(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、このような絶縁体の製造方法においては、絶縁体の製造効率の向上や加工精度の向上が求められていた。そこで、本発明は、スパークプラグに備えられる絶縁体の製造効率と加工精度の少なくとも一方を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
本発明の第1の形態は、
円筒状の絶縁体を備えるスパークプラグの製造方法であって、
(A)第1の回転体の周縁部に設けられた複数の第1の供給位置に、加工前の絶縁体を供給する工程と、
(B)前記第1の回転体が回転することにより前記供給された第1の供給位置が第1の加工位置に移動した前記絶縁体に、回転する第1の砥石を接触させて研削加工する工程と、
(C)前記第1の砥石と前記第1の加工位置との間の距離を、
前記複数の第1の供給位置のうち、前記第1の加工位置に
回転移動した前記第1の供給位置ごとに個別に
、それぞれ補正する工程と、
を備えることを特徴とする。また、本発明は以下の形態として実現することもできる。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、円筒状の絶縁体を備えるスパークプラグの製造方法が提供される。この製造方法は、(A)第1の回転体の周縁部に設けられた複数の第1の供給位置に、加工前の絶縁体を供給する工程と、(B)前記第1の回転体が回転することにより前記供給された第1の供給位置が第1の加工位置に移動した前記絶縁体に、回転する第1の砥石を接触させて研削加工する工程と、(C)前記第1の砥石と前記第1の加工位置との間の距離を補正する工程と、を備えることを特徴とする。この形態のスパークプラグの製造方法によれば、第1の回転体の周縁部に設けられた複数の第1の供給位置に加工前の絶縁体が順次供給されて、それらの絶縁体が第1の砥石により研削加工されるため、絶縁体の製造効率を向上させることができる。また、第1の砥石と第1の加工位置との間の距離が補正されるため、絶縁体の加工精度を向上させることができる。
【0007】
(2)上記スパークプラグの製造方法において、前記工程(C)では、前記工程(B)によって研削加工された絶縁体から補正値を取得し、該補正値に基づき前記補正を行ってもよい。このようなスパークプラグの製造方法であれば、研削加工後の絶縁体から取得された補正値に基づき、第1の砥石と第1の加工位置との間の距離が補正されるので、絶縁体の加工精度を一層向上させることができる。
【0008】
(3)上記スパークプラグの製造方法において、前記工程(C)では、前記第1の砥石を移動させることで前記補正を行ってもよい。このようなスパークプラグの製造方法であれば、第1の回転体を移動させる必要がないので、第1の回転体に対する加工前の絶縁体の供給を安定して行うことができる。
【0009】
(4)上記スパークプラグの製造方法において、前記工程(B)では、前記第1の回転体が回転することによって前記絶縁体が移動する円軌道の内側から前記第1の砥石を前記加工前の絶縁体に接触させてもよい。このようなスパークプラグの製造方法であれば、複数の絶縁体に対して第1の砥石を接触させることが可能になる。
【0010】
(5)上記スパークプラグの製造方法において、前記第1の加工位置は、前記円軌道に沿った一定の範囲に亘る位置であり、前記工程(B)では、前記第1の加工位置に移動した複数の前記絶縁体が、前記第1の砥石に同時に接触して研削加工されてもよい。このようなスパークプラグの製造方法であれば、複数の絶縁体が第1の砥石に同時に接触して研削加工されるので、絶縁体の製造効率を向上させることができる。
【0011】
(6)上記スパークプラグの製造方法において、前記工程(B)では、前記第1の加工位置に移動した前記絶縁体を、前記円軌道の外側から前記第1の砥石側に向けて前記絶縁体を押さえるためのベルトを用いて押さえることで、前記絶縁体を前記第1の砥石に接触させてもよい。このようなスパークプラグの製造方法であれば、ベルトによって絶縁体を第1の砥石に確実に接触させることができる。また、このようなベルトを用いれば、複数の絶縁体を第1の砥石に確実に同時に接触させることが容易になる。
【0012】
(7)上記スパークプラグの製造方法において、前記工程(B)では、前記ベルトを回転させることで、前記第1の加工位置に移動した前記絶縁体を回転させてもよい。このようなスパークプラグの製造方法であれば、絶縁体が回転するため、簡単な機構で絶縁体を効率よく研削することができる。
【0013】
(8)上記スパークプラグの製造方法において、前記工程(B)では、前記第1の回転体が回転することによって前記絶縁体が移動する円軌道の外側から前記第1の砥石を前記加工前の絶縁体に接触させてもよい。このようなスパークプラグの製造方法であれば、1つの絶縁体に対して第1の砥石を確実に接触させることができる。
【0014】
(9)上記スパークプラグの製造方法は、更に、(D)前記工程(B)によって研削加工された絶縁体を、第2の回転体の周縁部に設けられた複数の第2の供給位置に供給する工程と、(E)前記第2の回転体が回転することにより前記供給された第2の供給位置が第2の加工位置に移動した前記研削加工された絶縁体に、前記第2の回転体が回転することによって前記絶縁体が移動する円軌道の外側から、回転する第2の砥石を接触させて更に研削加工する工程と、を備えてもよい。このようなスパークプラグの製造方法であれば、第1の砥石によって研削された絶縁体に対して、更なる研削加工を施すことができる。よって、絶縁体の加工精度を向上させることができる。また、第2の砥石は、絶縁体が移動する円軌道の外側から絶縁体に接触するので、1つの絶縁体に対して第2の砥石を確実に接触させることができる。よって、絶縁体の加工精度を一層向上させることができる。
【0015】
(10)上記スパークプラグの製造方法は、更に、(F)前記第2の砥石と前記第2の加工位置との間の距離を補正する工程を備えてもよい。このようなスパークプラグの製造方法であれば、第1の砥石と第1の加工位置との間の距離だけではなく、第2の砥石と第2の加工位置との間の距離も補正されるので、絶縁体の加工精度を一層向上させることができる。
【0016】
(11)上記スパークプラグの製造方法において、前記工程(F)では、前記第2の砥石を移動させることで前記補正を行ってもよい。このようなスパークプラグの製造方法であれば、第2の回転体を移動させる必要がないので、第2の回転体に対する研削加工後の絶縁体の供給を安定して行うことができる。
【0017】
(12)本発明の他の形態によれば、円筒状の絶縁体を備えるスパークプラグの製造方法が提供される。この製造方法は、(a)第1の回転体の周縁部に設けられた複数の第1の供給位置に、加工前の絶縁体を供給する工程と、(b)前記第1の回転体が回転することにより前記供給された第1の供給位置が第1の加工位置に移動した前記絶縁体に、前記第1の回転体が回転することによって前記絶縁体が移動する円軌道の内側から、回転する第1の砥石を接触させて研削加工する工程と、を備える。このようなスパークプラグの製造方法によれば、第1の回転体の周縁部に設けられた複数の第1の供給位置に加工前の絶縁体が順次供給されて、それらの絶縁体が砥石により研削加工されるため、絶縁体の製造効率を向上させることができる。
【0018】
(13)上記スパークプラグの製造方法において、前記第1の加工位置は、前記円軌道に沿った一定の範囲に亘る位置であり、前記工程(b)では、前記第1の加工位置に移動した複数の前記絶縁体が、前記第1の砥石に同時に接触して研削加工されてもよい。このようなスパークプラグの製造方法によれば、複数の絶縁体が第1の砥石に同時に接触して研削加工されるので、絶縁体の製造効率を向上させることができる。
【0019】
(14)上記スパークプラグの製造方法において、前記工程(b)では、前記第1の加工位置に移動した前記絶縁体を、前記円軌道の外側から前記第1の砥石側に向けて前記絶縁体を押さえるためのベルトを用いて押さえることで、前記絶縁体を前記第1の砥石に接触させてもよい。このようなスパークプラグの製造方法であれば、ベルトによって絶縁体を第1の砥石に確実に接触させることができる。また、このようなベルトを用いれば、複数の絶縁体を第1の砥石に確実に同時に接触させることが容易になる。
【0020】
(15)上記スパークプラグの製造方法において、前記工程(b)では、前記ベルトを回転させることで、前記第1の加工位置に移動した前記絶縁体を回転させてもよい。このようなスパークプラグの製造方法であれば、絶縁体が回転するため、簡単な機構で絶縁体を効率よく研削することができる。
【0021】
本発明は、上述したスパークプラグの製造方法としての形態に限らず、種々の形態で実現することが可能である。例えば、上述した製造方法によって製造されたスパークプラグや、そのスパークプラグを備える車両等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
A.スパークプラグの構成:
図1は、スパークプラグ1の部分断面図である。
図1において、スパークプラグ1の軸線方向ODを図面における上下方向とし、下側をスパークプラグ1の先端側、上側を後端側として説明する。
図1において、一点破線で示す軸線Oの右側は、スパークプラグ1の外観を示しており、軸線Oの左側は、スパークプラグ1の中心軸を通る断面を示している。
【0024】
スパークプラグ1は、絶縁体としての絶縁碍子10と、主体金具50と、中心電極20と、接地電極30と、端子金具40とを備える。主体金具50には、軸線方向ODに貫通する挿入孔26が形成されている。この挿入孔26には、絶縁碍子10が挿入されて保持されている。中心電極20は、絶縁碍子10内に形成された軸孔12内に軸線方向ODに沿って保持されている。中心電極20の先端部は、絶縁碍子10の先端側に露出している。接地電極30は、主体金具50の先端部(
図1における下側の端部)に接合されている。端子金具40は、中心電極20の後端側(
図1における上側の端部)に設けられている。端子金具40の後端部は絶縁碍子10の後端側に露出している。
【0025】
絶縁碍子10は周知のようにアルミナ等を焼成して形成され、軸線方向ODへ延びる軸孔12が形成された円筒形状を有する。軸線方向ODの略中央には外径が最も大きな鍔部19が形成されており、それより後端側(
図1における上側)には後端側胴部18が形成されている。鍔部19より先端側(
図1における下側)には、後端側胴部18よりも外径の小さな先端側胴部17が形成され、さらにその先端側胴部17よりも先端側に、先端側胴部17よりも外径の小さな脚長部13が形成されている。脚長部13は先端側ほど縮径され、スパークプラグ1が内燃機関のエンジンヘッド70に取り付けられた際には、燃焼室内に曝される。
【0026】
主体金具50は、内燃機関のエンジンヘッド70にスパークプラグ1を固定するための略円筒状の金具である。主体金具50は、絶縁碍子10を、その後端側胴部18の一部から脚長部13にかけての部位を取り囲むようにして保持している。すなわち、主体金具50の挿入孔26に絶縁碍子10が挿入され、絶縁碍子10の先端と後端がそれぞれ主体金具50の先端と後端から露出するように構成されている。主体金具50は低炭素鋼材より形成され、全体にニッケルメッキや亜鉛メッキが施されている。主体金具50の後端部には、図示しないスパークプラグレンチが係合する六角柱形状の工具係合部51が設けられている。主体金具50は、内燃機関の上部に設けられたエンジンヘッド70の取付ネジ孔71に螺合するネジ山が形成された取付ネジ部52を備えている。
【0027】
主体金具50の工具係合部51と取付ネジ部52との間には、鍔状のシール部54が形成されている。取付ネジ部52とシール部54との間のネジ首59には、板体を折り曲げて形成した環状のガスケット5が嵌挿されている。ガスケット5は、スパークプラグ1をエンジンヘッド70に取り付けた際に、シール部54の座面55と取付ネジ孔71の開口周縁部75との間で押し潰されて変形する。このガスケット5の変形により、スパークプラグ1とエンジンヘッド70間が封止され、取付ネジ孔71を介した内燃機関内の気密漏れが防止される。
【0028】
主体金具50の工具係合部51より後端側には薄肉の加締部53が設けられている。また、シール部54と工具係合部51との間には、加締部53と同様に薄肉の圧縮変形部58が設けられている。工具係合部51から加締部53にかけての主体金具50の内周面と絶縁碍子10の後端側胴部18の外周面との間には、環状の第1の線パッキン6と第2の線パッキン7とが介在している。第1の線パッキン6と第2の線パッキン7との間には、タルク(滑石)9が充填されている。
【0029】
スパークプラグ1の製造時においては、加締部53を内側に折り曲げるようにして先端側に押圧することにより圧縮変形部58が圧縮変形し、圧縮変形部58の圧縮変形により、第2の線パッキン7、タルク9、および、第1の線パッキン6を介し、絶縁碍子10が主体金具50内で先端側に向け押圧される。この押圧により、主体金具50の内周で取付ネジ部52の位置に形成された第1の段部56に、板パッキン8を介し、絶縁碍子10の第2の段部15が押圧されて、主体金具50と絶縁碍子10とが一体にされる。このとき、主体金具50と絶縁碍子10との間の気密性は、板パッキン8によって保持され、燃焼ガスの流出が防止される。また、この押圧により、タルク9が軸線方向OD方向に圧縮されて主体金具50内の気密性が高められる。
【0030】
中心電極20は、インコネル(商標名)600等のニッケルまたはニッケルを主成分とする合金から形成された電極母材21の内部に、電極母材21よりも熱伝導性に優れる銅または銅を主成分とする合金からなる芯材25を埋設した構造を有する棒状の電極である。中心電極20は、有底筒状に形成された電極母材21の内部に芯材25を詰め、底側から押出成形を行って引き延ばすことで作製される。芯材25は、胴部分においては略一定の外径をなすものの、先端側においては先細り形状に形成される。中心電極20の先端部分は、先端に向かって小径となるテーパ状に成形されている。テーパ形状部の先端には、電極チップ90が接合されている。電極チップ90は、耐火花消耗性を向上するために、高融点の貴金属を主成分として形成されている。電極チップ90は、例えば、イリジウム(Ir)や、Irを主成分としたIr合金によって形成される。
【0031】
中心電極20は軸孔12内を後端側に向けて延設され、シール体4およびセラミック抵抗3を経由して、後方の端子金具40に電気的に接続されている。端子金具40には高圧ケーブル(図示せず)がプラグキャップ(図示せず)を介して接続され、高電圧が印加される。
【0032】
接地電極30は、耐腐食性の高い金属によって形成され、一例として、ニッケル合金が用いられる。接地電極30の基端は、主体金具50の先端面に溶接されている。接地電極30の先端部は、中心電極20の電極チップ90と、軸線O上で対向するように屈曲されている。この接地電極30の先端部と電極チップ90の先端面との間には、火花ギャップが形成される。
【0033】
B.スパークプラグの製造方法:
図2は、本発明の一実施形態としてのスパークプラグの製造方法のフローチャートである。本実施形態では、まず、アルミナ等の原料粉末から成形された研削加工前の絶縁碍子(以下、ワークという)10aが用意される(ステップS100)。そして、ロボット等によって、ワーク10aが第1加工装置100(
図3)に供給される(ステップS102)。この第1加工装置100によって、ワーク10aの外形が研削加工される(ステップS104)。
【0034】
図3は、第1加工装置100の概略構成を示す説明図である。第1加工装置100は、第1の回転体101と、第1の砥石102と、押さえベルト103と、外径測定器104と、制御装置108と、を備えている。
【0035】
第1の回転体101は、円盤状の形状を有している。第1の回転体101の一方の面の周縁部には、ワーク10aが供給されて支持される支持ピン105が等間隔で配置されている。上記ステップS102では、これらの支持ピン105(供給位置)に対して、ワーク10aが次々に供給される。支持ピン105は、特許請求の範囲における「第1の供給位置」に相当する。第1の回転体101の他方の面には、第1の回転体101を中心軸C1を中心として所定の方向に一定速度で回転させるための回転機構(図示せず)が備えられている。回転機構は、例えば、モータやベルトドライブ等から構成される。
【0036】
第1の砥石102は、円筒状の形状を有している。第1の砥石102は、第1の回転体101の支持ピンが備えられた面側に、第1の回転体101に対向するように配置されている。第1の砥石102は、第1の回転体101の反対側(図の手前側)に備えられた回転機構(図示せず)により、中心軸C2を中心に、第1加工装置100の動作中、第1の回転体101よりも速い速度で常時回転する。第1の回転体101の中心軸C1と、第1の砥石102の中心軸C2とは、所定の距離だけ離間している。本実施形態では、第1の砥石102の回転方向は、第1の回転体101の回転方向と同一である。ただし、第1の砥石102の回転方向は、第1の回転体101の回転方向と逆方向であってもよい。
【0037】
第1の砥石102の側面には、絶縁碍子10の外形にほぼ対応する形状の砥粒層106が備えられている。この砥粒層106によってワーク10aが研削されることで、ワーク10aの外形が形成される。第1の回転体101の回転によってワーク10aが第1の加工位置120に移動すると、ワーク10aに対して、第1の砥石102の砥粒層106が、ワーク10aが移動する円軌道の内側から接触する。本実施形態において、第1の加工位置120とは、前述の円軌道に沿った一定の範囲に亘る連続的な位置である。第1の加工位置120の範囲は、第1の回転体101の中心軸C1と第1の砥石102の中心軸C2との間隔と、ワーク10aの直径と、に応じて決まる。ワーク10aがこの第1の加工位置120上を移動することで、ワーク10aは第1の砥石102によって研削されて徐々に径が小さくなり、ワーク10bが形成される。
【0038】
押さえベルト103は、第1の加工位置120上をワーク10aが移動している際に、ワーク10aを、前述した円軌道の外側から第1の砥石102側に向けて押さえる。このように、本実施形態では、押さえベルト103を用いて、円軌道の外側からワーク10aを押さえるため、複数のワーク10aを第1の砥石102に対して確実に同時に接触させることができる。押さえベルト103は、ベルト駆動モータ107によって駆動されることで、押さえベルト103に接触するワーク10aを、支持ピン105を中心に回転させる。このときのワーク10aの回転方向は、第1の砥石102の回転方向と同一である。このように、本実施形態では、押さえベルト103によってワーク10aを回転させるため、簡単な機構でワーク10aを効率よく研削することができる。こうして、押さえベルト103によってワーク10aが押さえられながら回転させられることで、第1の砥石102によって、ワーク10aの外周が均等に研削されることになる。
【0039】
外径測定器104は、第1の加工位置120において研削加工された後のワーク10bの外径を測定する装置である。外径測定器104は、接触型の測定器であってもよいし、非接触型の測定器であってもよい。
【0040】
上述した第1加工装置100によってワーク10aが研削加工されると、CPUやメモリを備えるコンピュータとして構成された制御装置108が、第1の砥石102と第1の加工位置120との間の距離L1を補正する(
図2のステップS106)。具体的には、制御装置108は、研削加工後のワーク10bの外径を外径測定器104によって測定し、そのワーク10bが支持されている支持ピン105毎に測定した外径を記憶する。こうして測定された外径は、特許請求の範囲の「補正値」に相当する。そして、制御装置108は、支持ピン105が第1の加工位置120(より詳しくは、第1の加工位置120のうち、第1の砥石102の中心軸C2に最も近い加工位置)に移動した際に、その支持ピン105に支持されていたワーク10bの外径に基づき、第1の砥石102の中心軸C2の位置を調整して、距離L1を補正する。制御装置108は、第1の砥石102の位置を移動させるためのアクチュエータ(図示せず)を制御し、ワーク10bの外径が大きいほど、距離L1が小さくなるように第1の砥石102の位置を調整することで、距離L1の補正を行う。例えば、ワーク10bの外径が、所定の基準値よりも0.01mm大きい場合には、距離L1を0.005mm小さくすれば、次回以降の研削加工において、ワーク10bの外径を基準値に近づけることができる。
【0041】
このステップS106では、例えば、支持ピン105a(
図3参照)に支持されているワーク10bの外径が測定されると、この支持ピン105aが、次回、第1の加工位置120に移動した際に、第1の砥石102と第1の加工位置120との間の距離L1がその測定結果に応じて補正される。また、同様に、支持ピン105bに支持されているワーク10bの外径が測定されると、この支持ピン105bが、次回、第1の加工位置120に移動した際に、第1の砥石102と第1の加工位置120との間の距離L1が、その測定結果に応じて補正される。つまり、本実施形態では、第1の加工位置120に移動した支持ピン105毎に、第1の砥石102と第1の加工位置120との間の距離L1が個別に補正される。
【0042】
第1加工装置100による研削加工が終了すると、ロボット等によって支持ピン105からワーク10bが取り外され、ワーク10bに対して更なる研削加工を行うための第2加工装置200に順次供給される(ステップS108)。この第2加工装置200によって、ワーク10bの外形が更に研削加工される(ステップS110)。
【0043】
図4は、第2加工装置200の概略構成を示す説明図である。第2加工装置200は、第2の回転体201と、第2の砥石202と、押さえローラ203と、外径測定器204と、制御装置208と、を備えている。
【0044】
第2の回転体201は、円盤状の形状を有している。第2の回転体201の一方の面の周縁部には、ワーク10bが供給されて支持される支持ピン205が等間隔で配置されている。上記ステップS108では、これらの支持ピン205に対して、ワーク10bが次々に供給される。支持ピン205は、特許請求の範囲における「第2の供給位置」に相当する。第2の回転体201の他方の面には、第2の回転体201を中心軸C3を中心として所定の方向に回転させるための回転機構(図示せず)が備えられている。回転機構は、例えば、モータやベルトドライブ等から構成される。前述の第1加工装置100の第1の回転体101が一定速度で回転するのに対して、第2加工装置200の第2の回転体201は、支持ピン205に支持された1つのワーク10bが後述する第2の加工位置220に移動して研削加工が終了する毎に、間欠的に回転する。
【0045】
第2の砥石202は、円筒状の形状を有している。第2の砥石202は、ワーク10bが第2の回転体201の回転によって移動する円軌道の外側からワーク10bに接するように配置されている。第2の砥石202は、回転機構(図示せず)によって、中心軸C4を中心に、第2加工装置200の動作中、常時回転する。本実施形態では、第2の砥石202の回転方向は、第2の回転体201の回転方向と同一である。ただし、第2の砥石202の回転方向は、第2の回転体201の回転方向と逆方向であってもよい。第2の砥石202の側面には、絶縁碍子10の外形に対応する形状の砥粒層206が備えられている。ワーク10bが第2の回転体201の回転によって第2の加工位置220に移動すると、第2の砥石202の砥粒層206がワーク10bに接触して研削される。この砥粒層206によってワーク10bが研削されることで、ワーク10bの外形が絶縁碍子10の外形に対応する形状に加工される。本実施形態において、第2の加工位置220とは、第2の砥石202と後述する押さえローラ203との間の位置である。
【0046】
押さえローラ203は、円筒状の回転体であり、第2の回転体201の支持ピン205が配置されている面側に、第2の回転体201に対向するように配置される。押さえローラ203は、第2の加工位置220にあるワーク10bに対して、第2の砥石202に向けて所定の荷重を加える。また、押さえローラ203は、押さえローラ203を回転させるための回転機構(図示せず)によって中心軸C5を中心に回転する。そして、押さえローラ203は、この回転によって、押さえローラ203に接触するワーク10bを、支持ピン205を中心に回転させる。このときのワーク10bの回転方向は、第2の砥石202の回転方向と同一である。このように、押さえローラ203によってワーク10bが第2の砥石202に向けて押さえられながら回転させられることで、第2の砥石202によって、ワーク10bの外周が均等に研削される。
【0047】
外径測定器204は、第2の加工位置220において研削加工された後のワーク10cの外径を測定する装置である。外径測定器204は、接触型の測定器であってもよいし、非接触型の測定器であってもよい。
【0048】
上述した第2加工装置200によって、ワーク10bが研削加工されると、CPUやメモリを備えるコンピュータとして構成された制御装置208が、第2の砥石202と第2の加工位置220との間の距離L2を補正する(
図2のステップS112)。具体的には、制御装置208は、研削加工後のワーク10cの外径を外径測定器204によって測定し、そのワーク10cが支持されている支持ピン205毎に測定した外径を記憶する。こうして測定された外径は、特許請求の範囲の「補正値」に相当する。そして、制御装置208は、支持ピン205が第2の加工位置220に移動した際に、その支持ピン205に支持されていたワーク10cの外径に基づき、第2の砥石202の中心軸C4の位置を調整して、距離L2を補正する。制御装置208は、第2の砥石202の位置を移動させるためのアクチュエータ(図示せず)を制御し、ワーク10cの外径が大きいほど、距離L2が小さくなるように第2の砥石202の位置を調整することで、距離L2の補正を行う。例えば、ワーク10cの外径が、所定の基準値よりも0.01mm大きい場合には、距離L2を0.005mm小さくすれば、次回以降の研削加工において、ワーク10cの外径を基準値に近づけることができる。
【0049】
このステップS112では、例えば、支持ピン205a(
図4参照)に支持されているワーク10cの外径が測定されると、この支持ピン205aが、次回、第2の加工位置220に移動した際に、第2の砥石202と第2の加工位置220との間の距離L2が、その測定結果に応じて補正される。また、同様に、支持ピン205bに支持されているワーク10cの外径が測定されると、この支持ピン205bが、次回、第2の加工位置220に移動した際に、第2の砥石202と第2の加工位置220との間の距離L2が、その測定結果に応じて補正される。つまり、本実施形態では、第2の加工位置220に移動した支持ピン105毎に、第2の砥石202と第2の加工位置220との間の距離L2が個別に補正される。
【0050】
第2加工装置200による研削加工が終了すると、ロボット等によって支持ピン205からワーク10cが取り外される。支持ピン205から取り外されたワーク10cは、焼成されて絶縁碍子10が完成する(
図2のステップS114)。絶縁碍子10が完成すると、完成した絶縁碍子10に中心電極20や端子金具40が組み付けられる。そして、その絶縁碍子10と他の部品(主体金具50やガスケット5等)とが組み立てられることで、スパークプラグ1が完成する(ステップS116)。
【0051】
以上で説明した本実施形態のスパークプラグ1の製造方法では、第1加工装置100および第2加工装置200のいずれにおいても、回転体101,201の周縁部に設けられた複数の支持ピン105,205にワーク(加工前の絶縁碍子10)が順次供給されて、砥石102,202によりワークが次々に研削加工される。そのため、絶縁碍子10の製造効率を向上させることができる。
【0052】
また、第1加工装置100および第2加工装置200は、砥石102,202と加工位置120,220との間の距離を、制御装置108,208によって、支持ピン105,205毎に補正する。そのため、支持ピン105,205と回転体101,201の中心軸C1,C3との間隔や、支持ピン105,205同士の間隔にバラツキがあったとしても、支持ピン105,205の位置によらずに、ワークを精度良く加工することができる。しかも、第1加工装置100および第2加工装置200は、砥石102,202と加工位置120,220との間の距離を、研削後の実際のワークの外径の測定結果に基づき補正するため、ワークの加工精度を一層向上させることができる。
【0053】
また、第1加工装置100および第2加工装置200は、砥石102,202を移動させることで砥石102,202と加工位置120,220との間の距離を補正するので、回転体101,201を移動させる必要がない。そのため、回転体101,201に対するワークの供給を安定して行うことができる。
【0054】
また、第1加工装置100は、第1の回転体101が回転することによってワークが移動する円軌道の内側から第1の砥石102をワークに接触させる。そのため、複数のワークに対して同時に第1の砥石102を接触させることができる。更に、第1加工装置100は、円軌道に沿った連続的な位置(第1の加工位置120)において、複数のワークを同時に研削するので、絶縁碍子10の製造効率を格段に向上させることができる。
【0055】
また、第1加工装置100は、押さえベルト103を用いて、円軌道の外側から複数のワークを同時に第1の砥石102に押さえる。そのため、ワークを連続して少しずつ研削することができるので、絶縁碍子10をより効率よく製造することができる。
【0056】
また、第2加工装置200は、第2の回転体201が回転することによってワークが移動する円軌道の外側から第2の砥石202をワークに接触させる。そのため、1つのワークに対して第2の砥石202を確実に接触させることができる。そのため、絶縁碍子10の加工精度を向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、第1加工装置100によって加工されたワークを、更に第2加工装置200によって加工する。そのため、第1加工装置100によって粗く加工したワークに対して、第2加工装置200により仕上げの加工を施すことができる。よって、絶縁碍子10を精度良く加工することができる。
【0058】
C.変形例:
C1.変形例1:
上記実施形態では、研削加工時において、押さえベルト103や押さえローラ203を駆動することでワークを回転させている。これに対して、支持ピン105,205を回転させることで、ワークを回転させてもよい。また、上記実施形態では、砥石102,202を常時回転させているが、ワークを回転させた後に砥石102,202を回転させてもよい。その他、ワークと砥石102,202とを接触させた後に砥石102,202を回転させてもよい。
【0059】
C2.変形例2:
上記実施形態では、砥石102,202の位置を移動させることで、加工位置120,220と砥石102,202との間の距離L1,L2を補正している。これに対して、回転体101,201の位置を移動させることで、距離L1,L2の補正を行ってもよい。また、砥石102,202と回転体101,201の両方を移動させることで、距離L1,L2の補正を行ってもよい。
【0060】
C3.変形例3:
上記実施形態では、
図2のステップS106およびステップS112において、加工位置120,220と砥石102,202との間の距離L1,L2を補正している。しかし、これらの距離のうち、少なくとも一方の補正は省略することが可能である。
【0061】
C4.変形例4:
上記実施形態では、第1加工装置100および第2加工装置200を用いてワークの研削加工を行っている。これに対して、第1加工装置100のみを用いて研削加工を行ってもよい。また、第2加工装置200のみを用いて研削加工を行ってもよい。その他、複数の第1加工装置100を用いて研削加工を行ってもよいし、複数の第2加工装置200を用いて研削加工を行ってもよい。また、1以上の第1加工装置100と1以上の第2加工装置200とを組み合わせてワークの研削加工を行ってもよい。
【0062】
C5.変形例5:
上記実施形態では、第1加工装置100は、ワーク10aが移動する円軌道の内側から第1の砥石102をワーク10aに接触させて研削している。これに対して、第1加工装置100は、第2加工装置100と同様に、ワーク10aが移動する円軌道の外側から第1の砥石102をワーク10aに接触させて研削してもよい。つまり、第1加工装置100を、第2加工装置200と同様の構成にすることも可能である。
【0063】
C6.変形例6:
図5は、第1加工装置の変形例を示す図である。上記実施形態の第1加工装置100では、
図3に示したように、押さえベルト103を用いることにより、ワーク10aが移動する円軌道の外側から複数のワーク10aを第1の砥石102側に向けて同時に押さえている。これに対して、
図5に示した第1加工装置100aは、押さえベルト103ではなく、複数の押さえローラ303を備えている。第1加工装置100aは、これらの押さえローラ303を用いることにより、ワーク10aが移動する円軌道の外側から複数のワーク10aを第1の砥石102側に向けて同時に押さえる。第1加工装置100aは、各押さえローラ303を回転させることにより、上記実施形態と同様に、各ワーク10aを支持ピン105を中心に回転させることが可能である。押さえローラ303は、1つのワーク10aに対して1つ用意されていても良いし、2つ以上用意されていてもよい。つまり、1つの押さえローラ303によって、1つのワーク10aを第1の砥石102側に向けて押さえてもよいし、2つ以上の押さえローラを同時に1つのワークに押し当てることで、1つのワーク10aを第1の砥石102側に向けて押さえてもよい。なお、ワーク10aを第1の砥石102側に向けて押さえることが可能であれば、ワーク10aを第1の砥石102側に向けて押さえる装置として、押さえベルト103や押さえローラ以外の装置を用いることも可能である。
【0064】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。