特許第5926612号(P5926612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5926612中空構造体の製造方法、製造装置及び端面封止構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926612
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】中空構造体の製造方法、製造装置及び端面封止構造
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/18 20060101AFI20160516BHJP
【FI】
   B29C65/18
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-116917(P2012-116917)
(22)【出願日】2012年5月22日
(65)【公開番号】特開2013-240966(P2013-240966A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(72)【発明者】
【氏名】伊東 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】加納 右喜
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/038314(WO,A1)
【文献】 特開2008−143060(JP,A)
【文献】 特開平05−050499(JP,A)
【文献】 特開2001−018308(JP,A)
【文献】 実公昭61−021228(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/18
B29C 53/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空構造を有する樹脂コアの両側に樹脂シート又は樹脂板を有する熱可塑性樹脂製の板材を用い、第一金型と第二金型を用いて所定の中空構造体を製造する方法であって、
第一金型と第二金型の片方又は両方に刃部を設け、
第一金型と第二金型との間に板材をセットし、
セットされた板材を加熱し、
加熱された板材を、第一金型と第二金型の少なくとも一方で真空引きしながらプレスし、
第一金型と第二金型の間で、板材の両側の樹脂シート同士又は樹脂板同士が融着された薄肉の融着部を成形し、
この融着部を前記刃部で切断させることで、中空構造体の端部処理を行うことを特徴とする中空構造体の製造方法。
【請求項2】
中空構造を有する樹脂コアの両側に樹脂シート又は樹脂板を有する熱可塑性樹脂製の板材を用い、第一金型と第二金型を用いて所定の中空構造体を製造する装置であって、
第一金型と第二金型は、片方又は両方に刃部を設けたものであり、
板材を加熱するヒータ機構を備え、
第一金型と第二金型の間にセットされた板材をヒータ機構で加熱し、
加熱された板材を、第一金型と第二金型の少なくとも一方で真空引きしながらプレスし、
第一金型と第二金型の間で、板材の両側の樹脂シート同士又は樹脂板同士が融着された薄肉の融着部を成形し、
この融着部を前記刃部で切断させることで、中空構造体の端部処理を行うように設けたことを特徴とする中空構造体の製造装置。
【請求項3】
ハニカム状の中空構造を有する樹脂コアの両側に、この樹脂コアと同一材料の樹脂シート又は樹脂板を有する熱可塑性樹脂製の中空構造体の端面封止構造であって、
樹脂コアは、樹脂シート又は樹脂板よりも軟化温度が低くなるように構成されたものであり、
中空構造体の端面には、両側の樹脂シート同士又は樹脂板同士が融着した薄肉の融着部が設けられ、
この融着部は、両側の樹脂シート又は樹脂板同士の肉厚の総和よりも薄い肉厚を有するように、中空構造体の直線部分と曲線部分が組み合わされた外周部の全周に亘って設けられるか、または、中空構造体が有する孔部の周縁に設けられ、
中空構造体の融着部の近傍では、樹脂コアの中空を埋めるように樹脂溜りが形成されていることを特徴とする中空構造体の端面封止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空構造体の製造方法、製造装置及び端面封止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱可塑性樹脂を用いて成形した中空構造体が、各種分野において利用されている。この中空構造体は、中空構造を有する樹脂コアの上下面に樹脂シートを貼り付けた板材を用い、この板材に適宜加工を施して所定形状に成形したものである。
【0003】
このような中空構造体において、その端面に樹脂コアが露出すると、見た目が悪いことは勿論のこと、断面の中空部分にゴミが溜まるという問題や、断面から水等が浸入するという問題や、手触りが悪いという問題がある。
【0004】
これに対し、特許文献1には、内部の中空構造が露出しないように端面処理を行うことが記載されている。この端面処理は、図5に示すように、上下の成形型200,202で板材204を型締めし、このときに板材204の端部を押し潰すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−258133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の端面処理では、上下の成形型200,202で押し潰された部分206において、両側の樹脂シートの端部同士が密着するだけである。そのため、中空構造体の端面の確実な封止という点では不十分と考えられる。
【0007】
本発明は、前記問題点に鑑みて発明したものであって、端面が確実に封止された中空構造体を提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明を、下記構成を備えた中空構造体の製造方法とする。
【0009】
つまり、本発明は、中空構造を有する樹脂コアの両側に樹脂シート又は樹脂板を有する熱可塑性樹脂製の板材を用い、第一金型と第二金型を用いて所定の中空構造体を製造する方法であって、第一金型と第二金型の片方又は両方に刃部を設け、第一金型と第二金型との間に板材をセットし、セットされた板材を加熱し、加熱された板材を、第一金型と第二金型の少なくとも一方で真空引きしながらプレスし、第一金型と第二金型の間で、板材の両側の樹脂シート同士又は樹脂板同士が融着された薄肉の融着部を成形し、この融着部を前記刃部で切断させることで、中空構造体の端部処理を行うことを特徴とする。
【0010】
また、前記課題を解決するために、本発明を、下記構成を備えた中空構造体の製造装置とする。
【0011】
つまり、本発明は、中空構造を有する樹脂コアの両側に樹脂シート又は樹脂板を有する熱可塑性樹脂製の板材を用い、第一金型と第二金型を用いて所定の中空構造体を製造する装置であって、第一金型と第二金型は、片方又は両方に刃部を設けたものであり、板材を加熱するヒータ機構を備え、第一金型と第二金型の間にセットされた板材をヒータ機構で加熱し、加熱された板材を、第一金型と第二金型の少なくとも一方で真空引きしながらプレスし、第一金型と第二金型の間で、板材の両側の樹脂シート同士又は樹脂板同士が融着された薄肉の融着部を成形し、この融着部を前記刃部で切断させることで、中空構造体の端部処理を行うように設けたことを特徴とする。
【0012】
また、前記課題を解決するために、本発明を、下記構成を備えた中空構造体の端面封止構造とする。
【0013】
つまり、本発明は、ハニカム状の中空構造を有する樹脂コアの両側に、この樹脂コアと同一材料の樹脂シート又は樹脂板を有する熱可塑性樹脂製の中空構造体の端面封止構造であって、樹脂コアは、樹脂シート又は樹脂板よりも軟化温度が低くなるように構成されたものであり、中空構造体の端面には、両側の樹脂シート同士又は樹脂板同士が融着した薄肉の融着部が設けられ、この融着部は、両側の樹脂シート又は樹脂板同士の肉厚の総和よりも薄い肉厚を有するように、中空構造体の直線部分と曲線部分が組み合わされた外周部の全周に亘って設けられるか、または、中空構造体が有する孔部の周縁に設けられ、中空構造体の融着部の近傍では、樹脂コアの中空を埋めるように樹脂溜りが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、端面が確実に封止された中空構造体を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)−(d)は、本発明の一実施形態の製造装置を用いて中空構造体を製造する工程を順に説明する断面図である。
図2図1(d)の要部拡大図である。
図3】(a)−(d)は、板材を製造する工程を順に説明する斜視図である。
図4】同上の製造装置で製造した中空構造体の要部斜視図である。
図5】従来の製造装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を、添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の製造装置は、真空引き可能な第一金型2である上型4と、同じく真空引き可能な第二金型6である下型8とを備えた真空金型装置である。本実施形態では、後述するように上型4と下型8の両側から真空引きを行うが、片側だけから真空引きを行うように設けてもよいし、上型4と下型8の片方のみを真空引き可能な構造としてもよい。
【0018】
上型4と下型8には、両型4,8の近接離間を精密にガイドするガイド機構として、上型4と下型8のうち一方に、図示略のガイドブッシュを2、3又は4以上の複数箇所に設け、他方には、このガイドブッシュに一対一でスライド自在に嵌入する図示略のガイドピンを、複数個所に設けている。
【0019】
下型8は、上型4と対向する上面の中央部分を上方に突出させており、その突出部分の先端面9に、凹状の片側製品面である型面16を形成している。本実施形態では、この型面16を平坦な内底面を有する形状に設けているが、型面16の寸法形状は、成形したい中空構造体100の種類に応じて適宜設計可能である。
【0020】
下型8が有する先端面9のうち中央の型面16を囲む位置には、環状の刃受け部18が設けられている。この刃受け部18は、後述の刃部36が押し当る硬質の部分であり、先端面9に凹設した配置溝11内に、ウレタン等からなるクッション層19(図2参照)を介して嵌合配置されている。
【0021】
下型8と上型4の間には、平板状の板材22を所定位置及び姿勢にセットするための保持構造である保持板20が設けられている。この保持板20は、上方から板材22を嵌め込むことのできる凹段状に形成され、中央に貫通孔を有している。この貫通孔内に、下型8の中央部の先端面9が、水平方向に僅かな隙間を介して配される。
【0022】
保持板20は、ここに嵌め込んだ板材22の下面が、下型8の先端面9と同一又は略同一高さとなるようにセットするものである。尚、板材22の下面が下型8の先端面9よりも上側となるように板材22をセットする構造であってもよいし、或いは、板材22の下面が下型8の先端面9よりも下側となるように(つまり、板材22の下面に下型8の一部が食い込むように)板材22をセットする構造であってもよい。保持板20には、ここに嵌め込んだ板材22の周縁部分を上方から押さえ付けるクランプ機構として、長板状のクランプ板26を、複数個所に回動自在に設けている。
【0023】
上型4は、下型8と対向する下面の中央部分を下方に突出させており、その突出部分の先端面29に、凹状の片側製品面である型面30を形成している。本実施形態では、この型面30を、下型8の型面16と同様の形状に設けているが、型面30の寸法形状についても、成形したい中空構造体100の種類に応じて適宜設計が可能である。例えば、型面16や型面30を、平坦面と曲面を組み合わせて複雑な立体形状となるように形成してもよいし、曲面だけの立体的な形状となるように形成してもよい。
【0024】
上型4が有する先端面29のうち、型面30を囲む箇所には、環状の刃部36が配置されている。具体的には、上型4のうち下方に突出する中央部分を、型面30を端部に有する円状の内周側パーツ32と、この内周側パーツ32を囲むように形成される環状の外周側パーツ34とで形成し、両パーツ32,34間に挟持することで環状の刃部36を固定している。刃部36は、その全周に亘って先端に刃先を形成したパーツであり、この刃部36の刃先が、内周側及び外周側パーツ32,34の先端面(つまり上型4に形成される先端面29)から、1.5mm程度の所定距離d1だけ下方に突出するように組み込んでいる(図2参照)。
【0025】
また、本実施形態の製造装置では、保持板20にセットされた板材22に対して加熱を行うためのヒータ機構として、図示略の加熱盤を設けている。この加熱盤は、上型4を上方に退避させ、下型8を下方に退避させた状態において、保持板20にセットされた板材22と上型4との間の位置と、この板材22と下型8との間の位置にまで、側方からスライド移動されるものである。板材22の上下両側からの加熱を完了した後に、加熱盤は再び側方にスライド移動される。
【0026】
中空構造体100を成形するために用いる板材22は、以下の構造を備えたものである。
【0027】
つまり、この板材22は、図3(a)−(d)に示す工程で形成されるものである。まず、図3(a)に示すように、ポリプロピレン製のシート40に真空成形を施し、このシート40に多数列のハーフハニカムウェブ42を形成する。次いで、図3(b)に示すように、各ハーフハニカムウェブ42が起立するようにシート40を一方向に折り畳んでゆき、隣接するハーフハニカムウェブ42同士が互いに密着し、連続したハニカム構造を形成するように組み合わせる。このとき、隣接するハーフハニカムウェブ42間に形成された一直線状の平坦部分44が、一面側と他面側に交互に配されてゆく。隣接する平坦部分44同士は互いに密着し、連続したスキン面を形成する。ここで図3(c)に示すように、隣接する平坦部分44同士を熱溶着させることで、中空の六角柱が並設されたハニカム状の樹脂コア46が形成される。
【0028】
次いで、図3(d)に示すように、この樹脂コア46に形成される一面側と他面側のスキン面に対して、それぞれポリプロピレン製の樹脂シート48をラミネートさせてゆく。樹脂コア46と樹脂シート48とは、同一材料であることが貼り合わせ強度の点で好ましいが、樹脂シート48としてポリプロピレン以外の熱可塑性樹脂シートを用いてもよい。本実施形態で用いる板材22は、このように形成されたものであり、中空構造の層をなす樹脂コア46を、一対の樹脂シート48によって厚み方向の両側からサンドイッチした構造の板材となる。そのため、この板材22は単位重量あたりの強度が非常に高く、機械的特性において等方性に優れるとともに、熱可塑性樹脂製であるから二次加工性にも優れる。なお、樹脂シート48の代わりに熱可塑性樹脂製の樹脂板を用い、この樹脂板を樹脂コア46の両側に一体に成形するように設けてもよい。
【0029】
この板材22を基にして、本実施形態の製造装置で中空構造体100を成形する際には、保持板20内にセットされるように板材22を所定の寸法形状(ここでは平面視矩形状)に切断する。板材22の端面には、樹脂コア46の切り口が露出する。
【0030】
次に、この板材22を基にして中空構造体100を製造するための工程について、図1に基づいて述べる。
【0031】
図1(a)に概略的に示すように、保持板20の凹段部内に、平板状に切断した板材22を嵌め込んでセットする。この板材22は、予熱炉等の適宜の加熱装置を用いて、予め一定時間だけ予備加熱を施したものである。板材22を嵌め込んでセットした後は、複数のクランプ板26をそれぞれ回動させ、各クランプ板26を板材22上面の周縁部分に当てることで、板材22の周縁部分を挟持する。ここでの板材22の挟持は、板材22の落下を防止し、且つ、後述の真空成形時に板材22が多少動くことを許容する仮固定とする。板材22が動かないように固定した場合には、板材22の樹脂シート48が伸ばされて薄くなり過ぎ、衝撃強度等が低下するおそれもあるが、このような仮固定とすることで、両側の樹脂シート48等が伸ばされて局所的に薄くなり過ぎることが防止される。但し、クランプで板材22を動かないように固定した場合であっても、成形は可能である。
【0032】
このように板材22をセットしたうえで、側方から板材22の上下位置にまで加熱盤をスライド移動させ、この加熱盤の熱により板材22をさらに一定時間だけ本加熱する。ここでの本加熱は、予備加熱よりも高温且つ短時間で行う。換言すれば、予備加熱は低温で長時間加熱するものであり、この予備加熱によって、板材22を樹脂コア46の各中空部内に至るまで全体に軟化させておくことができる。
【0033】
本実施形態では、板材22を加熱するヒータ機構として加熱盤を設けているが、他の機構により加熱しても構わない。また、本加熱を行う前に予備加熱を行っているが、予備加熱の工程を省略することも可能である。
【0034】
本加熱が完了すると、加熱盤を下型8と上型4の間から退避させたうえで、図1(b)−(d)に示すように上型4を下降させ、下型8を上昇させることで、互いに接近させてゆく。このとき、下型8と上型4の両方から、真空孔や真空用割り面を通じて真空引きを行う。両側から真空引きすることで、成形時に板材22の表面に皺等を生じることが防止されるが、真空引きを片側のみで行うことも可能である。真空孔は、下型8や上型4の平坦な部分よりも屈曲した部分に多く設けることが好ましく、特に、屈曲部の近傍に真空孔を配置することが好ましい。このように真空孔を配置することで、板材22を金型に沿って成形しやすくなる。例えば、平面視において中空構造体100の隅部の近傍となる箇所や、側面視において中空構造体100の外周縁の湾曲部分の近傍となる箇所に、真空孔を配置することが好ましい。
【0035】
上型4を下降させていくと、保持板20にセットされる板材22に対して、上型4において下方に突出させた先端面29が押し当たる。更に上型4を下降させていくと、図1(d)や図2に示すように、上型4の型面30と下型8の型面16との間において、板材22が所定形状に真空成形される。板材22のうちこの型面30,16間で成形される部分が、製品部分つまり所望の中空構造体100となる。板材22のうち、クランプ板26と保持板20との間に挟まれて残存する周縁部分54は、ロス部分となる。
【0036】
板材22の製品部分とロス部分との間には、薄肉の融着部38が形成される。この融着部38は、図1(d)に示す型締め時において、上型4の先端面29と下型8の先端面9の間で板材22が厚み方向に潰されることで、薄肉に成形される部分である。このとき、上下の先端面29,9同士は、1.4mm程度の僅かな距離d2を隔てて平行を保ち、対向する位置関係にある。そのため、この融着部38は、距離d2だけの厚み寸法で成形される薄肉部分となり、製品部分の側端面から外周側にむけてリブ状に形成される。
【0037】
この融着部38は、上記のように型内で薄肉に潰されると同時に、上型4に設けた環状の刃部36によって全周に亘って切断される。図2に拡大して示すように、刃部36は、上型4の先端面29のうち型面30に近接した箇所に配されており、融着部38を、中空構造体100となる製品部分の側端面から外周側に1.5mm程度突出した部分50を残すように、切断する。融着部38の他の部分52は、板材22の周縁部分54と共にロス部分となる。
【0038】
ところで、上型4の先端面29から刃部36の刃先が突出する距離d1は、型締め時の上下の先端面29,9間の距離d2よりも僅かに(0.1mm程度)大きく設定している。この距離d1,d2間の差は、刃受け部18に隣接するクッション層19の弾性によって吸収される。
【0039】
つまり、刃部36の刃先が刃受け部18の上面に押し当たったときに、刃受け部18が0.1mm程度だけ弾性的に押し下がる。これにより、刃部36によって、型締め時に融着部38が確実に切断されるように設けている。尚、距離d1と距離d2の差がゼロとなるように設けてもよい。
【0040】
繰り返しの使用によって刃部36が磨耗、欠損等したときには、内周側パーツ32と外周側パーツ34との間に組み込んだ刃部36を取り外し、新しい刃部36に交換すればよい。刃受け部18についても交換可能とすることが好ましい。
【0041】
以上のようにして、板材22を基にして真空成形および切断された中空構造体100は、一定時間冷却した後に上型4を上昇させた後で、保持板20から取り出される。板材22のロス部分については、クランプ板26を回動させて挟持を解除することで、保持板20から取り出される。
【0042】
図4に要部を示すように、成形された中空構造体100においては、この中空構造体100の一面側である上側の樹脂シート48が、上型4の型面30が有する内周面31やその近傍の凹曲面によって下方に曲げられ、中空構造体100の側端面を封止する封止部58の上半部を形成する。他方、中空構造体100の他面側である下型の樹脂シート48が、下型8の型面16が有する内周面17やその近傍の凹曲面によって上方に曲げられ、中空構造体100の側端面を封止する封止部58の下半部を形成する。
【0043】
薄肉リブ状の融着部38は、中空構造体100の側端を封止する封止部58の上半部と下半部の境界部分から、僅かな距離だけ外側方に突設される。この融着部38は、両側の樹脂シート48が樹脂コア46を挟んで熱融着された部分であり、その肉厚は1.4mm程度となる。元々の板材22が有する樹脂シート48の肉厚は1mm程度である。即ち、融着部38の肉厚は、両側の樹脂シート48の肉厚の総和の七割程度となるように成形されており、この融着部38を介して端面が強固に封止される構造となっている。製品部分の端面から突出する融着部38は、離型後に切除してもよい。
【0044】
中空構造体100の端面近傍では、樹脂コア46の中空を埋めるように樹脂溜りが形成され、この樹脂コア46と樹脂シート48とが強固に一体化されるので、中空構造体100の端部の溶着強度や衝突強度が一層向上している。特に、樹脂コア46がハニカム形状である場合には、樹脂の溜まる中空部分が均等にあって都合がよい。端面をより確実に封止するには、樹脂コア46の軟化温度を樹脂シート48の軟化温度よりも低くなるように構成し、同じ温度で加熱しても樹脂コア46のほうが軟化しやすくする構成が好適である。例えば、樹脂コア46をホモプロピレン又はブロックポリプロピレンで形成し、樹脂シート48をランダムポリプロピレンで形成することで軟化温度を相違させてもよいし、樹脂コア46をポリエチレンで形成し、樹脂シート48をポリプロピレンで形成するといったように、樹脂コア46と樹脂シート48を異素材にすることで軟化温度を相違させてもよい。
【0045】
本実施形態においては、図3に基づいて上述したように、多数列のハーフハニカムウェブ42が順に起立するようにシート40を一方向に折り畳むことでハニカム構造の樹脂コア46を形成し、この樹脂コア46に対して樹脂シート48を貼り付けている。そのため、この折り畳み方向(図3中の左右方向)と直交する方向に沿って形成された端面では、特に樹脂シート48と樹脂コア46との間で一体性が損なわれ難く、強度が得られる構造となる。
【0046】
尚、中空構造体100やその外周縁の封止部58及び融着部38の形状は、上型4や下型8の形状によって自在に設計することができる。本実施形態では、中空構造体100の外周縁を、四辺をなす直線部分で形成しているが、直線部分と曲線部分を多様に組み合わせた形状が採用可能である。また、本実施形態では、製品となる中空構造体100の外周縁の全周に亘って融着部38を形成しているが、外周縁の一部だけに融着部38を形成し、他の部分(直線部分)を成形後に熱刃等で封止することも可能である。中空構造体100の種類によっては、外周縁の一部に封止部58及び融着部38を形成し、その他の部分を封止しない構造とすることも可能である。融着部38の形状や厚みが箇所ごとに相違する構造であってもよい。
【0047】
また、本実施形態では、中空構造体100の外周縁にだけ融着部38を形成しているが、中空構造体100が孔部を有する構造である場合には、その孔部の周縁に同様の融着部38を形成し、これを切断等することも可能である。
【0048】
また、本実施形態では、上型4と下型8の間で単一の中空構造体100を成形しているが、一対の型4,8間で複数の中空構造体100を成形するように設けてもよい。この場合、一対の型4,8間で隣接する中空構造体100の境界部分において、融着部38を形成することが可能である。
【0049】
このように、本実施形態の製造装置で得られる中空構造体100では、両側の樹脂シート48の肉厚の総和(又は両側の樹脂板の肉厚の総和)よりも薄くなるまで熱融着された融着部38を介して、中空構造体100の端部が強固に封止される。そのため、中空構造体100の端部からの水等の浸入は確実に防止され、強度も確保される。
【0050】
以上、図面に基づいて説明したように、本実施形態の中空構造体100の製造方法は、下記の構成を備えたものである。
【0051】
つまり、本実施形態の中空構造体100の製造方法では、中空構造を有する熱可塑性樹脂製の樹脂コア46の厚み方向の両側に、同じく熱可塑性樹脂製の樹脂シート48を貼り付けて形成された熱可塑性の板材22を用いる。樹脂コア46の両側に樹脂板を一体に成形した板材22を用いてもよい。この板材22を、型内で熱プレス加工することによって、所定の中空構造体100を製造する。具体的には、中央部分に型面30を有する第一金型2(上型4)と、この型面30と対をなす型面16を中央部分に有する第二金型6(下型8)との間に、予熱を加えておいた板材22をセットする。セットされた板材22に対して、ヒータ機構をなす加熱盤を近接させ、板材22を本加熱する。そして、本加熱が完了した板材22を、真空金型である第一金型2と第二金型6の少なくとも一方で真空引きしながら、第一金型2と第二金型6を近接させてプレスし、両側の型面16,30間で製品部分を成形する。第一金型2の型面30を囲む先端面29には環状の刃部36を設けており、第一金型2の型面30を囲む先端面29と、第二金型6の型面16を囲む先端面9との間で、板材22の両側の樹脂シート48同士が融着された薄肉の融着部38を、中空構造体100の製品部分の外周側に位置するように成形し、この融着部38を、前記刃部36によって型締めと同時に切断させる。これにより、中空構造体100の端部処理を行う。
【0052】
本実施形態の中空構造体100の製造方法によれば、中空構造体100の端面を、両側の樹脂シート48の肉厚の総和よりも薄くなるまで熱融着させた融着部38を介して強固に封止することや、両側の樹脂板の肉厚の総和よりも薄くなるまで熱融着させた融着部38を介して強固に封止することができる。そのため、中空構造体100の端部からの水等の浸入が確実に防止され、強度も確保される。しかも、型内で切断作業が完了することから、製造工程が簡略化される。
【0053】
また、本実施形態の中空構造体100の製造装置は、下記の構成を備えたものである。
【0054】
つまり、本実施形態の中空構造体100の製造装置は、中空構造を有する熱可塑性樹脂製の樹脂コア46の厚み方向の両側に、同じく熱可塑性樹脂製の樹脂シート48を貼り付けて形成された熱可塑性の板材22を用いる。樹脂コア46の両側に樹脂板を一体に成形した板材22を用いてもよい。この板材22を、中央部分に型面30を有する第一金型2(上型4)と、型面30と対をなす型面16を中央部分に有する第二金型6(下型8)の間で熱プレス加工することによって、所定の中空構造体100を製造する。第一金型2と第二金型6は、共に真空引き可能であり、且つ、第一金型2の型面30を囲む先端面29に環状の刃部36を設けたものである。また、板材22を加熱するヒータ機構を備えている。第一金型2と第二金型6との間に、予熱を加えておいた板材22をセットする。セットされた板材22に対して、ヒータ機構をなす加熱盤を近接させ、板材22を本加熱する。そして、本加熱が完了した板材22を、真空金型である第一金型2と第二金型6の少なくとも一方で真空引きしながら、第一金型2と第二金型6を近接させてプレスし、両側の型面16,30間で製品部分を成形する。このとき、第一金型2の型面30を囲む先端面29と、第二金型6の型面16を囲む先端面9との間で、板材22の両側の樹脂シート48同士が融着された薄肉の融着部38を、中空構造体100の製品部分の外周側に位置するように成形し、この融着部38を、前記刃部36によって型締めと同時に切断させる。これにより、中空構造体100の端部処理を行う。
【0055】
本実施形態の中空構造体100の製造装置によれば、中空構造体100の端面を、両側の樹脂シート48の肉厚の総和よりも薄くなるまで熱融着させた融着部38を介して、強固に封止することや、両側の樹脂板の肉厚の総和よりも薄くなるまで熱融着させた融着部38を介して強固に封止することができる。そのため、中空構造体100の端部からの水等の浸入は確実に防止され、強度も確保される。しかも、型内で切断作業が完了することから、製造工程が簡略化される。
【0056】
なお、本実施形態では、第一金型2にだけ刃部36を設けているが、刃部36は、第一金型2と第二金型6の片方又は両方に設けてあればよい。つまり、刃部36を第二金型6の先端面9側に設け、この刃部36の刃先が押し当る刃受け部18を第一金型2の先端面29側に設けてもよいし、第一金型2の先端面29と第二金型6の先端面9の両方に、刃部36と刃受け部18を設け、それぞれの刃部36が対向する箇所の刃受け部18に押し当たって融着部38を切断するように設けてもよい。また、上下の刃部36の刃先同士が当って融着部38を切断するように設けてもよい。
【0057】
また、本実施形態の中空構造体100の端面封止構造は、中空構造を有する可塑性樹脂製の樹脂コア46の厚み方向の両側に、同じく熱可塑性樹脂製の樹脂シート48を貼り付けて形成される熱可塑性の中空構造体100の、端面封止構造である。中空構造体100は、樹脂コア46の両側に樹脂板が一体に成形されたものであってもよい。この端面封止構造では、中空構造体100の端面に、両側の樹脂シート48同士又は樹脂板同士が樹脂コア46を挟んで融着するように成形された薄肉の融着部38が設けられる。この融着部38の肉厚は、両側の樹脂シート48又は樹脂板の肉厚の総和よりも薄くなるように成形されている。
【0058】
本実施形態の中空構造体100の端面封止構造によれば、中空構造体100の端面を、融着部38を介して確実に封止することができる。この融着部38は、両側の樹脂シート48又は樹脂板の肉厚の総和よりも薄くなるように成形されるので、仮に樹脂コア46が溶融していない場合であっても、融着部38によって水の浸入が防がれる。更に、端面に樹脂コア46が露出しないことは勿論のこと、強度も向上したものとなる。
【0059】
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。
【0060】
例えば、本実施形態では、刃部36をその刃先の突出量が一定となるように第一金型2に固定しているが、切断時に刃先が所定距離d1だけ突出するように刃部36を進退させる駆動機構を備えてもよい。刃部36を第二金型6側に備える場合も、同様の機構を備えることが可能である。
【0061】
また、板材22が有する樹脂コア46の中空構造も、上述のハニカム構造に限定されず、平板状の隔壁が一方向に多数列設される中空構造、中空の円錐台が多数並設される中空構造等の、多様な構造が採用可能である。また、樹脂コア46を、縦リブ状の隔壁が一方向に多数配列された形状とし、この樹脂コア46の上下両側に平板状の樹脂板を一体に成形した所謂ハーモニカ状の構造としてもよい。成形される中空構造体100の形状も、上述の矩形板形状に限定されず、例えば半球状の形状や、凸部や凹部、段部等を複数有する立体的な形状であってもよい。成形された中空構造体100は、多様な用途に用いることが可能であり、例えば、組立式のコンテナを形成する板材としてこの中空構造体100を採用することが考えられる。
【0062】
その他の構成においても、本発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0063】
2 第一金型
6 第二金型
22 板材
36 刃部
38 融着部
46 樹脂コア
48 樹脂シート
100 中空構造体
図1
図2
図3
図4
図5