(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926812
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】CVT伝動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 9/18 20060101AFI20160516BHJP
F16H 61/02 20060101ALI20160516BHJP
F16H 61/662 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
F16H9/18 Z
F16H61/02
F16H61/662
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-543638(P2014-543638)
(86)(22)【出願日】2012年12月5日
(65)【公表番号】特表2014-533817(P2014-533817A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】US2012067825
(87)【国際公開番号】WO2013090068
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年5月26日
(31)【優先権主張番号】13/328,630
(32)【優先日】2011年12月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/613,612
(32)【優先日】2012年9月13日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504005091
【氏名又は名称】ゲイツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】デック,アンドルゼイ
【審査官】
中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2006/001410(WO,A1)
【文献】
特開平03−213761(JP,A)
【文献】
特開昭63−030656(JP,A)
【文献】
実開昭62−075255(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 9/18
F16H 61/02
F16H 61/662
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(4)に軸支された軸(1)と、
前記軸(1)に固定された第1のシーブ(14)と、
前記軸の回転軸(1A)に平行に移動可能な第2のシーブ(12)を備え、
前記第2のシーブは、第2のシーブ受け部材(12A)に協働的に係合する第1のシーブ部材(22)により、回転可能な関係で前記第1のシーブに固定され、前記第2のシーブ受け部材は前記回転軸に対して螺旋角(HA)で配置された長穴を有し、
前記ハウジングに軸支されたスプロケット(6)を備え、
前記スプロケットの歯(6B)は可動部材(26)の歯(26B)に噛合し、軸受(16)が前記可動部材と前記第2のシーブの間に配置され、
前記可動部材は前記ハウジングに係合し(5A)、前記可動部材の移動が前記回転軸に平行であり、
前記スプロケットに係合するアクチュエータ(30)を備え、
前記第2のシーブが前記スプロケットの回転により、前記長穴の螺旋角によって軸方向に移動可能であり、
前記第1のシーブ部材が前記長穴によって案内されるローラであり、
前記スプロケットの歯(6B)と前記可動部材の歯(26B)が前記第2のシーブの内側に収容される
CVT伝動装置。
【請求項2】
前記螺旋角が約20°である請求項1に記載のCVT伝動装置。
【請求項3】
前記アクチュエータがモータを備える請求項1に記載のCVT伝動装置。
【請求項4】
前記可動部材が長穴を備え、前記ハウジングが長穴に係合するための径方向突起を備える請求項1に記載のCVT伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCVTに関し、より詳しくは伝達比を調節するために可動シーブを駆動するモータ付き制御装置を有するCVTに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスノーモービル・ドライブトレインは、エンジンクランク軸に協働的に連結された駆動プーリと被駆動軸に連結された被駆動プーリとを有する無段変速機を備える。被駆動プーリはクラッチとして動作し、CVTの駆動比が被駆動プーリにおいてエンジン速度と出力トルクの関数として段階的に変化する、遠心力を利用した調節機を含む。典型的に、被駆動軸は、チェーン・スプロケット減速機の入力部材を駆動する横断中間軸である。減速機の出力は、ドライブトラック駆動スプロケット(drive track drive sprocket wheel)に位置する車軸の一端に連結される。
【0003】
遠心CVTは多くの利点を有するが、CVTの駆動比がエンジン速度に直接関係するという事実はいくつかの欠点を引き起こす。1つの欠点は、駆動プーリのキャリブレーションがエンジンの最大パワー出力に常に連動するということである。これはスノーモービルの大きな加速性能をもたらすが、スノーモービルが巡航スピードで動作するとき、エンジンが必要以上に高速で作動し、高燃費、高雑音レベルをもたらし、高い振動がスノーモービルのライダーに伝わることとなる。
【0004】
この技術の代表は米国特許出願公開第2011/0277577号明細書であり、これは、油圧トランスミッションに倣って、ベルト駆動の弊害を防止するために、制御されたエンジンを用いてCVTにより伝達比を制御する方法を開示する。その方法は、基準電源回転速度を与え、電源と駆動機構の間の回転動作を伝達するために補助CVTを用い、電源の負荷変動における実質的に一様な回転速度を維持するために電源のトルクを制御し、駆動機構の回転速度を変えるために補助CVTの伝達比を調節する。システムと駆動ベルトの弊害を防止する機構を有する車両も提供される。
【0005】
必要とされるのは、伝達比を調整するために可動シーブを駆動するモータ付き制御装置を有するCVTである。本発明はこの必要性に合致する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の主な特徴は、伝達比を調整するために可動シーブを駆動するモータ付き制御装置を有するCVTを提供することである。
【0007】
本発明の他の特徴は、本発明の次の記述と添付した図面により説明され、明らかになる。
【0008】
本発明は、ハウジングに軸支された軸と、軸に固定された第1のシーブと、軸の回転軸に平行に移動可能な第2のシーブを備え、第2のシーブは、第2のシーブ受け部材に協働的に係合する第1のシーブ部材により、回転可能な関係で第1のシーブに固定され、第2のシーブ受け部材は回転軸に対して螺旋角(HA)で配置され、ハウジングに軸支されたスプロケットを備え、スプロケットは可動部材に噛合し、軸受が可動部材と第2のシーブの間に配置され、可動部材はハウジングに係合し、可動部材の移動が回転軸に平行であり、スプロケットに係合する電気アクチュエータを備え、第2のシーブがスプロケットの回転により軸方向に移動可能であるCVT伝導装置である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
この明細書に組み込まれその一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し、説明とともに本発明の原理を説明するために用いられる。
【
図1】
図5の1−1線に沿う本発明の伝導装置の断面図である。
【
図2】
図1の2−2線に沿って見た部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示されるように、本発明は軸受2によってハウジング4に軸支される入力軸1を備える。ハウジング4は、固定具(図示せず)を用いて、この伝導装置をシャシ(図示せず)または他のフレームに取付けるための穴4Aを備える。入力軸1は回転軸1Aの周りに回転する。
【0011】
入力軸1は、対となるシーブ14のスプライン14Bにトルクを伝達するスプライン1Bを備える。したがってシーブ14は軸1の端部に固定的に取付けられ、軸1とともに回転する。シーブ14はまた、長さ方向に沿って、軸1に協働的かつ同軸的に係合する円筒状ステム14Cを備える。ステム14Cは、シーブ14が軸1に保持されるように、好ましくは圧入される。
【0012】
可動シーブ12はシーブ14の内面に摺動自在に係合する。低摩擦ブッシュ20はシーブ12のステム12Bの内面に圧入される。ブッシュ20はステム14Cの外面に摺接する。
【0013】
図1と
図2に示されるように、ローラ22はピン24の周りに回転する。ピン24はシーブ14に硬く固定される。ピン24はシーブ14から径方向内側に突出し、軸1の回転軸1Aに対して垂直である。可動シーブ12は、シーブをローラ22に沿って案内する長穴12Aを備える。この発明の本実施形態において、シーブ14において相互に180°だけ離れた2つのローラと2つのピンがある。
【0014】
他の実施形態において、ローラ22はピン24から離間していてもよい。ピン24は長穴12A内におけるピン24の摺動を容易にするために、低摩擦材料により被覆されている。長穴12A内におけるピン24の摺動を容易にするために、長穴12Aの表面もまた、低摩擦材料により被覆される。
【0015】
複列アンギュラー玉軸受8はハウジング4に圧入され、またスプロケット6に圧入され、これによりスプロケット6はハウジング4と軸1Aの周りに回転する。第2の複列アンギュラー玉軸受16はステム12Bに圧入される。
【0016】
チューブ26は軸受16のアウタレースに圧入される。軸受16はスナップリング18によってチューブ26内の所定位置に固定される。
【0017】
チューブ26の一端は、スプロケット6における協働外歯6Bに係合する内歯26Bを備える。
【0018】
スリーブ部材5はハウジング4の一端に固定的に取付けられる。スリーブ部材5は径方向突起5Aを備える。突起5Aは協働する長穴すなわちキーウェイ26A内において移動する。
図3参照。キーウェイ26Aはチューブ26の内径の内側に形成される。キーウェイ26Aは入力軸1の主軸に沿って回転軸1Aに平行に延びる。
【0019】
ベルト10はスプロケット6と電動モータ30のスプロケット32の周りを走行する。
図5参照。好ましい実施形態のベルト10は歯付き型である。電動モータ30は好ましくは、シャシあるいはフレーム(図示せず)に取付けられる。Vベルト36はシーブ12とシーブ14の間に係合する。
作用の説明
【0020】
Vベルト36は
図5に示されるように半径Rで作用する。半径Rは可動シーブ12の軸方向位置に応じて可変である。シーブ12、14の間の距離が減少すると、半径Rは増加する。シーブ12、14の間の距離が増加すると、半径Rは減少する。半径Rの変化により伝達比が変化し、すなわちベルト36を介して本電気制御CVTクラッチに接続されたクラッチの角速度が変化する。
【0021】
可動シーブ12の軸方向位置の変化は次のようにして達成される。電動モータ30はベルト10を介してスプロケット6を回転させる。外歯6Bは、チューブ26の内歯26Bに係合しつつ、スプロケット6とともに回転する。不動のハウジング4への連結により、突起5Aは静止している。チューブ26がスプロケット6の回転の影響により軸方向に移動するとき、突起5Aはキーウェイ26A内において協働的に移動する。突起5Aが静止しているので、チューブ26は軸1Aの周りに回転するのを阻止される。これにより、歯6Bはチューブ26を軸方向に移動させる。軸受16はチューブ26に係合し、これによりシーブ12は軸方向の力を伝達する。チューブ26の軸方向の移動はシーブ12の軸方向の移動をもたらす。軸受16により、シーブ12は軸1の周りに回転する。
【0022】
シーブ14に取付けられたローラ22はシーブ14からシーブ12にトルクを伝達する。シーブ14とシーブ12の間の相対的な軸方向移動は、ローラ22を案内する長穴12Aの方位によって部分的に決定される。好ましい実施形態において、長穴12Aの方位は約20°の螺旋角HAを有する螺旋形状である。
図4参照。長穴12Aの螺旋角はシーブ12の軸方向の移動を助け、これにより、ここに述べるように電動モータ30から要求される動力がより低くなる。HAは約5°から約50°の範囲であってもよい。
【0023】
可動シーブ14は、スプリング(図示せず)を介して静止シーブ12から離れるように付勢されてもよい。モータ30はスプリングの付勢力に打ち勝つような大きさでなければならない。長穴12Aの設計と、モータ30の大きさ、動力、および/またはコスト、および/またはその組み合わせは、長穴12Aが長手軸1Aに略平行であれば、これに比較して概略的に減少する。
【0024】
図4に示されるように、ローラ22と長穴12Aの間の接点においてベルト36の引張荷重により生じる力のベクトルF1Rは、長穴に対する垂直力成分F1Nと軸方向力成分F1Aとを有する。軸方向力F1Aはシーブ12をシーブ14に向けて付勢する。螺旋角HAが大きくなるほど、軸方向力F1Aは大きくなり、これにより、シーブ12をシーブ14に向かって移動させるために電気制御モータ30から要求される動力が小さくなる。
【0025】
シーブ12とシーブ14の間の距離を減少させることは、シーブを引き離そうとするベルト36の径方向の力に電動モータが打ち勝つことを必要とする。電動モータ30の大きさを減少させることは、寄生力損失を減少させることによりパワー出力を高める。
【0026】
図6はCVTシステムの制御図である。エンジン300と伝導装置100は従来公知のCVTベルト101を介して連結される。エンジン300は内燃機関を含む主動力源を備える。駆動クラッチ301はエンジンシャフト303に連結される。被駆動クラッチ102は
図1に示される伝導装置100に連結される。
【0027】
マイクロコントローラ201はセンサ204に接続される。センサ204はスプロケット10の位置を検出する。
図1参照。モータ駆動源202はモータ30に連結される。12Vの直流駆動源はマイクロコントローラとモータ駆動源に接続される。マイクロコントローラ201はさらにモータ駆動源202に接続され、これによりマイクロコントローラは制御信号をモータ駆動源に送る。制御信号によってモータ駆動源202はスプロケット10を適切に位置決めし、これにより所望の伝達比を設定する。
【0028】
ECUとスロットルおよび速度センサ200は公知の方法でエンジン動作を検出し、制御する。マイクロコントローラ201は、モータ30のための適切な制御信号を決定するために、ECU200からの信号を処理する。
【0029】
図7はCVTシステムの制御図である。マイクロコントローラ201はマイクロプロセッサ401、ADコンバータ205、高速カウンタ206を備える。マイクロプロセッサ401は、エンジンスピードに基づいて伝導シフトポイントをプログラムするために、ユーザにより公知の方法でプログラムされてもよい。ラップトップコンピュータ500あるいは他の適当な入出力装置がプログラムするために、および/またはマイクロプロセッサ401と通信するために用いられてもよい。センサ204とセンサ302はコントローラ201と電子的に通信する。従来公知のパワーエレクトロニクス202はモータ30に電圧を与える。
【0030】
図8はCVTシステムの制御図である。ユーザは従来公知の方法でサブシステム402を設定する。エンジン/伝導装置システムの信号は403においてマイクロプロセッサに入力される。エンジン信号はスロットル開度、エンジン回転数、およびシーブ位置を含む。伝達比はシーブ位置と回転数を含む。マイクロプロセッサは404において速度比を計算する。入力が与えられると、マイクロプロセッサはルックアップテーブル405において要求される速度比を検索する。一例であるルックアップテーブルが以下に示される。
【0032】
ルックアップテーブルは車両の動作条件に適合するようにユーザによってカスタマイズされてもよい。ルックアップテーブル内の値は一例に過ぎず、限定することを意図しない。マイクロプロセッサはさらに、モータ30の回転速度と回転方向407を決定する。マイクロプロセッサ信号408は所望の速度比に従ってスプロケット10の位置を変えるためにモータ30を指示する。そしてシステムは、所望の動作条件が達成されるまでループを繰り返す。
【0033】
本発明の1つの形態が説明されたが、当業者がここに記載された発明の精神と範囲から逸脱することなく、構成と部分の関係と方法において変形を施すことは自明である。