特許第5926765号(P5926765)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926765
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20160516BHJP
   B60C 11/01 20060101ALI20160516BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   B60C11/03 100B
   B60C11/03 100C
   B60C11/01 B
   B60C11/12 D
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-109375(P2014-109375)
(22)【出願日】2014年5月27日
(65)【公開番号】特開2015-223916(P2015-223916A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2014年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】仲山 裕之
【審査官】 八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−121491(JP,A)
【文献】 特開2009−149124(JP,A)
【文献】 特開2012−046018(JP,A)
【文献】 特開2011−031773(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/002096(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に、最もトレッド接地端側でタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー主溝と、前記各ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側のショルダー陸部とが設けられた空気入りタイヤであって、
前記各ショルダー陸部には、
少なくとも前記トレッド接地端からタイヤ軸方向内側にのびかつ前記ショルダー陸部内で終端する複数のショルダーラグ溝と、
タイヤ周方向で隣り合う前記ショルダーラグ溝のタイヤ軸方向の内端部の間を連通する第1ショルダーサイプとが設けられており、
前記第1ショルダーサイプと前記ショルダー主溝との間には、タイヤ周方向に連続してのびるリブが形成され、
前記ショルダーラグ溝の間には、少なくとも前記トレッド接地端からタイヤ軸方向内側にのびかつ前記第1ショルダーサイプに連通することなく終端する第2ショルダーサイプが設けられていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記トレッド部には、前記ショルダー主溝よりもタイヤ軸方向内側でタイヤ周方向に連続してのびる少なくとも1本のセンター主溝が設けられることにより、前記ショルダー主溝と前記センター主溝とで区分されたミドル陸部がタイヤ赤道の両側に設けられ、
前記各ミドル陸部には、前記センター主溝からタイヤ軸方向外側にのびかつ前記ミドル陸部内で終端する内側ミドルラグ溝と、前記ショルダー主溝からタイヤ軸方向内側にのびかつ前記ミドル陸部内で終端する外側ミドルラグ溝とが交互に設けられている請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ショルダーラグ溝は、3.5〜5.5mmの溝幅を有し、
前記第1ショルダーサイプ及び前記第2ショルダーサイプは、1.0mm以下の幅を有する請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
トレッド部に、最もトレッド接地端側でタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー主溝と、前記各ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側のショルダー陸部とが設けられた空気入りタイヤであって、
前記各ショルダー陸部には、
少なくとも前記トレッド接地端からタイヤ軸方向内側にのびかつ前記ショルダー陸部内で終端する複数のショルダーラグ溝と、
タイヤ周方向で隣り合う前記ショルダーラグ溝のタイヤ軸方向の内端部の間を連通する第1ショルダーサイプとが設けられており、
前記第1ショルダーサイプと前記ショルダー主溝との間には、タイヤ周方向に連続してのびるリブが形成され、
前記トレッド部には、前記ショルダー主溝よりもタイヤ軸方向内側でタイヤ周方向に連続してのびる少なくとも1本のセンター主溝が設けられることにより、前記ショルダー主溝と前記センター主溝とで区分されたミドル陸部がタイヤ赤道の両側に設けられ、
前記各ミドル陸部には、前記センター主溝からタイヤ軸方向外側にのびかつ前記ミドル陸部内で終端する内側ミドルラグ溝と、前記ショルダー主溝からタイヤ軸方向内側にのびかつ前記ミドル陸部内で終端する外側ミドルラグ溝とが交互に設けられていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記内側ミドルラグ溝は、
前記センター主溝に連通しかつタイヤ周方向に対して傾斜してのびる第1部分と、
前記第1部分のタイヤ軸方向外側に連なりかつタイヤ周方向に対して前記第1部分よりも大きい角度で傾斜している第2部分とを含む請求項4記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記各外側ミドルラグ溝は、前記各ショルダーラグ溝のタイヤ軸方向の投影領域に交わることなく設けられている請求項4又は5記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音性能とウェット性能とを両立させた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ショルダー陸部に複数のラグ溝を設けた空気入りタイヤが提案されている。このような空気入りタイヤは、ウェット性能を維持しつつ、ショルダー陸部の偏摩耗を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−132181号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の空気入りタイヤは、騒音性能とウェット性能との両立については、さらなる改善の余地があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ショルダー陸部の形状等を改善することを基本として、騒音性能とウェット性能とを両立させた空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、トレッド部に、最もトレッド接地端側でタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー主溝と、前記各ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側のショルダー陸部とが設けられた空気入りタイヤであって、前記各ショルダー陸部には、少なくとも前記トレッド接地端からタイヤ軸方向内側にのびかつ前記ショルダー陸部内で終端する複数のショルダーラグ溝と、タイヤ周方向で隣り合う前記ショルダーラグ溝のタイヤ軸方向の内端部の間を連通する第1ショルダーサイプとが設けられており、前記第1ショルダーサイプと前記ショルダー主溝との間には、タイヤ周方向に連続してのびるリブが形成され、前記ショルダーラグ溝の間には、少なくとも前記トレッド接地端からタイヤ軸方向内側にのびかつ前記第1ショルダーサイプに連通することなく終端する第2ショルダーサイプが設けられていることを特徴としている。
【0007】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部には、前記ショルダー主溝よりもタイヤ軸方向内側でタイヤ周方向に連続してのびる少なくとも1本のセンター主溝が設けられることにより、前記ショルダー主溝と前記センター主溝とで区分されたミドル陸部がタイヤ赤道の両側に設けられ、前記各ミドル陸部には、前記センター主溝からタイヤ軸方向外側にのびかつ前記ミドル陸部内で終端する内側ミドルラグ溝と、前記ショルダー主溝からタイヤ軸方向内側にのびかつ前記ミドル陸部内で終端する外側ミドルラグ溝とが交互に設けられているのが望ましい。
【0008】
本発明の空気入りタイヤは、前記ショルダーラグ溝は、3.5〜5.5mmの溝幅を有し、前記第1ショルダーサイプ及び前記第2ショルダーサイプは、1.0mm以下の幅を有するのが望ましい。
【0009】
本発明の第2の態様は、トレッド部に、最もトレッド接地端側でタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー主溝と、前記各ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側のショルダー陸部とが設けられた空気入りタイヤであって、前記各ショルダー陸部には、少なくとも前記トレッド接地端からタイヤ軸方向内側にのびかつ前記ショルダー陸部内で終端する複数のショルダーラグ溝と、タイヤ周方向で隣り合う前記ショルダーラグ溝のタイヤ軸方向の内端部の間を連通する第1ショルダーサイプとが設けられており、前記第1ショルダーサイプと前記ショルダー主溝との間には、タイヤ周方向に連続してのびるリブが形成され、前記トレッド部には、前記ショルダー主溝よりもタイヤ軸方向内側でタイヤ周方向に連続してのびる少なくとも1本のセンター主溝が設けられることにより、前記ショルダー主溝と前記センター主溝とで区分されたミドル陸部がタイヤ赤道の両側に設けられ、前記各ミドル陸部には、前記センター主溝からタイヤ軸方向外側にのびかつ前記ミドル陸部内で終端する内側ミドルラグ溝と、前記ショルダー主溝からタイヤ軸方向内側にのびかつ前記ミドル陸部内で終端する外側ミドルラグ溝とが交互に設けられていることを特徴としている。
【0010】
本発明の空気入りタイヤは、前記内側ミドルラグ溝は、前記センター主溝に連通しかつタイヤ周方向に対して傾斜してのびる第1部分と、前記第1部分のタイヤ軸方向外側に連なりかつタイヤ周方向に対して前記第1部分よりも大きい角度で傾斜している第2部分とを含むのが望ましい。
【0011】
本発明の空気入りタイヤは、前記各外側ミドルラグ溝は、前記各ショルダーラグ溝のタイヤ軸方向の投影領域に交わることなく設けられているのが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の空気入りタイヤのトレッド部には、最もトレッド接地端側でタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー主溝と、各ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側のショルダー陸部とが設けられている。
【0013】
各ショルダー陸部には、少なくとも前記トレッド接地端からタイヤ軸方向内側にのびかつショルダー陸部内で終端する複数のショルダーラグ溝と、タイヤ周方向で隣り合うショルダーラグ溝のタイヤ軸方向の内端部の間を連通する第1ショルダーサイプとが設けられている。このようなショルダーラグ溝は、ウェット走行時、水を効果的にタイヤ軸方向外側に排出する。しかも、ショルダーラグ溝の内端部が第1ショルダーサイプと連通しているため、ショルダーラグ溝のポンピング音が抑制される。
【0014】
第1ショルダーサイプとショルダー主溝との間には、タイヤ周方向に連続してのびるリブが形成されている。このようなリブは、そのタイヤ軸方向内側で発生する溝のポンピング音及び陸部の打音がトレッド端側から漏れるのを防ぐので、騒音性能を高める。
【0015】
以上のように、本発明の空気入りタイヤは、ウェット性能と騒音性能とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の空気入りタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1のA−A断面図である。
図3図1のショルダー陸部及びミドル陸部の拡大図である。
図4】(a)は、図3の内側ミドルラグ溝のB−B断面図であり、(b)は、図3の外側ミドルラグ溝のC−C断面図である。
図5図3のミドル凹部の拡大斜視図である。
図6図1のセンター陸部の拡大図である。
図7図6のセンター凹部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1のトレッド部2が示されている。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に使用される。
【0018】
図1に示されるように、トレッド部2には、一対のショルダー主溝3、3と、一対のセンター主溝4、4とが設けられている。
【0019】
ショルダー主溝3、3は、タイヤ赤道Cの両側かつ最もトレッド接地端Te側でタイヤ周方向に連続してのびている。本実施形態のショルダー主溝3は、直線状にのびている。
【0020】
前記「トレッド接地端Te」は、正規リム(図示せず)にリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷である正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。正規状態でのトレッド接地端Te、Te間のタイヤ軸方向距離は、トレッド接地幅TWとして定義される。
【0021】
前記「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0022】
前記「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0023】
前記「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0024】
センター主溝4は、ショルダー主溝3よりもタイヤ軸方向内側でタイヤ周方向に連続してのびている。本実施形態のセンター主溝4は、例えば、タイヤ赤道Cの両側に一対設けられている。センター主溝4は、例えば、タイヤ赤道C上に1本のみ設けられても良い。センター主溝4は、例えば、直線状にのびている。
【0025】
ショルダー主溝3の溝幅W1及びセンター主溝4の溝幅W2は、例えば、トレッド接地幅TWの4.5〜6.5%である。このようなショルダー主溝3及びセンター主溝4は、ウェット走行時、路面とトレッド部2との間の水を効果的に排出し、ウェット性能を向上させる。本実施形態では、ショルダー主溝3の溝幅W1及びセンター主溝4の溝幅W2は、それぞれ、一定とされているが、このような態様に限定されるものではない。
【0026】
図2には、図1のA−A断面図が示されている。図2に示されるように、ショルダー主溝3及びセンター主溝4の溝深さd1及びd2は、本実施形態の乗用車用タイヤの場合、例えば、5〜10mm程度であるのが望ましい。
【0027】
図1に示されるように、トレッド部2には、各ショルダー主溝3のタイヤ軸方向外側に設けられたショルダー陸部10と、ショルダー主溝3とセンター主溝4とで区分された一対のミドル陸部20、20と、センター主溝4、4間のセンター陸部40とが設けられている。
【0028】
図3には、図1の右側のショルダー陸部10及びミドル陸部20の拡大図が示されている。図3に示されるように、ショルダー陸部10には、複数のショルダーラグ溝11及び第1ショルダーサイプ13が設けられている。
【0029】
ショルダーラグ溝11は、少なくともトレッド接地端Teからタイヤ軸方向内側にのびかつショルダー陸部10内で終端する内端部12を有している。このようなショルダーラグ溝11は、ウェット走行時、トレッド部2の下の水を効果的にタイヤ軸方向外側に排出する。
【0030】
ショルダーラグ溝11は、例えば、タイヤ周方向の一方側に凸で湾曲している。本実施形態のショルダーラグ溝11は、内端12eがタイヤ周方向に沿った直線状である。ショルダーラグ溝11の溝幅W3は、例えば、3.5〜5.5mmである。このようなショルダーラグ溝11は、優れたウェット性能及びワンダリング性能を発揮する。
【0031】
第1ショルダーサイプ13は、タイヤ周方向で互いに隣り合う各ショルダーラグ溝11のタイヤ軸方向の内端部12の間を連通している。本実施形態の第1ショルダーサイプ13は、例えば、タイヤ周方向に沿って直線状にのびている。第1ショルダーサイプ13のエッジとショルダーラグ溝11の内端12eとは、タイヤ周方向に連続している。本明細書において、「サイプ」とは、幅が1.0mm以下の切り込みを意味し、排水用の溝とは区別される。
【0032】
第1ショルダーサイプ13は、ショルダーラグ溝11が接地したときの溝内の空気の圧力を効果的に逃がすことができる。従って、ショルダーラグ溝11のポンピング音が抑制される。
【0033】
第1ショルダーサイプ13とショルダー主溝3との間には、タイヤ周方向に連続してのびるリブ15が形成されている。このようなリブ15は、そのタイヤ軸方向内側で発生する溝のポンピング音及び陸部の打音がトレッド端側から漏れるのを防ぐので、騒音性能を高める。しかも、このようなリブ15は、ショルダー陸部10の剛性を維持し、優れた操縦安定性を発揮する。上記の効果をより確実なものとするために、リブ15は、例えば、溝及びサイプが設けられていないプレーンリブであるのが望ましい。
【0034】
リブ15の幅W5は、ショルダー陸部10の幅W4の好ましくは0.15倍以上、より好ましくは0.18倍以上であり、好ましくは0.25倍以下、より好ましくは0.22倍以下である。このようなリブ15は、騒音性能とウェット性能とをバランス良く高める。本実施形態のリブ15は、略一定の幅で直線状にのびている。
【0035】
各ショルダーラグ溝11の間には、例えば、第2ショルダーサイプ14が設けられているのが望ましい。第2ショルダーサイプ14は、例えば、少なくともトレッド接地端Teからタイヤ軸方向内側にのび、かつ、第1ショルダーサイプ13に連通することなく終端している。このような第2ショルダーサイプ14は、ショルダー陸部10のトレッド接地端Te側の剛性を緩和し、優れたワンダリング性能を発揮させる。
【0036】
各ミドル陸部20には、内側ミドルラグ溝21と外側ミドルラグ溝22とがタイヤ周方向に交互に設けられている。内側ミドルラグ溝21は、センター主溝4からタイヤ軸方向外側にのびかつミドル陸部20内で終端している。外側ミドルラグ溝22は、ショルダー主溝3からタイヤ軸方向内側にのびかつミドル陸部20内で終端している。このような内側ミドルラグ溝21及び外側ミドルラグ溝22は、操縦安定性を維持しつつ、優れたウェット性能を発揮する。
【0037】
内側ミドルラグ溝21は、タイヤ周方向に対して傾斜してのびている。内側ミドルラグ溝21は、センター主溝4に連通する第1部分23と、タイヤ周方向に対して第1部分23よりも大きい角度で傾斜した第2部分24とを含んでいる。
【0038】
第1部分23のタイヤ周方向に対する角度θ1は、好ましくは20°以上、より好ましくは25°以上であり、好ましくは45°以下、より好ましくは40°以下である。このような第1部分23は、ウェット走行時、センター主溝4内の水をタイヤ軸方向外側に案内し、ウェット性能を高める。
【0039】
同様の観点から、第1部分23のタイヤ軸方向の長さL1は、好ましくはミドル陸部20の幅W6の0.25倍以上、より好ましくは0.35倍以上であり、好ましくは0.5倍以下、より好ましくは0.4倍以下である。
【0040】
第2部分24のタイヤ周方向に対する角度θ2は、好ましくは60°以上、より好ましくは65°以上であり、好ましくは80°以下、より好ましくは75°以下である。このような第2部分24は、ミドル陸部20のタイヤ軸方向の剛性を維持し、優れた操縦安定性を発揮する。
【0041】
図4(a)には、図4の内側ミドルラグ溝21のB−B断面図が示されている。図4(a)に示されるように、内側ミドルラグ溝21は、タイヤ軸方向の内端部25の溝底が隆起したタイバー26が設けられているのが望ましい。このようなタイバー26は、内側ミドルラグ溝21の内端部25付近の偏摩耗を効果的に抑制する。
【0042】
図3に示されるように、外側ミドルラグ溝22は、例えば、内側ミドルラグ溝21と同じ向きに傾斜している。外側ミドルラグ溝22のタイヤ周方向に対する角度θ3は、好ましくは60°以上、より好ましくは65°以上であり、好ましくは80°以下、より好ましくは75°以下である。このような外側ミドルラグ溝22は、ミドル陸部20のタイヤ軸方向の剛性を維持しつつ、ウェット性能を高める。
【0043】
外側ミドルラグ溝22は、例えば、タイヤ周方向に対する角度をタイヤ軸方向内側に向かって漸減させた内端部28を含んでいる。これにより、内端部28付近の偏摩耗が抑制される。
【0044】
図4(b)には、図3の外側ミドルラグ溝22のC−C断面図が示されている。図4(b)に示されるように、外側ミドルラグ溝22の内端部28の溝深さd3は、例えば、タイヤ軸方向内側から外側に向かって漸増しているのが望ましい。このような内端部28は、ミドル陸部20の中央部の剛性を維持し、優れた操縦安定性を発揮する。
【0045】
図3に示されるように、各外側ミドルラグ溝22は、各ショルダーラグ溝11のタイヤ軸方向の投影領域29に交わることなく設けられているのが望ましい。これにより、外側ミドルラグ溝22とショルダーラグ溝11との接地するタイミングがずれるため、ポンピング音がホワイトノイズ化される。
【0046】
ミドル陸部20には、例えば、センター主溝4側の端縁20aを凹ませたミドル凹部30が設けられているのが望ましい。
【0047】
図5には、ミドル凹部30の拡大斜視図が示されている。図4に示されるように、ミドル凹部30は、ミドル陸部20を4つの三角形状の面からなる略四面体の空間で凹ませている。ミドル凹部30は、例えば、ミドル凹部底面31とミドル凹部側面32とを含んでいる。
【0048】
ミドル凹部底面31は、例えば、ミドル陸部20の踏面20sと滑らかに連なっているのが望ましい。本実施形態のミドル凹部底面31は、踏面20sに対して傾斜しており、ミドル凹部30の深さをミドル凹部の底に向かって漸増させている。
【0049】
ミドル凹部側面32は、例えば、ミドル凹部底面31に略垂直に連なり、タイヤ半径方向に沿ってのびている。ミドル凹部側面32は、例えば、平面状又は緩やかに湾曲した曲面状である。
【0050】
このようなミドル凹部底面31及びミドル凹部側面32を含んだミドル凹部30は、センター主溝4(図3に示す)の気柱共鳴音を抑制しつつ、ウェット性能をさらに高める。
【0051】
図3に示されるように、本実施形態のミドル陸部20には、例えば、第1ミドルサイプ33及び第2ミドルサイプ34が複数設けられている。第1ミドルサイプ33は、例えば、ミドル凹部30と外側ミドルラグ溝22の内端部25との間を連通している。第2ミドルサイプ34は、例えば、ショルダー主溝3からタイヤ軸方向内側にのびかつミドル陸部20内で終端している。このような第1ミドルサイプ33及び第2ミドルサイプ34は、ミドル陸部20の剛性分布を均一にし、ミドル陸部20の偏摩耗を抑制する。
【0052】
図6には、センター陸部40の拡大図が示されている。センター陸部40は、例えば、タイヤ周方向に連続するリブである。このようなセンター陸部40は、優れた操縦安定性を発揮する。
【0053】
本実施形態のセンター陸部40には、例えば、センター副溝41が設けられている。
【0054】
センター副溝41は、例えば、タイヤ周方向に連続して直線状にのびている。本実施形態のセンター副溝41は、例えば、タイヤ赤道C上に設けられている。このようなセンター副溝41は、センター陸部40の剛性を維持しつつ、優れたウェット性能を発揮する。
【0055】
本実施形態のセンター陸部40には、センター凹部42がタイヤ周方向に隔設されている。
【0056】
図7には、センター凹部42の拡大斜視図が示されている。図7に示されるように、センター凹部42は、センター陸部40の両側の端縁40e、40eを凹ませて形成されている。センター凹部42は、例えば、ミドル凹部30(図5に示す)と実質的に同一の形状を有し、センター凹部底面43とセンター凹部側面44とを含んでいる。このようなセンター凹部42は、センター主溝4(図3に示す)の気柱共鳴音の発生を抑制しつつ、優れたウェット性能を発揮する。
【0057】
以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されず、種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0058】
図1の基本パターンを有するサイズ225/65R17の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、ショルダー部にリブを有しないタイヤが試作された。これらのタイヤが、下記テスト車両に装着され、ウェット性能及び騒音性能がテストされた。各タイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:17×6.5J
タイヤ内圧:220kPa
テスト車両:4輪駆動車、排気量2400cc
タイヤ装着位置:全輪
【0059】
<ウェット性能>
水深5mm、長さ20mの水たまりが設けられた半径100mのアスファルト路面のテストコースに、上記テスト車両を進入させたときの前輪の横Gが計測された。しかも、テスト車両の走行速度が50〜80km/hのときの前輪の平均横Gが算出された。結果は、比較例1の前記平均横Gを100とする指数であり、数値が大きい程、ウェット性能が優れていることを示す。
【0060】
<騒音性能>
上記テスト車両でロードノイズ計測路(アスファルト粗面路)を速度100km/hで走行したときの車内騒音が、下記条件で測定された。評価は、車内騒音の値の逆数であり、比較例1の値を100とする指数で表示されている。数値が大きい程、車内騒音が小さく良好である。
測定方法:狭帯域240Hz付近の気柱共鳴音のピーク値の音圧レベルをマイクロホンで測定
マイクロホンの位置:運転席の窓側耳許
テスト結果が表1に示される。
【0061】
【表1】
【0062】
テストの結果、実施例の空気入りタイヤは、ウェット性能と騒音性能とを両立させているのが確認できた。
【符号の説明】
【0063】
2 トレッド部
3 ショルダー主溝
10 ショルダー陸部
11 ショルダーラグ溝
12 内端部
13 第1ショルダーサイプ
15 リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7