(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926719
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】消火ガス噴射装置
(51)【国際特許分類】
A62C 31/02 20060101AFI20160516BHJP
B05B 1/26 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
A62C31/02
B05B1/26 Z
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-255287(P2013-255287)
(22)【出願日】2013年12月10日
(62)【分割の表示】特願2009-282302(P2009-282302)の分割
【原出願日】2009年12月11日
(65)【公開番号】特開2014-79633(P2014-79633A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2013年12月10日
【審判番号】不服2015-9921(P2015-9921/J1)
【審判請求日】2015年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010342
【氏名又は名称】エア・ウォーター防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀晃
(72)【発明者】
【氏名】溝口 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】四方 厚
【合議体】
【審判長】
伊藤 元人
【審判官】
加藤 友也
【審判官】
梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
実開平3−88561(JP,U)
【文献】
実開平4−45554(JP,U)
【文献】
特開2007−167557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C31/02
B05B1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火ガス供給源から高圧の消火ガスが供給される導管の消火対象空間に臨んで開口する取付け部に設けられる消火ガス噴射装置であって、
(a)取付け部に接続されるノズル部材であって、
取付け部の軸線と共通な一直線上にノズル部材の軸線を有する筒状であり、
前記導管から供給される前記高圧の消火ガスを噴出するノズル孔であって、取付け部の軸線に直交する軸線を有する複数のノズル孔が設けられるノズル部材と、
(b)案内部材であって、
(b1)取付け部の軸線と共通な前記一直線上に軸線を有する直円筒状の周壁であって、
ノズル部材よりも周壁の軸線方向一方に突出して延びる遊端部を有し、かつノズル孔よりも周壁の軸線方向他方に延びる基端部を有する周壁と、
(b2)中央に取付け部が挿通され、周壁の基端部を塞いで設けられ、取付け部の軸線に垂直な円板状端板とを有する案内部材とを含み、
(c)取付け部における周壁の前記軸線方向一方寄りの先端部は、端板よりも周壁の前記軸線方向一方に突出して延び、かつ、周壁の遊端部よりも軸線方向他方にあり、
この先端部の突出部分は、ノズル部材内に嵌り込み、
ノズル部材は、周壁の前記軸線方向一方側で円板状部材で塞がれ、
(d)ノズル部材の外周面と、案内部材の周壁の内周面と端板とによって規定されるガス案内面によって、各ノズル孔から噴出する消火ガスを周壁の前記軸線方向一方へ導き、かつその導かれる方向とは反対方向への噴射反力を低減させることを特徴とする消火ガス噴射装置。
【請求項2】
端板は、取付け部に固定されることを特徴とする請求項1に記載の消火ガス噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災発生時に建物の消火対象空間内にN
2ガスまたはハロゲン化物ガスなどの消火ガスを消火剤として放出することによって消火するガス消火設備の消火ガス噴射装置に関し、さらに詳しくは消火ガスを噴射した際に発生する消火ガス導管への反力を低減することができる消火ガス噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、消火剤としてCO
2ガスおよびN
2ガスおよびハロゲン化物などの消火ガスを消火対象区画内に放出して消火を行うガス消火設備が各種の建物に装備されている。
【0003】
図9は、従来技術の消火ガス噴射装置を備える消火ガス噴射部1を示す斜視図である。消火ガス噴射部1は、消火ガス供給源15から火災発生時に供給される高圧の消火ガスを噴射する消火ガス噴射装置としての噴射ヘッド3と、噴射ヘッド3が接続される導管4とを備える。
【0004】
導管4は、消火ガス供給源15に接続される主管5と、主管5に介在される分岐管6と、分岐管6によって主管5からの消火ガスが導かれ、前記噴射ヘッド3が接続される枝管7とを有する。主管5は、建物の躯体またはその躯体に固定された基台8にUボルトなどの締結具10によって締結された状態で設置されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
図10は、噴射ヘッド3の内部構造を示す拡大断面図である。前記噴射ヘッド3は、枝管7の消火対象空間11に臨んで開口する取付け部12と、取付け部12に螺着され、枝管7から供給される高圧の消火ガスを水平に噴射するノズル孔13を有するノズル部材14とを含む。
【0006】
図11Aは消火対象空間11内に噴射された消火ガスの流動状態を示す側面図であり、
図11Bは消火対象空間11内に噴射された消火ガスの流動状態を示す平面図である。前記消火対象空間11は、建物の4つの壁16a,16b,16c,16d、天井17および床18によって規定され、各壁16a〜16dのうちの1つである壁16cには、前記噴射ヘッド3がノズル孔13を消火対象空間11内に向けて設置される。
【0007】
火災の発生が図示しない火災検知装置によって検知されると、火災検知装置から消火ガス供給源15に開弁指令信号が出力され、消火ガス供給源15に備えられる開閉弁が閉弁状態から開弁状態に切換えられ、消火ガス充填容器内の消火ガスが加圧ガス充填容器からの加圧ガスのガス圧力によって導管4へ供給され、前記噴射ヘッド3から噴射される。
【0008】
噴射ヘッド3から噴射された消火ガスは、
図11Aの矢符A1で示すように、対向する壁16aに当接して消火対象空間11内を上層空間から下層空間に向かって流動するとともに、
図11Bの矢符A2で示すように、前記対向する壁16aによって左右両側へ分散し、各壁16b,16dに沿って前記噴射ヘッド3が設けられる壁16cに向かって流動して、消火対象空間11内が消火ガスによって満たされた状態にして消火することができる。
【0009】
このように消火ガスを噴射させる噴射ヘッド3は、消火ガスを大流量で噴射するため、消火ガスの噴射方向A3とは反対方向に大きな噴射反力Rが発生する。
【0010】
本件発明者は、従来技術の消火ガス噴射装置によって消火ガスを噴射したときの噴射流量に対する噴射反力Rを確認するため、
図10に示す噴射ヘッド3の噴射反力Rを、消火ガスとしてN
2ガスが20.3m
3/本充填された容器1本、5本、10本と変化させて測定試験を行った。その測定結果を表1に示す。
【0011】
【表1】
【0012】
図12は他の従来技術の噴射ヘッド3aの内部構造を示す拡大断面図であり、
図13Aは
図12に示す噴射ヘッド3aによって噴射された消火ガスの消火対象空間11内における流動状態を示す側面図であり、
図13Bは噴射ヘッド3aから消火対象空間11内に噴射された消火ガスの流動状態を示す平面図である。なお、
図9、
図10、
図11Aおよび
図11Bの従来技術と対応する部分には、同一の参照符を付す。噴射ヘッド3aは、その中心軸線に垂直な軸線上に複数のノズル孔13aが周方向に等間隔に形成されるノズル部材14aを有し、天井17の前記中心軸線を鉛直にして設置される。
【0013】
このような噴射ヘッド3aによって、各ノズル孔13aから消火ガスが消火対象空間11内で水平に噴射されると、消火ガスは、
図13Aの矢符A4で示すように、上層空間の中央部から天井17に沿って案内された後、各壁16a,16cによって下方へ向かって流動し、
図13Bの矢符A5で示すように、上層空間ではその中央部から放射状に分散した流れを形成する。
【0014】
このように、この従来技術の噴射ヘッド3aでは、各ノズル孔13aから枝管7の取付け部12の軸線に対してほぼ垂直な方向に消火ガスが噴射されるので、噴射反力Rは発生しないが、噴射ヘッド3aの直下の領域へ消火ガスを直接噴射することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平8−173565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、消火ガスを噴射ノズルの軸線に沿って噴射することができるとともに、消火ガスの噴射による噴射反力を低減することができる消火ガス噴射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、
消火ガス供給源から高圧の消火ガスが供給される導管の消火対象空間に臨んで開口する取付け部に設けられる消火ガス噴射装置であって、
(a)取付け部に接続されるノズル部材であって、
取付け部の軸線と共通な一直線上にノズル部材の軸線を有
する筒状であり、
前記導管から供給される前記高圧の消火ガスを噴出するノズル孔であって、取付け部の軸線に直交する軸線を有する複数のノズル孔が設けられるノズル部材と、
(b)案内部材であって、
(b1)取付け部の軸線と共通な前記一直線上に軸線を有する直円筒状の周壁であって、
ノズル部材よりも周壁の軸線方向一方に突出して延びる遊端部を有し、かつノズル孔よりも周壁の軸線方向他方に延びる基端部を有する周壁と、
(b2)中央に取付け部が挿通され、周壁の基端部を塞いで設けられ、取付け部の軸線に垂直な円板状端板
とを有する案内部材とを含み、
(c)取付け部における周壁の前記軸線方向一方寄りの先端部は、端板よりも周壁の前記軸線方向一方に突出して延び、かつ、周壁の遊端部よりも軸線方向他方にあり、
この先端部の突出部分は、ノズル部材内に嵌り込み、
ノズル部材は、周壁の前記軸線方向一方側で
円板状部材で塞がれ、
(d)ノズル部材の外周面
と、案内部材の周壁の内周面と端板とによって規定されるガス案内
面によって、各ノズル孔から噴出する消火ガスを周壁の前記軸線方向一方へ導き、かつその導かれる方向とは反対方向への噴射反力を低減させることを特徴とする消火ガス噴射装置である。
【0018】
本発明は、
端板は、取付け部に固定されることを特徴とする。
【0019】
【0020】
【0021】
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ノズル部材のノズル孔から噴射された消火ガスは、案内部材の周壁および端板のガス案内面によって案内されるので、このガス案内面にはノズル孔から噴射された消火ガスが当接し、ノズル孔から噴射される消火ガスの噴射方向に対する噴射反力が低減される。また、ガス案内面は、ノズル孔にノズル部材の外部側から対向するように周壁の内周部から端板にわたって形成されているので、ノズル部材のノズル孔の形成される位置および方向にかかわらず、ノズル孔から噴射された消火ガスをガス案内面によってノズル部材へ軸線に沿って導くことができ、これによって消火ガスを噴射ヘッドの軸線に沿って噴射し、噴射ヘッドの対向領域へも消火ガスを短時間で供給して消火対象空間全体に充満させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態の消火ガス噴射装置30を示す簡略化した断面図である。
【
図2A】
図1に示す消火ガス噴射装置30が導管32に取付けられた概略の状態を図解の便宜のために簡略化して示す斜視図である。
【
図2B】
図2Aに示す枝管45を立ち下がり管として主管43に分岐管44によって接続した概略の状態を図解の便宜のために簡略化して示す斜視図である。
【
図3】本発明の
参考例の消火ガス噴射装置30aを示す簡略化した断面図である。
【
図4】本発明の他の
参考例の消火ガス噴射装置30bを示す簡略化した断面図である。
【
図5】本発明のさらに他の
参考例の消火ガス噴射装置30cを示す簡略化した断面図である。
【
図6】本発明の参考例の消火ガス噴射装置30dを示す簡略化した断面図である。
【
図7】本発明の他の参考例の案内部材64を備える消火ガス噴射装置を示す簡略化した断面図である。
【
図8】本発明のさらに他の
参考例の案内部材66を備える消火ガス噴射装置を示す簡略化した断面図である。
【
図9】従来技術の消火ガス噴射装置を備える消火ガス噴射部1を示す斜視図である。
【
図10】噴射ヘッド3の内部構造を示す拡大断面図である。
【
図11A】消火対象空間11内に噴射された消火ガスの流動状態を示す側面図である。
【
図11B】消火対象空間11内に噴射された消火ガスの流動状態を示す平面図である。
【
図12】他の従来技術の噴射ヘッド3aの内部構造を示す拡大断面図である。
【
図13A】
図12に示す噴射ヘッド3aによって噴射された消火ガスの消火対象空間11内における流動状態を示す側面図である。
【
図13B】噴射ヘッド3aから消火対象空間11内に噴射された消火ガスの流動状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施形態の消火ガス噴射装置30を示す簡略化した断面図である。本実施形態の消火ガス噴射装置30は、消火ガス供給源31から高圧の消火ガスが供給される導管32の消火対象区画とも呼ばれる消火対象空間33に臨んで開口する取付け部34に設けられて接続され、前記導管32から供給される高圧の消火ガスを噴出する複数のノズル孔35を有するノズル部材36と、ノズル部材36の各ノズル孔35にノズル部材36の外方側から対向するガス案内面37が内周部に形成される周壁38を有する案内部材39とを含む。
【0025】
ノズル部材36の各ノズル孔35は、取付け部34の軸線L1に直交する軸線L2上に、前記取付け部34の軸線L1に関して周方向に等間隔をあけて複数(本実施形態では、たとえば4)形成される。案内部材39は、前述した周壁38と、周壁38の軸線方向一端部から半径方向内方に形成される端板41とを有する。端板41はたとえば円板状であって、その中央には前記取付け部34が挿通する挿通孔42が形成される。挿通孔42には取付け部34が挿通し、端板41と挿通孔42に臨む内周部が取付け部34の外周部に、たとえば溶接によって固定される。これらの端板41と取付け部34とは、溶接に限るものではなく、たとえばナットなどのねじ部材によって連結されてもよい。取付け部34の先端部は、端板41の挿通孔を挿通して周壁38によって外囲される空間内に突出し、この突出部分には前記ノズル部材36が装着される。ノズル部材36と取付け部34の突出部分との接合は、たとえば取付け部34の先端部に外ねじを刻設し、ノズル部材36の内周部に内ねじを刻設して螺着するようにしてもよい。
構成をさらに述べる。
図1に明らかに示されるように、ノズル部材36は、取付け部34の軸線と共通な一直線上にノズル部材36の軸線を有
する筒状である。
案内部材39の周壁38は、取付け部34の軸線と共通な前記一直線上に軸線を有する直円筒状であって、ノズル部材36よりも周壁38の軸線方向一方(
図1の左方)に突出して延びる遊端部を有し、かつノズル孔35よりも周壁38の軸線方向他方(
図1の右方)に延びる基端部を有する。端板41は、その中央に取付け部34が挿通され、周壁38の軸線方向他方(
図1の右方)である基端部を塞いで設けられ、取付け部34の軸線に垂直な円板状である。取付け部34における周壁38の前記軸線方向一方(
図1の左方)寄りの先端部は、端板41よりも周壁38の前記軸線方向一方(
図1の左方)に突出して延びる突出部分を有し、かつ、周壁38の遊端部よりも軸線方向他方(
図1の右方)にある。この取付け部34の前記突出部分は、ノズル部材36内に嵌り込む。ノズル部材36は、周壁38の前記軸線方向一方(
図1の左方)側
で円板状部材で塞がれている。案内部材39は、ノズル部材34の外周面と周壁38の内周面と端板41とによって規定されるガス案内面によって、各ノズル孔35から噴出する消火ガスを周壁38の前記軸線方向一方(
図1の左方)へ導き、かつその導かれる方向とは反対方向への噴射反力を低減させる。
【0026】
図2Aは、
図1に示す消火ガス噴射装置30が導管32に取付けられた状態を示す斜視図である。導管32は、消火ガス供給源31に接続される主管43と、主管43に介在される分岐管44と、分岐管44によって主管43からの消火ガスが導かれ、前記ノズル部材36が接続される枝管45とを有する。枝管45は,分岐管44によって主管43から上方に立ち上がって接続され、その上端部は直角に屈曲して取付け部34を形成する。
【0027】
前記消火ガスは、N
2ガスまたはハロゲン化物ガスなどが用いられ、火災発生時に消火対象空間33内に消火ガスを噴射させ、消火を行うことができる。
【0028】
本発明の実施の他の形態として、
図2Bに示すように、枝管45は、分岐管44によって主管43から立ち下がるように接続してもよい。この場合にも、枝管45の取付け部34にノズル部材36と周壁38とが設けられる。なお、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。
【0029】
本件発明者は、本実施形態の消火ガス噴射装置30の噴射反力Rが低減されることを確認するため、噴射反力Rの測定試験を行った。
【0030】
(試験条件)
案内部材39の内径D1=φ128mm
ノズル部材36の外径D2=φ45mm
ノズル孔35の内径d=φ5.5mm
ノズル孔35の数n=4
【0031】
このような噴射反力Rを測定した結果、
図10に示す従来の噴射ヘッド3に比べて噴射
反力Rが約1/4に低減することが確認された。
【0032】
図3は、本発明の
参考例の消火ガス噴射装置30aを示す簡略化した断面図である。なお、前述の実施の形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本
参考例の消火ガス噴射装置30aは、ノズル部材36から同一軸線上に延びる連結片49によって連結された円板状の受圧板50を有する。この受圧板50は、ノズル側ガス流案内部である外周部が周壁38とノズル部材36との間の空間に消火ガスの流れ方向下流側から臨む。受圧板50は、その外径D3は、ノズル部材36の外径D2よりも大きく、かつ案内部材39の内径D1よりも小さく(D2<D3<D1)に選ばれ、好ましくは(D1+D2)/2に選ばれる。受圧板50の外周部51と案内部材39の開口周縁部52とは、噴射方向に先細状の円錐台面によって規定される開口を形成し、ノズル孔35から噴射された消火ガスを前記開口を介して円錐台状に噴出させ、前述の
図12に示す従来の噴射ヘッド3aに比べて消火ガス噴射装置30aが対向する領域の消火ガスの到達時間を短縮して消火対象空間全体に消火ガスを短時間で充満させることができる。
構成をさらに述べる。
図3に明らかに示されるように、連結片49は、ノズル部材36に、その軸線上で、周壁38の軸線方向一方(
図3の左方)に延びて取付けられる。受圧板50は、連結片49に連結され、周壁38よりもその周壁38の軸線方向一方(
図3の左方)に突出して配置され、取付け部34の軸線と周壁38の軸線とに共通な一直線に垂直な円板状に形成され、周壁38とノズル部材36との間の空間に消火ガスの流れ方向下流側から臨むノズル側ガス流案内部を形成する。
【0033】
本発明の他の
参考例では、前記受圧板50の外径D3が案内部材39の外径D1よりも大きく(D2<D1<D3)選ばれてもよい。
【0034】
本件発明者は、本
参考例の消火ガス噴射装置30aの噴射反力を確認するため、枝管45の背後に
図3の仮想線53で示すようにロードセルを設けて噴射反力Rの測定試験を行った。
【0035】
(測定条件)
案内部材39の内径D1=φ128mm
ノズル部材36の外径D2=φ45mm
受圧板50の外径D3=φ115mm
ノズル孔35の内径d=φ5.5mm
ノズル孔35の数n=4
【0036】
このような消火ガス噴射装置30aの噴射反力Rの測定試験を行った結果、前述の実施形態の消火ガス噴射装置30に比べてさらに噴射反力Rを低減できることが確認された。
【0037】
図4は、本発明のさらに他の
参考例の消火ガス噴射装置30bを示す簡略化した断面図である。なお、前述の各実施形態
および参考例と対応する部分には、同一の参照符を付す。本
参考例の消火ガス噴射装置30bにおいて、注目すべきは、案内部材39の周壁38の内周面および端板41の内面に吸音材56が貼着されることである。このように案内部材39の周壁38の内周面および端板41の内面に吸音材56を貼着することによって、各ノズル孔35から消火ガスが噴射されることによって発生した大きな噴射音を吸収して、消音効果を達成することができる。
【0038】
図5は、本発明のさらに他の
参考例の消火ガス噴射装置30cを示す簡略化した断面図である。なお、前述の各実施形態
および参考例と対応する部分には、同一の参照符を付す。本
参考例の消火ガス噴射装置30cは、建物の壁57に形成された直円柱状の貫通孔58に先端部が差込まれて固定される有底直円筒状の案内部材59を含み、その他の構成は前述の
図3および
図4の各
参考例と同様である。
【0039】
本
参考例の案内部材59の周壁38は、軸線方向に長く形成され、たとえば
図3および
図4に示す案内部材39の周壁38の軸線方向の長さL10の約2〜10倍の長さL11=2L〜10Lに選ばれる。案内部材59の周壁38の内周面および端板41の内面には、吸音手段として前述と同様な吸音材61が貼着される。
【0040】
このような案内部材59を用いることによって、各ノズル孔35で発生した噴射音が案内部材59の消火対象空間33に臨んで開口する開口端に至るまでの間に減衰し、大きな噴射音が消火対象空間33内に放出されることを抑制することができる。
【0041】
図6は、本発明の参考例の消火ガス噴射装置30dを示す簡略化した断面図である。なお、前述の各実施形態
および参考例と対応する部分には、同一の参照符を付す。本参考例の消火ガス噴射装置30dは、球面の一部を成すガス案内面37を有する案内部材60を含み、その他の構成は前述の
図1の実施形態
および参考例と同様である。
【0042】
本
参考例の案内部材60を用いることによって、各ノズル孔35から噴射された消火ガスを円滑に消火対象空間33に向けて導き、案内部材60によるガス流の流路損失を少なくして、噴射反力Rを低減することができる。
【0043】
本件発明者は、本
参考例の消火ガス噴射装置30dの噴射反力Rを確認するため、
図6に仮想線53で示すように、枝管45の背後にロードセルを設置し、噴射反力Rの測定試験を行った。
【0044】
(測定条件)
案内部材60の開口部内径D1=φ146mm
ノズル部材36の外径D2=φ45mm
ノズル孔35の内径d=φ5.4mm
ノズル孔35の数n=4
ガス案内面の曲率半径R1=73mm
【0045】
このような消火ガス噴射装置30dの噴射反力Rを測定した結果、前述の
図10の従来技術に比べて、噴射反力Rを約1/2に低減できることを確認した。
【0046】
本発明の他の参考例として、
図7に示すように、周壁38の端板41とは反対側の軸線方向一端部に連なって、半径方向内方に延びる円環状の受圧部63が周壁側ガス流案内部として設けられる案内部材64を、前記案内部材39,59,60に代えて用いるようにしてもよい。
【0047】
受圧部63は、周壁38とノズル部材36との間の空間に消火ガスの流れ方向下流側から臨む。このような案内部材64によって、各ノズル孔35から噴射された消火ガスの圧力を受圧部63によって受圧し、噴射反力Rから相殺して低減することができる。
【0048】
本発明のさらに他の
参考例として、
図8に示すように、周壁38の端板41とは反対側の軸線方向一端部に連なって、前記端板41から軸線方向に離反するにつれて外径が小さくなる円錐台状の受圧部65が周壁側ガス流案内部として設けられる案内部材66を、前記案内部材39,59,60,64に代えて用いるようにしてもよい。
【0049】
受圧部65は、周壁38とノズル部材36との間の空間に消火ガスの流れ方向下流側から臨む。このような案内部材64によってもまた、各ノズル孔35から噴射された消火ガスの圧力を受圧部65によって受圧し、噴射反力Rから相殺して低減することができる。
【0050】
本発明は、次の実施の形態が可能である。
(1)消火ガス供給源から高圧の消火ガスが供給される導管の消火対象空間に臨んで開口する取付け部に設けられる消火ガス噴射装置であって、取付け部に接続され、前記導管から供給される前記高圧の消火ガスを噴出するノズル孔を有するノズル部材と、予め定める固定位置に固定される筒状の案内部材であって、内周部に、ノズル部材のノズル孔にノズル部材の外部側から対向するガス案内面が形成される案内部材とを含むことを特徴とする消火ガス噴射装置。
【0051】
ノズル部材のノズル孔から噴射された消火ガスは、案内部材の周壁の内周部に形成されるガス案内面によって案内されるので、このガス案内面にはノズル孔から噴射された消火ガスが当接し、ノズル孔から噴射される消火ガスの噴射方向に対するガス案内面の角度に応じて噴射反力が低減される。また、ガス案内面はノズル孔にノズル部材の外部側から対向するように周壁の内周部に形成されているので、ノズル部材のノズル孔の形成される位置および方向にかかわらず、ノズル孔から噴射された消火ガスをガス案内面によってノズル部材の軸線に沿って導くことができ、これによって消火ガスを噴射ヘッドの軸線に沿って噴射し、噴射ヘッドの対向領域へも消火ガスを短時間で供給して消火対象空間全体に充満させることができる。
【符号の説明】
【0052】
30,30a,30b,30c,30d 消火ガス噴射装置
31 消火ガス供給源
32 導管
33 消火対象空間
34 取付け部
35 ノズル孔
36 ノズル部材
37 ガス案内面
38 周壁
39,59,60,64,66 案内部材
41 端板
49 連結片
50 受圧板
56 吸音材