(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行体と、前記走行体上に旋回可能に設けられた旋回体と、前記旋回体に設けられた作業機と、前記作業機の先端に設けられ、電源から供給される電力により対象物を吸着するリフティングマグネットとを備えたリフティングマグネット作業機械において、
前記電源から前記リフティングマグネットに供給される前記電力における電流、電圧および極性を調整する供給電力調整手段と、
前記供給電力調整手段を介して前記リフティングマグネットに供給される前記電流を検出する供給電流検出手段と、
前記供給電力調整手段を介して前記リフティングマグネットに供給される前記電圧を検出する供給電圧検出手段と、
前記供給電流検出手段からの検出結果に基づいて、前記リフティングマグネットに供給される電流が予め定めた吸着動作電流値となるように、前記供給電力調整手段を制御するとともに、前記供給電圧検出手段からの検出結果が予め定めた上限電圧値に達した場合には、予め定めた標準電圧値と前記供給電圧検出手段により検出した電圧値の比に基づいて前記吸着動作電流値を調整する制御装置と
を備えたことを特徴とするリフティングマグネット作業機械。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係わるリフティングマグネット作業機械の全体構成を概略的に示す図である。
【0015】
図1において、リフティングマグネット作業機械は、下部走行体100と、この下部走行体100の上部に旋回可能に搭載された上部旋回体101と、この上部旋回体101の前方部分に上下回動可能に連結されたフロント作業機102とを備えている。上部旋回体101には、動力源となるエンジン、油圧ポンプ、発電機、蓄電装置等が内蔵された動力源室103と、操作レバー(図示せず)、
吸着釈放操作ボタン8、表示/
設定装置9、報知装置10等(後述)が設けられた運転室104とが備えられている。
【0016】
動力源室103に配置された発電機1(後の
図2参照)は、エンジン又はエンジンにより駆動される油圧ポンプからの圧油により駆動されて発電するよう構成されている。
【0017】
下部走行体100は、油圧ポンプからの圧油により駆動される左右の走行モータ105を備えており、その走行モータ105が回転駆動されることにより走行動作する。
【0018】
フロント作業機102は、上部旋回体101の前方部分に上下方向に回動可能に連結されたブーム106と、ブーム106の先端に上下方向に回動可能に連結されたアーム107と、アーム107の先端に前後方向に回動可能に連結され、供給される電力により励磁して鉄などの金属を吸着するリフティングマグネット108とを備えている。ブーム106、アーム107及びリフティングマグネット108は、それぞれ、油圧ポンプからの圧油により駆動されるブーム用油圧シリンダ109、アーム用油圧シリンダ110及びリフティングマグネット用油圧シリンダ111により回動駆動される。
【0019】
運転室104には、オペレータの着座する運転席(図示せず)が設けられている。オペレータは運転席の着座位置から、フロント作業機102や上部旋回体101などを操作する操作レバー(図示せず)、リフティングマグネット108の吸着/釈放を操作する吸着釈放操作ボタン8、各種情報の表示や設定を行う表示/設定装置9、スピーカ等の報知装置10など(
図2参照)の操作を行う。
【0020】
図2は、リフティングマグネット108を駆動制御するリフティングマグネット駆動回路を制御装置とともに抜き出して示す図である。
【0021】
図2において、リフティングマグネット駆動回路11(供給電力調整手段)は、3相交流電源としての発電機1から供給される電力により駆動されるリフティングマグネット108と、複数のサイリスタ2a〜2fを用いて構成され、発電機1からリフティングマグネット108に供給される電力における電流および電圧を調整するサイリスタブリッジ整流回路2と、複数のトランジスタ3a〜3dを用いて構成され、サイリスタブリッジ整流回路2からリフティングマグネット108に供給される電流および電圧の極性を切り換えるHブリッジ回路3と、Hブリッジ回路3かを介してリフティングマグネット108に供給される電流を検出する供給電流検出回路4(供給電流検出手段)と、サイリスタブリッジ整流回路2からHブリッジ回路3に出力される電力の電圧を検出する供給電圧検出回路5(供給電圧検出手段)と、サイリスタブリッジ整流回路2から出力される電力の平滑化および極性切換時の回生を行うコンデンサ6とを備えており、リフティングマグネット駆動回路11を含むリフティングマグネット作業機械全体の動作を制御する制御装置7により制御される。
【0022】
サイリスタブリッジ整流回路2は、発電機1から供給された交流電源電圧を直流電源電圧に変換するものであり、複数(本実施の形態では6個)のサイリスタ2a〜2fを含むブリッジ回路によって構成されている。本実施の形態では、発電機1は三相交流電源であり、サイリスタブリッジ整流回路2によって三相全波整流を行い出力する。
【0023】
サイリスタブリッジ整流回路2において、サイリスタ2aのカソードはリフティングマグネット駆動回路11の正側線路11aに電気的に接続され、サイリスタ2aのアノードにはサイリスタ2bのカソードが電気的に接続され、サイリスタ2bのアノードは、負側線路11bに電気的に接続され、サイリスタ2aのアノードとサイリスタ2bのカソードに発電機1の第1出力端子1aが電気的に接続されている。同様に、サイリスタ2cのカソードはリフティングマグネット駆動回路11の正側線路11aに電気的に接続され、サイリスタ2cのアノードにはサイリスタ2dのカソードが電気的に接続され、サイリスタ2dのアノードは、負側線路11bに電気的に接続され、サイリスタ2cのアノードとサイリスタ2dのカソードに発電機1の第2出力端子1bが電気的に接続されている。また、サイリスタ2eのカソードはリフティングマグネット駆動回路11の正側線路11aに電気的に接続され、サイリスタ2eのアノードにはサイリスタ2fのカソードが電気的に接続され、サイリスタ2fのアノードは、負側線路11bに電気的に接続され、サイリスタ2eのアノードとサイリスタ2fのカソードに発電機1の第3出力端子1cが電気的に接続されている。サイリスタ2a〜2fの各制御端子(ゲート)は、制御装置7のサイリスタブリッジ整流回路ドライバ7aに電気的に接続されており、サイリスタブリッジ整流回路ドライバ7aからの制御信号により所定の制御角で位相制御される。
【0024】
なお、サイリスタブリッジ整流回路2は、サイリスタを所定の制御角で制御することによって三相全波整流を実現しているが、これに代えて、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)によるPWM(Pulse Width Modulation)制御を用いても実現可能である。
【0025】
Hブリッジ回路3は、サイリスタブリッジ整流回路2からリフティングマグネット108に供給される電力における電流および電圧の極性を切り換えるものであり、複数(本実施の形態では4つ)のトランジスタ3a〜3dと、各トランジスタ3a〜3dそれぞれの電流端子間(コレクタ−エミッタ間またはソース−ドレイン間)に電気的に接続されたダイオード(整流素子)3e〜3hとを含むブリッジ回路により構成されている。
【0026】
Hブリッジ回路3において、トランジスタ3aの一方の電流端子はリフティングマグネット駆動回路11の正側線路11aに電気的に接続され、トランジスタ3aの他方の電流端子にはトランジスタ3bの一方の電流端子が電気的に接続され、トランジスタ3bの他方の電流端子は、負側線路11bに電気的に接続され、トランジスタ3aの他方の電流端子とトランジスタ3bの一方の電流端子にリフティングマグネット108の第1端子108aが電気的に接続されている。同様に、トランジスタ3cの一方の電流端子はリフティングマグネット駆動回路11の正側線路11aに電気的に接続され、トランジスタ3cの他方の電流端子にはトランジスタ3dの一方の電流端子が電気的に接続され、トランジスタ3dの他方の電流端子は、負側線路11bに電気的に接続され、トランジスタ3cの他方の電流端子とトランジスタ3dの一方の電流端子にリフティングマグネット108の第2端子108bが電気的に接続されている。また、ダイオード3e〜3hのカソードは、それぞれトランジスタ3a〜3dの一方の電流端子に電気的に接続され、ダイオード3e〜3hのアノードは、それぞれトランジスタ3a〜3dの他方の電流端子に電気的に接続されている。
【0027】
トランジスタ3a〜3dの各制御端子(ベースまたはゲート)は、制御装置7のHブリッ
ジ回路ドライバ7bに電気的に接続されており、Hブリッ
ジ回路ドライバ7bからの制御信号(制御電流または制御電圧)によりON−OFF制御される。例えば、Hブリッ
ジ回路ドライバ7bからの制御信号により、2つのトランジスタ3a,3dがON状態(導通状態)になると、正側線路11aからトランジスタ3a、リフティングマグネット108の第1端子108a、第2端子108b、トランジスタ3d、負側線路11bの方向に電流(リフティングマグネット108の励磁電流)が流れる。以降、このときの電流の方向を順方向と記載する。なお、2つのトランジスタ3a,3dがON状態(導通状態)のとき、他の2つのトランジスタ3b,3cはOFF状態(遮断状態)になるよう制御される。また、Hブリッ
ジ回路ドライバ7bからの制御信号により、2つのトランジスタ3b,3cがON状態(導通状態)になると、正側線路11aからトランジスタ3c、リフティングマグネット108の第2端子108b、第1端子108a、トランジスタ3b、負側線路11bの方向に電流が流れる。以降、このときの電流の方向を逆方向と記載する。なお、2つのトランジスタ3b,3cがON状態(導通状態)のとき、他の2つのトランジスタ3a,3dはOFF状態(遮断状態)になるよう制御される。
【0028】
供給電流検出回路4は、リフティングマグネット108の第1端子108a側に直列に接続されている。供給電流検出回路4は、リフティングマグネット駆動回路11からリフティングマグネット108に供給される電流を検出し、その検出結果を電流検出信号として制御装置7に出力する。
【0029】
供給電圧検出回路5は、リフティングマグネット駆動回路11の正側線路11aと負側線路11bの間に電気的に接続されている。供給電圧検出回路5は、サイリスタブリッジ整流回路2からHブリッジ回路3に出力される電圧(すなわち、正側線路11aと負側線路11bの間の電圧)を検出し、その検出結果を電圧検出信号として制御装置7に出力する。
【0030】
コンデンサ6は、サイリスタブリッジ整流回路2から出力される電力の平滑化と、リフティングマグネット108に供給される電流が順方向(第1端子108aから第2端子108bの方向)から逆方向(第2端子108bから第1端子108aの方向)に切り換わる際にリフティングマグネット108に蓄積されたエネルギを吸収・回生とを行うものである。コンデンサ6は、リフティングマグネット駆動回路11の正側線路11aと負側線路11bの間に電気的に接続されている。
【0031】
以上において、本実施の形態のリフティングマグネット駆動回路11は、電源としての発電機1からリフティングマグネット108に供給される電力における電流、電圧および極性を調整する供給電力調整手段を構成している。
【0032】
制御装置7は、リフティングマグネット駆動回路11を含むリフティングマグネット作業機械全体の動作を制御するものである。つまり、制御装置7は、リフティングマグネット108の吸着/釈放を操作する吸着釈放操作ボタン8や各種情報の表示や設定を行う表示/設定装置9からの入力に基づいてリフティングマグネット駆動回路11を制御する電力供給処理を実施するものである。
【0033】
ここで、制御装置7における電力供給処理について説明する。
【0034】
図3は、リフティングマグネット108への電力供給処理を示すフローチャートであり、
図4は電力供給処理における吸着電力出力時の供給電力制御処理を示すフローチャートである。なお、
図3においては、左側にサイリスタブリッジ整流回路側の処理の様子を、右側にHブリッジ回路側の処理の様子をそれぞれ示し、さらに縦方向に時系列的に並べて示している。
【0035】
図3に示すように、制御装置7は、吸着釈放操作ボタン8からの吸着信号を受信すると(ステップS10)、サイリスタブリッジ整流回路ドライバ7aによりサイリスタブリッジ整流回路2の位相制御を行ってHブリッジ回路3側にOE(オーバエキサイティング)電圧を出力させ(ステップS20)、OE時間が経過するまで出力を継続する(ステップS30)。また、ステップS20の位相制御の開始と同時に、Hブリッジ回路ドライバ7bによりHブリッジ回路3の正極性側を導通させる(ステップS21)。続いて、リフティングマグネット108に供給される電力を制御する供給電力制御処理を行う(ステップS40)。
【0036】
図4に示すように、供給電力制御処理では、まず、
電流一定制御(後述)を行い(ステップS41)、続いて、リフティングマグネット108に供給される電力の単位時間における平均電圧Vaveが予め定めた上限電圧Vmax(後述)よりも大きいかどうかを判定する(ステップS42)。ステップS42での判定結果がNOの場合は、吸着釈放操作ボタン8からの釈放信号が入力されたかどうかを判定し(ステップS43)、判定結果がNOの場合は、判定結果がYESになるまでステップS41,S42を繰り返す。ステップS42において、判定結果がYESの場合は、電圧監視制御(後述)を行い(ステップS44)、続いて釈放信号が入力されたかどうかを判定する(ステップS45)。ステップS45での判定結果がNOの場合は、判定結果がYESになるまでステップS44を繰り返す。ステップS43またはステップS45での判定結果がYESの場合は、供給電力制御処理を終了する。
【0038】
図3において、制御装置7は、供給電力制御処理(ステップS40)が終了すると、Hブリッジ回路ドライバ7bによりHブリッジ回路3の正極性側を遮断させ(ステップS50)、供給電流検出回路4からの検出信号が0(ゼロ)と見なせる値になると(ステップS60)、Hブリッジ回路ドライバ7bによりHブリッジ回路3の逆極性側を導通させて(ステップS70)、逆励磁時間が経過するまでその状態を維持し(ステップS80)、逆励磁時間が経過したら、Hブリッジ回路ドライバ7bによりHブリッジ回路3の逆極性側を遮断させて(ステップS90)、処理を終了する。また、ステップS90のHブリッジ回路3の逆極性側を遮断と同時に、サイリスタブリッジ整流回路ドライバ7aによりサイリスタブリッジ整流回路2の位相制御を停止させ、Hブリッジ回路3側への電力の供給を停止させる(ステップS91)。
【0039】
ここで、電力供給処理における
電流一定制御および電圧監視制御についての詳細を説明する。
【0040】
図5は、供給電力制御処理における電流一定制御を概略的に示す図である。
【0041】
図5に示すように、本実施の形態の
電流一定制御は、発電機(電源)1からリフティングマグネット駆動回路11(供給電力調整手段)を介してリフティングマグネット108に供給される電力の電流が、予め定めた吸着動作電流値Itとなるように制御するものである。吸着動作電流値Itは、例えば、リフティングマグネット108に設定されている定格値である。なお、ここでの定格値とは、設計上安定して使用できる値のとしての意味であり、使用上限としての絶対最大定格値または瞬間最大値などとは異なるものである。
【0042】
電流一定制御では、制御装置7に設けられた演算部7cにより、吸着動作電流値Itと供給電流検出回路4(供給電流検出手段)からの検出結果(電流値Ia)とから制御値が演算され、サイリスタブリッジ整流回路ドライバ7aに出力される。サイリスタブリッジ整流回路ドライバ7aは、その制御値に基づいてサイリスタブリッジ整流回路2を制御する。
図5は、吸着動作電流Itを与え、PI(比例積分)制御した場合のものであり、各変数はそれぞれ、積分時間Ti、ゲインKpを示している。
【0043】
リフティングマグネット108の抵抗値Rは、およそ4(Ω)、インダクタンスLは、およそ4〜10(H)であり、時定数L/Rは1〜3(秒)程度と非常に大きいため、電流値に基づいて制御を行う場合の応答時間や制御周期に対する要求が比較的低く、吸着力の安定性を維持する制御の容易性の点で非常に有利である。なお、各定数は、リフティングマグネット108の安定性等を考慮して実験的・経験的に定められる。
【0044】
また、一般に、リフティングマグネット108のようなコイルが発生する磁束φは、インダクタンスをL、電流をI、コイル巻数をNとすると、次式(式1)で表される。
【0046】
すなわち、インダクタンスLが一定の場合、電流Iにより磁束、すなわち、吸引力が決まる。したがって、本実施の形態のように、リフティングマグネット108に供給される電流が予め定めた吸着動作電流値Itとなるようにリフティングマグネット駆動回路11を制御することにより、発生する磁束を一定に制御することができ、対象物を吸着して搬送する作業中においても安定した吸引力を得ることができる。
【0047】
また、本実施の形態の電圧監視制御は、発電機(電源)1からリフティングマグネット駆動回路11(供給電力調整手段)を介してリフティングマグネット108に供給される電力の電圧値、すなわち、供給電圧検出回路5(供給電圧検出手段)からの検出結果が予め定めた上限電圧値に達した場合に、予め定めた標準電圧値と
供給電圧検出回路5により検出した電圧値の比に基づいて、
電流一定制御における吸着動作電流値を調整しつつ、
電流一定制御と同様の制御を行うものである。
【0048】
電流一定制御から電圧監視制御への移行は、平均電圧値Vaveが上限電圧値Vmaxを超えた場合に行われ、電圧監視制御から
電流一定制御への移行は、Vaveが標準電圧値以下となった場合に行われる。
【0049】
より具体的には、電圧監視制御では、発電機(電源)1からリフティングマグネット駆動回路11(供給電力調整手段)を介してリフティングマグネット108に供給される電力の単位時間(例えば、2〜3秒間)における平均電圧値Vaveが予め定めた上限電圧値Vmaxを超えた場合に、予め定めた標準電圧値Vnormと平均電圧値Vaveの比に基づいて吸着動作電流値Itmを調整する。
【0050】
電圧監視制御における吸着動作電流値の演算には、次式(式2)が用いられる。
【0051】
Itm1=Itm0*(Vnorm/Vave)*Kh ・・・(式2)
【0052】
上記式2において、Itm1は調整後の吸着動作電流値、Itm0は調整前の吸着動作電流値、Vnormは標準電圧値、Vaveは平均電圧値、Khはゲイン定数をそれぞれ示している。電圧監視制御における吸着動作電流値Itmの調整(すなわち、Itm1の演算)は、所定の間隔で行われる。
【0053】
吸着動作時には、リフティングマグネット108に流れる電流によってリフティングマグネット108自身の温度が上昇し続けることによる焼損等が懸念されるが、本実施の形態のように、電圧監視制御を行うことによりこれを抑制することができる。
【0054】
以上のように構成した本実施の形態における動作を図面を参照しつつ説明する。
【0055】
図6は、サイリスタブリッジ整流回路からの出力電圧とリフティングマグネットへの供給電力との関係を同じ時間軸において示す図である。
【0056】
本実施の形態のリフティングマグネット作業機械において、オペレータによって、リフティングマグネット108の吸着/釈放を操作する吸着釈放操作ボタン8が操作されて吸着ONが指示されると(
図3のステップS10、時刻:t1)、制御装置7は、サイリスタブリッジ整流回路ドライバ7aによりサイリスタブリッジ整流回路2の位相制御を行ってHブリッジ回路3側にOE(オーバエキサイティング)電圧を出力させ(ステップS20)、OE時間が経過するまで出力を継続する(
図3のステップS30、時刻:t2〜t3)。また、ステップS20の位相制御の開始と同時に、Hブリッジ回路ドライバ7bによりHブリッジ回路3の正極性側を導通させる(
図3ステップS21)。続いて、OE電圧の印加開始(時刻:t1)からOE時間が経過すると(時刻:t2)、吸着動作電流Itとなる電圧Vt1が印加され、吸着釈放操作ボタン8が再度操作されて吸着OFFが指示されるまで(時刻:t3)電流一定制御又は電圧監視制御を行う。なお、
図6では、電流一定制御のみを行った場合を示している。吸着釈放操作ボタン8が操作されて吸着OFFが指示されると(時刻:t3)、制御装置7は、Hブリッジ回路ドライバ7bによりHブリッジ回路3の正極性側を遮断させ(
図3のステップS50参照、時刻:t3)、供給電流検出回路4からの検出信号が0(ゼロ)と見なせる値になると(
図3のステップS60、時刻:t4)、Hブリッジ回路ドライバ7bによりHブリッジ回路3の逆極性側を導通させて(
図3のステップS70)、逆励磁時間が経過するまでその状態を維持し(
図3のステップS80)、逆励磁時間が経過したら(時刻:t5)、Hブリッジ回路ドライバ7bによりHブリッジ回路3の逆極性側を遮断させて(
図3のステップS90)、処理を終了する(時刻:t6)。
【0057】
以上のように構成した本実施の形態における効果を説明する。
【0058】
従来技術のリフティングマグネット作業機械においては、エンジン回転数に応じて発電機からリフティングマグネットへの出力電圧を制御することにより、騒音や燃費の低減対策としてのエンジンの低速運転時において、発電機の吸収トルクの増減による作業機側の作動速度などへの影響を抑制しようとしている。しかしながら、作業機側の負荷の変動によってエンジン回転数は大きく変動するため、リフティングマグネットへの出力電圧も制御により変動することとなり、吸引力の低下時に吸着物が落下してしまう恐れがある。また、エンジン回転数の変動は、油圧ポンプ及び油圧モータを介して発電機の発電量にも影響するため、リフティングマグネットへの出力電圧の制御はさらに困難であり、動作が不安定になることも懸念される。
【0059】
これに対し、本実施の形態においては、
上部旋回体101上に配置された
フロント作業機102の先端に設けられ、発電機(電源)1から供給される電力により対象物を吸着するリフティングマグネット108とを備えたリフティングマグネット作業機械において、発電機1からリフティングマグネット108に供給される電力における電流、電圧および極性を調整するリフティングマグネット駆動回路11と、リフティングマグネット駆動回路11を介してリフティングマグネット108に供給される電流を検出する供給電流検出回路4とを備え、供給電流検出回路4からの検出結果に基づいて、リフティングマグネット108に供給される電流が予め定めた吸着動作電流値Itとなるようにリフティングマグネット駆動回路11を制御するよう構成したので、対象物を吸着して搬送する作業中においても安定した吸引力を得ることができる。
【0060】
また、応答の遅い電流(吸着動作電流値It)を制御するように構成したので、制御周期を遅くすることができ、回路的、ソフト的にもより簡単に制御できる。
【0061】
さらに、リフティングマグネットに電流を流すと、その抵抗により温度が上昇し、温度上昇に伴って抵抗値も大きくなるので、電流一定制御を行う場合にはさらに発熱量が増加してコイルの焼損等も懸念されるが、本実施の形態では、電圧も同時に監視し、電圧値が高くなるときには電流値を減少させるように制御するので、リフティングマグネットの性能の上限ぎりぎりまで吸引力を保つことができる。