(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926557
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】アイアン型ゴルフクラブセット及びアイアン型ゴルフクラブヘッドセット
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20160516BHJP
A63B 53/00 20150101ALI20160516BHJP
【FI】
A63B53/04 E
A63B53/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-290331(P2011-290331)
(22)【出願日】2011年12月29日
(65)【公開番号】特開2013-138744(P2013-138744A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2014年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】504017809
【氏名又は名称】ダンロップスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】水谷 成宏
【審査官】
大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−110348(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0233832(US,A1)
【文献】
特開平09−075481(JP,A)
【文献】
特開2000−157651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
A63B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロフト角が異なる3本以上のアイアン型ゴルフクラブからなるアイアン型ゴルフクラブセットであって、
各アイアン型ゴルフクラブのクラブヘッドの重心を通りかつトウ・ヒール方向にのびる水平軸周りの慣性モーメントMs(g・cm2)とヘッドの質量M(g)との比Ms/Mを慣性係数Aとするとき、
ロフト角が最小である最も低番手のクラブヘッドの慣性係数A1とロフト角が最大である最も高番手のクラブヘッドの慣性係数Anとの差An−A1が0.3以上であり、かつ、ロフト角が最大である最も高番手のクラブヘッドの慣性係数Anが3.0以上であり、
各クラブヘッドの慣性係数Aは、ロフト角が大きくなるに従って徐々に大きくなることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブセット。
【請求項2】
前記クラブヘッドは、ボールを打撃するフェースを前面に有するヘッド基体を有し、
該ヘッド基体の背面には、後方に隆起してヘッド基体の上面に沿ってのびるトップ側隆起部が形成され、
前記トップ側隆起部は、前記フェースの上縁に連なる外周面と、クラブヘッドの重心側を向く内周面とを含み、
シャフト中心線を垂直面内に配しかつ規定のライ角で傾けるとともに、フェースを規定のロフト角に保持して水平面に接地させた基準状態の背面視において、
各クラブヘッドの前記トップ側隆起部のトウ側において、前記外周面の最大高さHoと、前記内周面の最大高さHiとの差Ho−Hiである隆起部厚さは、ロフト角が大きくなるに従って徐々に大きくなる請求項1記載のアイアン型ゴルフクラブヘッドセット。
【請求項3】
少なくとも前記クラブヘッドの1つは、前記トップ側隆起部に、前記内周面の最大高さHiが一定でトウ・ヒール方向にのびる水平部を含む請求項2記載のアイアン型ゴルフクラブセット。
【請求項4】
前記ヘッド基体は、第1の金属材料と、該第1の金属材料よりも比重が大きく前記トップ側隆起部の少なくとも一部を構成する第2の金属材料とを含む請求項2又は3に記載のアイアン型ゴルフクラブセット。
【請求項5】
ロフト角が異なる3個以上のアイアン型ゴルフクラブヘッドからなるアイアン型ゴルフクラブヘッドセットであって、
各クラブヘッドの重心を通りかつトウ・ヒール方向にのびる水平軸周りの慣性モーメントMs(g・cm2)とヘッドの質量M(g)との比Ms/Mを慣性係数Aとするとき、
ロフト角が最小であるクラブヘッドの慣性係数A1とロフト角が最大であるクラブヘッドの慣性係数Anとの差An−A1が0.3以上であり、かつ、ロフト角が最大である最も高番手のクラブヘッドの慣性係数Anが3.0以上であり、
各クラブヘッドの慣性係数は、ロフト角が大きくなるに従って徐々に大きくなることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッドセット。
【請求項6】
ロフト角が異なる3本以上のアイアン型ゴルフクラブからなるアイアン型ゴルフクラブセットであって、
各アイアン型ゴルフクラブのクラブヘッドの重心を通りかつトウ・ヒール方向にのびる水平軸周りの慣性モーメントMs(g・cm2)とヘッドの質量M(g)との比Ms/Mを慣性係数Aとするとき、
ロフト角が最小である最も低番手のクラブヘッドの慣性係数A1とロフト角が最大である最も高番手のクラブヘッドの慣性係数Anとの差An−A1が0.3以上であり、かつ、
各クラブヘッドの慣性係数Aは、ロフト角が大きくなるに従って徐々に大きくなり、
前記クラブヘッドは、ボールを打撃するフェースを前面に有するヘッド基体を有し、
該ヘッド基体の背面には、後方に隆起してヘッド基体の上面に沿ってのびるトップ側隆起部が形成され、
前記トップ側隆起部は、前記フェースの上縁に連なる外周面と、クラブヘッドの重心側を向く内周面とを含み、
シャフト中心線を垂直面内に配しかつ規定のライ角で傾けるとともに、フェースを規定のロフト角に保持して水平面に接地させた基準状態の背面視において、
各クラブヘッドの前記トップ側隆起部のトウ側において、前記外周面の最大高さHoと、前記内周面の最大高さHiとの差Ho−Hiである隆起部厚さは、ロフト角が大きくなるに従って徐々に大きくなり、
少なくとも前記クラブヘッドの1つは、前記トップ側隆起部に、前記内周面の最大高さHiが一定でトウ・ヒール方向にのびる長さが5mm以上の水平部を含むことを特徴とするアイアン型ゴルフクラブセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打球の飛距離の安定性を向上させたアイアン型ゴルフクラブセット及びアイアン型ゴルフクラブヘッドセットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クラブヘッドを低重心化して、ボールを打撃するフェースのスイートスポットよりも上側で打球し易くすることにより、いわゆる縦のギア効果を大きく作用させることが知られている。このようなクラブヘッドは、打球のバックスピン量が小さくなり、吹け上がりを抑えて打球の飛距離を向上させることができる。
【0003】
しかしながら、ロフト角が大きいクラブヘッドでは、フェースの打撃位置がスイートスポットの上下にバラツキ易い。このため、打球のバックスピン量が大きく変化し、飛距離が安定しないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−112378号公報
【特許文献2】特開2001−37925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、各アイアン型ゴルフクラブのクラブヘッドの重心を通りかつトウ・ヒール方向にのびる水平軸周りの慣性モーメントMs(g・cm
2)(以下、単に、「上下の慣性モーメント」という場合がある。(
図3に示す。))とヘッドの質量M(g)との比Ms/Mを慣性係数Aとするとき、各クラブヘッド間の慣性係数をロフト角の大きさによって規定することを基本として、ロフト角の大きいクラブヘッドの打球の飛距離の安定性を向上させたアイアン型ゴルフクラブセット及びアイアン型ゴルフクラブヘッドセットを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1記載の発明は、ロフト角が異なる3本以上のアイアン型ゴルフクラブからなるアイアン型ゴルフクラブセットであって、各アイアン型ゴルフクラブのクラブヘッドの重心を通りかつトウ・ヒール方向にのびる水平軸周りの慣性モーメントMs(g・cm
2)とヘッドの質量M(g)との比Ms/Mを慣性係数Aとするとき、ロフト角が最小である最も低番手のクラブヘッドの慣性係数A1とロフト角が最大である最も高番手のクラブヘッドの慣性係数Anとの差An−A1が0.3以上であり、かつ、
ロフト角が最大である最も高番手のクラブヘッドの慣性係数Anが3.0以上であり、各クラブヘッドの慣性係数Aは、ロフト角が大きくなるに従って徐々に大きくなることを特徴とする。
【0007】
また請求項2記載の発明は、前記クラブヘッドは、ボールを打撃するフェースを前面に有するヘッド基体を有し、該ヘッド基体の背面には、後方に隆起してヘッド基体の上面に沿ってのびるトップ側隆起部が形成され、前記トップ側隆起部は、前記フェースの上縁に連なる外周面と、クラブヘッドの重心側を向く内周面とを含み、シャフト中心線を垂直面内に配しかつ規定のライ角で傾けるとともに、フェースを規定のロフト角に保持して水平面に接地させた基準状態の背面視において、各クラブヘッドの前記トップ側隆起部のトウ側において、前記外周面の最大高さHoと、前記内周面の最大高さHiとの差Ho−Hiである隆起部厚さは、ロフト角が大きくなるに従って徐々に大きくなる請求項1記載のアイアン型ゴルフクラブヘッドセットである。
【0008】
また請求項3記載の発明は、少なくとも前記クラブヘッドの1つは、前記トップ側隆起部に、前記内周面の最大高さHiが一定でトウ・ヒール方向にのびる水平部を含む請求項2記載のアイアン型ゴルフクラブセットである。
【0009】
また請求項4記載の発明は、前記ヘッド基体は、第1の金属材料と、該第1の金属材料よりも比重が大きく前記トップ側隆起部の少なくとも一部を構成する第2の金属材料とを含む請求項2又は3に記載のアイアン型ゴルフクラブセットである。
【0010】
また請求項5記載の発明は、ロフト角が異なる3個以上のアイアン型ゴルフクラブヘッドからなるアイアン型ゴルフクラブヘッドセットであって、各クラブヘッドの重心を通りかつトウ・ヒール方向にのびる水平軸周りの慣性モーメントMs(g・cm
2)とヘッドの質量M(g)との比Ms/Mを慣性係数Aとするとき、ロフト角が最小であるクラブヘッドの慣性係数A1とロフト角が最大であるクラブヘッドの慣性係数Anとの差A1−Anが0.3以上であり、かつ、
ロフト角が最大である最も高番手のクラブヘッドの慣性係数Anが3.0以上であり、各クラブヘッドの慣性係数は、ロフト角が大きくなるに従って徐々に大きくなることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッドセットである。
また請求項6記載の発明は、ロフト角が異なる3本以上のアイアン型ゴルフクラブからなるアイアン型ゴルフクラブセットであって、各アイアン型ゴルフクラブのクラブヘッドの重心を通りかつトウ・ヒール方向にのびる水平軸周りの慣性モーメントMs(g・cm2)とヘッドの質量M(g)との比Ms/Mを慣性係数Aとするとき、ロフト角が最小である最も低番手のクラブヘッドの慣性係数A1とロフト角が最大である最も高番手のクラブヘッドの慣性係数Anとの差An−A1が0.3以上であり、かつ、各クラブヘッドの慣性係数Aは、ロフト角が大きくなるに従って徐々に大きくなり、前記クラブヘッドは、ボールを打撃するフェースを前面に有するヘッド基体を有し、該ヘッド基体の背面には、後方に隆起してヘッド基体の上面に沿ってのびるトップ側隆起部が形成され、前記トップ側隆起部は、前記フェースの上縁に連なる外周面と、クラブヘッドの重心側を向く内周面とを含み、シャフト中心線を垂直面内に配しかつ規定のライ角で傾けるとともに、フェースを規定のロフト角に保持して水平面に接地させた基準状態の背面視において、各クラブヘッドの前記トップ側隆起部のトウ側において、前記外周面の最大高さHoと、前記内周面の最大高さHiとの差Ho−Hiである隆起部厚さは、ロフト角が大きくなるに従って徐々に大きくなり、少なくとも前記クラブヘッドの1つは、前記トップ側隆起部に、前記内周面の最大高さHiが一定でトウ・ヒール方向にのびる長さが5mm以上の水平部を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアイアン型ゴルフクラブセットは、ロフト角が異なる3本以上のアイアン型ゴルフクラブからなり、各アイアン型ゴルフクラブの上下の慣性モーメントMs(g・cm
2)とヘッドの質量M(g)との比Ms/Mを慣性係数Aとするとき、ロフト角が最小である最も低番手のクラブヘッドの慣性係数A1とロフト角が最大である最も高番手のクラブヘッドの慣性係数Anとの差An−A1が0.3以上であり、かつ、各クラブヘッドの慣性係数は、ロフト角が大きくなるに従って徐々に大きくする。このような慣性係数の大きなクラブヘッドは、縦のギア効果が小さくなる。従って、ロフト角が大きいクラブにおいて、ボールの打撃位置が、フェースの上下にばらついても、打球のバックスピン量の変化が小さくなるため、飛距離の安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)乃至(c)は、本発明の一実施形態のゴルフクラブヘッドの基準状態の背面図である。
【
図4】(a)は、
図1(a)のY1−Y1端面図、(b)は、
図1(b)のY2−Y2端面図、(c)は、
図1(c)のY3−Y3端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1(a)乃至(c)には、本実施形態のアイアン型ゴルフクラブセット(以下、単に「セット」又は「クラブセット」ということがある。)に含まれる3本のアイアン型ゴルフクラブヘッド(以下、単に「クラブヘッド」又は「ヘッド」ということがある。)3a乃至3cの基準状態の背面図が示される。また、
図2には、その代表例として、
図1(b)のヘッド3bを有するアイアン型ゴルフクラブ(以下、単に「ゴルフクラブ」又は「クラブ」ということがある。)1の基準状態の正面図が示される。また、
図3には、
図2のX−X断面図が示される。ここで、
図1乃至3に示されるように、クラブヘッド3の基準状態とは、該ヘッド3に装着されるシャフト2の
軸中心線CLを垂直面VP内に配しかつ規定のライ角αで傾けるとともに、ボールを打撃する打撃面をなすフェース5のスイートスポットSSをロフト角βに保持(フェース角は零にセットされる)して水平面HPに接地させた状態とする。特に言及されていない場合、ヘッド3は、この基準状態にあるものとする。なお、ヘッド3にシャフト2が装着されていない場合、ライ角αは、ホーゼル部3Bのシャフト差込孔hの軸中心線CLを基準に定める。
【0014】
本実施形態のクラブセットは、ロフト角βが異なる3本以上、好ましくは、慣例に基づいて5〜10本程度のゴルフクラブ1から構成される。このようなゴルフクラブ1は、広い範囲で飛距離を打ち分けるために、セットの中で最も小さなロフト角βを、19〜27度に設定するのが望ましく、また、隣接する番手間において、ロフト角βを3ないし10度程度で変化させるのが望ましい。
【0015】
また、本実施形態のシャフト2は、クラブセットの内で、ロフト角βの増大に伴って徐々に短く形成される。
【0016】
図1(a)に示されるヘッド3aは、本実施形態のセットの中でロフト角βが最小である最も低番手な5番アイアン、
図1(b)に示されるヘッド3bは、本実施形態のセットの中でロフト角βが略中間である8番アイアン、
図1(c)に示されるヘッド3cは、本実施形態のセットの中でロフト角βが最大である最も高番手なピッチングウエッジのヘッドである。なお、最も低番手なヘッド3aは、例えば、4番アイアンや、3番アイアンであっても良く、同じく最も高番手なヘッド3cは、例えば、サンドウェッジや、9番アイアンであっても良い。
【0017】
本実施形態のクラブセットでは、ゴルフクラブ1のヘッド3の上下の慣性モーメントMs(g・cm
2)とヘッドの質量M(g)との比Ms/Mを慣性係数Aとするとき、ロフト角βが最小である最も低番手のクラブヘッドの慣性係数A1とロフト角が最大である最も高番手のクラブヘッドの慣性係数An(nは3以上の自然数)との差An−A1が0.3以上で規定される。このように本実施形態では、最も高番手のクラブヘッドを、最も低番手のクラブヘッドよりも慣性係数Aを大きくすることにより、最も高番手のクラブヘッドの縦のギア効果を小さくする。従って、ボールの打撃位置がフェースの上下にばらつき易いロフト角が最大であるクラブヘッド3において、ボールの打撃位置がばらついても、打球のバックスピン量の変化が小さくなるため、飛距離の安定性が向上する。なお、慣性係数Aの差An−A1が大きくなると、縦のギア効果が過度に小さくなり、ロフト角が最大であるクラブヘッド3のバックスピン量が低下して目標地点であるグリーン上にボールを止めることができなくなるおそれがある。このため、前記差An−A1は、好ましくは0.5以上が望ましく、また、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下が望ましい。同様の観点より、慣性係数Anは、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.1以上が望ましく、また好ましくは4.0以下、より好ましくは3.9以下が望ましい。
【0018】
このように、本発明では、セット間のクラブヘッド3を単に上下の慣性モーメントMsの大小で定義するものではなく、上下の慣性モーメントMsとヘッドの質量Mとの比Ms/Mで規定している。これにより、上下の慣性モーメントMsの効果を、クラブヘッド3の質量の大小に左右されることなく評価することができ、ひいては、より正確に縦のギア効果の大小をロフト角の差によるクラブセット間で評価することができる。
【0019】
また、各クラブヘッド3の慣性係数Aは、ロフト角が大きくなるに従って徐々に大きくなるよう設定される必要がある。これにより、フェースが上下にずれ易く、ボールの打撃位置がフェースの上下にばらつき易い高番手のクラブヘッドになるほど、打球のバックスピン量の変化を小さくして、打球の飛距離の安定性を向上させることができる。このような作用を効果的に発揮するため、番手が隣り合うクラブヘッドの慣性係数の差Au+1−Au(Uは、1≦u<nを満たす自然数)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上が望ましく、また好ましくは0.30以下、より好ましくは0.20以下が望ましい。
【0020】
次に、このようなクラブヘッドセットを構成するヘッド3が具体的に説明される。なお、本明細書において、トウ・ヒール方向とは、
図2及び3に示されるように、ヘッド3の重心Gから前記フェース5に下ろした法線Nと直角な方向TKとする。また、上下方向とは、水平面HPに対して垂直な方向TLとする。なお、この法線Nとフェース5の交点が前記スイートスポットSSになる。
【0021】
クラブヘッド3は、質量が小さくなると、上下の慣性モーメントMsや前記重心Gを通る垂直軸SL周りの慣性モーメント(以下、単に「左右の慣性モーメント」という場合がある)Mgが小さくなって、打球の方向安定性や飛距離の安定性が悪化するおそれがある。他方、質量が大きくなると、振り切れなくなって打球の方向性や飛距離が悪化するおそれがある。このような観点より、クラブヘッド3の重量は、好ましくは180g以上、より好ましくは200g以上で形成されるのが望ましく、また好ましくは340g以下、より好ましくは320g以下で形成されるのが望ましい。
【0022】
本実施形態のヘッド3は、ボールを打撃するフェース5を前面に有するヘッド基体3Aと、該ヘッド基体3Aのヒール側に連設されかつ、前記シャフト差込孔hを有する略円筒状のホーゼル部3Bとを含む。
【0023】
前記ヘッド基体3Aは、前記フェース5と、このフェース5の上縁5aに連なりかつヘッドの上面部分をなす上面6と、前記フェース5の下縁5bに連なりかつヘッドの底面部分をなす下面7と、該下面7と前記上面6との間をトウ側で継ぐトウ面8と、前記フェース5の反対側の面である背面9とを含んで区画される。これらの各面5ないし9は、いずれもヘッド外面をなす。
【0024】
また、本実施形態のヘッド3は、前記フェース5の少なくとも一部(本実施形態では主要部)を含む板状のフェース部材10と、該フェース部材10を保持するとともに前記ホーゼル部3Bが一体に形成されたフェース受け部材11とを含んで構成される。
【0025】
前記フェース部材10及びフェース受け部材11には、例えばチタン、チタン合金、アルミニウム合金、ステンレス鋼又は軟鉄など種々の金属材料で形成されるのが望ましい。とりわけ、フェース部材10には、比強度が大きくかつ反発性に優れた、例えばチタン合金が望ましく、またフェース受け部材11には、例えば、フェース部材10よりも高比重のステンレス鋼又は軟鉄の鋳造品が望ましい。これにより、フェース部材10の周辺部により多くの重量が配分され、上下の慣性モーメントMs、左右の慣性モーメントMgやスイートエリアの大きいヘッド3が提供される。なお、フェース部材10及びフェース受け部材11は、これら金属材料の1種のみで形成されるものではなく、例えば2種、3種の金属材料を用いて形成されても良い。
【0026】
このようなフェース部材10とフェース受け部材11とは、例えば、溶接、ロウ付け、カシメ、接着剤及び/又はねじなどの接合手段により一体化される。ただし、ヘッド3は、1種の金属材料で構成されたものでも良い。
【0027】
フェース部材10の厚さTは、特に限定はされないが、大きすぎるとヘッドの反発性が低下しやすく、小さすぎると強度が不足して耐久性を悪化させる傾向があるので、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは2.0mm以上が望ましく、また、好ましくは4.5mm以下、より好ましくは3.0mm以下が望ましい。前記厚さTは一定である必要はなく、各部において異ならせることができる。なお、フェース5には、必要に応じて、ボールとの摩擦力を高める凹溝などのフェースラインFLが複数本隔設される。
【0028】
本実施形態のフェース部材10は、
図2及び3に示されるように、板状をなし、フェース5を形成するフェース面10aと、該フェース面10aに連設され、フェース部材10の外周を形成するフェース周面10bと、該周面10bに連設され、フェース部材10の背面を形成するフェース背面10cとからなる。
【0029】
また、本実施形態のフェース受け部材11は、フェース部材10のフェース背面10cと接触しない前後に貫通した開口部(図示せず)を具えるとともに、この開口部Oを囲んで環状にのびフェース周面10bの全周及びフェース背面10cを支持する受け枠11aと、ホーゼル部3Bとを一体に具える。これにより、本実施形態のフェース周面10bは、露出することがない。なお、フェース部材10は、このような態様に限定されるものではなく、フェース周面10bの一部が露出する態様でも構わない。
【0030】
また、本実施形態では、前記ヘッド基体3Aは、前記背面9側にフェース5側に窪むキャビティCと、このキャビティCを囲むとともに後方に隆起して環状にのびる後方隆起部12を具える。このような後方隆起部12を有するキャビティバック構造は、フェース5から後方に離間した位置により多くの重量を配分し、各慣性モーメントMs、Mgを大きくして打球の飛距離や方向性を安定させるのに役立つ。
【0031】
前記後方隆起部12は、例えば、前記上面6及びトウ面8の一部に沿ってのびスイートスポットSSよりも上側の領域をなすトップ側隆起部12aと、該トップ側隆起部12aに接続されかつ下面7に沿ってのびるソール側隆起部12bとを有し、これらは連続してスイートスポットSS囲むように形成される。
【0032】
図3及び4に示されるように、本実施形態のトップ側隆起部12aは、フェース5の上縁5aに連なってヘッド後方にのびる外周面13、前記上縁5aよりもヘッド3の重心G側の背面9からヘッド後方にのびかつ重心G側を向く内周面14、該内周面14と前記外周面13とをヘッド後方側で継ぐ後側面15、及び前記フェース背面10cと連設される連設面16を含んで構成される。
【0033】
ここで、
図4(a)乃至(c)に示されるように、前記基準状態の背面視において、外周面13の前記最大高さHoと、内周面14の水平面HPからの最大高さHiとの差である隆起部厚さHo−Hiが、ロフト角βが大きくなるに従って、徐々に大きくなるのが望ましい。即ち、前記隆起部厚さHo−Hiが大きくなると、ヘッド3の外周面13側の質量が増加し、上下の慣性モーメントMsが大きくなる。これにより、前記慣性係数Aが大きくなり、縦のギア効果が低減される。従って、打球の飛距離の安定が向上する。なお、隆起部厚さHo−Hiが過度に大きくなると、内周面の最大高さHiが小さくなり、かえって上下の慣性モーメントMsが低減するおそれがある。このため、隆起部厚さHo−Hiは、好ましくは外周面13の前記最大高さHoの5%以上、より好ましくは10%以上が望ましく、また好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下が望ましい。なお、内周面14の最大高さHiとは、基準状態の端面視において、内周面14の最も下端位置における高さをいう。
【0034】
また、クラブセットのうち、少なくとも1つのクラブヘッド3(本実施形態では、
図1(b)、1(c)に示されるように、少なくとも2つ以上)は、トップ側隆起部12aに、前記内周面の最大高さHiが一定かつトウ・ヒール方向にのびる水平部19が形成される。このような水平部19が設けられたトップ側隆起部12aは、ヘッド3の質量の過度の増加を抑制しつつ、上下の慣性モーメントMsを効果的に大きくすることができ、慣性係数Aを高めるのに役立つ。なお、本明細書では、前記水平部19とは、トウ・ヒール方向の長さLが5mm以上のものをいう。
【0035】
また、ヘッド基体3Aは、第1の金属材料と、該第1の金属材料よりも比重が大きく前記トップ側隆起部12aの少なくとも一部を構成する第2の金属材料とを含んで形成されるのが望ましい。このようなヘッド3は、慣性係数Aが大きくなり、バックスピン量の変化が小さくなる。
【0036】
前記第1の金属材料は、ヘッド基体3Aのうちフェース部材10を除いたフェース受け部材11の主要部を構成するのが望ましく、本実施形態では、例えば、内周面14の最大高さHiよりも下側のフェース受け部材11に配される。また、前記第2の金属材料は、本実施形態では、内周面14の最大高さHiよりも上側のフェース受け部材11に配される。なお、第2の金属材料は、このような配設位置に限定されるものではなく、例えば、ソール側隆起部12bの一部、とりわけソール側近い場所で設けられるのが望ましい。これにより、一層上下の慣性モーメントMsが高められる。なお、ホーゼル部3Bは、第1の金属材料の1種で構成されるのが望ましい。
【0037】
このような第1の金属材料は、例えば、上述の通り、フェース受け部材11の主要部を構成するステンレス鋼又は軟鉄の鋳造品が望ましく、第2の金属材料は、タングステンやタングステン合金などが望ましい。
【0038】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定させることなく、必要に応じて種々の態様に変更しうる。
【実施例】
【0039】
本発明の効果を確認するために、
図1乃至4に基づいたアイアン型ゴルフクラブが試作され、打球の飛距離の安定性及び打球の上がり易さについてテストされた。表1に示すパラメータ以外はすべて同一であり、主な共通仕様は次の通りである。
シャフトの質量及び長さ:各番手共通
フェース部材:チタン合金(比重:4.4)
フェース受け部材:ステンレス鋼(比重:7.8)
テスト方法は、次の通りである。
【0040】
<打球の飛距離の安定性>
各クラブを、ハンディキャップ5〜25の右打ちゴルファ10名が、各クラブで10球ずつゴルフボールを打撃し、目標点に対する打球のずれ量がゴルファの官能により、10点満点方で評価された。テスト結果には、ゴルファ10名の平均点が示される。数値が大きいほうが良好である。
【0041】
<打球の上がり易さ>
上記10名のゴルファの官能により、打球の上がり易さが、10点満点法で評価された。テスト結果には、その平均点が示される。数値が大きいほうが良好である。
テストの結果などを表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
テストの結果、実施例のアイアン型ゴルフクラブセットの高番手のクラブヘッドは、比較例のアイアン型ゴルフクラブセットの高番手のクラブヘッドに比して打球の飛距離の安定性が向上している。
【符号の説明】
【0044】
1 アイアン型ゴルフクラブ
3 クラブヘッド
G ヘッドの重心