は、k空間データベース42に形成されたk空間に生データを3次元のk空間データとして配置する。
【0092】
ステップS3では、HFI処理部43が第1のHFI処理の実行を通じて第1の位相補正量を算出する。
【0093】
より具体的には、ステップS31において、第1の位相補正量算出部43Aが、k空間データベース42に配置された3次元のk空間データのうち、第1の位相補正量を求めるための単一又は複数の2D-k空間データを抽出する。
【0094】
第1の位相補正量を高精度に求める観点からは、k空間データが対称な方向におけるエンコード量がゼロの2Dk空間データを位相補正量の算出用に選択することが重要である。そこで、ここでは
図3に示すようにky方向がPE方向に設定され、SE方向に設定されたkz方向に非対称なk空間データがサンプリングされる場合を例に説明する。
【0095】
この場合、少なくともkpe=ky=0に対応するPE方向におけるエンコード量がゼロの2D-k空間データが第1の位相補正量の算出用に設定される。
【0096】
次にステップS32では、第1の位相補正量算出部43Aは、式(5-1)に示すHomodyneフィルタ処理及び式(5-2)に示すLPF処理を行う。
K(kx, kz)fh → Kh(kx, kz) (5-1)
K0(kx, kz)fl → Kl(kx, kz) (5-2)
【0097】
すなわち、式(5-1)に示すように非対称な3D-k空間データを構成するKx-Ky平面に平行な複数の2D-k空間データK(kx, kz)に対してそれぞれHomodyneフィルタfhが掛けられる。これにより、非サンプリング領域におけるデータが補填された複数の2D-k空間データKh(kx, kz)が生成される。
【0098】
一方、式(5-2)に示すように第1の位相補正量の算出用の単一又は複数の2D-k空間データK0(kx, kz)に対してLPF flが掛けられる。これにより、低周波領域における位相分布推定用の2D-k空間データKl(kx, kz)が生成される。
【0099】
次に、ステップS33では、第1の位相補正量算出部43Aが、式(6-1)及び式(6-2)に示すように、各フィルタ処理後における2D-k空間データKh(kx, kz), Kl(kx, kz)にFFT処理を施す。これにより、2D-R空間データVh(x, z), Vl(x, z)が得られる。
FFT{Kh(kx, kz)} → Vh(x, z) (6-1)
FFT{Kl(kx, kz)} → Vl(x, z) (6-2)
【0100】
つまり、位相補正の対象となる複数の2D-r空間データVh(x, z)及び位相補正用の位相分布を推定するための単一又は複数の2D-r空間データVl(x, z)が再構成される。
【0101】
次に、ステップS34では、第1の位相補正量算出部43Aが、式(6-2)で得られる2D-r空間データVl(x, z)に基づいて算出した位相分布を用いて、各2D-r空間データVh(x, z)の位相補正を行う。
【0102】
次に、ステップS35では、第1の位相補正量算出部43Aは、ステップS31からステップS34までの処理の繰返し回数が予め決定された回数の閾値Nに達したか否かを判定する。閾値Nは、経験的には2から4程度に設定される。また、処理の繰返し回数Nは、データ処理条件として入力装置33の操作によって可変設定できるようにすることもできる。
【0103】
ループ処理の繰返し回数が閾値Nに達していないと判定された場合には、ステップS36において、第1の位相補正量算出部43Aが、位相補正後における各2D-r空間データの実部をとるREAL化処理を行う。この結果、データ補填及び位相補正後における実部信号のみの2D-r空間データVcor(x, z)が得られる。
【0104】
このステップS34及びステップS36の処理は式(7)で示される。
Vcor(x, z) = REAL{Vh(x, z)*Vl
*(x, z)/|Vl(x, z)|} (7)
但し、式(7)においてREAL()は実部を取る処理を示し、Vl
*はVlの複素共役を示す。
【0105】
さらに、位相補正及びk空間におけるデータ補填処理の精度を向上させるために、上述の処理によって生成されたデータ補填及び位相補正後における2D-k空間データと、データ補填及び位相補正前における2D-k空間データとの重み付け加算が行われる。そして、重み付け加算によって得られる2D-k空間データを初期データとして、上述したような2D-k空間データのフィルタ処理、フィルタ処理後のk空間データのFFT処理、位相補正及び重み付け加算が繰返し実行される。
【0106】
そのために、ステップS37において、第1の位相補正量算出部43Aは、式(8)に示すようにIFFTにより、データ補填及び位相補正後における実部信号のみの2D-r空間データVcor(x, z)を2D-k空間データKcor(kx, kz)に変換する。
Kcor(kx, kz) = IFFT{Vcor(x, z)} (8)
【0107】
次に、ステップS38において、第1の位相補正量算出部43Aは、データ補填及び位相補正後における各2D-k空間データKcor(kx, kz)と、対応するデータ補填及び位相補正前における各2D-k空間データK(kx, kz)との重み付け加算を行う。この重み付け加算の結果は、式(9)に示すように再びステップS32におけるフィルタ処理用の初期データとされる。
K(kx, kz) = αKcor(kx, kz)+(1-α)K(kx, kz) (9)
【0108】
但し、式(9)においてαは、0<α<1の値をとる重み係数である。重み係数αは経験的又はシミュレーションによって適切な値に決定できるが、典型的には、k空間データの非対称な方向における位置kzに応じた値に設定される。具体的には非サンプリング領域ではデータ補填及び位相補正後における2D-k空間データKcor(kx, kz)の割合が大きく、サンプリング領域ではデータ補填及び位相補正前における2D-k空間データK(kx, kz)の割合が大きくなるように重み係数α(kz)が設定される。
【0109】
また、重み付け加算の重み係数αは、データ処理条件として入力装置33の操作によって可変設定できるようにすることもできる。
【0110】
ステップS31からステップS38までのループ処理が繰返し回数の閾値Nだけ繰り返されると、ステップS35の判定においてYESと判定される。これにより、ループ処理が完了する。
【0111】
ループ処理が完了すると、ステップS39において、第1の位相補正量算出部43Aは、ループ処理の結果に基づいて第1の位相補正量を算出する。第1の位相補正量は、式(10)に示すように、第1のHFI処理の元データとなった位相補正前における2D-k空間データK(kx, kz)を変換して得られるr空間データと位相補正を含むループ処理後における2D-r空間データVhfi(x, z)との位相差φ(z)の指数関数β1(z)として求めることができる。
β1(z) = exp{-iφ(z)}
= conjugate[FFT{K(Kx, Kz)}]/|FFT{K(Kx, Kz)}|*|Vhfi(x, z)|/Vhfi
*(x, z) (10)
但し、式(10)においてconjugate()は複素共役をとる関数であり、Vhfi
*はVhfiの複素共役を示す。
【0112】
次に、ステップS4では、第2の位相補正量決定部43Bが、第1の位相補正量β1(z)に基づいて第2の位相補正量β2を決定する。PE方向であるy軸方向において第2の位相補正量β2を一定とする場合には、式(11)に示すように、第1の位相補正量β1(z)を3D位相補正用の第2の位相補正量β2(z)とすることができる。
β2(z) = β1(z) (11)
【0113】
一方、y軸方向の位置、すなわちPE量に応じて第2の位相補正量β2をに変化させる場合には、式(12)に示すように、y軸方向における位置yに応じた係数γ(y)を第1の位相補正量β1(z)に乗じた値を第2の位相補正量β2(y, z)とすることができる。第2の位相補正量β2(y, z)をy軸方向に線形に変化させる場合には、係数γ(y)は位置yに比例する値となる。
β2(y, z) = β1(z)γ(y) (12)
【0114】
また、複数の位置ky=kyi(iは自然数)に対応する複数の2D-k空間データK0(kx, kyi, kz)が第1の位相補正量β1の算出用に設定された場合には、第1の位相補正量β1の算出用の2D-k空間データK0(kx, kyi, kz)の数iだけ第1の位相補正量β1(yi, z)が求められることになる。この場合には、複数の第1の位相補正量β1(yi, z)をそのまま用いるか、複数の第1の位相補正量β1(yi, z)に基づく外挿や内挿等の補間によって位置yに応じた第2の位相補正量β2(y, z)を決定することができる。
【0115】
次に、ステップS5では、診断画像生成部43Cが、Homodyneフィルタfhによるデータ補填のためのフィルタ処理及び第2の位相補正量β2を用いた位相補正を含む第2のHFI処理を、収集された3Dのk空間におけるMR信号に対して実行する。
【0116】
具体的には、式(13)に示すように、ステップS2において収集された非対称の3D-k空間データK(kx, ky, kz)に対するデータ補填のためのHomodyneフィルタ処理fh及びHomodyneフィルタ処理後における3D-k空間データに対する画像再構成処理としての3D-FFTが実行される。これにより、3D-r空間データV(x, y, z)として3D-MR画像データが再構成される。
V(x, y, z) = FFT{K(kx, ky, kz)fh} (13)
【0117】
次に、式(14)に示すように第2の位相補正量β2を用いた3D-r空間データV(x, y, z)の位相補正及び位相補正後における3D-r空間データのREAL化処理を行う。これにより、最終的なMR診断画像データVfinal(x, y, z)が生成される。
Vfinal(x, y, z) = gREAL{V(x, y, z)β2} (14)
【0118】
尚、gは画像信号の振幅を調整するための任意の係数であり、例えばg=2.0に設定される。この係数gはゲインに相当し、経験的又はシミュレーションなどによって決定することができる。
【0119】
その後、画像処理部44は、HFI処理部43から取得したMR診断画像データVfinalに歪み補正処理等の必要な画像処理を施して、表示装置34に表示させる。これによりユーザは、表示装置34に表示されたMR診断画像を観察して診断を行うことが可能となる。
【0120】
以上のように、磁気共鳴イメージング装置20によれば、HFI処理において位相補正用の位相分布を推定するために必要となるFFTの処理量を従来よりも低減させることができる。特に、位相分布の推定用のk空間データを1枚の2D-k空間データとすれば、2D-FFTにより位相補正量を算出することが可能となる。この結果、トータルのデータ処理量及びデータ処理時間を低減させることができる。或いは、トータルのデータ処理量及びデータ処理時間を同程度にしつつ、ループ処理の繰返し回数を増やして、精度を向上させることができる。
【0121】
尚、位相補正をr空間データではなくk空間データに対して行うようにしてもよい。k空間データに対して位相補正を行えば処理が簡易となる。一方、r空間データに対して位相補正を行えば、精度を向上させることができる。
【0122】
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。