特許第5926635号(P5926635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926635
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】ガスタービン燃焼器
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/28 20060101AFI20160516BHJP
   F02C 7/22 20060101ALI20160516BHJP
   F02C 7/228 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   F23R3/28 D
   F23R3/28 A
   F23R3/28 B
   F02C7/22 B
   F02C7/22 C
   F02C7/228
【請求項の数】10
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-150122(P2012-150122)
(22)【出願日】2012年7月4日
(65)【公開番号】特開2014-13100(P2014-13100A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年1月19日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 ゼロエミッション石炭火力技術開発プロジェクト・ゼロエミッション石炭火力基盤技術開発 革新的ガス化技術に関する基盤研究事業 石炭ガス化発電用高水素濃度対応低NOx技術開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】百々 聡
(72)【発明者】
【氏名】浅井 智広
(72)【発明者】
【氏名】穐山 恭大
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−058775(JP,A)
【文献】 特開2010−286141(JP,A)
【文献】 特開平08−296852(JP,A)
【文献】 特開2006−017381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/22
F23R 3/28
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と空気が供給される円筒状の燃焼室と、前記燃焼室の上流側に位置して複数の空気孔を有する空気孔プレートと、前記空気孔プレートの各空気孔の入口に対して同軸に配置されて前記空気孔に燃料をそれぞれ供給する燃料ノズルを複数備えて多孔同軸噴流バーナを構成し、この多孔同軸噴流バーナを備えて燃料組成に水素を含む燃料を燃焼するガスタービン燃焼器において、
この多孔同軸噴流バーナを構成する前記複数の燃料ノズルの燃料流路に開口断面積の変更要素を複数個所設け、
前記多孔同軸噴流バーナに配設された前記燃料ノズルを構成する第1の燃料ノズルに複数個所設けられた開口断面積の変更要素での開口断面積比と、前記多孔同軸噴流バーナに配設された前記燃料ノズルを構成する第2の燃料ノズルに複数個所設けられた開口断面積の変更要素での開口断面積比とが異なるように前記開口断面積の開口断面積比をそれぞれ設定し、
前記開口断面積比が異なっている前記第1の燃料ノズル及び第2の燃料ノズルに燃料を供給する共通の燃料供給系統を配設したことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービン燃焼器において、
前記第1の燃料ノズルは前記多孔同軸噴流バーナのバーナ中心軸の近くの1列目に配設されており、
前記第2の燃料ノズルは第1の燃料ノズルの外周側となる前記多孔同軸噴流バーナのバーナ中心から2列目以降に配設されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項3】
請求項1に記載のガスタービン燃焼器において、
前記第1の燃料ノズルは前記多孔同軸噴流バーナのバーナ中心軸の近くの1列目に配設されており、
前記第2の燃料ノズルは第1の燃料ノズルの外周側となる前記多孔同軸噴流バーナのバーナ中心から2列目及び3列目にそれぞれ配設されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のガスタービン燃焼器において、
前記第1の燃料ノズルに複数個所設けられた開口断面積の変更要素での開口断面積比の値は1よりも小さな値に設定され、
前記第2の燃料ノズル開口断面積の変更要素での開口断面積比の値は1よりも大きな値に設定されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のガスタービン燃焼器において、
前記第1の燃料ノズルに複数個所設けられた開口断面積の変更要素は、第1の燃料ノズルの燃料流路の燃焼器頭部側に設けられた開口断面積と、この第1の燃料ノズルの燃料流路の燃焼室側に設けられた開口断面積とが互いに異なるように設定されており、
前記第2の燃料ノズルに複数個所設けられた開口断面積の変更要素は、第2の燃料ノズルの燃料流路の燃焼器頭部側に設けられた開口断面積と、この第2の燃料ノズルの燃料流路の燃焼室側に設けられた開口断面積とが互いに異なるように設定されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項6】
燃料と空気が供給される円筒状の燃焼室と、前記燃焼室の上流側に位置して複数の空気孔を有する空気孔プレートと、前記空気孔プレートの各空気孔の入口に対して同軸に配置されて前記空気孔に燃料をそれぞれ供給する燃料ノズルを複数備えて多孔同軸噴流バーナを構成し、この多孔同軸噴流バーナを備えて燃料組成に水素を含む燃料を燃焼するガスタービン燃焼器において、
前記多孔同軸噴流バーナは、燃焼器の中央にパイロット多孔同軸噴流バーナとして配設されると共に、前記パイロット多孔同軸噴流バーナの外周側にメイン多孔同軸噴流バーナとして複数個配設され、
前記メイン多孔同軸噴流バーナを構成する前記複数の燃料ノズルの燃料流路に開口断面積の変更要素を複数個所設け、
前記多孔同軸噴流バーナに配設された前記燃料ノズルを構成する第1の燃料ノズルに複数個所設けられた開口断面積の変更要素での開口断面積比と、前記多孔同軸噴流バーナに配設された前記燃料ノズルを構成する第2の燃料ノズルに複数個所設けられた開口断面積の変更要素での開口断面積比とが異なるように前記開口断面積の開口断面積比をそれぞれ設定し、
前記開口断面積比が異なっている前記第1の燃料ノズル及び第2の燃料ノズルに燃料を供給する燃料供給系統をそれぞれ別々に配設したことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項7】
請求項6に記載のガスタービン燃焼器において、
前記第1の燃料ノズルは前記多孔同軸噴流バーナのバーナ中心軸の近くの1列目に配設されており、
前記第2の燃料ノズルは第1の燃料ノズルの外周側となる前記多孔同軸噴流バーナのバーナ中心から2列目以降に配設されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項8】
請求項6に記載のガスタービン燃焼器において、
前記第1の燃料ノズルは前記多孔同軸噴流バーナのバーナ中心軸の近くの1列目に配設されており、
前記第2の燃料ノズルは第1の燃料ノズルの外周側となる前記多孔同軸噴流バーナのバーナ中心から2列目及び3列目にそれぞれ配設されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項9】
請求項6乃至8の何れか1項に記載のガスタービン燃焼器において、
前記第1の燃料ノズルに複数個所設けられた開口断面積の変更要素での開口断面積比の値は1よりも小さな値に設定され、
前記第2の燃料ノズル開口断面積の変更要素での開口断面積比の値は1よりも大きな値に設定されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項10】
請求項6乃至8の何れか1項に記載のガスタービン燃焼器において、
前記第1の燃料ノズルに複数個所設けられた開口断面積の変更要素は、第1の燃料ノズルの燃料流路の燃焼器頭部側に設けられた開口断面積と、この第1の燃料ノズルの燃料流路の燃焼室側に設けられた開口断面積とが互いに異なるように設定されており、
前記第2の燃料ノズルに複数個所設けられた開口断面積の変更要素は、第2の燃料ノズルの燃料流路の燃焼器頭部側に設けられた開口断面積と、この第2の燃料ノズルの燃料流路の燃焼室側に設けられた開口断面積とが互いに異なるように設定されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の同軸噴流ノズルを備えたガスタービン燃焼器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発電コスト低減や資源有効利用のほか地球温暖化防止の観点からも、石油精製所で発生するオフガスや、製鉄プロセスで発生するコークス炉ガス(COG:Coke Oven Gas、以下COGと略記する)などの水素(H)を含む副生ガスを発電用ガスタービン用燃料として有効利用することが求められている。
【0003】
さらに、豊富な資源である石炭を酸素でガス化して発電する石炭ガス化発電プラント(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle、以下IGCCと略記する)では地球温暖化防止の観点より、石炭ガス化発電プラントのガスタービン燃焼器に供給されるガス化燃料中の炭素分を分離・回収するシステムにより、石炭の炭素分を水素に転換して二酸化炭素(CO)排出を抑制する方策が国内外で検討されている。
【0004】
これらの燃料は、製油所オフガスやCOGで燃料成分の30%〜60%、二酸化炭素分離回収付のIGCCプラントでは燃料のほとんどの成分が水素となる。水素は燃焼速度が速いため、ガスタービン燃焼器でこれらの燃料を燃焼させた場合に、ガスタービン燃焼器内で形成される火炎がガスタービン燃焼器の構造物に接近して加熱し、ガスタービン燃焼器の信頼性に問題を引き起こす可能性がある。
【0005】
そこで水素が含まれる燃料に対して、ガスタービン燃焼器の信頼性を確保する燃焼方式としては、ガスタービン燃焼器の燃焼室に直接燃料のみを投入し、燃焼室内で燃料と空気の混合を行なう拡散燃焼方式が有力であるが、この拡散燃焼方式では最も燃焼しやすい状態で火炎が形成されるため、火炎温度が高くなって窒素酸化物(NOx)排出量が増大しやすい。
【0006】
一方、NOx排出量の小さい燃焼を行なうには、燃料と空気を予め量論混合比よりも希薄となるよう混合してガスタービン燃焼器に供給し燃焼させる予混合燃焼方式が有力であるが、この予混合燃焼方式ではガスタービン燃焼器の燃焼室に流入する前から可燃範囲の混合気が形成されているため、火炎の位置がガスタービン燃焼器の構造物に接近して加熱し、ガスタービン燃焼器に構造物としての信頼性に問題を引き起こす可能性が高くなる。
【0007】
そこで水素が含まれる燃料をガスタービン燃焼器に適用する場合に、ガスタービン燃焼器の構造物としての信頼性と燃焼安定性を確保すると共に、低NOx燃焼を実現するガスタービン燃焼器が求められている。
【0008】
燃焼安定性を確保しながら低NOx燃焼を実現するガスタービン燃焼器の構造の一例として、特開2006−017381号公報には、燃料ノズルと空気ノズルとを同軸に配置した多数の同軸ノズルを集合化し、予め燃料と空気の分散性を高めてNOxを低減するガスタービン燃焼器の同軸ノズルバーナ(以下、多孔同軸噴流バーナと称す)によって、燃焼安定性の確保と低NOx燃焼を実現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−017381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特開2006−017381号公報に開示されているガスタービン燃焼器の技術は、天然ガスなどの一般的な組成の燃料に関して燃焼安定性を維持して低NOx燃焼を実現するものに過ぎない。
【0011】
水素を燃料組成に含むガス燃料をガスタービン燃焼器に使用する場合には、水素の燃焼速度が速いこと、水素の必要とする着火エネルギが低いため、ガスタービン燃焼器内で形成される火炎が燃焼器構造物に接近して加熱し、ガスタービン燃焼器に構造的な信頼性上の問題を引き起こす可能性が高い。
【0012】
また、水素の必要とする着火エネルギが低く可燃範囲が広いため、何らかの外乱によりガスタービン燃焼器の燃焼室内で火炎が構造物に近接して形成されると、ガスタービン燃焼器の構造物に近接した火炎が位置を次々に変えることにより連鎖的に圧力波が発生し、この圧力波によって局所的に燃料流量が変動してガスタービン燃焼器に燃焼振動と呼ばれる不安定現象が発生する可能性が高くなる。
【0013】
本発明の目的は、水素を含んだ燃料をガスタービン燃焼器で燃焼させる場合に、ガスタービンの広範な負荷範囲にわたってガスタービン燃焼器に火炎による構造的な信頼性の問題を回避すると共に燃焼振動による不安定現象の発生を抑制し、且つ、低NOx燃焼を可能にしたガスタービン燃焼器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のガスタービン燃焼器は、燃料と空気が供給される円筒状の燃焼室と、前記燃焼室の上流側に位置して複数の空気孔を有する空気孔プレートと、前記空気孔プレートの各空気孔の入口に対して同軸に配置されて前記空気孔に燃料をそれぞれ供給する燃料ノズルを複数備えて多孔同軸噴流バーナを構成し、この多孔同軸噴流バーナを備えて燃料組成に水素を含む燃料を燃焼するガスタービン燃焼器において、この多孔同軸噴流バーナを構成する前記複数の燃料ノズルの燃料流路に開口断面積の変更要素を複数個所設け、前記多孔同軸噴流バーナに配設された前記燃料ノズルを構成する第1の燃料ノズルに複数個所設けられた開口断面積の変更要素での開口断面積比と、前記多孔同軸噴流バーナに配設された前記燃料ノズルを構成する第2の燃料ノズルに複数個所設けられた開口断面積の変更要素での開口断面積比とが異なるように前記開口断面積の開口断面積比をそれぞれ設定し、前記開口断面積比が異なっている前記第1の燃料ノズル及び第2の燃料ノズルに燃料を供給する共通の燃料供給系統を配設したことを特徴とする。
【0015】
また本発明のガスタービン燃焼器は、燃料と空気が供給される円筒状の燃焼室と、前記燃焼室の上流側に位置して複数の空気孔を有する空気孔プレートと、前記空気孔プレートの各空気孔の入口に対して同軸に配置されて前記空気孔に燃料をそれぞれ供給する燃料ノズルを複数備えて多孔同軸噴流バーナを構成し、この多孔同軸噴流バーナを備えて燃料組成に水素を含む燃料を燃焼するガスタービン燃焼器において、前記多孔同軸噴流バーナは、燃焼器の中央にパイロット多孔同軸噴流バーナとして配設されると共に、前記パイロット多孔同軸噴流バーナの外周側にメイン多孔同軸噴流バーナとして複数個配設され、
前記メイン多孔同軸噴流バーナを構成する前記複数の燃料ノズルの燃料流路に開口断面積の変更要素を複数個所設け、前記多孔同軸噴流バーナに配設された前記燃料ノズルを構成する第1の燃料ノズルに複数個所設けられた開口断面積の変更要素での開口断面積比と、前記多孔同軸噴流バーナに配設された前記燃料ノズルを構成する第2の燃料ノズルに複数個所設けられた開口断面積の変更要素での開口断面積比とが異なるように前記開口断面積の開口断面積比をそれぞれ設定し、前記開口断面積比が異なっている前記第1の燃料ノズル及び第2の燃料ノズルに燃料を供給する共通の燃料供給系統を配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水素を含んだ燃料をガスタービン燃焼器で燃焼させる場合に、ガスタービンの広範な負荷範囲にわたってガスタービン燃焼器に火炎による構造的な信頼性の問題を回避すると共に燃焼振動による不安定現象の発生を抑制し、且つ、低NOx燃焼を可能にしたガスタービン燃焼器が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例であるガスタービン燃焼器を備えた水素含有燃料焚きガスタービン発電システムの構成を示す概略図である。
図2】本発明の第1実施例のガスタービン燃焼器の概略構造に、燃料ノズルと空気孔から燃焼室に噴出する流体と、燃焼室内の燃焼ガスの流れの状況を示した概略断面図である。
図3】本発明の第1実施例のガスタービン燃焼器の燃焼室の上流側に位置して、複数の空気孔を有する空気孔プレートを燃焼室側から見たA−A方向矢視図である。
図4図2に示した本発明の第1実施例のガスタービン燃焼器の燃焼室の上流側に位置して、複数の空気孔を有する空気孔プレートに配置された多孔同軸噴流バーナのうち、最もバーナ中心軸に近い1列目同心円上に配置された燃料ノズルと、燃料ノズルから噴出する流体の流れを示す状況図である。
図5図2に示した本発明の第1実施例のガスタービン燃焼器の燃焼室の上流側に位置して、複数の空気孔を有する空気孔プレートに配置された多孔同軸噴流バーナのうち、バーナ中心軸から2列目および3列目の外周側同心円上に配置された燃料ノズルと、燃料ノズルから噴出する流体の流れを示す状況図である。
図6図4および図5に示した本発明の第1実施例のガスタービン燃焼器の2つの絞り部を設けた燃料ノズルにおいて、2つの絞り部の中間の圧力が、第1および第2の絞り部での開口面積の比に対して変化する特性を説明した図である。
図7図4および図5に示した本発明の第1実施例のガスタービン燃焼器の2つの絞り部を設けた燃料ノズルにおいて、燃料ノズルから噴出する燃料噴出速度が、第1および第2の絞り部での開口面積の比に対して変化する特性を説明した図である。
図8】本発明の第2実施例のガスタービン燃焼器の構造を示す概略断面図である。
図9】本発明の第2実施例のガスタービン燃焼器の燃焼室の上流側に位置して複数の空気孔を有する空気孔プレートを燃焼室側から見たB−B方向矢視図である。
図10図8に示した本発明の第2実施例のガスタービン燃焼器の燃焼室の上流側に位置して、複数の空気孔を有する空気孔プレートに、複数個配置された多孔同軸噴流バーナのうち、図9において一点鎖線で囲んだ一つのメインバーナを構成する、燃料ノズルと空気孔から燃焼室に噴出する流体と、燃焼室内の燃焼ガスの流れを示す状況図である。
図11図8に示した本発明の第2実施例ガスタービン燃焼器の燃焼室の上流側に位置して、複数の空気孔を有する空気孔プレートに配置された多孔同軸噴流バーナのうち、バーナ中心軸から3列目の最外周同心円上に配置された燃料ノズルと、燃料ノズルから噴出する流体の流れを示す状況図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施例であるガスタービン燃焼器について図面を用いて以下に説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器について、図1及び図2を用いて説明する。
【0020】
図1は本発明の第1実施例である水素含有燃料焚きのガスタービン燃焼器を備えたガスタービンプラントの概略構成図であり、図2は本発明の第1実施例である水素含有燃料焚きのガスタービン燃焼器の概略構成図である。
【0021】
図2に示した本実施例の水素含有燃料焚きのガスタービン燃焼器は、石炭をガス化して得られる水素含有燃料を用いる石炭ガス化複合発電プラントの他、製鉄プラントから得られる副生ガスであるコークス炉ガス(COG:Coke Oven Gas)、高炉ガス(BFG:Blast Furnace Gas)、転炉ガス(LDG:Linzer Donawitz Gas)あるいはこれらの混合ガスを燃料として使用するガスタービンや、ナフサ分解プラントなどから得られる副生ガスなどの、水素を組成成分として含むガス燃料を用いるガスタービンに好適なガスタービン燃焼器である。
【0022】
図1図2に記載した本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器を有する水素含有燃料焚きガスタービンプラントの概略構成を示す図であり、図3図1及び図2に記載した本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器の上流側に設置された多孔同軸噴流バーナを構成する空気孔を形成した壁状部材の空気孔プレートを燃焼室側から見たA−A方向矢視図の正面図である。
【0023】
図1に示した本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器9を有するガスタービンプラントは、燃料組成に水素を含む水素含有燃料22をガスタービン燃焼器9に燃料として供給する。
【0024】
この水素含有燃料22によって駆動されるガスタービンプラントは、圧縮機5によって外気を吸入して圧縮した圧縮空気10を、車室7を経由してガスタービン燃焼器9に燃焼用空気12として供給し、このガスタービン燃焼器9に設置した多孔同軸噴流バーナ53から、前記水素含有燃料22と共に燃焼室に噴射して燃焼させる。
【0025】
本ガスタービンプラントはガスタービン燃焼器9の燃焼室で水素含有燃料22を燃焼させて高温高圧の燃焼ガス13を発生させ、この発生させた高温高圧の燃焼ガス13をガスタービン燃焼器9からタービン6に流入させて前記タービン6を駆動し、タービン6に連結され、このタービン6の回転動力を電力として取り出す発電機501を備えている。
【0026】
本実施例である前記ガスタービン燃焼器9の構成は、図1及び図2に示したように、外周側に設置された燃焼器外筒2と、燃焼器外筒2の内部に設置された燃焼器ライナー3と、この燃焼器ライナー3の下流側に接続した燃焼器尾筒4とを備えた円筒構造であり、前記燃焼器ライナー3の内部には、燃料供給系統22aを通じてガスタービン燃焼器9に供給された水素含有燃料22と、圧縮機5で圧縮された圧縮空気10の一部をガスタービン燃焼器9に供給した燃焼用空気12を混合して燃焼させる円筒状の燃焼室1が形成されている。
【0027】
燃焼器尾筒4は、円筒形状の燃焼器ライナー3の出口と扇形形状のタービン6の静翼入口との間を滑らかに連絡する部品である。
【0028】
ガスタービン燃焼器9の燃焼室1内で水素含有燃料22の燃焼に用いられる燃焼用空気12は、ガスタービン燃焼器9の燃焼器外筒2と燃焼器ライナー3との間の空間を通じて供給されるが、ガスタービン燃焼器9の頭部に設けた燃焼器エンドカバー8によってせき止められ、この燃焼用空気12の一部が、多孔同軸噴流バーナ53を構成する空気孔プレート54に形成した複数の空気孔55に供給される。
【0029】
また、圧縮機5で圧縮された前記圧縮空気10の他の一部は、燃焼器ライナー3の壁面に開口した多数の空気孔から冷却空気11として燃焼室1内に流入し、前記ガスタービン燃焼器9の燃焼室1で発生した高温高圧の燃焼ガス13により、燃焼器ライナー3などの構造物が過熱されないよう冷却する。
【0030】
燃料供給系統22Aを通じてガスタービン燃焼器9に供給される水素含有燃料22は、前記燃料供給系統22Aに設置された燃料遮断弁103、燃料圧力調整弁107、および燃料流量調整弁108により、ガスタービン運転に必要な流量を制御してガスタービン燃焼器9に供給される。
【0031】
前記水素含有燃料22は、燃焼器エンドカバー8の外部からエンドカバー8内部に設けた燃料分配器57の分配流路を通って、多孔同軸噴流バーナ53に複数個配置された各燃料ノズル56aおよび燃料ノズル56bにそれぞれ配分される。
【0032】
本実施例のガスタービン燃焼器9は、図1図2および図3に示すように、燃焼器軸心の中央に、多孔同軸噴流バーナ53を1個配置した構造を採用している。
【0033】
本実施例のガスタービン燃焼器9を構成する多孔同軸噴流バーナ53は、多数の燃料・空気の同軸噴流を形成するバーナであり、かつ燃料と空気の混合の度合いを、同軸噴流バーナを構成する空気ノズルの形状および燃料ノズルの形状で調整することができる。
【0034】
また、空気孔プレート54に形成する空気孔55を円筒状の燃焼室1の中心軸に対して、ある法則性を持たせて傾斜させることにより、個々の同軸噴流を合流させて一つの流れを形成させることが可能である。
【0035】
本実施例のガスタービン燃焼器9における多孔同軸噴流バーナ53においては、図2及び図3に示すようにそれぞれの空気孔55を配置したピッチ円直径ごとに、円筒状の燃焼室1の中心軸に対して等しい角度ずつ傾斜させ、各空気孔から噴出する同軸噴流が合流して、らせん状に旋回しながら拡大する旋回流46を形成するように調整している。
【0036】
螺旋状に旋回しながら拡大する旋回流46は、下流側に進むほど旋回半径が大きくなって旋回成分速度が低下するので、旋回の中心軸上に誘導する静圧が大きくなり、旋回の中心軸上に逆圧力勾配を誘起して、循環流43を形成する。この循環流43により燃焼ガスの一部が、旋回の中心軸近傍を逆流することで安定な着火源が上流側に伝播し、定常火炎45を形成する。
【0037】
このため、本実施例のガスタービン燃焼器9における燃焼室1の上流側に位置し、複数の空気孔を有する空気孔プレート54を燃焼室1側から見ると、図2のA−A方向矢視図である図3に示すように、空気孔プレート54の表面に対して傾斜した噴出方向を持つ空気孔55が楕円形に開口していることが観察される。
【0038】
空気孔プレート54に設けた各空気孔55は、多孔同軸噴流バーナ53の中心に近いピッチ円直径に配置されたものから順に、1列目空気孔55−1、2列目空気孔55−2、3列目空気孔55−3に分類され、配置されたピッチ円直径ごとに異なる旋回角を持っている。
【0039】
このうち、最も多孔同軸噴流バーナ53の中心軸に近いピッチ円直径を持つ1列目空気孔55−1は、前記循環流43によってもたらされる着火源となる燃焼ガスに最初に触れる同軸噴流を形成するので、特に保炎に関係が深い。
【0040】
本実施例のガスタービン燃焼器9では、2列目空気孔55−2および3列目空気孔55−3にも旋回を与えているが、水素濃度が特に高い燃料を使用する場合などで、保炎能力が十分である場合には2列目、3列目空気孔には旋回を与えなくてもよい。
【0041】
また本実施例のガスタービン燃焼器9では、前記した1列目〜3列目の空気孔55−1、55−2、55−3で多孔同軸噴流バーナ53を構成しているが、空気孔列の数は3列以外の構成も可能である。
【0042】
前述したように本実施例のガスタービン燃焼器9では、全ての空気孔55−1、55−2、55−3に旋回が与えられているため、空気孔55−1、55−2、55−3の入口において空気孔と同軸に配置されている燃料ノズル56aおよび燃料ノズル56bは、燃焼室1側から見た図3の矢視図には表れていない。
【0043】
次に図2を用いて、本実施例のガスタービン燃焼器9の多孔同軸噴流バーナ53から噴出する水素含有燃料22と燃焼用空気12の混合気42の流れの様態と、燃焼ガスの流れを説明する。
【0044】
図2は、本実施例のガスタービン燃焼器9に設置した多孔同軸噴流バーナ53について、燃料ノズルと空気孔から燃焼室に噴出する流体と、燃焼室内の燃焼ガスの流れを示す状況図である。
【0045】
図2に示した本実施例のガスタービン燃焼器9に設置した多孔同軸噴流バーナ53では、空気孔プレート54が、多孔同軸噴流バーナ53を構成する燃料ノズル56aおよび燃料ノズル56bと燃焼室1との間に配置されている。
【0046】
また、空気孔プレート54の上流側には、燃焼用空気12が引き込まれ、空気孔プレート54に開口した1列目空気孔55−1、2列目空気孔55−2、3列目空気孔55−3から燃焼室1に噴出する。
【0047】
この1〜3列目空気孔の上流側入口の中央付近には、それぞれの空気孔と同軸上に燃料ノズル56aおよび燃料ノズル56bが配置されている。
【0048】
これらの燃料ノズル56aおよび燃料ノズル56bからは水素含有燃料22が、1列目燃料41−1、2列目燃料41−2、3列目燃料41−3として、1列目空気孔55−1、2列目空気孔55−2、3列目空気孔55−3の中心部に流入する。
【0049】
本実施例のガスタービン燃焼器9に設置した多孔同軸噴流バーナ53においては、上記した構成を採用しているので、空気孔プレート54の上流側から供給される燃焼用空気12は、空気孔プレート54の上流側に形成された広い空間から、燃料ノズル56の周囲の狭い領域を通って、空気孔プレート54に配設した狭い空間の複数の空気孔55にそれぞれ流入する。
【0050】
そのため、空気孔プレート54に配設した空気孔55の内部には、燃料流及び燃料流の外周側に形成された環状の空気流が、燃料ノズル56の下流に生じる後流渦や空気孔入口での燃焼用空気12の急収縮による剥離渦などの細かい乱れ構造を含んで流下する同軸噴流が形成されることになる。
【0051】
空気孔プレート54に配設した空気孔55を通過した燃料流及び空気流は、前記空気孔55から前記空気孔プレート54の下流側に形成された広い空間の燃焼室1に一気に噴出し、空気孔55の狭い空間で限定されていた渦が大きく拡大して崩壊するにつれて、燃焼室1において燃料流と空気流が急速に混合する。
【0052】
このように、空気孔プレート54に複数の燃料ノズル56とそれぞれ同軸の複数の空気孔55を形成し、これらの空気孔55の上流側に前記した各燃料ノズル56を配置する構成にすると、燃焼室1に流入した燃料は急速に分散するため、燃料と空気の混合度が増加し、短距離で急速に混合できる。
【0053】
本実施例のガスタービン燃焼器9の多孔同軸噴流バーナ53においては、同軸噴流バーナを構成する空気孔プレート54の空気孔55の内部において燃料流が中心部を流れ、燃料流の周囲を空気流が流れているため、燃料ノズル56のごく近傍では可燃範囲の混合気が形成されない。
【0054】
また、空気孔プレート54の空気孔55の内部と燃焼室1に流入した直後の非常に狭い領域で混合が進行するため、空気孔プレート54の近傍に火炎が接近しにくく、ガスタービン燃焼器9は信頼性が高い特徴を持つ。
【0055】
図2に示す本実施例のガスタービン燃焼器9に設置した多孔同軸噴流バーナ53の同軸噴流バーナを構成する前記燃料ノズル56aおよび燃料ノズル56bと、空気孔プレート54の空気孔55との位置関係において、多孔同軸噴流バーナ53の内周側に設置した第1の同軸噴流バーナ部となるバーナ最内周の1列目空気孔55−1の中心軸は、バーナ中心軸に対して空気孔を配置したピッチ円の円周方向に傾斜している。
【0056】
図2及び図3に示すように、第1の同軸噴流バーナ部となるバーナ最内周空気孔55−1の中心軸は、バーナ中心軸に対して空気孔を配置したピッチ円の円周方向に傾斜しているので、第1の同軸噴流バーナ部となる最内周空気孔55−1から噴出する内周燃料の燃料流41−1及び空気流は、最内周空気孔55−1の中心軸に沿って空気孔を配置したピッチ円の接線方向の旋回成分を持って燃焼室1に噴射され、前記の機構により急速に混合されて混合気42−1となる。
【0057】
また、空気孔プレート54の最内周空気孔55−1は、図2及び図3に示すように円周方向に傾斜した旋回角を持っているため、最内周空気孔55−1から噴射された混合気42−1は、燃焼室1の内部で螺旋状に旋回しながら下流側へ流れる旋回流46となり、燃焼室1内部で旋回直径を拡大しながら下流側に流出する。
【0058】
このように拡大しながら流下する旋回流は、旋回の中心軸上に逆方向の圧力勾配を誘導するので、図2に示すように、旋回流の中で火炎45内の反応により生じた燃焼ガス44の一部は循環ガス43として循環し、最内周空気孔55−1から流入する混合気42−1に対して活性化エネルギを与えることで燃焼反応を維持する着火源として機能する。これにより燃焼室1内部に安定な円錐状の定常火炎45が形成される。
【0059】
一方、空気孔プレート54の空気孔55の出口近傍では、高速で空気孔55を流下した燃料及び空気が急に広い空間に噴出して空気孔壁面の拘束を受けなくなるため、後流と呼ばれる流速の低い渦を伴う低流速領域48が、空気孔プレート54の燃焼室側表面の空気孔と空気孔の間隙部分に生じる。
【0060】
後流と呼ばれる流速の低い渦は、空気孔55から噴出する高速の同軸噴流によって、空気孔の周囲の流体が引きずられるように運動することで生み出される。
【0061】
このため、空気孔プレート54の空気孔55から噴出する高速の同軸噴流の混合気42−1、42−2、および42−3から可燃性の混合気を、空気孔の間隙部分に引き込む働きをする。
【0062】
したがって、後流を伴う低流速領域48は、可燃範囲の燃料と空気の混合気を持つ流速の低い領域となるので、水素含有燃料22のように水素を含む燃料の場合には、この後流を伴う低流速領域に空気孔プレート54に近接した火炎が付着する場合が生じる。
【0063】
後流を伴う低流速領域48に火炎が付着すると、空気孔プレート54のごく近傍で燃焼が行われるため、空気孔プレート54が過熱される恐れが生じるのみならず、低流速領域48に火炎が付着したり、離脱したりを繰り返すことで圧力変動が発生する恐れがある。
【0064】
このような圧力変動によって各空気孔における燃料流量41−1、41−2および41−3が圧力変動に同期して変動すると、燃料流量変動によってさらに圧力変動振幅が増大し、自励振動的に圧力変動が成長する燃焼振動と呼ばれる不安定燃焼状態に陥る恐れがある。
【0065】
燃焼振動が発生すると、燃焼器構造物には繰り返し圧力波による応力が作用するため、繰り返し疲労の寿命を消費するなどの信頼性上の問題が発生する。
【0066】
以上に述べたような燃焼振動状態に陥ることを避けるため、本実施例のガスタービン燃焼器9においては、ガスタービン燃焼器9に設置した同軸噴流バーナ53を構成する燃料ノズル56aおよび燃料ノズル56bに複数の開口断面積の変更要素(絞り部)を設けている。
【0067】
本実施例のガスタービン燃焼器9に設置した同軸噴流バーナ53では、この開口断面積の変更要素として図4及び図5にオリフィス状の絞り部を例示しているが、その他にもベンチュリー構造など、流体の通過する部分の開口断面積が変化し、その前後の圧力差と断面積によって通過流量が規定される性質を持つ、開口断面積の変更要素であれば本実施例と同様の効果を発揮する。
【0068】
本実施例のガスタービン燃焼器9に設置した同軸噴流バーナ53を構成する燃料ノズル56aおよび燃料ノズル56bに設けた複数の開口断面積の変更要素(絞り部)の効果について、図4図5図6および図7を用いて説明する。
【0069】
図4図1に示した第1実施例のガスタービン燃焼器9の燃焼室1の上流側に位置し、複数の空気孔を有する空気孔プレート54に配置された多孔同軸噴流バーナ53を構成する燃料ノズルのうち、最もバーナ中心軸に近い1列目に同心円上に複数個配置された燃料ノズル56aと、この燃料ノズル56aから噴出する燃料である流体の流れを示す状況図である。
【0070】
本実施例のガスタービン燃焼器9に設置した同軸噴流バーナ53に係る燃料ノズルのうち、1列目に配置された燃料ノズル56a、及び2列目と3列目に同心円上に配置された燃料ノズル56bの第1の特徴は、燃料ノズル56aおよび56bの内部に形成した燃料流路に燃料を流下させる開口断面積の変更要素(絞り部)を設けていることにある。
【0071】
前記燃料ノズル56aのうち、燃料分配器57側となる燃焼器頭部側に位置する第1の絞り部58aはオリフィス構造の絞り部であり、この燃焼器頭部側に位置する第1の絞り部58aの開口面積A1aと、燃料供給圧力Pf、および燃料ノズル56aの2つの絞り部(58aと後述する59a)に挟まれた中間部分60aの圧力Pmによって、第1の絞り部58aを通過する燃料の流量G1aが規定される。
【0072】
一方、前記燃料ノズル56aのうち、燃焼器頭部側に位置する第1の絞り部58aの下流側となる燃焼室1側に位置する第2の絞り部59aも同様にオリフィス構造の絞り部であり、第2の絞り部59aの開口面積A2aと、燃料ノズル56aの2つの絞り部58a、59aに挟まれた中間部分60aの圧力Pm、および燃焼室1の圧力Pcによって、第2の絞り部59aを通過する燃料の流量G2aが規定される。
【0073】
燃料ノズル56aの燃焼器頭部側に位置する第1の絞り部58aを通過する流量G1aと第2の絞り部59aを通過する流量G2aは等しいので、燃料ノズル56aの2つの絞り部58a、59aに挟まれた中間部分60aの圧力Pmは、2つの絞り部58aおよび59aの開口断面積の比によって定まる、通過流量のバランスする圧力になる。
【0074】
このように2つの絞り部58a、59aを有する燃料ノズル56aにおいて、燃焼室1の圧力が何らかの原因で変動した場合の燃料流量の挙動について、説明する。
【0075】
仮に何らかの原因により、燃焼室1内の圧力がΔPc低下すると、まず、燃料ノズル56aの第2の絞り部59aにおいて絞りの前後の圧力比が増加し、第2の絞り部59aを通過する燃料流量G2aが過渡的に増加する。
【0076】
また絞り部下流側の圧力の低下に伴って、燃料ノズル56aの2つの絞り部58a、59aに挟まれた中間部分60aの圧力Pmも低下しようとするが、第2の絞り部59aを通過する燃料流量G2aが過渡的に増加したことにより、第2の絞り部59a前後の圧力比は増加するので、燃料ノズル56aの2つの絞り部58a、59aに挟まれた中間部分60aの圧力低下量ΔPmは、燃焼室1内圧力の低下幅ΔPcより小さくなる。
【0077】
次に、前記燃料ノズル56aの燃料供給側の燃焼器頭部側に位置する第1の絞り部58aにとって、後ろ側の圧力である中間部分60aの圧力がΔPm低下したことに伴って、第1の絞り部58aにおいて絞りの前後の圧力比が増加し、第1の絞り部58aを通過する燃料流量G1aも過渡的に増加する。
【0078】
しかしながら、前述のように中間部分60aの圧力低下幅ΔPmは、燃焼室1内の圧力低下幅ΔPcより小さくなるため、燃料流量G1aの増加量は、第2の絞り部59aを通過する燃料流量G2aの増加量より少なくなる。
【0079】
さらに燃焼器頭部側に位置する第1の絞り部58a上流側の燃料供給圧力Pfも、後ろ側の圧力である中間部分60aの圧力がΔPm低下したことに伴って低下しようとするが、先に第2の絞り部59aについて述べたと同様に、流量の増加に伴う絞り部圧力比の増加により、圧力の低下幅ΔPfは中間部分60aの圧力低下幅ΔPmよりさらに小さくなる。
【0080】
このような機構によって、1つの燃料ノズル56aに2つの絞り部58aおよび59aを設けることにより、燃焼室1の圧力変動を緩和し圧力変動に同期した燃料流量変動が発生することを緩和することができる。
【0081】
さらに本発明の第1実施例のガスタービン燃焼器9に係る燃料ノズルのうち、1列目に配置された燃料ノズル56a、及び2列目と3列目に同心円上に配置された燃料ノズル56bの第2の特徴は、このように1つの燃料ノズル56aおよび56bにそれぞれ2つの絞り部58a、59a及び58b、59bを設けた燃料ノズルにおいて、燃料ノズル56aの燃焼器頭部側に位置する第1の絞り部58aの開口面積A1と第2の絞り部59aの開口面積A2の比率、並びに、燃料ノズル56bの第1の絞り部58bの開口面積A1と第2の絞り部59bの開口面積A2の比率をそれぞれ変化させた燃料ノズルを用意し、両者を同一の燃料供給系統22Aに接続することにある。
【0082】
図5図2に示した第1実施例のガスタービン燃焼器の燃焼室9の上流側に位置し、複数の空気孔を有する空気孔プレート54に配置された多孔同軸噴流バーナ53のうち、バーナ中心軸から2列目および3列目の外周側同心円上に複数個配置された燃料ノズル56bと、この燃料ノズル56bから噴出する流体の流れを示す状況図である。
【0083】
図5に示す燃料ノズル56bと、先に述べた図4に示す燃料ノズル56aは同じ燃料供給圧Pfと燃焼室1内圧力Pcの比に対して、同一の燃料流量が得られるような特性を持っている。
【0084】
両者の違いは、燃料ノズル56aの燃焼器頭部側に位置する第1の絞り部58aの開口面積A1に対する第2の絞り部59aの開口面積A2の比率の値が、燃料ノズル56bの燃焼器頭部側に位置する第1の絞り部58bの開口面積A1に対する第2の絞り部59bの開口面積A2の比率の値と異なることである。
【0085】
即ち、図4に示したバーナ中心軸に近い1列目の同心円上に配置された燃料ノズル56aでは、燃料供給側となる燃焼器頭部側に位置する第1の絞り部58aの開口面積A1aを大きく、燃焼室1側に位置する第2の絞り部59aの開口面積A2aを小さくしている。
【0086】
一方、図5に示したバーナ中心から2列目および3列目の外周同心円上に配置された燃料ノズル56bでは、燃料供給側となる燃焼器頭部側に位置する第1の絞り部58bの開口面積A1aを小さく、燃焼室1側に位置する第2の絞り部59bの開口面積A2aを大きくしている。
【0087】
このように、バーナの1列目に配置された燃料ノズル56aと、バーナの2列目および3列目に配置された燃料ノズル56bとで、燃焼器頭部側に位置する第1の絞り部58a、58bの開口面積A1と第2のノズル部59a、59bの開口面積A2の比率を互いに変更する効果について、図6および図7を用いて説明する。
【0088】
図6は、燃料ノズル56a及び56bに設けた燃焼器頭部側に位置する第1の絞り部58a、58bの開口面積A1によって、燃料ノズル56a及び56bに設けた第2の絞り部59a、59bの開口面積A2を除算して得られる2つの絞り部58a、59aと、58b、59bの開口面積の比R(R=A2/A1)を変化させた場合の、2つの絞り部58a、59aと、58b、59bに挟まれた燃料ノズル56aの中間部分60aおよび燃料ノズル56bの中間部分60bの圧力の変化を示したものである。
【0089】
検討に当たっては、同じ燃料供給圧Pfと燃焼室1内圧力Pcの比を用いている。また、2つの絞り部58a、59aと、58b、59bの開口面積の比を変化させても、燃料ノズル56a、56bを通過する流量は一定になるよう、開口面積A1a,A2a、A1b,A2bなどを調整している。
【0090】
図6に示すように、バーナ中心軸に近い1列目の同心円上に配置された燃料ノズル56aのように、燃焼器頭部側に位置する第1の絞り部58aの開口面積A1aを大きく、燃焼室1側に位置する第2の絞り部59aの開口面積A2aを小さくした、2つの絞り部58a、59aの開口面積比R1(R1=A2a/A1a)の値が1よりも小さい場合、第1の絞り部58aを通過するために必要な圧力比が小さく、第2の絞り部59aを通過するために必要な圧力比が大きくなるので、2つの絞り部58a、59aに挟まれた中間部分60aの圧力は燃料供給圧力Pfに近い値となる。
【0091】
一方、バーナ中心から2列目および3列目の外周同心円上に配置された燃料ノズル56bのように、燃焼器頭部側に位置する第1の絞り部58bの開口面積A1bを小さく、燃焼室1側に位置する第2の絞り部59bの開口面積A2bを大きくした、2つの絞り部58b、59bの開口面積比R2(R2=A2b/A1b)の値が1よりも大きい場合、第1の絞り部58bを通過するために必要な圧力比が大きく、第2の絞り部59bを通過するために必要な圧力比が小さくなるので、2つの絞り部58b、59bに挟まれた中間部分60bの圧力は燃焼室内圧力Pcに近い値となる。
【0092】
このように同じ流量を通過させる燃料ノズルであっても、2つの絞り部58a、59aと、58b、59bの開口面積比R1、R2が異なる燃料ノズル56aと燃料ノズル56bが同一の燃料供給系統に接続されている場合、燃焼室1内の圧力が変動した場合の燃料流量の応答が、2つの絞り部58a、59aの開口面積比R1が小さい燃料ノズル56aと、2つの絞り部58b、59bの開口面積比R2が大きい燃料ノズル56bでは、燃料ノズル56aの中間部分60aと燃料ノズル56bの中間部分60bの圧力が異なるため、異なる過渡特性を持つ。
【0093】
図7図6と同様に、第1の絞り部58a、58bの開口面積A1によって、第2の絞り部59a、59bの開口面積A2を除算して得られる、2つの絞り部58a、59aと、58b、59bの開口面積の比R(R=A2/A1)を変化させた場合の、燃料ノズル56aおよび燃料ノズル56bから燃焼室1に向けて噴出する、燃料噴出流速Ufの変化を示した図である。
【0094】
図7でも検討に当たっては、同じ燃料供給圧Pfと燃焼室1内圧力Pcの比を用いている。また、2つの絞り部58a、59aと、58b、59bの開口面積の比を変化させても、燃料ノズル56a、56bを通過する流量は一定になるよう、開口面積A1a,A2a、A1b,A2bなどを調整している。
【0095】
燃料噴出流速Ufの程度が分かりやすくなるよう、第1の絞り部58a、58bの開口面積A1と第2の絞り部59a、59bの開口面積A2を等しくした場合の、燃料噴出流速Ufを1として規格化して示している。
【0096】
図7に示すように、バーナ中心軸に近い1列目の同心円上に配置された燃料ノズル56aのように、第1の絞り部58aの開口面積A1aを大きく、燃焼室1側に位置する第2の絞り部59aの開口面積A2aを小さくした、2つの絞り部58a、59aの開口面積比R1(R1=A2a/A1a)の値が1よりもが小さい場合、より小さい開口面積A2aから燃料が噴出するため、燃料噴出流速Ufは大きな値となる。
【0097】
逆に、バーナ中心から2列目および3列目の外周同心円上に配置された燃料ノズル56bのように、第1の絞り部58bの開口面積A1bを小さく、燃焼室1側に位置する第2の絞り部59bの開口面積A2bを大きくした、2つの絞り部58b、59bの開口面積比R2(R2=A2b/A2a)の値が1よりも大きい場合、より大きい開口面積A2bから同一流量の燃料が噴出するため、燃料噴出流速Ufは小さな値となる。
【0098】
このように同じ流量を通過させる燃料ノズル56a、56bであっても、2つの絞り部58a、59aと、58b、59bの開口面積比R1、R2が異なる燃料ノズル56aと燃料ノズル56bでは燃料噴出流速Ufが異なる。
【0099】
ある燃料供給系統について燃焼室1内の圧力変動に対する応答の特性周波数は、燃料供給系統出口から圧力変動の発生点までの距離Lと燃料噴出流速Ufにより定義されるUf/Lとなる。
【0100】
本実施例のガスタービン燃焼器9に係る燃料供給系統では、共通する同一の燃料供給系統に複数の燃料噴出流速を呈する燃料ノズル56aおよび56bが配置されているため、バーナ全体で圧力変動と共振する周波数がなくなるので、圧力変動と燃料流量変動が共振しなくなり、燃焼振動が発生しない。
【0101】
さらに本実施例のガスタービン燃焼器9に前記した燃料ノズル56aおよび56bを配置することにより、バーナ内の混合を、燃料ノズルを配置する同心円毎に変化させることにより、燃焼安定性を向上することができる。
【0102】
一般に、燃料が空気中に噴出して拡散する場合には、燃料ノズルからある程度の距離までは、噴流の持つ運動量によって空気が押し退けられ、ポテンシャルコア61と呼ばれる燃料の気柱状の塊が形成され、ポテンシャルコアから燃料塊が拡散していくような混合形態となる。
【0103】
このポテンシャルコアの到達長さ62は、燃料噴流の持つ運動量に概略比例する。この流れの状況を燃料ノズル56aについて図4に、燃料ノズル56bについて図5にそれぞれ示す。
【0104】
燃料ノズル56aでは、2つの絞り部58a、59aの開口面積A1aとA2aの比である開口面積比R1(R1=A2a/A1a)の値が1よりも小さく、燃料噴出流速Ufaが大きいのでUfaの二乗に比例する燃料噴流の運動量も大きく、ポテンシャルコア61aの到達長さ62aは大きい。
【0105】
また燃料が噴出する開口面積A2aが小さいため、燃料のポテンシャルコア61aは空気孔の中心部付近に集中している。
【0106】
一方、燃料ノズル56bでは、2つの絞り部58b、59bの開口面積A1bとA2bの比である開口面積比R2(R2=A2b/A1b)の値が1よりも大きく、燃料噴出流速Ufbが小さいのでUfbの二乗に比例する燃料噴流の運動量も小さく、ポテンシャルコア61bの到達長さ62bは小さい。
【0107】
また燃料が噴出する開口面積A2bが大きいため、燃料のポテンシャルコア61bはより空気孔の外側まで到達している。
【0108】
したがって、燃料ノズル56aから噴出する燃料は、より空気孔出口に近い位置まで燃料の塊として噴出し、より空気孔中心軸付近から拡散を開始するため、混合が遅れて局所的に濃い燃料空気混合気が形成されやすい。
【0109】
一方、燃料ノズル56bから噴出する燃料は、より燃料ノズル出口に近い位置で燃料のポテンシャルコア61bが解け、より空気孔外側に近い位置からから拡散を開始するため、混合が進みやすく均一な燃料空気混合気が形成されやすい。
【0110】
前述のように、多孔同軸噴流バーナ53を構成する、最もバーナ中心軸に近い1列目の同心円上に配置された燃料ノズル56aの同軸噴流群は、図2に示した循環流43によってもたらされる着火源となる燃焼ガスに、最初に触れて火炎の基点を形成するので、特に燃焼安定性に関係が深い。
【0111】
そこで、多孔同軸噴流バーナ53を構成する、最もバーナ中心軸に近い1列目の同心円上に配置する燃料ノズルとして、2つの絞り部58a、59aの開口面積比R1が小さい燃料ノズル56aを配置することにより、局所的に濃い燃料空気混合気を形成して、燃焼ガスによる混合気の着火を助け、燃焼安定性を向上することが可能となる。
【0112】
一方、多孔同軸噴流バーナ53を構成する、2列目および3列目の同心円上に配置された燃料ノズル56bの同軸噴流群は、図2に示したように1列目同軸噴流群が形成する火炎の基点から、円錐状にのびる火炎に到達するまで空気孔プレート54から長い距離を噴出する。
【0113】
このため、多孔同軸噴流バーナ53を構成する、2列目および3列目の同心円上に配置された燃料ノズル56bの同軸噴流群は、均一な混合気による希薄燃焼を行いやすい性質がある。
【0114】
この性質を生かして更に混合度を向上させるには、多孔同軸噴流バーナ53を構成する、2列目および3列目の同心円上に配置された燃料ノズルとして、2つの絞り部58b、59bの開口面積比R2が大きく、燃料噴出流速Ufbが小さい燃料ノズル56bを配置することが有利である。
【0115】
以上説明した本実施例のガスタービン燃焼器9においては、最低限2つの開口面積変更要素(絞り部)を設けた燃料ノズル56a、56bを備えた多孔同軸噴流バーナ53を例示したが、開口面積変更要素(絞り部)が3つ以上の燃料ノズルを備えた多孔同軸噴流バーナであっても同様の機能を呈する。
【0116】
さらに、開口面積変更要素(絞り部)が多いほど圧力変動の緩和効果は大きくなるが、同一の燃料流量を得るために必要な断面積が増加する。また、その際の燃料噴出流速を調整する効果は、最も燃焼室1側に位置する開口面積変更要素(絞り部)により決定される。
【0117】
本実施例によれば、水素を含んだ燃料をガスタービン燃焼器で燃焼させる場合に、ガスタービンの広範な負荷範囲にわたってガスタービン燃焼器に火炎による構造的な信頼性の問題を回避すると共に燃焼振動による不安定現象の発生を抑制し、且つ、低NOx燃焼を可能にしたガスタービン燃焼器が実現できる。
【実施例2】
【0118】
本発明の第2実施例であるガスタービン燃焼器について、図8図11を用いて説明する。
【0119】
本実施例のガスタービン燃焼器9は図1図7に示した第1実施例のガスタービン燃焼器9と基本的な構成は同じであるので、両者に共通した説明は省略し、相違した部分についてのみ以下に説明する。
【0120】
図8図11に示した本実施例のガスタービン燃焼器9を有するガスタービンプラントも、第1実施例のガスタービンプラントと同様の水素含有燃料焚きガスタービン発電プラントであり、プラントの構成及び運用方法は第1実施例のガスタービンプラントと同様であるが、より多様な発電形態に対応するため、第1実施例に示す多孔同軸噴流バーナを、燃焼器の軸心中央にパイロット多孔同軸噴流バーナ50として1個配置し、このパイロット多孔同軸噴流バーナ50の周囲に複数個(本実施例では6個)のメイン多孔同軸噴流バーナ53として配置した構造にして多様な負荷に対応させている。
【0121】
更に本実施例に示すガスタービン燃焼器9では、燃料供給系統を分割して、よりきめ細かく燃料配分を制御できるようにしている。
【0122】
この結果、本実施例のガスタービン燃焼器9では、第1実施例のガスタービン燃焼器9よりもさらに水素濃度の高い水素含有燃料を燃料とするガスタービン発電プラントや、第1実施例のガスタービンプラントよりも大出力、高圧力比、高負荷のガスタービン発電プラントに好適である。
【0123】
本実施例のガスタービン燃焼器9は、バーナの中央に設置された1個のパイロット多孔同軸噴流バーナ50と、このパイロット多孔同軸噴流バーナ50の外周側に設置された6個のメイン多孔同軸噴流バーナ53から成る7つのバーナで構成しているが、バーナの配置本数は負荷に応じて他の本数で構成しても同様の効果が得られる。
【0124】
また、パイロット多孔同軸噴流バーナ50及びメイン多孔同軸噴流バーナ53となる多孔同軸噴流バーナ53を構成する同軸噴流バーナの列数は本実施例に示すような3列の構成のほか、2列ないし4列以上で構成しても良い。
【0125】
図8は本発明の第2実施例であるガスタービン燃焼器9の概略構造を示す断面図である。
【0126】
図8に示したように本実施例のガスタービン燃焼器9では、3列の同軸噴流バーナ群からなる1個のパイロット多孔同軸噴流バーナ50を燃焼器の軸心側の中央に設置し、このパイロット多孔同軸噴流バーナ50の外周側となる燃焼器の外周側に3列の同軸噴流バーナ群からなる6個のメイン多孔同軸噴流バーナ53を設置して構成している。
【0127】
また、本実施例のガスタービン燃焼器9の中央に配置された1個のパイロット多孔同軸噴流バーナ50には、燃料を供給するパイロットバーナ燃料供給系統22aが配設されており、ガスタービン燃焼器9の外周側に配置された6個のメイン多孔同軸噴流バーナ53には、燃料を供給するメインバーナ内周燃料供給系統22bとメインバーナ外周燃料供給系統22cがそれぞれ配設されており、これらの3つの燃料供給系統22a、22b、22cを通じてガスタービン燃焼器9に燃料を供給している。
【0128】
そして前記パイロットバーナ燃料供給系統22aからパイロット多孔同軸噴流バーナ50に供給する燃料流量、及び、メインバーナ内周燃料供給系統22bとメインバーナ外周燃料供給系統22cから6個のメイン多孔同軸噴流バーナ53に供給する燃料流量は、それぞれ独立に燃料流量を制御できるように構成されている。
【0129】
本実施例のガスタービン燃焼器9に配置された多孔同軸噴流バーナである燃焼器の中央に1個配置したパイロット多孔同軸噴流バーナ50には、パイロットバーナ燃料供給系統22aを接続させて燃料を供給し、主にガスタービンの起動運転に使用すると共に、負荷運転の際には燃焼器全体の燃焼安定性を確保するための火種を担う運用を行う。
【0130】
一方、本実施例のガスタービン燃焼器9に配置された多孔同軸噴流バーナである、パイロット多孔同軸噴流バーナ50の周囲に6個配置されたメイン多孔同軸噴流バーナ53には、メインバーナ内周燃料供給系統22bとメインバーナ外周燃料供給系統22cを接続させて燃料を供給している。
【0131】
そして前記メインバーナ内周燃料供給系統22bとメインバーナ外周燃料供給系統22cは、メイン多孔同軸噴流バーナ53の一列目の燃料ノズル56aと、2列目の燃料ノズル56b及び3列目の燃料ノズル56cに燃料を供給するように区分されている。
【0132】
前記多孔同軸噴流バーナ50、53は前述したように、それぞれのバーナにおいて最もバーナ中心軸に近い1列目の同心円上に配置された同軸噴流群が、循環流43によってもたらされる着火源となる燃焼ガスに、最初に触れて火炎の基点を形成するので、特に燃焼安定性に関係が深い。
【0133】
そこで本実施例のガスタービン燃焼器9に複数個配置された多孔同軸噴流バーナ50、53では、多孔同軸噴流バーナの1列目(内周)に供給する燃料を独立に制御することで、確実に火炎の基点を形成させ、より広い負荷範囲に対して安定な燃焼状態を維持する。
【0134】
そして本実施例のガスタービン燃焼器9に配置された多孔同軸噴流バーナにおいては、本実施例の特徴の1つとして、燃焼器全体の安定性を担うパイロット多孔同軸噴流バーナ50、およびメイン多孔同軸噴流バーナ53の火炎の基点を形成させるメイン同軸噴流バーナ53の内周(1列目)に配置する同軸噴流バーナの燃料ノズル56に、図4に示した第1実施例の燃料ノズル56aと同じ構成である2つの絞り部58a、59aの開口面積A1aとA2aの比である開口面積比R1(R1=A2a/A1a)が小さい燃料ノズル56aを適用することにより、局所的に濃い燃料空気混合気を形成して、燃焼ガスによる混合気の着火を助け、燃焼安定性を向上することを可能にしている。
【0135】
また、本実施例のガスタービン燃焼器9に配置された多孔同軸噴流バーナにおいては、本実施例の特徴の他の1つとして、メイン多孔同軸噴流バーナ53の外周側(2列目および3列目)の同軸噴流バーナ群において、より内周側の2列目の燃料ノズル56に、図5に示した第1実施例の燃料ノズル56bと同じ構成である2つの絞り部58b、59bの開口面積A1bとA2bの比である開口面積比R2(R2=A2b/A1b)が大きく、燃料噴出流速Ufbが小さい燃料ノズル56bを配置し、混合が進みやすく均一な燃料空気混合気が形成されやすい構成としている。
【0136】
これは、3列目同心円上の同軸噴流バーナ群には、後述する図11に示した構成である、2つの絞り部の開口面積比が小さく、燃料噴出流速Ufcが大きい燃料ノズル56cを配置し、空気孔出口において後流を伴う低流速領域に引き込まれる燃料を抑制する構成とするものである。
【0137】
このような燃料ノズル56a、56bおよび56cを配置した本実施例のガスタービン燃焼器9に配置された多孔同軸噴流バーナ53によって得られる作用と効果について、図9図10および図11を用いて説明する。
【0138】
図9は本発明の第2実施例のガスタービン燃焼器9である燃焼室1の上流側に位置し、複数の空気孔を有する空気孔プレート54を燃焼室1側から見たB−B方向矢視図である。
【0139】
また図10は、図8に示した第2実施例のガスタービン燃焼器9の燃焼室の上流側に位置し、複数の空気孔を有する空気孔プレートに複数個配置された多孔同軸噴流バーナ53のうち、図9において一点鎖線で囲んだ一つのメイン多孔同軸噴流バーナ53を構成する、燃料ノズル56a、56b、56cと、空気孔55−1、55−2、55−3から燃焼室1に噴出する流体と、燃焼室1内の燃焼ガスの流れを示す状況図である。
【0140】
図9に示す本実施例のガスタービン燃焼器9に設けた多孔同軸噴流バーナにおいては、空気孔プレート54の中央の破線で囲った領域には、1個のパイロット多孔同軸噴流バーナ50が配置されており、その周囲に6個のメイン多孔同軸噴流バーナ53が配置されている。
【0141】
図9に示す本実施例のガスタービン燃焼器9に設けた多孔同軸噴流バーナにおいて、一点鎖線で囲って示した一つのメイン多孔同軸噴流バーナ53に注目すると、1列目空気孔55−1、2列目空気孔55−2および3列目空気孔55−3の間には、流体の噴出孔のない領域が広がっており、特に各バーナの最外周である3列目空気孔の外側に大きな空間があることが分かる。
【0142】
空気孔と空気孔の間にこのように広い空間がある場合、後流と呼ばれる流速の低い渦を伴う低流速領域48が大きく成長する。後流と呼ばれる流速の低い渦を伴う低流速領域48が成長しうる領域を図9に網掛けを施して示す。
【0143】
また、図10に示す本実施例のガスタービン燃焼器9に設けた6個の各メイン多孔同軸噴流バーナ53は、図2に示した第1実施例のガスタービン燃焼器9に設けたメイン多孔同軸噴流バーナ53と同様に、空気孔プレート54が、メイン多孔同軸噴流バーナ53を構成する燃料ノズル56a、56bおよび56cと燃焼室1との間に配置されている。
【0144】
空気孔プレート54の上流側に燃焼用空気12が引き込まれ、空気孔プレート54に開口した1列目空気孔55−1、2列目空気孔55−2、3列目空気孔55−3から燃焼室1に噴出する状況は、図2に示した第1実施例のガスタービン燃焼器9と同様である。
【0145】
同様に、1〜3列目空気孔の上流側入口の中央付近に空気孔と同軸上に配置された燃料ノズル56a、56bおよび56cからは水素含有燃料22が、1列目燃料41−1、2列目燃料41−2、3列目燃料41−3として、1列目空気孔55−1、2列目空気孔55−2、3列目空気孔55−3の中心部に流入し、燃焼室1において燃料流と空気流が急速に混合する状況も、図2に示した第1実施例のガスタービン燃焼器9と同様である。
【0146】
ここで、空気孔55の出口近傍に生じる後流と呼ばれる流速の低い渦を伴う低流速領域48に注目すると、図10に示すように1列目空気孔と2列目空気孔の間、2列目空気孔と3列目空気孔の間、および3列目空気孔の外側に、それぞれ後流と呼ばれる流速の低い渦を伴う低流速領域48が成長する。
【0147】
図10に示すように本実施例のガスタービン燃焼器9では、第1実施例のガスタービン燃焼器9についての説明で述べたように、後流と呼ばれる流速の低い渦は、空気孔55から噴出する高速の同軸噴流によって、空気孔の周囲の流体が引きずられるように運動することで生み出され、空気孔55から噴出する高速の同軸噴流の混合気42−1、42−2、および42−3から可燃性の混合気を、空気孔の間隙部分に引き込む働きをする。
【0148】
水素濃度のより高い水素含有燃料をガスタービンに使用する場合には、燃料を着火するために必要な最小着火エネルギがさらに低下し着火しやすくなる上に、可燃範囲が広がるため、燃焼室上流側に位置する空気孔プレート54に設けた多孔同軸噴流バーナの、空気孔と空気孔の間隙部分に分布する、後流を伴う低流速領域48に近接火炎が発生しやすくなる。
【0149】
また、高圧力比のガスタービンで水素含有燃料を使用する場合も、圧縮空気10の吐出温度が高くなるため、水素濃度が増加した場合と同様に、着火しやすくなる上に可燃範囲が広がって、近接火炎が発生しやすくなる。
【0150】
上記のように近接火炎が発生しやすい条件では、後流を伴う低流速領域48には近接火炎が発生しやすく、また燃焼振動も起こりやすくなる恐れがある。
【0151】
したがって水素濃度のより高い水素含有燃料をガスタービンに使用したり、高圧力比のガスタービンで水素含有燃料を使用したりする場合には、図9に網掛けで示す後流と呼ばれる流速の低い渦を伴う低流速領域48に燃料を漏れこませない工夫が特に重要である。
【0152】
図9および図10に示すように、後流を伴う低流速領域48は、メイン多孔同軸噴流バーナ53の外側に、特に大きく広がっている。例えば、1列目と2列目、あるいは2列目と3列目の空気孔間に存在する後流を伴う低流速領域48は、空気孔によって小さな領域ごとに区切られており、かつ周囲を高速の同軸噴流に取り囲まれているので、容易には火炎が付着できない。
【0153】
一方、メイン多孔同軸噴流バーナ53の外側の低流速領域は、さえぎるものがなく広がっている上、領域の大きさに比較して高速の同軸噴流に接している部分が小さく、火炎が付着しやすくなる。
【0154】
そこで本実施例のガスタービン燃焼器9に設けたメイン多孔同軸噴流バーナ53においては、上記したように、火炎が付着しやすいメイン多孔同軸噴流バーナ53の外側に広がる後流を伴う低流速領域48に対して、燃料の漏れ込みが少なくなるよう、3列目の同心円上の同軸噴流バーナ群には、2つの絞り部の開口面積比が小さく、燃料噴出流速Ufcが大きい燃料ノズル56cを配置している。
【0155】
図11図8に示した本実施例のガスタービン燃焼器9の燃焼室1の上流側に位置し、複数の空気孔55を有する空気孔プレート54に配置された多孔同軸噴流バーナ53のうち、バーナ中心軸から3列目の外周側同心円上に配置された燃料ノズル56cと、この燃料ノズル56cから噴出する流体の流れを示す状況図である。
【0156】
図11に示す本実施例のガスタービン燃焼器9に設置した多孔同軸噴流バーナ53のバーナ中心軸から3列目の外周側同心円上に配置された燃料ノズル56cと、先に述べた第1実施例のガスタービン燃焼器9に設置した多孔同軸噴流バーナ53のバーナ中心軸から1列目の同心円上に配置された燃料ノズル56a、及び2列目の外周側同心円上に配置された燃料ノズル56bは同じ燃料供給圧Pfと燃焼室1内圧力Pcの比に対して、同一の流量が得られるような特性を持っている。
【0157】
これらの燃料ノズル56a、56b、56cの違いは、それぞれの燃焼器頭部側に位置する第1の絞り部58a、58b、58cの開口面積A1と、それぞれの第2の絞り部59a、59b、59cの開口面積A2の比率である。
【0158】
図11に示した本実施例のガスタービン燃焼器9に設置した多孔同軸噴流バーナ53のバーナ中心軸から3列目の外周側同心円上に配置された燃料ノズル56cでは、燃料ノズル56aと同様に燃料供給側に位置する第1の絞り部58cの開口面積A1cを大きく、燃焼室1側に位置する第2の絞り部の開口面積A2cを小さくしている。
【0159】
本実施例のガスタービン燃焼器9では、図6を用いて第1実施例のガスタービン燃焼器9について説明したように、同じ流量を通過させる燃料ノズル56bと56cであっても、2つの絞り部58b、59bの開口面積A1bとA2bの比である開口面積比R2(R2=A2b/A1b)と、2つの絞り部58c、59cの開口面積A1cとA2cの比である開口面積比R3(R3=A2c/A1c)とが異なる燃料ノズル56bと燃料ノズル56cが共通する同一の燃料供給系統22bに接続されている場合、燃焼室1内の圧力が変動した場合の燃料流量の応答が、2つの絞り部58b、59bの開口面積比R2(R2=A2b/A1b)の値が1よりも大きい燃料ノズル56bと、2つの絞り部58c、59cの開口面積比R3(R3=A2c/A1c)の値が1よりも小さい燃料ノズル56cとでは、燃料ノズル56bの中間部分60bと燃料ノズル56cの中間部分60cの圧力が異なるため、異なる過渡特性を持つ。
【0160】
また同様に、第1実施例のガスタービン燃焼器9について、図7で説明したように、同一のメインバーナ外周燃料系統22cの中に複数の燃料噴出流速を呈する燃料ノズル56bおよび燃料ノズル56cが配置されているため、メイン多孔同軸噴流バーナ53外周全体で圧力変動と共振する周波数がなくなるので、圧力変動と燃料流量変動が共振しなくなり、燃焼振動が発生しない。
【0161】
さらに、図11に示すように、本実施例のガスタービン燃焼器9に設置した多孔同軸噴流バーナ53の3列目の同心円上に配置された燃料ノズル56cは、2つの絞り部58c及び59cの開口面積比R3(R3=A2c/A1c)の値が1よりも小さく、燃料噴出流速Ufcが大きいのでUfcの二乗に比例する燃料噴流の運動量も大きく、ポテンシャルコア61cの到達長さ62cは大きい。
【0162】
また、前記燃料ノズル56cでは、燃料が噴出する開口面積A2cが小さいため、燃料のポテンシャルコア61cは空気孔の中心部付近に集中している。
【0163】
このため、空気孔プレート54に設けた3列目空気孔55−3から噴出する3列目混合気42−3は、燃料と空気の混合の開始が遅れる上に、燃料41−3が空気孔55−3の中心付近に集中した状態から混合を始めるので、空気孔55−3出口において、後流を伴う低流速領域48に燃料が巻き込まれにくくなる。
【0164】
一方、空気孔出口55−3近傍では上記のように、燃料の分布が空気孔の中心付近に偏るような状況であっても、図10に示すように、空気孔プレート54に設けた3列目空気孔55−3から噴出する3列目混合気42−3は、火炎45に到達するまでの距離が大きいため、その間に十分に混合が進み、均一な希薄混合気となることができ、低NOx燃焼性能を損なわない。
【0165】
以上述べたように本実施例のガスタービン燃焼器9では、バーナ内の混合を燃料ノズルを配置する同心円毎に変化させることにより、燃焼安定性を向上するのみならず、火炎が付着しやすい水素含有燃料に対して、付着火炎の発生を防止することができる。
【0166】
また、上記した実施例のガスタービン燃焼器では、水素含有燃料を用いるガスタービン発電プラントについて例示したが、天然ガスなど他の気体燃料を用いるガスタービン発電プラントのガスタービン燃焼器にも適用できる。
【0167】
本実施例によれば、水素を含んだ燃料をガスタービン燃焼器で燃焼させる場合に、ガスタービンの広範な負荷範囲にわたってガスタービン燃焼器に火炎による構造的な信頼性の問題を回避すると共に燃焼振動による不安定現象の発生を抑制し、且つ、低NOx燃焼を可能にしたガスタービン燃焼器が実現できる。
【符号の説明】
【0168】
1:燃焼室、2:燃焼器外筒、3:燃焼器ライナー、4:燃焼器尾筒、5:圧縮機、6:タービン、7:車室、8:燃焼器エンドカバー、9:ガスタービン燃焼器、10:圧縮空気、11:冷却空気、12:燃焼用空気、13:燃焼ガス、22:水素含有燃料、22A:燃料供給系統、22a:パイロットバーナ燃料供給系統、22bメインバーナ内周燃料供給系統、22c:メインバーナ外周燃料供給系統、41−1:1列目メインバーナ燃料、41−2:2列目メインバーナ燃料、41−3:3列目メインバーナ燃料、42−1:1列目メインバーナ混合気、42−2:2列目メインバーナ混合気、42−3:3列目メインバーナ混合気、43:循環流(循環ガス)、44:燃焼ガス、45:火炎、46:旋回流、48:後流を伴う低流速領域、50:パイロット多孔同軸噴流バーナ、53:(メイン)多孔同軸噴流バーナ、54:空気孔プレート、55、55−1、55−2、55−3:空気孔、56、56a、56b、56c:燃料ノズル、57:燃料分配器、58、58a、58b、58c:燃料ノズル第1の絞り部、59、59a、59b、59c:燃料ノズル第2の絞り部、60、60a、60b、60c:燃料ノズル中間部分、61、61a、61b、61c:燃料噴流のポテンシャルコア、62、62a、62b、62c:燃料噴流のポテンシャルコアの到達長さ、103:燃料遮断弁、107:燃料圧力調整弁、108:燃料流量調整弁、501:発電機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11