(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項2に記載の方法であって、前記第1の温度の値(Ts(i,k))および前記対応するサンプルサーモグラフィックスキャン(Sc(k))の前記第2の温度の値(Tc(p,q,k))に基づいて、前記推定モデルの推定係数を計算するステップをさらに含む方法。
請求項3に記載の方法であって、計算する前記ステップが、前記個数の画素のそれぞれに関し、該画素をそれぞれの温度センサ(S(i))に関連付けるステップと、1以上の次数の多項式を用いて、該画素に対応する前記第2の温度の値(Tc(p,q,k))を、関連付けられる前記温度センサ(S(i))に対応する前記第1の温度の値(Ts(i,k))の関数として内挿するステップとを含む、方法。
請求項3に記載の方法であって、計算する前記ステップが、前記画素において第1の熱ダイナミクスおよび第2の熱ダイナミクスを識別するステップと、前記第2の温度の値(Tc(p,q,k))および対応する前記第1の温度の値(Ts(i,k))のそれぞれを、前記第1の熱ダイナミクスおよび第2の熱ダイナミクスのうちの1つに関連付けるステップとをさらに含む、方法。
請求項3に記載の方法であって、計算する前記ステップが、前記個数の画素のそれぞれに関し、N個の一次方程式からなる個数がK/Nの連立方程式を定め解くステップを含み、前記一次方程式のそれぞれは、時刻(tk)に前記画素に対応する前記第2の温度の値(Tc(p,q,k))を、前記時刻(tk)に前記個数がNの温度センサ(S(i))から受けた前記個数がNの第1の温度の値(Ts(i,k))に結び付ける、方法。
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法であって、前記ステップ(a)が、前記調査面(SV)の第1のサーモグラフィックスキャンを受けるステップと、前記調査面上のある個数の区域(HS)を識別するステップと、前記区域(HS)内に前記個数の温度センサ(S(i))を配置するステップとをさらに含む、方法。
請求項9に記載の方法であって、アラーム信号を生成するステップ、および、前記1つまたは複数の温度異常から回復するために前記部屋(R)の中で温度制御システムを動作させるステップの一方または双方をさらに含む方法。
請求項11から13のいずれか一項に記載の温度監視システム(TMS)であって、前記制御ユニット(CU)が、サーモグラフィックカメラ(TC)から前記調査面(SV)の少なくとも1つのサーモグラフィックスキャンを受けるようにさらに構成される、温度監視システム(TMS)。
請求項14に記載の温度監視システム(TMS)であって、前記サーモグラフィックカメラ(TC)が前記制御ユニット(CU)に接続される、温度監視システム(TMS)。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、部屋Rの上面図である。部屋Rはデータセンタであってよい。部屋Rの中には、列をなして配置され、サーバ、ルータ、スイッチなどのコンピューティング装置および/または通信装置を備えるいくつかのラックCKがある。詳細には、
図1の部屋Rには、4つのラックの3つの行(AからC)が設けられる。第1の行Aのラックは、CK1A、CK2A、CK3A、およびCK4Aと表され、第2の行および第3の行の他のラックは、同様のやり方で表される。
【0032】
さらに、
図1では、サーモグラフィックカメラTCが示されており、そのようなカメラは、部屋Rの内側の表面のサーモグラフィックスキャンを取得することができる。そのような表面は、ラック内に置かれた装置の前面/背面/側面部分を含むことができる。以下では、非限定的な例の目的で、サーモグラフィックカメラTCは、
図1に表されるように、ラックCK1A、CK2A、CK3A、およびCK4Aの第1の行内の装置の前面部分を含むサーモグラフィックスキャンを取得すると仮定される。
図1は、ラックから所与の距離dでサーモグラフィックカメラTCにより見える区域として、サーモグラフィックカメラTCの視野(FOV)の概略表現も示す。以下では、そのような区域内のサーモグラフィックカメラTCにより見える表面は、「調査面SV」と呼ばれることになる。調査面は、単一の面または1つより多い面上にあるラック前面を含むことができる。言い換えれば、ラックの前面は、(
図1に示されるように)1つの(垂直)面またはいくつかの(垂直)面に属することができる。
【0033】
サーモグラフィックカメラTCは、マイクロボロメータなどの、赤外線センサの行列を備えることができる。各センサは、典型的には、調査面SV内の1画素の温度を検知する。カメラのセンサの個数は、例えば、160×120または320×240であってよい。そのようなセンサの測定誤差は、例えば、約±2℃に等しくてよい。
【0034】
図2は、第1の行のラックCK1A、CK2A、CK3A、およびCK4Aの正面図である。詳細には、
図2は、サーモグラフィックカメラTCにより見られる、第1の行のラックCK1A、CK2A、CK3A、およびCK4A内の装置の前面部分を含む、調査面SVを示す。
【0035】
本発明の方法の実施形態によれば、調査面SVの第1のサーモグラフィックスキャンが撮られる。
図2は、調査面SVの3つの区域HS(1)、HS(2)、およびHS(3)を概略的に示しており、温度が予め定められた閾値よりも高い。記載された実施形態に関し、調査面SVの残りの区域は、予め定められた閾値よりも低い温度であると考えられる。区域HS(1)、HS(2)、およびHS(3)は、調査面SV内の熱源に対応することができる。熱源HSは、例えば、調査面SV内に含まれるラック(複数可)内に取り付けられる装置の冷却グリッドであってよい。
【0036】
本発明の実施形態によれば、温度センサは、調査面SVの特定の位置に配置される。
図3に表されるように、詳細には、1つまたは複数の温度センサS(1)、S(2)、S(3)が、各区域HS(1)、HS(2)、およびHS(3)内に配置される。本明細書の簡略化のため、単一の温度センサS(1)、S(2)、S(3)が、各区域HS(1)、HS(2)、およびHS(3)内に配置される。代替実施形態によれば、温度センサS(1)、S(2)、S(3)は、任意の個数であってよく、温度センサS(1)、S(2)、S(3)が区域HS(1)、HS(2)、およびHS(3)に対して異なる位置に配置されてよい。各温度センサS(1)、S(2)、S(3)は、例えば、熱電対またはNTC(負の温度係数)サーミスタを備えることができる。
【0037】
温度センサS(1)、S(2)、S(3)は、制御ユニットCUに接続される。制御ユニットCUと温度センサS(1)、S(2)、S(3)のそれぞれとの間の接続は、有線接続または無線接続であってよい。温度センサS(1)、S(2)、S(3)および制御ユニットCUは、温度監視システムTMSに含まれる。
【0038】
上記の温度監視システムTMSは、
図4および
図5の流れ図を参照して以降で本明細書でさらに詳細に記載されることになるような、調査面SV上の温度を監視するための方法を実装するように構成される。
【0039】
図4は、温度監視システムTMSの初期化のステップを示す。
【0040】
上記のように、ステップ201の期間に、温度監視システムTMSの制御ユニットCUは、調査面SVの第1のサーモグラフィックスキャンを受け取り、それに基づいて、ステップ202の期間に、制御ユニットCUが調査面SV内に含まれる熱源HSを識別する。ステップ203では、ステップ202で識別された熱源HSの場所に対応する位置において、温度センサSが部屋R内に配置される。
【0041】
あるいは、温度センサSは、異なる位置に配置されてよい。例えば、ステップ201およびステップ202がスキップされてよく、温度センサは、部屋R内に(上で規定されたように)熱源が実際に存在する事実とは無関係に配置されてよい。例えば、代替実施形態では、ラック当たり1つの温度センサを設けることができる。さらに、温度センサSのうちの1つまたは複数が、温度監視システムTMSの初期化の前に、部屋R内に既に存在してよい。
【0042】
本明細書の以下では、温度監視システムTMSの初期化の期間に、それぞれの考えられるサーモグラフィックスキャンは、制御ユニットCUに接続されたサーモグラフィックカメラTCを用いて取得されること、サーモグラフィックカメラTCは、調査面SV内で、座標(x
p,y
q),p=1,…,P,q=1,…,Q(そのような座標は、
図2および
図3に示されるX軸およびY軸により識別される2次元平面内の点の座標であり、例えば調査面SVの左下の角に座標の中心を有する)の点を中心とするP×Q画素の個別の組の、P×Q個の温度の値を含む、寸法P×Qの温度の値の2次元行列を検知することが可能であることが仮定されることになる。例えば、温度の値の行列は、寸法320×240を有することができ、そのため、温度の値の行列が調査面SVの76800画素の温度の値を含むことができる。以下の記載では、座標空間(x
p,y
q)内の点は、単純に「点(x
p,y
q)」と示されることになる。
【0043】
以降で本明細書でさらに詳細に記載されるように、次に続くステップ204の期間に、制御ユニットCUは、好ましくはサンプル収集期間SPを規定し、その期間に、制御ユニットCUが調査面SV内の各温度センサS(1)、S(2)、S(3)により検知された温度のサンプル、およびその間に、調査面SVのそれぞれのサンプルサーモグラフィックスキャンを受け取ることがある。
【0044】
サンプル収集期間SPは、好ましくは、調査面SV内で温度が時間的にどのように発展するのかについての予備的な評価に基づいて決定される。詳細には、サンプル収集期間SPの継続時間は、そのような間隔の期間に、調査面SV内の温度が、詳細には熱源HSで、可能な最大の温度範囲内に含まれるように選択される。そのような範囲の最小値および最大値は、調査面SV内に含まれる装置(すなわち熱源HS)の様々な動作状態に依存する。このことによって、有利なことに、以降で説明されるように、温度を監視するための方法の精度を向上することが可能になる。表面SVが1つまたは複数の行のラックを含む場合、サンプル収集期間SPは、ラック(複数可)に備えられる装置の動作プロファイルに基づいて決定される。例えば、サーバは、日中スイッチをオンにされてよく、サーバに接続されるユーザの数にしたがって、日中変動するいくつかのアプリケーションをサーバが実行することができる。このサーバは、夜間スイッチをオフにされてよい。そのような場合、サーバの冷却グリッドにおける温度は、日中最大値に達し、夜間最小値に達する可能性がある。したがって、サンプル収集期間SPの期間、その熱源(サーバ)に関する熱の変動が可能な限り大きくなるように、サンプル収集期間SPの継続時間は、1日に等しく選択されてよい。
【0045】
ステップ204の期間に、制御ユニットCUは、好ましくは、温度センサSにより、サンプル収集期間SPの、個数がKのサンプリング時刻t
k、k=0,1,2,…,Kに検知される温度の値を受け取る。好ましくは、サンプリング時刻t
kはサンプル収集期間SPの期間に時間的に均一に離間される。温度の値は、温度センサによって、新しい温度の値に反応するのに各センサが要する時間、およびセンサにおける温度の変動範囲に依存した頻度で検知される。典型的には、有線のセンサでは、頻度は、温度の変動範囲にのみ依存し、したがって、2つの連続する時刻t
k間の間隔は、10分の数秒から数分の範囲であってよい。無線のセンサの場合には、頻度は、センサが電力供給される電池の継続時間に依存し、2つの連続する時刻t
k間の間隔は、それに応じて選択され、典型的には数分、例えば5分である。
【0046】
図6は、その上の部分では、2つの温度センサS(1)およびS(2)によって、サンプリング時刻t
0、t
1、t
2などにおいて検知される温度を(℃単位で)示す2つの例示的なグラフを示す。
【0047】
さらにステップ204の期間に、制御ユニットCUが、好ましくは、各サンプリング時刻t
kにおいて、調査面SVの対応するサンプルサーモグラフィックスキャンSc(k),k=0,1,…,Kを受け取る。上で述べたように、サンプルサーモグラフィックスキャンSc(k)は、好ましくは、制御ユニットCUに接続されるサーモグラフィックカメラを用いて取得される。
図6では、3つのグレースケール画像が示されており、これらは、それぞれ、サンプリング時刻t
0、t
1、およびt
2において取得された3つの連続するサーモグラフィックスキャンSc(0)、Sc(1)、およびSc(2)を表す。
【0048】
したがって、ステップ204の期間に、制御ユニットCUが、好ましくは、各サンプリング時刻t
kにおいて以下の情報を記憶する。すなわち、
− 個数がNのセンサS(i)により検知されるN個の温度の値Ts(i,k),i=1,…,Nの組。ここで、そのような温度の値のそれぞれがセンサS(i)に関連付けられる熱源HS(i)により達せられる温度を表す。
− 調査面SVの点(x
p,y
q)においてサーモグラフィックカメラにより取得される、P×Q個の温度の値の2次元行列Tc(p,q,k),p=1,…,P,q=1,…,Qを含む、対応するサンプルサーモグラフィックスキャンSc(k)。
【0049】
次いで、ステップ205の期間に、上に引用した情報から初めて、制御ユニットCUは、好ましくは、温度センサS(i)により検知される温度の値Ts(i,k)からさらなるサーモグラフィックスキャンを導出するために、
推定モデルの
推定係数の組を計算する。詳細には、ステップ205の期間に、制御ユニットCUは、調査面SVの点(x
p,y
q)において温度センサS(i)により検知される温度をサンプルサーモグラフィックスキャンSc(k)に含まれる対応する温度に結び付ける数式の組を規定する。以降で本明細書にさらに詳細に記載されるように、一度これらの式が規定され、初期化動作が終了すると、温度監視システムTMSが動作されるとき、制御ユニットCUは、サーモグラフィックカメラTCなどの任意の他の測定器具を使用することなく、温度センサS(i)により検知される温度だけから始めて、調査面SVのサーモグラフィックスキャンを導出することが可能になる。そうするために、制御ユニットCUは、温度センサS(i)により検知される温度に
推定モデルを単に適用することになり、すなわち、制御ユニットCUは、温度センサS(i)により検知される温度に上に引用した数式を適用することになり、このことによって、「仮想」サーモグラフィックスキャンの対応する温度を提供することになる。
【0050】
本発明の第1の実施形態によれば、上に引用した
推定係数を計算するために、熱源HS(i)は独立熱源であることが仮定される。これは、調査面SV内で、各点(x
p,y
q)の温度は、単一の熱源HS(i)により影響を受けること、すなわちその点に最も近い熱源HS(i)により影響を受けることを意味する。例えば、
図2に示される点(x
p,y
q)を参照すると、その温度は、熱源HS(2)によってだけ影響を受けることが仮定される。この実施形態によれば、ステップ205の期間に、制御ユニットCUは、好ましくは、各サンプルサーモグラフィックスキャンSc(k)を、個数がNの熱源HS(i)に対応するある個数の部分行列に分割する。詳細には、制御ユニットCUは、好ましくは、各熱源HS(i)に関し、その温度が熱源HS(i)によってだけ影響を受ける点(x
p,y
q)(以降では、そのような点(x
p,y
q)の組は、「熱源HS(i)のドメイン」と呼ばれることになる)で、サーモグラフィックカメラにより検知される温度の値の部分行列を識別する。
【0051】
したがって、制御ユニットCUは、各サンプリング時刻t
kにおいて、各熱源HS(i)に関し、以下の情報が提供される。すなわち、
− 熱源HS(i)に位置決めされる温度センサS(i)により検知される温度の値Ts(i,k)
− 熱源HS(i)のドメインに属する点(x
h,y
w)におけるサーモグラフィックカメラにより検知される、温度の値Tc(h,w,k),h=1,…,H,w=1,…,W、ここでH≦P、W≦Q、に対する、サンプルサーモグラフィックスキャンSc(k)の部分行列
次いで、制御ユニットCUは、各熱源HS(i)およびそのドメインに属する各点(x
h,y
w)に関し、好ましくは、点(x
h,y
w)に関し、サンプリング時刻t
kに取得される、サンプルサーモグラフィックスキャンSc(k)の温度の値Tc(h,w,k)を、同じサンプリング時刻t
kにおいて、熱源HS(i)に関連付けられる温度センサS(i)により検知される対応する温度の値Ts(i,k)に関連付ける。
図7aは、温度の値を表すデータ点のグラフを示す。このグラフは、同じ離散的なサンプリング時刻t
kにおける熱源HS(i)に関連付けられる温度センサS(i)により検知される対応する温度の値Ts(i,k)の(℃単位で)の関数として、熱源H(i)のドメインの点(x
h,y
w)におけるサンプル収集期間SPの期間の離散的なサンプリング時刻t
kに取得された、サンプルサーモグラフィックスキャンSc(k)の温度の値Tc(h,w,k)を(℃単位で)示す。
図7aのグラフの各データ点は、温度の値Tc(h,w,k)およびTs(i,k)の組に対応する。
【0052】
制御ユニットCUは、好ましくは、点(x
h,y
w)でサンプリング時刻t
kに検出された温度の値Tc(h,w,k)およびTs(i,k)を処理し、そのような値が1つまたは複数の異なる熱ダイナミクスに属するかどうかを決定する。以下では、「熱ダイナミクス(dynamics)」という表現は、時間の関数としての温度変動の傾向を示すことになる。実際に、調査面SV内の各点(x
h,y
w)における温度は、時間的に増加、減少、または一定のままであってよい。
【0053】
詳細には、制御ユニットCUは、
図7aに示されるもののようなグラフから始めて、詳細には温度が増加、減少、または一定の値のままであるという事実にしたがって、異なる熱ダイナミクスに属するデータ点の1つまたは複数のサブセットにデータ点がグループ化されうるかどうかを決定する。詳細には、制御ユニットCUは、点(x
h,y
w)でサンプル収集期間SPの期間に、温度センサS(i)により検知される1つまたは複数の温度の値Ts(i,k)が存在し、そのそれぞれに対し、対応するサーモグラフィックカメラにより検知される少なくとも2つの異なる温度の値Tc(h,w,k)が対応するかどうかを決定する。言い換えれば、制御ユニットCUは、少なくとも2つの別個のサンプリング時刻t
k1およびt
k2に、温度センサS(i)が同じ温度の値Ts(i,k1)=Ts(i,k2)を検知し、一方、同じサンプリング時刻t
k1およびt
k2に、サーモグラフィックカメラが2つの異なる温度の値Tc(h,w,k1)≠Tc(h,w,k2)を取得するかどうかを決定する。そのような状況は、
図7aに、例えば、P(k1)およびP(k2)として示されるデータ点によって表される。したがって、
図7aに表される状況では、制御ユニットCUは、2つの異なる熱ダイナミクス、すなわち、それによると点(x
h,y
w)における温度が増加または一定のままである第1の熱ダイナミクス(以降では、「加熱ダイナミクス」と示される)、およびそれによると点(x
h,y
w)における温度が減少する第2の熱ダイナミクス(以降では、「冷却ダイナミクス」と示される)が存在することを決定する。さらに、
図7aに示されるもののような各データ点に関し、制御ユニットCUは、好ましくは、サンプリング時刻t
kに温度センサS(i)により検知される温度の値Ts(i,k)を、前のサンプリング時刻t
k−1および後続の時刻t
k+1に同じセンサS(i)により検知される温度の値と比較し、データ点が、点(x
h,y
w)において温度の加熱ダイナミクスに属するかまたは冷却ダイナミクスに属するかを決定する。
【0054】
例えば、
図7aのグラフを再び参照すると、制御ユニットCUは、温度センサS(i)によってサンプリング時刻t
k1(
図7aのデータ点P(k1))に検知された温度の値Ts(i,k1)を、同じセンサによってサンプリング時刻t
k1−1(
図7aのデータ点P(k1−1))およびtk
1+1(
図7aのデータ点P(k1+1))に検知された温度の値Ts(i,k1−1)およびTs(i,k1+1)と比較する。次いで、Ts(i,k1−1)<Ts(i,k1)<Ts(i,k1+1)であるので、制御ユニットCUは、データ点P(k1)が加熱ダイナミクスに属すると決定する。さらに、制御ユニットは、温度センサS(i)によってサンプリング時刻t
k2(
図7aのデータ点P(k2))に検知された温度の値Ts(i,k2)を、同じセンサによってサンプリング時刻t
k2−1(
図7aのデータ点P(k2−1))およびt
k2+1(
図7aのデータ点P(k2+1))に検知された温度の値Ts(i,k2−1)およびTs(i,k2+1)と比較する。次いで、Ts(i,k2+1)<Ts(i,k2)<Ts(i,k2−1)であるので、制御ユニットCUは、データ点P(k1)が冷却ダイナミクスに属すると決定する。
【0055】
一度熱ダイナミクスが識別され(すなわち、サンプル収集期間SP内の単一の熱ダイナミクス、または異なる熱ダイナミクスの存在)、データ点がそれぞれの熱ダイナミクスに関連付けたら、制御ユニットCUは、好ましくは、異なるダイナミクスに属するデータ点に関し異なる補間を決定する。以下では、
図7aに表されるように、データ点が加熱ダイナミクスまたは冷却ダイナミクスに属することができると仮定されることになる。次いで、制御ユニットCUは、好ましくは、加熱ダイナミクスに属するデータ点の第1の補間および冷却ダイナミクスに属するデータ点の第2の補間を決定する。このようにして、実際、サンプルサーモグラフィックスキャンSc(k)の温度Tc(h,w,k)を、温度センサS(i)により検知される温度Ts(i,k)に結び付ける数式が規定される。
【0056】
そのようにするために、制御ユニットCUは、好ましくは、加熱ダイナミクスに属するデータ点および冷却ダイナミクスに属するデータ点をそれぞれの多項式で補間する。
図7bでは、例えば、2つの熱ダイナミクスに属するデータ点は、
図7aのグラフのデータ点に重畳される直線R1およびR2により表される、それぞれの、次数1の多項式(線形補間)で補間される。詳細には、直線R1は、加熱ダイナミクスに属するデータ点を補間し、直線R2は、冷却ダイナミクスに属するデータ点を補間する。2つの異なるダイナミクスに属するデータ点を補間するために使用される多項式の次数は、好ましくは等しいが、異なっていてもよい。以下の記載では、簡略化のために、両方の多項式の次数は1に等しいことが仮定されることになる。そのような場合、データ点を補間するために使用される直線は、次の式で表される。
【0057】
R1: Tc(h,w,k)=m
i1(h,w)Ts(i,k)+q
i1(h,w) [1]
R2: Tc(h,w,k)=m
i2(h,w)Ts(i,k)+q
i2(h,w) [2]
上式で、m
1(h,w,i)は直線R1の傾き(熱源HS(i)に起因し、点(x
h,y
w)で加熱ダイナミクスに属するデータ点を補間する)、q
1(h,w,i)は直線R1のy切片、m
2(h,w,i)は直線R2の傾き(熱源HS(i)に起因し、点(x
h,y
w)で冷却ダイナミクスに属するデータ点を補間する)、q
2(h,w,i)は直線R2のy切片である。
【0058】
次いで、制御ユニットCUは、好ましくは、第1の
推定係数行列A
i1、第2の
推定係数行列B
i1、第3の
推定係数行列A
i2、および第4の
推定係数行列B
12を以下のように規定する。第1の
推定係数行列A
i1は、熱源HS(i)のドメイン内に含まれる全ての点(x
h,y
w)に関し、加熱ダイナミクスに属するデータ点を補間する直線R1の傾きを含む。
【0060】
第2の
推定係数行列B
i1は、熱源HS(i)のドメイン内に含まれる全ての点(x
h,y
w)に関し、加熱ダイナミクスに属するデータ点を補間する直線R1のy切片を含む。
【0062】
第3の
推定係数行列A
i2は、熱源HS(i)のドメイン内に含まれる全ての点(x
h,y
w)に関し、冷却ダイナミクスに属するデータ点を補間する直線R2の傾きを含む。
【0064】
第4の
推定係数行列B
i2は、熱源HS(i)のドメイン内に含まれる全ての点(x
h,y
w)に関し、冷却ダイナミクスに属するデータ点を補間する直線R2のy切片を含む。
【0066】
したがって、ステップ205の終わりに、制御ユニットCUは、各熱源HS(i)に関し、加熱ダイナミクスに関する2つの
推定係数行列および、冷却ダイナミクスに関する2つの
推定係数行列を記憶する。
【0067】
データ点を次数1の多項式で補間することは、単に例示であって、限定的ではないことに留意されたい。実際に、ステップ205の期間に、制御ユニットCUは、より高次の多項式を使用することもできる。そのような場合、データ点を補間するために使用される各曲線は、2よりも多い個数の係数によって規定される。例えば、多項式の次数が2である場合、各補間曲線を規定する係数は3個である。したがって、一般的に、制御ユニットCUは、ステップ205の期間に、各熱源HS(i)に関し、およびそのような熱源に関する各熱ダイナミクスに関し、補間に使用される曲線を規定する係数の個数に等しい、または言い換えれば、補間に使用される多項式の次数プラス1に等しい個数の
推定係数行列を規定する。
【0068】
データ点を補間するための多項式の次数の選択は、結果として得られる近似値の誤差(すなわち、データ点とデータ点を補間する曲線との間の平均距離)が、測定器具、すなわちサーモグラフィックカメラの誤差よりも小さいように決定されてよい。そのような誤差は、上に述べたように、±2℃に等しくてよい。
【0069】
本発明の第2の実施形態によれば、上に引用した
推定係数を決定するために、熱源HS(i)は互いに独立でないことが仮定される。この場合、調査面SV内の各点(x
p,y
q)では、温度は、全ての熱源HS(i)によって影響を受ける。
【0070】
既に上に記載のように、ステップ204の期間に、制御ユニットCUは、各サンプリング時刻t
kにおいて以下の情報を記憶する。すなわち、
− N個のセンサS(i)により検知されるN個の温度の値Ts(i,k),i=1,…,Nの組。ここで、そのような温度の値のそれぞれがセンサS(i)に関連付けられる熱源HS(i)により達せられる温度を表す。例えば、
図8は、サンプル収集期間SPの期間の、時間の関数として、温度センサS(i)により検知される例示的な温度の値を(℃単位で)示す(グラフは、横軸に、離散的なサンプリング時刻t
kの指数kをリポートしている)。
− 調査面SVの点(x
p,y
q)においてサーモグラフィックカメラにより取得される、P×Q個の温度の値の2次元行列Tc(p,q,k),p=1,…,P,q=1,…,Qを含む、対応するサンプルサーモグラフィックスキャンSc(k)
以降でより詳細に本明細書に記載されるように、次いで、ステップ205の期間に、上に引用した情報から初めて、制御ユニットCUは、好ましくは、温度センサS(i)により検知される温度の値Ts(i,k)からサーモグラフィックスキャンを導出するために、
推定係数を計算する。
【0071】
詳細には、制御ユニットCUは、サンプリング時間間隔TSの、個数がK/Nの部分間隔T
n、n=1,…,K/Nを規定する(ここで、Kは、サンプル収集期間SP内のサンプリング時刻t
kの個数であり、Nは、熱源HS(i)の個数である)。各部分間隔T
nは、個数がNのサンプリング時刻t
kを含む。
図8は、15個のサンプリング時刻t
kにおける温度センサS(i)により検知された温度Ts(k、i)を示し、サンプル収集期間SPの3つの部分間隔が、T
1、T
2、およびT
3と示され、各部分間隔が、N=5のサンプリング時刻t
kを含む。
【0072】
さらに、制御ユニットNは、表面SV内の各点の座標(x
p,y
q)に関し、一次方程式からなる連立方程式(個数K/N)を規定し、以下のように、それぞれの連立方程式がN個の変数を含むN個の式を含む。
【0074】
上式で、指数pおよびqは簡潔さのために省略され、Tc(k1(n)),…,Tc(kN(n))は、サンプル収集期間SPの部分間隔T
n内のN個のサンプリング時刻t
k1(n),…,t
kN(n)に取得されるサンプルサーモグラフィックスキャンSc(k1(n)),…,Sc(kN(n))に含まれる点(x
p,y
q)における温度の値であり(
図6参照)、Ts(1、k1(n)),…,Ts(1、kN(n))は、サンプリング時刻t
k1(n),…,t
kN(n)での温度センサS(1)により検知される温度の値であり、Ts(2、k1(n)),…,Ts(2、kN(n))は、サンプリング時刻t
k1(n),…,t
kN(n)での温度センサS(2)により検知される温度の値であり、Ts(N、k1(n)),…,Ts(N、kN(n))は、サンプリング時刻t
k1(n),…,t
kN(n)での温度センサS(N)により検知される温度の値であり、c1(n),…,cN(n)は部分間隔T
nに関するN個の
推定係数である。係数c1(n),…,cN(n)は一次方程式からなる連立方程式の変数である。
【0075】
一次方程式からなる各連立方程式で、N個の数式が、サンプルサーモグラフィックスキャンSc(k)の温度Tc(k1(n)),…,Tc(kN(n))を温度センサS(i)により検知される温度に結び付けて規定される。
【0076】
ステップ205の期間に、制御ユニットCUは、好ましくは、上に規定されたような一次方程式からなる連立方程式を解いて、表面SVの各点(x
p,y
q)に関し、かつサンプル収集期間SPの各部分間隔T
nに関し、
推定係数の配列{c1(n),…,cN(n)}を計算する。
【0077】
次いで、制御ユニットCUは、表面SVの各点(x
p,y
q)に関し、好ましくは、上に記載されたように部分間隔T
nに関し計算された
推定係数の配列の平均を計算することによって、平均
推定係数の配列{c1
*,…,cN
*}を計算する。
【0078】
詳細には、平均
推定係数の配列{c1
*,…,cN
*}は、以下のように計算される。
【0080】
上式で、K/Nは部分間隔T
nの個数である。
【0081】
したがって、ステップ205の終わりに、制御ユニットCUは、好ましくは、表面SVの各点(x
p,y
q)に関し、平均
推定係数の配列{c1
*,…,cN
*}を記憶する。
【0082】
上記に鑑みて、本発明の第1の実施形態および第2の実施形態の両方によれば、ステップ205の期間に、制御ユニットCUは
推定係数の組を計算し、第1の実施形態によれば、
推定係数は、上の式[3]の第1の
推定係数行列A
i1、式[4]の第2の
推定係数行列B
i1、式[5]の第3の
推定係数行列A
i2、式[6]の第4の
推定係数行列B
i2内に含まれる要素であり、第2の実施形態によれば、
推定係数は、平均
推定係数の配列{c1
*,…,cN
*}の要素である。以降で詳細に記載されるように、
推定係数は、次いで、温度監視システムTMSの動作期間に、表面SV内の温度センサS(i)により検知される温度から始めて、調査面SVの「仮想」サーモグラフィックスキャンを
推定するために使用される。そのようなスキャンは、初期化動作の期間に使用されるサーモグラフィックカメラなどのさらなる温度センサを使用することなく取得されるので、「仮想的」である。このことは、有利なことに、コストを低減する一方で正確なサーモグラフィックスキャンを得ることを可能にする。
【0083】
本発明の第1の実施形態および第2の実施形態を参照して上に記載された
推定モデルは、単に例示である。実際に、サンプルサーモグラフィックスキャンの温度を温度センサにより検知される温度と結び付ける数式の組を初期化動作の期間に規定するために、固定されたセンサの温度からサーモグラフィックスキャンを
推定することを可能にするさらなる
推定モデルを使用することが可能である。さらなる
推定モデルの例は、ニューラルネットワークの使用に基づくモデル、および空間−周波数変換の使用に基づくモデルである。
【0084】
図5は、
図1の温度監視システムTMSの動作のステップを図示する流れ図を示す。ステップ301の期間に、制御ユニットCUは、時刻t
k*に、好ましくは、調査面SV内のN個の熱源HS(i)に関連付けられるN個の温度センサS(i),i=1,…,Nにより検知されるN個の温度の値Ts(i,k
*),i=1,…,Nを受け取る。次いで、ステップ302の期間に、制御ユニットCUは、好ましくは、上に記載された初期化のステップ205の期間に計算された
推定係数を使用して、受け取った温度の値Ts(i,k
*)を処理する。
【0085】
処理の結果として、制御ユニットCUは、調査区域の仮想サーモグラフィックスキャンSc
*を
推定する。
【0086】
詳細には、本発明の第1の実施形態によれば(すなわち、熱源HS(i)が独立であると仮定することにより)、制御ユニットCUは、好ましくは、上の、式[3]の
推定係数行列A
i1、式[4]の
推定係数行列B
i1、式[5]の
推定係数行列A
i2、式[6]の
推定係数行列B
i2を使用することによって、受け取った温度の値Ts(i,k
*)を処理する。次いで、制御ユニットCUは、好ましくは、個数がNの仮想スキャンSc
*(i)を
推定し、その各々は、それぞれの熱源HS(i)のドメインに関する。
【0087】
例えば、時間t
k*において、i番目の熱源HS(i)に関連付けられるi番目の温度センサS(i)が温度の値Ts(i,k
*)を検知し、熱ダイナミクスが加熱ダイナミクスであることが以下で仮定される。さらに、ステップ205の期間に、制御ユニットCUがデータ点の線形補間を実施したと(すなわち、補間多項式は次数1の多項式であると)仮定される。そのような場合、i番目の熱源に関する仮想サーモグラフィックスキャンSc
*(i)は、i番目の熱源HS(i)のドメインに属する、点(x
h,y
w),h=1,…,H,W=1,…,Wの温度マップである。仮想サーモグラフィックスキャンSc
*(i)は、次の式にしたがって計算される。
【0088】
Sc
*(i)=A
i1・Ts(i,k
*)+B
i1 [9]
上式で、A
i1は、上の式[3]の第1の
推定係数行列(すなわち、加熱ダイナミクスの存在における、点(x
h,y
w)での温度を補間する直線の傾きを含む行列)であり、Ts(i,k
*)は、時間t
k*において温度センサS(i)により検知される温度の値であり、B
i1は、上の式[4]の第2の
推定係数行列(すなわち、加熱ダイナミクスの存在における、点(x
h,y
w)での温度を補間する直線のy切片を含む行列)である。
【0089】
本発明の第2の実施形態によれば(すなわち、熱源HS(i)が独立でないと仮定することにより)、制御ユニットCUは、好ましくは、式[8]を参照して上で規定された、平均
推定係数の配列{c1
*,…,cN
*}の
推定係数を使用することによって、受け取った温度の値Ts(i,k
*)を処理する。次いで、制御ユニットCUは、好ましくは、調査面SVの仮想スキャンSc
*(i)を
推定する。
【0090】
例えば、表面SVが3つの熱源HS(1)、HS(2)、およびHS(3)を含み、それぞれが、それぞれの温度センサS(1)、S(2)、およびS(3)に関連付けられることが以下で仮定される。ステップ205の期間に、制御ユニットCUは、表面SVの各点(x
p,y
q)に関し、平均
推定係数の配列{c1
*(p,q),c2
*(p,q),c3
*(p,q)}を計算する。例えば、時間t
k*において、熱源HS(1)に関連付けられる温度センサS(i)が温度の値Ts(1、k
*)を検知し、熱源HS(2)に関連付けられる温度センサS(2)が温度の値Ts(2、k
*)を検知し、熱源HS(3)に関連付けられる温度センサS(3)が温度の値Ts(3、k
*)を検知することが仮定される。そのような場合、仮想サーモグラフィックスキャンSc
*は、調査面SVに属する点(x
p,y
q)の温度マップである。点(x
p,y
q)の温度を表す仮想サーモグラフィックスキャンSc
*の要素は、以下の式にしたがって計算される。
【0091】
Sc
*(p,q)=c1
*(p,q)・Ts(1、k
*)+c2
*(p,q)・Ts(2、k
*)+c3
*(p,q)・Ts(3、k
*)
上式で、p=1,…,Pおよびq=1,…,Qである。
【0092】
仮想サーモグラフィックスキャンSc
*(または第1の実施形態にしたがうスキャンSc
*(i))の正確さは、サンプル収集期間SPの期間の選択に依存する。上に述べたように、サンプル収集期間SPの期間は、温度の変動範囲が最大である間隔を含むように選択される。例えば、ステップ301の期間に、温度センサS(i)により検知される温度のうちの1つまたは複数が、サンプル収集期間SPの期間を決定するために考えられた温度の変動範囲の外側である(すなわち、例えば、固定センサS(i)により検知される温度が、サンプル収集期間SPの期間に同じセンサS(i)により検知される最大値よりも高い)場合、ステップ302の期間に
推定される仮想サーモグラフィックスキャンSc
*は、誤差により影響を受ける可能性がある。システムTMSの動作の期間、固定センサS(i)により検知される温度が、サンプル収集期間SPの期間に検知される値からさらに異なると、誤差が仮想サーモグラフィックスキャンSc
*にさらに存在することになる。
【0093】
一度仮想サーモグラフィックスキャンSc
*(または第1の実施形態にしたがうスキャンSc
*(i))が計算されると、それは、制御ユニットCUに接続されるディスプレイを用いてオペレータに提示されうる、画像、グレースケール画像または疑似カラー画像を取得するために処理されうる。
【0094】
ステップ302の期間に、制御ユニットCUは、異なる連続する時刻に関する、仮想サーモグラフィックスキャンSc
*(または第1の実施形態にしたがうスキャンSc
*(i))の組も
推定する。
【0095】
次いでステップ303の期間に、制御ユニットCUは、好ましくは、起こりうるスキャン中の温度異常を識別するために、サーモグラフィックスキャンSc
*またはそれから導出された画像を(そのような場合には、例えば画像処理ソフトウェアなどを使用して)分析する。異常は、予め定められた温度範囲の外側の温度の値または温度の値のグループであってよく、前記温度範囲は、部屋の中に存在する装置が、安全で正しく機能することを保証する。例えば、ステップ303で実施される分析は、表面SV内の熱源HS(i)、例えばサーバが過熱され、このことが誤動作を引き起こす可能性があることを示すことができる。さらに、連続する時刻に関する仮想サーモグラフィックスキャンを分析することにより、制御ユニットCUは、温度の異常傾向が識別されうるかどうかを確認することができる。
【0096】
ステップ304の期間に制御ユニットCUが仮想サーモグラフィックスキャンSc
*内の少なくとも1つの異常を識別する場合、または制御ユニットCUが連続する仮想サーモグラフィックスキャン内で、温度の異常傾向を識別する場合、制御ユニットCUは、好ましくは、自動的なやり方で、制御ユニットCUに接続される温度制御システム(図示せず)の動作をトリガすることができるアラーム信号を生成する(ステップ305)。
【0097】
あるいは、温度制御システムを動作させるようにオペレータが手動で介入することを可能にするために、制御ユニットCUが、制御ユニットCUに接続されるラウドスピーカ(図示せず)により動作可能な音を再生することができ、または制御ユニットCUが、制御ユニットCUに接続されるディスプレイ上に表示される映像メッセージを生成することができる。
【0098】
温度制御システムは、空気を冷却するための装置および冷却された空気を配向させるための装置、例えば空調装置などを含むことができる。例えば、ステップ303で実施される仮想サーモグラフィックスキャンSc
*の分析が、サーバが過熱されていることを示す場合、温度制御システムは、サーバの温度を下げるように、空気を冷却し、冷却された空気を過熱されたサーバに向けるように動作されうる。さらに、クラウドコンピューティングインフラストラクチャを利用することにより、過熱されたサーバから他の装置にいくつかのプロセスおよびアプリケーションを移動することが可能なソフトウェアアプリケーションを動作させるために、ソフトウェアを実行することが可能なプロセッサを温度制御システムが備えることができる。そのようなソフトウェアは、あるいは、制御ユニットに含まれうる。代替として、過熱されたサーバを同じラック内の異なる場所または部屋の中の別のラックに動かすように判断されうる。
【0099】
有利なことに、本発明にしたがう温度を監視するための方法は、監視される部屋のサーモグラフィックスキャンを
推定することを、少数の温度センサにより検知される温度測定値から始めて、サーモグラフィックカメラなどの他のより高価な器具を使用することなく可能にする。これは、温度監視システムを実装するためのコストの削減をもたらす。実際に、上に記載した初期化の期間に、制御ユニットは、サンプルサーモグラフィックスキャンの温度を温度センサにより検知される温度に結び付ける数式の組(すなわち
推定モデル)を決定する。サンプルサーモグラフィックスキャンは、初期化手順の期間でだけ使用されるサーモグラフィックカメラを用いて取得される。一度
推定モデルが計算されたら、さらなるサーモグラフィックスキャンを取得する必要がない。というのは、温度センサによって検知される温度から仮想サーモグラフィックスキャンを計算することが可能だからである。したがって、有利なことに、監視された部屋の温度は、簡単、低コスト、かつ正確なやり方で確認されうる。実際に、仮想サーモグラフィックスキャンは、「実際の」サーモグラフィックスキャンの全ての情報を含み、部屋の中の表面の温度を高い精度で監視することを可能にする。これは、実際に、温度が空間および時間で急激に変動するとき、温度を監視することを可能にする。
【0100】
最後に、仮想サーモグラフィックスキャンを
推定する動作は、速い。1つまたは複数の装置の誤動作を引き起こす可能性がある、部屋の中の表面の温度分布の異常が存在する場合、迅速に異常の原因を識別して適切な対策をとるように、その表面のサーモグラフィックスキャンを迅速に計算することが可能である。実際に、上に記載した実施形態によれば、サーモグラフィックスキャンは、単に配列および行列の和および積を計算することにより得られ、そのような演算は、コンピュータにより実施されると極めて速い。より複雑な演算である、
推定モデルの構築は、有利なことに、システムが動作させられて、
推定係数が制御ユニット内に記憶される前に、一度実施される。したがって、有利なことに、システムの動作期間に、
推定係数が再度計算される必要がなく、
推定係数は、制御ユニットのメモリから単に復元されるものである。