(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記正負の直流電圧とは別の直流電圧を出力する他の電源回路を備え、単電源で動作する単電源動作回路には、該他の電源回路から該別の直流電圧を供給することを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
前記シールドが、前記所定電位を出力するボルテージフォロア回路に接続されており、該ボルテージフォロア回路が、出力部に前記電流制限回路を有していることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載された電流制限回路のように、測定用電流の流れる経路内に電流検出用の抵抗を設けると、この抵抗に常時電流が流れるため、その電力損失が無駄である。また、この電力損失により熱が発生する。測定装置では、特に低インピーダンスのDUTを測定するような場合、精度良く測定するために、大きな測定用電流(例えば1A)を流す必要がある。このような大きな測定用電流を流すと、電流検出用の抵抗で発生する熱量が大きくなるため、測定装置の内部温度が上昇して、装置寿命が短くなる。また、内部温度が上昇して定常状態になるまでに要する時間が長くなるので、測定装置のウォームアップに必要な時間が長くなる。電流制限回路が制限する電流は、測定用電流よりも大きな電流値に設定する必要があるので、制限電流を流せるだけの大容量の電源回路が必要になる。また、温度上昇を防ぐためには、冷却用ファンなどの冷却器が必要になる。
【0008】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、電流供給用端子がシールド付き電線で電流源に接続される測定装置において、電流供給端子とシールドとが接触(短絡)したとしても、電流制限回路が流れる電流を制限して装置を保護することができ、しかも通常状態では、電流制限回路で測定用電流による電力が消費されず、無駄な熱が発生しない測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された測定装置は、一対の電流供給端子を介して測定対象体に測定用電流を供給する
センタータップ付きの電源トランス及び正負の直流電圧に整流する整流回路を備え、正負の直流電圧で動作する両電源タイプの電流源と、該測定用電流により該測定対象体に生じた電圧を検出する電圧検出回路とを備え、該測定用電流及び該電圧検出回路の検出電圧に基づいて該測定対象体の電気的特性を測定する測定装置であって、該一対の電流供給端子が各々シールド付き電線で該電流源に接続され、該
シールド付き電線のシールドに所定電位を付与すると共に、
該シールドが電流制限回路を介して該センタータップに接続され、該電流制限回路が該シールドと該センタータップとの間に流れる最大電流を制限可能であり、
該電流制限回路が、大きくても前記測定用電流までの前記最大電流で電流制限することを特徴とする。
【0012】
請求項
2に記載された測定装置は、請求項
1に記載のものであり、前記正負の直流電圧とは別の直流電圧を出力する他の電源回路を備え、単電源で動作する単電源動作回路には、該他の電源回路から該別の直流電圧を供給することを特徴とする。
【0013】
請求項
3に記載された測定装置は、請求項
1に記載のものであり、前記シールドが、前記所定電位を出力するボルテージフォロア回路に接続されており、該ボルテージフォロア回路が、出力部に前記電流制限回路を有していることを特徴とする。
【0014】
請求項
4に記載された測定装置は、請求項
3に記載のものであり、前記ボルテージフォロア回路の出力する前記所定電位が、前記電流供給端子の一方に付与すべき電位と同じ電位であることを特徴とする。
【0015】
請求項
5に記載された測定装置は、請求項1から
4のいずれかに記載のものであり、前記電流制限回路が、電流制限用の抵抗、又は復帰性を有する過電流保護素子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
電流供給端子と電流源とを接続するシールド付き電線のシールドに、所定電位を付与すると共に流れる最大電流を制限可能な電流制限回路を接続することにより、通常の測定状態では電流制限回路に測定用電流が流れないため、電流制限回路で測定用電流による電力が消費されず、熱が発生しない。このため、従来のような測定用電流が電流制限回路に流れる測定装置と比較して、装置の寿命を長くすることができ、ウォームアップ時間を短くすることができる。さらに、冷却用ファンなどの冷却器が不要になる。
【0017】
電流制限回路が大きくても測定用電流までの最大電流(つまり測定用電流以下の最大電流)で電流制限する場合、電流供給端子とシールドとが短絡しても短絡電流が測定用電流以下になるので、測定用電流を流せるように設計されている装置を確実に保護することができる。また、従来の装置では、電流制限回路が制限する最大電流を測定用電流よりも大きな値にする必要があったので、電源回路や電流源の電流容量を大きくする必要があったが、本発明の装置では、電源回路等は測定用電流を流すことができればよいため、従来の装置よりも電源回路等の電流容量を小さくすることができる。
【0018】
電流源が両電源タイプのものであり、電流源に正負の直流電圧を供給する電源回路が、センタータップ付きの電源トランス及び正負の直流電圧に整流する整流回路を備えていて、シールドを、電流制限回路を介して電源トランスのセンタータップに接続する場合、簡便な構成でありながら、測定時に影響を与えずに、電流供給端子とシールドとの短絡電流を制限することができる。
【0019】
単電源で動作する単電源動作回路に他の電源回路から別の直流電圧を供給する場合、通常の測定時に、単電源動作回路の動作電流が電流制限回路に流れないので、電流制限回路で無駄な電力が消費されることを防止することができる。
【0020】
シールドが所定電位を出力するボルテージフォロア回路に接続されており、ボルテージフォロア回路が出力部に電流制限回路を有している場合、シールドをガードとして用いつつ、短絡電流を制限することができる。
【0021】
所定電位が電流供給端子の一方に付与すべき電位と同じ電位である場合、ガードの効果を高めることができる。
【0022】
電流制限回路として電流制限用の抵抗、又は復帰性を有する過電流保護素子を用いる場合、僅か一種の電気回路素子であるので極めて簡便な回路になる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態例に限定されるものではない。
【0025】
本発明を適用する測定装置の一例として、
図1にインピーダンス測定装置1を示す。このインピーダンス測定装置1は、4端子法で測定対象物(DUT)のインピーダンスを測定可能なものである。
【0026】
インピーダンス測定装置1は、電流源2、電圧検出回路3、一対の電流供給端子Hc,Lc、一対の電圧検出端子Hp,Lp、電源回路4、ADC(アナログ/デジタル変換器)5,6、CPU(中央演算処理装置)7、及び表示部8を備えている。
【0027】
電流源2は、一対の電流供給端子Hc,Lcを介してDUTに測定用電流を供給するためのものである。この電流源2は、一例として、正負の両電源で動作する両電源タイプのものであり、電流供給端子Hc側に、信号電圧源Vm1、オペアンプA1、及びトランジスタQ1,Q2を有し、電流供給端子Lc側に、オペアンプA2、トランジスタQ3,Q4、及び抵抗Rs1を有している。
【0028】
信号電圧源Vm1は、測定に使用する周波数及び電圧の交流信号を、基準電位GNDを中心電位として出力可能になっている。なお、測定を直流で行う場合には、信号電圧源Vm1に直流電圧を出力させる。オペアンプA1及びプッシュプル回路となっているトランジスタQ1,Q2は、全体的にボルテージフォロア回路を構成しており、信号電圧源Vm1が出力する電圧波形を崩さずに同じ電圧波形で測定用電流を供給可能とするため、つまり電流ドライブ能力を向上させるために設けている。なお、オペアンプA1に電流ドライブ能力が充分にあれば、トランジスタQ1,Q2を設けなくてもよい。
【0029】
回路について具体的に説明すると、オペアンプA1は、正負の両電源で動作する両電源タイプのものであり、正の直流電源V+、負の直流電源V−に各電源端子が接続されている。このオペアンプA1の非反転入力端子には、信号電圧源Vm1が接続されている。オペアンプA1の出力は、NPN型のトランジスタQ1のベース及びPNP型のトランジスタQ2のベースに接続されている。トランジスタQ1のコレクタが正の直流電源V+に接続され、トランジスタQ2のコレクタが負の直流電源V−に接続されている。トランジスタQ1,Q2のエミッタ同士が接続されて、電流源2の出力端となっていると共に、オペアンプA1の反転入力端子に接続されている。この電流源2の出力端は、例えばBNC型レセプタクルなどの接続用コネクタの芯線に接続されており、このコネクタのシールド側には基準電位GNDが接続されている。
【0030】
電流源2の出力端のコネクタには、シールド付き電線W1が、例えばBNC型ジャックなどの対応するコネクタで接続される。シールド付き電線W1は、芯線(内部導体)とそれを絶縁状態で同軸状に取り囲むシールド(外部導体)を有する線である。シールド付き電線W1の芯線の先端には、電流供給端子Hcが接続されており、電線W1のシールドには、例えばBNC型ジャックのシールド側が接続されている。これにより、電流源2の出力端と電流供給端子Hcとが接続され、インピーダンス測定装置1の基準電位GNDと電線W1のシールドとが接続される。
【0031】
電流供給端子Hcは、DUTの一端に接触させて用いられる。また、電流供給端子Lcは、DUTの他端に接触させて用いられる。
【0032】
電流供給端子Lcは、シールド付き電線W2の芯線の先端に接続されている。シールド付き電線W2は、BNC型コネクタなどでインピーダンス測定装置1(電流源2)に接続され、そのシールドが基準電位GNDに接続されている。シールド付き電線W2の芯線は、コネクタを介して、オペアンプA2の反転入力端子及び抵抗Rs1の一端に接続されている。
【0033】
オペアンプA2、プッシュプル回路になっているトランジスタQ3,Q4、及び電流検出用の抵抗Rs1は、DUTに流れた測定用電流を検出するための電流検出回路として電流源2に設けられているものであり、電流供給端子Lcを基準電位GNDと等しい電位にするように動作する。具体的には、オペアンプA2は、正負の両電源で動作する両電源タイプのものであり、正の直流電源V+、負の直流電源V−に各電源端子が接続されている。このオペアンプA2の非反転入力端子は、基準電位GNDに接続されている。オペアンプA2の出力は、NPN型のトランジスタQ3のベース及びPNP型のトランジスタQ4のベースに接続されている。トランジスタQ3のコレクタが正の直流電源V+に接続され、トランジスタQ4のコレクタが負の直流電源V−に接続されている。トランジスタQ3,Q4のエミッタ同士が接続されていて、そこに抵抗Rs1の他端、及びADC6の入力端子が接続されている。これらオペアンプA2等は、負帰還動作により電流供給端子Lc(オペアンプA2の反転入力端子)が基準電位GNDと等しい電位になるように動作することで、DUTに流れる測定用電流I
DUTが抵抗Rs1に流れる。抵抗Rs1の値は既知であるので、抵抗Rs1の他端の電圧をADC6により測定すると、オームの法則から抵抗Rs1に流れた電流、つまり測定用電流I
DUTの値を算出できる。
【0034】
電圧検出回路3は、一対の電圧検出端子Hp,Lpを介して、測定用電流I
DUTによりDUTの両端に生じた電圧を検出する回路であり、計装アンプとなっている差動増幅器A3を有している。この差動増幅器A3の一方の入力端子には、コネクタ及びシールド付き電線W3を介して電圧検出端子Hpが接続され、他方の入力端子には、コネクタ及びシールド付き電線W4を介して電圧検出端子Lpが接続されている。シールド付き電線W3,W4の各シールドは、基準電位GNDに接続されている。差動増幅器A3は、正の直流電源V+及び負の直流電源V−で動作する両電源タイプのものであり、必要性に応じて所定の増幅度で両入力端子間の電圧を差動増幅して、ADC5に出力する。
【0035】
電源回路4は、同図に示すように、センタータップCT付きの電源トランスT1、及び電源トランスT1の2次側に接続されたダイオードD1〜D4によるダイオードブリッジ(ブリッジ型全波整流回路)を備えている。電源回路4は、電源トランスT1の1次側に入力される商用交流電圧(例えばAC100V)を、正の直流電源(直流電圧)V+、及び負の直流電源(直流電圧)V−に整流して出力する。ブリッジ型全波整流回路に設けられる平滑用のコンデンサについては図示を省略している。平滑用のコンデンサは、各電源V+,V−と基準電位GNDとの間に接続される。なお、整流回路として、正の直流電源(直流電圧)V+、及び負の直流電源(直流電圧)V−に整流して出力する他の両波整流回路や半波整流回路を用いてもよい。
【0036】
電源トランスT1の2次側のセンタータップCTには、電流制限用の抵抗Rp1(電流制限回路の一例)の一端が接続され、抵抗Rp1の他端が、基準電位GNDに接続されている(基準電位GNDになっている)。これにより、シールド付き電線W1〜W4のシールドが、抵抗Rp1を介してセンタータップCTに接続されて、各シールドにセンタータップCTの電位(所定電位)が付与される。
【0037】
ADC5,6は、入力されるアナログ電圧をサンプリングしてデジタル値に変換し、CPU7に出力する。CPU7は、不図示のメモリに予め記憶されたプログラムに従って動作して、インピーダンス測定装置1の動作を統括的に制御する。CPU7は、ADC6からの出力値に基づき測定用電流を算出し、ADC5からの出力値に基づき電圧検出回路3の検出電圧を算出して、これら測定用電流及び検出電圧からDUTのインピーダンスを算出する。表示部8は、例えば液晶ディスプレイなどであり、CPU7に動作を制御されて、測定したインピーダンスなどを表示する。
【0038】
次に、インピーダンス測定装置1の動作について説明する。
【0039】
通常の測定時には、信号電圧源Vm1が正電圧側の電圧波形を出力しているときに、測定用電流I
DUTは同図中に破線矢印で示すように、電源トランスT1→ダイオードD1(D2)→正の直流電源V+→トランジスタQ1→シールド付き電線W1の芯線→電流供給端子Hc→DUT→電流供給端子Lc→シールド付き電線W2の芯線→抵抗Rs1→トランジスタQ4→負の直流電源V−→ダイオードD4(D3)→電源トランスT1の経路で流れる。また、信号電圧源Vm1が負電圧側の電圧波形を出力しているときには、測定用電流I
DUTは図示しないが、電源トランスT1→ダイオードD1(D2)→正の直流電源V+→トランジスタQ3→抵抗Rs1→シールド付き電線W2の芯線→電流供給端子Lc→DUT→電流供給端子Hc→シールド付き電線W1の芯線→トランジスタQ2→負の直流電源V−→ダイオードD4(D3)→電源トランスT1の経路で流れる。
【0040】
このように通常の測定時には、基準電位GNDには測定用電流I
DUTが流れず、したがって抵抗Rp1にも測定用電流I
DUTが流れないため、抵抗Rp1は測定に影響を与えない。シールドは、抵抗Rp1を介してセンタータップCTの電位である基準電位GNDになっているので、各電線W1〜W4は静電シールドされて浮遊容量の影響や外来ノイズの影響を排除できる。
【0041】
電流供給端子Hcがシールド付き電線W1のシールドに接触する短絡時には、信号電圧源Vm1が正電圧側の電圧波形を出力しているときに、短絡電流I
SHORTは、同図中に実線矢印で示すように、電源トランスT1→ダイオードD1(D2)→正の直流電源V+→トランジスタQ1→シールド付き電線W1の芯線→電流供給端子Hc→シールド付き電線W1のシールド→基準電位GND→抵抗Rp1→電源トランスT1の経路で流れる。また、信号電圧源Vm1が負電圧側の電圧波形を出力しているときに、短絡電流I
SHORTは、図示しないが、電源トランスT1→抵抗Rp1→シールド付き電線W1のシールド→電流供給端子Hc→シールド付き電線W1の芯線→トランジスタQ2→負の直流電源V−→ダイオードD4(D3)→電源トランスT1の経路で流れる。電流供給端子Hcがシールド付き電線W2〜W4のシールドに接触した場合にも、短絡電流I
SHORTは同様に抵抗Rp1を流れる。
【0042】
このように、電流供給端子Hcとシールドとの短絡時には、電流経路に抵抗Rp1が入ることから、抵抗Rp1が電流制限抵抗となって、流れる最大電流が制限される。このため、過電流によるトランジスタQ1,Q2や電源回路4などの破損を防止することができる。抵抗Rp1に流れる最大電流(短絡電流I
SHORT)は、オームの法則から(直流電圧V+)/(抵抗Rp1)、又は同じ値になるが(直流電圧V−)/(抵抗Rp1)で規定できる。
【0043】
抵抗Rp1には測定用電流I
DUTが流れないことから、抵抗Rp1に流れる最大電流(短絡電流I
SHORT)を、流れ得る測定用電流I
DUT以下に設定することが好ましい。流れ得る測定用電流I
DUT、つまり測定用電流I
DUTの最大値は、直流電圧V+と測定可能なDUTの最小インピーダンスとからオームの法則によって決まる。短絡電流I
SHORTを測定用電流I
DUT以下に設定することで、トランジスタQ1,Q2や電源回路4を確実に保護することができる。また、抵抗Rp1に定格電力の小さなものを用いることができる。各トランジスタQ1〜Q4や電源回路4の流せる最大電流は少なくとも測定用電流I
DUTが流せればよいことから、従来のように測定用電流I
DUTよりも大きな最大電流で電流制限を掛ける測定装置よりも、トランジスタQ1〜Q4の定格電力や電源回路4の電流容量を小さなものにすることができる。ただし、抵抗Rp1を大きくしすぎると、通常測定時に静電シールドによるノイズ電流が流れにくくなるので、抵抗Rp1は、短絡電流I
SHORTが測定用電流I
DUT以下になる条件を満たすと共に、なるべく小さな抵抗値に設定することが好ましい。
【0044】
また、電流供給端子Lcがシールド付き電線W2(又はW1,W3,W4)のシールドに接触した短絡時には、電流供給端子Lcがシールドの電位、つまり基準電位GNDになるが、シールド付き電線W2の僅かな配線抵抗などで、オペアンプA2の非反転入力端子と反転入力端子との間に僅かに電位差が生じる。オペアンプA2やトランジスタQ3,Q4、抵抗Rs1で構成される負帰還回路は、この僅かに生じた電位差を無くすように動作して、トランジスタQ3又はトランジスタQ4のエミッタが正の直流電圧V+側、又は負の直流電圧V−側にフルスイングして張りつく。したがって、正の直流電源V+又は負の直流電源V−が(抵抗Rs1を介して)基準電位GNDに短絡するが、既に説明した電流供給端子Hcの短絡時と同様に、短絡電流は基準電位GNDから電源回路4の抵抗Rp1を流れることで電流制限が掛かる。したがって、トランジスタQ3,Q4等を保護することができる。
【0045】
なお、電流制限用の抵抗Rp1を、復帰性を有する過電流保護素子(電流制限回路の他の一例)に換えてもよい。復帰性を有する過電流保護素子は、リセッタブルヒューズとも呼ばれており、所定の電流値までは電流を流すが、所定の電流値を超えたときに、抵抗値が非線形的に急激に大きくなって電流の流れを制限する正温度特性(PTC)サーミスタや、接点が開放となって電流を遮断するバイメタルスイッチのような素子である。復帰性を有する過電流保護素子は、素子の温度が下がるなどの所定条件で再度電流を流せるように復帰する。このような過電流保護素子の中でも特にPTCサーミスタは、ポリマーPTCサーミスタ、セラミックPTCサーミスタなどのように種類も豊富に市販されているため、所望の特性のものの入手性が容易で、さらに信頼性にも優れることから好ましく用いることができる。
【0046】
過電流保護素子は、測定用電流I
DUT以下の所定の電流値で作動(トリップ)して電流制限する特性のものを用いることが好ましい。過電流保護素子には、シールドに流れるノイズ電流を流せるものを用いる。また、後述するような周辺回路などの単電源動作回路の動作電流が流れるときには、その動作電流を流せるものを用いる。
【0047】
抵抗Rp1を過電流保護素子に置き換えると、通常測定時には電源トランスT1のセンタータップCTと基準電位GNDとが低抵抗で接続され、電流供給端子Hcや電流供給端子Lcがシールド付き電線W1〜W4のシールドに短絡すると、過電流保護素子が電流を制限するので、トランジスタQ1〜Q4や電源回路4を保護できる。なお、公知の種々の電流制限回路を抵抗Rp1に換えて用いてもよい。
【0048】
なお、ADC5,6、CPU7、表示部8などの電流源2以外の回路が単電源で動作する単電源動作回路である場合、これらの電源端子に正の直流電源V+を接続し、GND端子に基準電位GNDを接続すると、ADC5,6、CPU7、表示部8などの動作電流が基準電位GNDに流れて、抵抗Rp1に流れる。つまり、通常の測定時に、抵抗Rp1に測定用電流I
DUTは流れないが、CPU7等の単電源動作回路の動作電流が流れてしまう。この単電源動作回路の動作電流が抵抗Rp1に流れることで、電力の無駄が生じてしまうので、好ましくない。
【0049】
このように単電源動作回路を有する場合、
図2に示すように、正の直流電源V+,負の直流電源V−とは別系統の直流電圧である正の直流電源(直流電圧)V2+,負の直流電源(直流電圧)V2−を出力する他の電源回路21を備えて、電源回路21から単電源動作回路に動作用の直流電圧を供給することが好ましい。なお、平滑用のコンデンサについては図示を省略している。
図2には、電源回路4と電源回路21とが電源トランスT2の1次側回路を共用する回路例を示しているが、電源回路4と電源回路21とが、別個に電源トランスを有する回路にしてもよい。
【0050】
電源回路21は、一例として、センタータップCT2付きの電源トランスT2及びダイオードD6〜D9を備えたダイオードブリッジにより、商用交流電圧から正負の直流電圧V2+、V2−を整流するブリッジ型全波整流回路を備えている。センタータップCT2は、基準電位GNDに接続されている。単電源動作回路の電源端子に正の直流電源V2+を接続し、GND端子に基準電位GNDを接続する。単電源動作回路には、例えば3端子レギュレータなどの定電圧回路を介して直流電源V2+を安定化してから供給してもよい。同図に示した電源回路21は、負の直流電源V2−も生成する例を示しているが、必要なければ基準電位GNDに対して、正の直流電源V2+だけを生成する電源回路21としてもよい。
【0051】
このように他の電源回路21で単電源動作回路を動作させると、電源回路21の正の直流電源V2+からセンタータップCT2に単電源動作回路の動作電流が流れるので、抵抗Rp1を流れない。したがって、通常測定時には、抵抗Rp1に電流が流れなくなり、電力の無駄や熱が発生しない。
【0052】
次に、本発明を適用する測定装置の他の例として、
図3にインピーダンス測定装置10を示す。なお、既に説明した構成と同じ構成については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0053】
インピーダンス測定装置10は、電流源12、電圧検出回路13、電源回路14、ADC5、CPU7、及び表示部8を備えており、シールド付き電線W1〜W4のシールドが、所定電位を出力するボルテージフォロア回路で駆動(所定電位を付与)されるものである。また、このインピーダンス測定装置10は、単電源で動作する回路の一例である。
【0054】
電流源12は、一例として、信号電圧源Vm2、オペアンプA5,A6、トランジスタQ5、及び抵抗Rp2,Rs2を有している。信号電圧源Vm2は、基準電位GNDに対して、正の直流電圧を出力する。この信号電圧源Vm2は、オペアンプA5及びオペアンプA6の非反転入力端子に接続されている。オペアンプA5の出力は、NPN型のトランジスタQ5のベースに接続されている。トランジスタQ5のコレクタは、正の直流電源V+に接続され、トランジスタQ5のエミッタは、コネクタを介してシールド付き電線W1の芯線に接続されている。シールド付き電線W1の芯線の先端には電流供給端子Hcが接続されている。
【0055】
電流供給端子Lcは、シールド付き電線W2の芯線の先端に接続されている。シールド付き電線W2の芯線は、コネクタを介して電流検出用の抵抗Rs2の一端に接続されている。また、この抵抗Rs2の一端には、オペアンプA5の反転入力端子が接続されている。抵抗Rs2の他端は、基準電位GNDに接続されている。
【0056】
シールド付き電線W1〜W4の各シールドは、各々が接続されていると共に、電流制限用の抵抗Rp2の一端、及びオペアンプA6の反転入力端子に接続されている。抵抗Rp2の他端は、オペアンプA6の出力に接続されている。このオペアンプA6及び抵抗Rp2は、出力抵抗が抵抗Rp2のボルテージフォロア回路になっている。
【0057】
オペアンプA5,A6は共に単電源で動作する単電源タイプのものであり、各電源端子が正の直流電源V+、基準電位GNDに接続されている。
【0058】
電圧検出回路13は、単電源で動作する差動増幅器A3を有し、差動増幅器A3は、シールド付き電線W3,W4の芯線に接続された電圧検出端子Hp,Lpの電位差を所定の増幅度で増幅して、ADC5に出力する。シールド付き電線W3,W4の各シールドは、前述したように、シールド付き電線W1,W2のシールドに接続されると共に、ボルテージフォロア回路の出力に接続されている。
【0059】
電源回路14は、電源トランスT3、及びダイオードD11,D12,D13,D14のダイオードブリッジによるブリッジ型全波整流回路を有しており、商用交流電圧を全波整流して、基準電圧GNDに対して正の直流電源(直流電圧)V+を生成する。
【0060】
次にインピーダンス測定装置10の動作について説明する。
【0061】
通常測定時には、測定用電流I
DUTは同図中に破線矢印で示すように、電源トランスT3→ダイオードD11(D12)→正の直流電源V+→トランジスタQ5→シールド付き電線W1の芯線→電流供給端子Hc→DUT→電流供給端子Lc→シールド付き電線W2の芯線→抵抗Rs2→基準電位GND→ダイオードD14(D13)→電源トランスT3の経路で流れる。オペアンプA5及びトランジスタQ5は、信号電圧源Vm2の電圧と抵抗Rs2に発生する電圧とが等しくなるように負帰還動作する。信号電圧源Vm2の電圧値及び抵抗Rs2の抵抗値は既知であるので、抵抗Rs2には予め定めた所望の電流値の測定用電流I
DUTが流れる。したがって、測定用電流I
DUTを検出するADCを設けることを省略している。
【0062】
CPU7は、ADC5からの出力値に基づき電圧検出回路13の検出電圧を算出して、その検出電圧、及び予め設定された測定用電流I
DUTからDUTのインピーダンスを算出し、表示部8に表示させる。
【0063】
シールド付き電線W1〜W4のシールドは、オペアンプA6及び抵抗Rp2によるボルテージフォロア回路で、信号電圧源Vm2の出力電圧、つまり電流供給端子Lcに付与すべき電位(所定電位)と同電位に駆動される。したがって、いわゆるアクティブガードとなって浮遊容量の影響や外来ノイズの影響を排除できる。
【0064】
電流供給端子Hcがシールド付き電線W1(W2〜W4)のシールドに接触した短絡時には、短絡電流I
SHORTは同図中に実線矢印で示すように、電源トランスT3→ダイオードD11(D12)→正の直流電源V+→トランジスタQ5→シールド付き電線W1の芯線→電流供給端子Hc→シールド付き電線W1のシールド→抵抗Rp2→オペアンプA6→基準電位GND→ダイオードD14(D13)→電源トランスT3の経路で流れる。このように、電流供給端子Hcがシールドに接触した短絡時には、電流経路に抵抗Rp2が入ることから、抵抗Rp2が電流制限抵抗(電流制限回路)となって、流れる最大電流が制限される。このため、過電流によるトランジスタQ5や電源回路14などの破損を防止することができる。抵抗Rp2に流れる最大電流(短絡電流I
SHORT)は、オームの法則から、(直流電圧V+)/(抵抗Rp2)で規定できる。
【0065】
抵抗Rp2には測定用電流I
DUTが流れないことから、短絡電流I
SHORTを測定用電流I
DUT以下の電流値とすることが好ましい。この例では、抵抗値を抵抗Rp2≧抵抗Rs2とする。ただし、抵抗Rp2を大きくしすぎると、通常測定時に静電シールドによるノイズ電流が流れにくくなるので、抵抗Rp2は、短絡電流I
SHORTが測定用電流I
DUT以下になる条件を満たす、なるべく小さな抵抗値に設定することが好ましい。
【0066】
なお、電流制限用の抵抗Rp2を、前述したような復帰性を有する過電流保護素子や、公知の電流保護回路に換えてもよい。
【0067】
また、
図3のインピーダンス測定装置10は、直流の測定用電流I
DUTで測定を行う例であるが、信号電圧源Vm2から交流電圧を出力させて交流の測定用電流I
DUTで測定するようにしてもよい。この場合、電流源12、電圧検出回路13、及び電源回路14を両電源で動作するものにする。また、オペアンプA6及び抵抗Rp2によるボルテージフォロア回路の入力にトランジスタQ5のエミッタを接続して、ボルテージフォロア回路から電流供給端子Hcの電位(所定電位)を出力させるようにしてもよい。この場合、各シールドが電流供給端子Hcの電位になる。また、各シールド付き電線W1〜W4に対応させた4つのボルテージフォロア回路を設け、各々独立してシールドがその芯線と同電位になるようにボルテージフォロア回路で駆動するようにしてもよい。要は、シールドに電位を付与するボルテージフォロア回路の出力部に、電流制限回路が入っていればよい。
【0068】
インピーダンス測定装置1,10は4端子法の測定装置の例であるが、本発明を2端子法の測定装置に適用してもよい。