(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926627
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】鉄道車両および戸袋柱
(51)【国際特許分類】
B61D 19/02 20060101AFI20160516BHJP
B61D 19/00 20060101ALI20160516BHJP
B61D 17/08 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
B61D19/02 B
B61D19/00 A
B61D17/08
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-133783(P2012-133783)
(22)【出願日】2012年6月13日
(65)【公開番号】特開2013-256214(P2013-256214A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2014年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 直朗
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直弘
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 一昌
(72)【発明者】
【氏名】和木 謙治
【審査官】
鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−126360(JP,A)
【文献】
特開2000−344096(JP,A)
【文献】
特開2004−066883(JP,A)
【文献】
特開2010−023696(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3041523(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 19/02
B61D 17/08
B61D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側面部および前記外側面部よりも車幅方向内側に設けられる内側面部が連結部により互いに連結されたダブルスキン構造の戸袋柱を含む、側出入口を取り囲む側出入口周辺部材と、
前記側出入口の閉止時において、周縁部がゴムシールを介して前記側出入口周辺部材における前記側出入口に沿う縁部に押し付けられ、前記側出入口の開放時において、前記戸袋柱の前記内側面部に面する戸袋空間に引き込まれる側引戸と、を備え、
前記側出入口周辺部材の前記縁部における上辺および下辺ならびに前記戸袋柱側の側辺からなる領域の少なくとも一部には、前記内側面部よりも車幅方向内側に突出し、その先端で前記ゴムシールと接触する突出部が設けられている、鉄道車両。
【請求項2】
前記側出入口の閉止時における前記側引戸の周縁部が前記縁部に押し付けられる前の状態での前記側引戸と前記突出部との間のクリアランスが、前記側出入口の開放時における前記側引戸と前記戸袋柱の前記内側面部との間のクリアランスよりも小さい、請求項1に記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記戸袋柱は、前記外側面部の前記側出入口側の端部と前記内側面部の前記側出入口側の端部とが収束する縦桟部を有しており、
前記突出部は、前記縦桟部に設けられている、請求項1または2に記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記ゴムシールは、前記側引戸の周縁部に取り付けられている、請求項1〜3の何れか一項に記載の鉄道車両。
【請求項5】
前記側引戸の周縁部には、車幅方向外側を向く主面から車幅方向内側に後退する段差部が形成されており、この段差部に前記ゴムシールが固定されている、請求項4に記載の鉄道車両。
【請求項6】
前記側引戸の幅方向の両端部を押圧するシリンダを備え、前記側引戸が前記シリンダによって押圧されたときに、前記突出部の先端が前記ゴムシールと接触する、請求項4または5に記載の鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関し、特に側出入口回りの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば新幹線(登録商標)などの高速で走行する鉄道車両では、良好な居住性を得るために、側出入口を開閉する側引戸に、車内の圧力変動が抑えられるように気密構造が採用されている。例えば、特許文献1には、
図5に示すように、側出入口110の両側に配置された戸袋柱130および戸当り柱140に側引戸120の両端部がゴムシール150を介して押し付けられるように構成された鉄道車両100が開示されている。
【0003】
戸袋柱130は、気密性確保のために比較的に大きな剛性が必要であり、車両長手方向にフラットなダブルスキン構造とされている。具体的に、戸袋柱130は、外側面部131および内側面部132が連結部133により連結された構成を有している。また、特許文献1に開示された鉄道車両100では、戸袋柱130における側出入口110に沿う縁部135が内側面部132よりも車幅方向外側に位置しており、この縁部135にゴムシール150が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−58568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダブルスキン構造の戸袋柱130を用いた場合には、その厚さのために、内側面部132が、当該内側面部132に面する戸袋空間に側引戸120が引き込まれる際に、側引戸120に接近することになる。そこで、側引戸120の引き込みが良好に行われるようにするために、側引戸120と構体(戸袋柱130)との間に内側面部132の全面に亘って一定のクリアランスを確保する必要がある。そのため、側引戸120と戸袋柱130との間のクリアランスが狭い場合には、そのクリアランスを大きくする必要がある。
【0006】
通常、戸袋柱130を含む構体と側引戸120とは別々に製作されるため、上記のようなクリアランスの調整作業は、構体を作製した後に構体に側引戸120を組み込む工程で行われる。例えば、側引戸の良好な引き込みのためのクリアランス調整作業は、戸袋柱130を油圧ジャッキなどで押圧しながら構体における戸袋柱130を含むエリアを加熱する等して、内側面部132の全面に亘って戸袋柱130と側引戸120の間のクリアランスを一定値以上に大きくするように行われる。
【0007】
また、上記調整作業に加えて、気密性を確保するために、戸閉時(以下、「閉止時」ともいう)における側引戸120が縁部135に押し付けられる前の状態での側引戸と構体とのクリアランスも調整する必要がある。すなわち、側引戸120と構体には、側引戸120を戸袋空間に良好に引き込むためのクリアランス調整作業と、戸閉時における気密性確保のためのクリアランス調整作業の双方が必要である。
【0008】
このように、従来の鉄道車両においては、側引戸と構体とのクリアランス調整に多大な時間と労力が必要であるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、側引戸と構体とのクリアランス調整作業を低減させることのできる鉄道車両、およびこの鉄道車両に好適な戸袋柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の鉄道車両は、外側面部および前記外側面部よりも車幅方向内側に設けられる内側面部が連結部により互いに連結されたダブルスキン構造の戸袋柱を含む、側出入口を取り囲む側出入口周辺部材と、前記側出入口の閉止時において、周縁部がゴムシールを介して前記側出入口周辺部材における前記側出入口に沿う縁部に押し付けられ、前記側出入口の開放時において、前記戸袋柱の前記内側面部に面する戸袋空間に引き込まれる側引戸と、を備え、前記側出入口周辺部材の前記縁部における上辺および下辺ならびに前記戸袋柱側の側辺からなる領域の少なくとも一部には、前記内側面部よりも車幅方向内側に突出し、その先端で前記ゴムシールと接触する突出部が設けられている。
【0011】
上記の構成では、側出入口周辺部材の縁部にゴムシールと接触する突出部が設けられているために、戸袋柱の内側面部と側引戸の間のクリアランス(側引戸の良好な引き込みのためのクリアランス)が、突出部と側引戸の間のクリアランス(気密性確保のためのクリアランス)よりも大きくなる。それ故に、突出部という狭い範囲においてクリアランス調整作業を行えばよく、側引戸と構体とのクリアランス調整作業を低減させることができる。
【0012】
また、本発明の戸袋柱は、鉄道車両の側出入口の片側に配置される戸袋柱であって、外側面部と、前記外側面部よりも車幅方向内側に設けられる内側面部と、前記外側面部と前記内側面部とを連結する連結部と、外側面部の前記側出入口側の端部と前記内側面部の前記側出入口側の端部とが収束する縦桟部と、前記縦桟部に設けられた、前記内側面部よりも車幅方向内側に突出する突出部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、側引戸と構体とのクリアランス調整作業を低減させることのできる鉄道車両、およびこの鉄道車両に好適な戸袋柱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鉄道車両の側出入口回りの構造の断面図
【
図2】(a)は側出入口の回りの構体を車幅方向内側から見た図、(b)は(a)のIIB−IIB線断面図
【
図5】従来の鉄道車両の側出入口回りの構造の断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1に、本発明の一実施形態に係る鉄道車両1を示す。この鉄道車両1は、側出入口2を取り囲む側出入口周辺部材7と、側出入口2を開閉する側引戸3とを備えている。なお、
図1においては、左右方向が車両長手方向であり、上下方向が車幅方向である。
【0017】
図2(a)に示すように、側出入口2は縦長の略長方形状をなしている。側出入口周辺部材7は、側出入口2に沿う枠状の縁部を有している。具体的に、側出入口周辺部材7は、側出入口2の左右両側に配置された戸当り柱5および戸袋柱6と、側出入口2の上方に配置された鴨居部材16と、側出入口2の下方に配置された敷居部材17とを有している。さらに、側出入口周辺部材7は、戸当り柱5と鴨居部材16および敷居部材17の間に配置された固定側コーナー部材13と、戸袋柱6と鴨居部材16および敷居部材17の間に配置された可動側コーナー部材14とを有している。コーナー部材13,14は、側出入口2の四半円状の四隅を形成している。
【0018】
ただし、側出入口周辺部材7の構成は、
図2(a)に示すものに限られない。例えば、下側の可動側コーナー部材14が設けられていない代わりに、戸袋柱6が台枠を構成する側梁に接合されていてもよい。あるいは、上側の可動側コーナー部材14が設けられていない代わりに、戸袋柱6が鴨居部材16または軒桁18に接合されていてもよい。
【0019】
戸袋柱6および戸当り柱5は、
図2(b)に示すように、鉄道車両1の輪郭に沿って僅かに車幅方向に湾曲しながら上下に延びている。戸袋柱6および戸当り柱5は、押し出し成形された部材であり、押し出し方向が長手方向となるように配置されている。
【0020】
戸袋柱6を挟んで側出入口2と反対側には、車両長手方向に延びる複数の形材15が上下に並んで配置されており、これらの形材15と戸袋柱6とが溶接により接合されている。戸袋柱6および形材15は、側引戸3が引き込まれる戸袋空間10(
図1参照)を車幅方向外側から覆っている。
【0021】
図1に戻って、側引戸3の車幅方向内側には、車両内空間から側出入口2に至る通路を形成する一対のカバー11が配置されている。各カバー11は、他方のカバー11とは反対向きに開口する断面略コ字状をなしている。戸袋柱6側のカバー11は戸袋空間10を車両内空間および通路から区画しており、戸当り柱5側のカバー11と戸当り柱5の間には側引戸3を当て止めるストッパー30が配置されている。
【0022】
戸袋柱6および戸当り柱5は、側出入口2に沿う縦桟部64,51をそれぞれ有している。これらの縦桟部64,51の外側面は側出入口2に近づくにつれて車幅方向内側に向かうように傾斜しており、縦桟部64,51が側出入口2に向かって先細りとなっている。戸袋柱6の縦桟部64および可動側コーナー部材14における円弧部の中間点より戸袋柱6側の部分は、側出入口周辺部材7の縁部の一方の側辺を構成し、戸当り柱5の縦桟部51および固定側コーナー部材13における円弧部の中間点より戸当り柱5側の部分は、側出入口周辺部材7の縁部の他方の側辺を構成する。一方、鴨居部材16の下部および上側のコーナー部材13,14における円弧部の中間点より鴨居部材16側の部分は側出入口周辺部材7の縁部の上辺を構成し、敷居部材17の上部および下側のコーナー部材13,14における円弧部の中間点より敷居部材17側の部分は、側出入口周辺部材7の縁部の下辺を構成する。
【0023】
側引戸3は、側出入口2よりも僅かに大きな縦長の長方形状をなしている。側引戸3は、図略の駆動手段により、幅方向の両端部が戸袋柱6の縦桟部64および戸当り柱5の縁部51と重なる閉止位置と、側引戸3が戸袋柱6および形材15と対向する開放位置との間で車両長手方向に沿って移動させられる。すなわち、側引戸3は、閉止位置に移動したときに側出入口2を閉止し、開放位置に移動したときに戸袋空間10に引き込まれて側出入口2を開放する。なお、側引戸3の戸当り柱5側の端面には、側引戸3が閉止位置に移動したときに、ストッパー30に当接する当接部材35が取り付けられている。
【0024】
本実施形態では、側引戸3の周縁部に、当該周縁部に沿う環状のゴムシール4が取り付けられている。具体的には、側引戸3の周縁部には、車幅方向外側を向く主面3aから車幅方向内側に後退する段差部31が形成されており、この段差部31にゴムシール4が固定されている。
【0025】
カバー11で囲まれる空間内には、側出入口2の閉止時において側引戸3の周縁部をゴムシール4を介して側出入口周辺部材7の側出入口2に沿う縁部に押し付けるためのシリンダ12が配置されている。シリンダ12は、側引戸3の幅方向の両端部を直接的に押圧するようにロッドが車幅方向に伸縮する向きで配置されていてもよいし、側引戸3の両端部をリンク機構を介して押圧するようにロッドが上下方向に伸縮する向きで配置されていてもよい。
【0026】
ただし、側引戸3の周縁部は、必ずしも全周に亘ってゴムシール4を介して側出入口周辺部材7の縁部に押し付けられる必要はない。例えば、ゴムシール4が下向きに開口する逆U字状をなしており、側引戸3の周縁部が側出入口7の縁部の両側辺および上辺に押し付けられるようになっていてもよい。
【0027】
次に、
図3を参照して、戸袋柱6の構成をより詳しく説明する。
【0028】
戸袋柱6は、車両長手方向にフラットなダブルスキン構造を有している。具体的に、戸袋柱6は、幅方向外側を向く外側面部61と、外側面部61よりも車幅方向内側に設けられた内側面部62を含む。外側面部61と内側面部62とは複数の連結部63によって互いに連結されている。換言すれば、連結部63によって外側面部61と内側面部62の間に空隙が確保されている。
【0029】
内側面部62は、上述した縦桟部64に真っすぐにつながっている。一方、外側面部61の側出入口2側の端部は、縦桟部64の外側面と連続した傾斜面を形成するように車幅方向内側に折れ曲がっている。換言すれば、縦桟部64は、内側面部62の側出入口2側の端部と外側面部61の側出入口2側の端部とが収束する部分である。ただし、内側面部62は必ずしも全幅に亘って真っすぐである必要はなく、例えば
図4に示すように、内側面部62の側出入口2側の端部が車幅方向外側に向かって折れ曲がっていてもよい。
【0030】
縦桟部64には、側引戸3が閉止位置に移動したときのゴムシール4と対応する領域に、内側面部62よりも車幅方向内側に突出する突出部65が設けられている。すなわち、突出部65は、図中に矢印Cで示すように側引戸3がシリンダ12(
図1参照)によって押圧されたときには、その先端でゴムシール4と接触する。
【0031】
側出入口2の閉止時における側引戸3の周縁部が側出入口周辺部材7の縁部に押し付けられる前の状態での側引戸3と戸袋柱6の突出部65との間のクリアランスAは、側出入口2の開放時における側引戸3と戸袋柱6の内側面部62との間のクリアランスBよりも小さい。換言すれば、側引戸3の良好な引き込みのためのクリアランスBが、気密性確保のためのクリアランスAよりも大きい。
【0032】
従来構造において、側引戸3と側出入口周辺部材7とのクリアランスを調整する際、クリアランスAとクリアランスBとは略同一の値となっていたため、戸袋柱6の内側面部62の広い範囲に亘ってクリアランス調整を行う必要があった。そのため、その作業には多大な労力と時間が必要であった。しかし、本実施形態の鉄道車両1では、突出部65という狭い範囲においてクリアランス調整作業を行えばよく(例えば、突出部65の切削など)、側引戸3と構体とのクリアランス調整作業を低減させることができる。
【0033】
ところで、ゴムシール4は側出入口周辺部材7の縁部に取り付けられていてもよい。しかしながら、この場合には、ゴムシール4を交換する場合、
図1に示すような大きなカバー11などを取り外す必要があり、交換作業に手間がかかる。これに対し、本実施形態のようにゴムシール4が側引戸3の周縁部に取り付けられていれば、ゴムシール4を交換する際には例えば当接部材35(
図1参照)を取り外して側引戸3を移動するだけでゴムシール4を交換することができる。すなわち、本実施形態の鉄道車両では、メンテナンス性を向上させることができる。
【0034】
さらに、本実施形態では、側引戸3の周縁部にゴムシール4を固定するための段差部31が設けられているため、側出入口2の閉止時において戸袋柱6の縦桟部64と側引戸3の間からはゴムシール4があまり露出しない。これに対し、段差部31が設けられていない場合には、戸袋柱6の縦桟部64と側引戸3の間からゴムシール4が大きく露出するため、これを隠すためのカバーが必要になる。すなわち、本実施形態のように段差部31が設けられていれば、部品点数を低減することができる。
【0035】
なお、本実施形態では内側面部62より車幅方向内側に突出する突出部65が戸袋柱6に設けられていたが、本発明はこれに限られず、突出部65は側出入口周辺部材7の戸袋柱6以外の構成部材(鴨居部材16、敷居部材17、コーナー部材13,14)に設けられてもよい。すなわち、突出部65は、側出入口周辺部材7の側出入口2に沿う縁部における上辺および下辺ならびに戸袋柱6側の側辺からなる略コ字状の領域の少なくとも一部に設けられていればよい。ただし、本実施形態のように突出部65が戸袋柱6の縦桟部64に設けられていれば、鴨居部材16や敷居部材17に設けられている場合に比べ、良好な気密性を得ることができる。また、突出部65は、戸袋柱6などと一体成形されずに、別部材として側出入口周辺部材7を構成してもよい。
【0036】
(総論)
上述した鉄道車両は、外側面部および前記外側面部よりも車幅方向内側に設けられる内側面部が連結部により互いに連結されたダブルスキン構造の戸袋柱を含む、側出入口を取り囲む側出入口周辺部材と、前記側出入口の閉止時において、周縁部がゴムシールを介して前記側出入口周辺部材における前記側出入口に沿う縁部に押し付けられ、前記側出入口の開放時において、前記戸袋柱の前記内側面部に面する戸袋空間に引き込まれる側引戸と、を備え、前記側出入口周辺部材の前記縁部における上辺および下辺ならびに前記戸袋柱側の側辺からなる領域の少なくとも一部には、前記内側面部よりも車幅方向内側に突出し、その先端で前記ゴムシールと接触する突出部が設けられている。
【0037】
この構成によれば、側出入口周辺部材の縁部にゴムシールと接触する突出部が設けられているために、戸袋柱の内側面部と側引戸の間のクリアランス(側引戸の良好な引き込みのためのクリアランス)が、突出部と側引戸の間のクリアランス(気密性確保のためのクリアランス)よりも大きくなる。それ故に、突出部という狭い範囲においてクリアランス調整作業を行えばよく、側引戸と構体とのクリアランス調整作業を低減させることができる。
【0038】
また、上述した鉄道車両では、前記側出入口の閉止時における前記側引戸の周縁部が前記縁部に押し付けられる前の状態での前記側引戸と前記突出部との間のクリアランスが、前記側出入口の開放時における前記側引戸と前記戸袋柱の前記内側面部との間のクリアランスよりも小さい。
【0039】
また、上述した鉄道車両では、前記戸袋柱が、前記外側面部の前記側出入口側の端部と前記内側面部の前記側出入口側の端部とが収束する縦桟部を有しており、前記突出部が、前記縦桟部に設けられている。そのため、良好な気密性を得ることができる。
【0040】
また、上述した鉄道車両では、前記ゴムシールが前記側引戸の前記周縁部に取り付けられているため、メンテナンス性を向上させることができる。
【0041】
また、上述した鉄道車両では、前記側引戸の周縁部には、車幅方向外側を向く主面から車幅方向内側に後退する段差部が形成されており、この段差部に前記ゴムシールが固定されている。そのため、部品点数を低減することができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について図を参照して説明したが、本発明の具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計の変更等が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 鉄道車両
10 戸袋空間
2 側出入口
3 側引戸
4 ゴムシール
6 戸袋柱
61 外側面部
62 内側面部
63 連結部
64 縦桟部
65 突出部
7 側出入口周辺部材