【実施例】
【0067】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
酸化鉄合成(γ−Fe
2O
3の水溶液合成)
0.1M酢酸カリウム198mLと0.1M酢酸6mLとを混合して緩衝液を調製し、該緩衝液を入れたビーカーに、塩化第二鉄四水和物(FeCl
2・4H
2O)を0.7994g添加し、室温で酸素を吹き込みながら36分間攪拌した。次いで、その溶液を孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製のフィルターを用いて濾過した後、濾別した沈殿を70℃で24時間乾燥してγ−Fe
2O
3粉を得た。このγ−Fe
2O
3をメノウ乳鉢で粉砕し、真空中で200℃、72時間の加熱処理を行った。ここで、酢酸カリウム、酢酸、塩化第二鉄四水和物は、シグマアルドリッチジャパン製のものを用いた。
【0069】
(X線回折(XRD)測定)
リガク社製のX線回折装置UltimaIVを用い、以下の条件で行った。
測定条件:
角度範囲 10〜80度
スキャンスピード 2度/分
サンプリング幅 0.04度
電圧 40kV
電流 40mA
【0070】
図1に作製したγ−Fe
2O
3のXRDパターンを示す。γ−Fe
2O
3のピークのみ認められた。
【0071】
合成例1(γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3のメカノケミカル合成法による酸化物作製)
γ−Fe
2O
3は、合成例1で調製したものを用いた。γ−Al
2O
3は、ストレムケミカル(Strem Chemical)社製のもの(純度97%)を用いた。
【0072】
原料のモル混合割合zを用いて出発原料全体の式が(1−z)Fe
2O
3+zAl
2O
3で示される式においてz=0.64となるように、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3を混合し、フリッチュ(Fritsch)社製の遊星型ボールミルP−6を用いて室温でメカノケミカル合成した。合成条件は以下の通りである。
合成条件:
容器およびボール イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)
回転数 600rpm
ボール径 5φ
ボール数 90個
混合時間 3時間
【0073】
(XRD測定)
角度範囲を20〜80度とした以外は、酸化鉄合成の場合と同様の条件で行った。
【0074】
図2に作製した酸化物のXRDパターンを示す。γ−Fe
2O
3に帰属されるピークは認められなかった。これに対しコランダム型構造で指数付けができるピークが多数現れた。ピークは全て、コランダム型構造のα−Fe
2O
3のX線回折ピーク位置と同じコランダム型構造のα−Al
2O
3のX線回折ピーク位置の間に観察された。これは、この酸化物がα−Fe
2O
3とα−Al
2O
3の固溶体となっているためと考えられる。なお、32度付近のピークは、ミリング媒体としての容器およびボールから混入したZrO
2によるものである。
【0075】
上記XRDパターンから、コランダム型構造(六方格子)における反射指数024(2θ=51.04度)のピーク位置および反射指数116(2θ=56.00度)のピーク位置からa軸およびc軸の格子定数を算出した。a軸およびc軸の格子定数、およびこの格子定数から求めた単位胞体積を表1に示す。さらに、化学式(Fe
1−xAl
x)
2O
3(0<x<1)であらわされる固溶体のa軸およびc軸の格子定数の計算値を、JCPDSに与えられているα−Fe
2O
3及びα−Al
2O
3の格子定数を用いて、ベガード則に基づき、xの関数として与え、これを使って単位胞体積の計算値をxの関数として与えることができる。これが、メカノケミカル合成法により作製した固溶体の、実際の測定で得られた単位胞体積の測定値と等しくなるときのxの値を求めることができる。作製した固溶体(Fe
1−xAl
x)
2O
3(0<x<1)のxの値を算出したところ、x=0.538を得た。この値は、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3の原料のモル混合割合に十分近く、固溶体合成反応が順調に行われたことを示している。
【0076】
合成例2(γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3のメカノケミカル合成法による酸化物作製)
γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3は、合成例1と同じものを用いた。
【0077】
原料のモル混合割合zを用いて出発原料全体の式が(1−z)Fe
2O
3+zAl
2O
3で示される式においてz=0.5となるように、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3を混合し、フリッチュ社製遊星型ボールミルプレミアムラインP−7を用いて室温でメカノケミカル合成した。合成条件は以下の通りである。
合成条件:
容器およびボール Si
3N
4
回転数 800rpm
ボール径 0.5φ
ボール数 80個
混合時間 40分
【0078】
(XRD測定)
角度範囲を20〜80度とした以外は、酸化鉄合成の場合と同様の条件で行った。
【0079】
図3に作製した酸化物のXRDパターンを示す。γ−Fe
2O
3に帰属されるピークは認められなかった。これに対しコランダム型構造で指数付けができるピークが多数現れた。ピークは全て、コランダム型構造のα−Fe
2O
3のX線回折ピーク位置と同じコランダム型構造のα−Al
2O
3のX線回折ピーク位置の間に観察された。これは、この酸化物がα−Fe
2O
3とα−Al
2O
3の固溶体となっているためと考えられる。
【0080】
上記XRDパターンから、コランダム型構造(六方格子)における反射指数024(2θ=50.61度)のピーク位置および反射指数116(2θ=55.44度)のピーク位置からa軸およびc軸の格子定数を算出した。a軸およびc軸の格子定数、およびこの格子定数から求めた単位胞体積を表1に示す。さらに、合成例1と同様にして、作製した固溶体(Fe
1−xAl
x)
2O
3(0<x<1)のxの値を算出したところ、x=0.392を得た。この値は、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3の原料のモル混合割合に十分近く、固溶体合成反応が順調に行われたことを示している。
【0081】
合成例3(γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3のメカノケミカル合成法による酸化物作製)
γ−Fe
2O
3はシグマアルドリッチ社製のもの(純度98.7%)を用いた。γ−Al
2O
3は、合成例1と同じものを用いた。
【0082】
原料のモル混合割合zを用いて出発原料全体の式が(1−z)Fe
2O
3+zAl
2O
3で示される式においてz=0.5となるように、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3を混合し、フリッチュ社製遊星型ボールミルプレミアムラインP−7を用いて室温でメカノケミカル合成した。合成条件は以下の通りである。
合成条件:
容器およびボール Si
3N
4
回転数 800rpm
処理時間 15分
休止時間 2分
サイクル数 2サイクル
ボール径 5φ
ボール数 80個
上記の条件で2回、合計60分間混合した。
【0083】
図4に、作製した酸化物のXRDパターンを示す。γ−Fe
2O
3に帰属されるピークは認められなかった。これに対しコランダム型構造で指数付けができるピークが多数現れた。ピークは全て、コランダム型構造のα−Fe
2O
3のX線回折ピーク位置と同じのコランダム型構造のα−Al
2O
3のX線回折ピーク位置の間に観察された。ピークは全て、コランダム型構造のα−Fe
2O
3のX線回折ピーク位置と同じコランダム型構造のα−Al
2O
3のX線回折ピーク位置の間に観察された。これは、この酸化物がα−Fe
2O
3とα−Al
2O
3の固溶体となっているためと考えられる。
【0084】
上記XRDパターンから、コランダム型構造(六方格子)における反射指数024(2θ=50.82)のピーク位置および反射指数116(2θ=55.60度)のピーク位置からa軸およびc軸の格子定数を算出した。a軸およびc軸の格子定数、およびこの格子定数から求めた単位胞体積を表1に示す。さらに、合成例1と同様にして、作製した固溶体(Fe
1−xAl
x)
2O
3(0<x<1)のxの値を算出したところ、x=0.452を得た。この値は、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3の原料のモル混合割合に十分近く、固溶体合成反応が順調に行われたことを示している。
【0085】
合成例4(γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3のメカノケミカル合成法による酸化物作製)
γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3は、合成例3と同じものを用いた。
【0086】
原料のモル混合割合zを用いて出発原料全体の式が(1−z)Fe
2O
3+zAl
2O
3で示される式においてz=0.5となるように、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3を混合し、フリッチュ社製遊星型ボールミルプレミアムラインP−7を用いて室温でメカノケミカル合成した。合成例3と同じ混合条件で、8回、合計240分間混合した。
【0087】
図5に、作製した酸化物のXRDパターンを示す。γ−Fe
2O
3に帰属されるピークは認められなかった。これに対しコランダム型構造で指数付けができるピークが多数現れた。ピークは全て、コランダム型構造のα−Fe
2O
3のX線回折ピーク位置と同じコランダム型構造のα−Al
2O
3のX線回折ピーク位置の間に観察された。これは、この酸化物がα−Fe
2O
3とα−Al
2O
3の固溶体となっているためと考えられる。
【0088】
上記XRDパターンから、コランダム型構造(六方格子)における反射指数024(2θ=50.86)のピーク位置および反射指数116(2θ=55.64度)のピーク位置からa軸およびc軸の格子定数を算出した。a軸およびc軸の格子定数、およびこの格子定数から求めた単位胞体積を表1に示す。さらに、合成例1と同様にして、作製した固溶体(Fe
1−xAl
x)
2O
3(0<x<1)のxの値を算出したところ、x=0.470を得た。この値は、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3の原料のモル混合割合に十分近く、固溶体合成反応が順調に行われたことを示している。
【0089】
合成例5(γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3のメカノケミカル合成法による酸化物作製)
γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3は、合成例3と同じものを用いた。
【0090】
原料のモル混合割合zを用いて出発原料全体の式が(1−z)Fe
2O
3+zAl
2O
3で示される式においてz=0.333となるように、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3を混合し、フリッチュ社製遊星型ボールミルプレミアムラインP−7を用いて室温でメカノケミカル合成した。合成例3と同じ合成条件で、8回、合計240分間混合した。
【0091】
図6に、作製した酸化物のXRDパターンを示す。γ−Fe
2O
3に帰属されるピークは認められなかった。これに対しコランダム型構造で指数付けができるピークが多数現れた。ピークは全て、コランダム型構造のα−Fe
2O
3のX線回折ピーク位置と同じコランダム型構造のα−Al
2O
3のX線回折ピーク位置の間に観察された。これは、この酸化物がα−Fe
2O
3とα−Al
2O
3の固溶体となっているためと考えられる。
【0092】
上記XRDパターンから、コランダム型構造(六方格子)における反射指数024(2θ=50.36)のピーク位置および反射指数116(2θ=55.08度)のピーク位置からa軸およびc軸の格子定数を算出した。a軸およびc軸の格子定数、およびこの格子定数から求めた単位胞体積を表1に示す。さらに、合成例1と同様にして、作製した固溶体(Fe
1−xAl
x)
2O
3(0<x<1)のxの値を算出したところ、x=0.305を得た。この値は、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3の原料のモル混合割合に十分近く、固溶体合成反応が順調に行われたことを示している。
【0093】
合成例6(γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3のメカノケミカル合成法による酸化物作製)
γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3は、合成例3と同じものを用いた。
【0094】
原料のモル混合割合zを用いて出発原料全体の式が(1−z)Fe
2O
3+zAl
2O
3で示される式においてz=0.667となるように、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3を混合し、フリッチュ社製遊星型ボールミルプレミアムラインP−7を用いて室温でメカノケミカル合成した。合成例3と同じ合成条件で、8回、合計240分間混合した。
【0095】
図7に、作製した酸化物のXRDパターンを示す。γ−Fe
2O
3に帰属されるピークは認められなかった。これに対しコランダム型構造で指数付けができるピークが多数現れた。ピークは全て、コランダム型構造のα−Fe
2O
3のX線回折ピーク位置と同じコランダム型構造のα−Al
2O
3のX線回折ピーク位置の間に観察された。これは、この酸化物がα−Fe
2O
3とα−Al
2O
3の固溶体となっているためと考えられる。
【0096】
上記XRDパターンから、コランダム型構造(六方格子)における反射指数024(2θ=51.43)のピーク位置および反射指数116(2θ=56.24度)のピーク位置からa軸およびc軸の格子定数を算出した。a軸およびc軸の格子定数、およびこの格子定数から求めた単位胞体積を表1に示す。さらに、合成例1と同様にして、作製した固溶体(Fe
1−xAl
x)
2O
3(0<x<1)のxの値を算出したところ、x=0.655を得た。この値は、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3の原料のモル混合割合に十分近く、固溶体合成反応が順調に行われたことを示している。
【0097】
合成例7(γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3のメカノケミカル合成法による酸化物作製)
γ−Fe
2O
3はアルファ社製の純度99%以上のものを用いた。γ−Al
2O
3は、合成例1と同じものを用いた。
【0098】
原料のモル混合割合zを用いて出発原料全体の式が(1−z)Fe
2O
3+zAl
2O
3で示される式においてz=0.4となるように、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3を混合し、フリッチュ(Fritsch)社製遊星型ボールミルプレミアムラインP−7を用いて室温でメカノケミカル合成した。合成例3と同じ合成条件で、2回、合計60分間混合した。
【0099】
図8に、作製した酸化物のXRDパターンを示す。γ−Fe
2O
3に帰属されるピークは認められなかった。これに対しコランダム型構造で指数付けができるピークが多数現れた。ピークは全て、コランダム型構造のα−Fe
2O
3のX線回折ピーク位置と同じコランダム型構造のα−Al
2O
3のX線回折ピーク位置の間に観察された。これは、この酸化物がα−Fe
2O
3とα−Al
2O
3の固溶体となっているためと考えられる。
【0100】
上記XRDパターンから、コランダム型構造(六方格子)における反射指数024(2θ=50.56)のピーク位置および反射指数116(2θ=55.31度)のピーク位置からa軸およびc軸の格子定数を算出した。a軸およびc軸の格子定数、およびこの格子定数から求めた単位胞体積を表1に示す。さらに、合成例1と同様にして、作製した固溶体(Fe
1−xAl
x)
2O
3(0<x<1)のxの値を算出したところ、x=0.371を得た。この値は、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3の原料のモル混合割合に十分近く、固溶体合成反応が順調に行われたことを示している。
【0101】
合成例8(γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3のメカノケミカル合成法による酸化物作製)
γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3は、合成例7と同じものを用いた。
【0102】
原料のモル混合割合zを用いて出発原料全体の式が(1−z)Fe
2O
3+zAl
2O
3で示される式においてz=0.6となるように、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3を混合し、フリッチュ社製遊星型ボールミルプレミアムラインP−7を用いて室温でメカノケミカル合成した。合成例3と同じ合成条件で、2回、合計60分間混合した。
【0103】
図9に、作製した酸化物のXRDパターンを示す。γ−Fe
2O
3に帰属されるピークは認められなかった。これに対しコランダム型構造で指数付けができるピークが多数現れた。ピークは全て、コランダム型構造のα−Fe
2O
3のX線回折ピーク位置と同じコランダム型構造のα−Al
2O
3のX線回折ピーク位置の間に観察された。これは、この酸化物がα−Fe
2O
3とα−Al
2O
3の固溶体となっているためと考えられる。
【0104】
上記XRDパターンから、コランダム型構造(六方格子)における反射指数024(2θ=51.21)のピーク位置および反射指数116(2θ=56.01度)のピーク位置からa軸およびc軸の格子定数を算出した。a軸およびc軸の格子定数、およびこの格子定数から求めた単位胞体積を表1に示す。さらに、合成例1と同様にして、作製した固溶体(Fe
1−xAl
x)
2O
3(0<x<1)のxの値を算出したところ、x=0.583を得た。この値は、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3の原料のモル混合割合に十分近く、固溶体合成反応が順調に行われたことを示している。
【0105】
合成例9(γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3のメカノケミカル合成法による酸化物作製)
γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3は、合成例7と同じものを用いた。
【0106】
原料のモル混合割合zを用いて出発原料全体の式が(1−z)Fe
2O
3+zAl
2O
3で示される式においてz=0.5となるように、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3を混合し、フリッチュ社製遊星型ボールミルプレミアムラインP−7を用いて室温でメカノケミカル合成した。合成例3と同じ合成条件で、2回、合計60分間混合した。
【0107】
図10に、作製した酸化物のXRDパターンを示す。γ−Fe
2O
3に帰属されるピークは認められなかった。これに対しコランダム型構造で指数付けができるピークが多数現れた。ピークは全て、コランダム型構造のα−Fe
2O
3のX線回折ピーク位置と同じコランダム型構造のα−Al
2O
3のX線回折ピーク位置の間に観察された。これは、この酸化物がα−Fe
2O
3とα−Al
2O
3の固溶体となっているためと考えられる。
【0108】
上記XRDパターンから、コランダム型構造(六方格子)における反射指数024(2θ=50.88)のピーク位置および反射指数116(2θ=55.67度)のピーク位置からa軸およびc軸の格子定数を算出した。a軸およびc軸の格子定数、およびこの格子定数から求めた単位胞体積を表1に示す。さらに、合成例1と同様にして、作製した固溶体(Fe
1−xAl
x)
2O
3(0<x<1)のxの値を算出したところ、x=0.479を得た。この値は、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3の原料のモル混合割合に十分近く、固溶体合成反応が順調に行われたことを示している。
【0109】
合成例10(γ−Fe
2O
3とβ‐Ga
2O
3のメカノケミカル合成法による酸化物作製)
γ−Fe
2O
3は、合成例7と同じものを用いた。Ga
2O
3は、和光純薬製の純度99.99%のもの(β‐Ga
2O
3)を用いた。
【0110】
原料のモル混合割合zを用いて出発原料全体の式が(1−z)Fe
2O
3+zGa
2O
3で示される式においてz=0.5となるように、γ−Fe
2O
3とβ−Ga
2O
3を混合し、フリッチュ社製遊星型ボールミルプレミアムラインP−7を用いて室温でメカノケミカル合成した。合成例3と同じ合成条件で、2回、合計60分間混合した。
【0111】
図11に、作製した酸化物のXRDパターンを示す。γ−Fe
2O
3に帰属されるピークは認められなかった。これに対しコランダム型構造で指数付けができるピークが多数現れた。ピークは全て、コランダム型構造のα−Fe
2O
3のX線回折ピーク位置と同じコランダム型構造のα−Ga
2O
3のX線回折ピーク位置の間に観察された。これは、この酸化物がα−Fe
2O
3とα−Ga
2O
3の固溶体となっているためと考えられる。
【0112】
上記XRDパターンから、コランダム型構造(六方格子)における反射指数024(2θ=49.82)のピーク位置および反射指数116(2θ=54.56度)のピーク位置からa軸およびc軸の格子定数を算出した。a軸およびc軸の格子定数、およびこの格子定数から求めた単位胞体積を表1に示す。さらに、化学式(Fe
1−xGa
x)
2O
3(0<x<1)であらわされる固溶体のa軸およびc軸の格子定数の計算値を、JCPDSに与えられているα−Fe
2O
3及びα−Ga
2O
3の格子定数を用いて、ベガード則に基づき、xの関数として与え、これを使って単位胞体積の計算値をxの関数として与えることができる。これが、メカノケミカル合成法により作製した固溶体の、実際の測定で得られた単位胞体積の測定値と等しくなるときのxの値を求めることができる。作製した固溶体(Fe
1−xGa
x)
2O
3(0<x<1)のxの値を算出したところ、x=0.532を得た。この値は、γ−Fe
2O
3とβ−Ga
2O
3の原料のモル混合割合に十分近く、固溶体合成反応が順調に行われたことを示している。
【0113】
合成例11(γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3のメカノケミカル合成法による酸化物作製)
γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3は、合成例7と同じものを用いた。
原料のモル混合割合zを用いて出発原料全体の式が(1−z)Fe
2O
3+zAl
2O
3で示される式においてz=0.45となるように、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3を混合し、フリッチュ社製遊星型ボールミルプレミアムラインP−7を用いて室温でメカノケミカル合成した。合成例3と同じ合成条件で、2回、合計60分間混合した。
【0114】
図12に、作製した酸化物のXRDパターンを示す。γ−Fe
2O
3に帰属されるピークは認められなかった。これに対しコランダム型構造で指数付けができるピークが多数現れた。ピークは全て、コランダム型構造のα−Fe
2O
3のX線回折ピーク位置と同じコランダム型構造のα−Al
2O
3のX線回折ピーク位置の間に観察された。これは、この酸化物がα−Fe
2O
3とα−Al
2O
3の固溶体となっているためと考えられる。
【0115】
上記XRDパターンから、コランダム型構造(六方格子)における反射指数024(2θ=50.76)のピーク位置および反射指数116(2θ=55.51度)のピーク位置からa軸およびc軸の格子定数を算出した。a軸およびc軸の格子定数、およびこの格子定数から求めた単位胞体積を表1に示す。さらに、合成例1と同様にして、作製した固溶体(Fe
1−xAl
x)
2O
3(0<x<1)のxの値を算出したところ、x=0.437を得た。この値は、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3の原料のモル混合割合に十分近く、固溶体合成反応が順調に行われたことを示している。
【0116】
合成例12(γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3のメカノケミカル合成法による酸化物作製)
γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3は、合成例7と同じものを用いた。
原料のモル混合割合zを用いて出発原料全体の式が(1−z)Fe
2O
3+zAl
2O
3で示される式においてz=0.65となるように、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3を混合し、フリッチュ社製遊星型ボールミルプレミアムラインP−7を用いて室温でメカノケミカル合成した。合成例3と同じ合成条件で、2回、合計60分間混合した。
【0117】
図13に、作製した酸化物のXRDパターンを示す。γ−Fe
2O
3に帰属されるピークは認められなかった。これに対しコランダム型構造で指数付けができるピークが多数現れた。ピークは全て、コランダム型構造のα−Fe
2O
3のX線回折ピーク位置と同じコランダム型構造のα−Al
2O
3のX線回折ピーク位置の間に観察された。これは、この酸化物がα−Fe
2O
3とα−Al
2O
3の固溶体となっているためと考えられる。
【0118】
上記XRDパターンから、コランダム型構造(六方格子)における反射指数024(2θ=51.38)のピーク位置および反射指数116(2θ=56.19度)のピーク位置からa軸およびc軸の格子定数を算出した。a軸およびc軸の格子定数、およびこの格子定数から求めた単位胞体積を表1に示す。さらに、合成例1と同様にして、作製した固溶体(Fe
1−xAl
x)
2O
3(0<x<1)のxの値を算出したところ、x=0.637を得た。この値は、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3の原料のモル混合割合に十分近く、固溶体合成反応が順調に行われたことを示している。
【0119】
合成例13(γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3のメカノケミカル合成法による酸化物作製)
γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3は、合成例7と同じものを用いた。
原料のモル混合割合zを用いて出発原料全体の式が(1−z)Fe
2O
3+zAl
2O
3で示される式においてz=0.05となるように、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3を混合し、フリッチュ社製遊星型ボールミルプレミアムラインP−7を用いて室温でメカノケミカル合成した。合成例3と同じ合成条件で、2回、合計60分間混合した。
【0120】
図14に、作製した酸化物のXRDパターンを示す。γ−Fe
2O
3に帰属されるピークは認められなかった。これに対しコランダム型構造で指数付けができるピークが多数現れた。ピークは全て、コランダム型構造のα−Fe
2O
3のX線回折ピーク位置と同じコランダム型構造のα−Al
2O
3のX線回折ピーク位置の間に観察された。これは、この酸化物がα−Fe
2O
3とα−Al
2O
3の固溶体となっているためと考えられる。
【0121】
上記XRDパターンから、コランダム型構造(六方格子)における反射指数024(2θ=49.69)のピーク位置および反射指数116(2θ=54.29度)のピーク位置からa軸およびc軸の格子定数を算出した。a軸およびc軸の格子定数、およびこの格子定数から求めた単位胞体積を表1に示す。さらに、合成例1と同様にして、作製した固溶体(Fe
1−xAl
x)
2O
3(0<x<1)のxの値を算出したところ、x=0.077を得た。この値は、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3の原料のモル混合割合に十分近く、固溶体合成反応が順調に行われたことを示している。
【0122】
合成例14(γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3のメカノケミカル合成法による酸化物作製)
γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3は、合成例7と同じものを用いた。
原料のモル混合割合zを用いて出発原料全体の式が(1−z)Fe
2O
3+zAl
2O
3で示される式においてz=0.95となるように、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3を混合し、フリッチュ社製遊星型ボールミルプレミアムラインP−7を用いて室温でメカノケミカル合成した。合成例3と同じ合成条件で、2回、合計60分間混合した。
【0123】
図15に、作製した酸化物のXRDパターンを示す。γ−Fe
2O
3に帰属されるピークは認められなかった。これに対しコランダム型構造で指数付けができるピークが多数現れた。ピークは全て、コランダム型構造のα−Fe
2O
3のX線回折ピーク位置と同じコランダム型構造のα−Al
2O
3のX線回折ピーク位置の間に観察された。これは、この酸化物がα−Fe
2O
3とα−Al
2O
3の固溶体となっているためと考えられる。なお、コランダム型構造で指数付けのできない、27度付近、34度付近、36度付近、ならびに、41度付近のピーク等は、ミリング媒体および容器から混入したβ―Si
3N
4によるものである。
【0124】
上記XRDパターンから、コランダム型構造(六方格子)における反射指数024(2θ=52.38)のピーク位置および反射指数116(2θ=57.34度)のピーク位置からa軸およびc軸の格子定数を算出した。a軸およびc軸の格子定数、およびこの格子定数から求めた単位胞体積を表1に示す。さらに、合成例1と同様にして、作製した固溶体(Fe
1−xAl
x)
2O
3(0<x<1)のxの値を算出したところ、x=0.957を得た。この値は、γ−Fe
2O
3とγ−Al
2O
3の原料のモル混合割合に十分近く、固溶体合成反応が順調に行われたことを示している。
【0125】
実施例1
(ビーカーセル作製)
合成例1で調製した複合材料に、複合材料:アセチレンブラック(AB):ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が70:30:2(重量比)となるよう、ABとPTFEを混合し、乳鉢ですりつぶした後、銅メッシュに圧着し、150℃の真空中で12時間乾燥して作用電極を作製した。
【0126】
次に、アルゴン雰囲気下のグローブボックス中で、対極と参照極に金属リチウムを用いる三電極系のビーカーセルを作製した。電解液には、1M LiClO
4のエチレンカーボネート−ジメトキシエタン(EC−DME=1:1(体積比))溶媒を用いた。
【0127】
(充放電測定)
電流密度0.1A/gで、0.1〜3.5V (vs.Li
+/Li)の電位範囲で、充放電測定を行った。
【0128】
実施例2
合成例2で調製した複合材料を用いて作用電極を作製した以外は、実施例1と同様にしてビーカーセルの作製および充放電測定を行った。
【0129】
実施例3
合成例3で調製した複合材料を用いて作用電極を作製した以外は、実施例1と同様にしてビーカーセルの作製および充放電測定を行った。
【0130】
実施例4
合成例4で調製した複合材料を用いて作用電極を作製した以外は、実施例1と同様にしてビーカーセルの作製および充放電測定を行った。
【0131】
実施例5
合成例5で調製した複合材料を用いて作用電極を作製した以外は、実施例1と同様にしてビーカーセルの作製および充放電測定を行った。
【0132】
実施例6
合成例6で調製した複合材料を用いて作用電極を作製した以外は、実施例1と同様にしてビーカーセルの作製および充放電測定を行った。
【0133】
実施例7
合成例7で調製した複合材料を用いて作用電極を作製した以外は、実施例1と同様にしてビーカーセルの作製および充放電測定を行った。
【0134】
実施例8
合成例8で調製した複合材料を用いて作用電極を作製した以外は、実施例1と同様にしてビーカーセルの作製および充放電測定を行った。
【0135】
実施例9
合成例9で調製した複合材料を用いて作用電極を作製した以外は、実施例1と同様にしてビーカーセルの作製および充放電測定を行った。
【0136】
実施例10
合成例10で調製した複合材料を用いて作用電極を作製した以外は、実施例1と同様にしてビーカーセルの作製および充放電測定を行った。
【0137】
実施例11
合成例11で調製した複合材料を用いて作用電極を作製した以外は、実施例1と同様にしてビーカーセルの作製および充放電測定を行った。
【0138】
実施例12
合成例12で調製した複合材料を用いて作用電極を作製した以外は、実施例1と同様にしてビーカーセルの作製および充放電測定を行った。
【0139】
実施例13
合成例13で調製した複合材料を用いて作用電極を作製した以外は、実施例1と同様にしてビーカーセルの作製および充放電測定を行った。
【0140】
実施例14
合成例14で調製した複合材料を用いて作用電極を作製した以外は、実施例1と同様にしてビーカーセルの作製および充放電測定を行った。
【0141】
比較例1
γ−Fe
2O
3のみをフリッチュ社製遊星型ボールミルプレミアムラインP−7を用いて室温で固相混合した。合成例3と同じ混合条件で、8回、合計240分間混合した。γ−Fe
2O
3は、合成例3と同じものを用いた。
【0142】
図16に、作製した酸化物のXRDパターンを示す。γ−Fe
2O
3に帰属されるピークおよびα−Fe
2O
3に帰属されるピークが確認できた。
【0143】
固相混合したγ−Fe
2O
3を用いて作用電極を作製した以外は、実施例1と同様にしてビーカーセルの作製および充放電測定を行った。
【0144】
比較例2
α−Fe
2O
3のみをフリッチュ社製遊星型ボールミルプレミアムラインP−7を用いて室温で固相混合した。合成例3と同じ混合条件で、8回、合計240分間混合した。α−Fe
2O
3は、合成例3と同じものを用いた。
【0145】
図17に、作製した酸化物のXRDパターンを示す。α−Fe
2O
3に帰属されるピークが確認できた。
【0146】
固相混合したα−Fe
2O
3を用いて作用電極を作製した以外は、実施例1と同様にしてビーカーセルの作製および充放電測定を行った。
【0147】
(結果)
図18に実施例1の充放電曲線、
図33に比較例1の充放電曲線、
図35に比較例2の充放電曲線を示す。いずれも0.1〜3.5V (vs.Li
+/Li)の電位範囲で充放電が可能であった。
【0148】
図19〜
図32に実施例1から14の充放電サイクル特性、
図34に比較例1の充放電サイクル特性、
図36に比較例2の充放電サイクル特性を示す。また、表2に一定サイクル後の比容量および比容量保持率(1サイクル目の比容量に対する所定サイクル後の比容量の比率(%))を示す。100サイクル目の比容量を比較すると、実施例1で約100mAh/g、実施例2で約75mAh/gであるのに対し、比較例1では3mAh/gであった。実施例1および実施例2の活物質量が比較例1の概ね半分であることを考慮すると、本発明によれば、不可逆容量を低減させて、充放電サイクル特性を向上することができる。特に、実施例1では、少なくとも500サイクルは可能であり、500サイクル目においても約200mAh/gという比容量を有し、優れた充放電サイクル特性を有していた。
【0149】
【表1】
【0150】
【表2】