【0008】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本実施形態のドライアイススノー噴射装置は、ドライアイススノーを生成するための図示しない炭酸ガス供給源と、ドライアイススノーを推進させるための整流ガスを供給するための図示しない整流ガス供給源と、上記炭酸ガス供給源および整流ガス供給源と連通してドライアイススノーを噴射するドライアイススノー噴射ノズルとを備えて構成されている。
上記炭酸ガス供給源は、具体的には液化炭酸ガスボンベ等を用いることができる。上記整流ガスとしては、例えば窒素ガスを使用することができ、整流ガス供給源としては、液化窒素タンクを使用することができる。
図1は本発明が適用されたドライアイススノー噴射ノズルの一実施形態を示す断面図、
図2は噴射口側から見た図である。
このドライアイススノー噴射ノズルは大略円筒状を呈しており、先端中央に上記炭酸ガス源と連通してドライアイススノーを噴射するドライアイススノー噴射口1が開口している。また、上記整流ガス供給源と連通するとともに、上記ドライアイススノー噴射口1を挟んで傾斜して対峙する第1の整流ガス噴出口3が形成されている。
より詳しく説明すると、上記ドライアイススノー噴射ノズルは、ノズル本体6と、ドライアイススノー流通管5とを備えて構成されている。上記ドライアイススノー流通管5は、具体的には樹脂チューブやステンレスチューブを使用することができる。
上記ドライアイススノー噴射口1は、ドライアイススノーが流通するドライアイススノー流通管5の先端開口として形成されている。上記ドライアイススノー流通管5は、中空で筒状のノズル本体6の内部通路8に同軸状に挿通されて配置されている。これにより、ドライアイススノー流通管5が挿通されたノズル本体6の内部通路8は、第2の整流ガスが流通する第2の流通路12に形成されている。また、上記ドライアイススノー噴射口1の周囲には、ドライアイススノー噴射口1の詰まりを防止するための整流ガスを噴出する第2の整流ガス噴出口4が環状に形成される。ドライアイススノー噴射口1の詰まりをより防止するため、あるいはノズルの結露を防止するために、この第2の整流ガスを図示しないガスヒータ等の加温手段によって加温してもよい。
また、上記ノズル本体6の内部通路8は、この例では、先端の開口径が小さくなるように設定されており、上記第2の整流ガス噴出口4の付近で整流ガスの流通する面積を絞り込んで、整流ガスの流速を速くするようになっている。なお、内部通路8の先端開口径を小さく絞りこまなくてもよい。また、ドライアイススノー流通管5は、ノズル本体6の先端面すなわち第2の整流ガス噴出口4の開口部よりも先端側に突出している。これにより、ドライアイススノー噴射口1が、上記第2の整流ガス噴出口4よりも突出して配置されている。
上記ノズル本体6には、第1の整流ガスを流通させる第1の流通路11が形成される。上記ノズル本体6の先端面には、ドライアイススノー噴射口1を挟む位置に2つの突出部13が形成され、両突出部13の内側面が、ドライアイススノー噴射口1に向きながら噴射方向に向かって広がる傾斜面14に形成されている。この傾斜面14に、第1の流通路11に連通する第1の整流ガス噴出口3が開口している。これにより、第1の整流ガス噴出口3は、ドライアイススノー噴射口1を挟んで、ドライアイススノー噴射口1に向かうとともに噴射方向にも向くよう傾斜して対峙している。上記第1の整流ガス噴出口3から噴出される整流ガスは、ドライアイススノー噴射口1および噴射方向に向かって斜めに噴出される。被洗浄物が冷えることによる結露を防止するために、この第1の整流ガスを図示しないガスヒータ等の加温手段によって加温してもよい。
上記傾斜面14がドライアイススノーの噴出方向となす角度θは、20°≦θ≦45°程度が好ましい。また、第1の整流ガス噴出口3の形状としては、好ましくは長穴形状或いは円形状が良い。
そして、上述したように、ドライアイススノー流通管5がノズル本体6の先端面よりも突出していることにより、ドライアイススノー噴射口1は、対峙する第1の整流ガス噴出口3から噴出される整流ガスの合流点または合流点より上流側に配置されている。
本実施形態のドライアイススノー噴射ノズルは、ドライアイススノー噴射口1と、上記ドライアイススノー噴射口1を挟んで傾斜して対峙する第1の整流ガス噴出口3とを備えている。
このため、ドライアイススノー噴射口1から噴射されたドライアイススノーは、対峙する第1の整流ガス噴出口3から噴出された整流ガスの作用により扁平に広がり、被洗浄物に衝突する。このように、噴射されたドライアイススノーを整流ガスの作用で扁平にするため、従来のようなドライアイススノーがノズル内面にあたることによるロスやパーティクルの発生がなく、炭酸ガスのロスや洗浄不良といった事態の発生を防止できる。このように、炭酸ガスの消費ロスを抑えながら効率的で品質のよい洗浄を実現することができる。
また、上記ドライアイススノー噴射口1が、対峙する第1の整流ガス噴出口3から噴出される整流ガスの合流点または合流点より上流側に配置されているため、
ドライアイススノーは幅広く均一に噴射される。すなわち、ドライアイススノーは固体混じりであるため、噴射方向は噴射直後の噴射流方向に大きく依存するところ、上記構成により、ドライアイススノー噴射口1から噴射された直後のドライアイスの噴射方向が、対峙する第1の整流ガス噴出口1から噴出した整流ガスが合流して形成するガス流に従うことになり、ドライアイススノーは幅広く均一に噴射される。このように、ドライアイススノーは、ドライアイススノー噴射口1から噴射されたときまたはその後に、対峙する第1の整流ガス噴出口3から噴出された整流ガスの作用により扁平に広がる。このため、ドライアイススノーを効果的に扁平化させることができ、小さな整流ガスの噴出圧力でより幅広の被洗浄物に対応した洗浄が可能となる。
また、上記ドライアイススノー噴射口1の周囲には、ドライアイススノー噴射口1の詰まりを防止するための整流ガスを噴出する第2の整流ガス噴出口4が環状に設けられ、ドライアイススノー噴射口1が、上記第2の整流ガス噴出口4よりも突出して配置されているため、
ドライアイススノー噴射口1や流通路でのドライアイススノーの詰まりを抑え、ドライアイススノーを安定して噴射させ続け、洗浄トラブルの発生を未然に防止することができる。また、第1の整流ガス噴出口3から噴出された整流ガスの合流点近傍のガス流が、第2の整流ガス噴出口4自体あるいはそこから噴出された整流ガスによって、第1の整流ガス噴出口3から噴出された整流ガスが乱されることを防止することができる。
特に、ドライアイススノー噴射口1を挟んで対峙する第1の整流ガス噴出口3の傾斜が緩やかな場合には、第2の整流ガス噴出口4自体あるいはそこから噴出された整流ガスによって第1の整流ガス噴出口3から噴出された整流ガスがより顕著に乱れるのを防止する。また、第2の整流ガス噴出口4を突き出したときには、ドライアイススノー噴射口1を挟んで傾斜して対峙する第1の整流ガス噴出口3間を広くする必要があり、第1の整流ガス噴出口3と合流点までの距離が離れてしまい、整流ガスの流速が落ちて幅広く均一なドライアイススノーへの影響が避けられない。このように、ドライアイススノー噴射口1を第2の整流ガス噴出口4よりも突出させて合流点近傍に配置することにより、ガス流の障害とならないようにすることが可能となり、幅広く均一なドライアイススノーの噴射が可能となる。
また、本実施形態では、炭酸ガス消費量が1〜5kg/hとなり、効果的に幅広くドライアイススノー噴射が可能となる。
【実施例1】
【0009】
上記実施形態で説明したドライアイススノー噴射ノズルを用いて洗浄試験を行った。
洗浄対象物としてガラス基板を準備し、油性ペンで付着させたインクをドライアイススノー洗浄で除去し、除去された洗浄幅を測定した。
・試験条件
第1の整流ガス噴出口の傾斜面角度θ:25°
第1の整流ガス噴出口の形状 :φ1.6mm長穴構造
ドライアイススノー流通管外径 :φ1.6mm
第2の整流ガス噴出口の内径 :φ2.8mm
整流ガス供給圧力 :0.45MPaG
液化炭酸ガス供給圧力 :7.0MPaG
洗浄時間 :120sec
図3は、洗浄試験における寸法関係を説明する図である。
第1の整流ガス噴出口3が形成された傾斜面14と噴射方向(この例ではノズルの長手方向でもある)とのなす角度θを25°とした。
第2の整流ガス噴出口4から被洗浄物までの距離を25mmとした。
第2の整流ガス噴出口4は距離X=−3.5mmで固定した。
この洗浄試験では、液化炭酸ガスを4.5kg/hで供給した。
第1の整流ガス噴出口3から噴出させた第1の整流ガスの合流点とドライアイススノー噴射口1との距離X(mm)を変化させて実際にドライアイススノー洗浄を実施し、そのときの洗浄幅(mm)を測定した。上記距離Xは、−Xで合流点より上流、+Xで合流点より下流である。
図4は、上記洗浄試験の結果を示す線図である。
図4からわかるように、距離Xの範囲は、−2.5mm≦X≦0mmが良く、さらに好ましくは−2.0mm≦X≦−0.5mmであった。
【実施例2】
【0010】
実施例1で実施したドライアイススノー噴射ノズルの第2の整流ガス噴出口4をドライアイススノー流通管5とともに突出させて洗浄試験を実施した。
第2の整流ガス噴出口4とドライアイススノー噴射口1の位置はX=0mmで固定した。また、第2の整流ガス噴出口4から被洗浄物までの距離を21.5mmとした。
実施例1と同様に、洗浄対象物としてガラス基板を準備し、油性ペンで付着させたインクをドライアイススノー洗浄で除去し、除去された洗浄幅を測定した。
・試験条件
第1の整流ガス噴出口の傾斜面角度θ:25°
第1の整流ガス噴出口の形状 :φ1.6mm長穴構造
ドライアイススノー流通管外径 :φ1.6mm
第2の整流ガス噴出口の内径 :φ2.8mm
第2の整流ガス噴出口の外径 :φ4.0mm
整流ガス供給圧力 :0.45MPaG
液化炭酸ガス供給圧力 :7.0MPaG
洗浄時間 :120sec
上記洗浄試験を行った結果、洗浄幅は15mmであった。
実施例1では、第2の整流ガス噴出口を距離X=−3.5mmで固定し、ドライアイススノー噴出口1がX=0mmであれば、ドライアイススノー噴射口1が第2の整流ガス噴出口4よりも突出した状態である。このときの洗浄幅が47mmであった。
実施例2では、第2の整流ガス噴出口4をドライアイススノー流通管5とともに突出させたため、ドライアイススノー噴射口1は第2の整流ガス噴出口4よりも突出していない状態である。このときの洗浄幅が15mmであった。
このように、ドライアイススノー噴射口1を第2の整流ガス噴出口4よりも突出させた方がドライアイススノーがより幅広く噴射されていることがわかる。ドライアイススノー流通管5、第2の整流ガス噴出口4の口径が大きくなった場合、第1の整流ガスの乱れはより大きくなる。
なお、上記実施形態では、第1の整流ガス噴出口3を、ドライアイススノー噴射口1を挟んでそれぞれ1つずつ設けるようにしたが、これに限定するものではなく、ドライアイススノー噴射口1を挟んでそれぞれ複数ずつ設けるようにすることもできる。この場合も、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
本発明が対象とするものは、例えば、電子基板、電子部品、センサー素子、フラットパネルディスプレイ基板、タッチパネル、半導体基板、半導体素子、MEMS、光学部品、光学フィルム関連品、印刷関連品、磁気部品、半導体関連品、金属部品、熱交換器、成形金型、ガラス、食品等各種のものをあげることができる。本発明では、これらの対象物に付着した異物、パーティクル、無機物、有機物等、各種の汚染物を除去することができる。また、プラスチック成形部品にできたバリ等を除去することにも適用できる。これらの態様を本発明の洗浄に含める趣旨である。