(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る車両用情報システムの構成を
図1に示す。この車両用情報システムは、車両100、200および300とサーバ装置500とが移動体通信網400を介して接続されることにより構成される。車両100、200および300は、バッテリに蓄積された電気エネルギーを利用して駆動する車両(EV:Electric Vehicle)である。
【0010】
車両100、200および300は、各々が走行中に検出した加速度または減速度の変化に関する加減速情報を移動体通信網400を介してサーバ装置500へ送信する。なお、以下の説明では、加速度と減速度を合わせて加減速度と称する。また、サーバ装置500に対して、当該車両の残電力量などを表す車両情報を送信することにより、その残電力量に応じた航続可能エリア情報をサーバ装置500へ要求することもできる。
図1では、車両100からサーバ装置500へ車両情報を送信し、それに応じてサーバ装置500から送信される航続可能エリア情報を車両100が受信する様子を示しているが、他の車両200、300においても同様である。
【0011】
サーバ装置500は、演算処理部501および蓄積部502を有している。演算処理部501は、車両100、200および300から移動体通信網400を介してそれぞれ送信された加減速情報を受信し、その内容に基づく演算処理を行う。また、いずれかの車両(
図1では車両100)から送信された車両情報に基づいて、当該車両の航続可能エリアを推定するための演算処理を行い、その演算結果に応じた航続可能エリア情報を移動体通信網400を介して当該車両へ送信する。演算処理部501が行うこれらの演算処理の具体的な内容については、後で詳細に説明する。
【0012】
蓄積部502は、演算処理部501が行う上記演算処理に必要な各種データや、演算処理部501の演算処理結果に関するデータなどを記憶保持する。これらのデータは、演算処理部501の制御により、必要に応じて蓄積部502から読み出されたり、蓄積部502に書き込まれたりする。
【0013】
なお、
図1には、車両100、200および300とサーバ装置500とが移動体通信網400を介して接続された車両用情報システムを例として示したが、本発明の車両用情報システムにおける車両の数はこれに限定されるものではない。実際には、
図1に例示したものよりも多数の車両をサーバ装置500と接続して本発明の車両用情報システムを構成することが好ましい。
【0014】
図2は、
図1の車両用情報システムにおける車載システムの構成を示すブロック図である。
図2において、車両100には、ナビゲーション装置1、車両制御装置2、バッテリ3、電力変換装置4、電気モータ5および通信端末6が搭載されている。
【0015】
バッテリ3は、電気モータ5を駆動するための電力を供給する。バッテリ3から供給される電力を用いて電気モータ5が駆動することにより、車両100は走行する。また、車両100の減速時には電気モータ5が発電機として作用し、回生発電による電力が発生する。この回生発電によって得られた電力は、バッテリ3において蓄積される。電力変換装置4は、バッテリ3と電気モータ5との間で授受されるこれらの電力を相互に利用可能な形式に変換する。たとえば、バッテリ3から供給される直流電力を所望の交流電力に変換して電気モータ5へ出力すると共に、電気モータ5において回生発電により得られた交流電力を所望の直流電力に変換してバッテリ3へ出力する。
【0016】
車両制御装置2は、車両100の走行状態や、バッテリ3の状態、電気モータ5の状態などを監視し、その監視結果に基づいて電力変換装置4の動作を制御する。この車両制御装置2の制御により電力変換装置4が動作することで、車両100の走行状態に応じてバッテリ3と電気モータ5との間で適切に電力の授受が行われる。これにより、バッテリ3に蓄積された電気エネルギーを消費して、車両100が走行するための運動エネルギーを電気モータ5により発生することができる。また、車両100の運動エネルギーの少なくとも一部を電気モータ5により回収して、再利用可能な回生エネルギーとしての電気エネルギーをバッテリ3に蓄積することができる。
【0017】
ナビゲーション装置1は、地図データに基づいて地図を表示すると共に、設定された目的地までの推奨経路を探索して車両100を案内するためのナビゲーション機能を有している。これに加えて、
図1の車両用情報システムにおける車載装置としての機能もさらに有している。すなわち、ナビゲーション装置1は、車両100の加減速度の変化を検出して加減速情報をサーバ装置500へ送信したり、車両100に関する車両情報を送信して航続可能エリア情報をサーバ装置500へ要求したりすることができる。これらの処理の具体的な内容については、後で詳細に説明する。
【0018】
なお、車両情報をサーバ装置500へ送信するために、ナビゲーション装置1は、現在の残電力量、すなわち車両100においてバッテリ3に蓄積されている電気エネルギーの量を示すバッテリ残量情報を、必要に応じて車両制御装置2から取得する。残電力量は、たとえば、完全放電状態である0%から満充電状態である100%までのいずれかの値をとるSOC(State Of Charge)によって表すことができる。
【0019】
通信端末6は、ナビゲーション装置1の制御により動作し、
図1の移動体通信網400との間で無線通信を行う。移動体通信網400には、
図1に示すようにサーバ装置500が接続されている。すなわちナビゲーション装置1は、通信端末6および移動体通信網400を介してサーバ装置500と接続されることで、加減速情報や車両情報をサーバ装置500へ送信したり、サーバ装置500から航続可能エリア情報を受信したりすることができる。
【0020】
なお、
図2では車両100に搭載されている車載システムの構成を例示したが、車両200および300に搭載されている車載システムもこれと同様の構成を有している。すなわち、
図2に示すような車載システムが各車両において搭載されている。そして、各車両のナビゲーション装置1から加減速情報や車両情報がサーバ装置500へ送信されると共に、サーバ装置500から送信された航続可能エリア情報が各車両のナビゲーション装置1において受信される。
【0021】
図3は、ナビゲーション装置1の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置1は、制御部10、GPS(Global Positioning System)受信部11、振動ジャイロ12、車速センサ13、ハードディスクドライブ(HDD)14、表示モニタ15、スピーカ16および入力装置17を備えている。なお、以下では車両100に搭載されているナビゲーション装置1を代表例として説明するが、他の車両に搭載されているナビゲーション装置1についても同様である。
【0022】
制御部10は、マイクロプロセッサや各種周辺回路、RAM、ROM等によって構成されており、HDD14に記録されている制御プログラムや地図データに基づいて、各種の処理を実行する。たとえば、前述のナビゲーション機能に関する処理として、目的地を設定する際の目的地の検索処理、設定された目的地までの推奨経路の探索処理、車両100の現在位置の検出処理、各種の画像表示処理、音声出力処理などを実行する。また、
図1の車両用情報システムにおいて用いられる車載装置としての機能を実現するための処理も行う。具体的には、車両100の加減速度の変化を検出してその内容に基づく加減速情報をサーバ装置500へ送信したり、航続可能エリア情報を要求する際に車両情報をサーバ装置500へ送信したりする。
【0023】
制御部10には車両制御装置2および通信端末6が接続されている。制御部10は、これらの装置との間で必要に応じて情報の入出力を行う。たとえば、加減速情報や車両情報をサーバ装置500へ送信するために、これらの情報を通信端末6へ出力したり、バッテリ3の残電力量を求めるために、車両制御装置2からバッテリ残量情報を入力したりすることができる。
【0024】
GPS受信部11は、GPS衛星から送信されるGPS信号を受信して制御部10へ出力する。GPS信号には、車両100の現在位置を求めるための情報として、そのGPS信号を送信したGPS衛星の位置と送信時刻に関する情報が含まれている。したがって、所定数以上のGPS衛星からGPS信号を受信することにより、これらの情報に基づいて、車両100の現在位置を制御部10において算出することができる。
【0025】
振動ジャイロ12は、車両100の角速度を検出するためのセンサである。車速センサ13は、車両100の走行速度を検出するためのセンサである。これらのセンサの検出結果に基づく車両100の移動方向および移動量の算出結果と、前述のGPS信号に基づく車両100の現在位置の算出結果とに基づいて、制御部10において所定時間ごとに位置検出処理が実行され、車両100の現在位置が検出される。
【0026】
HDD14は不揮発性の記録媒体であり、制御部10において上記のような処理を実行するための制御プログラムや地図データなどが記録されている。HDD14に記録されているデータは、必要に応じて制御部10の制御により読み出され、制御部10が実行する様々な処理や制御に利用される。
【0027】
HDD14に記録された地図データは、経路計算データと、道路データと、背景データとを含む。経路計算データは、目的地までの推奨経路を探索する際などに用いられるデータである。道路データは、道路の形状や種別などを表すデータである。背景データは、地図の背景を表すデータである。なお、地図の背景とは、地図上に存在する道路以外の様々な構成物である。たとえば、河川、鉄道、緑地帯、各種構造物などが背景データによって表される。
【0028】
地図データにおいて各道路の最小単位はリンクと呼ばれている。すなわち、各道路は所定の道路区間にそれぞれ対応する複数のリンクによって構成されており、リンク単位で経路計算データおよび道路データが表現されている。リンク同士を接続している点、すなわち各リンクの端点はノードと呼ばれる。地図データにおける各ノードの情報には、位置情報(座標情報)が含まれている。なお、リンク内においてノードとノードの間に必要に応じて形状補間点と呼ばれる点が設定されていることもある。地図データにおける各形状補間点の情報には、ノードの場合と同様に位置情報(座標情報)が含まれている。このノードと形状補間点の位置情報によって、各リンクの形状、すなわち道路の形状が決定される。このように、HDD14に記憶されている地図データにおいて、道路は複数のノードとリンクを用いて表されている。
【0029】
経路計算データには、各道路区間に対応するリンクごとに、車両100が当該道路区間を走行する際の通過所要時間等に応じたリンクコストが設定されている。このリンクコストに基づいて、予め設定された経路探索条件に応じたリンクの組合せを求めることにより、ナビゲーション装置1において推奨経路の探索が行われる。たとえば、移動時間の短さを最優先として経路探索を行うような経路探索条件が設定されている場合は、出発地から目的地までの通過所要時間が最小となるリンクの組合せが推奨経路として求められる。
【0030】
なお、上記ではナビゲーション装置1において地図データがHDD14に記録されている例を説明したが、これらをHDD以外の記録媒体に記録することとしてもよい。たとえば、CD−ROMやDVD−ROM、メモリカードなどに記録された地図データを用いることができる。すなわち、ナビゲーション装置1では、どのような記録媒体を用いてこれらのデータを記憶してもよい。
【0031】
表示モニタ15は、ナビゲーション装置1において様々な画面表示を行うための装置であり、液晶ディスプレイ等を用いて構成される。この表示モニタ15により、地図画面の表示や推奨経路の案内表示などが行われる。表示モニタ15に表示される画面の内容は、制御部10が行う画面表示制御によって決定される。表示モニタ15は、たとえば車両100のダッシュボード上やインストルメントパネル内など、ユーザが見やすいような位置に設置されている。
【0032】
スピーカ16は、制御部10の制御により様々な音声情報を出力する。たとえば、推奨経路に従って車両100を目的地まで案内するための経路案内用の音声や、各種の警告音などがスピーカ16から出力される。
【0033】
入力装置17は、ナビゲーション装置1を動作させるための様々な入力操作をユーザが行うための装置であり、各種の入力スイッチ類を有している。ユーザは、入力装置17を操作することにより、たとえば、目的地に設定したい施設や地点の名称等を入力したり、推奨経路の探索条件を設定したり、予め登録された登録地の中から目的地を選択したり、地図を任意の方向にスクロールしたりすることができる。この入力装置17は、操作パネルやリモコンなどによって実現することができる。あるいは、入力装置17を表示モニタ15と一体化されたタッチパネルとしてもよい。
【0034】
ユーザが入力装置17を操作して目的地および経路探索条件を設定すると、ナビゲーション装置1は、前述のようにして検出された車両100の現在位置を出発地として、前述の経路計算データに基づいて所定のアルゴリズムの演算による経路探索処理を行う。この処理により、出発地から目的地まで至る推奨経路を探索する。さらにナビゲーション装置1は、たとえば色を変える等の方法により、表示モニタ15に表示された地図上において他の道路と識別可能な形態で探索された推奨経路を表示する。そして、推奨経路に従って所定の画像情報や音声情報を表示モニタ15やスピーカ16から出力することにより、車両100を目的地まで案内する。
【0035】
次に、
図1に示した車両用情報システムにおける処理の内容について説明する。
図1の車両用情報システムでは、ナビゲーション装置1の制御部10により、車両100の加減速度の変化を検出して加減速情報をサーバ装置500へ送信するための加減速情報送信処理が実行される。また、サーバ装置500の演算処理部501により、航続可能エリアの推定に用いられる損失・回生パラメータを算出するための損失・回生パラメータ算出処理と、航続可能エリアを推定するための航続可能エリア推定処理とが実行される。
【0036】
最初に、加減速情報送信処理について説明する。
図4は、加減速情報送信処理のフローチャートである。ナビゲーション装置1は、車両100が走行しているときに、制御部10により、
図4のフローチャートに示す加減速情報送信処理を所定の処理周期ごとに繰り返し実行する。
【0037】
ステップS10において、制御部10は、所定期間内での車両100の平均走行速度を算出する。ここでは、車速センサ13から出力された車速信号に基づいて、所定周期、たとえば20msごとに検出された車両100の走行速度を、所定回数分、たとえば25回分集計してその平均値を求めることにより、所定期間内での車両100の平均走行速度を算出する。これにより、たとえば500msの期間内での車両100の平均走行速度が算出される。
【0038】
ステップS20において、制御部10は、今回と前回の平均走行速度の差を算出する。ここでは、直前のステップS10で算出された平均走行速度を今回の平均走行速度とし、それより一回前のステップS10で算出された平均走行速度を前回の平均走行速度として、これらの間の差分を算出する。これにより、たとえば500msごとの平均走行速度の差が算出される。
【0039】
ステップS30において、制御部10は、ステップS20で算出した平均走行速度の差に基づいて、車両100が加速から減速に、または減速から加速に切り替わったか否かを判定する。この判定は、前回算出された平均走行速度の差の正負と、今回算出された平均走行速度の差の正負とを比較することによって行うことができる。たとえば、前回算出された平均走行速度の差が加速を表す正の値であり、今回算出された平均走行速度の差が減速を表す負の値である場合は、車両100が加速から減速に切り替わったと判定することができる。反対に、前回算出された平均走行速度の差が減速を表す負の値であり、今回算出された平均走行速度の差が加速を表す正の値である場合は、車両100が減速から加速に切り替わったと判定することができる。これらの条件を満たすことにより、車両100が加速から減速に、または減速から加速に切り替わったと判定した場合は、これを加減速度の変化として検出してステップS70へ進む。一方、上記条件を満たさない場合は、ステップS40へ進む。
【0040】
図5は、上記のようにして加減速度の変化を検出する様子を示す図である。
図5に示したグラフは、縦軸が車両100の車速Vを表し、横軸が車両100の走行距離Lを表している。このような車速Vが走行距離Lに対して検出された場合、グラフの山または谷に相当する各部分の車速V
peak_1、V
peak_2、V
peak_3およびV
peak_4に対して、加減速度の変化がステップS30においてそれぞれ検出される。
【0041】
なお、ステップS30の判定において、前回と今回の平均走行速度の差が所定の変動幅以内、たとえば1%以内であるときには、上記条件を満たす場合であっても、車両100が加速から減速に、または減速から加速に切り替わったと判定しないようにすることが好ましい。すなわち、ステップS20で算出された平均走行速度の差が所定の変動幅以内であるときには、ステップS30の判定を行わずにステップS40へ進むようにし、加減速度の変化を検出しないようにすることが好ましい。ただし、最後に加減速度の変化を検出してからしばらくの間、車両100の走行状態があまり変化していないような場合は、平均走行速度の差が所定の変動幅以内であっても、上記条件を満たしたときに加減速度の変化を検出することがより好ましい。こうした加減速度の変化の検出に関する処理の切り替えは、たとえば、最後に加減速度の変化を検出してからの経過時間に基づいて行うことができる。
【0042】
ステップS40において、制御部10は、後で説明するステップS80で最後に加減速情報を記録してからの車両100の仮想累積走行距離を算出する。ここでは、最後に加減速情報を記録したときの車両100の位置を起点として、そこから車両100が一定の推定加減速度で走行し続けたと仮定した場合の起点から現在位置までの累積走行距離を、仮想累積走行距離として算出する。このときの車両100の推定加減速度は、起点通過時、すなわち最後に加減速情報を記録したときの車両100の走行速度に基づいて求めることができる。たとえば、起点通過時の車両100の走行速度と、その直後に検出された車両100の走行速度との差から、起点通過後の車両100の推定加減速度を求めることができる。なお、加減速情報の記録は、ステップS30で加減速度の変化を検出した場合、または後述のステップS60で仮想累積走行距離と実累積走行距離との差が基準値以上であると判定した場合に、ステップS80において行われる。
【0043】
ステップS50において、制御部10は、上記起点から現在位置までの車両100の実累積走行距離を算出する。ここでは、起点通過後に車速センサ13から出力された車速信号に基づいて所定周期ごとに検出された各走行速度に基づいて、所定周期ごとの車両100の走行距離を積算することにより、実累積走行距離を算出することができる。
【0044】
ステップS60において、制御部10は、ステップS40で算出された仮想累積走行距離と、ステップS50で算出された実累積走行距離との差が、予め設定された所定の基準値以上であるか否かを判定する。仮想累積走行距離と実累積走行距離との差が所定の基準値、たとえば1.5m以上である場合は、これを加減速度の変化に相当する疑似点として検出してステップS70へ進む。一方、仮想累積走行距離と実累積走行距離との差が基準値未満である場合は、ステップS90へ進む。
【0045】
ステップS70において、制御部10は、現在時刻および車両100の現在位置を検出する。ここでは、GPS受信部11により受信されたGPS信号に基づいて、現在時刻および現在位置を検出することができる。
【0046】
ステップS80において、制御部10は、ステップS10で算出した平均走行速度と、ステップS70で検出した現在時刻および現在位置とを、加減速情報としてHDD14に記録する。これにより、ステップS30で加減速度の変化が検出されたとき、またはステップS60で加減速度の変化に相当する疑似点が検出されたときの時刻と、そのときの車両100の位置および速度とが、加減速情報としてHDD14に記録される。
【0047】
ステップS90において、制御部10は、これまでに記録された加減速情報のうち未送信の加減速情報をナビゲーション装置1からサーバ装置500へ送信するか否かを判定する。この判定は、所定の送信条件を満たすか否かにより行うことができる。たとえば、前回の送信から所定時間以上経過した場合や、所定数以上の加減速情報が記録された場合に、加減速情報を送信すると判定してステップS100へ進む。一方、これらの送信条件を満たさない場合は、加減速情報を送信しないと判定してステップS10へ戻り、前述のような処理を繰り返す。
【0048】
ステップS100において、制御部10は、HDD14に記録されている未送信の加減速情報をまとめてサーバ装置500へ送信する。ここでは、未送信の加減速情報として記録されている時刻、位置および速度の組み合わせをHDD14から複数組読み出し、これらをまとめて通信端末6へ出力することで、通信端末6および移動体通信網400を介して複数の加減速情報をサーバ装置500へ送信することができる。さらにこのとき、車両100の特徴を示す情報、たとえば車種情報などを加減速情報と共に送信する。なお、ステップS100の実行後に送信済みの加減速情報をHDD14から消去してもよい。
【0049】
ステップS100を実行したら、制御部10はステップS10へ戻り、
図4のフローチャートに示す処理を繰り返し実行する。
【0050】
次に、損失・回生パラメータ算出処理について説明する。
図6は、損失・回生パラメータ算出処理のフローチャートである。サーバ装置500は、車両100、200および300に搭載されているナビゲーション装置1のいずれかより加減速情報が送信されると、それに応じて演算処理部501により、
図6のフローチャートに示す損失・回生パラメータ算出処理を実行する。なお、以下では、車両100に搭載されているナビゲーション装置1から加減速情報が送信されたものとして説明する。
【0051】
ステップS210において、演算処理部501は、ナビゲーション装置1から送信された加減速情報を受信する。この加減速情報は、
図4のステップS100が実行されることでナビゲーション装置1からサーバ装置500へ送信されたものであり、複数の加減速情報がまとめて送信される。さらにこのとき、ナビゲーション装置1から加減速情報と共に送信される前述のような車両100の特徴を示す情報、すなわち車種情報等も合わせて受信する。
【0052】
ステップS220において、演算処理部501は、ステップS210で受信した各加減速情報とリンクとの対応付けを行う。ここでは、受信した各加減速情報について、当該加減速情報に含まれる位置情報から、当該加減速情報が得られた位置、すなわち加減速度の変化が検出されたときの車両100の位置を求め、その位置に対応するリンクを特定する。さらに、こうして特定したリンクに合わせて当該加減速情報が得られた位置を必要に応じて補正することで、リンク上の位置を特定する。なお、このようなリンクの特定やリンク上の位置の特定において用いられるリンクの情報は、たとえば蓄積部502に記憶されている地図データから取得することができる。
【0053】
上記ステップS220の処理を実行することにより、演算処理部501は、受信した各加減速情報を特定のリンクとそれぞれ対応付け、その各リンク上に、受信した各加減速情報に対応する位置をそれぞれ特定することができる。
【0054】
ステップS230において、演算処理部501は、ステップS220で対応付けを行った各リンクに対して、その端点の速度をそれぞれ算出する。ここでは、各リンクの端点のそれぞれについて、受信した加減速情報に対してステップS220で各リンク上に特定された位置のうち、当該リンク端点の両側にそれぞれ隣接する2つの位置の加減速情報に含まれる速度情報に基づいて、当該リンク端点の速度を算出する。
【0055】
たとえば、当該リンク端点の両側にそれぞれ隣接する2つの位置の加速度情報に含まれる速度情報がそれぞれ表す速度をV
0、V
1とすると、当該リンク端点の速度V
tは以下の式(1)により求めることができる。なお、式(1)において、L
0、L
1は、当該リンク端点からその両隣に特定された各位置までの距離をそれぞれ表す。
【0057】
なお、ステップS220で対応付けを行った一連のリンクにおいて両端部分に位置するリンクでは、その一方の端点について、加速度情報に対して特定された位置が片側にのみ隣接して存在する。そのため、上記のような方法では、その端点に対して速度を算出することができない。したがって、こうしたリンクは以降の処理対象から除外することが好ましい。
【0058】
ステップS240において、演算処理部501は、ステップS220で加減速情報と対応付けされたリンクのうちいずれかを選択する。すなわち、各加減速情報が得られたときの車両100の位置に対応するリンクの中から、いずれかのリンクを選択する。
【0059】
ステップS250において、演算処理部501は、ステップS240で選択されたリンクにおける損失区間と回生区間をそれぞれ特定する。ここでは、ステップS220で当該リンクに対して行われた対応付けの結果に基づいて、当該リンク上で加減速情報に対して特定された各位置をそれぞれ求め、これらを分割点として用いることでリンクを複数の区間に分割する。さらに、ステップS220で当該リンクと対応付けされた加減速情報と、ステップS230で算出された当該リンクの両端点の速度とに基づいて、分割された各区間における車両100のエネルギー変化量をそれぞれ算出する。このエネルギー変化量の算出結果に基づいて、各区間がそれぞれ損失区間と回生区間のいずれに該当するかを判断することにより、損失区間および回生区間を特定する。
【0060】
ステップS250における損失区間と回生区間の判断方法について、以下に説明する。
図7は、損失区間と回生区間の判断方法を説明する図である。
図7では、算出対象のリンクの一例として、その両端点間の各位置に対応する加減速情報に含まれる速度情報が車速V
peak_1、V
peak_2、V
peak_3およびV
peak_4をそれぞれ表すと共に、両端点に対しては車速V
peak_0およびV
peak_5がそれぞれ算出されているリンクを示している。なお、各リンクには固有のリンクIDがそれぞれ設定されており、このリンクにはリンクID=nが設定されているものとする。
【0061】
図7のリンクにおいて、車両100は、V
peak_0からV
peak_1に対応する最初の区間では加速し、次のV
peak_1からV
peak_2の区間では減速し、次のV
peak_2からV
peak_3の区間では加速している。また、これに続くV
peak_3からV
peak_4の区間では減速し、最後のV
peak_4からV
peak_5の区間では加速している。
【0062】
ステップS250では、上記の各区間に対して、先ずはその水平距離L
2D_1〜L
2D_5と、走行距離L
3D_1〜L
3D_5と、上昇方向の標高差H
U_1〜H
U_5と、下降方向の標高差H
D_1〜H
D_5とをそれぞれ求める。これらの各値は、蓄積部502に記憶されている地図データに基づいて求めることができる。たとえば、地図データにおける当該リンクの水平距離をL
2Dとすると、この水平距離L
2Dを各区間の長さの比率に応じて配分することにより、各区間の水平距離L
2D_1〜L
2D_5が求められる。また、地図データにおいて当該リンク内に予め設定された各点の標高情報に基づいて、各区間の上昇方向の標高差H
U_1〜H
U_5および下降方向の標高差H
D_1〜H
D_5が求められる。こうして求められた各区間の水平距離L
2D_1〜L
2D_5、上昇方向の標高差H
U_1〜H
U_5および下降方向の標高差H
D_1〜H
D_5に基づいて、各区間の走行距離L
3D_1〜L
3D_5が求められる。なお、下降方向の標高差H
D_1〜H
D_5は、負の値として算出される。
【0063】
次に上記の各値を用いて、各区間におけるエネルギー変化量をそれぞれ求める。たとえば最初の区間に対するエネルギー変化量は、当該区間の始点における車速V
peak_0および終点における車速V
peak_1と、当該区間の水平距離L
2D_1および走行距離L
3D_1と、当該区間の上昇方向の標高差H
U_1および下降方向の標高差H
D_1とを用いて、以下の式(2)により求めることができる。
【0065】
上記の式(2)において、λ
1、λ
2、λ
3、λ
4は加速抵抗係数、勾配抵抗係数、路面抵抗係数および空気抵抗係数をそれぞれ表している。これらの各係数は、車両100の重量、形状等の特徴や重力加速度等の物理定数に応じて決まる定数であり、ステップS210で加減速情報と共に受信した車種情報等に基づいてその値が決定される。また、V
aveは当該リンクにおける平均車速を表しており、リンクごとに予め設定された値などに基づいてその値が決定される。
【0066】
なお、他の各区間に対するエネルギー変化量も、始点の車速、終点の車速、水平距離、走行距離、上昇方向の標高差および下降方向の標高差を用いて、式(2)と同様の計算を行うことにより求めることができる。
【0067】
上記のように各区間のエネルギー変化量を算出したら、最後にその各エネルギー変化量が正負いずれの値であるかを調べることにより、各区間が損失区間または回生区間のいずれであるかを判断する。すなわち、算出されたエネルギー変化量が正の値である場合、そのエネルギー変化量は、車両100が当該区間を走行したときにエネルギーが損失されたことを表している。したがってこの場合、当該区間は損失区間であると判断することができる。一方、算出されたエネルギー変化量が負の値である場合、そのエネルギー変化量は、車両100が当該区間を走行したときにエネルギーが回生されたことを表している。したがってこの場合、当該区間は回生区間であると判断することができる。こうした判断を各区間についてそれぞれ行うことにより、各区間が損失区間または回生区間のいずれであるかを判断することができる。
【0068】
ステップS250では、以上説明したような方法により、ステップS240で選択されたリンクを分割した各区間について、損失区間または回生区間のいずれであるかが判断される。たとえば、
図7に示した各区間のうち、最初の区間、4番目の区間および最後の区間が損失区間であるとそれぞれ判断され、2番目の区間および3番目の区間が回生区間であるとそれぞれ判断される。
【0069】
ステップS260において、演算処理部501は、ステップS250で特定された各損失区間での走行状態をまとめて表すための損失パラメータと、各回生区間での走行状態をまとめて表すための回生パラメータとを算出する。ここでは、ステップS250で行われた損失区間と回生区間の判断結果に基づいて、前述の
図7の例を用いて次に説明するような方法により、損失パラメータおよび回生パラメータを算出することができる。
【0070】
図7のリンクに対する損失パラメータとしての損失加速量ν
l_n(1)、損失区間水平距離L
2Dl_n(1)、損失区間走行距離L
3Dl_n(1)、損失区間UP標高差H
Ul_n(1)および損失区間DOWN標高差H
Dl_n(1)と、回生パラメータとしての回生加速量ν
r_n(1)、回生区間水平距離L
2Dr_n(1)、回生区間走行距離L
3Dr_n(1)、回生区間UP標高差H
Ur_n(1)および回生区間DOWN標高差H
Dr_n(1)とを、以下の式(3)〜(12)によりそれぞれ算出することができる。なお、損失区間DOWN標高差H
Dl_n(1)および損失区間DOWN標高差H
Dl_n(1)は、それぞれ負の値として算出される。
【0081】
ステップS260では、以上説明したようにして損失パラメータおよび回生パラメータの各値を算出することができる。
【0082】
ステップS270において、演算処理部501は、ステップS260で算出した損失パラメータおよび回生パラメータを蓄積部502に記録する。
【0083】
図8は、蓄積部502に記録される損失・回生パラメータの例を示す図である。ここでは、
図7に例示したリンクID=nのリンクについて、前述のようにして算出した損失・回生パラメータの各値を一覧表に表している。このような損失・回生パラメータの値が蓄積部502においてリンクごとに記録される。
【0084】
ステップS280において、演算処理部501は、後述の統計パラメータを更新するか否かを判定する。この判定は、所定の更新条件を満たすか否かにより行うことができる。たとえば、前回の更新から所定時間以上経過した場合や、蓄積部502において所定数以上の損失・回生パラメータが新たに記録された場合に、統計パラメータを更新すると判定してステップS290へ進む。一方、これらの更新条件を満たさない場合は、統計パラメータを更新しないと判定してステップS310へ進む。
【0085】
ステップS290において、演算処理部501は、当該リンクに対する消費電力量または回生電力量を推定するための統計パラメータを算出する。ここでは、蓄積部502に記録されている損失パラメータと回生パラメータをそれぞれ統計的に処理することにより、統計パラメータとしての統計損失パラメータおよび統計回生パラメータを算出する。
【0086】
ステップS290で統計パラメータを算出する方法を以下に説明する。
図9は、統計パラメータの算出方法を説明する図である。
図9では、リンクID=nのリンクについて、損失パラメータである損失加速量ν
l_n(1)〜ν
l_n(4)、損失区間水平距離L
2Dl_n(1)〜L
2Dl_n(4)、損失区間走行距離L
3Dl_n(1)〜L
3Dl_n(4)、損失区間UP標高差H
Ul_n(1)〜H
Ul_n(4)および損失区間DOWN標高差H
Dl_n(1)〜H
Dl_n(4)と、回生パラメータである回生加速量ν
r_n(1)〜ν
r_n(4)、回生区間水平距離L
2Dr_n(1)〜L
2Dr_n(4)、回生区間走行距離L
3Dr_n(1)〜L
3Dr_n(4)、回生区間UP標高差H
Ur_n(1)〜H
Ur_n(4)および回生区間DOWN標高差H
Dr_n(1)〜H
Dr_n(4)とが、蓄積部502において記録されている様子を示している。
【0087】
上記の各パラメータ値の統計平均を算出することにより、リンクID=nのリンクに対する統計パラメータを算出することができる。すなわち、統計損失パラメータとしての統計損失加速量ν
l_n、統計損失区間水平距離L
2Dl_n、統計損失区間走行距離L
3Dl_n、統計損失区間UP標高差H
Ul_nおよび統計損失区間DOWN標高差H
Dl_nと、統計回生パラメータとしての統計回生加速量ν
r_n、統計回生区間水平距離L
2Dr_n、統計回生区間走行距離L
3Dr_n、統計回生区間UP標高差H
Ur_nおよび統計回生区間DOWN標高差H
Dr_nとを、以下の式(13)〜(22)によりそれぞれ算出することができる。なお、統計損失区間DOWN標高差H
Dl_nおよび統計回生区間DOWN標高差H
Dr_nは、それぞれ負の値として算出される。
【0098】
ステップS290では、以上説明したようにして統計損失パラメータおよび統計回生パラメータの各値を算出することができる。なお、蓄積部502に記録されている損失・回生パラメータを所定の条件に基づいて分類し、その分類ごとに上記のような算出方法で統計損失パラメータおよび統計回生パラメータを算出してもよい。たとえば、当該損失・回生パラメータの算出に用いられた加減速情報を取得した車両の種類、時間帯、曜日などに応じて、損失・回生パラメータを分類し、その分類ごとに統計損失パラメータおよび統計回生パラメータを算出することができる。
【0099】
ステップS300において、演算処理部501は、ステップS290で算出した統計損失パラメータおよび統計回生パラメータを蓄積部502に記録する。なお、既に統計損失パラメータおよび統計回生パラメータが記録されている場合は、ステップS290の算出結果を用いてその値を更新する。
【0100】
ステップS310において、演算処理部501は、ステップS220で加減速情報と対応付けされたリンクの全てをステップS240において選択済みであるか否かをする。選択対象であるこれらのリンクの中にまだ未選択のリンクがある場合はステップS240へ戻り、未選択のリンクのいずれかをステップS240で選択した後、そのリンクに対して上述のような処理を繰り返す。一方、全ての選択対象リンクを選択済みである場合は、
図6のフローチャートに示す処理を終了する。
【0101】
次に、航続可能エリア推定処理について説明する。
図10は、航続可能エリア推定処理のフローチャートである。サーバ装置500は、車両100、200および300に搭載されているナビゲーション装置1のいずれかより、車両情報が送信されることで航続可能エリア情報の要求が行われると、それに応じて演算処理部501により、
図10のフローチャートに示す航続可能エリア推定処理を実行する。なお、以下では、車両100に搭載されているナビゲーション装置1から車両情報が送信されたものとして説明する。
【0102】
ステップS410において、演算処理部501は、ナビゲーション装置1から送信された車両情報を受信する。この車両情報には、車両100の残電力量を示す情報と、車両100の位置情報と、消費電力量に関する車両100の特徴を示す情報、たとえば車種情報等が含まれている。ナビゲーション装置1は、ユーザの操作等により航続可能エリア情報の要求を指示されると、これらの情報を取得し車両情報として送信するための処理を実行する。その結果、車両100に対応する車両情報がナビゲーション装置1から通信端末6および移動体通信網400を介してサーバ装置500へ送信される。
【0103】
ステップS420において、演算処理部501は、ステップS410で受信した車両情報に基づいて、推定対象車両の位置を特定する。ここでは、車両情報を送信したナビゲーション装置1が搭載されている車両100を推定対象車両として、その車両情報に含まれる位置情報に基づいて車両100の位置を特定する。
【0104】
ステップS430において、演算処理部501は、ステップS420で特定した推定対象車両の位置、すなわち車両100の位置に基づいて、いずれかのリンクを選択する。ここでは、推定対象車両である車両100の位置を基準として、そこから前方に存在する各リンクを近い順に一つずつ選択する。
【0105】
ステップS440において、演算処理部501は、ステップS430で選択したリンクに対する統計損失パラメータおよび統計回生パラメータを蓄積部502から読み出す。ここで読み出される統計損失パラメータおよび統計回生パラメータは、過去に実行された損失・回生パラメータ算出処理において、前述した
図6のステップS300で記録されたものである。
【0106】
ステップS450において、演算処理部501は、ステップS440で読み出した統計損失パラメータおよび統計回生パラメータに基づいて、当該リンクに対する推定消費電力量または推定回生電力量を算出する。ここでは、たとえばリンクID=nのリンクに対して、統計損失パラメータである統計損失加速量ν
l_n、統計損失区間水平距離L
2Dl_n、統計損失区間走行距離L
3Dl_n、統計損失区間UP標高差H
Ul_nおよび統計損失区間DOWN標高差H
Dl_nと、統計回生パラメータである統計回生加速量ν
r_n、統計回生区間水平距離L
2Dr_n、統計回生区間走行距離L
3Dr_n、統計回生区間UP標高差H
Ur_nおよび統計回生区間DOWN標高差H
Dr_nとに基づいて、以下の式(23)により、推定消費電力量(または推定回生電力量)E
nを算出することができる。
【0108】
上記の式(23)において、κ
1、κ
2、κ
3、κ
4は加速抵抗係数、勾配抵抗係数、路面抵抗係数および空気抵抗係数をそれぞれ表している。また、Cは電力変換係数を表し、Rは回生係数を表している。これらの各係数は、推定対象車両の重量、形状、モータ特性、スイッチング損失等の特徴や重力加速度等の物理定数に応じて決まる定数であり、ステップS410で受信した車両情報に含まれる車種情報等に基づいてその値が決定される。なお、ここでは車両100を推定対象車両としているため、上記の各係数κ
1、κ
2、κ
3、κ
4は、前述の式(2)における各係数λ
1、λ
2、λ
3、λ
4とそれぞれ等しい。
【0109】
また、上記の式(23)において、V
nは当該リンクの走行速度を表している。この走行速度V
nは、前述の式(2)で用いた平均車速V
aveと同様に、リンクごとに予め設定された値などに基づいてその値を決定することができる。あるいは、各リンクの統計損失パラメータおよび統計回生パラメータに基づいて、各リンクの走行速度を予め算出しておき、これを用いて走行速度V
nを決定するようにしてもよい。
【0110】
なお、式(23)で算出されたE
nが負の値である場合、それは推定消費電力量ではなく、推定回生電力量を表している。すなわち、当該リンクを車両100が走行すると、推定回生電力量E
nが回生発電によって得られ、それによりバッテリ3が充電されて残電力量が増加するものと推定することができる。
【0111】
ステップS450では、以上説明したようにして、選択したリンクに対する推定消費電力量または推定回生電力量を算出することができる。なお、以下の説明では、推定消費電力量と推定回生電力量を合わせて単に推定消費電力量と称することもある。
【0112】
ステップS460において、演算処理部501は、ステップS450で算出した推定消費電力量に基づいて、推定対象車両である車両100が当該リンクに到達するまでの合計推定消費電力量を求め、これが車両100の残電力量以内であるか否かを判定する。ここでは、車両100の位置から現在選択しているリンクまでの間に存在する各リンクに対して、これまでに実行されたステップS450において算出された推定消費電力量を合計することにより、車両100が当該リンクに到達するまでの合計推定消費電力量を求める。なお、前述のようにステップS430では、車両100の位置から近い順にリンクを一つずつ選択するようにしている。そのため、ステップS430で任意のリンクを選択し、そのリンクに対する推定消費電力量をステップS450で算出した時点では、車両100の位置からそのリンクまでの全リンクに対して推定消費電力量が既に算出されているはずである。したがって、これらのリンクに対する推定消費電力量を合計することで、車両100が当該リンクに到達するまでの合計推定消費電力量を求めることができる。
【0113】
上記のようにして求められた車両100が当該リンクに到達するまでの合計推定消費電力量と、ステップS410で受信した車両情報に含まれる残電力量の情報が表す残電力量とを比較することで、演算処理部501はステップS460の判定を行う。その結果、車両100が当該リンクに到達するまでの合計推定消費電力量が残電力量以内である場合はステップS430へ戻り、次のリンクを選択して前述のような処理を繰り返す。一方、車両100が当該リンクに到達するまでの合計推定消費電力量が残電力量以上である場合は、ステップS470へ進む。
【0114】
ステップS470において、演算処理部501は、ステップS430で選択したリンク方向の到達可能範囲を決定する。ここでは、たとえば、車両100の位置から、現在選択中のリンクとそのリンクに対して車両100側に隣接するリンクとの間の境界点までの範囲を、そのリンク方向の到達可能範囲として決定する。
【0115】
ステップS480において、演算処理部501は、車両100に対して全探索方向の到達可能範囲を決定済みであるか否かを判定する。すなわち、ステップS420で特定した車両100の位置を基準として、そこからリンクを辿ることが可能な全ての方向についてステップS470により到達可能範囲が決定済みであるか否かを判定する。その結果、到達可能範囲が未決定である探索方向が存在する場合はステップS430へ戻り、その探索方向にあるリンクを選択して前述のような処理を繰り返す。一方、全探索方向の到達可能範囲を決定済みである場合は、ステップS490へ進む。
【0116】
ステップS490において、演算処理部501は、ステップS470で決定された到達可能範囲に応じた航続可能エリアの形状を算出する。ここでは、到達可能範囲として決定された各方向のリンク境界点同士をリンクに沿って繋ぎ合わせることにより、航続可能エリアの形状を算出する。これにより、推定対象車両である車両100の航続可能エリアを地図上に特定することができる。
【0117】
ステップS500において、演算処理部501は、車両100の航続可能エリア情報をナビゲーション装置1へ送信する。ここでは、ステップS490で算出した航続可能エリアの形状に関する情報を航続可能エリア情報として、移動体通信網400を介してナビゲーション装置1へ送信する。たとえば、航続可能エリアの各頂点の位置情報を航続可能エリア情報として送信する。ステップS500を実行したら、
図10のフローチャートに示す処理を終了する。
【0118】
以上説明したような航続可能エリア推定処理がサーバ装置500において実行されることにより、ナビゲーション装置1からの要求に応じて、サーバ装置500からナビゲーション装置1へ航続可能エリア情報が送信される。サーバ装置500からの航続可能エリア情報を受信すると、ナビゲーション装置1はその航続可能エリア情報に基づいて、表示モニタ15において航続可能エリアを地図上に表示する。
【0119】
図11は、表示モニタ15における航続可能エリアの表示例を示す図である。この例では、地図画面上に重ねて、車両100の位置を示す自車位置マーク20と、航続可能エリア21とが表示されている。このような航続可能エリア21が表示モニタ15において表示されることにより、ユーザは現在の残電力量で車両100がどこまで航続可能であるかを地図上で容易に確認することができる。
【0120】
以上説明した実施の形態によれば、次のような作用効果を奏することができる。
【0121】
(1)車両100、200および300にそれぞれ搭載されているナビゲーション装置1は、制御部10の処理により、その車両の加減速度の変化を検出し(ステップS30)、検出した加減速度の変化に関する加減速情報をサーバ装置500へ送信する(ステップS100)。一方、サーバ装置500は、演算処理部501の処理により、これらのナビゲーション装置1からそれぞれ送信される加減速情報を受信し(ステップS210)、受信した加減速情報に基づいて、各リンクに対する統計パラメータを算出する(ステップS290)。こうして算出した各リンクの統計パラメータに基づいて、走行予定の道路に対する推定対象車両の消費電力量または回生電力量を推定する(ステップS450)。このようにしたので、車両の走行に要する消費エネルギー、すなわち消費電力量を正確に予測することができる。
【0122】
(2)制御部10は、ステップS30において、車両100が加速から減速に切り替わったとき、または減速から加速に切り替わったときに、加減速度の変化を検出するようにした。これにより、加減速度の変化を適切なタイミングで容易かつ確実に検出することができる。
【0123】
(3)制御部10は、ステップS30で加減速度の変化を最後に検出して続くステップS80で加減速情報を記録したときの車両100の位置を起点として、その起点からの車両100の実累積走行距離を算出する(ステップS50)。この実累積走行距離が所定の条件を満たす場合、それを加減速度の変化に相当する疑似点として検出する(ステップS60)。具体的には、起点から車両100が一定の加減速度で走行し続けたと仮定した場合の仮想累積走行距離を算出し(ステップS40)、これと実累積走行距離との差が所定の基準値以上である場合に、ステップS60において疑似点を検出する。このようにしたので、車両100における加減速の切替頻度が少なく、そのため加減速度の変化が長期間検出されない場合であっても、適切なタイミングで疑似点を検出して加減速情報を記録することができる。
【0124】
(4)制御部10は、ステップS30で加減速度の変化が検出されたとき、またはステップS60で加減速度の変化に相当する疑似点が検出されたときの車両100の速度、時刻および車両100の位置を含む情報を、加減速情報としてHDD14に記録し(ステップS80)、これをステップS100においてサーバ装置500へ送信する。このようにしたので、サーバ装置500が行う処理に必要な情報を加減速情報として送信することができる。
【0125】
(5)演算処理部501は、統計パラメータとして、走行時に車両100のエネルギーが損失された損失区間に対応する統計損失パラメータと、走行時に車両100のエネルギーが回生された回生区間に対応する統計回生パラメータとを、ステップS290で各リンクに対してそれぞれ算出するようにした。これにより、実際の車両の走行状況に合わせた統計パラメータを効率的に算出することができる。
【0126】
(6)サーバ装置500は、演算処理部501の処理により、車両情報を受信することで推定対象車両の残電力量を取得し(ステップS410)、この残電力量と、ステップS450で算出された推定消費電力量または推定回生電力量とに基づいて、推定対象車両である車両100の航続可能エリアを地図上に特定する(ステップS460〜S490)。こうして特定された航続可能エリアの形状に関する航続可能エリア情報をナビゲーション装置1へ送信する(ステップS500)ことで、これを外部へ出力することとした。これにより、どのリンクが航続可能エリアに対応するかを表す情報を送信する場合と比べて、送信データ量を低減することができる。
【0127】
(変形例1)なお、上記実施の形態では、車両100、200および300から送信される加減速情報をサーバ装置500が受信し、これに基づいてサーバ装置500が
図6の損失・回生パラメータ算出処理および
図10の航続可能エリア推定処理を行う車両用情報システムの例を説明した。しかし、サーバ装置500を用いずに、これらの処理を各車両に搭載されているナビゲーション装置1がそれぞれ実行するようにしてもよい。その場合、各車両のナビゲーション装置1は、HDD14に記録されている加減速情報に基づいて
図6のステップS220〜S310の処理を実行することで、統計パラメータを算出することができる。また、こうして算出された統計パラメータに基づいて
図10のステップS420〜S490の処理を実行することで、走行予定の道路に対する当該車両の消費電力量または回生電力量を推定し、それに応じた航続可能エリアを表示モニタ15において地図上に表示することができる。さらに、他車両との間で行われる車々間通信などにより、他車両の加減速情報を取得するようにしてもよい。
【0128】
(変形例2)以上説明した実施の形態では、ナビゲーション装置1は
図4のステップS50において、車両100が加速から減速に切り替わったとき、または減速から加速に切り替わったときに、加減速度の変化を検出するようにした。しかし、これ以外の方法で加減速度の変化を検出することも可能である。たとえば、ステップS40において今回と前回の平均走行速度の差を算出する代わりに、今回と前回の加減速度の変化量を算出し、これが所定量以上であるときに加減速度の変化を検出するようにしてもよい。このようにすれば、加減速の切替時に加えて、走行速度が急激に変化する変曲点などでも加減速度の変化を検出することができる。
【0129】
(変形例3)上記実施の形態では、ナビゲーション装置1は
図4のステップS50において、前回と今回の平均走行速度の差が所定の変動幅以内であるときには、加減速度の変化を検出しないようにした。この変動幅を、所定期間内における加減速度の変化の検出回数に応じて変化させるようにしてもよい。その場合、加減速度の変化の検出回数が少ない場合は変動幅を小さく変化させる一方で、加減速度の変化の検出回数が多い場合は変動幅を大きく変化させることが好ましい。このようにすれば、車両100の走行状況等に応じて加減速度の変化が検出される回数を適切に調整することができる。
【0130】
(変形例4)上記実施の形態では、ナビゲーション装置1は
図4のステップS80において、ステップS10で算出された車両100の平均走行速度を加減速情報の一部として記録し、これをステップS100においてサーバ装置500へ送信するようにしたが、平均走行速度に代えて他の情報、たとえば加減速度を送信してもよい。サーバ装置500において加減速度の変化を適切に判断できるものであれば、どのような情報を加減速情報として送信してもよい。
【0131】
(変形例5)上記実施の形態では、車載装置としてナビゲーション装置1を利用した例を説明したが、ナビゲーション装置以外の車載装置を利用してもよい。また、上記実施の形態では、走行予定の道路に対する推定消費電力量を車両の航続可能エリアの特定に利用する例を説明したが、これ以外のものに利用してもよい。たとえば、推定消費電力量に基づいて目的地までの推奨経路を探索したり、経路途中での立ち寄り地点を提案したりすることができる。
【0132】
(変形例6)上記実施の形態では、EVである車両についてその消費電力量または回生電力量を推定する例を説明したが、これ以外の車両に対して本発明を適用してもよい。たとえば、ガソリン等の燃料と電気とを併用して駆動するハイブリッド自動車(HEV)や、ガソリン等の燃料のみを用いて駆動する通常の自動車についても本発明を適用可能である。なお、回生ブレーキ等のエネルギー回生機構を有しない通常の自動車の場合は、前述の式(23)において回生係数Rを0として推定消費エネルギー量を計算すればよい。
【0133】
上記の実施形態や各変形例は任意に組み合わせて採用してもよい。また、上記実施の形態や各種の変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。