(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対の電極間に発光層を含む有機層を有し、有機層内に請求項1〜3における一般式(1)または(2)で表される化合物を含有することを特徴とする有機電界発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明書において置換基群Bとは以下のように定義される。
(置換基群B)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、
【0026】
アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、
【0027】
スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、
【0028】
スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環(ヘテロアリール)基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられ、具体的にはイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)、ホスホリル基
(例えばジフェニルホスホリル基、ジメチルホスホリル基などが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Bから選択される基を挙げることができる。
【0029】
下記、一般式(1)〜(4)の説明における水素原子は同位体(重水素原子等)も含み、また更に置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいることを表す。
【0030】
本発明の発光素子用材料は、一般式(1)で表される化合物を含有する。
また、本発明の有機電界発光素子は、一対の電極間に発光層を有する有機電界発光素子であって、一般式(1)で表される化合物を含有する層を有する。
本発明では剛直な4座配位子を有する白金錯体を用いることによって、一般式(1)で表されるいずれの化合物も置換基に依存せずに高効率・高耐久性の有機電界発光素子を製造することができる。
また、一般式(1)で表される化合物は外側の縮環が6員環である。この構造により白金4座錯体では平面四角形の配位をより安定にすることができ、熱的安定性を大きく向上させる事ができる。
白金錯体は一般的にIrよりEaが大きく、電子が発光層に注入される障壁が低い。このため、電子が発光層にトラップされずに通過し、発光層内での励起子の生成を妨げる場合がある。この時、カルバゾール化合物を含むEaの小さい材料を用いた電荷輸送層を陽極側に併用することで、より効率を向上させる事ができ好ましい。
以下、一般式(1)で表される化合物について説明する。
〔一般式(1)で表される化合物〕
【0032】
(一般式(1)中、Aはそれぞれ独立に窒素原子又は炭素原子を表し、置換基を有していても良い。A及び窒素原子によって構成される環はそれぞれ独立に芳香環又は芳香族ヘテロ環を表す。A及び窒素原子によって構成される環はいずれも芳香環又は芳香族ヘテロ環を表す。Lは2価の連結基を表す。)
【0033】
Aはそれぞれ独立に窒素原子又は炭素原子を表し、置換基を有していても良い。化学的安定性の観点から、一般式(1)中の窒素原子の数は2〜8が好ましく、4〜6がより好ましく4であることが更に好ましい。
Aが置換基を有する場合の置換基としては、置換基群Bが挙げられ、隣り合う置換基が結合して環を形成してもよく、水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、又は臭素原子)又は炭素数1〜10の飽和又は不飽和の炭化水素基であることが好ましく、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基であることが更に好ましく、水素原子又は炭素数3〜6のアルキル基であることが特に好ましい。Aの置換基は更に置換基を有していてもよく、更なる置換基としては、Aの置換基と同様であり、好ましい置換基も同じである。
【0034】
Aの置換基が炭素数1〜10の炭化水素基であれば、一般式(1)で表される化合物を高濃度で添加すると発生する長波長発光による色純度のずれの発生を防ぐことができることを見出した。この長波長発光は一般式(1)で表される化合物が配位子の平面性が高いため、高濃度で添加した膜内で白金−白金相互作用によって会合体又はエキシマーを形成する事に由来する。適度な大きさの炭化水素置換基を導入する事によって、互いの白金平面が近接することを防ぐものと考えられる。一方で10よりも炭素数が大きいと分子の極性が極端に小さくなり、ホスト分子との相溶性を低下させるため、金属錯体分子の凝集による長波長発光が再び観測されるようになる。
【0035】
一般式(1)において、A及び窒素原子によって構成される5員環部分は化学的安定性の観点からピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、又はトリアゾール環であることが好ましい。また、配位子のエネルギーギャップが広く、錯体の発光波長を短くすることができるため、イミダゾール環、ピラゾール環、又はトリアゾール環である事がより好ましい。また、ヘテロ環と白金との結合エネルギーが高いため素子耐久性に優れるという点でイミダゾール環であることが最も好ましい。
【0036】
Lは二価の連結基を表す。白金の4座錯体は白金からの結合手が全て同一平面上にあり、平面構造をとりやすい。このためしばしば配位子のπ軌道や双極子モーメント、白金のd
z軌道の相互作用により、錯体の会合体を作ることが知られている。会合体はエネルギーギャップが狭く、発光スペクトルのシャープさや発光効率の悪化を招く。Lに低極性の連結基を用いる事で分子全体の極性モーメントが低下するため、凝集による錯体同士の会合発光を抑制し、色純度を向上させることができる。
Lで表される二価の連結基としては低極性であることが好ましく、アルキレン基(メチレン、エチレン、プロピレンなど)、アリーレン基(フェニレン、ナフタレンジイル)、ヘテロアリーレン基(ピリジンジイル、チオフェンジイルなど)、イミノ基(−NR’−)(フェニルイミノ基など)、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、ホスフィニデン基(−PR’−)(フェニルホスフィニデン基など)、シリレン基(−SiRR’−)(ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基など)、又はこれらを組み合わせたものが挙げられる(R及びR’はそれぞれ独立に置換基を表し、置換基としては、上記置換基群Bが挙げられる)。これらの連結基は、更に置換基を有していてもよい。さらなる置換基としては、上記置換基群Bが挙げられ、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。
Lとして好ましくは、下記の連結基を挙げることができる。
【0038】
(R
23〜R
26、R
31はそれぞれ独立に水素原子又は2価の置換基を表す。R
21及びR
22はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。)
【0039】
R
23〜R
26、R
31はそれぞれ独立に水素原子又は2価の置換基を表す。
R
23〜R
26は水素原子、芳香族複素環基、炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基であることがより好ましく、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であることが更に好ましい。
R
31は水素原子、芳香族複素環基、又は炭素数20以下の飽和又は不飽和の炭化水素基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基であることがより好ましく、水素原子、メチル基、フェニル基又はエチル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
R
21及びR
22はそれぞれ独立に水素原子、アリール基又はアルキル基を表し、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基であることがより好ましく、メチル基又はフェニル基であることが更に好ましい。
【0040】
上記の中でもLとして、耐久性の観点からアルキレン基が好ましく、メチレン基又はエチレン基であることが更に好ましい。
【0041】
本発明において上記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0043】
(一般式(2)中、Aは一般式(1)におけるAと同義である。A、炭素原子及び窒素原子によって構成される環は芳香族ヘテロ環を表す。R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。nは1〜2の整数を表す。R
11〜R
18はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣り合う置換基同士が結合して環を形成していても良い。)
【0044】
Aは一般式(1)におけるAと同義であり、好ましいものも同様である。
A、炭素原子及び窒素原子によって構成される環は一般式(1)におけるA及び窒素原子によって構成される5員環部分と同義であり、好ましいものも同様である。
【0045】
R
1及びR
2で表される炭化水素基は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基群Bで挙げた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R
23〜R
26は水素原子、芳香族複素環基、炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基であることがより好ましく、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であることが更に好ましい。置換基は更に置換基を有していてもよく、さらなる置換基としては、前記置換基群Bが挙げられる。好ましくは、アリール基又はアルキル基であり、炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、であることが更に好ましい。
【0046】
R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子、アリール基又はアルキル基を表すことが好ましく、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基であることがより好ましく、メチル基又はフェニル基であることが更に好ましい。
R
11〜R
18はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。置換基は更に置換基を有していてもよく、さらなる置換基としては、前記置換基群Bが挙げられる。好ましくは、アリール基又はアルキル基であり、炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、であることが更に好ましい。
R
11は水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、又は臭素原子)又は炭素数8以下の飽和又は不飽和の炭化水素基であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、又は臭素原子)又は炭素数1〜10の飽和又は不飽和の炭化水素基であることがより好ましく、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜8のアルキル基又はアリール基であることが更に好ましく、水素原子、メチル基又は炭素数1〜8のアリール基であることが特に好ましい。
【0047】
R
12〜R
18は水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、又は臭素原子)又は炭素数8以下の飽和又は不飽和の炭化水素基であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、又は臭素原子)又は炭素数1〜6の飽和又は不飽和の炭化水素基であることがより好ましく、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基であることが更に好ましく、水素原子又は炭素数3〜6のアルキル基であることが特に好ましい。R
11〜R
18は隣り合う置換基同士が結合して環を形成していても良い
【0048】
また、R
11〜R
18のいずれが置換基を表すか特に制限はないが、R
12〜R
18の少なくとも1つが、炭素数1〜10の炭化水素基を表すことが好ましく、耐久性の観点から好ましくはR
11、R
13、R
14、及びR
17のいずれか少なくとも1つが置換基を表すことが好ましく、R
11及びR
14の少なくとも1つが置換基を表すことがより好ましく、R
14が置換基を表すことが特に好ましい。R
14は含窒素5員環に対してパラ位に位置し、他の部分よりも電気的酸化を受けやすいためと推測される。
【0049】
nは1〜3の整数を表し、好ましくは1又は2であり、より好ましくは2である。
【0050】
本発明において、上記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0052】
(一般式(3)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。nは1〜3の整数を表す。R
11、R
13、R
14、及びR
17はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。)
【0053】
R
1、R
2、R
11、R
13、R
14、R
17及びnは一般式(1)におけるA、R
1、R
2、R
11、R
13、R
14、R
17及びnと同義であり、好ましい例も同じである。
【0054】
R
11、R
13、R
14及びR
17のいずれか少なくとも1つが置換基を表すことが好ましく、R
11又はR
14が置換基を表すことがより好ましく、R
14が置換基を表すことが更に好ましい。
【0055】
一般式(3)において、nが1又は2であって、R
1及びR
2が水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であって、R
11、R
13、R
14、及びR
17のいずれか少なくとも1つが炭素数1〜10の飽和又は不飽和の炭化水素基を表すことが好ましく、nが2であって、R
1及びR
2が水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であって、R
11又はR
14のいずれか少なくとも1つが炭素数1〜8のアルキル基又はアリール基を表すことが好ましく、nが2であって、R
1及びR
2が水素原子であって、R
14が炭素数3〜6のアルキル基を表すことが好ましい。
【0056】
本発明において、上記一般式(1)及び(2)で表される化合物は、下記一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。一般式(4)で表される化合物は、発光スペクトルにおける長波側のピークが小さく、同じ発光極大波長でもより青色純度の高い発光が得られる点で有利である。
【0058】
(一般式(4)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。nは1〜2の整数を表す。R
11、R
13、R
14、及びR
17はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。)
【0059】
R
1、R
2、R
11、R
13、R
14、R
17及びnは一般式(1)におけるA、R
1、R
2、R
11、R
13、R
14、R
17及びnと同義である。
【0060】
R
11、R
13、R
14及びR
17のいずれか少なくとも1つが置換基を表すことが好ましく、R
11又はR
14が置換基を表すことがより好ましく、R
14が置換基を表すことが更に好ましい。
【0061】
一般式(4)において、nが1又は2であって、R
11、R
13、R
14、及びR
17が水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であって、R
1、及びR
2が炭素数1〜6のアルキル基を表すことが好ましく、nが1であって、R
1及びR
2が炭素数1〜6のアルキル基であって、R
11、R
13、R
14、及びR
17が水素原子を表すことが好ましい。
【0062】
一般式(1)で表される化合物は、発光波長が短波であり、青色発光領域では本発明の効果が他の化合物に比べ顕著である点で有利である。
【0063】
一般式(1)で表される化合物は、その機能が限定されることはなく、一般式(1)で表される化合物を含有する層は発光層であることが好ましい。一般式(1)で表される化合物は、有機層が複数の場合、該化合物を含有する層以外のいずれの層にも含有することができる。一般式(1)で表される化合物は、発光層に含有されることが好ましく、発光材料又はホスト材料として発光層に含有されることがより好ましく、発光材料として発光層に含有されることが更に好ましく、少なくとも一種のホスト材料と共に発光層に含有されることが特に好ましい。
【0064】
以下に、本発明における一般式(1)〜(4)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
上記一般式(1)で表される化合物として例示した化合物は、例えば以下に示す工程により製造することができる。
【0070】
上記の金属錯体化合物は、特開2009−161524号公報の段落場番号〔0112〕〜〔0122〕に記載の方法等、種々の手法で合成できる。
【0071】
〔一般式(10)で表される化合物の製造方法〕
本発明は一般式(10)で表される化合物の製造方法にも関する。
一般式(10)で表される化合物は一般式(1)で表される化合物の中間体として用いることができる。
一般式(10)で表される化合物の製造方法は、一般式(a)で表される化合物と炭化水素−金属化合物とを反応させて下記一般式(b)で表される化合物を得る工程を含む。
本発明の製造方法を用いることにより、一般式(10)で表される化合物を従来の方法に比べ高収率で得ることができる。
【0073】
(上記式中、Rbは脱離基を表し、Ra
2は炭化水素置換基を表す。E
1〜E
5はそれぞれ独立に置換基を有してもよい炭素原子又は窒素原子を表す。E
1とE
2、E
4とE
5が置換基を有する場合、その置換基は互いに結合し環を形成していても良い。)
【0075】
(一般式(10)中、Ra
1は水素又は置換基を表す。Ra
2は炭化水素置換基を表す。E
1〜E
5はそれぞれ独立に置換基を有してもよい炭素原子又は窒素原子を表す。n1は1〜2の整数を表す。La
1は連結基を表す。E
1とE
2、E
4とE
5が置換基を有する場合、その置換基は互いに結合し環を形成していても良い。ただし、n1が1の場合、La
1は水素原子又は1価の置換基を表す。)
【0076】
Rbは脱離基を表し、一般に脱離基として用いられるアルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、臭素であることが好ましい。
【0077】
Ra
1で表される置換基としては、炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基又はアリール基を挙げることができる。Ra
1としては水素原子、メチル基又は炭素数1〜8のアリール基であることが好ましい。
【0078】
Ra
2で表される炭化水素置換基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基群Bで挙げた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Ra
2で表される炭化水素置換基として、好ましくは総炭素原子数1〜10のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数3〜8のアルキル基であり、例えばi−プロピル、シクロヘキシル、t−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、シクロヘキシルメチル、ベンジル等が挙げられる。
【0079】
n1が2の場合、La
1で表される連結基としては、一般式(1)におけるLと同義であり、好ましい例も同じである。n1が1の場合、La
1は水素原子又は総炭素原子数1〜10のアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
【0080】
E
1〜E
5はそれぞれ独立に置換基を有する又は有しない炭素又は窒素を表し、好ましくは全て炭素原子の場合である。E
1とE
2、E
4とE
5が置換基を有する場合、その置換基は互いに結合し環を形成していても良く、好ましくはE
1とE
2が互いにベンゼン環を形成し、フェナントリジン骨格を持つ場合である。具体的には一般式(10−1)の構造が挙げられる。
【0082】
(一般式(10−1)中、R
11は水素又は置換基を表す。Raは炭化水素置換基を表す。n1は1〜2の整数を表す。La
1は連結基を表す。ただし、n1が1の場合、La
1は水素原子又は1価の置換基を表す。)
【0083】
工程には反応溶媒を用いることができる。
反応溶媒の好ましい例としては、有機酸、無機酸、有機溶媒を用いることができるが、特に有機溶媒が好ましく、反応時に液体分離現象を起こさず、溶媒と均一な溶液を呈する溶媒が好ましい。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコール、アミルアルコール等のアルコール性有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶媒、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール等のジオール系有機溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系有機溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル等が挙げられる。これらの溶媒は2種類以上の混合液であってもよい。
【0084】
一般式(a)で表される化合物に対する溶媒の使用量は1〜250質量倍が好ましく、より好ましくは5〜100質量倍であり、特に10〜50質量倍が好ましい。
本発明において、一般式(a)で表される化合物は溶媒に分散している状態であっても、溶解液の状態になっていてもどちらでも良いが、溶解液の状態となっていることが好ましい。
【0085】
炭化水素−金属化合物の使用量は一般式(a)で表される化合物に対して1〜10当量が好ましく、より好ましくは1.2〜8当量であり、特に1.5〜3当量であることが好ましい。
【0086】
反応開始温度は、−100℃〜10℃が好ましく、より好ましくは−80℃〜5℃であり、更に好ましくは−60℃〜0℃である。−80℃以上であれば反応速度が速くなり合成に要する時間が短縮できるため経済的である。また、0℃以下で合成すれば、副生成物の生成量を抑制でき収率が向上するため好ましい。
【0087】
一般式(a)で表される化合物で表される化合物は、市販品で入手することができる。
【0088】
炭化水素−金属化合物としては、炭化水素−リチウム化合物、リホマトスキー試薬(ハロ亜鉛化合物)、炭化水素−スズ化合物、炭化水素−カドミウム化合物、ギルマン試薬(銅リチウム化合物)、グリニャール試薬(ハロマグネシウム化合物)を挙げることができ、好ましくはギルマン試薬、グリニャール試薬、リホマトスキー試薬であり、より好ましくはグリニャール試薬である。
中でもアルキルブロモマグネシウムと、反応剤として(ジフェニルホスフィノフェロセナト)ジクロロニッケルを共に用いた場合、アルキル基の種類に関わらず良好な結果が得られる。
【0089】
一般式(b)で表される化合物から一般式(10)で表される化合物を製造するには、通常の方法を用いることができる。例えば、Journal of Chemical Society 1932年 2225ページに記載の方法などを用いて一般式(b)をアミノ化し、米国公開2008−0297033号広報、134段落以降に記載の方法で所望の錯体を種々合成する事ができる。
【0090】
一般式(10)で表される化合物として好ましくはE
1とE
2が互いにベンゼン環を形成し、フェナントリジン骨格を持つ場合である。具体的には一般式(10−1)の構造が挙げられる。
【0092】
(一般式(10−1)中、R
11は水素又は置換基を表す。Raは炭化水素置換基を表す。n1は1〜2の整数を表す。La
1は連結基を表す。ただし、n1が1の場合、La
1は水素原子又は1価の置換基を表す。)
【0093】
R
11が表す置換基は一般式(10)におけるRa
1と同義である。
Raが表す置換基は一般式(10)におけるRa
2と同義である。
一般式(a)で表される化合物と炭化水素−金属化合物とを反応させて一般式(b)を得る工程の一例として、2位が脱離基によって置換されたフェナントリジンと炭化水素−金属化合物とを反応させて2−置換フェナントリジンを得る工程を以下に示す。
【0095】
(上記式中、Rbは脱離基を表し、Rは炭化水素置換基を表す。)
【0096】
本発明の製造方法を用いることにより、一般式(10)で表される化合物を従来の方法に比べ高収率で得ることができる。
【0097】
Rbは脱離基を表し、一般式(a)におけるRbと同義である。Rは炭化水素置換基を表し、一般式(10)におけるRa
2と同義である。
一般に脱離基として用いられるアルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、臭素であることが好ましい。
Rは炭化水素置換基を表し、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、ネオペンチルがより好ましく、ネオペンチルが更に好ましい。
【0098】
一般式(10)のn1が1の場合、例えば次のように合成する事ができる。
【0100】
(上記一般式中、R’は水素又は置換基を表す。Rは炭化水素置換基を表す。)
【0101】
一般式(10)のn1が2の場合、例えば次のように合成する事ができる。
【0103】
(上記一般式中、R’は水素又は置換基を表す。Rは炭化水素置換基を表す。)
【0104】
一般式(10)で表される化合物は、前述したように一般式(1)で表される化合物の中間体として用いることができる。すなわち、一般式(10)で表される化合物を金属化合物に配位させることにより一般式(10)で表される化合物の金属錯体とすることができる。
【0105】
例えば、配位子、又はその解離体と金属化合物を溶媒(例えば、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキサイド系溶媒、炭化水素系溶媒、水などが挙げられる)の存在下、若しくは、溶媒非存在下、塩基の存在下(無機、有機の種々の塩基、例えば、ナトリウムメトキサイド、t−ブトキシカリウム、トリエチルアミン、炭酸カリウムなどが挙げられる)、若しくは、塩基非存在下、室温以下、若しくは加熱し(通常の加熱以外にもマイクロウェーブで加熱する手法も有効である)得ることができる。
【0106】
〔有機電界発光素子〕
本発明の素子について詳細に説明する。
本発明の有機電界発光素子は、一対の電極間に発光層を有する有機電界発光素子であって、前記一般式(1)で表される化合物を含有する層を有する。
【0107】
本発明の有機電界発光素子において、発光層及び一般式(1)で表される化合物を含有する層は有機層であり、更に複数の有機層を有していてもよい。一般式(1)で表される化合物を含有する層が前記発光層であることが好ましい。
発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明若しくは半透明であることが好ましい。
図1は、本発明に係る有機電界発光素子の構成の一例を示している。
図1に示される本発明に係る有機電界発光素子10は、支持基板2上において、陽極4と陰極9との間に発光層6が挟まれている。具体的には、陽極4と陰極9との間に正孔注入層4、正孔輸送層5、電子ブロック層6、発光層7、及び電子輸送層8がこの順に積層されている。
【0108】
<有機層の構成>
前記有機層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記透明電極上に又は前記背面電極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機層は、前記透明電極又は前記背面電極上の前面又は一面に形成される。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0109】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/ブロック層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/ブロック層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ブロック層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ブロック層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ブロック層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
【0110】
有機層としては特に限定されないが、発光層の他に、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、励起子ブロック層、保護層などを有していてもよい。またこれらの各層は、それぞれ他の機能を兼備していても良い。
【0111】
本発明における有機層の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。更に、正孔輸送層と発光層との間、又は、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。なお、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
本発明の素子を構成する各要素について詳細に説明する。
【0112】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
<陽極>
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0113】
基板、陽極、陰極については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0070〕〜〔0089〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0114】
<有機層>
本発明における有機層について説明する。
有機層は発光層を含み、発光層以外の有機層としては、前述したごとく、正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0115】
−有機層の形成−
本発明の有機電界発光素子において、各有機層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
【0116】
−発光層−
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における発光層は、発光材料のみで構成されていても良く、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でも良い。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、ドーパントは一種であっても二種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は一種であっても二種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。更に、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。発光層としては、ホスト材料と発光材料として一般式(1)で表される化合物とを用いたものが好ましい。
また、発光層は一層であっても二層以上の多層であってもよい。発光層が複数の場合、一般式(1)で表される化合物を二層以上の発光層に含んでもよい。また、それぞれの発光層が異なる発光色で発光してもよい。
【0117】
本発明の一般式(1)で表される化合物と共に用いられるホスト材料としては、正孔輸送性ホスト材料であっても、電子輸送性ホスト材料であってもよいが、正孔輸送性ホスト材料であることが好ましい。
【0118】
(蛍光発光材料)
本発明に使用できる蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の錯体やピロメテン誘導体の錯体に代表される各種錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0119】
(燐光発光材料)
本発明に使用できる燐光発光材料としては、一般式(1)で表される化合物の他、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられ、中でも、更に好ましい発光性ドーパントとしては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、及びCe錯体が挙げられる。特に好ましくは、Ir錯体、Pt錯体、又はRe錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が好ましい。更に、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、3座以上の多座配位子を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が特に好ましい。
【0120】
燐光発光材料の含有量は、発光層中に、発光層の総質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下の範囲が好ましく、0.2質量%以上50質量%以下の範囲がより好ましく、0.3質量%以上40質量%以下の範囲が更に好ましく、5質量%以上30質量%以下の範囲が最も好ましい。
【0121】
本発明に用いることのできる燐光発光材料(一般式(1)で表される化合物及び/又は併用する燐光発光材料)の含有量は、発光層の総質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下の範囲が好ましく、1質量%以上40質量%以下の範囲がより好ましく、5質量%以上30質量%以下の範囲が最も好ましい。特に5質量%以上30質量%以下の範囲では、その有機電界発光素子の発光の色度は、燐光発光材料の添加濃度依存性が小さい。
本発明の有機電界発光素子は、上記化合物(I)(一般式(1)で表される化合物)の少なくとも一種を該発光層の総質量に対して5〜30質量%含有することが最も好ましい。
【0122】
(ホスト材料)
ホスト材料とは、発光層において主に電荷の注入、輸送を担う化合物であり、また、それ自体は実質的に発光しない化合物のことである。本明細書において「実質的に発光しない」とは、該実質的に発光しない化合物からの発光量が好ましくは素子全体での全発光量の5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは1%以下であることをいう。
【0123】
本発明においては、発光層が、ホスト材料を含むことが好ましい。
発光層中のホスト材料の濃度は、特に限定されないが、発光層中において主成分(含有量が一番多い成分)であることが好ましく、50質量%以上99.9質量%以下がより好ましく、50質量%以上99.8質量%以下が更に好ましく、60質量%以上99.7質量%以下が特に好ましく、70質量%以上95質量%以下が最も好ましい。
【0124】
前記ホスト材料のガラス転移点は、60℃以上500℃以下であることが好ましく、70℃以上300℃以下であることがより好ましく、90℃以上250℃以下であることが更に好ましい。
【0125】
本発明における発光層に含まれるホスト材料の膜状態での蛍光波長は、400nm以上650nm以下の範囲であることが好ましく、420nm以上600nm以下の範囲であることがより好ましく、440nm以上550nm以下の範囲であることが更に好ましい。
【0126】
また、本発明における発光層に含有されるホスト材料としては、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、インドール骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するもの及びアリールシラン骨格を有するものや、後述の正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層の項で例示されている材料が挙げられる。
【0127】
本発明に用いるホスト材料として例えば、特開2002−100476号公報の段落〔0113〕〜〔0161〕に記載の化合物及び特開2004−214179号公報の段落〔0087〕〜〔0098〕に記載の化合物を好適に用いることができるが、これらに限定されることはない。
【0128】
前記発光層は、一般式(1)で表される化合物と、更にホスト材料を含む事が好ましい。ホスト材料としては、正孔輸送性ホスト材料であっても、電子輸送性ホスト材料であってもよいが、正孔輸送性ホスト材料を用いることができる。本発明に用いるホスト材料は、下記一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物が好ましい。
本発明においては、発光層に前記一般式(1)で表される化合物と、更に一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物のどちらか一方と、を含むことが好ましい。
【0130】
(一般式(4−1)及び(4−2)中、d、eは0〜3の整数を表し、少なくとも一方は1以上である。fは1〜3の整数を表す。Rc
8は下記一般式(5)で表されるカルバゾール基を表す。)
【0132】
(一般式(5)中、Rc
9はそれぞれ独立に置換基を表す。gは0〜8の整数を表す。)
【0133】
Rc
9はそれぞれ独立に置換基を表し、具体的にはハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基であり、好ましくは炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下の置換又は無置換のアリール基である。
gは0〜8の整数を表し、電子輸送を担うカルバゾール骨格を遮蔽しすぎない観点から0〜4が好ましい。また、合成容易さの観点から、カルバゾールが置換基を有する場合、左右に対称になるように置換基を持つものが好ましい。
一般式(4−1)において、他方のベンゼン環の置換位置に対しメタでRc
8が置換することが好ましい。オルト置換では隣り合う置換基の立体障害が大きいため結合が開裂しやすく、耐久性が低くなる。また、パラ置換では分子形状が剛直な棒状へと近づき、結晶化しやすくなるため高温条件での素子劣化が起こりやすくなる。また、一般式(4−2)において、fが2又は3の場合、同様の観点からRc
8が互いにメタで置換することが好ましい。
【0134】
一般式(4−1)及び(4−2)が水素原子を有する場合、同位体(重水素原子等)も含む。この場合化合物中の全ての水素原子が同位体に置き換わっていてもよく、また一部が同位体を含む化合物である混合物でもよい。好ましくは一般式(5)におけるRc
9が重水素によって置換されたものであり、特に好ましくは以下の構造が挙げられる。
【0136】
更に置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいることを表す。
【0137】
一般式(4−1)及び(4−2)で表される化合物は、真空蒸着プロセスで薄層を形成することが好ましいが、溶液塗布などのウェットプロセスも好適に用いることが出来る。化合物の分子量は、蒸着適性や溶解性の観点から2000以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、800以下であることが特に好ましい。また蒸着適性の観点では、分子量が小さすぎると蒸気圧が小さくなり、気相から固相への変化がおきず、有機層を形成することが困難となるので、250以上が好ましく、300以上が特に好ましい。
【0138】
以下に、本発明における一般式(4−1)及び(4−2)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0142】
一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物はより好ましくは下記に示す化合物、若しくはその一部又は全ての水素が重水素に置き換わった化合物である。
【0144】
一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物を発光層以外の層(例えば電荷輸送層等)に導入する場合には、該層中において10質量%〜100質量%含まれることが好ましく、30質量%〜100質量%含まれることがより好ましい。
【0145】
有機電界発光素子は、更に発光層に炭化水素化合物を含むことが好ましい。本発明の化合物は平面性の高い配位子を平面4配位させているため、周囲のホスト分子や発光材料からπ軌道相互作用を受けやすいと考えられる。炭化水素化合物のような非極性な材料を発光層に添加することによって、この相互作用を低減し、エネルギー準位のばらつきを抑制することによって発光波形がよりシャープになり、CIE色度の良い素子を得る事ができる。炭化水素化合物は飽和若しくは不飽和であり、蒸着適性を付与するため分子量が900以下のものが好ましい。また、3重項エネルギーが発光材料よりも大きい値である必要があるため、母格としてアルカン、シクロアルカン、ビシクロアルカン、アダマンタンなどの飽和炭化水素を含有し、かつ芳香環を直接連結しない構造が好ましい。
炭化水素化合物は下記一般式(VI)で表される化合物であることが好ましい。
有機電界発光素子において用いられる、一般式(VI)で表される化合物は、化学的な安定性に優れ、素子駆動中における材料の分解等の変質が少なく、当該材料の分解物による、有機電界発光素子の効率低下や素子寿命の低下を防ぐことが出来る。
一般式(VI)で表される化合物について説明する。
【0147】
一般式(VI)中、R
4、R
6、R
8、R
10、X
4〜X
15は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基として具体的には置換基群Bが挙げられ、R
4、R
6、R
8、R
10、X
4〜X
15として好ましくは水素原子、アルキル基又はアリール基である。
【0148】
一般式(VI)の、R
4、R
6、R
8、R
10、X
4〜X
15で表されるアルキル基は、アダマンタン構造、アリール構造で置換されていてもよく、炭素数1〜70が好ましく、炭素数1〜50がより好ましく、炭素数1〜30が更に好ましく、炭素数1〜10がより更に好ましく、炭素数1〜6が特に好ましく、炭素数2〜6の直鎖のアルキル基が最も好ましい。
【0149】
一般式(VI)の、R
4、R
6、R
8、R
10、X
4〜X
15で表されるアルキル基としては、例えば、n−C
50H
101基、n−C
30H
61基、3−(3,5,7−トリフェニルアダマンタン−1−イル)プロピル基(炭素数31)、トリチル基(炭素数19)、3−(アダマンタン−1−イル)プロピル基(炭素数13)、9−デカリル基(炭素数10)、ベンジル基(炭素数7)、シクロヘキシル基(炭素数6)、n−ヘキシル基(炭素数6)、n−ペンチル基(炭素数5)、n−ブチル基(炭素数4)、n−プロピル基(炭素数3)、シクロプロピル基(炭素数3)、エチル基(炭素数2)、メチル基(炭素数1)などが挙げられる。
【0150】
一般式(VI)の、R
4、R
6、R
8、R
10、X
4〜X
15で表されるアリール基は、アダマンタン構造、アルキル構造で置換されていてもよく、炭素数6〜30が好ましく、炭素数6〜20がより好ましく、炭素数6〜15が更に好ましく、炭素数6〜10が特に好ましく、炭素数6が最も好ましい。
【0151】
一般式(VI)の、R
4、R
6、R
8、R
10、X
4〜X
15で表されるアリール基としては、例えば、1−ピレニル基(炭素数16)、9−アントラセニル基(炭素数14)、1−ナフチル基(炭素数10)、2−ナフチル基(炭素数10)、p−t−ブチルフェニル基(炭素数10)、2−m−キシリル基(炭素数8)、5−m−キシリル基(炭素数8)、o−トリル基(炭素数7)、m−トリル基(炭素数7)、p−トリル基(炭素数7)、フェニル基(炭素数6)などが挙げられる。
【0152】
一般式(VI)のR
4、R
6、R
8、R
10は、水素原子であっても、アルキル基であっても、アリール基であってもよいが、前述の高いガラス転移温度が好ましい観点から、少なくともひとつはアリール基であることが好ましく、少なくともふたつはアリール基であることがより好ましく、3ないし4つがアリール基であることが特に好ましい。
【0153】
一般式(VI)の、X
4〜X
15は、水素原子であっても、アルキル基であっても、アリール基であってもよいが、水素原子、又はアリール基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0154】
本発明における一般式(VI)で表される化合物の分子量は、有機電界発光素子を真空蒸着プロセスや溶液塗布プロセスを用いて作成するので、蒸着適性や溶解性の観点から、2000以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることが特に好ましい。また、蒸着適性の観点では、分子量が小さすぎると蒸気圧が小さくなり、気相から固相への変化がおきず、有機層を形成することが困難となるので、250以上が好ましく、350以上がより好ましく、400以上が特に好ましい。
【0155】
一般式(VI)で表される化合物は、室温(25℃)において固体であることが好ましく、室温(25℃)から40℃の範囲において固体であることがより好ましく、室温(25℃)から60℃の範囲において固体であることが特に好ましい。
室温(25℃)において固体を形成しない一般式(VI)で表される化合物を用いる場合は、他の材料と組み合わせることにより、常温で固相を形成させることができる。
【0156】
一般式(VI)で表される化合物の発光層における含量は、電荷輸送性を抑制しない程度の量に制限して用いる必要があり、一般式(VI)で表される化合物は0.1〜70質量%含まれることが好ましく、0.1〜30質量%含まれることがより好ましく、0.1〜25質量%含まれることが特に好ましい。
【0157】
一般式(VI)で表される化合物は、一種類のみを含有していてもよく、複数の一般式
(VI)で表される化合物を任意の割合で組み合わせて含有していてもよい。
【0158】
一般式(VI)で表される化合物の具体例を以下に列挙するが、以下に限定されるものではない。
【0163】
一般式(VI)で表される化合物は、アダマンタン、若しくは、ハロゲン化アダマンタンと、ハロゲン化アルキル若しくは、アルキルマグネシウムハライド(グリニヤー試薬)を適当に組み合わせることによって合成できる。例えば、インジウムを用いて、ハロゲン化アダマンタンと、ハロゲン化アルキルをカップリングすることができる(文献1)。また、ハロゲン化アルキルをアルキル銅試薬に変換し、芳香族化合物のグリニヤー試薬とカップリングすることもできる(文献2)。また、ハロゲン化アルキルを、適当なアリールホウ酸とパラジウム触媒を用いてカップリングすることもできる(文献3)。
文献1:Tetrahedron Lett.39,1998,9557−9558.
文献2:Tetrahedron Lett.39,1998,2095−2096.
文献3:J.Am.Chem.Soc.124,2002,13662−13663.
【0164】
アリール基を有するアダマンタン骨格は、アダマンタン、若しくは、ハロゲン化アダマンタンと、対応するアレーンやアリールハライドを適当に組み合わせることにより合成できる。
【0165】
なお、上記に示した製造方法において、定義された置換基が、ある合成方法の条件下で変化するか、又は該方法を実施するのに不適切な場合、官能基の保護、脱保護(例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、グリーン(T. W. Greene)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.)(1981年)等)等の手段により容易に製造が可能である。また、必要に応じて適宜置換基導入等の反応工程の順序を変化させることも可能である。
【0166】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0167】
―電荷輸送層―
電荷輸送層は、電極から電子又は正孔を受け取り発光層側に輸送する機能を有する層である。後述する正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電子ブロック層、正孔ブロック層を含む。
【0168】
本発明の有機電界発光素子は前記電極が陽極を含み、前記発光層と該陽極の間に電荷輸送層を有し、該電荷輸送層がカルバゾール化合物を含むことが好ましい。
【0169】
カルバゾール化合物は下記一般式(a)又は(b)のいずれかで表されるカルバゾール化合物であることが好ましい。
【0171】
(一般式(a)及び(b)中、Rはカルバゾール化合物の水素原子に置換し得る置換基を表し、Rは複数存在する場合はそれぞれ同じでも異なってもよい。nは0〜8の整数を表す。)
Rの例としては置換基群Bが挙げられ、好ましくはアルキル基である。
カルバゾール化合物に関してはアリールヒドラジンとシクロヘキサン誘導体との縮合体のアザーコープ転位反応の後、脱水素芳香族化による合成(L.F.Tieze,Th.Eicher著、高野、小笠原訳、精密有機合成、339頁(南江堂刊))が挙げられる。また、得られたカルバゾール化合物とハロゲン化アリール化合物のパラジウム触媒を用いるカップリング反応に関してはテトラヘドロン・レターズ39巻617頁(1998年)、同39巻2367頁(1998年)及び同40巻6393頁(1999年)等に記載の方法が挙げられる。反応温度、反応時間については特に限定されることはなく、前記文献に記載の条件が適用できる。
【0172】
一般式(a)又は(b)で表される化合物を、電荷輸送層中で用いる場合は、一般式(a)又は(b)で表される化合物は50〜100質量%含まれることが好ましく、80〜100質量%含まれることが好ましく、95〜100質量%含まれることが特に好ましい。
効率向上の観点では一般式(a)で表される化合物を電荷輸送層として用いる事がより好ましい。一般式(a)で表される化合物はmCPなどのカルバゾール化合物に比較してIpが小さく、ホールの輸送を妨げないため、発光層内での電荷再結合量が多くなるためと推測される。
耐久性の観点では一般式(b)で表される化合物を電荷輸送層として用いる事がより好ましい。一般式(b)で表される化合物は最低3重項エネルギーが大きく、発光層で生成した励起子をエネルギー移動によって受け取る確率が低くなるため、ブロック層材料の分解が抑制されることが理由と推測される。
また、一般式(a)で表される化合物を、複数の有機層に用いる場合はそれぞれの層において、上記の範囲で含有することが好ましい。
【0173】
一般式(a)及び(b)で表される化合物は、いずれかの有機層に、一種類のみを含有していてもよく、複数の一般式(a)又は(b)で表される化合物を任意の割合で組み合わせて含有していてもよい。
一般式(a)及び(b)で表される化合物は次のように合成する事ができる、最も一般的には、カルバゾール化合物に関してはアリールヒドラジンとシクロヘキサン誘導体との縮合体のアザーコープ転位反応の後、脱水素芳香族化による合成(L.F.Tieze,Th.Eicher著、高野、小笠原訳、精密有機合成、339頁(南江堂刊))が挙げられる。また、得られたカルバゾール化合物とハロゲン化アリール化合物のパラジウム触媒を用いるカップリング反応に関してはテトラヘドロン・レターズ39巻617頁(1998年)、同39巻2367頁(1998年)及び同40巻6393頁(1999年)等に記載の方法が挙げられる。反応温度、反応時間については特に限定されることはなく、前記文献に記載の条件が適用できる。また、特に一般式(a)で表される化合物は、例えば特許4140986号第75段落以降に記載の方法により合成することができる。
【0174】
電荷輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、3nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。
電荷輸送層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0175】
Rが表す置換基としては置換基群Bが挙げられ、ハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、芳香族複素環基が好ましく、炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下の置換又は無置換のアリール基がより好ましい。
nは0〜8の整数を表し、0〜4が好ましく、0〜2がより好ましい。
【0176】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極と発光層の間に設けられ、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン等を含有する層であることが好ましい。
【0177】
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜500nmであるのが好ましく、0.5nm〜300nmであるのがより好ましく、1nm〜200nmであるのが更に好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0178】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層、電子輸送層は、陰極と発光層の間に設けられ、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層、電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、フェナントレン誘導体、フェナントロリン誘導体、8−キノリノール誘導体の錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする錯体に代表される各種錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0179】
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々100nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、1nm〜100nmであるのが好ましく、5nm〜50nmであるのがより好ましく、10nm〜30nmであるのが更に好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜100nmであるのが好ましく、0.2nm〜80nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのが更に好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0180】
−正孔ブロック層−
正孔ブロック層は、陰極と発光層の間に設けられ、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノラート(Aluminum (III)bis〔2−methyl−8−quinolinato〕4−phenylphenolate(BAlqと略記する))等のアルミニウム錯体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
−電子ブロック層−
電子ブロック層は、陽極と発光層の間に設けられ、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
電子ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0181】
<保護層>
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0169〕〜〔0170〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0182】
<封止容器>
本発明の素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
封止容器については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0171〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0183】
本発明の素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0184】
本発明の素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0185】
(本発明の発光素子の用途)
本発明の発光素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、又は光通信等に好適に利用できる。特に、照明装置、表示装置等の発光輝度が高い領域で駆動されるデバイスに好ましく用いられる。
【0186】
次に、
図2を参照して本発明の発光装置について説明する。
本発明の発光装置は、前記有機電界発光素子を用いてなる。
図2は、本発明の発光装置の一例を概略的に示した断面図である。
図2の発光装置20は、透明基板(支持基板)2、有機電界発光素子10、封止容器16等により構成されている。
【0187】
有機電界発光素子10は、基板2上に、陽極(第一電極)3、有機層11、陰極(第二電極)9が順次積層されて構成されている。また、陰極9上には、保護層12が積層されており、更に、保護層12上には接着層14を介して封止容器16が設けられている。なお、各電極3、9の一部、隔壁、絶縁層等は省略されている。
ここで、接着層14としては、エポキシ樹脂等の光硬化型接着剤や熱硬化型接着剤を用いることができ、例えば熱硬化性の接着シートを用いることもできる。
【0188】
本発明の発光装置の用途は特に制限されるものではなく、例えば、照明装置のほか、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電子ペーパ等の表示装置とすることができる。
【0189】
次に、
図3を参照して本発明の実施形態に係る照明装置について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る照明装置の一例を概略的に示した断面図である。
本発明の実施形態に係る照明装置40は、
図3に示すように、前述した有機EL素子10と、光散乱部材30とを備えている。
より具体的には、照明装置40は、有機EL素子10の基板2と光散乱部材30とが接触するように構成されている。光散乱部材30は、光を散乱できるものであれば特に制限されないが、
図3においては、透明基板31に微粒子32が分散した部材とされている。
透明基板31としては、例えば、ガラス基板を好適に挙げることができる。微粒子32としては、透明樹脂微粒子を好適に挙げることができる。ガラス基板及び透明樹脂微粒子としては、いずれも、公知のものを使用できる。このような照明装置40は、有機電界発光素子10からの発光が散乱部材30の光入射面30Aに入射されると、入射光を光散乱部材30により散乱させ、散乱光を光出射面30Bから照明光として出射するものである。
【実施例】
【0190】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
以下において、本発明の素子1−1、本発明の素子1−3、本発明の素子1−4、本発明の素子1−5、本発明の素子1−6、本発明の素子1−7、本発明の素子2−1、本発明の素子2−2、本発明の素子2−3、本発明の素子2−4、本発明の素子3−1、本発明の素子3−2、本発明の素子3−3、本発明の素子3−4、本発明の素子3−5は、それぞれ順に参考素子1−1、参考素子1−3、参考素子1−4、参考素子1−5、参考素子1−6、参考素子1−7、参考素子2−1、参考素子2−2、参考素子2−3、参考素子2−4、参考素子3−1、参考素子3−2、参考素子3−3、参考素子3−4、参考素子3−5と読み替えるものとする。
【0191】
〔合成例1〕下記の例示化合物Gを合成した。
【0192】
【化38】
【0193】
a(40.0mg,83.9mmol,1.0等量)、二塩化白金(23.4mg,88.0mmol,1.05等量)及びトリフルオロ酢酸銀(37.0mg,167mmol,2.0等量)をm−トルニトリル(5mL)中、窒素雰囲気下加熱還流条件にて5時間半攪拌した。反応液を濃縮乾固後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:CH
2Cl
2=1:1〜CH
2Cl
2)に供した。得られた粗生成物を酢酸エチル−メタノール(1:2)で洗浄することで、白金錯体を黄色粉末として24.0mg得た。収率43%。
【0194】
1H−NMR (300MHz, CDCl
3)δ:2.06(s,6H),7.09(s,2H),7.55−7.75(m,6H),8.09(d,J=7.7Hz,2H),8.18(dd,J=7.7Hz,1.3Hz,2H),8.26(m,J(Pt−H)=51.2Hz,2H),8.54(d,J=7.5Hz,2H).
【0195】
(本発明の素子1−1の作製)
0.5mm厚み、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極(ITO膜)上に真空蒸着法にて以下の有機層を順次蒸着した。
第1層:CuPc:膜厚160nm
第2層:NPD:膜厚10nm
第3層:発光材料A(15質量%)、mCBP(85質量%):膜厚60nm
第4層:BAlq:膜厚10nm
第5層:BCP(99質量%)及びLi(1質量%):膜厚20nm
この上に、フッ化リチウム1.0nm及び金属アルミニウム100nmをこの順に蒸着し陰極とした。
得られた積層体を、大気に触れさせること無く、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、本発明の素子1−1を得た。
【0196】
(本発明の素子1−2〜1−7及び比較素子1〜3の作製)
第3層の構成材料を、下記表1に示すように、発光層材料1を変更する以外は本発明の素子1−1と同様にして各種素子を作製した。また、発光層材料1〜3における数字は、例示化合物に付与された数字に対応している。
【0197】
(本発明の素子2−1〜2−4の作製)
第2層と第3層の間に表1「HTL」に示す材料を10nmの厚さで蒸着し、以降は本発明の素子1−1と同様にして各種素子を作製した。
【0198】
(本発明の素子3−1〜3−5の作製)
第3層の組成を表1に示す割合で蒸着する以外は、本発明の素子1−1と同様にして各種素子を作製した。
【0199】
得られた各種素子に対し、発光効率及び輝度半減時間を測定して素子の効率及び耐久性を測定した。なお、下記例において、各種測定は以下のように行なわれた。
(a)発光波長
東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電圧を各素子に印加し発光させた。発光波長は浜松ホトニクス製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定した。
(b)輝度半減時間
東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電圧を各素子に印加し発光させた。その輝度半減時間をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定した。他の素子についても同様に測定を行い、本発明の素子1−1の開始輝度2000cd/m
2での半減時間を100とし、これを基準とした相対値を表1に記載した。
(c)発光効率・発光色
東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電圧を各素子に印加し発光させ、その輝度をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定した。その際発光色を目視によって確認した。発光スペクトルと発光波長は浜松ホトニクス製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定した。これらを元に輝度が1000cd/m
2付近の外部量子効率を輝度換算法により算出し、本発明の素子1−1の値を、100として、表1において相対値で示した。効率は数字が大きいほど好ましい。
(d)半値幅
(C)によって得られた発光スペクトルを用い、相対強度が0.5を示す波長を求め、その差分を半値幅とした。本発明の素子1−1の値を100として、表1において相対値で示した。半値幅が小さいほどスペクトルはシャープであり好ましい色度が得られる。
【0200】
【表1】
【0201】
表1の結果から、本発明の素子は、発光波長が同様の比較例の素子と比べて、発光効率に優れ、半減時間が長いことが分かる。また、電荷輸送層として陽極側にカルバゾール材料を用いた場合、発光効率が更に向上する事がわかる。
一方で、燐光発光材料を高濃度で用いると半値幅が大きくなり、色純度が悪化するが発光層に炭化水素材料を添加するとスペクトルのブロード化を抑制する事ができる。
【0202】
表示装置の場合、各画素部で高い電流密度を通じて瞬間的に高輝度発光させる必要があり、本発明の発光素子はそのような場合にも高い発光効率が得られるように設計されているため、有利に利用することができる。
【0203】
上記実施例及び比較例で使用した化合物の構造を以下に示す。
【0204】
【化39】
【0205】
【化40】