特許第5926630号(P5926630)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926630
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】リキッドインキ
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/102 20140101AFI20160516BHJP
   C09D 11/106 20140101ALI20160516BHJP
【FI】
   C09D11/102
   C09D11/106
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-139699(P2012-139699)
(22)【出願日】2012年6月21日
(65)【公開番号】特開2014-5318(P2014-5318A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】小代 康敬
(72)【発明者】
【氏名】寺本 秀康
(72)【発明者】
【氏名】茂田 和稔
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−094073(JP,A)
【文献】 特開2010−222580(JP,A)
【文献】 特開平10−072562(JP,A)
【文献】 特開平11−279472(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0263060(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−13/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び溶剤を有するリキッドインキであって、前記結着樹脂がポリウレタン樹脂及び/又はポリウレタンポリウレア樹脂であり、前記結着樹脂成分中にスチレン無水マレイン酸樹脂を0.01〜5.0重量%含有することを特徴とするリキッドインキ。
【請求項2】
リキッドインキの組成中に水を10重量%未満含有する請求項1に記載のリキッドインキ。
【請求項3】
更に、前記結着樹脂中に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂を0.1〜5.0重量%含有する請求項1又は2のいずれかに記載のリキッドインキ。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載のリキッドインキを印刷して得られる印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグラビア印刷或いはフレキソ印刷に於いて、溶剤としてトルエンを使用せずとも印刷適性、貯蔵安定性、ラミネート物性、2液安定性に優れるリキッドインキ組成とそのリキッドインキを用いた印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
主に軟包装材の製造に使用されるラミネート用リキッドインキは、樹脂結着成分として主にウレタン樹脂もしくはウレタンウレア樹脂を主成分として使用している。さらに近年では、印刷時の作業衛生性と包装材料の有害性の両面から、トルエンの使用が制限されつつあり、この脱トルエン型のリキッドインキには、各種フィルム素材への接着性やラミネート適性、印刷適性の面からポリウレタンポリウレア樹脂が樹脂主成分として使用されており、溶剤としてトルエンの代わりに酢酸エチルや酢酸プロピルなどの酢酸エステル類または酢酸エステル類とケトン類の混合溶剤が使用される傾向にある。
【0003】
その実例を挙げれば、リン酸エステル類をポリウレタン樹脂溶液に含有させ経時安定性に優れる印刷インキ用バインダーが開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながらリン酸エステル類では十分な経時安定性、2液安定性を得る事は困難であり、脱トルエン型インキの使用が必須になっている昨今ではより効果的な改善策が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−284984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、溶剤としてトルエンを使用せずとも印刷適性、貯蔵安定性、ラミネート物性、2液安定性に優れる低粘度液体インキであるグラビアインキとフレキソインキを総称するリキッドインキを提供することにある。また、該インキを用いた印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、樹脂、揮発性溶剤成分の配合成分とバランスを検討し、環境面、衛生面、安全性からトルエンを使用することなく印刷適性、印刷時のインキの基本的特性を満足するリキッドインキを見出したものである。本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討の結果、リキッドインキに特定の結着樹脂を配合すると、印刷適性、印刷時のインキの基本的特性を満足しながら、トルエンを使用せずとも貯蔵安定性、ラミネート物性、2液安定性が向上することを見出し、発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明は、第一に、結着樹脂及び溶剤を有するリキッドインキであって、前記した結着樹脂がポリウレタン樹脂及び/又はポリウレタンポリウレア樹脂であり、前記した結着樹脂成分中にスチレン無水マレイン酸樹脂を0.01〜5.0重量%含有することを特徴とするリキッドインキ、該リキッドインキを用いた印刷によって得られる印刷物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、優れた印刷適性、貯蔵安定性、ラミネート物性、2液安定性を維持しつつ、トルエンを使用せずとも印刷可能なリキッドインキが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、結着樹脂及び溶剤を有するリキッドインキであって、前記結着樹脂がポリウレタン樹脂及び/又はポリウレタンポリウレア樹脂であり、前記結着樹脂成分中にスチレン無水マレイン酸樹脂を0.01〜5.0重量%含有することを特徴とするリキッドインキを提供する。
【0010】
本発明のリキッドインキに用いる結着樹脂成分としては、ポリウレタン系樹脂、及び/又は、尿素結合を有するポリウレタンウレア系樹脂であり、前記結着樹脂成分中にスチレン無水マレイン酸樹脂を0.01〜5.0重量%含有することを用いることが必須である。これらの樹脂は、それぞれ単一種類であっても複数種類用いてもよい。
【0011】
本発明のリキッドインキに用いるポリウレタン樹脂、並びにポリウレタンポリウレア系樹脂の数平均分子量は、15,000〜100,000の範囲内とすることが好ましい。ポリウレタン樹脂の数平均分子量が15,000未満の場合には、得られるインキの組成物の耐ブロッキング性、ラミネート強度や耐薬品性などが低くなる傾向があり、100,000を超える場合には、得られるインキ組成物の粘度が高くなり、所定の印刷濃度が得られない傾向がある。
【0012】
本発明のリキッドインキに用いる結着樹脂成分として必須である特定の無水スチレンマレイン樹脂をポリウレタンポリウレア樹脂中に添加すると、インキの粘度が安定化し、更に2液安定性も改善することができる。従来、リンゴ酸、リン酸エステル等を添加して粘度減少を抑えることは可能であったが、特定のスチレン無水マレイン酸樹脂を適当量添加すれば、粘度減少が改善されるのに加えてイソシアネート硬化剤添加時の粘度安定性(2液安定性)も改善される。
【0013】
本発明のリキッドインキに用いる好適な無水スチレンマレイン樹脂としては、酸価:95〜120(mg KOH/g)、ガラス転移点(Tg):95〜120℃、
数平均分子量3,000〜20,000の範囲が好ましい。数平均分子量が3,000を下回ると印刷後の皮膜強度が低下する傾向にあり、逆に数平均分子量が20,000以上であると、基材への密着性を阻害しラミネート強度が低下する。更に結着樹脂中のスチレン無水マレイン酸樹脂の添加量は、0.01〜5.0重量%の範囲が好ましい。前記のスチレン無水マレイン酸樹脂量が0.01重量%未満であったり、逆に5.0重量%超であったりする場合、経時による粘度低下でインキ自体の安定性及び2液保存性が低下し、カスレ・版カブリ等印刷品質の低下及び耐レトルト性が低下する傾向にある。尚、前記のスチレン無水マレイン酸樹脂は、ポリウレタン樹脂合成時に添加して樹脂自体の粘度低下を防いでも、インキの製造時に諸原料と同時に入れてもどちらでも良い。
【0014】
本発明のリキッドインキにおける結着樹脂成分の含有量は、例えば、グラビア印刷の場合、グラビアインキの被印刷体への接着性を十分にする観点からインキの総重量に対して5重量%以上、適度なインキ粘度やインキ製造時・印刷時の作業効率の観点から25重量%以下が好ましく、フレキソ印刷の場合、フレキソインキの総重量に対して5重量%以上、30重量%以下であることが好ましい。
【0015】
本発明のリキッドインキには、揮発性成分として有機溶剤とともに、インキ組成中に10重量%未満の含有量で、水を含有させることが出来る。更に、1~5重量%の範囲であることが、印刷適性が良好となることから、特に好ましい。
この場合、前記の水は、有機溶剤に添加して、含水の有機溶媒としてもよいし、別途特定量の水を添加してもよい。
【0016】
更に、インキ皮膜に耐熱性を求めるためには、前記の樹脂のように尿素結合を有する樹脂が有効である。その際、尿素結合同士が水素結合で結びつくことでインキの粘度が高くなり印刷適性が悪化する傾向がある。そのような現象を防止するため、尿素結合と水素結合で結びついた樹脂の粘度を低下させるべく、水をインキ組成中に10%未満の含有量で含有させることが好ましい。また、このような水の添加により、使用有機溶剤成分を低減させることも可能である。
更に、水の添加により、インキの乾燥性を制御する機能もあり、特にグラビア印刷では、その特徴であるインキ転移量のすくないグラデーション部をきれいに再現することができる。
【0017】
更に、本発明のリキッドインキに用いる前記結着樹脂成分としては、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂を添加することができる。
本発明のリキッドインキに用いられる、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は、例えば、塩化ビニルと酢酸ビニルを共重合させて得られるものであるが、樹脂中に水酸基を有していてよい。このような水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は、塩化ビニルと酢酸ビニル樹脂を共重合させた後、一部加水分解することにより水酸基を導入したり、あるいは重合時に、塩化ビニル、酢酸ビニル以外の水酸基を有する成分、例えば、メタアクリル酸−2−ヒドロキシルエチル等を、添加して共重合させたりすることにより水酸基を導入することにより得られる。水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂としては、市販品のものを利用することもできる。
水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は、塩化ビニル骨格、酢酸ビニル骨格およびビニルアルコール骨格等の水酸基含有構造の含有比率により樹脂被膜の性質や樹脂溶解挙動が決定される。即ち、塩化ビニルは樹脂被膜の強靭さや硬さを付与し、酢酸ビニルは接着性や柔軟性を付与し、ビニルアルコール等の水酸基は極性溶剤への良好な溶解性を付与する。尚、前記結着樹脂成分中に0.1〜5.0重量%含有することが好ましい。
【0018】
発明のリキッドインキで用いる着色剤としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている有機、無機顔料や染料を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられる。藍インキには銅フタロシアニン、透明黄インキにはコスト・耐光性の点からC. I. Pigment No Yellow83を用いることが好ましい。
【0019】
例えば、ピグメントC.I.ナンバーとして、Black7、Y12、Y13、Y14、Y17、Y83、Y74、Y−154、Y180、R57:1、R122、R48:1、R48:2、R48:3、R53:1、R146、R−150、R−166、R170、R184、R185、V19、V23、V32、O13、O16、O34、G7、G36、B15:3、B15:4、W6等が挙げられる。
【0020】
無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、ベンガラ、アルミニウム、マイカ(雲母)などが挙げられる。白インキには酸化チタン、墨インキにはカーボンブラック、金、銀インキにはアルミニウム、パールインキにはマイカ(雲母)を使用することがコストや着色力の点から好ましい。アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングまたはノンリーフィングを使用するかは輝度感および濃度の点から適宜選択される。着色剤はインキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキの総重量に対して1〜50重量%の割合で含まれることが好ましい。また、着色剤は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0021】
これらの有機顔料並びに無機顔料は、前記した水分の添加により、インキの乾燥性や印刷特性を向上する効果も有している。
【0022】
(通常の製造方法)
本発明のリキッドインキの製造は、例えば、ポリウレタン樹脂に、着色用顔料、体質顔料、溶剤、及び、必要に応じて、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、可塑剤などの添加剤、インキ流動性および分散性を改良するための界面活性剤、あるいはポリウレタン樹脂と相溶性を有する樹脂を、経時で増粘とゲル化が生じない範囲にて併用し、ボールミル、アトライター、サンドミルなどの通常の印刷インキ製造装置を用いて混練することによってなされる。特に、帯電防止剤の添加は、エステル系溶剤、ケトン系溶剤を使用時に発生しやすいヒゲ、雷筋と呼ばれる印刷時の静電気トラブルの抑制に効果的である。
【0023】
前記結着樹脂と併用できる樹脂としては、硝化綿、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化エチレン/プロピレン等の塩素化ポリオレフィン、エチレン/酢酸ビニル共重合体またはその塩素化樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ロジン系樹脂及びその変性物、ケトン樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。
【0024】
本発明は、前記したリキッドインキの印刷によって得られる印刷物を提供する。
【実施例】
【0025】
以下に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。尚、実施例中の「部」は、質量部を表す。
【0026】
(ポリウレタン樹脂Aの調製)
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、エチレングリコールとネオペンチルグリコールの混合物(モル比=1/1)とアジピン酸とを反応させて得た数平均分子量1,800のポリエステルジオール605.9部およびイソホロンジイソシアネート94/1部を仕込み、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、遊離イソシアネート価1.02重量%のプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル300部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン18.1部、酢酸エチル873部およびIPA503部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で8時間攪拌反応させて、ポリウレタンポリウレア樹脂溶液を得た。得られたポリウレタンポリウレア樹脂溶液(以下、ポリウレタンポリウレア樹脂溶液Aという)は、樹脂固形分濃度30.5重量%、粘度850mPa・S(25℃)であり、樹脂固形分のMwは58,000であった。
【0027】
実施例1〜10、比較例1〜4
(インキの調製法)
表1及び表2に記載の配合比率で混合した混合物をダイノーミル(ウィリー・エ・バッコーフェン社製)を用いて混練し、実施例1〜10、及び比較例1〜4に記載のインキを調製した。
【0028】
上記で得られた実施例1〜10インキ及び比較例1〜4インキについて、以下の評価を実施した。
【0029】
(粘度測定)
表1及び表2に記載のインを、其々離合社製ザーンカップNo.4を用いてインキ製造直後に液温50度にて粘度を測定した。
【0030】
(粘度安定性)
表1及び表2に記載のインキを各々ガラス瓶に採取し、50度で28日間保存を行った。その後、粘度を測定して保存前との粘度変化を評価した。
(評価)
5:粘度変化が無い 粘度変化が2秒未満
4:粘度変化が少し 粘度差が2秒以上5秒未満
3:粘度変化がやや多い 粘度差が5秒以上10秒未満
2:粘度変化が多い 粘度差が10秒以上15秒未満
1:粘度変化が非常に多い 粘度差が15秒以上
【0031】
(2液安定性)
表1及び表2に記載のインキをガラス瓶に採取し、其々インキ100重量%にCVL NO.10ハードナー(イソシアネート硬化剤:DIC製)を4重量%添加し、50度で28日間保存を行った。その後、粘度を測定して保存前との粘度変化を評価した。
(評価)
5:粘度変化が無い 粘度変化が2秒未満
4:粘度変化が少し 粘度差が2秒以上5秒未満
3:粘度変化がやや多い 粘度差が5秒以上10秒未満
2:粘度変化が多い 粘度差が10秒以上15秒未満
1:粘度変化が非常に多い 粘度差が15秒以上
【0032】
(印刷適性試験:カスレ試験)
表1及び表2に記載のインキを、インキ作成に使用した同一比率の混合有機溶剤で希釈し、離合社製ザーンカップNo3で16秒になるように希釈した。それを、版深度3μmを有するグラビア版を取り付けたグラビア印刷機(DICエンジニアリング株式会社製)を用いて、片面にコロナ放電処理を施した二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製 E−5100 厚さ12μm)の処理面に印刷を行った。そして、印刷物の印刷部分へのインキの転移度(カスレ度)を評価した。カスレ試験は、グラビア版の円周600mmφで300m/minの印刷速度での評価を行った。経時変化を調べる目的で製造直後のインキ及び50℃、28日間保存したインキそれぞれを試験に供した。
(評価)
5:カスレなし
4:ごく僅かにカスレ発生
3:少しカスレ発生、実用範囲
2:カスレが顕著に確認できる
1:カスレが多発している
【0033】
(印刷適性試験:版かぶり試験)
上記カスレ試験の条件で印刷した時の印刷物の中で、非印刷部の汚れ具合(版かぶり度)を評価した。経時変化を調べる目的で製造直後のインキ及び50℃、28日間保存したインキそれぞれを試験に供した。
(評価)
5:印刷汚れ 無し
4:印刷汚れ ごく僅かに確認できる
3:印刷汚れ 僅かに確認できる、実用範囲
2:印刷汚れ 顕著に発生している
1:印刷汚れ 甚だしい
【0034】
(濃度)
上記カスレ試験の条件で印刷した時の印刷物を用い、反射濃度計X−RITE530にて各印刷物の反射濃度を比較した。
経時変化を調べる目的で製造直後のインキ及び50℃、28日間保存したインキそれぞれを試験に供した。
(評価)
○:反射濃度値が2.0以上
△:反射濃度値が1.5以上2.0未満
×:反射濃度値が1.5未満
【0035】
(ラミネート強度)
上記印刷物にウレタン系接着剤を使用し、ドライラミネート接着剤ディックドライLX−703VL/KR−90(DIC製)にてドライラミネート機(DICエンジニアリング製)によって無延伸ポリプロピレンフィルム(東レ合成フィルム製 ZK−75 50μm)を積層し、40℃で5日間エージング後に剥離強度を測定した。なお判定基準は次の通りとした。
○:ラミネート強度が500(g/15mm)以上であり強度充分。
△:ラミネート強度が300以上〜500(g/15mm)未満でありやや強度不足。
×:ラミネート強度が300(g/15mm)未満であり強度不充分。
【0036】
(耐レトルト性)
上記印刷物をドライラミネート加工後、ラミネート物を製袋し、内容物として、水/サラダ油の混合物を入れ、密封後、120℃、30分間加熱した後、ラミ浮きの有無を外観により目視判定した。なお判定基準は次の通りとした。
経時変化を調べる目的で製造直後のインキ及び50℃、28日間保存したインキそれぞれを試験に供した。
○:全くラミ浮きがない。
△:ごく一部がデラミネーションしているか、またはブリスターがわずかに生じた。
×:全面デラミネーションが生じた。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
尚、表中の原料は以下の通りである。
Fastogen Blue 5380(DIC(株)製):C.I.Pig.
No.=B−15:3
R−780 (石原産業(株)製)酸化チタン顔料:平均粒子径0.24μm、吸油量33
ソルバインA (日信化学工業(株)製)塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂:
数平均分子量30,000、ガラス転移点76℃、K値=48
樹脂構成;塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール=92/3/5(重量比)
ハイロスX−228 (星光PMC(株)製)スチレンマレイン酸樹脂:酸価140(mg KOH/g)、数平均分子量16,000、ガラス転移点83℃
【0040】
以上の結果から、本発明のリキッドインキは、トルエンを使用せずとも優れた印刷適性、貯蔵安定性、ラミネート物性、2液安定性を維持可能あることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のリキッドインキは、グラビア印刷或いはフレキソ印刷に於いて、環境面、衛生面に配慮した脱トルエン型低粘度液体インキであり、食品包材・サニタリー・コスメ・電子部品等工業製品向け軟包装用途に幅広く展開され得る。