【実施例】
【0127】
以下、本発明を実施例などに基づいて説明するが、本発明の範囲は以下の実施例などに限定して解釈されない。なお、以下に記述した技術は、例えばマニアティスらの方法(Maniatis,T.,et al.Molecular Cloning.Cold Spring Harbor Laboratory 1982年、1989年)や本明細書に記載の(非)特許文献、市販の各種酵素、又はキット類に添付された手順に従えば実施できるものである。
【0128】
本実施例にて使用したホスホリパーゼA2は次の通りである。
【0129】
PLA2 II L(Lot 1001A、旭化成ファーマ株式会社、Streptomyces avermitilis由来、品番T−194)。PLA2ナガセ(製造番号7907851、ナガセケムテックス株式会社、Streptomyces avermitilis由来)。LIPOMOD 699L(Batch No.90825437、Biocatalyst、豚の膵臓由来、品番L699L)。
【0130】
本実施例にて使用した試薬類は、特に断らない限り、和光純薬工業株式会社製、シグマアルドリッチ社製、タカラバイオ株式会社製などであり、市販で容易に入手できるものを使用した。
【0131】
以下に示した測定値などは測定の条件、使用機器の精度、試薬のメーカーや純度などによりその値は変化し得る。
【0132】
[実施例1:活性測定方法]
各ホスホリパーゼ(PL(A)、PLB、PLA2 II L、PLA2ナガセ、及びLIPOMOD 699L)の活性測定方法を
図1に簡略して示した。Acyl−CoA Synthetase(EC 6.2.1.3)及びAcyl−CoA Oxidase(EC 1.3.3.6)は旭化成ファーマ株式会社から入手した(品番はそれぞれT−16及びT17)。
【0133】
<第一反応試薬混合液>
80mM トリス−塩酸緩衝液pH8.0
50mM(0mM(*)) 塩化カルシウム
4mM ATP
4mM CoA
1.06U/mL Acyl−CoA Synthetase
2mM ジパルミトイルホスホコリン(DPPC)
(*)他の実施例では0mMの場合もある。
【0134】
<第二反応試薬混合液>
40mM PIPES−NaOH緩衝液pH7.5
0.06% 4−AA
0.04% フェノール
4.5U/mL peroxidase
30U/mL Acyl−CoA Oxidase
0.2% トリトンX−100
20mM ATP
0.1mM FAD
<反応停止液>
0.5% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を含む0.1M EDTA溶液pH8.0
<酵素溶解希釈用液>
0.05%BSAを含む10mMトリス−塩酸緩衝液pH8.0
<測定操作法>
(1)小試験管に第一反応試薬混合液0.50mLずつを正確に分注し、37℃で予備加温する。
【0135】
(2)5分経過後、適切な濃度に酵素溶解希釈緩衝液で希釈した酵素試料液(PL(A)、PLB、PLA2 II L、PLA2ナガセ又はLIPOMOD 699L)50μLを正確に加えて混和し、37℃で第一反応を開始する。盲検は酵素試料液の代わりに酵素溶解希釈緩衝液50μLを加える。
【0136】
(3)10分経過後、20mM NEM溶液0.50mLを加えて混和し、15秒後に第二反応試薬混合液0.50mLを加えて混和し、37℃で第二反応を開始する。
【0137】
(4)5分経過後、反応停止液1.50mLを加えて混和し、反応を停止する。
【0138】
(5)500nmにおける吸光度を測定する。求められた吸光度を試料液についてはAs、盲検液についてはAbとする。吸光度範囲は△A=(As−Ab)≦0.25Absとする。
【0139】
<計算>
以下の(式5)に従い活性を計算する。なお、1ユニット(U)とは、本実施例の条件下、各ホスホリパーゼが基質(実施例1においてはDPPC)を加水分解する作用をして脂肪酸を1分間に1μmol生成する反応速度とした。
【0140】
【数5】
【0141】
<結果>
図1で示したように、本実施例の活性測定方法は各ホスホリパーゼの作用により生成した脂肪酸を測定する方法である。したがって、本実施例の活性測定方法でPL(A)の活性が測定できたことは、PL(A)は他のPLA2と同様に、DPPCに作用して少なくとも脂肪酸を生成していることを示している。
【0142】
実施例1にて測定した各ホスホリパーゼの活性を表1に示した。
【0143】
【表1】
【0144】
本実施例では表1の各ホスホリパーゼを適宜希釈して用いた。すなわち、各ホスホリパーゼの表示活性は本実施例では採用しなかった。
【0145】
[参考例1:Streptomyces albidoflavus由来PL(A)の調製方法]
[参考例1−1:Streptomyces albidoflavus NA297の染色体DNAの分離]
Streptomycesa albidoflavus NA297をYEME培地(0.3%酵母エキス、0.5%ペプトン、0.3%麦芽エキス、1%グルコース、34%シュークロース、5mM MgCl
2、0.5%グリシン)50mLを用いて28℃で4日間培養し集菌した。次いで、この菌体を75mM NaCl、25mM EDTA、20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)及び1mg/mlリゾチームからなる溶液5mLに懸濁し、37℃で一晩処理した。これに10%(w/v) SDSを750μL、proteinase Kを5mg添加し55℃で2時間処理した。この溶液にクロロホルム7.5mLを加えて攪拌し、遠心分離により水相5mLを分取した。この水相に3mLのイソプロパノールを添加混合してDNA画分を回収し、10mM 卜リス−塩酸緩衝液(pH8.0)及び1mM EDTAからなる溶液500μLに溶解した。これにRNaseAを20μg/mLとなるように加え、37℃で1時間処理した後、0.8MのNaClを含む13%PEG溶液を500μL加え攪拌し、遠心分離により、水相を500μL分取した。これにフェノール/クロロホルム混合液500μLを加えて攪拌し、遠心分離により、水相を500μL分取した。この水相に3M 酢酸ナトリウム(pH5.2) 50μL及びエタノール1mLを添加混合しDNAを回収した。このDNAを70%(v/v)エタノールに10分間浸漬した後、10mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)及び1mM EDTAからなる溶液200μLに溶解し、鋳型染色体DNAとした。
【0146】
[参考例1−2:Streptomyces albidoflavus NA297PL(A)遺伝子を含む組換えプラスミドの作製]
PCR用のオリゴとして、センスプライマー「primer S」(配列番号5)及びアンチセンスプライマーとして「primer AS」(配列番号6)を合成した。参考例1−1で得た鋳型染色体DNA 50ng、10×PCR Buffer 2.5μL、プライマー各1200nM、dNTPs各0.3mM、MgCl
2、1.2mM、DMSO 4%、KOD DNA Polymerase 1.25ユニット、蒸留水を全量25μLとなるように添加した。PCR反応条件は次のとおりである。
【0147】
ステップ1:98℃、2分;
ステップ2:98℃、15秒;
ステップ3:72℃、15秒;
ステップ4:74℃、60秒;
ステップ2からステップ4を30サイクル繰り返す;
ステップ5:74℃、4分。
【0148】
このPCRにより約900bpの特異的な増幅産物が得られた。増幅産物中の
689AGATCT
694配列は、Kunkel法(Kunkel,T.A.(1985)Rapid and efficient site−specific mutagenesis without phenotypic selection.Proceedings of the National Academy of Science of the USA,82巻、488−492頁)により
689AAATCT
694とした。
【0149】
この増幅された断片をNheIとBglIIで消化し、発現ベクターである放線菌プラスミド(pMD20−Tベクター(TaKaRa製))のNheI−BglII部位に挿入して、組換えプラスミドを得た。
【0150】
[参考例1−3:Streptomyces albidoflavus NA297由来PL(A)遺伝子を発現する組換え放線菌の作製]
参考例1−2で得た組換えプラスミドを用いて、「PRACTICAL STREPTOMY CES GENETICS(Kieserら、John Innes Foundation、2000年)」に記載の方法に従い、プロトプラスト化された放線菌Streptomyces lividans)1326を形質転換し、組換え放線菌を得た。
【0151】
[参考例1−4:Streptomyces albidoflavus NA297由来PL(A)遺伝子を発現する組換え放線菌の培養]
参考例1−3で得た組換え放線菌を、12μg/mLのチオストレプトンを含む100mL×4本のトリプチックソイ培地(ペクトン・ディッキンソン社製)で培養した。得られた培養液340mLから遠心分離(15000rpm、5分、4℃)にて上清を回収し、硫酸アンモニウム分画にて、沈殿を回収した。回収した沈殿を20mM 卜リス−塩酸緩衝液(pH8.0)に溶解し、20mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を外液として透析して酵素溶液を得た。得られたPL(A)の濃度は約2.5U/mLで、適宜10−kDa centrifugal filter device(ミリポア社製)などで濃縮して実施例1〜実施例11で本発明のPL(A)として使用した。
【0152】
[参考例2:PLBの調製方法]
日本農芸化学会2011年度大会の講演番号:2C10a05(2011年3月23日9:44〜)、Streptomyces sp. NA684由来新規ホスホリパーゼBの大量発現とその特性解析(松本優作、杉森大助(福島大院・理工))によって公開された方法で調製して実施例で使用した。
【0153】
(a)培養
NB培地「1%ペプトン(べクトン・ディンキンソン社製)、1%肉エキス(極東製薬工業(株)製)、0.5% 塩化ナトリウム(和光純薬工業(株)製)、pH7.2」300mLを調製し、500mL容三角フラスコに100mlずつ分注して、さらに1%大豆レシチンと0.1%ツィーン(Tween)80を添加した後、121℃で15分間蒸気殺菌を行った。予め平板培地に生育したストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)NA684のコロニーを適当量とり、トリプチックソイ培地(べクトン・ディンキンソン社製)5mLを入れたφ18試験管(18×180mm)に接種し、28℃で良好な生育が得られるまで振とう培養した。この培養液を先の滅菌した培地100mLに1mlずつ接種し、28℃で108時間振とう培養した。遠心分離機を用いて、この培養液から上清を回収した。
【0154】
(b)硫安分画
上記(a)で回収した培養上清に、80%(w/v)飽和となるように硫酸アンモニウムを添加し、生じた沈殿を遠心分離(10,000rpm、30分、4℃)により回収した。この沈殿を可溶化し、20mMトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)で透析し、粗酵素液を得た。
【0155】
(c)DEAE−Toyopearlカラムクロマトグラフィー
上記(b)で得られた粗酵素液を、20mM トリス−塩酸緩衝液(pH9.0)で予め平衡化した「DEAE−Toyopearl650Mカラム」(内径26mm、高さ55mm、東ソー社製)にアプライした。同緩衝液でカラムを洗浄した後、塩化ナトリウム(0Mから1Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させた。
【0156】
(d)HiTrap Qカラムクロマトグラフィー
上記(c)で得られた活性画分を集め、Viva spin(ザルトリウス社製)を用い濃縮脱塩した。これに、20mMトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)を加えた。これを、20mMトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)で予め平衡化した「HiTrap Q」(5ml)カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にアプライし、同緩衝液でカラムを洗浄した後、塩化ナトリウム(0Mから1Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させた。
【0157】
(e)RESOURCE PHEカラムクロマトグラフィー
上記(d)で得られた活性画分を集め、Viva spinを用い濃縮脱塩した。これに、1M硫酸アンモニウムを含む20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を加えた。1M硫酸アンモニウムを含む20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で予め平衡化した「RESOURCE PHE」(1ml)カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にアプライし、同緩衝液でカラムを洗浄した後、硫酸アンモニウム(1Mから0Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させた。
【0158】
(f)Mono Sカラムクロマトグラフィー
上記(e)で得られた活性画分を集め、Viva spinを用い濃縮脱塩した。これに、20mMメス−水酸化ナトリウム緩衝液(pH6.0)を加えた。20mMメス−水酸化ナトリウム緩衝液(pH6.0)で予め平衡化した「Mono S」(1ml)カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にアプライし、同緩衝液でカラムを洗浄した後、塩化ナトリウム(0Mから0.5Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させた。
【0159】
(g)SDS−PAGE
上記(e)で溶出した活性画分を集めてSDS−PAGE(12%(w/v)ポリアクリルアミドゲル)により解析した。
【0160】
以上のようにして、ストレプトマイセス・エスピー(Streptomycessp.)NA684株より、電気泳動的に単一に精製された酵素を得た。
【0161】
[実施例2:PL(A)の基質特異性1]
本実施例では、ホスファチジルコリンのsn−1位とsn−2位に対するPL(A)の反応速度(加水分解速度)を比較した。
【0162】
<反応液>
100mM Tris−塩酸緩衝液(pH7.2)
0.50% ホスファチジルコリン(ナカライテスク、品番20342−52)
25mM EDTA
1% トリトンX−100
0.9mU/mL PL(A)
反応は37℃で行った。反応開始0、5、10、20、30分後に<反応液>を50μLずつ取り出して、この<反応液>にCHCl
3:CH
3OH(体積比2:1)の溶液を50μL加えて混合し反応を停止した。有機相に抽出されたリゾリン脂質の量をHPLCで測定した。
【0163】
<HPLC条件>
Systech社、Alltima Silica 3μm、100mm×4.6mm
溶離液A:CHCl
3/MeOH/H
2O(80/18/2)
溶離液B:CHCl
3/MeOH/H
2O(60/34/6)
グラジエント:0min、100%Aから15minで100%Bのリニアグラジエント
検出器:ELSD
流速:1 ml/min
カラム温度:25℃
<結果>
37℃、20分間の加水分解反応で、収率約16.5%でリゾリン脂質を得ることができた。その内訳は、2−アシル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(2−Acyl−sn−glycero−3−phosphocholine)が約8割、1−アシル−sn−グリセ口−3−ホスホコリン(1−AcyL−sn−glycero−3−phosphocholine)が約2割であり、その比率は少なくとも反応開始後5分から30分の間は一定であった(
図4)。
【0164】
したがって、ホスファチジルコリンのsn−1位とsn−2位に対するPL(A)の反応速度比は約4:1であることが示された。
【0165】
[実施例3:PL(A)の基質特異性2と比活性]
本実施例では、PlsEtn(C18、18:1)とDPPCに対するPL(A)の反応速度(加水分解速度)を比較し、比活性を測定した。
【0166】
<第一反応試薬混合液2>
80mM トリス−塩酸緩衝液pH8.0
5又は0mM 塩化カルシウム
4mM ATP
4mM CoA
1.06U/mL Acyl−CoA Synthetase
2mM PlsEtn(C18、18:1)
まず実施例1の方法でPL(A)の活性を測定した。次に0mM塩化カルシウム(カルシウムイオン非存在)の<第一反応試薬混合液>を調製し、実施例1の方法でPL(A)の活性を測定した。次に<第一反応試薬混合液>の代わりに<第一反応試薬混合液2>を用いて、それ以外は実施例1の方法と同様にしてPL(A)の活性を測定した。最後に0mM塩化カルシウム(カルシウムイオン非存在)の<第一反応試薬混合液2>を用いて、それ以外は実施例1の方法と同様にしてPL(A)の活性を測定した。そして相対活性を(式3)で計算した。n=5で実施した。
【0167】
<結果>
【0168】
【表2】
【0169】
表2で示したように、PlsEtn(C18、18:1)に対するPL(A)の相対活性はDPPCに対して19±5%(平均±SD)であった。
【0170】
[実施例4:PL(A)の基質特異性3]
本実施例では、PlsEtn(C18、20:4)とPOPCに対するPL(A)の反応速度(加水分解速度)を比較した。
【0171】
<反応液1>
120mM Tris−塩酸緩衝液(pH7.2)
2.5% PlsEtn(C18、20:4)
1mM EDTA
1% トリトンX−100
<反応液2>
120mM Tris−塩酸緩衝液(pH7.2)
2.5% POPC
1mM EDTA
1% トリトンX−100
50℃にした100μLの<反応液1>及び<反応液2>に、5mU/mLのPL(A)を5μL添加して反応を開始した。反応開始後5分後に、<反応液1>及び<反応液2>を煮沸して反応を停止した。<反応液1>及び<反応液2>に含まれる遊離脂肪酸の生成量を、遊離脂肪酸測定キットである「NEFA Cテストワコー」(和光純薬工業社製)で測定した。相対活性は(式4)で計算した。n=5で実施した。
【0172】
<結果>
PL(A)はPlsEtn(C18、20:4)に作用して脂肪酸を生成していることが明らかになった。また、本発明のPL(A)のPlsEtn(C18、20:4)に対する相対活性は、POPCに対して、29±13%(平均±SD)であった。
【0173】
[実施例5:各ホスホリパーゼのSDS−PAGE法による分子量測定]
<SDS−PAGEサンプルバッファー>
125mM Tris−塩酸緩衝液(pH6.8)
4(W/V)% SDS
10(W/V)% シュークロース
0.01(W/V)% ブロモフェノールブルー
10(W/V)% 2−メルカプトエタノール
<泳動buffer>
3g/L Tris
14.4g/L Glycine
1g/L SDS
各ホスホリパーゼ(PL(A)、PLB、PLA2 II L、PLA2ナガセ、及びLIPOMOD 699L))溶液を280nmにおける吸光度が約1.0になるように蒸留水で希釈し、各ホスホリパーゼ水溶液とした。次に各ホスホリパーゼ水溶液20μLと<SDS−PAGEサンプルバッファー>を20μLとを混合して、99℃で20分間加熱して変性した。変性した各ホスホリパーゼを室温まで冷却して、10μLをSDS−PAGE法により分子量測定した。分子量マーカーはSDS−PAGEスタンダードBroad range(Bio RAD、品番161−0317)を使用した。ポリアクリルアミドゲルはe−PAGEL(アトー株式会社、品番E−T15S)を使用した。泳動bufferは上記の通りである。泳動は室温、定電流(20mA)にて約60分間行った。ポリペプチドの染色はEz Stain Aqua(アトー株式会社、品番AE−1340)を使用した。脱色は純水を使用した。
【0174】
<結果>
図5のレーン1と7はマーカーである。レーン2〜6は各ホスホリパーゼで、SDS− PAGE法による分子量は、
レーン2 PL(A) 約25〜30kDaの範囲
レーン3 PLB 約43〜45kDaの範囲
レーン4 PLA2 II L 約12〜14kDaの範囲
レーン5 PLA2ナガセ 約12〜14kDaの範囲
レーン6 LIPOMOD 699L 約12〜14kDaの範囲
となった。
【0175】
PLA2 II L、PLA2ナガセ及びPLIPOMOD 699LのSDS−PAGE法による分子量は公知のホスホリパーゼA2と同様であった。一方、PL(A)のSDS−PAGE法による分子量は約25〜30kDaの範囲であり、ホスホリパーゼA1及びホスホリパーゼA2とは明確に異なっていた。
【0176】
[実施例6−1:PlsEtnに対する各ホスホリパーゼの作用(カルシウムイオンの存在下)]
本実施例では、各ホスホリパーゼ(PL(A)、PLB、PLA2 II L、PLA2ナガセ、LIPOMOD 699L)のブタ脳から抽出したPlsEtnに対する作用をカルシウムイオンの存在下比較した。
【0177】
なお、ブタ脳から抽出したPlsEtn(Brain,Porcine、Avanti Polar Lipids、Inc.、品番840022)は、天然物であるので(化3)や(化4)を含む複数のPlsEtnが混在していると考えられる。すなわち、各ホスホリパーゼにより作用されやすい分子種のPlsEtnと作用されにくい分子種のPlsEtnが混在していると考えられる。
【0178】
<反応液>
10mM トリス−塩酸緩衝液pH7.5
2mM ブタ脳から抽出したPlsEtn(又はlyPls(化7))
2mM CaCl
2
10U/mL 各ホスホリパーゼ
<反応液>を37℃で反応し、反応開始10分後にCHCl
3:CH
3OH(体積比2:1)の溶液を<反応液>と等量加えて混合し反応を停止した。有機相に抽出されたリン脂質をTLCのサンプルとした。盲検は各ホスホリパーゼを<反応液>に加えなかった。
【0179】
<TLCの方法>
薄層クロマトグラフィー(TLC、TLC silica gel 60、MERCK社)に3μLスポットし、展開溶媒(クロロホルム:メタノール:蒸留水=65:25:4)で約2〜3時間展開した。展開したTLCにニンヒドリンスプレー(和光純薬工業株式会社、品番145−08601)を適量噴霧して100℃で約15〜30秒間乾熱オーブンで熱してlyPlsEtnやPlsEtnを検出した。なお、他の実施例におけるTLCの条件も本実施例と同様である。
【0180】
ここで、lyPlsEtnの標品として使用した1−O−1’−(Z)−octadecenyl−2−hydroxy−sn−glycero−3−phosphoethanolamine((化7)Avanti Polar Lipids、Inc.品番852471)である。
【0181】
【化7】
【0182】
<結果>
図6のレーン1〜7は次の通りである。
【0183】
レーン1はブタ脳から抽出したPlsEtnに各ホスホリパーゼを作用させなかった<反応液>(盲検)から有機相に抽出したリン脂質である。
【0184】
レーン2はlyPlsEtn(化7)に各ホスホリパーゼを作用させなかった<反応液>(盲検)から有機相に抽出したリン脂質である。
【0185】
レーン3はPL(A)をブタ脳から抽出したPlsEtnに作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0186】
レーン4はPLBをブタ脳から抽出したPlsEtnに作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0187】
レーン5はPLA2 II Lをブタ脳から抽出したPlsEtnに作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0188】
レーン6はPLA2ナガセをブタ脳から抽出したPlsEtnに作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0189】
レーン7はLIPOMOD 699Lをブタ脳から抽出したPlsEtnに作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0190】
TLCのスポットを、デンシトメーターで定量した結果を表3に示した。
【0191】
【表3】
【0192】
ブタ脳から抽出したPlsEtnが消失し、lyPlsEtn(レーン2)と同じ位置に移動度が変化する作用を強く示したのはレーン3(PL(A))であった。レーン6(PLA2ナガセ)とレーン7(LIPOMOD 699L)も同様の作用を示したが、その程度はPL(A)より弱かった。
【0193】
[実施例6−2:各ホスホリパーゼのPlsEtnへの作用(カルシウムイオンの存在下)]
本実施例では、各ホスホリパーゼ(PL(A)、PLB、PLA2 II L、PLA2ナガセ、LIPOMOD 699L)のPlsEtn(化1)に対する作用を、カルシウムイオンの存在下、比較した。
【0194】
<反応液>
10mM トリス−塩酸緩衝液pH7.5
2mM PlsEtn(化1)(又はlyPls(化7))
2mM CaCl
2
10U/mL 各ホスホリパーゼ
<反応液>を37℃で反応し、反応開始10分後にCHCl
3:CH
3OH(体積比2:1)の溶液を<反応液>と同じ量加えて混合し反応を停止した。有機相に抽出されたリン脂質をTLCのサンプルとした。
【0195】
<結果>
図7のレーン1〜7は次の通りである。
【0196】
レーン1はPlsEtn(化4)に各ホスホリパーゼを作用させなかった<反応液>(盲検)から有機相に抽出したリン脂質である。
【0197】
レーン2はlyPlsEtn(化7)に各ホスホリパーゼを作用させなかった<反応液>(盲検)から有機相に抽出したリン脂質である。
【0198】
レーン3はPL(A)をPlsEtn(化4)に作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0199】
レーン4はPLBをPlsEtn(化4)に作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0200】
レーン5はPLA2 II LをPlsEtn(化4)に作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0201】
レーン6はPLA2ナガセをPlsEtn(化4)に作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0202】
レーン7はLIPOMOD 699LをPlsEtn(化4)に作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0203】
TLCのスポットを、デンシトメーターで定量した結果を表4に示した。
【0204】
【表4】
【0205】
PlsEtn(化4)が消失し、lyPlsEtn(化7)と同じ位置に移動度が変化する作用を強く示したのはレーン3(PL(A))であった。レーン6(PLA2ナガセ)とレーン7(LIPOMOD 699L)も同様の作用を示したが、その程度はPL(A)より弱かった。
【0206】
[実施例7−1:各ホスホリパーゼのPlsへの作用(カルシウムイオンの非存在下)]
本実施例では、各ホスホリパーゼ(PL(A)、PLB、PLA2 II L、PLA2ナガセ、LIPOMOD 699L)のブタ脳から抽出したPlsEtnに対する作用をカルシウムイオンの非存在下比較した。
【0207】
<反応液>
10mM トリス−塩酸緩衝液pH7.5
2mM ブタ脳から抽出したEtnPls(又はlyPls(化7))
10U/mL 各ホスホリパーゼ
<反応液>を37℃で反応し、反応開始10分後にCHCl
3:CH
3OH(体積比2:1)の溶液を<反応液>と同じ量加えて混合し反応を停止した。有機相に抽出されたリン脂質をTLCのサンプルとした。盲検は各ホスホリパーゼを<反応液>に加えなかった。
【0208】
<結果>
図8のレーン1〜7は次の通りである。
【0209】
レーン1はブタ脳から抽出したPlsEtnに各ホスホリパーゼを作用させなかった<反応液>(盲検)から有機相に抽出したリン脂質である。
【0210】
レーン2はlyPlsEtn(化7)に各ホスホリパーゼを作用させなかった<反応液>(盲検)から有機相に抽出したリン脂質である。
【0211】
レーン3はPL(A)をブタ脳から抽出したPlsEtnに作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0212】
レーン4はPLBをブタ脳から抽出したPlsEtnに作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0213】
レーン5はPLA2 II Lをブタ脳から抽出したPlsEtnに作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0214】
レーン6はPLA2ナガセをブタ脳から抽出したPlsEtnに作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0215】
レーン7はLIPOMOD 699Lをブタ脳から抽出したPlsEtnに作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0216】
TLCのスポットを、デンシトメーターで定量した結果を表5に示した。
【0217】
【表5】
【0218】
PL(A)はカルシウムの非存在下においてもブタ脳から抽出したPlsEtnが消失し、lyPlsEtn(化7)と同じ位置に移動度が変化する作用を強く示した(レーン3)。
【0219】
[実施例7−2:各ホスホリパーゼのPlsEtnへの作用(カルシウムイオンの非存在下)]
本実施例では、各ホスホリパーゼ(PL(A)、PLB、PLA2 II L、PLA2ナガセ、LIPOMOD 699L)のPlsEtn(化4)に対する作用を、カルシウムイオンの存在下、比較した。
【0220】
<反応液>
10mM トリス−塩酸緩衝液pH7.5
2mM PlsEtn(化4)(又はlyPls(化7))
10U/mL 各ホスホリパーゼ
<反応液>を37℃で反応し、反応開始10分後にCHCl
3:CH
3OH(体積比2:1)の溶液を<反応液>と同じ量加えて混合し反応を停止した。有機相に抽出されたリン脂質をTLCのサンプルとした。盲検は各ホスホリパーゼを<反応液>に加えなかった。
【0221】
<結果>
図9のレーン1〜7は次の通りである。
【0222】
レーン1はPlsEtn(化4)に各ホスホリパーゼを作用させなかった<反応液>(盲検)から有機相に抽出したリン脂質である。
【0223】
レーン2はlyPlsEtn(化7)に各ホスホリパーゼを作用させなかった<反応液>(盲検)から有機相に抽出したリン脂質である。
【0224】
レーン3はPL(A)をPlsEtn(化4)に作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0225】
レーン4はPLBをPlsEtn(化4)に作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0226】
レーン5はPLA2 II LをPlsEtn(化4)に作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0227】
レーン6はPLA2ナガセをPlsEtn(化4)に作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0228】
レーン7はLIPOMOD 699LをPlsEtn(化4)に作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0229】
TLCのスポットを、デンシトメーターで定量した結果を表6に示した。
【0230】
【表6】
【0231】
カルシウムの非存在下においてもPlsEtn(化4)が消失し、lyPlsEtn(化7)と同じ位置に移動度が変化する作用を強く示したのはレーン3(PL(A))であった。レーン7(LIPOMOD 699L)も同様の作用を示したが、その程度はPL(A)より弱かった。
【0232】
[実施例8:PL(A)をPlsへ作用させたときの生成物]
実施例6−2及び実施例7−2において、PL(A)をPlsEtn(化4)に作用させたときの生成物(すなわち
図7及び
図9の矢印の物質)をLC/MSによって確認した。
【0233】
<LCの条件>
装置 Waters,UPLC
カラム Waters、ACQUITY UPLC HSS C18 1.8μm
(2.1mmI.D.×50mm)
カラム温度 40℃
検出 220nm
移動相 A=水(0.1% HCOOH) B=イソプロピルアルコール
グラジェント 0分 A 80% B 20%
10分 A 0% B 100%
13分 A 0% B 100%
13.1分 A 80% B 20%
15分 A 80% B 20%
注入量 1μL
<MSの条件>
装置 Waters,Synapt G2
イオン化 ESI+
スキャンレンジ m/z 100〜1500
<結果>
MSではPlsEtn(化4)と考えられるイオンが1種類(m/z 730.55)、lyPlsEtn(化7)と考えられるイオンが1種類(m/z 466.31)検出され、標品のPlsEtn(化4)及びlyPlsEtn(化7)と一致した。したがって、PL(A)をPlsEtn(化4)に作用させたときの生成物はlyPlsEtn(化7)であることを確認した。
【0234】
[実施例9:PL(A)酵素量とPlsへの作用の関係]
<反応液>
10mM トリス−塩酸緩衝液pH7.5
2mM PlsEtn(化4)(又はlyPls(化7))
0〜0.5U/mL PL(A)
0、0.005、0.0067、0.01、0.02、0.05、0.5U/mLのPL(A)を含む<反応液>を各1mL調製した。これらの<反応液>を37℃で10分間反応した後にCHCl
3:CH
3OH(体積比2:1)の溶液を<反応液>と1mL加えて混合し反応を停止した。有機相に抽出されたリン脂質をTLCのサンプルとした。
【0235】
<結果>
図10のレーン1〜8は次の通りである。
【0236】
レーン1はPlsEtnにPL(A)を0.5U/mL作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0237】
レーン2はPlsEtnにPL(A)を0.05U/mL作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0238】
レーン3はPlsEtnにPL(A)を0.02U/mL作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0239】
レーン4はPlsEtnにPL(A)を0.01U/mL作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0240】
レーン5はPlsEtnにPL(A)を0.0067U/mL作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0241】
レーン6はPlsEtnにPL(A)を0.005U/mL作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0242】
レーン7はlyPlsEtnにPL(A)を作用させなかった(0U/mL)<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0243】
レーン8はPlsにPL(A)を作用させなかった(0U/mL)<反応液>からから有機相に抽出したリン脂質である。
【0244】
本実施例から、少なくとも0.5U/mLのPL(A)が2mMのPlsEtnを37℃、10分間でlyPlsに加水分解できることが分かった。すなわち、少なくとも0.5mUのPL(A)が2μmolのPlsEtnを37℃、10分間でlyPlsに加水分解できることが分かった。
【0245】
[実施例10−1:pHとPL(A)のPlsEtnへの作用の関係]
<反応液>
50mM 各緩衝液
2mM PlsEtn(化4)(又はlyPls(化7))
0又は0.5U/mL PL(A)
各緩衝液として、クエン酸−NaOH緩衝液(pH4、5、6)、リン酸カリウム緩衝液pH7、トリス−塩酸緩衝液(pH8、9)、グリシン−NaOH緩衝液pH10を含む<反応液>を調製した。これらの<反応液>を室温で10分間反応した後にCHCl
3:CH
3OH(体積比2:1)の溶液を<反応液>と1mL加えて混合し反応を停止した。有機相に抽出されたリン脂質をTLCのサンプルとした。
【0246】
<結果>
図11のレーン1〜18は次の通りである。
【0247】
レーン1〜3は、順に、クエン酸−NaOH緩衝液pH4、5、6の<反応液>中のPlsEtnにPL(A)を作用させなかった(0U/mL)<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0248】
レーン4は、リン酸カリウム緩衝液pH7の<反応液>中のPlsEtnにPL(A)を作用させなかった(0U/mL)<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0249】
レーン5〜7は、順に、トリス−塩酸緩衝液pH7.5、8、9の<反応液>中のPlsEtnにPL(A)を作用させなかった(0U/mL)<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0250】
レーン8は、グリシン−NaOH緩衝液pH10の<反応液>中のPlsEtnにPL(A)を作用させなかった(0U/mL)<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0251】
レーン9〜11は、順に、クエン酸−NaOH緩衝液pH4、5、6の<反応液>中のPlsEtnにPL(A)を作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0252】
レーン12は、リン酸カリウム緩衝液pH7の<反応液>中のPlsEtnにPL(A)を作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0253】
レーン13〜15は、順に、トリス−塩酸緩衝液pH7.5、8、9の<反応液>中のPlsEtnにPL(A)を作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0254】
レーン16は、グリシン−NaOH緩衝液pH10の<反応液>中のPlsEtnにPL(A)を作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0255】
レーン17は、トリス−塩酸緩衝液pH7.5の<反応液>中のlyPlsEtnにPL(A)を作用させなかった(0U/mL)<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0256】
レーン18は、トリス−塩酸緩衝液pH7.5の<反応液>中のPlsEtnにPL(A)を作用させなかった(0U/mL)<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0257】
図11から、本実施例の条件下、pH4〜10の範囲でPL(A)はPlsEtnをlyPlsに加水分解できることが分かった。そしてその作用はpHが高いほど強いことが分かった。なお、レーン1から8で明らかなように、PlsEtnはpH変化により自発的にlyPlsに変化することはなかった。
【0258】
[実施例11:試料中のPls測定]
試料中のPls測定は
図1の方法で測定した。
【0259】
<反応液1>
50mM BES−NaOH pH7.5
10U/mL Peroxidase
50U/mL Ethanolamine oxidase
5U/mL GPCP
1U/mL PL(A)
<反応液2>
50mM BES−NaOH pH7.5
4.2U/mL lyPls ase
12μM DA67
ここで、PeroxidaseはSIGMAより品番P8375として購入した。Ethanolamine oxidaseはBioscience, Biotechnology, and Biochemistry 2008年、72巻、2732−2738頁の方法で製造した。GPCP(Glycerophosphorylcholine phosphatase)は旭化成ファーマ株式会社より品番T−33として入手した。lyPls aseはThe journal of biological chemistry、2011年、286巻、24916〜24930頁に記載の方法でラット由来のlyPls aseを大腸菌組換体として製造した。DA67は和光純薬工業株式会社より品番046−22341として購入した。
【0260】
<試料>
10%ドデシルマルトシド水溶液(同仁化学研究所、品番347−06163)にPlsEtn(化4)を0〜200μMになるように添加して調製した。
【0261】
<測定>
日立7080形自動分析機を使用して測定した。サンプル量は12μL、<反応液1>の量は180μL、<反応液2>の量は45μL、反応温度は37℃、1ポイントエンドアッセイとして660nm(副波長750nm)の吸光度差を測定した。
【0262】
<結果>
図12は10%ドデシルマルトシド水溶液にPlsEtn(化4)を0〜200μMになるように添加して調製した試料の検量線を示す。検量線は相関式Y=2.2724X−52.962で表され、R
2=0.9991であった。試料中のPlsEtnが本実施例にて測定できたことが示された。なお、切片が−53となったのは、<反応液1>及び<反応液2>が着色・懸濁しているためである。
【0263】
[実施例12:Streptomyces avermitilis JCM 5070由来PL(A)の調製方法]
[実施例12−1:Streptomyces avermitilis JCM 5070の染色体DNAの分離]
Streptomycesa avermitilis JCM 5070を5mLのLB培地で用いて28℃で2日間培養し集菌した。次いで、この菌体をQIAprep Miniprep(QIAGEN社)のP1 buffer 250μLで懸濁し、250μLのP2 bufferを加えて5回転等攪拌して鋳型染色体DNAとした。
【0264】
[実施例12−2:Streptomycesa avermitilis JCM 5070由来PL(A)遺伝子を含む組換えプラスミドの作製]
PCR用のオリゴとして、センスプライマー「primer S」(配列番号7)及びアンチセンスプライマーとして「primer AS」(配列番号8)を合成した。実施例12−1で得た鋳型染色体DNA 50ng、10×PCR Buffer 2.5μL、プライマー各1200nM、dNTPs各0.3mM、MgCl
2、1.2mM、DMSO 4%、KOD DNA Polymerase 1.25ユニット、蒸留水を全量25μLとなるように添加した。PCR反応条件は次のとおりである。
【0265】
ステップ1:98℃、2分;
ステップ2:98℃、15秒;
ステップ3:72℃、15秒;
ステップ4:74℃、60秒;
ステップ2からステップ4を30サイクル繰り返す;
ステップ5:74℃、4分。
【0266】
このPCRにより約810bpの特異的な増幅産物が得られた。この増幅された断片をNdeIとEcoRIで消化し、発現ベクターであるpET21a(+)及びpET24a(+)のNdeI−EcoRI部位に挿入して、組換えプラスミドを得た。
【0267】
[実施例13−3:Streptomycesa avermitilis JCM 5070由来PL(A)遺伝子を発現する組換え大腸菌の作製]
実施例12−2で得た組換えプラスミドを大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、組換え大腸菌を得た。
【0268】
[実施例13−4:Streptomycesa avermitilis JCM 5070由来PL(A)遺伝子を発現する組換え放線菌の培養]
実施例13−3で得た組換え大腸菌を、50μg/mLのアンピシリン(pET21a(+)を形質転換した大腸菌の場合)又は30μg/mLのカナマイシン(pET24a(+)を形質転換した大腸菌の場合)を含む100mLのOvernight Express TB培地(Novagen社製)で、34℃、24時間培養した。得られた培養液を遠心分離して菌体を回収した。菌体は20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)で懸濁した後、超音波破砕し、遠心上清をそのまま実施例14で使用した(約0.1U/mL)。形質転換していない大腸菌を培養(抗生物質は加えない)・超音波破砕して得た遠心上清をネガティブコントロールとした。
【0269】
[実施例14:Streptomycesa avermitilis JCM 5070由来PL(A)のPlsEtnへの作用(カルシウムイオンの非存在下)]
本実施例では、Streptomycesa avermitilis JCM 5070由来PL(A)が、カルシウムイオンの非存在下、PlsEtn(化4)に作用することをTLCで確認した。
【0270】
<反応液>
10mM トリス−塩酸緩衝液pH7.5
2mM PlsEtn(化4)(又はlyPls(化7))
培養可溶化遠心上清
<反応液>を25℃又は30℃で反応し、反応開始10分後にCHCl
3:CH
3OH(体積比2:1)の溶液を<反応液>と同じ量加えて混合し反応を停止した。有機相に抽出されたリン脂質をTLCのサンプルとした。
【0271】
<結果>
図13のレーン1〜8は次の通りである。
【0272】
レーン1はPlsEtn(化4)にPL(A)を作用させなかった<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0273】
レーン2はlyPlsEtn(化7)にPL(A)を作用させなかった<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0274】
レーン3はpET21a(+)を形質転換した大腸菌由来のPL(A)をPlsEtn(化4)に25℃で作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0275】
レーン4はpET24a(+)を形質転換した大腸菌由来のPL(A)をPlsEtn(化4)に25℃で作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0276】
レーン5はネガティブコントロールをPlsEtn(化4)に作用させた<反応液>から有機相に25℃で抽出したリン脂質である。
【0277】
レーン6はpET21a(+)を形質転換した大腸菌由来のPL(A)をPlsEtn(化4)に30℃で作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0278】
レーン7はpET24a(+)を形質転換した大腸菌由来のPL(A)をPlsEtn(化4)に30℃で作用させた<反応液>から有機相に抽出したリン脂質である。
【0279】
レーン8はネガティブコントロールをPlsEtn(化4)に作用させた<反応液>から有機相に30℃で抽出したリン脂質である。
【0280】
TLCのスポットを、デンシトメーターで定量した結果を表7に示した。
【0281】
【表7】
【0282】
Streptomycesa avermitilis JCM 5070由来PL(A)が、カルシウムイオンの非存在下、PlsEtn(化4)に作用することが確認できた。