(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持層(50)が、固体であり、前記マイクロプレートを囲む支持側壁とともにハーメチック筐体(58)を形成し、前記ハーメチック筐体(58)内に前記マイクロプレート(14)が配置されることを特徴とする、請求項5に記載のボロメータアレイ検出器。
【背景技術】
【0002】
赤外線検出、すなわち0.75μm〜1,000μmの波長範囲内の検出は、特定の問題を伴う技術分野であることがよく知られている。実際には、すべての物体は、温度が0°Kを超過すると、ただちに赤外線スペクトル内で放出する。したがって、赤外線検出器が冷却されていない場合、高感度素子(基板、コネクタ、および配線、パッケージ、光学系など)を取り囲むデバイスはかなりの赤外線放射線を放出し、この赤外線放射線が、検出しようとする場所から発生する放射に追加される。この望ましくない成分は、非常に多量となる可能性があり、300°Kの温度で検出素子によって生成される信号全体の99%を超えることもある。この望ましくない成分は、一般に、「熱雑音」または「同相雑音」と呼ばれる。
【0003】
したがって、他のタイプの検出、特に可視スペクトル内の検出とは対照的に、この同相雑音を効果的に管理することが可能な構造および動作原理を提供することが必要とされている。これを実現するために、最初の高感度赤外線検出器は、同相雑音を最小にするように、略百ケルビン、さらには数ケルビンの極度に低い温度に冷却された。
【0004】
また、別個の2種類の赤外線検出器、すなわち「量子」検出器および「熱」検出器、特に熱ボロメータ検出器が存在する。これらの2つのタイプの検出によって使用される物理的な原理は根本的に異なり、それぞれ独自の問題を伴うこともよく知られている。
【0005】
量子検出器の場合、半導体を使用して、赤外線スペクトル内の光子吸収効果により電子−正孔対を生成し、そのようにして作られた電荷キャリアは、通常PN型接合で組み合わされた電極を介して収集される。
【0006】
対照的に、ボロメータ検出器の場合、入射する赤外線フラックスのパワーを熱に変換できるために選択された吸収性の材料が使用される。また、この材料、または第1の材料に接触する第2の材料を使用して、生成された熱を電気特性の変動、一般に電気抵抗の変動に変換する。次いで、この電気特性の変動が測定される。
【0007】
1つの特定のボロメータ検出器アーキテクチャは、同相雑音を管理するように工夫されており、すなわち検出器は、支持および熱分離アームを用いていわゆる「読出し」基板の上方に懸架されたボロメータマイクロプレートのアレイを備える。
【0008】
それ自体周知であるように、このアーキテクチャは、ボロメータ素子を基板から熱的に分離するために特に設けられており、該基板は、それらに極度に近接して位置するために、同相雑音の主要な原因である。これにより第1に、感度の点でかなりの進歩をもたらし、第2にこのアーキテクチャはまた、極度に低い温度に冷却することを不要にする。
【0009】
懸架式マイクロプレートに基づくアーキテクチャは、多くの利点、特に、極端に低い温度まで冷却することなく使用されることが可能であるという利点を有するが、ボロメータマイクロプレートの支持アームの存在により、現在の製造技術を使用して満足なフィルファクターを達成することが不可能となり、マイクロプレートが小型化されるにつれて、フィルファクターがさらに悪くなる。
【0010】
フィルファクターを改善するために、複数の解決策が開発されてきた。それでもなお、これらの解決策は、製造プロセスをより複雑化し、コストが高い。例えば、引用文献1が、3つの重複するステージを備えた検出器を説明しており、特に、ステージが、集積回路、支持ステージ及び吸収ステージを備える。この吸収ステージが、検出器の全体の表面を占めることが可能であり、これによって、その効率を改善する。しかしながら、吸収ステージと、支持ステージと、を電気的に接続するために、電気相互接続素子が、支持ステージと、吸収ステージと、の間に配置される。この電気相互接続素子は、誘電性シースに囲まれた導電性チャンネルから構成される。これによって、検出器の一のステージから他のステージへの電気的導通に対するリスクを生じる複雑な製造プロセスを結果として生じ;しかしながら、この導通が、検出器の最適な操作を確保するための決定的要素である。さらに、吸収ステージと接触する電気相互接続素子の存在が、検出器の吸収の品質及び感度に悪影響を及ぼしうる。
【0011】
また、検出器の効率を改善し、及び/または製造コストを削減するために、マイクロプレートの数個のアレイを用いた、バッチ−処理製造法が通常使用され、例えば、特許文献2及び3に説明されているように、該マイクロプレートの数個のアレイが、単一のシリコンウェハーから一度に製造され、次に、個別化される、
【0012】
マイクロプレートのアレイを製造するために、バッチ処理製造法が既に採用されているという事実を考えると、例えば、上記の文献に説明されているように、各マイクロプレートに対する真空パッケージングを直接的に含む検出器を製造するために、また、マイクロエレクトロニクス産業に由来するバッチ処理製造法が使用される。一般的に、統合されたハーメチックマイクロ−パッケージングと呼ばれるこのパッケージングが、マイクロプレートの各側上の基板上に位置する各マイクロプレートの上端上に製造されたキャップから構成され、密封して真空包装される。マイクロプレートの各アレイに対して個々に形成される単一の密封したシールパッケージと比較して、バッチモードでパッケージングステップを実施することにより、検出器の製造時間及び製造コストを削減することが可能となる。
【0013】
しかしながら、キャップを支持するために各マイクロプレート間に残されなければならない空間が、結果として、任意の所定のアレイサイズに対して、検出器の光学活性表面積の著しい減少をもたらし、従って、検出器の効率の直接的な低下をもたらす。
【0014】
その構造のため、支持アームによって懸架され、赤外線またはテラヘルツ放射線を検出するために確保されたボロメータマイクロプレートの有効表面積が、基板の表面積と比較して制限され、これが、検出器の感度を低下させる。
【0015】
例えば、12μmの辺寸法、現在のところボロメータマイクロプレートの最大限の小型化をもたらし、約λ=10μmで吸収性である大きさを有する正方形マイクロプレートを備えた検出器を製造することは、各マイクロプレートに対して少なくとも17μmの辺寸法を有する正方形の基板表面積を必要とする。従って、検出のために確保された12μmの辺寸法を有するマイクロプレートのアレイの有効表面積が、アレイの総表面積のわずか50%しか占有しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、懸架式マイクロプレートに基づくボロメータ検出器内の有効表面積の低減による上記の感度低下の課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これを実現するために、本発明の対象は、所定の赤外線またはテラヘルツ波長範囲内の電磁放射線を検出するボロメータアレイ検出器であって、:
−基板と、;
−支持アームによって基板の上方に懸架された、前記放射線を検出するボロメータマイクロプレートのアレイと、を備えるボロメータアレイ検出器である。
【0019】
本発明によれば、:
−検出器が、各マイクロプレートの上部及び周囲に配置された金属膜を備え、開口が、金属膜内に形成され;及び
−金属膜内の開口が、λ/n以下の周期で、少なくとも一つの所定の軸に沿って金属膜内に周期的に配置され、λが、検出される波長範囲内の波長であり、nが、マイクロプレートを金属膜から分離する媒体の平均屈折率である。
【0020】
言い換えれば、金属膜が、金属膜の下に、従って、マイクロプレート上に、放射線を集中させる電磁放射線の共鳴を生じさせ、従って、後者が、さらに放射線を吸収する。
【0021】
以下の説明では、この分野では通常受け入れられているように、「画素」という用語は、検出アレイに言及するとき、画像素子に関連する出力信号を生成するすべてのハードウェア素子、ならびにこれらの素子のために確保された表面を指す。
【0022】
本発明の一実施形態において、マイクロプレートの中央領域の上方に配置された金属膜上の位置から、金属膜の周辺に向かって、所定の軸に沿ってまたは各所定の軸に沿って開口の幅が増大する。
【0023】
言い換えれば、開口のレイアウト及び形状が、ボロメータマイクロプレート上における入射放射線の集光を生じさせる。金属膜が、マイクロプレートを超えて延在するため、マイクロプレートと垂直に揃えられていない金属膜の部分上の入射放射線の一部が、後者に向かって“方向転換(redirected)”される。従って、放射線を検出するために確保された有効表面積が増大され、結果として、検出器の全体の感度が最適化される。さらには、マイクロプレートのアレイの表面全体積に対するマイクロプレートの表面積の比が実質的に変更されることなく、この効果が得られる。
【0024】
特に、膜上の前記位置での開口の幅が、式0.25<W
0/P<0.75を満たし、W
0が、前記位置での幅であり、Pが、所定の軸上の周期であり、隣接する2つの開口間の幅の差が、λ/(200×n)からλ/(20×n)である。
【0025】
前記位置での開口の幅が、好ましくは、実質的に、P/2と等しい。
【0026】
隣接する2つの開口間の幅の差が、好ましくは、実質的に、λ/(100×n)と等しい。
【0027】
本発明の一実施形態において、開口の幅が、一定であり、かつ0.25<W
0/P<0.75であり、W
0が、スリットの幅であり、Pが、所定の軸上の周期である。
【0028】
本発明の一実施形態において、金属膜が、λ/(4×n)未満の距離でマイクロプレートの上方に配置され、;これが、マイクロプレート上の集光を最適化する。
【0029】
本発明の一実施形態において、周期Pが、実質的にλ/(4×n)と等しく、;これが、マイクロプレートによる放射線の吸収を最大化する。
【0030】
本発明の一実施形態において、金属膜が、λ/(4×n)未満の厚さを有し、好ましくは、実質的にλ/(10×n)と等しい厚さを有する。この方法で、金属膜による放射線の吸収が、低減される。具体的には、このような厚さにより、放射線が、膜内で過度にトラップされることが防止され、従って、過量の放射線が、膜によって吸収されることを防止する。
【0031】
一実施形態において、金属膜が、支持層上に配置され、該支持層が、検出される波長に対して少なくとも部分的に透明であり、特に、誘電体または半導体層である。
【0032】
本発明の第一バージョンにおいて、金属膜内の開口が、支持層内にも形成される。
【0033】
本発明の第二バージョンにおいて、支持層が、固体であり、マイクロプレートを囲む支持側壁とともにハーメチック筐体を形成し、該ハーメチック筐体内にマイクロプレートが配置される。例えば、金属膜が、ハーメチックキャップの既存のカバー上に形成されることが可能である。
【0034】
本発明の一実施形態において、金属膜が、マイクロプレートの支持アーム上に配置された構造体によって支持され、;これにより、金属膜を支持する構造体の全体の寸法が低減される。
【0035】
一実施形態において、金属膜内の開口が、平行スリットから構成され、テクスチャリングによる検出が、単一の偏光に対してのみ感受性を有する。
【0036】
あるいは、金属膜内の開口が、正方形または円形である。この方法、テクスチャリングによる検出が、入射放射線の偏光に感受性を有しない。
【0037】
一実施形態において、金属膜が、アルミニウム、チタン、窒化チタン、銅またはタングステンから構成される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の第一実施形態による、集光膜を備えた3つのボロメータ画素×3つのボロメータ画素のアレイの概略上面図である。
【
図2】
図1の線A−Aに沿うアレイの概略断面図である。
【
図3】
図1のアレイの画素の簡略化した概略断面図である。
【
図4】膜に垂直な面における、本発明による集光膜の存在下での電磁場の強度をマッピングしたものである。
【
図5】マイクロプレートと集光膜との間の様々な距離に対する、TiNで作られたマイクロプレートにおける吸収をプロットした曲線である。
【
図6】本発明による集光膜の他の実施形態の上面図である。
【
図7】第一実施形態による集光膜支持構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【
図8】第一実施形態による集光膜支持構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【
図9】第一実施形態による集光膜支持構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【
図10】第一実施形態による集光膜支持構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【
図11】第一実施形態による集光膜支持構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【
図12】第一実施形態による集光膜支持構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【
図13】第二実施形態による集光膜支持構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【
図14】第二実施形態による集光膜支持構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【
図15】第二実施形態による集光膜支持構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【
図16】第三実施形態による集光膜支持構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【
図17】第三実施形態による集光膜支持構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【
図18】第三実施形態による集光膜支持構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【
図19】第三実施形態による集光膜支持構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【
図20】個々の支持アームを備えたマイクロプレートのアレイの上面図である。
【
図21】共通の支持アームを備えたマイクロプレートのアレイの上面図である。
【
図22】第四実施形態による集光膜支持構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【
図23】第四実施形態による集光膜支持構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【
図24】第四実施形態による集光膜支持構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【
図25】第四実施形態による集光膜支持構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【
図26】第四実施形態による集光膜支持構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【
図27】第四実施形態による集光膜支持構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、例示のみを目的とし添付の図面に関連する以下の説明によって、より容易に理解でき、添付の図面では、同一の参照符号は同一または類似の構成要素を指す。
【0040】
図1及び2は、本発明の第一実施形態による3つの画素×3つの画素を含むボロメータ検出器アレイ10を例として示す。
【0041】
各画素12は、支持及び熱分離アーム18によって基板16の上方に懸架されたボロメータマイクロプレート14を備え、それによって、1mm〜3mmのテラヘルツ波長範囲内及び/または0.75μm〜1,000μmの赤外線波長範囲内で入射する電磁放射線IRを検出することが可能になる。
【0042】
それ自体周知であるように、マイクロプレート14は、入射放射線IRの効果によって暖まり、その電気抵抗は、その温度の増大に応じて変動する。同じ材料を使用して、これらの機能をどちらも実施することができ、たとえばTiNは、中赤外線範囲内の波長を検出するのに適している。
【0043】
支持および熱分離アーム18は、主に、電導体素子を含む熱伝導率の低い材料からなり、それによって、マイクロプレート14にバイアス電圧及び/またはバイアス電流をかけて、その電気抵抗を測定することが可能になる。アーム18は、マイクロプレート14のバイアスを制御する基板16内に設けられた読出し回路に電気的に接続される。
【0044】
各画素12はまた、基板16上に堆積された金属層によって形成され、マイクロプレート14の下に位置する平坦な反射板20を備える。反射板20の機能は、吸収されることなくマイクロプレート14を通過した放射線の部分を反射することであり、これによって、放射線が、少なくとも二度にわたってマイクロプレートを通過することを可能にし、さらには、マイクロプレート14と反射板20との間の距離が、例えば、四分の一波長の空間を形成するように調節された場合に、共鳴を得ることを可能にする。
【0045】
本発明では、ボロメータマイクロプレート14の構造および動作は比較的重要ではなく、任意のタイプのマイクロプレート、たとえば特許文献4に記載のマイクロプレートを想定することができる。把握すべき重要なことは、本発明が、任意のボロメータアレイに適合し、マイクロプレートの表面積が画素の表面積に対して低減されることである。
【0046】
有利には、また、各ピクセル12が、支持構造体24によってマイクロプレート14の上方に懸架された金属膜22を備え、該支持構造体24が、ピクセル12と、該ピクセル12に隣接するピクセルと、の間の中間の基板16上に形成される。金属膜22が、例えば、アルミニウム、チタン、窒化チタン、銅またはタングステンから構成され、これらは、膜22の製造を容易にする金属である。
【0047】
図示される実施例において、マイクロプレート14と膜22とが、長方形であり、互いに中心が合わせされる。
【0048】
例えば、側壁の形状である支持構造体24が、マイクロプレート14、画素12のために設けられた基板16の表面S
16及び支持アームを囲み、金属膜22が、実質的に、画素12の全表面を覆う。具体的には、金属膜22が、実質的に、マイクロプレート14によって覆われない画素12の全表面S
16ーS
14を覆う。
【0049】
また、膜22が、該膜22の幅全体にわたって形成された長方形断面を有する真っすぐな一組の平行スリットを備え、マイクロプレート14の上の膜22における入射放射線IRを集めるように、特に、マイクロプレート14の上方に位置しない膜22の部分における入射放射線を集めるように、スリット26が配置される。
【0050】
図3において、スリット26が、それらと垂直なX方向に規則的に配置され、スリット26の中央軸が、一定周期Pで位置している。マイクロプレート14上に集められる波長λに応じて選択されるこの周期が、λ/n未満であり、ここで、nが金属膜22からマイクロプレート14を分離する媒体の屈折率であり、これが、通常は、減圧下での空気である。この値が、マイクロプレート14による放射線の吸収を最大化するため、周期Pが、好ましくは実質的にλ/(4×n)と等しい。
【0051】
また、膜22の下部の中央空間において、膜22に入射放射線を集めるように、X方向におけるスリット26の幅Wが、膜22の中央から、すなわち、図示された実施例においては、マイクロプレート14の中央の垂直上方である膜22上の位置から、膜22の周囲方向に増大し、;これにより、マイクロプレート14によって“受け止められ(seen)”、結果として後者によって吸収される放射線量を増大させることが可能となる。
【0052】
有利には、2つの隣接するスリットの幅W
n及びW
n+1の差(W
n+1−W
n)が、λ/(200×n)からλ/(20×n)である。
【0053】
この値が、マイクロプレート14による放射線の吸収を最大化するため、この差が、好ましくは、実質的に、λ/(100×n)と等しい。
【0054】
有利には、膜22の中央から離れる従って増加する幅が一定であり、従って、スリットの幅が、直線的に増加する。しかしながら、非−直線的に増加する幅を有するスリットを設けることが可能である。
【0055】
また有利には、中央スリットの幅W
0が、式0.25<W
0/P<0.75を満たし、好ましくは、実質的に、P/2と等しい。周期Pが、λ/(4×n)と等しい場合、幅W
0が、λ/(8×n)と等しく、すなわち、極めて小さい。スリット26の幅が、膜22の中央から周辺にむかって増加するが、増分値が、幅(W
n+1−W
n)で増大すると考えると、これは小さいままである。
【0056】
また有利には、金属膜22の厚さhが、λ/(4×n)未満であり、好ましくは、実質的に、λ/(10×n)と等しい。このような小さな厚さにより、放射線が、膜22内に過度にトラップされることを防止し、従って、過量の放射線が膜によって吸収されることを防止する。
【0057】
また有利には、金属膜22が、λ/(4×n)未満でである距離lでマイクロプレート14の上方に配置され、この距離が、場合によっては、ゼロであり、膜22が、マイクロプレート14上に存在する。距離lが、λ/(4×n)未満である場合、膜22のスリット26とマイクロプレート14との間のエバネッセント結合が観察され、これが、波長λでの放射線の吸収を著しく増大させる。
【0058】
図4は、集光膜22の存在下での電磁場強度を、膜に垂直な平面において、X方向にマッピングしたものであり、前記膜22が、3−15μm範囲の赤外線放射線によって照射される。x−軸が、前記X方向を表し、その原点が、膜22の右端であり、y−軸が、前記平面におけるX方向に垂直である方向を表し、その原点が、膜22の下面である:
・膜22が、12.5μmの波長に調節される。
・周期Pが、2.8μmである。
・中央スリットの幅W
0が、1.4μmと等しい。
・2つの隣接するスリット間の幅の増加(W
n+1−W
n)が、100nmと等しい。
・膜22の厚さhが、200nmと等しい。
・X方向の画素の幅が、25μmである。
・この同一方向のマイクロプレート14の幅が、7μmである。
【0059】
膜22及びマイクロプレート14が、大気中に位置する。ここで、例として、膜22から距離l(2μmと等しい)に位置しているマイクロプレート14が示され、これらの距離に対する好ましい間隔[l]も示される。
【0060】
図4において明らかなように、赤外線電磁場の強度が、膜22の下で増大することが明らかであり、最大の増大が、膜22の下の中央領域30で生じる。
【0061】
図5は、
図4の数値例との関連で、様々な距離lに対し、6−15μm範囲の、TiNから形成されたマイクロプレート14における吸収をプロットした曲線である。比較として、集光膜22が存在しない場合におけるマイクロプレート14の吸収が、曲線“A”によって図示されている。
【0062】
曲線“B”は、膜22からの距離lが2.5μmと等しい場合におけるマイクロプレート14の吸収を示し、曲線“C”は、距離lが1.5μmと等しい場合におけるこの吸収を示し、曲線“D”は、距離lが1μmと等しい場合における吸収を示し、曲線“E”は、距離lが0.5μmと等しい場合における吸収を示す。
【0063】
吸収が、広範囲の波長に対して実質的に増大し、この増加が、最大吸収ピークの約50%である。10μmから15μmの間の吸収ピークが、1μm未満であるlの値で、すなわち、λ/(10×n)未満の値で、極めて僅かに変更されているのみであることにも注目すべきである。
【0064】
真っすぐな平行スリットが膜22内に形成される実施形態が、上記において説明され:これによって、膜22によって提供された集光性が、偏光に対して感受性を有するようになることが可能となる。特に、膜22の平面におけるスリットに対して直角に偏光される光が集められる。
【0065】
しかしながら、異なる方法で偏光された光を集めることが要求されうる。
【0066】
あるいは、集光膜22内の開口が、膜の平面内において、いくつかの異なる方向に規則的に配置される。例えば、
図6に図示されるように、交差するスリット32,34の2つのグリッドが、各々、X軸及びY軸に沿って規則的に配置され、該グリッドが、同一の幅の増加を有する。このようなレイアウトが、X及びY軸の方向に偏光された光の同一の検知を可能にする。明らかなことに、求められている用途に応じて、他の構成が可能である。第一に、X軸上の周期が、Y軸上の周期と異なることが可能である。同様に、Y軸上のそれと異なるX軸上の幅の増加を提供することが可能である。同じく、垂直ではないX及びY軸及び/または一つ以上の付加的な軸を有するスリットを設けることが可能である。他の代替手段は、スリットのグリッドに代え、集光膜の厚さに、長方形、正方形、円形または他の形状の開口を設けることである。ここでもまた、膜の平面内に軸を定義することが可能であり、これに沿ってこれらの開口が規則的に間隔をおいて配置され、膜の端部に近づくにつれて前記軸に沿って幅が増大する。
【0067】
集光膜の懸架式構造体に関し、いくつかの実施形態及びそれらに関連する製造方法が以下に説明される。
【0068】
図7から12は、第一実施形態の懸架式構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【0069】
この方法が、基板16上に、マイクロプレート14のアレイ、支持アーム18及び反射板20を製造することにより開始される。それ自体周知であるように、この製造ステップは従来型であり、マイクロプレート14が、基板16上に堆積された犠牲層40上に形成される(
図7)。
【0070】
一旦マイクロプレート14が形成されると、この方法が、第一犠牲層40、マイクロプレート14及び支持アーム18上に、第二犠牲層42を堆積することにより継続する。第二層42の厚さが、集光膜22とマイクロプレート14との間の所望の距離lと等しい(
図8)。例えば、スピンコーティング技術を使用することによって、第二層42が堆積され、有利には、第一層40と同じ材料から構成され、特に、ポリイミド、例えば、ベンゾシクロブテン(BCB)ベースポリマーであるポリマー、プレ−ベーク感光性樹脂または他の樹脂である。全体で、第一及び第二層40,42が、複合犠牲層44を形成する。
【0071】
集光膜の支持構造体に対する所望の位置の各マイクロプレート14及びその支持アーム18を最後まで取り囲んで切断部46を露出させるように、次に、犠牲層44が、基板16までエッチングされ、例えば、マイクロプレート14用に使用される基板16の表面の境界に形成された切断部である(
図9)。有利には、切断部46が、高度な異方性エッチングを可能にするドライ反応性イオンエッチング(RIE)、またはさらには、酸素の化学エッチングによって形成される。
【0072】
次に、金属が、固体シート状で堆積され、犠牲層44及び切断部46が、集光膜48によって覆われる(
図10)。好ましくは、この金属が、切断部46の側面上に堆積された金属の良好な適合性(conformity)を確保する化学気相成長法(CVD)を使用して堆積される。この実施形態において、集光膜及びそれらの支持構造体を構成する金属層48が、アルミニウム、チタン、窒化チタン、銅またはタングステンから形成される。
【0073】
本発明の集光膜22を形成するために、リソグラフィ及び例えばドライRIE型エッチングであるエッチングが、次に使用され、金属層48内に開口26を形成する(
図11)。リソグラフィ及びエッチングが、それ自体周知である方法で、ここで使用される。
【0074】
最後に、例えば、酸素またはオゾンプラズマを使用して、犠牲層44が除去される(
図12)。
【0075】
含まれる製造ステップの数が最小であるという限りにおいて、この実施形態が、有利である。
【0076】
しかしながら、基板16に対して選択された材料に応じて、基板16上の金属層の接着性、及び従って基板16上の支持構造体24の接着性、及び/又はいくつかの金属の堆積適合性が、特に、構造体24の機械的脆性の観点から、問題となりうる。
【0077】
図13から15の概略断面図に関連して、支持構造体及びその製造プロセスの第二実施形態が、以下に説明される。
【0078】
この方法は、
図7から9に関連して説明されたそれらと同じステップで開始され、次に、半導体または誘電体材料の固体シートの堆積が続き、犠牲層44及び切断部46が、前記材料の層50によって覆われる(
図13)。しかしながら、先の実施形態と異なり、マイクロプレート14上に堆積された第二犠牲層42の厚さが、層50の厚さを考慮に入れ、層42及び層50の厚さの合計が、集光膜22とマイクロプレート14との間の所望の距離lと等しい。
【0079】
層50の材料が、有利に選択され、特に、接着及び堆積適合性に関して、これが、基板16の材料と適合する。
【0080】
また、検出される波長範囲内において、比較的非−吸収性であるように、層50の材料が選択される。例えば、赤外線波長範囲において、層50の材料が、ゲルマニウム、アモルファスシリコンまたはSi−Geであり、テラヘルツ波長範囲において、層50の材料が、シリカSiO
x、SiONまたはSiNである。
【0081】
有利には、切断部46の側面上への材料の良好な堆積適合性を確保するCVDによって層50が一旦堆積されると、この方法において、例えば上記のそれらの内の一つである集光膜を構成する金属材料の固体シートの堆積が続き、切断部46内に含む層50を覆う金属層52を形成する(
図14)。例えば、化学気相成長法(CVD)または物理気相成長法(PVD)が、使用される。
【0082】
次に、金属層52及び誘電体層または半導体層50内に開口26を形成するために、リソグラフィ及び例えばドライRIE型エッチングであるエッチングが実施され、本発明の集光膜22が形成され、例えば酸素またはオゾンプラズマを使用することによって犠牲層44が除去される(
図15)。
【0083】
ここで留意すべきは、先の実施形態と異なり、材料の層が、膜22とマイクロプレート14との間に存在することである。それにもかかわらず、低い周期性を前提として、層50が、均一な平均屈折率を有する層のように機能し、実質的に、光に干渉しない。
【0084】
従って、マイクロプレート14から集光膜22を分離する媒体の屈折率の関数である上記の式が、有効なままである。誘電体及び/または半導体層が使用される実施形態の場合、従って、これらの式において考慮される屈折率が、マイクロプレート14から膜22を分離する媒体の平均屈折率である。
【0085】
図16から19の概略断面図に関連して、支持構造体及びそれを製造する方法の第三実施形態が、以下に説明され;この第三実施形態により、同時に、集光膜及び各マイクロプレート用のハーメチックキャップを形成することが可能となる。
【0086】
この方法は、
図13に関して説明されたそれらと同じステップで開始され、リソグラフィ及び例えばドライRIE型エッチングであるエッチングが続き、犠牲層44の所まで、層50内にリリースベント54を形成する(
図16)。次に、例えば、リリースベント54を介して適用される酸素またはオゾンプラズマを使用することによって、犠牲層44が除去される(
図17)。
【0087】
この方法において、例えば、上記のそれらの内の一つである集光膜を構成する金属材料の固体シートの堆積が続き、切断部46内に含む層50及びリリースベント54を覆う金属層56を形成する(
図18)。この結果、マイクロプレート14及び支持アーム18の周りに、ハーメチック空間60が得られる。空間60内の高真空を達成するために、スパッタリング、CVDまたは蒸着によって、金属層56が堆積される。これにより、マイクロプレート14に対して、統合されたハーメチックパッケージングが形成される。
【0088】
次に、本発明の集光膜22を形成するために、リソグラフィ及び例えばドライRIE型エッチングであるエッチングが使用され、金属層56内に開口26が形成される(
図19)。
【0089】
個々の支持アーム、すなわち、一度に一つのマイクロプレートのみを懸架するアームによって懸架されたボロメータマイクロプレートに基づく本発明の応用が、上述されている。個々の支持アーム18を備えたマイクロプレート14のアレイの実施例の上面図が、
図20に図示されている。
【0090】
しかしながら、共通の支持アーム18を備えたマイクロプレートのアレイの上面図である
図21に示されるように、一つの支持アームが、2つの隣接するマイクロプレートを一緒に懸架するアーキテクチャが存在する。
【0091】
ここで注目すべきは、一つのマイクロプレートを実現するために必要とされる基板空間の観点から、支持アームが、別個であるか、または共通であるかは重要ではなく、これらの両方のアーキテクチャが、低いフィルファクターを結果として生じる。
【0092】
一方、共通の支持アームの場合、マイクロプレート及びその支持アームの周囲における連続する側壁によって形成された一つの集光膜に対して一つの支持構造体を実現することは可能ではなく、各マイクロプレート及びそのアームの全ての周囲にギャップが存在する個々の支持アームを備えたアーキテクチャと異なる。さらに、支持アームが、2つの基本的な機能、すなわち、マイクロプレートの機械的な懸架と、それの熱的な分離の機能を有する。従って、集光膜の支持構造体が、少なくとも、支持アームと熱的に接触していなければならない。従って、基板上に構造体を形成することが要求される場合には、共通の支持アームに基づくアーキテクチャにおいてこの構造体を形成することが複雑であることは明瞭である。
【0093】
共通の支持アームに基づくアーキテクチャにおいて集光膜を形成する単純な方法が、
図22から27の概略断面図に関して、以下に説明される。
【0094】
この方法が、基板16上に、マイクロプレート14のアレイ、共通の支持アーム18及び反射板20を形成することにより開始される。この製造ステップが、それ自体周知であるように、従来型であり、マイクロプレート14が、基板16上に堆積された犠牲層40上に形成される(
図22)。
【0095】
一旦マイクロプレート14が形成されると、この方法において、第一犠牲層40、マイクロプレート14及び共通の支持アーム18上への第二犠牲層42の堆積が続く。第二層42の厚さが、集光膜22とマイクロプレート14との間の所望の距離lと等しい(
図23)。例えば、スピンコーティング技術を使用して第二層42が堆積され、有利には、第一層40と同じ材料から構成され、特に、ポリイミド、例えば、ベンゾシクロブテン(BCB)ベースポリマーであるポリマー、プレ−ベーク感光性樹脂または他の樹脂である。全体で、第一及び第二層40,42が、複合犠牲層44を形成する。
【0096】
次に、共通の支持アーム18の少なくとも一部を、より正確には、基板16に機械的に取り付けられたアーム18の垂直構造体の一部または全体を、リリースする切断部58を形成するために、犠牲層44をエッチングするステップが実施される(
図24)。例えば、高度な異方性エッチングを可能にするドライRIE型エッチングが使用される。
【0097】
次に、例えば上記のそれらの内の一つである金属が、固体シート状で堆積され、犠牲層44及び切断部58が、金属層60によって覆われる(
図25)。
【0098】
本発明の集光膜22を形成するために、リソグラフィ及び例えばドライRIE型エッチングであるエッチングが、次に使用され、金属層60内に開口26を形成する(
図26)。最後に、例えば、酸素またはオゾンプラズマを使用して、犠牲層44が除去される(
図27)。
【0099】
説明された実施形態では、集光膜のみが形成されるが、
図13から19の実施形態に関して説明された実施形態と同様な方法で、誘電体及び/または半導体層を設けることも可能である。有利には、共通の支持アームの熱分離への干渉を可能な限り小さくするように、付加的な層が、断熱材料から構成されうる。
【0100】
同様に、そのような要求がある用途の場合には、個々の支持アーム上に集光膜支持構造体を設けることも可能である。
【0101】
有利には、統合されたハーメチックマイクロパッケージングとの関連で、本発明が使用されることが可能であり:従って、マイクロパッケージングの上面に配置された集光膜により、マイクロパッケージングの側面によって生じる光学活性表面積の損失を補償することが可能となる。また、これが、バッチプロセスでパッケージングを形成する結果として、製造コストが低く、一方、この型のパッケージングによって必然的に生じる検出器の効率の降下を最小化するという利点を有する。