特許第5926596号(P5926596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5926596積層フィルムとその製造方法およびそれを用いた磁気記録テープの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926596
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】積層フィルムとその製造方法およびそれを用いた磁気記録テープの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20160516BHJP
   B29C 47/06 20060101ALI20160516BHJP
   G11B 5/73 20060101ALI20160516BHJP
   G11B 5/78 20060101ALI20160516BHJP
   B29K 33/04 20060101ALN20160516BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20160516BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20160516BHJP
【FI】
   B32B27/36
   B29C47/06
   G11B5/73
   G11B5/78
   B29K33:04
   B29L7:00
   B29L9:00
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-76861(P2012-76861)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-203019(P2013-203019A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】301020226
【氏名又は名称】帝人デュポンフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 良敬
(72)【発明者】
【氏名】飯田 真
【審査官】 岸 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−085046(JP,A)
【文献】 特開2011−183714(JP,A)
【文献】 特開2010−214966(JP,A)
【文献】 特開2000−318079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
G11B 5/62− 5/82
B29C47/00−47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルAからなり、厚みが0.5〜4.0μmの範囲にあるA層と、その両面にポリエステル層Aから剥離が可能である熱可塑性樹脂BからなるB層とが積層された共押出積層フィルムであって、熱可塑性樹脂Bが、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレンもしくはこれらの樹脂の混合物からなる群より選ばれる一種であること、B層が2層以上からなり、A層と接しない側のB層の表面を形成する層(B2層)の粒子含有量(CB2:質量%)と、A層と接する側のB層の表面を形成する層(B1層)の粒子含有量(CB1:質量%)の差(CB2−CB1)が0.05質量%以上であること、そしてB層を剥離してA層を用いる積層フィルム。
【請求項2】
熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度(TgB:℃)が、ポリエステルAのガラス転移温度(TgA:℃)に対して、−20〜+30℃の範囲にある請求項に記載の積層フィルム。
【請求項3】
A層が、ポリエステルAのほかに、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種をA層の質量を基準として0.5〜25重量%の範囲で含有する請求項1または2のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項4】
B層の厚みが0.5−10μmである請求項1〜のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
A層は、少なくとも一方の表面を形成するポリエステルAが、粒子を含まないか、含んだとしても粒子径120nm以下の粒子を1000ppm以下の範囲で含有する請求項1〜のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法であって、エチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルAの両面に熱可塑性樹脂Bを溶融状態で積層して未延伸フィルムとし、該未延伸フィルムの幅方向の両端部を把持してポリエステルAからなるA層の厚みが0.5〜4.0μmの範囲となるように延伸する積層フィルムの製造方法。
【請求項7】
未延伸フィルムが、その幅方向の両端部をポリエステルAのみからなる単層部とする請求項記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載の積層フィルムからB層を剥離し、露出されたA層の片面に磁性層を形成する磁気記録テープの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データストレージなどの磁気記録テープのベースフィルムに用いる積層熱可塑性樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムに代表される熱可塑性樹脂フィルムは、比較的安価で、優れた機械的特性を有することから磁気記録テープのベースフィルムに用いられてきた。そして、磁気記録テープのベースフィルムに用いる場合、熱可塑性樹脂フィルムには粗大な突起や欠点がない平坦な表面を有することが求められる。一方、平坦な表面を有するベースフィルムはこれを巻き取る際に、フィルム同士の滑り性が悪い場合にはブロッキングして突起となったり、フィルム間からの層間空気の抜けが悪い場合には残留空気が抜けきらないため巻取り速度が上げられなかったりといった不具合があり、巻取りの歩留り低下や生産性の低下を招き、効率的な製造することができない。これらの問題を解決するためには熱可塑性樹脂フィルムに不活性粒子などの滑剤を含有させて、表面に突起などを形成することが求められ、電磁変換特性との両立を図るために一方の面には小さい粒子を少なく、他方の面には大きな粒子を多めに添加するなどの手法も活用されている。
【0003】
しかしながら、近年の高密度記録の要求はすさまじく、特に記録容量が1巻あたり5TBを超えるようなデータストレージなどの塗布型磁気記録テープでは、前述の特許文献1〜5で表面欠点がないとされたフィルムや特許文献6〜7でウネリが少ないとされたフィルムでも十分に応えられなくなってきた。特に、2層フィルムの片面を粗面化して滑り性および、または層間空気の抜けやすさを確保しようとする場合に、粗面化した面の突起が磁性層面に転写して凹みとなり、磁気記録テープとして使用した時にヘッドとの距離が増大する事によって信号の欠落となることが、高密度記録で記録波長が短くなるにつれて顕著となっている。また、平坦面の側にもある程度の量の粒子を添加しておかないと、フィルム製造工程中のパスロールに張り付いてしまったり、貼り付いた場所を起点にしたスクラッチが発生したりして、磁気記録テープとしたときに表面欠陥となり信号の欠落につながってしまうという問題がある。
【0004】
また、限定されたテープカートリッジの体積の中で記録面積を最大化しようとすると、磁気記録テープ厚みおよび基材となるベースフィルムの厚みを薄くする必要があるが、フィルムの薄膜化によってフィルムのスティフネスが大幅に低下してしまい、フィルム製造工程中での巻取り性を著しく悪化させてしまうという課題もあった。
【0005】
一方、特許文献8では、熱可塑性樹脂からなる第1ポリマー層の少なくとも1層と該熱可塑性樹脂より抵融点でかつ非相溶な熱可塑性樹脂からなる第2ポリマー層の少なくとも1層とが隣接し、さらに最外層の少なくとも1層が第1ポリマー層からなるように積層した多層延伸フィルムが開示され、具体的には第1ポリマー層がポリエステル(E層)からなり、第2ポリマー層がポリオレフィン(O層)からなり、E層/O層からなる2層フィルム、E層/O層/E層からなる3層フィルム、E層/O層/E層/O層/E層からなる5層フィルムが開示され、ポリエステル(E層)とポリオレフィン(O層)を剥離してそれぞれ使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−114492号公報
【特許文献2】特開2003−291288号公報
【特許文献3】特開2002−363311号公報
【特許文献4】特開2002−363310号公報
【特許文献5】特開2002−059520号公報
【特許文献6】特開2001−341265号公報
【特許文献7】特開2004−091753号公報
【特許文献8】特開平10−67082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、例えば高記憶容量の塗布型磁気記録テープのベースフィルムに用いたとき、究極的に優れた電磁変換特性およびエラーレート性能、信号欠落の少ない特性を発現できるポリエステルフィルムを低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決しようと鋭意研究し、ポリエステルフィルムに含有させる粒子、ポリエステルフィルムの層構成や延伸条件などだけでは根本的な解決にならないことから、特許文献8に記載された使用するとき剥離することを試みたところ、薄いポリエステルフィルムの両面に保護層として磁性層塗布加工時に剥離が可能な別の熱可塑性樹脂層を積層させることにより、表面が極めて平坦かつ薄いポリエステルフィルムであっても、フィルム製造工程中でのハンドリング不良による歩留りの低下や、パスロールなどへの張り付きやスクラッチを防止し、例えば記憶容量が5TB以上であるデータストレージのベースフィルムに用いても信号欠落の少ない優れた大容量の磁気記録テープが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
かくして本発明によれば、エチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルAからなり、厚みが0.5〜4.0μmの範囲にあるA層と、その両面にポリエステル層Aから剥離が可能である熱可塑性樹脂BからなるB層とが積層された共押出積層フィルムであって、熱可塑性樹脂Bが、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレンもしくはこれらの樹脂の混合物からなる群より選ばれる一種であること、B層が2層以上からなり、A層と接しない側のB層の表面を形成する層(B2層)の粒子含有量(CB2:質量%)と、A層と接する側のB層の表面を形成する層(B1層)の粒子含有量(CB1:質量%)の差(CB2−CB1)が0.05質量%以上であること、そしてB層を剥離してA層を用いる積層フィルムが提供される。
【0010】
また、本発明の好ましい態様として、熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度(TgB:℃)が、ポリエステルAのガラス転移温度(TgA:℃)に対して、−20〜+30℃の範囲にあること、A層が、ポリエステルAのほかに、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種をA層の質量を基準として0.5〜25重量%の範囲で含有すること、B層の厚みが0.5−10μmであること、A層は、少なくとも一方の表面を形成するポリエステルAが、粒子を含まないか、含んだとしても粒子径120nm以下の粒子を1000ppm以下の範囲で含有することの少なくともいずれかを具備する積層フィルムも提供される。
【0011】
さらにまた、上記の積層フィルムの製造方法であって、エチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルAの両面に熱可塑性樹脂Bを溶融状態で積層して未延伸フィルムとし、該未延伸フィルムの幅方向の両端部を把持してポリエステルAからなるA層の厚みが0.5〜4.0μmの範囲となるように延伸する積層フィルムの製造方法および該未延伸フィルムが、その幅方向の両端部をポリエステルAのみからなる単層部とする積層フィルムの製造方法も提供され、また本発明の積層フィルムからB層を剥離し、露出されたA層の片面に磁性層を形成する磁気記録テープの製造方法も提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の積層フィルムは、積層フィルムの生産性やその後の加工性に優れ、しかも例えば高記憶容量の磁気記録テープに、究極的に優れた電磁変換特性およびエラーレート性能、信号欠落の少ない特性を発現させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、詳述する。
<ポリエステルA>
本発明におけるポリエステルAは、エチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするものが好ましく、特にエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするものが好ましい。ここでいう主たるとは、好ましくは60モル%以上、さらに70モル%以上、よりさらに80モル%以上、特に90モル%以上を意味する。
【0014】
また、より環境変化に対する寸法安定性を向上させる観点から、国際公開2008/096612号パンフレットに記載された6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、6,6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分および6,6’−(ブチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分などの6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合したものも挙げられる。好ましい(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の共重合量は、全ジカルボン酸成分のモル数を基準として、5〜40モル%の範囲である。そのような観点から、エチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートと、エチレン−6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸との合計量が、全繰り返し単位の90モル%以上であることが好ましい。
【0015】
本発明におけるポリエステルAは、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を含有しない場合はο−クロロフェノール中、35℃において、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を含有する場合はP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒中、35℃において、測定したときの固有粘度が0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40〜1.0dl/gであることがさらに好ましい。固有粘度が0.4dl/g未満ではフィルム製膜時に切断が多発したり、成形加工後の製品の強度が不足したりすることがある。一方固有粘度が1.0dl/gを超える場合は重合時の生産性が低下する。
【0016】
本発明におけるポリエステルAの融点は、200〜300℃であることが好ましく、更に好ましくは210〜290℃、特に好ましくは220〜280℃である。融点が下限に満たないと積層フィルムの耐熱性が不十分な場合があり、融点が上限を超える場合は溶融混練する際の温度が非常に高温になり、熱劣化などを引き起こしやすくなる。
【0017】
なお、本発明におけるポリエステルA、本発明の効果を損なわない範囲で、それ自体公知の他の共重合成分をさらに共重合、例えば繰り返し単位のモル数に対して10モル%以下、さらに5モル%以下の範囲で共重合していてもよいし、他の熱可塑性樹脂などを、例えば0.5〜25重量%の範囲でブレンドしても良い。好ましくはポリエステルAとブレンドすることで、ガラス温度などの耐熱性を高められる、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなどをブレンドすることが好ましい。
【0018】
<熱可塑性樹脂B>
熱可塑性樹脂Bは、ポリエステルAと共押出しでフィルムに製膜でき、後にポリエステルAからなるA層から剥離できるものであれば特に制限されない。具体的にはポリエステル(例えばポリエステルAがポリエチレン2,6−ナフタレートの場合にはポリエチレンテレフタレートを、ポリエステルAがポリエチレンテレフタレートの場合にはポリエチレン−2,6−ナフタレートを熱可塑性樹脂Bとすることができる)、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホンもしくはこれらの混合物などを例示できる。これらの中でも、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレンもしくはこれらの樹脂の混合物からなる群より選ばれる一種であることが好ましい。
【0019】
ところで、熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度(TgB:℃)は、ポリエステルAのガラス転移温度(TgA:℃)に対して、−20〜+30℃の範囲にあることが、延伸などでの製膜性と得られたA層に高度の機械的特性を付与しやすい点から好ましい。TgBが下限未満では、延伸時に熱可塑性樹脂Bの部分を把持しようとすると、十分な把持を行うのが困難になりやすい。他方TgBが上限を超えると、延伸時に延伸応力がA層に十分働かず、A層の機械的特性を向上させ難くなる。
【0020】
ところで、後述の延伸時に把持される未延伸フィルムの両端部をポリエステルAからなる単層部とすることで、上記延伸時の把持の問題は回避できる。そのため、両端部を単層部とする場合、TgB−TgAは延伸によるA層の機械的特性の向上効果をより大きくすることから、−20〜−5℃の範囲、さらに−15〜−8℃の範囲であることが好ましい。一方、両端部を単層部としない場合は、製膜性の点から、TgB−TgAは−5〜30℃、さらに0〜25℃の範囲にあることが好ましい。
【0021】
<B層>
本発明におけるB層は、A層の両面に積層される層で、前述の熱可塑性樹脂Bからなる。B層の1枚当たりの厚みは、0.5〜10μmが好ましい。厚みがこの範囲よりも薄すぎると剥離工程で切断等の発生により剥離することが困難となったり、A層の厚みを薄くしたときに実用上必要なスティフネスを維持する効果が発現しがたくなったりする。また、厚みがこの範囲よりも厚いと、積層体としてフィルム製造工程で巻取る際、巻取り可能な長さに制約がかかり、テープとするときの加工工程で長手方向に取得可能なテープ巻数が減少してしまい、切替えロスの増大が発生する。特に本発明では、A層の両面にB層を積層するので、その影響は非常に大きい。B層1枚当たりのより好ましい厚み範囲は0.7〜8μm、更に好ましくは0.9〜6.0μm、特に好ましくは1.0〜5.0μmである。
【0022】
このように、B層がA層の両面に積層されていることから、A層は積層フィルムの表面に晒されず、製造工程でのダメージを完全に避けることが可能になるとともに、A層に、滑り性を付与するために粒子等を添加する必要性がなくなり、磁気テープとしたときに極めて平滑な表面を形成することが可能となり、電磁変換特性に非常に優れた磁気テープとするために極めて有利である。
【0023】
ところで、A層のそれぞれの表面に積層されるB層自体が2層以上の積層構造をとることも可能である。この場合、どちらか一方の最表面となる層(B1層とする)には粒子の添加等を極力行なわず、もう一方の最表面となる層(B2層とする)にのみ粒子を添加し、B1層をA層に、B2層をB1層のA層と接しない側に積層することで、A層へのB2層が含有する粒子の形状転写などがB1層によって防げることから好ましい。
なお、上記B2層には、滑り性付与の観点から1種類以上の粒子が含有されていることが好ましいが、それ以外の手法(例えばポリマーブレンドでの相分離による突起形成など)により滑り性が付与可能であれば粒子添加を必ずしも行なわなくてもよい。
【0024】
B2層に粒子添加を行なう際には、平均粒子径0.01〜0.5μmの範囲の粒子を、B2層に対して0.001〜0.8重量%の範囲で添加することが好ましい。また、B1層は、粒子を含まないか、含んだとしても平均粒子径120nm以下の粒子をB1層の質量を基準として1000ppm以下で含有することが好ましい。粒子を含有する場合のより好ましい平均粒子径と添加量は、100nm以下で800ppm以下、さらに80nm以下で500ppm以下である。
【0025】
よりA層の表面の平坦性と積層フィルムとしての走行性とを両立しやすい観点から、B層が2層以上からなり、A層と接しない側のB層の表面を形成する層(B2層)の粒子含有量(CB2:質量%)と、A層と接する側のB層の表面を形成する層(B1層)の粒子含有量(CB1:質量%)の差(CB2−CB1)が0.05質量%以上であることが好ましい。好ましいCB2−CB1の下限は、0.1質量%である。なお、CB2−CB1の上限は特に制限されないが、0.8質量%以下であることが、B2層に含有される粒子の影響をA層に及ぼさない観点から好ましい。
【0026】
<A層>
本発明におけるA層は、前述のポリエステルAからなる。A層は、単層であっても2層以上の層からなる積層であってもよい。単層もしくは積層の場合はより平坦にしたい層(例えば磁性層を形成する側の表面で、以下、A1層と称する。)は、粒子を含まないか、含んだとしても平均粒子径が120nm以下の粒子をA1層の質量を基準として1000ppm以下で含有することが好ましい。
【0027】
本発明において、A層はフィルム製造工程中では熱可塑性樹脂層Bにより保護されているため、粒子の添加がない、あるいはごくわずかであったとしてもフィルム製造工程中で問題が起こることは少ない。ただし、磁気テープとしたときの走行耐久性の観点からA層のより平坦にしたい側の表面を形成する層に粒子を添加する必要がある場合は、上記範囲内での添加を行なうことが好ましい。粒子を含有させる場合のより好ましい粒子径と添加量は、平均粒子径が100nm以下で800ppm以下、さらに平均粒子径が80nm以下で500ppm以下であることが好ましい。
一方、A層が積層の場合におけるA1層とは反対側のA層の表面を形成するA2層は、平均粒子径0.01〜0.5μmの範囲の粒子を、A2層に対して0.001〜0.8重量%の範囲で添加することが好ましい。
【0028】
<粒子>
前述のA層、B層、A1層、A2層、B1層またはB2層のいずれかに不活性粒子を含有させる場合、含有させる粒子はもともと粗大粒子を含まないか含有するとしても極めて少ない粒子が好ましい。このような粒度分布がシャープなものにしやすく、一次粒子の状態で存在しやすい粒子としては、シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子、架橋ポリスチレン粒子などの有機高分子粒子および球状シリカ粒子、シリカと有機高分子の複合体粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子であることが好ましい。これらの中でも、特にシリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子、球状シリカ粒子、シリカーアクリルの複合体粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子であることが好ましい。もちろん、これらの粒子を含有させる場合は、さらに粗大粒子をなくすため、フィルターでのろ過を行ったり、分散剤で粒子の表面を処理したり、押出機での混練を強化することが好ましい。
【0029】
<積層フィルム>
本発明の積層フィルムは、前述の通り、A層の両面にB層を積層したものである。本発明の積層フィルムは、最外層(B層のA層と接していない側)の表面の表面粗さは、いずれの表面も表面粗さRaが4.0nm以上であることが好ましい。表面粗さRaがこの範囲未満であると積層フィルムを製造して巻取る工程で滑り性の悪さに起因して歩留りを落とす可能性が高い。より好ましくは4.5nm以上、更に好ましくは5.0nm以上、特に好ましくは6.0nm以上である。なお、表面粗さの上限は特に制限されないが、A層の表面の平坦性に影響を及ぼさない観点から、8nm以下、さらに7.5nm以下であることが好ましい。このような表面粗さは、B層もしくはB2層に含有させる粒子の粒径や含有量によって調整できる。
【0030】
本発明の積層フィルムの全体厚みは、3.5〜20μmが好ましい。この範囲よりも薄いと、フィルムの腰がないためハンドリングが困難となり、またこの範囲よりも厚いと、一回に巻き取れるフィルムの長さが短くなってしまうため、加工工程での効率上不利となる。より好ましい積層フィルムの全体厚みは4.5〜18μm、さらに5.0〜16μm、特に5.5〜14μmである。
本発明の積層フィルムの摩擦係数は、0.9以下であることが好ましい。摩擦係数がこの値を超えるとフィルム同士のブロッキングによってフィルムロールに突起物ができやすくなり巻取りの歩留りが低下してしまう。より好ましい摩擦係数は0.8以下、更に好ましくは0.7以下、特に好ましくは0.6以下である。この摩擦係数は、後述の通り、積層フィルムを2枚用意して、それぞれ異なる側の表面が接するように重ねて測定した値である。
【0031】
<積層フィルムの製造方法>
本発明の積層フィルムの製造方法について、以下で説明する。まず、前述のポリエステルAと熱可塑性樹脂Bは、それ自体公知の製造方法で製造できる。そして、ポリエステルAと、A層の保護層であるB層を形成する熱可塑性樹脂Bとを用意し、これらを溶融状態でA層の両面にB層を積層してダイからシート状に共押出する工程、得られたシート状物を冷却固化することで、積層未延伸フィルムとする工程、そして得られた積層未延伸フィルムを製膜方向と幅方向に延伸することで製造できる。溶融状態で押し出す工程での温度は、ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bとがそれぞれ未溶融物がなく、過度に樹脂の熱劣化が進まない温度であれば特に制限されず、例えば、それぞれの樹脂の融点(Tm:℃)ないし(Tm+60)℃の温度で行うことが好ましい。
【0032】
つぎに、冷却については、得られる積層未延伸フィルムの平坦性を維持しつつ、厚み斑も少なくするために、フィルム製膜方向に沿ってダイの下方に設置された回転する冷却ドラムを用い、それにシート状物を密着させて冷却するのが好ましい。つづいて、延伸については、積層未延伸フィルムを、一軸方向(縦方向または横方向)に(ポリエステルAのガラス転移温度(Tg+5)℃〜(Tg+60)℃の温度で2.5倍以上、好ましくは3倍以上の倍率で延伸し、次いで上記延伸方向と直交する方向に(Tg+5)〜(Tg+70)℃の温度で2.5倍以上、好ましくは3倍以上の倍率で延伸するのが好ましい。さらに必要に応じて縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。このように延伸したときの全延伸倍率は、面積延伸倍率(縦方向の延伸倍率×横方向の延伸倍率)として9倍以上が好ましく、12〜35倍がさらに好ましく、15〜30倍が特に好ましい。さらにまた、二軸配向フィルムは、(ポリエステルAの融点(TmA:℃)−70)〜(TmA−10)℃の温度で熱固定することができ、例えば180〜250℃で熱固定するのが好ましい。熱固定時間は0.1〜60秒が好ましい。また、前述の延伸は逐次二軸延伸で説明したが、縦方向と横方向に同時に延伸する同時二軸延伸を用いても良い。
【0033】
ところで、前述のとおり、熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度(TgB)がポリエステルAのガラス転移温度(TgA)よりも低い場合、十分にA層に延伸を施そうとすると、表面に位置するB層が過度に熱を受けた状態での延伸となり、問題となることがある。例えば、積層フィルムの幅方向の両端部をクリップなどで把持して延伸しようとしたときに、B層が過剰に変形してクリップが緩むなどの問題が挙げられる。そのため、本発明では、ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bとを溶融状態でA層の両面にB層を積層してダイからシート状に共押出する際、幅方向の両端部はポリエステルAからなる単層としておくことが好ましい。すなわち、フィルムの厚み方向に層構成を見たとき、フィルムの幅方向の中央部はB層/A層/B層の層構成とし、フィルムの幅方向の両端部はA層だけの構成とするのが好ましい。このような層構成は、溶融状態で積層する際にA層の幅をB層の幅よりも狭くすることや、A層とB層と積層した後に幅方向の両端部にポリエステルAを溶融状態で合流させることで製造できる。
また、B層をB1層とB2層の積層、またはA層をA1層またはA2層の積層にする場合、B1層、B2層、A1層またはA2層の樹脂を用意し、A層とB層を積層する際に同様に積層すればよく、その際、含有する粒子の組成などが、前述の条件を満足するようにするのが好ましい。
【0034】
<磁気記録テープおよびその製造方法>
本発明の積層フィルムは、高密度磁気記録テープ、特にディジタル記録型磁気記録テープのベースフィルムとして好ましく用いられる。そこで、本発明の積層フィルムを用いた磁気記録テープについて、さらに説明する。
まず、本発明の磁気記録テープは、前述の本発明の積層フィルムからB層を剥離し、露出したA層の表面に磁性層を形成する塗剤を塗布するか、磁性層を形成する強磁性金属薄膜を蒸着することで形成できる。この際、A層がA1層とA2層からなる場合、A1層の表面に磁性層を形成すればよい。
【0035】
本発明における磁性層は、鉄または鉄を主成分とする針状微細磁性粉やバリウムフェライトをポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体等のバインダーに均一分散し、その塗液を塗布して形成したものが好ましく挙げられる。そして、前述のとおり、本発明の積層フィルムを使用することで、電磁変換特性やエラーレート性能に極めて優れた塗布型磁気記録テープとすることができる。
なお、塗布型での磁性層は、その厚みが1μm以下、さらに0.1〜1μmとなるように塗布するのが、特に短波長領域での出力、S/N、C/N等の電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用塗布型磁気記録テープとする観点から好ましい。また、必要に応じて、塗布型磁性層の下地層として、微細な酸化チタン粒子等を含有する非磁性層を磁性層と同様の有機バインダー中に分散し、塗設することも好ましい。
【0036】
また、塗布型での磁性層の表面には、目的、用途、必要に応じてダイアモンドライクカーボン(DLC)等の保護層、含フッ素カルボン酸系潤滑層を順次設け、さらに他方の表面に、公知のバックコート層を設けてもよい。
前述のとおり、塗布型での磁性層および必要に応じて下地層やバックコート層を設ける際には、本発明の積層フィルムから、保護層であるB層を剥離して除去する必要がある。剥離は、加工工程でのパスロールなどでの傷付を防止する観点から、これらの層を形成する直前に行なわれることが好ましい。
このようにして得られる塗布型磁気記録テープは、データ8ミリ、DDSIV、DLT、S−DLT、LTO等のデータ用途の磁気テープとして極めて有用である。
【0037】
また、本発明では、強磁性金属薄膜層を真空蒸着により設けることで蒸着型磁気記録テープとしてもよい。使用する金属薄膜としては公知のものを使用でき、特に限定されない。具体的な金属薄膜としては、鉄、コバルト、ニッケル、またはそれらの合金の強磁性体からなるものが好ましい。金属薄膜層の厚さは100〜300nmが好ましい。蒸着型磁気記録テープの場合も、磁性層の反対面にバックコート層が設けられていることが好ましい。該バックコート層としては、微粒子、潤滑剤、有機高分子からなる結合材からなる層を、有機溶媒を用いた溶液の塗布、乾燥により設けることが好ましい。バックコート層の厚さは0.5〜1.5μm程度が好ましい。微粒子としてはカーボンブラック、アルミナ等が、潤滑剤としてはシリコーン、フッ素化合物などが、結合材としてはポリウレタン、エポキシ樹脂などが好ましく用いられ、これらに限定されない。
また、蒸着型磁気記録テープの磁性層上に10nm程度の厚みのダイヤモンド状カーボン膜をコーティングし、更にその上に潤滑剤塗布により潤滑剤層を設けてもよい。
【実施例】
【0038】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明における積層フィルムおよびデータストレージの特性は、下記の方法で測定および評価した。
【0039】
(1)固有粘度
得られたポリエステルの固有粘度は、前述のとおり、o−クロロフェノール、35℃で測定し、o−クロロフェノールでは均一に溶解するのが困難な場合は、p−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いて35℃で測定して求めた。
【0040】
(2)フィルム中の粒子の粒径
プラズマ低温灰化処理法(例えばヤマト科学製、PR−503型)でポリエステルAまたは熱可塑性樹脂Bを除去し、粒子を露出させる。処理条件は、ポリマーは灰化されるが粒子はダメージを受けない条件を選択する。これをSEM(走査型電子顕微鏡)にて1万倍程度の倍率で粒子を観察し、粒子の画像(粒子によってできる光の濃淡)をイメージアナライザー(例えば、ケンブリッジインストルメント製、QTM900)に結びつけ、観察箇所を変えて少なくとも5,000個の粒子の面積円相当径(Di)を求める。この結果から粒子の粒径分布曲線を作成した。なお、粒子種の同定はSEM−XMA、ICPによる金属元素の定量分析などを使用して行うことができる。また、添加する不活性粒子の平均粒径は、同様な測定を行って各粒子の粒径を求め、数平均を平均粒径とした。
【0041】
(3)粒子の含有量
(3−1)各層中の粒子の総含有量
積層フィルムからそれぞれ測定したい層を各々100g程度削り採ってサンプリングし、ポリエステルAや熱可塑性樹脂Bは溶解し、粒子は溶解させない溶媒を選択して、サンプルを溶解した後、粒子を熱可塑性樹脂から遠心分離し、サンプル重量に対する粒子の比率(重量%)をもって各層中の粒子総含有量とする。
【0042】
(4)フィルムおよび各層の厚み
(4−1)積層フィルム全体の厚みおよびA層とB層の厚み
ゴミが入らないようにフィルムを10枚重ね、打点式電子マイクロメータにて厚みを測定し、1枚当たりのフィルム厚みを計算する。なお、A層とB層の厚みは、それぞれ積層フィルムから剥離した後、前述の方法で測定した。
【0043】
(4−2)A1層、A2層、B1層またはB2層の厚み
2次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、表層から深さ3000nm迄の範囲のフィルム中の粒子の内もっとも高濃度の粒子に起因する元素とポリエステルAまたは熱可塑性樹脂Bの炭素元素の濃度比(M+/C+)を粒子濃度とし、表面から深さ3000nmまで厚さ方向の分析を行う。表層では表面という界面のために粒子濃度は低く表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くなる。そして一旦極大値となった粒子濃度がまた減少し始める。この濃度分布曲線をもとに表層粒子濃度が極大値の1/2となる深さ(この深さは極大値となる深さよりも深い)を求め、これを表層厚さとする。そして、先ほどのA層またはB層の厚みと表層厚さから、各層の厚みを算出する。
条件は次のとおりである。
(a)測定装置:2次イオン質量分析装置(SIMS)
(b)測定条件
1次イオン種 :O2+
1次イオン加速電圧:12KV
1次イオン電流:200nA
ラスター領域 :400μm□
分析領域 :ゲート30%
測定真空度 :0.8Pa(6.0×10−3Torr)
E−GUN :0.5KV−3.0A
なお、表層から深さ3000nm迄の範囲にもっとも多く含有する粒子が有機高分子粒子の場合はSIMSでは測定が難しいので、表面からエッチングしながらXPS(X線光電子分光法)、IR(赤外分光法)などで上記同様のデプスプロファイルを測定し、表層厚さを求めてもよい。
【0044】
(5)表面粗さ(Ra)
非接触式三次元表面粗さ計(ZYGO社製:New View5022)を用いて測定倍率25倍、測定面積283μm×213μm(=0.0603mm)の条件にて測定し、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトMetroProにより中心面平均粗さ(Ra)を求め、これを表面粗さ(Ra)とした。なお、測定は測定箇所を変えて10回行い、それらの平均値を中心面平均粗さ(Ra)とした。
【0045】
(6)巻取り良品率
製品を1m幅で5000m巻取り、100本作成し、以下のような欠陥がないものを良品と定義し、その本数を巻取り良品率とした。
欠陥:ブロッキングによる突起が認められるか、シワが発生したもの。
【0046】
(7)剥離性
フィルムを幅1cm長さ10cmの短冊状に切り出し、端部両面に粘着テープを貼り手で剥離を行なった。途中で切断せず剥離できたものを剥離可能、それ以外を剥離不能とした。
【0047】
(8)フィルムの静摩擦係数
2枚の積層フィルムを用意し、異なる表面が接するように重ね合せ、下側に固定したガラス板を置き、重ね合せたフィルムの下側(ガラス板と接しているフィルム)のフィルムを低速ロールにて引取り(10cm/min)、上側のフィルムの一端(下側フィルムの引取り方向と逆端)に検出器を固定してフィルム/フィルム間のスタート時の引張力を検出する。なお、そのときに用いるスレッドは重さ200g、下側面積50cmのものを使用する。
なお、静摩擦係数(μs)は次式より求めた。
μs=(スタート時の引張力g)/(荷重200g)
フィルムの静摩擦係数が、0.9を超える場合は、極端に滑り性が低下し、フィルムをロール状に巻き取る際、シワや欠陥が出やすくなり好ましくない。
【0048】
(9)磁気テープの作成
各実施例及び比較例で得られた幅1000mm、長さ1000mの積層フィルムから一方のB層を剥離し、露出したA層の表面に、下記組成のバックコート層塗料をダイコータ(加工時の張力:20MPa、温度:120℃、速度:200m/分)で、塗布し、乾燥させた後、他方のB層を剥離し、露出したA層の表面に下記組成の非磁性塗料、磁性塗料をダイコータで同時に膜厚を変えて塗布し、磁気配向させて乾燥させる。さらに、小型テストカレンダ−装置(スチ−ルロール/ナイロンロール、5段)で、温度:70℃、線圧:200kg/cmでカレンダ−処理した後、70℃、48時間キュアリングする。上記テ−プを12.65mmにスリットし、カセットに組み込み磁気記録テープとした。なお、乾燥後のバックコート層、非磁性層および磁性層の厚みは、それぞれ0.5μm、1.2μmおよび0.1μmとなるように塗布量を調整した。また、A層がA1層とA2層からなる場合、A2層の表面にバックコート層を形成した。
【0049】
<非磁性塗料の組成>
・酸化鉄粉末 :80重量部
・カーボンブラック :20重量部
・エスレックA(積水化学製塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体 :10重量部
・コロネートL(日本ポポリウレタン製ポリイソシアネート) : 5重量部
・レシチン : 1重量部
・メチルエチルケトン :150重量部
・トルエン :75重量部
・ラウリン酸 :1.5重量部
<磁性塗料の組成>
・バリウムフェライト磁性粉末 :100重量部
・エスレックA(積水化学製塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体 :10重量部
・ニッポラン2304(日本ポリウレタン 製ポリウレタンエラストマ):10重量部
・コロネートL(日本ポリウレタン製ポリイソシアネート) : 5重量部
・レシチン : 1重量部
・メチルエチルケトン :75重量部
・メチルイソブチルケトン :75重量部
・トルエン :75重量部
・カーボンブラック : 1重量部
・ラウリン酸 :1.5重量部
<バックコート層塗料の組成:>
カーボンブラック :50重量部
熱可塑性ポリウレタン樹脂 :60重量部
イソシアネート化合物 :18重量部
(日本ポリウレタン工業社製コロネートL)
シリコーンオイル :0.5重量部
メチルエチルケトン :250重量部
トルエン :50重量部
【0050】
(10)電磁変換特性
電磁変換特性測定には、ヘッドを固定した1/2インチリニアシステムを用いた。記録は、電磁誘導型ヘッド(トラック幅25μm、ギャップ0.1μm)を用い、再生はMRヘッド(8μm)を用いた。ヘッド/テープの相対速度は10m/秒とし、記録波長0.2μmの信号を記録し、再生信号をスペクトラムアナライザーで周波数分析し、キャリア信号(波長0.2μm)の出力Cと、スペクトル全域の積分ノイズNの比をC/N比とし、比較例2を0dBとした相対値を求め、以下の基準で、評価した。なお、磁気記録テープは上記(9)の条件で製造したものを用いた。
◎ : +2dB以上
○ : +1dB以上
△ : −1dB以上、+1dB未満
× : −1dB未満
【0051】
(11)エラーレート
上記(9)で作製したテープ原反を12.65mm(1/2インチ)幅にスリットし、それをLTO用のケースに組み込み、磁気記録テープの長さが850mのデータストレージカートリッジを作成した。このデータストレージを、IBM社製LTO5ドライブを用いて23℃50%RHの環境で記録し(記録波長0.55μm)、次に、カートリッジを50℃、80%RH環境下に7日間保存した。カートリッジを1日常温に保存した後、全長の再生を行い、再生時の信号のエラーレートを測定した。エラーレートはドライブから出力されるエラー情報(エラービット数)から次式にて算出する。次の基準で寸法安定性を評価する。
エラーレート=(エラービット数)/(書き込みビット数)
◎:エラーレートが1.0×10−6未満
○:エラーレートが1.0×10−6以上、1.0×10−4未満
×:エラーレートが1.0×10−4以上
【0052】
(12)ドロップアウト(DO)
上記(11)でエラーレートを測定したデータストレージカートリッジを、IBM社製LTO5ドライブに装填してデータ信号を14GB記録し、それを再生した。平均信号振幅に対して50%以下の振幅(P−P値)の信号をミッシングパルスとし、4個以上連続したミッシングパルスをドロップアウトとして検出した。なお、ドロップアウトは850m長1巻を評価し、1m当たりの個数に換算して、下記の基準で判定する。
◎:ドロップアウト 3個/m未満
○:ドロップアウト 3個/m以上、9個/m未満
×:ドロップアウト 9個/m以上
【0053】
[実施例1]
ポリエステルAとして、平均粒子径80nmの球状シリカ粒子を0.05質量%含有する固有粘度0.60dl/gのポリエチレン―2,6―ナフタレートのペレットを用意した。一方、熱可塑性樹脂B1として、粒子を含有しないシンジオタクチックポリスチレン(出光石油化学株式会社製、グレード:130ZC)のペレットを用意し、一方、熱可塑性樹脂B2として前述の粒子を含有しないシンジオタクチックポリスチレンに、平均粒子径200nmの球状シリカ粒子を0.20質量%含有させたシンジオタクチックポリスチレンのペレットを用意した。
それぞれのペレットを、170℃で3時間乾燥した後、3台の押出機ホッパーにそれぞれ供給し、溶融温度295℃で、B2/B1/A/B1/B2の順序で、延伸後のそれぞれの層の厚みが表1に示す厚みとなるように積層し、ダイから冷却ドラム上にシート状に共押出し、積層未延伸フィルムを得た。
このようにして得られた積層未延伸ポリエステルフィルムを、120℃に予熱し、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が135℃になるように加熱し、延伸倍率4.0倍で縦方向(製膜方向)の延伸を行った。続いて、135℃に加熱されたステンター内に供給し、横方向に4.5倍に延伸(第1段)後、更に170℃に加熱されたステンター内に供給して再度横方向に1.2倍に延伸した後、210℃の熱風で4秒間熱固定し、厚み4.5μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムから、テープ加工を施す際にB1層とB2層とを剥ぎ取りながら加工した。得られた積層フィルムおよび磁気テープの特性を表1に示す。
【0054】
[実施例2]
ポリエステルAとして、粒子を含有しない固有粘度0.60dl/gのポリエチレン―2,6―ナフタレートのペレットを用意した。一方、熱可塑性樹脂B1として、粒子を含有しないシンジオタクチックポリスチレン(出光石油化学株式会社製、グレード:130ZC)のペレットを用意し、一方、熱可塑性樹脂B2として前述の粒子を含有しないシンジオタクチックポリスチレンと、粒子を含有しない固有粘度0.60dl/gのポリエチレン―2,6―ナフタレートとを重量比20:80でブレンドしたものに、平均粒子径100nmの球状シリカ粒子を0.30質量%含有させたペレットを用意した。
それぞれのペレットを、170℃で3時間乾燥した後、3台の押出機ホッパーにそれぞれ供給し、溶融温度295℃で、B2/B1/A/B1/B2の順序で、延伸後のそれぞれの層の厚みが表1に示す厚みとなるように積層し、ダイから冷却ドラム上にシート状に共押出し、積層未延伸フィルムを得た。
このようにして得られた積層未延伸ポリエステルフィルムを、実施例1と同様な操作を繰り返して積層フィルムおよび磁気テープとした。得られた積層フィルムおよび磁気テープの特性を表1に示す。
【0055】
[実施例3]
ポリエステルAとして、粒子を含有しない固有粘度0.60dl/gのポリエチレンテレフタレートのペレットを用意した。一方、熱可塑性樹脂B1として、粒子を含有しないポリプロピレン(Tm:152℃、メルトフローレイト:5g/10分、ホモポリプロピレン)のペレットを用意し、一方、熱可塑性樹脂B2として前述の粒子を含有しないポリプロピレンに平均粒子径300nmの球状シリコーン粒子を0.20質量%含有させたペレットを用意した。
ポリエチレンテレフタレートのペレットを、170℃で3時間乾燥し、ポリプロピレンのペレットを80℃で3時間乾燥した後、3台の押出機ホッパーにそれぞれ供給し、溶融温度295℃および210℃で、B2/B1/A/B1/B2の順序で、延伸後のそれぞれの層の厚みが表1に示す厚みとなるように積層し、ダイから冷却ドラム上にシート状に共押出し、積層未延伸フィルムを得た。この際、フィルム製膜方向および積層方向に直交する方向、すなわち幅方向の両端部(エッジ部)は、A層のみからなる単層とした。
このようにして得られたエッジ単層部を有する積層未延伸ポリエステルフィルムを、75℃に予熱し、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が90℃になるように加熱し、延伸倍率4.0倍で縦方向(製膜方向)の延伸を行った。続いて、100℃に加熱されたステンター内に供給し、横方向に4.0倍に延伸(第1段)後、更に150℃に加熱されたステンター内に供給して再度横方向に1.2倍に延伸した後、180℃の熱風で4秒間熱固定し、厚み4.5μmの積層フィルムを得た。さらに、実施例1と同様な操作を繰り返して磁気テープとした。なお、ステンターで幅方向に延伸する際にクリップで把持するのは、前述のエッジ単層部を把持するようにした。得られた積層フィルムおよび磁気テープの特性を表1に示す。
【0056】
[実施例4]
ポリエステルAとして、SABICイノベーティブプラスチック社製のポリエーテルイミド(PEI)“Ultem1010”と固有粘度0.60dl/gのポリエチレンテレフタレートとを重量比15:85でブレンドした粒子を含有しないペレットを用意した。一方、熱可塑性樹脂B1として、平均粒径100nmの球状シリカ粒子を0.20質量%含有するポリプロピレン(Tm:152℃、メルトフローレイト:5g/10分、ホモポリプロピレン)のペレットを用意した。
ポリエーテルイミドとポリエチレンテレフタレートをブレンドしたペレットを170℃で3時間乾燥し、ポリプロピレンのペレットを80℃で3時間乾燥した後、3台の押出機ホッパーにそれぞれ供給し、溶融温度295℃および210℃で、B1/A/B1の順序で、延伸後のそれぞれの層の厚みが表1に示す厚みとなるように積層し、ダイから冷却ドラム上にシート状に共押出し、積層未延伸フィルムを得た。この際、フィルム製膜方向および積層方向に直交する方向、すなわち幅方向の両端部(エッジ部)は、A層のみからなる単層とした。
このようにして得られたエッジ単層部を有する積層未延伸ポリエステルフィルムを、85℃に予熱し、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が95℃になるように加熱し、延伸倍率4.0倍で縦方向(製膜方向)の延伸を行った。続いて、100℃に加熱されたステンター内に供給し、横方向に4.0倍に延伸(第1段)後、更に150℃に加熱されたステンター内に供給して再度横方向に1.2倍に延伸した後、180℃の熱風で4秒間熱固定し、厚み4.5μmの積層フィルムを得た。さらに、実施例1と同様な操作を繰り返して磁気テープとした。なお、ステンターで幅方向に延伸する際にクリップで把持するのは、前述のエッジ単層部を把持するようにした。得られた積層フィルムおよび磁気テープの特性を表1に示す。
【0057】
[実施例5]
ポリエステルA1として、粒子を含有しない固有粘度0.60dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレートのペレットを、ポリエステルA2として、平均粒径100nmの球状シリカ粒子を0.20質量%含有させた固有粘度0.60dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレートのペレットを用意した。一方、熱可塑性樹脂B1として、固有粘度0.60dl/gのポリエチレンテレフタレートに、平均粒径100nmの球状シリカ粒子を0.10質量%含有させたペレットを、熱可塑性樹脂B2として、固有粘度0.60dl/gのポリエチレンテレフタレートに、平均粒径200nmの球状シリカ粒子を0.20質量%含有させたペレットを、用意した。
それぞれのペレットを、170℃で3時間乾燥した後、4台の押出機ホッパーにそれぞれ供給し、溶融温度295℃で、B2/B1/A2/A1/B1/B2の順序で、延伸後のそれぞれの層の厚みが表1に示す厚みとなるように積層し、ダイから冷却ドラム上にシート状に共押出し、積層未延伸フィルムを得た。この際、フィルム製膜方向および積層方向に直交する方向、すなわち幅方向の両端部(エッジ部)は、A1層およびA2層のみからなる層とした。
このようにして得られた積層未延伸ポリエステルフィルムを、実施例1と同様な操作を繰り返して、積層フィルムとした。得られた積層フィルムおよび磁気テープの特性を表1に示す。
【0058】
[比較例1]
樹脂B1および樹脂B2を用いなかった以外は実施例1と同様な操作を繰り返した。得られた単層フィルムおよび磁気テープの特性を表1に示す。
【0059】
[比較例2]
ポリエステルA1として、平均粒子径80nmの球状の架橋ポリスチレン粒子を0.1質量%含有する固有粘度0.60dl/gのポリエチレンテレフタレートのペレットと、ポリエステルA2として、平均粒子径300nmの球状の架橋ポリスチレン粒子を0.2質量%含有する固有粘度0.60dl/gのポリエチレンテレフタレートのペレットを用意した。
それぞれのペレットを、170℃で3時間乾燥した後、2台の押出機ホッパーにそれぞれ供給し、溶融温度295℃で、A1/A2の順序で、延伸後のそれぞれの層の厚みが表1に示す厚みとなるように積層し、ダイから冷却ドラム上にシート状に共押出し、積層未延伸フィルムを得た。
このようにして得られたエッジ単層部を有する積層未延伸ポリエステルフィルムを、75℃に予熱し、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が90℃になるように加熱し、延伸倍率4.0倍で縦方向(製膜方向)の延伸を行った。続いて、100℃に加熱されたステンター内に供給し、横方向に4.0倍に延伸(第1段)後、更に170℃に加熱されたステンター内に供給して再度横方向に1.2倍に延伸した後、210℃の熱風で4秒間熱固定し、厚み4.5μmの積層フィルムを得た。さらに、実施例1と同様な操作を繰り返して磁気テープとした。得られた積層フィルムおよび磁気テープの特性を表1に示す。
【0060】
[比較例3]
ポリエステルA1として、粒子を含有しない固有粘度0.60dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレートのペレットと、ポリエステルA2として、平均粒子径100nmの球状シリカ粒子を0.5質量%含有する固有粘度0.60dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレートのペレットを用意した。一方、熱可塑性樹脂B1として、平均粒径100nmの球状シリカ粒子を0.20質量%含有する固有粘度0.60dl/gのポリエチレンテレフタレートのペレットを用意した。
それぞれのペレットを、170℃で3時間乾燥した後、3台の押出機ホッパーにそれぞれ供給し、溶融温度295℃で、A2/A1/B1の順序で、延伸後のそれぞれの層の厚みが表1に示す厚みとなるように積層し、ダイから冷却ドラム上にシート状に共押出し、積層未延伸フィルムを得た。この際、フィルム製膜方向および積層方向に直交する方向、すなわち幅方向の両端部(エッジ部)は、A1層およびA2のみからなる層とした。
このようにして得られた積層未延伸ポリエステルフィルムを、実施例1と同様な操作を繰り返して、積層フィルムとした。得られた積層フィルムおよび磁気テープの特性を表1に示す。
【0061】
[比較例4]
ポリエステルA1として、粒子を含有しない固有粘度0.60dl/gのポリエチレンテレフタレートのペレットを、ポリエステルA2として、平均粒子径子300nmの球状の架橋ポリスチレン粒子を0.2質量%含有する固有粘度0.60dl/gのポリエチレンテレフタレートのペレットを用意した。一方、熱可塑性樹脂B1として、粒子を含有しないポリプロピレン(Tm:152℃、メルトフローレイト:5g/10分、ホモポリプロピレン)に平均粒子径100nmの球状シリカ粒子を0.20質量%含有させたペレットを用意した。
ポリエチレンテレフタレートのペレットを、170℃で3時間乾燥し、ポリプロピレンのペレットを80℃で3時間乾燥した後、3台の押出機ホッパーにそれぞれ供給し、溶融温度295℃で、A2/A1/B1の順序で、延伸後のそれぞれの層の厚みが表1に示す厚みとなるように積層し、ダイから冷却ドラム上にシート状に共押出し、積層未延伸フィルムを得た。この際、フィルム製膜方向および積層方向に直交する方向、すなわち幅方向の両端部(エッジ部)は、A1層およびA2層のみからなる層とした。
このようにして得られたエッジ単層部を有する積層未延伸ポリエステルフィルムを、実施例3と同様な操作を繰り返して積層フィルムおよび磁気テープとした。なお、ステンターで幅方向に延伸する際にクリップで把持するのは、前述のエッジ単層部を把持するようにした。得られた積層フィルムおよび磁気テープの特性を表1に示す。
【0062】
[比較例5]
ポリエステルA1として、粒子を含有しない固有粘度0.60dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレートのペレットを用意した。一方、熱可塑性樹脂B1として、SABICイノベーティブプラスチック社製のポリエーテルイミド(PEI)“Ultem1010”と固有粘度0.60dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレートとを重量比15:85でブレンドしたものに、平均粒径300nmの球状シリコーン粒子を0.20質量%含有させたペレットを用意した。
それぞれのペレットを、170℃で3時間乾燥した後、3台の押出機ホッパーにそれぞれ供給し、溶融温度295℃で、B1/A1/B1の順序で、延伸後のそれぞれの層の厚みが表1に示す厚みとなるように積層し、ダイから冷却ドラム上にシート状に共押出し、積層未延伸フィルムを得た。
このようにして得られた積層未延伸ポリエステルフィルムを、実施例1と同様な操作を繰り返して、積層フィルムとした。しかし、B層の剥離ができなく磁気テープとはしなかった。
【0063】
[比較例6]
ポリエステルA1として、粒子を含有しない固有粘度0.60dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレートのペレットを用意した。一方、熱可塑性樹脂B1として、固有粘度0.60dl/gのポリエチレンテレフタレートに、平均粒径100nmの球状シリカ粒子を0.20質量%含有させたペレットを用意した。
それぞれのペレットを、170℃で3時間乾燥した後、3台の押出機ホッパーにそれぞれ供給し、溶融温度295℃で、A1/B1の順序で、延伸後のそれぞれの層の厚みが表1に示す厚みとなるように積層し、ダイから冷却ドラム上にシート状に共押出し、積層未延伸フィルムを得た。この際、フィルム製膜方向および積層方向に直交する方向、すなわち幅方向の両端部(エッジ部)は、A1層のみからなる層とした。
このようにして得られた積層未延伸ポリエステルフィルムを、実施例1と同様な操作を繰り返して、積層フィルムとした。得られた積層フィルムおよび磁気テープの特性を表1に示す。
【0064】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の積層フィルムは、磁気記録媒体としたときにエラーやドロップアウトが少なく、かつ優れた電磁変換特性を発現でき、薄膜化による記録容量の大幅向上が可能であることから、高密度磁気記録媒体、特にディジタル記録型磁気記録テープのベースフィルムとして好適に用いることができる。