【実施例1】
【0020】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0021】
(燃焼器の構成)
図1に、本発明の第1の実施例に係るガスタービンの系統と燃焼器の拡大断面図を示す。ガスタービン5は、圧縮機2、燃焼器3、タービン4、発電機6、及び起動用モータ8等で構成される。
【0022】
ガスタービン5では、圧縮機2が大気より吸込んだ空気101を圧縮して得られる燃焼空気102をガスタービン燃焼器3に供給する。燃焼器3は、圧縮機2による燃焼空気102と低カロリーガスである高炉ガス60にコークス炉ガス80を混合した増熱ガス70(着火〜部分負荷範囲で供給)とが混合して燃焼し、タービン4に供給される燃焼ガス140を発生させる。タービン4は燃焼ガス140の供給により回転動力が与えられ、タービン4の回転動力が圧縮機2及び発電機6に伝達される。圧縮機2に伝えられた回転動力は圧縮動力に用いられ、発電機6に伝えられた回転動力は電気エネルギーに変換される。
【0023】
燃焼器3においては、圧力容器である外筒10内に燃料と空気を混合して燃焼するための燃焼室12を備え、燃焼室12の外周に燃焼室冷却用のフロースリーブ11を備える。
【0024】
また、燃焼室12の燃焼ガス流れ方向上流には、燃焼室12内に燃料と空気を供給して火炎を保持するためのバーナ300を配置している。燃焼器3に供給された燃焼空気102は、フロースリーブ11と燃焼室12との間の空間内を流れ、燃焼室12を冷却しながら燃焼室の側壁に設けた燃焼空気孔13、およびバーナ300に設けた空気噴孔402等より燃焼室12内に供給される。
【0025】
バーナ300は、第1のスワラである内周スワラ201と、内周スワラ201の外周に設けられた第2のスワラである外周スワラ202で構成される2重旋回構造を採用している。内周スワラ201、および外周スワラ202に供給する低カロリーガスの流量および発熱量は、ガスタービンの負荷条件によって変化可能とすることを特徴とする。ガスタービンの着火から部分負荷範囲は、高炉ガス60にコークス炉ガス80を混合した増熱ガス70を供給し、燃料流量を増加させ燃焼温度が高くなるにつれて負荷が上昇し、高負荷条件(たとえば中間負荷から定格負荷範囲)になると、高炉ガス60のみの供給も可能である。
【0026】
低カロリーガスの供給圧力は燃料系統に設けた圧力調整弁150によって調整が可能であり、その下流には、内周スワラ201に内周燃料201fを供給するための第1の燃料系統51と、外周スワラ202に外周燃料202fを供給する第2の燃料系統52を備える。各燃料系統は、それぞれ、第1の燃料流量調節弁41、および第2の燃料流量調節弁42を備えており、制御装置200によって、ガスタービンの着火や負荷条件に応じて、第1の燃料系統および第2の燃料系統に供給する燃料流量を制御することが可能である。
【0027】
(バーナ構造1)
図2にバーナ300の正面図を示す。この図は、バーナ300を下流から見たものである。本実施例のバーナは、内周スワラ201と外周スワラ202で構成する2重旋回バーナ構造であり、CO
2を多量に含む高炉ガスの燃焼でも内周スワラの火炎温度を高めるため、内周スワラ201にはガス噴孔401と空気噴孔402を円周方向に交互に配置し、その外側に設けた外周スワラ202には、ガス噴孔403のみを配置したことを特徴とする。それぞれの噴孔には、
図2のA−A断面図に示すような旋回角θが設けられており、旋回成分を与えることでバーナの半径方向中心部近傍は負圧となり、低速となる保炎領域(循環ガス領域)が形成され燃焼安定性を強化できる。
【0028】
また、前述のように、高炉ガスはCO
2を多量に含むためLNGに比べて燃料の密度が大きく、旋回によって保炎するバーナにおいては慣性力によって燃料が外周側に貫通しやすくなる。その場合、バーナの半径方向中心部近傍に形成する循環ガス領域の燃料濃度が低下するため、保炎性能が低下する恐れがある。
【0029】
このため、本実施例では
図2に示すように、内周スワラ201に設けた複数のガス噴孔401において、噴孔内を内周スワラ201の半径方向について2つの流路に分割し、それらのうち半径方向内側に設けた第1のガス流路(噴孔501a)から噴出するガスの流速を第2のガス流路(噴孔502a)から噴出する流速よりも遅くすることを特徴とする。内周スワラのガス噴孔内に設けた2つのガス流路のうち、第1のガス流路より噴出するガス流速を低下させることで、燃料の貫通を抑え循環ガス領域の濃度低下を防止し、安定燃焼を可能としている。
【0030】
即ち、燃料の噴出速度の異なる複数の流路に分割することで、必要な燃料流量は確保しつつ、燃料流速の遅い流路から供給される燃料が循環ガス領域における燃料濃度の低下を防止し、高炉ガスのような燃料をも安定に燃焼させることができる。そして、内周側の流路の燃料噴出速度が、外周側の流路の燃料噴出速度よりも遅くなるようにガス噴孔401に流路が形成されていることにより、内周スワラ201に形成される火炎温度の低下を防止し、より安定した燃焼を可能となる。
【0031】
一方、
図1に示したように、外周スワラ202においては、ガス噴孔403よりガス燃料202fが供給される。ガス燃料202fは内周スワラ201から供給される空気102aや、燃焼空気孔13から供給されるバーナ近傍の空気と混合し、内周スワラ201に形成される火炎(内周火炎)を基点に、外周スワラに火炎(外周火炎)が形成される。外周火炎の形成によって、内周火炎周囲の温度は高くなるため、さらに保炎を強化できる。特に、高炉ガスのようなCO
2を多量に含む低カロリーガスの燃焼には有効である。
【0032】
次に、
図3にバーナ300の断面図を示す。内周スワラ201、および外周スワラ202は、ガス燃料をバーナに供給するためのボディー(配管)125を固定するためのフランジ126に接続している。内周スワラ201に供給するガス燃料201fは、ボディー125の中心部に設けた配管を通って供給され、内周スワラの空気102aは外周スワラ202の側面に設けた空気導入孔402aより供給される。
【0033】
内周スワラ201に供給されたガス燃料201fは、ガス噴孔内に設けた第1と第2の2つのガス流路501と502とに分配される。第1のガス流路501は出口面積A2に対し上流側の入口面積A1が小さく、第2のガス流路は出口面積A4と入口面積A3を同等としている。供給された燃料は、第1のガス流路で面積が最も小さいA1と、第2のガス流路の出口面積A4(またはA3)との比率で分配される。第1のガス流路では入口面積A1よりも出口面積A2が大きいため、第1のガス流路を流下する燃料の流速は入口から出口にかけて徐々に低下する。そのため、第1のガス流路出口の燃料流速Uf1は、第2のガス流路出口の燃料流速Uf2よりも遅くなる。
【0034】
これらのガス流路内で分配された燃料201fおよび空気102aには旋回成分が与えられ、これによりバーナの半径方向中心部は負圧となり、バーナの前面には循環ガス領域30が形成される。
【0035】
特に、本実施例では、第2のガス流路502より噴出する燃料201f-2の運動量を利用して、強い旋回により保炎を強化する構造としている。循環ガス領域30は、内周スワラ201から噴出するガス燃料201f-1、201f-2、および空気102aに火炎からの熱を連続的に与えるため、火炎250が連続的に形成され保炎に至る。
【0036】
また、本実施例では、第1のガス流路出口の燃料流速を第2のガス流路出口の燃料流速よりも遅くしているため、例えば、発熱量が低下し燃料流量を増加させ同一負荷運転を維持しようとした場合でも、慣性力によって燃料が外周側に貫通することを抑えることが可能であり、保炎強化に重要な循環ガス領域内の燃料濃度の低下を防止できる。
【0037】
一方、外周スワラ202のガス燃料202fは、ボディー125の外側に設けた配管より供給される。外周スワラ202に供給されたガス燃料202fには旋回成分が与えられ、内周スワラ201で形成された循環ガス領域30を包み込むように、循環ガス領域31が形成される。
【0038】
ガス燃料202fは、内周火炎250より連続的に熱が与えられ、外周火炎260が形成される。循環ガス領域31によって、外周火炎260の燃焼ガスの一部が循環ガス領域30に取り込まれ、内周スワラ201と外周スワラ202で形成する火炎(250、260)の相互作用によって、火炎が安定化される。また、本実施例では外周スワラ202よりガス燃料202fを供給しているため、内周スワラ201において、空気噴孔402周囲(半径方向外側)の燃料濃度低下を防止でき、火炎温度の高い領域を増加できるため、火炎安定化に寄与できる。
【0039】
さらに、本実施例では増熱ガス70によるガスタービンの着火、負荷変化を想定して説明してきたが、2重旋回バーナの半径方向中心部(内周スワラ201の半径方向中心部)に、液体燃料用の油ノズルを配置して、更なる安定燃焼を図ることも可能である。
【0040】
(運転方法)
以上述べてきたバーナ構造の運転方法について、
図1をもとに説明する。始動時、ガスタービンは起動用モータ8などの外部動力によって駆動される。ガスタービンの回転数を燃焼器の着火条件相当の回転数に保持することで、燃焼器3には着火に必要な燃焼空気102が供給され、着火条件が成立する。高炉ガス60にコークス炉ガス80を混合し、増熱ガス70をバーナ300に供給することで、燃焼器3内で着火が可能となる。
【0041】
燃焼器の着火後、燃焼ガス140がタービン4に供給され、増熱ガス70の流量増加とともにタービン4が昇速、起動用モータ8の離脱によりガスタービンは自立運転に入り、無負荷定格回転数に到達する。ガスタービンが無負荷定格回転数に到達後は、発電機6の併入、さらには増熱ガス70の流量増加によりタービン4の入口ガス温度が上昇し、負荷が上昇する。負荷の上昇に伴い、燃焼器出口の燃焼ガス温度が高くなると燃焼安定性が増加するため、増熱用に供給していたコークス炉ガスの供給を停止することが可能となる。バーナにおいては、内周スワラ201に形成される火炎250と外周スワラ202に形成される火炎260の相互作用によって、高炉ガス60の専焼条件であっても火炎を安定に保持できる。
【0042】
(変形例)
なお、
図5に示す変形例のように、第1のガス流路に縮流部を設けるような構成としても良い。この場合、第1のガス流路で面積が最も小さい縮流部面積A5と、第2のガス流路の出口面積A4(またはA3)との比率で分配される。第1のガス流路では宿流部面積A5よりも出口面積A2が大きいため、宿流部から出口にかけて燃料流速が低下する。したがって、第1のガス流路出口の燃料流速Uf1は、第2のガス流路出口の燃料流速Uf2よりも遅くなる。そのため、
図3に示した第一の実施例に係るバーナ同様、空気噴孔402周囲(半径方向外側)の燃料濃度低下を防止でき、火炎の安定化が可能である。
【0043】
また、
図6に示す他の変形例は、第1のガス流路501の上流側にガス燃料201fの流れを阻害するプレート510を備えている。プレート510を備えることによって第1のガス流路501へのガス燃料201fの流入が抑制され、第1のガス流路501に流入するガス燃料201fの流量が低下する。これにより、第1のガス流路出口の燃料流速Uf1はさらに低下するため、慣性力によって燃料が外周側に貫通することを抑制し、保炎強化に重要な循環ガス領域内の燃料濃度の低下を防止することができる。
【実施例2】
【0044】
(バーナ構造2)
図4に、本発明の第2の実施例であるバーナの断面図を示す。本実施形態が第1の特徴と異なる点は、内周スワラ201の第1のガス流路501に半径中心方向の傾斜角を設けたことにある。
【0045】
内周スワラ201のガス噴孔に設けた2つのガス流路は、
図2および
図3で説明したように、ガス燃料および空気に旋回を与えるための旋回角を設けている。これにより、バーナの半径方向中心部近傍が負圧となり、燃焼ガスが循環する逆流領域(循環ガス領域)を形成し安定燃焼が可能となる。
【0046】
本発明の第2の特徴では、内周スワラ201のガス噴孔に設けた第1のガス流路501において、旋回流路の入口面積A1よりも出口面積A2を大きくし、ガス燃料201f-1の噴出流速を低下させ、前記循環ガス領域内に燃料が取り込まれるように噴射したことに加え、
図4aの部分拡大図に示すように、前記第1のガス流路501にはバーナの半径中心方向にガス燃料201f-1を噴射するための傾斜角αを設けたことを特徴とする。
【0047】
これにより、第1のガス流路より供給する燃料201f-1が循環ガス領域30内にさらに取り込まれやすくなり、循環ガス領域30内の燃料濃度が高くなる。燃料濃度の上昇によって循環ガス領域内の火炎温度は高くなり、内周スワラ201に安定した火炎が形成できる。また、内周スワラ201に形成する内周火炎250により、外周スワラ202にも外周火炎260が安定に形成され、外周スワラ202の旋回によって形成する循環ガス領域31により、高温の燃焼ガスが循環ガス領域30内に取り込まれる。すなわち、2重旋回の内外周火炎の相互作用によって、CO
2を多量に含む高炉ガスの安定燃焼が可能となる。