【実施例】
【0035】
以下、実施例および比較例に示される各種物性の測定方法を示す。
【0036】
(1)全光線透過率
JIS K 7361−1号に準じ、日本電色(株)製ヘーズメーター(MDH2000)を用いて積層フィルムの全光線透過率を測定した。
【0037】
(2)ヘーズ
日本電色(株)製ヘーズメーター(株)を用いてJIS K 7136号に準じて積層フィルムのヘーズを測定した。
【0038】
(3)密着性
密着性の評価はASTM D3359に準拠した。
透明導電層を有するサンプルフィルムを両面テープにてステンレス製平板に強粘着テープにて貼付固定した後、
当該サンプルフィルムにカッターナイフで1mm間隔の100個の碁盤目を作成した。続いて、ニチバン製粘着テープ(商品名“セロテープ(登録商標) No.405”)を碁盤目上に指先にてしっかりと圧着し、垂直に強く引き剥がして
サンプルフィルム上に
透明導電層が残った程度を観察し、100個の碁盤目のうち残った数を評価した。
【0039】
総合判定
総合判定は、透明導電
層の密着性が95/100以上(ASTM D3359における4B相当)であること、全光線透過率が85%以上であること、ヘーズが1%以下であることを同時に満たすものを○(優良)とし、透明導電
層の密着性が80/100以上であること、全光線透過率が80%以上であること、ヘーズが2%以下であることを同時に満たすものを△(良)とし、上記を満たさなければ×(不可)とした。
【0040】
尚、補助電極層として金属層を形成した場合は、全光線透過率およびヘーズは金属層のみを選択的にエッチングした状態で測定した。また、補助電極層として金属層を形成した場合は、JIS K 7194に従い、表面抵抗値計(三菱化学株式会社製 Loresta MCP−T610)を用いて測定し、上記総合判定を、○(優良)は、密着性が95/100以上、全光線透過率が85%以上であること、ヘーズが1%未満であること、表面抵抗値が1Ω/□であることを同時に満たすこととし、△(良)を密着性が80/100以上、全光線透過率が80%以上であること、ヘーズが2%未満であること、表面抵抗値が100Ω/□であることを同時に満たすこととし、×(可)を、上記○(優良)、および、△(良)を満たさないこととした。
【0041】
以下の実施例および比較例で得られた積層フィルムについては、上記3項目について評価し、総合判定を行い、表1、表2、表3に記載する。
【0042】
実施例1
<塗工液A>
UV硬化性樹脂として、ウレタンアクリレート(東亜合成化学製「アロニックス」M405)と、ラジカル系光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア」 184)をウレタンアクリレート100重量部に対し、ラジカル系光重合開始剤が5重量部となるようにメチルイソブチルケトン(MIBK)へ溶解し塗工液Aとした。塗工液Aの固形分はMIBK100重量部に対し、20重量部であった。
【0043】
<塗工液B>
熱硬化性樹脂として、メチロールメラミン(日本カーバイド工業製「ニカラック」MW−390)をMIBK 100重量部に対し、20重量部となるように溶解し、塗工液Bとした。
【0044】
<塗工液C>
塗工液A100重両部に対し、塗工液Bが12重量部となるように混合し、塗工液Cとした。
【0045】
<塗工液D>
塗工液A100重両部に対し、塗工液Bが12重量部となるように混合した。該塗工液にCIKナノテック社製酸化チタンナノ微粒子(一次平均粒子径30nm)を該塗工液の樹脂重量部100に対して25重量部となるように混合し、塗工液Dとした。
【0046】
<混合ハードコート層1の形成>
厚さ100μmのポリカーボネートフィルム(帝人化成株式会社製「ピュアエース」C110)の片面に塗工液Cをバーコート法により塗工し、60℃で1分間乾燥した後、紫外線を積算光量220 mJ/cm
2照射して硬化させることにより、厚さ3μmの混合ハードコート層1を形成した。
【0047】
<混合ハードコート層2の形成>
上記ハードコート層の上に塗工液Dをバーコート法により塗工し、60℃で1分間乾燥した後、紫外線を照射して硬化させることにより厚さ0.1μmの混合ハードコート層2を形成した。
【0048】
<熱硬化性樹脂の反応>
得られた積層フィルムを130℃で2分熱処理することにより、メラミン樹脂の反応を完了させた。
【0049】
<透明導電層の形成>
次いでハードコート層を形成した面上に、酸化インジウムと酸化錫の質量比が95:5の組成で充填密度が98%の酸化インジウム−酸化錫ターゲットを用いて、スパッタリング法により非晶質の透明導電層(ITO層)を形成した。ITO層の厚さは約20nm、表面抵抗値は約150Ω/□であった。
【0050】
実施例2
実施例1の塗工液Cにおいて、塗工液Aと塗工液Bの混合比を100重量部:22重量部にした。また、実施例1の塗工液Dにおいて塗工液Aと塗工液Bの混合比を100重量部:22重量部にした。そのほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0051】
実施例3
実施例1の塗工液Cにおいて、塗工液Aと塗工液Bの混合比を100重量部:28重量部にした。また、実施例1の塗工液Dにおいて塗工液Aと塗工液Bの混合比を100重量部:28重量部にした。そのほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0052】
実施例4
実施例1の塗工液Dにおいて、混合比を100重量部:28重量部にしたほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0053】
実施例5
実施例1の塗工液Cにおいて、塗工液Aと塗工液Bの混合比を100重量部:28重量部にした。そのほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0054】
実施例6
実施例2の透明導電層の上に補助電極として純度99.95%の銅をスパッタリング法によって厚さ5nmとなるように積層した。このときの表面抵抗値は約0.8Ω/□であった。
【0055】
実施例7
実施例5の透明導電層の上に補助電極として純度99.95%の銅をスパッタリング法によって厚さ5nmとなるように積層した。このときの表面抵抗値を測定したところ約0.7Ω/□であった。
【0056】
実施例8
実施例2の透明導電層の上に補助電極として純度99.95%のアルミニウムをスパッタリング法によって厚さ5nmとなるように積層した。このときの表面抵抗値を測定したところ約0.7Ω/□であった。
【0057】
実施例9
実施例2の透明導電層の上に純度99.95%のモリブデンをスパッタリング法によって厚さ70nmとなるように積層した。当該モリブデン層の上に純度99.95%のアルミニウムをスパッタリング法により150nmとなるように積層し、さらに当該アルミニウム層の上にスパッタリング法により70nmとなるように積層し、補助電極層を形成した。このときの表面抵抗値を測定したところ約0.5Ω/□であった。
【0058】
実施例10
実施例2の透明導電層の上に、銅−マンガン−ニッケル合金(それぞれの配合比が、86wt%、12wt%、12wt%のもの)をスパッタリング法により積層し、補助電極層とした。このときの表面抵抗値を測定したところ約6.5Ω/□であった。
【0059】
以上の実施例の評価を表1に示す。表1から明らかなように本発明の範囲内では良好な密着性および光学特性を示す。また、補助電極層として金属層を積層したばあいにおいても良好な密着性および光学特性を示す。
【0060】
【表1】
【0061】
比較例1
実施例1において、混合ハードコート層1を塗工液Aのみのハードコート層に変更した。また、塗工液Aと、CIKナノテック社製酸化チタンナノ微粒子(一次平均粒子径30nm)を、塗工液Aの樹脂重量部100に対して25重量部となるように混合し、混合ハードコート層2とした。そのほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0062】
比較例2
実施例1において、混合ハードコート層2を形成しなかったほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0063】
比較例3
実施例1の塗工液Cにおいて、塗工液Aと塗工液Bの混合比を100重量部:8重量部にした。また、実施例1の塗工液Dにおいて塗工液Aと塗工液Bの混合比を100重量部:8重量部にした。そのほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0064】
比較例4
実施例1の塗工液Cにおいて、塗工液Aと塗工液Bの混合比を100重量部:8重量部にした。また、実施例1の塗工液Dにおいて塗工液Aと塗工液Bの混合比を100重量部:8重量部にした。そのほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得た。その後、透明導電層の上に補助電極として純度99.95%の銅をスパッタリング法によって厚さ5nmとなるように積層した。このときの表面抵抗値を測定したところ約0.7Ω/□であった。
【0065】
比較例5
実施例1の塗工液Cにおいて、塗工液Aと塗工液Bの混合比を100重量部:28重量部にした。また、実施例1の塗工液Dにおいて塗工液Aと塗工液Bの混合比を100重量部:8重量部にした。そのほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得た。その後、透明導電層の上に補助電極として純度99.95%の銅をスパッタリング法によって厚さ5nmとなるように積層した。このときの表面抵抗値を測定したところ約0.7Ω/□であった。
【0066】
比較例6
実施例1の塗工液Cにおいて、塗工液Aと塗工液Bの混合比を100重量部:28重量部にした。また、実施例1の塗工液Dにおいて塗工液Aと塗工液Bの混合比を100重量部:8重量部にした。そのほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得た。その後、透明導電層の上に補助電極として純度99.95%のアルミニウムをスパッタリング法によって厚さ5nmとなるように積層した。このときの表面抵抗値を測定したところ約0.7Ω/□であった。
【0067】
比較例7
実施例1の塗工液Cにおいて、塗工液Aと塗工液Bの混合比を100重量部:33重量部にした。混合ハードコート層1を形成するためにUVを照射したが、硬化が十分ではなく積層体をえることが出来なかった。
【0068】
比較例1から比較例7までの評価を表2に示す。混合ハードコート層1および混合ハードコート層2におけるUV硬化樹脂と熱硬化樹脂の比率が、本発明の範囲よりも小さい場合には、密着性が悪くなる。また、混合ハードコート層1におけるUV硬化樹脂と熱硬化樹脂の比率が、本発明の範囲よりも多きい場合には、そもそも積層体を得ることが出来ない。
【0069】
【表2】
【0070】
以下の実施例11〜15、および、比較例8、9、10は実施例1〜10のUV硬化性樹脂および/ないしは熱硬化性樹脂を変更した場合であり、評価結果は表3に記載する。
【0071】
実施例11
実施例1と同様にして塗工液Aを調整した。
【0072】
<塗工液E>
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシラン(信越化学工業社製「KBM403」)とメチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM13」)を1:1のモル比で混合し、酢酸水溶液(ph=3.0)により公知の方法で前記アルコキシシランの加水分解を行った。こうして得たアルコキシシランの加水分解物に対して、イソプロピルアルコールとn−ブタノールの混合溶液で希釈を行い、アルコキシシラン塗工液Eを作製した。このとき、固形分が溶媒100重量部に対して、20重量部となるように調整した。
【0073】
<塗工液F>
塗工液A100重両部に対し、塗工液Eが12重量部となるように混合し、塗工液Fとした。
【0074】
<塗工液G>
塗工液A100重両部に対し、塗工液Eが12重量部となるように混合した。該塗工液にCIKナノテック社製酸化チタンナノ微粒子(一次平均粒子径30nm)を該塗工液の樹脂重量部100に対して25重量部となるように混合し、塗工液Gとした。
【0075】
<混合ハードコート層1の形成>
厚さ100μmのポリカーボネートフィルム(帝人化成株式会社製「ピュアエース」C110)の片面に塗工液Fをバーコート法により塗工し、60℃で1分間乾燥した後、紫外線を積算光量220 mJ/cm
2照射して硬化させることにより、厚さ3μmの混合ハードコート層1を形成した。
【0076】
<混合ハードコート層2の形成>
上記ハードコート層の上に塗工液Gをバーコート法により塗工し、60℃で1分間乾燥した後、紫外線を照射して硬化させることにより厚さ0.1μmの混合ハードコート層2を形成した。
【0077】
<透明導電層の形成>
次いでハードコート層を形成した面上に、酸化インジウムと酸化錫の質量比が95:5の組成で充填密度が98%の酸化インジウム−酸化錫ターゲットを用いて、スパッタリング法により非晶質の透明導電層(ITO層)を形成した。ITO層の厚さは約20nm、表面抵抗値は約150Ω/□であった。
【0078】
実施例12
実施例9の塗工液Fにおいて、塗工液Aと塗工液Eの混合比を100重量部:22重量部にした。また、実施例9の塗工液Gにおいて塗工液Aと塗工液Eの混合比を100重量部:22重量部にした。そのほかは実施例9と同様にして積層フィルムを得た。その後、透明導電層の上に補助電極として純度99.95%の銅をスパッタリング法によって厚さ5nmとなるように積層した。このときの表面抵抗値を測定したところ約0.8Ω/□であった。
【0079】
実施例13
実施例9の塗工液Fにおいて、塗工液Aと塗工液Eの混合比を100重量部:28重量部にした。また、実施例9の塗工液Gにおいて塗工液Aと塗工液Eの混合比を100重量部:28重量部にした。そのほかは実施例9と同様にして積層フィルムを得た。その後、透明導電層の上に補助電極として純度99.95%のアルミニウムをスパッタリング法によって厚さ5nmとなるように積層した。このときの表面抵抗値を測定したところ約0.8Ω/□であった。
【0080】
実施例14
実施例1の塗工液Dにおいて、熱硬化性樹脂をエポキシ樹脂(熱重合性化合物)(三菱化学株式会社製 JER825)に変更し、重合開始剤として前記エポキシ樹脂100重量部に対して、三菱化学株式会社製 JERキュア ST11を5重量部加えたほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得た。その後、透明導電層の上に補助電極として純度99.95%の銅をスパッタリング法によって厚さ5nmとなるように積層した。このときの表面抵抗値を測定したところ約0.8Ω/□であった。
【0081】
実施例15
実施例1の塗工液Aにおいて、UV硬化性樹脂をエポキシ樹脂(光重合性化合物)(アデカ社製 アデカレジンEP−4100)に変更し、ラジカル系光重合開始剤を光カチオン重合開始剤(商品名「アデカオプトマーSP−170、アデカ社製」)に変更したほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得た。その後、透明導電層の上に補助電極として純度99.95%の銅をスパッタリング法によって厚さ5nmとなるように積層した。このときの表面抵抗値を測定したところ約0.8Ω/□であった。
【0082】
比較例8
実施例9の塗工液Fにおいて、塗工液Aと塗工液Eの混合比を100重量部:28重量部にした。また、実施例9の塗工液Gにおいて塗工液Aと塗工液Eの混合比を100重量部:8重量部にした。そのほかは実施例9と同様にして積層フィルムを得た。その後、透明導電層の上に補助電極として純度99.95%の銅をスパッタリング法によって厚さ5nmとなるように積層した。
【0083】
比較例9
実施例9の塗工液Fにおいて、塗工液Aと塗工液Eの混合比を100重量部:28重量部にした。また、実施例9の塗工液Gにおいて塗工液Aと塗工液Eの混合比を100重量部:8重量部にした。そのほかは実施例9と同様にして積層フィルムを得た。その後、透明導電層の上に補助電極として純度99.95%のアルミニウムをスパッタリング法によって厚さ5nmとなるように積層した。
【0084】
比較例10
実施例9の塗工液Fにおいて、塗工液Aと塗工液Bの混合比を100重量部:33重量部にした。混合ハードコート層1を形成するためにUVを照射したが、硬化が十分ではなく積層体をえることが出来なかった。
【0085】
表3から明らかなように、混合ハードコート層1および2におけるUV硬化性樹脂がカチオン重合性樹脂の場合は、ラジカル重合性樹脂と比較して密着性が若干劣る。一方で、熱硬化性樹脂がメラミンおよびアルコキシシラン以外では密着性が低下する。
【0086】
【表3】