特許第5926689号(P5926689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5926689流体中の本体の流動抵抗を低減するための構造
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  • 特許5926689-流体中の本体の流動抵抗を低減するための構造 図000002
  • 特許5926689-流体中の本体の流動抵抗を低減するための構造 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926689
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】流体中の本体の流動抵抗を低減するための構造
(51)【国際特許分類】
   F15D 1/12 20060101AFI20160516BHJP
   B64C 21/10 20060101ALN20160516BHJP
【FI】
   F15D1/12
   !B64C21/10
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-550284(P2012-550284)
(86)(22)【出願日】2011年1月28日
(65)【公表番号】特表2013-518225(P2013-518225A)
(43)【公表日】2013年5月20日
(86)【国際出願番号】CH2011000010
(87)【国際公開番号】WO2011091546
(87)【国際公開日】20110804
【審査請求日】2014年1月23日
(31)【優先権主張番号】100/10
(32)【優先日】2010年1月28日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】512197490
【氏名又は名称】マルコ・フォイジ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・フォイジ
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第03/013957(WO,A1)
【文献】 特開2010−14265(JP,A)
【文献】 特開2000−199505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15D 1/12
B64C 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上を流体(30)が流れることができる少なくとも一つの表面(12)を有する本体(10)であって、
表面(12)は、表面(12)上の主要な流れ方向(14)を画定する進路を有し、
表面(12)は、本体(10)の流動抵抗を低減するための構造を少なくとも部分的に有し、
構造は、流体の渦(26.1、26.2、26.3)を誘導するための少なくとも一つの凹部(16.1、16.2、16.3)及び凹部(16.1、16.2、16.3)の方に向かって主な流れ方向に対して傾斜される少なくとも一つの導入区分(18.1、18.2、18.3)を有し、
少なくとも一つの導入区分(18.1、18.2、18.3)は、凹部(16.1、16.2、16.3)の中に流体の流れ(24)を導入するためにその主な流れ方向において凹部(16.1、16.2、16.3)の上流に配置され、
凹部(16.1、16.2、16.3)は、円形部分形状の断面が形成されると共に、表面(12)上で導入される流体の流れ(14)によって、流体の渦(26.1、26.2、26.3)が凹部(16.1、16.2、16.3)内に誘導されるように形成され、
凹部(16.1、16.2、16.3)は、流体の渦が、凹部内に滞在するように、構成される、本体(10)。
【請求項2】
請求項1記載の本体(10)において、
凹部(16.1、16.2、16.3)は、主要な流れ方向(14)に横切って延び、溝形状である、本体(10)。
【請求項3】
請求項1又は2記載の本体(10)において、
構造は、複数の凹部(16.1、16.2、16.3)を有し、複数の凹部(16.1、16.2、16.3)は、主要な流れ方向(14)において縦に並んで配置される、本体(10)。
【請求項4】
請求項3記載の本体(10)において、
隣接する凹部(16.1、16.2、16.3)は、流体の密度、速度及び温度に依存して、円形部分形状の断面の直径(D)の1乃至6倍で互いに離間配置される、本体(10)。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一つに記載の本体(10)において、
導入区分(18.1、18.2、18.3)は、直線及び/又は湾曲して構成され、
曲率半径(R)は、流体の密度、速度及び温度に依存して、円形部分形状の断面の直径(D)の2乃至6倍である、本体(10)。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一つに記載の本体(10)において、
導入区分(18.1、18.2、18.3)は、主要な流れ方向(14)と主要な流れ方向に対して平行な接線との間の傾斜が、第1ポイントに関して主要な流れ方向の上流に位置する第2ポイントよりも、導入区分の第1ポイントで大きくなるように構成される、本体(10)。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちのいずれか一つに記載の本体(10)において、
凹部(16.2、16.3)は、導入区分(18.2、18.3)と凹部(16.2、16.3)との間の主要な流れ方向(14)の上流に配置された第1縁部(20.2、20.3)と、凹部(16.2、16.3)と下流に配置された表面の一部との間の下流に配置された第2縁部(22.2、22.3)とを有し、
第1縁部(20.2、20.3)は、凹部(16.2、16.3)に流体渦(26.2、26.3)を誘導するために本体(10)の内部に向けて第2縁部(22.2、22.3)に関してオフセットされる、本体(10)。
【請求項8】
請求項7記載の本体(10)において、
最上流に位置された凹部(16.2、16.3)のポイントは、凹部(16.2、16.3)の内部に流体の渦(26.2、26.3)を局所制限させるために本体(10)の内部に向かって第1縁部(20.2、20.3)に対してオフセットされる、本体(10)。
【請求項9】
請求項7又は8記載の本体(10)において、
第2縁部(22.2、22.3)は、円形部分形状の断面の半径の0.1乃至0.6倍で主要な流れ方向において凹部(16.2、16.3)の中央スポット(M)に対してオフセットされる、本体(10)。
【請求項10】
請求項3、7、8又は9記載の本体(10)において、
第2縁部(22.2、22.3)は、主要な流れ方向に反すると共に、傾斜されると共に、後続の凹部に流体の渦を導入するための凹部に向かって傾斜された、突起部(23.2、23.3)を有する、本体(10)。
【請求項11】
請求項1乃至10のうちのいずれか一つに記載の本体(10)において、
凹部(16.2、16.3)がその断面の179度乃至45度の角度範囲で開くように、凹部(16.2、16.3)の断面の円形部分は、流体の密度、速度及び温度に依存して、181度乃至315度である、本体(10)。
【請求項12】
請求項1乃至11のうちのいずれか一つに記載の本体(10)を有する、流路。
【請求項13】
請求項1乃至11のうちのいずれか一つに記載の本体(10)を有する、ジェットエンジン。
【請求項14】
請求項1乃至11のうちのいずれか一つに記載の本体(10)を有する、リフトデバイス。
【請求項15】
その上を又はその周りを流体が主要な流れ方向(14)に流れる本体の流れ抵抗を低減する構造を備えるフィルムであって、
その表面上にフィルムが適用され、
構造は、流体の渦(26.1、26.2、26.3)を誘導するための少なくとも一つの凹部(16.1、16.2、16.3)及び凹部(16.1、16.2、16.3)の方に向かって主な流れ方向に対して傾斜される少なくとも一つの導入区分(18.1、18.2、18.3)を有し、
少なくとも一つの導入区分(18.1、18.2、18.3)は、凹部(16.1、16.2、16.3)の中に流体の流れ(24)を導入するためにその主な流れ方向において凹部(16.1、16.2、16.3)の上流に配置され、
凹部(16.1、16.2、16.3)は、円形部分形状の断面が形成されると共に、表面(12)上で導入される流体の流れ(14)によって、流体の渦(26.1、26.2、26.3)が凹部(16.1、16.2、16.3)内に誘導されるように形成され、
凹部(16.1、16.2、16.3)は、流体の渦が、凹部内に滞在するように、構成される、フィルム。
【請求項16】
流体の渦(26.1、26.2、26.3)を誘導するための少なくとも一つの凹部(16.1、16.2、16.3)を有する、その上を流体が主な流れ方向に流れることができる表面構造の使用であって、
少なくとも一つの凹部(16.1、16.2、16.3)は、主な流れ方向に対して傾斜されると共に、凹部(16.1、16.2、16.3)の中に流体の流れを導入するためにその主な流れ方向において凹部(16.1、16.2、16.3)の上流に配置された、導入区分(18.1、18.2、18.3)を有し、
表面構造は、円形部分形状の断面が提供された凹部を有し、表面構造に提供された本体の流動抵抗を低減するために使用され、
凹部は、表面(12)上で導入される流体の流れ(14)によって、流体の渦(26.1、26.2、26.3)が凹部(16.1、16.2、16.3)内に誘導されるように形成され、
凹部(16.1、16.2、16.3)は、流体の渦が、凹部内に滞在するように、構成される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その上を流体が流れることができる少なくとも一つの表面を有する本体に関し、その表面は、その表面上の主要な流れ方向を画定する広い進路を有し、その表面は、本体の流動抵抗を低減するための構造を少なくとも部分的に有し、その構造は、流体の渦を誘導するための実質的に円形部分形状の断面が提供された少なくとも一つの凹部を有する。本発明は、さらに対応する表面構造を有するフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の構造ではなく、例えば、船舶の構造又は高速列車及び車両の設計では、できるだけ低抵抗である形状及び表面を達成することが非常に重要である。良好な流動特性すなわち低流動特性を有する航空機、船舶又は車両の利点は、低エネルギー要件であり、従って、一方では低燃費であるが、他方では、高速度は、同じ駆動力で達成されることができる。従って、全体的に低流動抵抗の本体は、流体、例えば空気又は水を通じてより効率的に移動し、それは、エネルギーコストが高い場合に特に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
米国特許第2899150号は、空気中における低表面摩擦を有する飛行機の翼を記載する。このケースでは、円形の凹部が翼の表面にわたって及び飛行及び流れの方向に対して横方向に溝形状に提供される。
【0004】
その結果、翼の流動抵抗の低減に寄与する空気の渦が凹部に生じる。
このアイデアは、米国特許第6363972号で更に追及され、凹部の様々な形状がその上を空気が流れる本体の表面に提供される。
【0005】
しかしながら、双方の構造は、まだ非常に不十分である流動抵抗の欠点を有する。
特に、ジェット機の場合には、ジェットエンジン内部の流れ抵抗は、航空機の全体的な流れ抵抗に大きく寄与する。推進ユニット内部の空気の流れは、時には超音速に吐き出され、あるいは、超音速飛行状態の場合には、すでに超音速である。このケースでは、特別な流体力学的効果は、その全てが完全に理解されているわけではないが、上述したように効果があまりない、その上を空気が流れる表面の流動抵抗を低減するための慣習的な構造を作ることを生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明の目的は、流体中の本体の流動抵抗を更に低減することである。また、本目的は、音の速度以上の速度をもつ流れ状況に対して本体の流動抵抗を効果的に低減することをもたらすことから構成される。
【0007】
その目的は、請求項1、14及び15の内容によって達成される。さらに有利な実施形態は、従属請求項によって満たされる。本発明の主題は、その上を流体が流れることができる少なくとも一つの表面を有する本体であり、その表面は、その表面上の主要な流れ方向を画定する広い進路を有し、その表面は、本体の流動抵抗を低減するための構造を少なくとも部分的に有する。このケースでは、その構造は、流体の渦を誘導するための実質的に円形部分形状の断面が提供された少なくとも一つの凹部を有する。本体は、その構造が、凹部の中に流体の流れを導入するために凹部の方に向かって主な流れ方向に対して傾斜されると共にその主な流れ方向において凹部の上流に配置された少なくとも一つの導入区分を有することを特徴とされる。その構造によって、流体の渦が凹部内に誘導されることができ、凹部内に実質的に局所制限させることができる。
【0008】
従って、本体は、相当な領域に広がる表面を有する。このケースでは、平らな又は曲がった表面の双方にすることができる。本体の付随する流れ方向に該当する場合に依存して、表面の広い進路は、平均化された流れ方向まで表面上の流体の主要な流れ方向を画定する。表面上の小さな構造は、この場合の唯一の小さい帰結である。本発明による本体の表面は、流体の渦を誘発するための実質的に円形部分形状の断面が提供され、流体のウッズを誘発するために適当でありかつ装備された少なくとも一つの凹部を備える構造を有する。構造は、凹部の中に流体の流れを導入するために適当でありかつ装備された導入区分を備える。一方、導入区分は、表遠上を流れる流体が最初に導入区分を通過し、この導入区分によって凹部の中に導入されるように、主要な流れ方向に向かって凹部の上流にある。他方、導入区分は、主要な流れ方向に対して凹部に向かって傾斜される。これは、司直方向に水平に延びる広い表面を有する導入区分が凹部に向かって傾斜されることを意味する。その結果、表面上を流れると共に導入区分を通過する流体の流れの部分が、上記導入区分によって凹部の中に導入される。流体の渦が、凹部の設計及び流体の流れによって凹部に発生され、流体の渦は、凹部の設計によって凹部内に実質的に存在する。
【0009】
凹部の実質的に円形部分形状の断面の直径は、このケースでは、100km/h(約27.8m/s)で表面上を流れる空気に対して8mmが好ましい。好適な直径は、空気の予測流速に比例して増加する。流体として水である場合では、凹部の断面の直径は、6km/h(約1.7m/s)で表面上を流れる水に対して8mmが好ましい。これは、凹部の直径が予期される流体の流れのタイプに依存することを意味する。ガスの場合における凹部の寸法の経験的な式は、d=8*v/1000であり、ここに、dは、センチメートルでの凹部の直径を表し、vは、km/hで流体の速度を表す。凹部の表面は、酸化チタンで被覆されるのが好ましく、その結果として、特に低流抵抗が凹部に局所制限された流体の渦と凹部の縁部との間に達成される。また、凹部は、円形形状から外れる断面を有する。
【0010】
これは、表面上を直接流れる流体の流れの部分が、導入区分及び凹部によって、確実かつ効率的に流体の渦(ヘルムホルツ渦)に変換され、その流体の渦が凹部内に実質的に滞在することを意味する。流体の渦が凹部内に実質的に滞在するという事実は、凹部内に配置された流体の粒子の大部分が定常渦で凹部内に滞在する、言い換えれば、その流体の粒子の大部分は、凹部外に導かれないということを意味する。
【0011】
持続的な流体の流れに関し、凹部内に局所制限された流体の渦は流体粒子を流体の渦を横切って離させる。流体の渦は、回転速度を有し、流体の渦の外側の縁と、流体の渦を直接横切って導かれた流体の流れとの速度差は、流速に比例して増加する本体の流動抵抗が非常に小さく抑えられることができるように、非常に小さい。流体の渦の領域では、従って、表面上を流れる流体の流れが(静止している)本体と直接接触せず、渦の外側の縁だけと接触する。さらに、流動抵抗の効果的な低減は、導入区分に起因する流体の流れの超音速も可能である。
【0012】
好適実施形態では、凹部は、特に溝形状において、主要な流れ方向に対して実質的に横切って延びる。表面構造の影響は、凹部が主要な流れ方向に対して横切って本体上を延びるときに最も大きい。垂直面から主要な流れ方向まで最大45度の傾斜偏差は、周知の構造に比較して流動抵抗の大幅な低減を可能にする。特に好適な構造の溝形状の実施形態では、凹部は、表面全体を超える主要な流れ方向に対して横方向に延びる。
【0013】
有利には、構造は、複数の凹部を有し、複数の凹部の凹部は、特に主要な流れ方向において、縦に並んで配置される。構造は、主要な流れ方向において縦に並んで横たわる多くの凹部が本体の表面上に存在するときに特に効果的である。その結果、本体の大きな領域は、その構造が提供され、従って、流動抵抗の特に効果的な減少が可能である。このケースでは、本体の表面上を流れる流体流れの後続の粒子が、本体の表面自体とわずかに接触し、流体渦によって表面をほぼ完全に横切ってむしろ導かれる。このケースでは、表面に最も近い流体の流れの層と、流体の渦の表面との間の速度差は非常に小さく、その結果、流れ抵抗も非常に小さい。
【0014】
複数の凹部のケースでは、隣接する凹部が、円形部分形状の断面の直径の1乃至6倍、特に1.1乃至1.75倍、好ましくは、1.25乃至1.5倍、特に好ましくは1.25倍で互いに離間配置される。凹部間の距離は、隣接する凹部の中心点間の各ケースで決定される。本体の流動抵抗の特に大きな低減は、このような方法で好ましくは主要な流れ方向に向かって寸法づけられた凹部間の距離によって達成される。
【0015】
有利には、導入区分は湾曲されている。このケースでは、曲率半径は、円形部分形状の断面の直径の好ましくは1.1乃至1.75倍、さらに好ましくは、1.25乃至1.5倍、特に好ましくは1.25倍であり、それによって、円形部分形状の断面の直径の2乃至6倍を測定する場合有利である。本体の表面を横切って直接流れる流体の流れは、そのような曲率に起因して、特に低摩擦及び安全に凹部に導かれる。
【0016】
導入区分は、主要な流れ方向と主要な流れ方向に対して平行な接線との間の傾斜が、第1ポイントに関して主要な流れ方向の上流に位置する第2ポイントよりも、導入区分の第1ポイントで大きくなるように構成される方が好ましい。これは、主要な流れ方向に対する導入区分の傾斜が流れの方向に増加することを意味する。これは、継続的に行われることは必要とせず、主要な流れ方向に関して異なって傾斜される導入区分の部分を分離し、それによって、傾斜が部分から部分まで増加する。
【0017】
さらに好適な実施形態では、凹部は、導入区分と凹部との間の主要な流れ方向の上流に配置された第1縁部と、凹部と下流に配置された表面の一部との間の下流に配置された第2縁部とを有する。同時に、第1縁部は、凹部に流体渦を誘導するために本体の内部に向けて第2縁部に関して実質的にオフセットされる。このような関係において、縁部は、表面の配向の急な変化として理解されるべきである。それは、各凹部とそれを囲む表面の部分との間に遷移に存在する。第1縁部が本体の内部に実質的に向かって第2縁部に対してオフセットされるという事実は、逆にいえば、第2縁部が凹部から離れる方向に第1縁部に対してある程度まで突出することを意味する。従って、第2縁部は、凹部の中に流体の流れを導くのを容易にし、特に超音速流速で流動抵抗低減のための構造を区画するさらなる構成要素である。
【0018】
このケースでは、最上流に位置された凹部のポイント、すなわち、凹部の縁部は、凹部の内部に流体の渦を実質的に局所制限させるために本体の内部に向かって第1縁部に対して有利にオフセットされる。最上流に位置された凹部のポイントは、第1縁部の下方に配置される。このケースでは、これは、そこから続いて凹部の縁部をたどる流体の流れが常に(部分的に)下流に、すなわち主要な流れ方向に向かって動く凹部の縁部のポイントを意味する。凹部の円形部分形状の断面に関し、このポイントは、通常、凹部の縁部上の主要な流れ方向に垂直に延びる接線を有するポイントである。これは、第1縁部上の凹部の内部の流体の渦の流体粒子が主要な流れ方向に向かって少なくとも部分的に動くことを意味する。これは、流体の渦の局所限定を実質的に凹部の内部に固定することに関連される。
【0019】
好適実施形態では、第2縁部は、円形部分形状の断面の半径の0.1乃至0.6倍又は
0.1乃至0.5倍、好ましくは、0.25倍、さらに好ましくは0.3倍で主要な流れ方向において凹部の中央スポットに対してオフセットされる。円形部分形状の凹部に対する、より正確にはその中心スポットに対する第2縁部のこの配置は、断面を画定する円形の中心点の位置であり、特に表面の流れ抵抗の効果的な低減を可能にする。これは、一方では対応する凹部内部の渦の確かな局所限定に関連され、他方では導入区分と協働した凹部内への流体の効果的な導入と関連される。
【0020】
第2縁部は、有利には、主要な流れ方向に反して傾斜されると共に、後続の凹部に流体の渦を導入するための凹部に向かう突起部を有する。このような突起部は、流体の渦の流体粒子が凹部に滞在して凹部の外部に導かれないように、流体の渦を凹部の内部に滞在するように強制する。本体の表面上の流体の流れのせいで凹部内に追加の流体粒子が入るために、例えば、空気などの圧縮流体で、流体の渦の内圧が上昇し、このため、流体の渦が延びる。従って、流体の渦の一部分は、第2縁部上に拡張し、主要な流れ方向に対して好ましくは10度乃至20度の角度で、さらに好ましくは17度で傾斜した突起部のせいで、主要な流れ方向において続く凹部に導入される。従って、凹部から凹部まで延びるエアクッションは、主要な流れ方向に沿って発生し、摩擦の効果的な低減を可能にする。
【0021】
凹部の円形部分形状の断面は、有利には、270度乃至310度、好ましくは280度乃至300度、さらに好ましくは290度であり、凹部がその断面の90度乃至50度、好ましくは80度乃至60度、さらに好ましくは70度の角度範囲で開く。しかしながら、凹部がその断面の179度乃至45度、特に100度乃至75度の角度範囲で開くように、凹部の円形部分形状の断面が181度乃至315度、特に260度乃至290度である場合に有利である。このケースでは、開口の角度範囲は、流体の流れの予想速度に依存する。凹部の対応する開口寸法は、特に表面、従ってその上を又はその周りを流体が流れる本体の流動抵抗を効果的に低減するのに役立つ。
【0022】
本発明による流路、特に超音速流路は、上述された本体を備える。流路を通る特に低摩擦流体の流れは、結果として保証される。特に、流路は、その中で超音速の流体の流れが少なくとも部分的に存在するジェットエンジンの内部にある。本発明によるジェットエンジン及び本発明によるリフトデバイスも上述された本体を具備される。このケースでは、リフトデバイス、流路又はジェットエンジンは、好ましくは、その上を流体が流れる表面を有し、その表面は、上述された構造が実質的に完全に具備される。
【0023】
本発明のさらなる態様によれば、フィルムは、その上を又はその周りを流体が主要な流れ方向に流れる本体の流れ抵抗を低減する構造を備え、その表面上にフィルムが適用されることができる。このケースでは、構造は、流体の渦を誘発するための実質的に円形部分形状の断面が提供された少なくとも一つの凹部を有する。フィルムは、構造が凹部に向かって主要な流れ方向に対して傾斜されると共に凹部の中に流体の流れを導くために主要な流れ方向の凹部の上流に配置された、少なくとも一つの導入区分を有する。その構造によって、流体の渦は、凹部内に導入されることができ、実質的に凹部内に局所制限されることができる。本発明によるフィルムは、従って、そのフィルムで実質的に本体の表面を塗布することにより本発明による本体を形成するのに適する。
【0024】
本発明のさらなる態様は、その上を流体が主要な流れ方向に流れることができる表面構造の使用にあり、流体の渦を誘導するための実質的に円形部分形状の断面が提供された少なくとも一つの凹部を有し、凹部は、主要な流れ方向に対して傾斜されると共に、表面構造が提供された本体の流れ抵抗を低減するために凹部の中に流体の流れを導くために主要な流れ方向の凹部の上流に配置された、導入区分を有する。
【0025】
さらに好ましい実施形態は、図面および特許請求の範囲の全体の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、横方向の断面図の、好適実施形態による表面構造を有する本体部分を示す図である。
図2図2は、横方向の断面図の、さらに好適実施形態による表面構造を有する本体の一部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
好適実施形態
図1は、その上を流体30が流れる本体10の表面12に沿った本体10の横方向の断面図を示す。表面12は、並んで横たわる4つの凹部16.1、16.2、16.3、16.4を有し、それらは、円形部分形状の断面を有し、好ましくは、二酸化チタンの表面又は他の大部分的に不活性及び/又は摩擦低減の表面を有し、凹部16.4だけが部分的に示される。4つの凹部16.1、16.2、16.3、16.4は、このケースでは、凹部の断面を画定する円の直径Dの1.25倍で離間される。凹部16.1と凹部16.2との間に凹部16.2の導入区分18.2が提供され、凹部16.2と凹部16.3との間に凹部16.3の導入区分18.3が提供され、凹部16.3と凹部16.4との間に凹部16.4の導入区分18.4が提供される。その特徴を有する凹部の構造は、主要な流れ方向に向かって定期的に続く。図の説明は、各ケースにおいて、全体の構造の一部に関する。特に、凹部16.4だけが部分的に示され、説明される特性は、これを明示的に参照されていない場合であっても同様に適用可能である。
【0028】
図1の部分的な平面は、このケースでは、本体10の表面12上の流体30の主要な流れ方向14に沿って延びる。従って、凹部16.1、16.2、16.3、16.4は、主要な流れ方向14に沿って均一に離間配置され、主要な流れ方向14を図1の図面の外方又は内方に実質的に横切って延びる。凹部16.1、16.2、16.3、16.4の互いからの距離、すなわち、隣接する凹部16.1、16.2、16.3、16.4の中心点間の距離は、個の好適実施形態では、各凹部16.1、16.2、16.3、16.4の直径Dの1.25倍である。導入区分18.2、18.3、18.4は、隣接する凹部16.1、16.2、16.3、16.4間に存在し、図1に示された好適実施形態では、関連された凹部16.2、16.3、16.4に向かって湾曲される。その湾曲は、凹部16.2、16.3、16.4の直径Dの1.25倍または図2に示された実施形態の場合では凹部16.2、16.3、16.4の直径Dの1.5倍の曲率半径Rを有するように各々の場合で設計される。
【0029】
凹部16.2、16.3は、それぞれ、第1縁部20.2、20.3及び第2縁部22.2、22.3によって主要な流れ方向14においてそれぞれの場合で制限される開口部を有する。従って、縁部20.2、20.3、22.2、22.3は、角度範囲Wを画定し、角度範囲Wは、開口角度として参照され、凹部16.2の例で示され、それをわたって凹部の関連の開口部が延びる。各凹部16.2、16.3の最低ポイント上の第1縁部20.2、20.3の高さHは、図1に示された好適実施形態の対応する凹部の直径Dの0.75倍である。第2縁部22.2、22.3は、それぞれ、高さの点で第1縁部20.2、20.3に対してオフセットされ、換言すれば、本体10から離れて示す。主要な流れ方向14における各凹部の中心点Mの位置に関し、第2縁部は、対応する凹部の直径Dの0.25倍の深さTによってオフセットされる。
【0030】
その主要な流れ方向14が表面12の広い進路によって画定される表面12上を流れる流体30は、表面12に直接的に隣接するその領域の導入区分18.2、18.3に到達する。導入区分18.2、18.3は、凹部16.2、16.3の中に流体30の一部の流れ24を導き、流体の渦26.1、26.2、26.3が、凹部16.2、16.3の断面の円形状によって誘導される。それによって、第2縁部22.1、22.2、22.3は、凹部16.1、16.2、16.3の第2縁部22.1、22.2、22.3を介して連行される継続する流体の流れ28から、凹部の中に導入される流体の流れ24を分離する。継続する流体の流れ28及びその上の全ての層は、非常に低い流動抵抗で本体10の表面12を超えて凹部16.1、16.2、16.3の流体の渦26.1、26.2、26.3によって導入される。
【0031】
凹部16.1、16.2、16.3の流体の渦26.1、26.2、26.3は、流体30を流すことによって常に駆動され、流体30が本体10の表面12上を流れる限り存在し続ける。流体の渦26.1、26.2、26.3の高回転速度に起因して、速度のごくわずかの違いが、継続する流体の流れ28と流体の渦26.1、26.2、26.3との間に生じる。速度の最小限の違いに起因して、ほとんど流動抵抗は流体の渦の領域で生じない。
【0032】
さらに、流体の渦は、それにわたって継続する流体の流れ28が導入される“エアクッション”を形成し、それに起因して流体の流れ28は、本体10自体の表面と直接接しないあるいはわずかに接する。
【0033】
図2は、第2縁部21.1、22.2、22.3が、凹部に向かって傾斜した、流れ方向に反して延びるタブ23.1、23.2、23.3を有する、さらなる実施形態を示す。第2の好適実施形態は、図1に示されたものに対応する。
[形態1] その上を流体(30)が流れることができる少なくとも一つの表面(12)を有する本体(10)であって、
表面(12)は、表面(12)上の主要な流れ方向(14)を画定する広い進路を有し、
表面(12)は、本体(10)の流動抵抗を低減するための構造を少なくとも部分的に有し、
構造は、流体の渦(26.1、26.2、26.3)を誘導するための実質的に円形部分形状の断面が提供された少なくとも一つの凹部(16.1、16.2、16.3)を有し、
構造は、凹部(16.1、16.2、16.3)の方に向かって主な流れ方向に対して傾斜される少なくとも一つの導入区分(18.1、18.2、18.3)を有し、
少なくとも一つの導入区分(18.1、18.2、18.3)は、凹部(16.1、16.2、16.3)の中に流体の流れ(24)を導入するためにその主な流れ方向において凹部(16.1、16.2、16.3)の上流に配置され、
その構造によって、流体の渦(26.1、26.2、26.3)が凹部(16.1、16.2、16.3)内に誘導されることができ、凹部(16.1、16.2、16.3)内に実質的に局所制限させることができる、本体(10)。
[形態2] 形態1記載の本体(10)において、
凹部(16.1、16.2、16.3)は、主要な流れ方向(14)に実質的に横切って延び、特に溝形状である、本体(10)。
[形態3] 形態1又は2記載の本体(10)において、
構造は、複数の凹部(16.1、16.2、16.3)を有し、凹部(16.1、16.2、16.3)の多数は、特に主要な流れ方向(14)において縦に並んで配置される、本体(10)。
[形態4] 形態3記載の本体(10)において、
隣接する凹部(16.1、16.2、16.3)は、流体の密度、速度及び温度に依存して、円形部分形状の断面の直径(D)の好ましくは1乃至6倍で互いに離間配置される、本体(10)。
[形態5] 形態1乃至4のうちのいずれか一つに記載の本体(10)において、
導入区分(18.1、18.2、18.3)は、直線及び/又は湾曲して構成され、
曲率半径(R)は、流体の密度、速度及び温度に依存して、円形部分形状の断面の直径(D)の特に2乃至6倍である、本体(10)。
[形態6] 形態1乃至5のうちのいずれか一つに記載の本体(10)において、
導入区分(18.1、18.2、18.3)は、主要な流れ方向(14)と主要な流れ方向に対して平行な接線との間の傾斜が、第1ポイントに関して主要な流れ方向の上流に位置する第2ポイントよりも、導入区分の第1ポイントで大きくなるように構成される、本体(10)。
[形態7] 形態1乃至6のうちのいずれか一つに記載の本体(10)において、
凹部(16.2、16.3)は、導入区分(18.2、18.3)と凹部(16.2、16.3)との間の主要な流れ方向(14)の上流に配置された第1縁部(20.2、20.3)と、凹部(16.2、16.3)と下流に配置された表面の一部との間の下流に配置された第2縁部(22.2、22.3)とを有し、
第1縁部(20.2、20.3)は、凹部(16.2、16.3)に流体渦(26.2、26.3)を誘導するために実質的に本体(10)の内部に向けて第2縁部(22.2、22.3)に関してオフセットされる、本体(10)。
[形態8] 形態7記載の本体(10)において、
最上流に位置された凹部(16.2、16.3)のポイントは、凹部(16.2、16.3)の内部に流体の渦(26.2、26.3)を実質的に局所制限させるために本体(10)の内部に向かって第1縁部(20.2、20.3)に対してオフセットされる、本体(10)。
[形態9] 形態7又は8記載の本体(10)において、
第2縁部(22.2、22.3)は、円形部分形状の断面の半径の0.1乃至0.6倍、好ましくは、0.3倍で主要な流れ方向において凹部(16.2、16.3)の中央スポット(M)に対してオフセットされる、本体(10)。
[形態10] 形態3、7、8又は9記載の本体(10)において、
第2縁部(22.2、22.3)は、主要な流れ方向に反すると共に、傾斜されると共に、後続の凹部に流体の渦を導入するための凹部に向かって傾斜された、突起部(23.2、23.3)を有する、本体(10)。
[形態11] 形態1乃至10のうちのいずれか一つに記載の本体(10)において、
凹部(16.2、16.3)がその断面の179度乃至45度、好ましくは100度乃至75度の角度範囲で開くように、凹部(16.2、16.3)の断面の円形部分は、流体の密度、速度及び温度に依存して、181度乃至315度、好ましくは260度乃至290度である、本体(10)。
[形態12] 形態1乃至11のうちのいずれか一つに記載の本体(10)を有する、流路、特に、超音速流路。
[形態13] 形態1乃至11のうちのいずれか一つに記載の本体(10)を有する、ジェットエンジン。
[形態14] 形態1乃至11のうちのいずれか一つに記載の本体(10)を有する、リフトデバイス。
[形態15] その上を又はその周りを流体が主要な流れ方向(14)に流れる本体の流れ抵抗を低減する構造を備えるフィルムであって、
その表面上にフィルムが適用され、
構造は、流体の渦(26.1、26.2、26.3)を誘導するための実質的に円形部分形状の断面が提供された少なくとも一つの凹部(16.1、16.2、16.3)を有し、
構造は、凹部(16.1、16.2、16.3)の方に向かって主な流れ方向に対して傾斜される少なくとも一つの導入区分(18.1、18.2、18.3)を有し、
少なくとも一つの導入区分(18.1、18.2、18.3)は、凹部(16.1、16.2、16.3)の中に流体の流れ(24)を導入するためにその主な流れ方向において凹部(16.1、16.2、16.3)の上流に配置され、
その構造によって、流体の渦(26.1、26.2、26.3)が凹部(16.1、16.2、16.3)内に誘導されることができ、凹部(16.1、16.2、16.3)内に実質的に局所制限させることができる、フィルム。
[形態16] 流体の渦(26.1、26.2、26.3)を誘導するための実質的に円形部分形状の断面が提供された少なくとも一つの凹部(16.1、16.2、16.3)を有する、その上を流体が主な流れ方向に流れることができる表面構造の使用であって、
少なくとも一つの凹部(16.1、16.2、16.3)は、主な流れ方向に対して傾斜されると共に、表面構造に提供された本体の流動抵抗を低減するために凹部(16.1、16.2、16.3)の中に流体の流れを導入するためにその主な流れ方向において凹部(16.1、16.2、16.3)の上流に配置された、導入区分(18.1、18.2、18.3)を有する、使用。
図1
図2