特許第5926592号(P5926592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926592
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】パターニング用レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/08 20140101AFI20160516BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20160516BHJP
   B23K 26/36 20140101ALI20160516BHJP
【FI】
   B23K26/08 F
   B23K26/00 H
   B23K26/36
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-72415(P2012-72415)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-202635(P2013-202635A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 睦裕
(72)【発明者】
【氏名】高原 一典
(72)【発明者】
【氏名】大串 修己
【審査官】 水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−000632(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/017571(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/08
B23K 26/00
B23K 26/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに形成された薄膜層にレーザビームで複数本の加工ラインを形成するパターニング用レーザ加工装置であって、
前記ワークを所定の送り速度で一方向に送る定速送り装置と、
前記定速送り装置でワークを所定速度で送りながら又はワークの送り速度を検出して送りながら、前記ワークの送り方向と交差する方向に照射開始側から照射終了側に向けて1本のレーザビームをワークの薄膜層に対して走査する複数のビームヘッドを有するビームヘッドユニットと、
前記ビームヘッドにレーザビームを照射するレーザ発振器と、
前記ビームヘッドから照射するレーザビームの走査速度と前記ワークの送り速度とを相対的に制御して所定速度で送るワークに形成する加工ラインを制御する制御装置と、を備え、
前記複数のビームヘッドが、第1のビームヘッドおよび第2のビームヘッドを含み、
前記ビームヘッドユニットは、前記第1のビームヘッドおよび前記第2のビームヘッドのうちの一方を前記照射開始側から前記照射終了側へ移動させる間に、当該一方のビームヘッドによって前記複数本の加工ラインのうち1本の加工ラインを形成し、かつ、前記第1のビームヘッドおよび前記第2のビームヘッドのうちの他方をレーザ加工することなく前記照射終了側から前記照射開始側へと戻すように構成され、
前記制御装置は、前記加工ラインを形成するビームヘッドを切替えて、前記第1のビームヘッドと前記第2のビームヘッドとで前記複数本の加工ライン交互に1本ずつ形成するように構成されていることを特徴とするパターニング用レーザ加工装置。
【請求項2】
前記レーザ発振器から照射されるレーザビームを前記複数のビームヘッドのいずれに照射するかを切替る切替器を有し、
前記ビームヘッドユニットは往復動作式で構成され、
前記制御装置は、前記切替器を切替えてレーザ加工を行うビームヘッドにレーザビームを照射するように構成されている請求項1に記載のパターニング用レーザ加工装置。
【請求項3】
ワークに形成された薄膜層にレーザビームで加工ラインを形成するパターニング用レーザ加工装置であって、
前記ワークを所定の送り速度で一方向に送る定速送り装置と、
前記定速送り装置でワークを所定速度で送りながら又はワークの送り速度を検出して送りながら、前記ワークの送り方向と交差する方向に照射開始側から照射終了側に向けて1本のレーザビームをワークの薄膜層に対して走査する複数のビームヘッドを有するビームヘッドユニットと、
前記ビームヘッドにレーザビームを照射するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器から照射されるレーザビームが前記ビームヘッドに照射されるのを遮断する遮断器
前記ビームヘッドから照射するレーザビームの走査速度と前記ワークの送り速度とを相対的に制御して所定速度で送るワークに形成する加工ラインを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記加工ラインを加工するビームヘッドを切替えて前記加工ラインを同時又は交互に加工するように構成され、
前記ビームヘッドユニットは、少なくとも1つのビームヘッドが照射開始側から照射終了側に向けて移動してレーザ加工をしている間に少なくとも1つのビームヘッドを前記照射開始側に戻す循環式で構成され、
前記制御装置は、前記遮断器を制御してレーザ加工を行うビームヘッドにレーザビームを照射するように構成されていパターニング用レーザ加工装置。
【請求項4】
前記ビームヘッドユニットは、前記複数のビームヘッドを水平方向又は垂直方向に循環させる循環機構を有している請求項3に記載のパターニング用レーザ加工装置。
【請求項5】
前記ビームヘッドユニットは、前記複数のビームヘッドに照射するレーザビームの光路長一定機構を具備している請求項2又は3に記載のパターニング用レーザ加工装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記複数のビームヘッドの配置と、レーザ加工する1つのビームヘッドと、ワークの送り速度と、からワークに対する送り方向の走査位置を決定するように構成されている請求項5に記載のパターニング用レーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜系の太陽電池やフレキシブル太陽電池等の製造工程におけるパターニングに用いられるレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電のための太陽電池として、例えば、薄膜シリコンやCIGS太陽電池(この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、総称して「薄膜太陽電池」という)がある。この薄膜太陽電池は、ガラス基板の片面に金属膜やシリコン膜などの半導体を成膜(「deposition」又は「film formation」)して薄膜層(例えば、数百nm〜数十μm程度)を形成し、その薄膜層にパターニング加工が施されたものが用いられる。以下、この薄膜太陽電池の基板(以下、単に「ワーク」ともいう)を例に説明する。
【0003】
薄膜太陽電池の基板の製造工程としては、例えば、図8A図8Gに示すように、ガラス基板110(図8A)の上面に透明電極層(薄膜層)111を成膜し(図8B)、その透明電極層111にレーザ加工装置からレーザビーム115を照射することで、透明電極層111を部分的に除去して直線状の加工ライン112Aがパターニング加工される(図8C)。透明電極層111に加工ライン112Aが形成された基板110は、透明電極層111の上面に光電変換層(薄膜層)113が成膜され(図8D)、その光電変換層113にレーザ加工装置からレーザビーム115を照射して加工ライン112Bがパターニング加工される(図8E)。その後、この光電変換層113に加工ライン112Bが形成された基板110は、光電変換層113の上面に裏面電極層(薄膜層)114が成膜される(図8F)。そして、この裏面電極層114に、レーザ加工装置からレーザビーム115を照射して加工ライン112Cがパターニング加工される(図8G)。このようパターニング加工された基板110が、モジュール化された太陽電池となる。
【0004】
この種のレーザ加工装置100として、例えば、図9に示すように、レーザ発振器101からのレーザビーム102(以下、単に「ビーム」ともいう)をビーム分光器103で複数に分光し、それらのビームを導光ミラー104でワーク106に向けて方向変換する。そして、ビーム集光レンズ105でそのビーム102の焦点距離をワーク106の薄膜層107に合わせて照射することで、薄膜層107を剥がして加工ライン108を形成するものがある。
【0005】
このレーザ加工装置100によるパターニング加工は、ワーク送り装置109のテーブルにワーク106を固定し、そのワーク106をX方向に送り、そのワーク106に対してレーザビーム102を照射して加工ライン108を形成する。その後、ワーク106をY方向に所定量(加工ラインピッチ分)送った後、そのワーク106を上記送りと逆向きでX方向に送り、そのワーク106に対してレーザビーム102を照射して加工ライン108を形成する。そして、この作業を繰り返すことにより、ワーク106に順次加工ライン108が形成される。つまり、ワーク106は、X方向に送って加工ライン108を形成する作業と、Y方向に送られる作業とが間欠的に繰り返される。
【0006】
なお、この種の先行技術として、例えば、レーザ発振器から出射したレーザビームをミラーで分光し、それらのレーザビームを集光レンズを介して太陽電池の薄膜層に照射することで加工ラインを形成するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、他の先行技術として、シリンドリカルレンズで横断面細線状のレーザビームを生成し、この細線状のレーザビームにより一部が重なった状態で重ねて細線状の加工痕を形成することで基板の搬送速度を速くして、これによってレーザ加工のタクトを短縮しようとしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−170455号公報
【特許文献2】特開2010−221274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年、自然エネルギによる発電が更に注目され、太陽電池の生産性の向上等による低コスト化によって更なる促進を図ろうとする動きがある。そのため、太陽電池の生産工程における更なるタクト(1工程当たりの作業時間)の短縮化(高速化)が求められている。
【0010】
しかしながら、上記したように、ワーク106の全面をワーク送り装置109のテーブルに固定してレーザ加工を行う場合、ワーク106を搬送方向に何回も往復させて加工を行うため、1枚のワーク106を加工し終わるまで次工程に移送することができず、加工に多くの時間を要して効率が悪い。
【0011】
また、レーザ発振器101からのレーザビーム102を分光して振分けした複数のビーム102で加工するため、各ビーム品質にバラツキを生じ易く加工品質が安定しない。仮に、複数のレーザ発振器101を搭載して安定した複数のビームを使用できるようにしようとすると、大きなスペースが必要になるとともに、レーザ加工装置100が高コストになる。
【0012】
そのため、このようなレーザ加工装置100における加工時間の長さや高コスト等が、太陽電池の低コスト化の妨げになっている。なお、上記特許文献1に記載の発明も同様の課題を有する。
【0013】
さらに、上記特許文献2に記載の先行技術による加工時間の短縮化はビームの加工方向長さによるものであるため、短縮できる時間は限られており、さらなる加工時間の短縮による加工効率の向上が望まれる。
【0014】
そこで、本発明は、所定速度でワークを送りながら、そのワークの薄膜層に加工ラインを高効率で形成できるパターニング用レーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は、ワークに形成された薄膜層にレーザビームで加工ラインを形成するパターニング用レーザ加工装置であって、前記ワークを所定の送り速度で一方向に送る定速送り装置と、前記定速送り装置でワークを所定速度で送りながら又はワークの送り速度を検出して送りながら、前記ワークの送り方向と交差する方向に照射開始側から照射終了側に向けて1本のレーザビームをワークの薄膜層に対して走査する複数のビームヘッドを有するビームヘッドユニットと、前記ビームヘッドにレーザビームを照射するレーザ発振器と、前記ビームヘッドから照射するレーザビームの走査速度と前記ワークの送り速度とを相対的に制御して所定速度で送るワークに形成する加工ラインを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記加工ラインを加工するビームヘッドを切替えて前記加工ラインを同時又は交互に加工するように構成されている。
【0016】
この構成により、ワークを正確な位置で支持して送りながらビームヘッドユニットから1本のレーザビームをワークの薄膜層に対して走査して、ワークの送り方向に対して交差する方向に加工ラインを形成することができるので、ワークの薄膜層に加工ラインを高効率で加工することが可能となる。しかも、複数のビームヘッドを切替えることで、ほぼ連続的に効率良くレーザビームを照射して加工ラインを形成するので、太陽電池の生産工程における更なるタクトの短縮化を図って生産効率の向上を図ることができる。その上、ワークの速度を検出してフィードバック制御し、レーザビームの走査タイミングを調整する方式を用いることで、ロール・ツー・ロール製法等、連続的に流れるワークに対応することもできる。
【0017】
また、前記レーザ発振器から照射されるレーザビームを前記複数のビームヘッドのいずれに照射するかを切替る切替器を有し、前記ビームヘッドユニットは、少なくとも1つのビームヘッドが照射開始側から照射終了側に向けて移動してレーザ加工をしている間に少なくとも1つのビームヘッドを前記照射開始側に戻す往復動作式で構成され、前記制御装置は、前記切替器を切替えてレーザ加工を行うビームヘッドにレーザビームを照射するように構成されていてもよい。
【0018】
このように構成すれば、1つのビームヘッドによるレーザ加工動作中に他のビームヘッドを照射開始側に戻すので、レーザ加工が途切れる時間を非常に少なくして加工時間のタクト短縮を図ることができる。
【0019】
また、前記レーザ発振器から照射されるレーザビームが前記ビームヘッドに照射されるのを遮断する遮断器を有し、前記ビームヘッドユニットは、少なくとも1つのビームヘッドが照射開始側から照射終了側に向けて移動してレーザ加工をしている間に少なくとも1つのビームヘッドを前記照射開始側に戻す循環式で構成され、前記制御装置は、前記遮断器を制御してレーザ加工を行うビームヘッドにレーザビームを照射するように構成されていてもよい。
【0020】
このように構成すれば、1つのビームヘッドによるレーザ加工動作中に他のビームヘッドを照射開始側に戻すので、レーザ加工が途切れる時間を非常に少なくして加工時間のタクト短縮を図ることができる。
【0021】
また、前記ビームヘッドユニットは、前記複数のビームヘッドを水平方向又は垂直方向に循環させる循環機構を有していてもよい。
【0022】
このように構成すれば、使用条件等に応じて、ビームヘッドを水平方向又は垂直方向に循環させて、一つのビームヘッドで照射開始側から照射終了側に向けてレーザ加工を行いながら、他のビームヘッドを照射終了側から照射開始側に向けて戻すので、レーザ加工をほぼ連続的に行うことができ、レーザ加工のタクトを短縮した効率のよいレーザ加工ができる。
【0023】
また、前記ビームヘッドユニットは、前記複数のビームヘッドに照射するレーザビームの光路長一定機構を具備していてもよい。
【0024】
このように構成すれば、照射開始側から照射終了側に向けて移動させるビームヘッドからワークに照射されるレーザビームの強度を一定にすることができる。
【0025】
また、前記制御装置は、前記複数のビームヘッドの配置と、レーザ加工する1つのビームヘッドと、ワークの送り速度と、からワークに対する送り方向の走査位置を決定するように構成されていてもよい。
【0026】
このように構成すれば、複数のビームヘッドによるワークに対する走査位置を予め制御装置で決定するので、複数のビームヘッドによってワークに対して正確なパターニング加工ができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、所定速度でワークを送りながら、そのワークに1本のレーザビームでワークの送り方向に対して交差する加工ラインをほぼ連続的に効率良く加工することができるので、パターニング加工を大幅に高速化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係るレーザ加工装置を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示すレーザ加工装置による加工ラインを模式的に示す平面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るレーザ加工装置の構成を示す平面図である。
図4図3に示すレーザ加工装置の側面図である。
図5図3に示すレーザ加工装置に具備させた光路長一定装置の概略図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るレーザ加工装置の構成を示す斜視図である。
図7】本発明の第3実施形態に係るレーザ加工装置の構成を示す斜視図である。
図8A】レーザ加工装置による薄膜太陽電池の製造手順を示す側断面図である。
図8B図8Aに続く薄膜太陽電池の製造手順を示す側断面図である。
図8C図8Bに続く薄膜太陽電池の製造手順を示す側断面図である。
図8D図8Cに続く薄膜太陽電池の製造手順を示す側断面図である。
図8E図8Dに続く薄膜太陽電池の製造手順を示す側断面図である。
図8F図8Eに続く薄膜太陽電池の製造手順を示す側断面図である。
図8G図8Fに続く薄膜太陽電池の製造手順を示す側断面図である。
図9】従来のレーザ加工装置を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、ガラス基板7に薄膜層6が形成されたワーク5を例に説明する。
【0030】
図1に示すように、この実施形態のレーザ加工装置1は、ワーク5の加工基準位置(端面等)を検出するカメラ2と、位置検出したワーク5を送り方向(Y方向、以下「Y」で示す)に正確に送る定速送り装置3とを備えている。この実施形態の定速送り装置3は、ワークチャック4でワーク5を把持してワーク支持機構8のローラ9上を送るワークチャック台車方式となっている。
【0031】
この定速送り装置3は、ワークチャック4に平面方向の回転軸(θ軸)及び必要な場合には、X軸(送り方向と交差方向)・Y軸(送り方向と平行方向)の駆動軸を設け、定速送り装置3の送りと同期させて、ワーク5に生じる捻りを抑制する方向に補正しながら加工できるようになっている。この定速送り装置3としては、例えば、コンベア方式、駆動ローラコンベア方式等、他の構成であってもよい。また、この実施形態では、定速送り装置3で送られるワーク5は、薄膜層6を上面とした状態でガラス基板7を下方から支持した状態で送られる。さらに、上記ワーク支持機構8としては、上記ローラ9以外に、例えば、フリーベアリング、非接触エアー吸着ユニット(ワーク5を下方からエアーによって引き付ける引付機構等)などが用いられる。
【0032】
そして、上記定速送り装置3で送られるワーク5の送り方向所定位置には、送られるワーク5に対してパターニング加工を行うビームヘッドユニット20が設けられている。ビームヘッドユニット20は、ワーク5の送り方向Yと交差する走査方向(X方向、以下「X」で示す)にレーザビーム70を走査するように配置されている。図示する左側が照射開始側Sであり、右側が照射終了側Eである。このようにビームヘッドユニット20を所定位置に配置し、このビームヘッドユニット20からレーザビーム70を正確に照射している。これにより、上記定速送り装置3によって正確に送られるワーク5に対して精度よく加工ライン(スクライブ線)11が形成できるようにしている。これら定速送り装置3によるワーク5の送りや、レーザビーム70の照射は、制御装置60によって制御されている。
【0033】
ビームヘッドユニット20には、レーザ発振器21から照射されたレーザビーム70を曲げてワーク5に向けて照射することでパターニング加工を行う複数のビームヘッド(図3,4,6,7)22,23が備えられている。このビームヘッドユニット20からワーク5に向けて照射されるレーザビーム70は、レーザ発振器21から照射された1本のレーザビーム70をワーク5に向けて照射するようになっている。ビームヘッドユニット20の詳細は、後述する。
【0034】
なお、上記ビームヘッドユニット20が設けられた加工部10には、定速送り装置3で送られるワーク5を正確な位置(レベル)に支持して送るワーク位置保持機構(図示略)が備えられる。このワーク位置保持機構としては、例えば、ワーク5を上方から非接触で押付けるエアブローや、押し付けローラ等で押し付けるワーク押付機構等が採用される。このワーク押付機構と、上記ワーク支持機構8のローラ9によって、ビームヘッドユニット20の部分でワーク5が正確な位置で送られる。これらのワーク押付機構及びワーク支持機構8は公知の技術を採用することができる。
【0035】
このように、ワーク5の下方にワーク支持機構8を設け、上方にワーク押付機構(図示略)を設けることで、加工部10において送り方向Yに送られるワーク5の上下方向位置(レベル)が変動しないようにすれば、ワーク5を送りながら加工ライン11を加工するレーザビーム70の焦点がズレないようにできる。
【0036】
なお、上記ワーク5の上方に、加工ライン11の形成時に除去された薄膜や蒸散物を吸引する吸引ダクト(図示略)を設ければ、除去された薄膜や蒸散物が薄膜層6等に再付着しないようにできる。
【0037】
一方、図2に示すように、上記レーザ加工装置1によるワーク5をワーク送り方向Yに送りながレーザビーム70を照射して行うパターニング加工は、レーザ走査位置は固定としている。そして、レーザビーム70を一定間隔時間で照射開始側Sから照射終了側Eに向けて走査方向Xに走査し、このレーザビーム70によって所定速度で送られるワーク5に対してパターニング加工を行うようにしている。
【0038】
この場合、レーザビーム走査方向Xとワーク送り方向Yとの合成速度による加工ライン11が送り方向Yに対して直角となるように、ワーク5の送り速度とレーザビーム70の走査速度とが相対的に制御装置60で制御される。
【0039】
具体的には、ワーク5の送り速度を「送り速度VY」、地面から見た走査方向を「対地走査方向XG」、地面に対する走査速度を「対地走査速度VXG」、ワーク5の幅方向である走査方向を「相対走査方向XW」、ワーク5の幅方向に走査する速度を「相対走査速度VXW」とし、水平面内での対地走査方向XGと相対走査方向XWとが成す角度を「傾斜角φ」とする。そして、送り速度VYを対地走査速度VXGで除算すれば、傾斜角φの正弦を得ることができる(sinφ=VY/VXG)。また、対地走査速度VXGに傾斜角φの余弦を乗算すれば、相対走査速度VXWを得ることができる(VXW=VXG×cosφ)。さらに、ワーク5送り方向における加工ライン11同士の間隔LYを、ワーク5の幅方向における加工ライン11の長さLXで除算すれば、傾斜角φの正弦として得ることができる(tanφ=LY/LX)。
【0040】
従って、このような関係から所定の送り速度VYで送るワーク5に対して対地走査速度VXGで対地走査方向XGにレーザビーム70を走査すれば、ワーク5に対しては相対走査方向XWに、平行な加工ライン11を所定間隔LYで連続的に形成することができる。これらワーク送り速度VYとレーザビーム走査速度VXGとの相対的な制御は、制御装置60(図1)によって行われる。
【0041】
そして、このような加工をレーザ加工装置1で連続的に行うことにより、送り方向Yにワーク5を1回送ることでパターニング加工が完了する。また、ワーク5を一方向に1回送ることでパターニング加工が完了するので、所定長さのワーク5の加工だけではなく、ロール・ツー・ロール方式のような連続体のワークに対してもパターニング加工が可能となる。
【0042】
なお、上記レーザビーム70としては、扁平ビーム(ラインビーム等を含む)を用いることで、加工ライン11をより高速で加工することができる。扁平ビームとしては、加工ライン11がワーク送り方向Yに対して直角となるように扁平ビームの方向が制御されて照射される。
【0043】
次に、図3,4に基づいて、第1実施形態に係るレーザ加工装置の構成を説明する。なお、上記図1に示す構成と同一の構成には同一符号を付して説明する。
【0044】
このレーザ加工装置30は、複数のビームヘッド22,23を照射開始側Sと照射終了側Eとの間で往復させる往復動作式の例である。この実施形態では2つのビームヘッド22,23が備えられ、これら第1ビームヘッド22と第2ビームヘッド23とを逆方向に往復動作させるパラレル方式としている。
【0045】
図示するように、定速送り装置3で搬送されるワーク5の上方に、このワーク5の送り方向Yと交差する走査方向Xに延びるレール31が設けられている。このレール31の両側には、上記第1ビームヘッド22と第2ビームヘッド23とがそれぞれ照射開始側Sと照射終了側Eとの間で往復移動するように設けられている。このビームヘッド22,23を往復移動させる構成としては、例えば、レール31に沿って設けられたリニアガイド(図示略)に案内されるようにし、駆動モータ等で照射開始側Sと照射終了側Eとの間を往復動させるような等速駆動機構等を採用することができる。このビームヘッド22,23を往復移動させる構成としては、他の構成であってもよい。
【0046】
また、上記レール31の照射開始側Sに上記レーザ発振器21が設けられている。このレーザ発振器21は、ビームヘッド22,23の移動方向と平行にレーザビーム70を照射するように配置されている。このレーザ発振器21から照射されたレーザビーム70は、第1ベンドミラー24によって直交方向に曲げられる。この曲げられたレーザビーム70は、第2ベンドミラー25又は26によって直交方向に曲げられて、上記ビームヘッド22,23に照射される。
【0047】
図4に示すように、この実施形態の上記第1ベンドミラー24は、上下方向に2枚のベンドミラー24A,24Bが配置されている。一方のベンドミラー24Aは、レーザビーム70を一方の第2ベンドミラー25に向けて正確に曲げるように配置されている。他方のベンドミラー24Bは、レーザビーム70を他方の第2ベンドミラー26に向けて正確に曲げるように配置されている。
【0048】
そして、これらのベンドミラー24A,24Bは、一体的に上下方向に移動させられて切替え可能となっている。これらのベンドミラー24A,24Bを一体的に上下動させる構成(例えば、流体圧シリンダ等)が切替器29である。この第1ベンドミラー24の切替えは、上記制御装置60(図1)によって制御される。
【0049】
なお、この実施形態では2つのベンドミラー24A,24Bを設けて切替えるようにしているが、1枚のベンドミラー24を角度制御して、レーザビーム70を正確に第2ベンドミラー25,26のそれぞれに向けて曲げるようにしてもよい。
【0050】
さらに、上記ビームヘッド22,23には、水平方向に照射されたレーザビーム70を下方に向けて曲げる第3ベンドミラー27と、この第3ベンドミラー27で曲げられたレーザビーム70を集光する集光レンズ28とがそれぞれ設けられている。
【0051】
そして、図3,4に示すように、第1ビームヘッド22によってレーザ加工を行う場合、上記第1ベンドミラー24Aで曲げられたレーザビーム70は、第2ベンドミラー25によって第1ビームヘッド22の走査方向に曲げられて、第1ビームヘッド22に照射される。この第1ビームヘッド22に照射されたレーザビーム70は、第1ビームヘッド22に設けられた第3ベンドミラー27によってワーク5に向けて曲げられ、集光レンズ28からワーク5に向けて照射される。このレーザビーム70によってワーク5に加工ライン11が形成される。
【0052】
また、第1ビームヘッド22とはレール31の反対側面に設けられた第2ビームヘッド23によってレーザ加工を行う場合、上記切替器29によって第1ベンドミラー24がベンドミラー24Aからベンドミラー24Bに切替えられ、レーザビーム70が第2ベンドミラー26に向けて曲げられる。この第2ベンドミラー26に照射されたレーザビーム70は、第2ベンドミラー26から第2ビームヘッド23に照射される。この第2ビームヘッド23に照射されたレーザビーム70は、上記第1ビームヘッド22と同様に、第2ビームヘッド23に設けられた第3ベンドミラー27によってワーク5に向けて曲げられ、集光レンズ28からワーク5に向けて照射される。このレーザビーム70によってワーク5に加工ライン11が形成される。
【0053】
なお、この第1実施形態では2つのビームヘッド22,23を備えた例を説明したが、3つ以上のビームヘッドを備えさせる場合、図3に二点鎖線で示すように、上記レール31をワーク送り方向Yに並設し、そのレール31Bに第3ビームヘッド22B(必要に応じて第4ビームヘッド(図示略))を備えさせればよい。この場合、新たにレール31Bを設ける方向の第2ベンドミラー25を上下方向に移動可能とし、第3ビームヘッド22Bによるレーザ加工時には第2ベンドミラー25を下げてレーザビーム70を通過させ、新たに設けた第2ベンドミラー25Bによって第3ビームヘッド22Bに向けて曲げるようにすればよい。
【0054】
また、3つ以上のビームヘッドを備えさせた場合、複数のビームヘッドを切替えて行う交互加工すると、一部のビームヘッドによる同時加工とを組合わせて行うことで、更なる加工時間の短縮化も可能である。
【0055】
一方、上記したようにビームヘッド22,23を移動させる場合、レーザ発振器21からの距離が変化してビーム強度が変化する。そのため、図5に示すように、ビームヘッド22,23の移動量に関係なく、レーザビーム70を同一光路長でビームヘッド22,23に照射する光路長一定装置40を設けてもよい。図5は、第1ビームヘッド22側を例にしている。
【0056】
図5に図示する光路長一定装置40は、第2ベンドミラー25(26)で曲げたレーザビーム70を、ビームヘッド22(23)の移動方向前方に設けられた第4,第5ベンドミラー41,42を有する反射ミラーユニット43を介してビームヘッド22(23)に照射する構成となっている。この光路長一定装置40の第4,第5ベンドミラー41,42は、第2ベンドミラー25(26)からのレーザビーム70を180°反対方向に反射するように設けられている。この光路長一定装置40は、反射ミラーユニット43をビームヘッド22(23)の移動量の半分の距離で移動させるようになっている。
【0057】
このような光路長一定装置40によれば、ビームヘッド22(23)の移動量の半分で反射ミラーユニット43を同一方向に移動させることで、レーザビーム70の光路長を一定に保ってビームヘッド22(23)に照射することができる。この光路長一定装置40は一例であり、リンク、ファイバー等を用いた他の構成でレーザビーム70の光路長を一定にしてもよい。
【0058】
以上のような第1実施形態のレーザ加工装置1によれば、複数のビームヘッド22,23を備えたビームヘッドユニット20により、一方のビームヘッド22(23)でレーザ加工を行っているときに他方のビームヘッド23(22)を照射開始側Sに移動させることができる。従って、両ビームヘッド22,23を同一速度で逆方向に移動させれば、一方のビームヘッド22(23)が加工終了位置に達する時に、他方のビームヘッド23(22)を加工開始位置に配置することができる。
【0059】
そのため、両ビームヘッド22,23で交互にレーザ加工を行うことでほぼ連続したレーザ加工ができる。例えば、図3に示す[1]の加工ライン11は第1ビームヘッド22によって加工し、[2]の加工ライン11は第2ビームヘッド23によって加工し、その加工を交互に繰り返すことでほぼ連続したレーザ加工が可能となる。そのため、例えば、10〜20m/secでビームヘッド22,23を移動させて、ほぼ連続したレーザ加工を効率良く行うことができる。
【0060】
従って、ワーク5を送り方向Yに向けて一方向に送りながら加工ライン11を加工することで、加工ライン形成作業のタクトを大幅に短縮することができ、太陽電池等の生産性を大幅に向上させることが可能となる。また、これにより、太陽電池の低コスト化を図ることができ、太陽電池利用の促進を図ることができる。
【0061】
図6は、第2実施形態に係るレーザ加工装置50の要部を示す図面である。この第2実施形態のレーザ加工装置50は、複数のビームヘッドを照射開始側Sと照射終了側Eとの間で循環させる循環式とした例である。つまり、複数のビームヘッドを同一方向に循環させるリターン方式で動作させるようにした例である。なお、この実施形態では、ビームヘッドユニット51に関する構成を説明し、上記図3,4に示す構成と同一の構成には同一符号を付して説明する。また、この第2実施形態では、ビームヘッドユニット51をワーク5の下方に配置した例で説明する。
【0062】
図示するように、この実施形態のレーザ加工装置50も、2つのビームヘッド22,23が備えられている。これらのビームヘッド22,23は、駆動方式を除くと上記図3,4に示すビームヘッド22,23と同一の構成である。
【0063】
これらの実施形態のビームヘッド22,23は、タイミングプーリ52で駆動されるタイミングベルト53により照射開始側Sと照射終了側Eとの間を移動させられ、両端部で水平方向に旋回させることで循環させられる。
【0064】
また、図示するように、タイミングベルト53の一方で、照射開始側Sから照射終了側Eに向けて移動する方(図示する左側)には、延長線上にレーザ発振器21が配置されている。このレーザ発振器21は、照射開始側Sから照射終了側Eに向けて移動するビームヘッド22(23)に向けて正確にレーザビーム70を照射するように配置されている。
【0065】
さらに、このレーザ発振器21とビームヘッド22,23との間には、ビームヘッド22,23が端部で旋回している所定の間はレーザビーム70を遮断するビームシャッタ54が設けられている。ビームシャッタ54としては、電気式シャッタや機械式シャッタ等が用いられる。このビームシャッタ54により、所定速度で循環させるビームヘッド22,23がレーザビーム走査方向Xに移動する所定範囲で、レーザ発信器21から照射されるレーザビーム70をビームヘッド22,23に照射してレーザ加工を行うように制御される。ビームシャッタ54の開閉は、例えば、上記タイミングプーリ52を駆動するステッピングモータ等の情報に基づいて制御される。
【0066】
また、ビームヘッド22,23は、上記図3,4と同一であるが、この実施形態では、ワーク5の下方にビームヘッド22,23が設けられ、これらのビームヘッド22,23から上向きにレーザビーム70を照射する例としている。レーザ発振器21から照射されたレーザビーム70は、ビームヘッド22(23)の第3ベンドミラー27でワーク5に向けて曲げられ、集光レンズ28からワーク5に向けて照射される。
【0067】
この第2実施形態のレーザ加工装置50の場合、一方のビームヘッド22(23)で照射開始側Sからレーザ加工を行っている時に、照射終了側Eから他方のビームヘッド23(22)を照射開始側Sに向けて移動させることができる。
【0068】
図7は、上記図6に示す第2実施形態のレーザ加工装置50の変形例である第3実施形態のレーザ加工装置55である。上記図6に示す第2実施形態と同一の構成には同一符号を付して、その説明は省略する。
【0069】
この実施形態のレーザ加工装置55は、上記ビームヘッド22,23を照射開始側Sと照射終了側Eとの間で移動させ、両端部で垂直方向に旋回させて循環するようになっている。この実施形態も、照射開始側Sから照射終了側Eに向けて移動する方(図示する左側)には、延長線上にレーザ発振器21が配置されている。このレーザ発振器21は、照射開始側Sから照射終了側Eに向けて移動するビームヘッド22,23に向けてレーザビーム70を照射するように配置されている。
【0070】
さらに、この実施形態でも、レーザ発振器21とビームヘッド22(23)との間に、ビームヘッド22(23)が端部で旋回している間にレーザビーム70を遮断するシャッタ54が設けられている。他は、上記第2実施形態と同一であるため、説明は省略する。
【0071】
この第3実施形態のレーザ加工装置55の場合も、一方のビームヘッド22(23)で照射開始側Sからレーザ加工を行っている時に、照射終了側Eから他方のビームヘッド23(22)を照射開始側Sに向けて移動させることができる。
【0072】
なお、これら第2、第3実施形態において光路長一定装置を設ける場合、上述した光路長一定装置40とは異なり、例えばリンク式の光路長一定装置が採用される。
【0073】
また、これら第2、第3実施形態のようにワーク5の下方からレーザビーム70を照射する場合、ワーク5のガラス基板7を透過して上面に形成された薄膜層6で焦点が合うようにレーザビーム70が照射される。
【0074】
以上のような第2,第3実施形態のレーザ加工装置50,55によっても、複数のビームヘッド22,23を備えたビームヘッドユニット51により、一方のビームヘッド22(23)で照射開始側Sから照射終了側Eに向けてレーザ加工を行っているときに他方のビームヘッド23(22)を照射開始側Sに向けて移動させることができるので、ほぼ連続したレーザ加工を効率良く行うことができる。
【0075】
従って、ワーク5を送り方向Yに向けて一方向に送りながら加工ライン11を加工することで、加工ライン形成作業のタクトを大幅に短縮することができ、太陽電池等の生産性を大幅に向上させることが可能となる。また、これにより、太陽電池の低コスト化を図ることができ、太陽電池利用の促進を図ることができる。
【0076】
以上のように、上記レーザ加工装置1,50,55によれば、送り方向Yにワーク5を一定速度で連続送り(又は、一定間隔で断続送り)ながら、この送り方向Yに対して交差する走査方向Xにレーザビーム70を所定の走査速度で照射する。そして、これらワーク5の送り速度とレーザビーム70の走査速度とを、1本のレーザビーム70の加工ライン11がワーク5の送り方向Yに対して直角となるように制御装置60で相対的に制御するので、薄膜層6に高速でパターニング加工を行うことができる。そして、送り方向Yにワーク5を所定速度で1回送ることでレーザ加工が完了するので、短い時間で1枚のワーク5に対する加工を完了することができる。
【0077】
しかも、ワーク5を一方向に送りながらレーザビーム70を走査して加工ライン11を形成することでレーザ加工が完了するので、基板毎のワーク5の加工だけでなく、フレキシブル太陽電池のロール・ツー・ロール製法の連続したワークでも高速の連続加工が可能となる。
【0078】
その上、上述した図8A図8Gに示すように、複数の成膜層に加工ライン11を形成する場合でも、上記レーザ加工装置1と成膜機(図示略)とを送り方向に複数台並設すれば、ワーク5を一方向に搬送しながら連続的にパターニング加工を行うことができ、パターニング加工のタクトを大幅に短縮して太陽電池等の生産性を大幅に向上させることが可能となる。また、これにより、太陽電池の低コスト化を図ることができ、太陽電池利用の促進を図ることができる。
【0079】
さらに、分光・振分け・複数発振器搭載による複数のビームを用いることがないので、加工品質が安定した太陽電池を作製できるレーザ加工装置1を低コストで製作することも可能となる。
【0080】
なお、上記実施形態では、ワーク5を一定速度で送り方向Yに連続的に送りながら加工する例を説明したが、ワーク5の送りは加工条件等に応じて、一定間隔で断続的に送りながら加工するようにしてもよく、上記実施形態に限定されるものではない。
【0081】
また、上記実施形態では、レーザ発振器21をビームヘッド22,23と別体で構成しているが、小型軽量のレーザ発振器21であればヘッドユニット22,23と一体的に移動させるように構成してもよい。
【0082】
さらに、上述した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明に係るレーザ加工装置は、薄膜太陽電池やフレキシブル太陽電池(ロール・ツー・ロール製法)の製造工程において利用できる。
【符号の説明】
【0084】
1 レーザ加工装置
3 定速送り装置
5 ワーク
6 薄膜層
7 基板(ガラス基板)
11 加工ライン(スクライブ線)
20 ビームヘッドユニット
21 レーザ発振器
22 第1ビームヘッド
23 第2ビームヘッド
24 第1ベンドミラー
24A,24B ベンドミラー
25,26 第2ベンドミラー
27 第3ベンドミラー
28 集光レンズ
29 切替器
30 レーザ加工装置
31 レール
32 ビーム走査ユニット
40 光路長一定装置
41 第4ベンドミラー
42 第5ベンドミラー
43 反射ミラーユニット
50 レーザ加工装置
51 ビームヘッドユニット
54 ビームシャッタ
55 レーザ加工装置
60 制御装置
70 レーザビーム
S 照射開始側
E 照射終了側
X レーザビーム走査方向
Y ワーク送り方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図9