特許第5926818号(P5926818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5926818ポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤を用いた菌体の死滅化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926818
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】ポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤を用いた菌体の死滅化方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/02 20060101AFI20160516BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20160516BHJP
   C12N 9/90 20060101ALI20160516BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   C12P19/02
   C12N1/20 C
   C12N9/90
   A01P3/00
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-548660(P2014-548660)
(86)(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公表番号】特表2015-505677(P2015-505677A)
(43)【公表日】2015年2月26日
(86)【国際出願番号】KR2012011161
(87)【国際公開番号】WO2013095002
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2014年6月18日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0141641
(32)【優先日】2011年12月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507406611
【氏名又は名称】シージェイ チェルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジンハ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヨンミ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソンボ
(72)【発明者】
【氏名】キム,テクボム
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヤンヒ
(72)【発明者】
【氏名】パク,スンウォン
【審査官】 吉門 沙央里
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第01/036592(WO,A1)
【文献】 米国特許第03912450(US,A)
【文献】 特表2010−510774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00
CAplus/REGISTRY/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コリネバクテリウム(Corynebacterium)属菌体またはコリネバクテリウム属菌体が含有された培養物を、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドを用いて、前記菌体または前記菌体が含有された培養物を基準として、1ないし8%の濃度(w/w)で10ないし60℃の温度範囲で処理して前記菌体を死滅化するステップを含む、タガトースの製造方法。
【請求項2】
前記コリネバクテリウム属菌体は、ガラクトースまたはアラビノース異性化酵素生産能を有するものである、請求項に記載の方法。
【請求項3】
コリネバクテリウム(Corynebacterium)属菌体またはコリネバクテリウム属菌体が含有された培養物を、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドを用いて、前記菌体または前記菌体が含有された培養物を基準として、1ないし8%の濃度(w/w)で10ないし60℃の温度範囲で処理して前記菌体を死滅化して得られた菌体含有物をタガトースの製造に使用する方法。
【請求項4】
前記コリネバクテリウム属菌体はガラクトースまたはアラビノース異性化酵素生産能を有するものである、請求項3に記載の方法
【請求項5】
a)ポリオキシエチレン脂肪酸アミド;及びb)コリネバクテリウム(Corynebacterium)属菌体由来のガラクトースまたはアラビノース異性化酵素;を含む、タガトース製造用死滅化菌体含有物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、菌体または菌体が含有された培養物をポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤で処理することによって、菌体はほとんど完全に死滅し、菌体内に発現した酵素の活性は高く維持される菌体の死滅化方法及びその死滅化菌体に関する。
【0002】
より具体的に、本願発明は、食品に使用可能なポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤を用いて菌体を死滅化させることによって、食品の製造に使用できるように菌体を死滅化させる方法及びその死滅化菌体含有物に関する。
【背景技術】
【0003】
食品の製造過程中には、多様な微生物によって作られる多くの酵素を活用しなければならない場合がある。すなわち、微生物から目的とする酵素を得た後、その得られた酵素を食品の一構成材料として使用する。
【0004】
このように、食品製造工程上、微生物菌体を使用する場合は、微生物生菌体が漏れて製品に混入するなどの問題が発生し、2次的に微生物の汚染がもたらされる可能性がある。
【0005】
そこで、一般には、安定性の高い微生物を使用して閉鎖系で反応させ、使用した菌体を固定化することによって菌体の漏れを最小化する措置を取っている。しかし、最近になって、特定酵素の大量生産のために遺伝子が組み換えられた各微生物の使用が増加しており、このような遺伝子が組み換えられた微生物を食品製造工程に用いる場合は、食品の安全性のために微生物菌体の完全死滅化が要求される。
【0006】
微生物菌体を完全に死滅化する方法としては、大きく分けて、物理的な手段を用いる方法と化学的な手段を用する方法がある。物理的な手段を用いる場合の例としては、加熱、紫外線照射、電磁波照射またはろ過滅菌などを行う方法を挙げることができ、化学的な手段を用いる場合の例としては、フェノール類、アルコール類、酸化剤、重金属イオンまたは滅菌ガスなどを使用する方法を挙げることができる。
【0007】
化学的手段を用いて菌体を死滅化させる方法に関する先行技術としては、大韓民国登録特許第10―0501864号がある。
【0008】
前記先行技術は、陽イオン系または両性界面活性剤を使用して遺伝子組換え体細菌であるロドコッカス(Rhodococcus)を死滅化させる方法を開示している。前記先行技術では、陽イオン系界面活性剤を使用することによって菌体の死滅処理効率を高めているが、使用する陽イオン系界面活性剤が塩化ベンゼトニウム(Benzethonium)であるので問題となる。
【0009】
塩化ベンゼトニウムは、強い殺菌力を有し、鼻炎治療剤、口内炎治療剤及び口腔清浄剤などに使用される物質であるが、最近の研究によると、塩化ベンゼトニウムは、内分泌系統に撹乱を起こす代表的な環境ホルモンの一つであって、人体に相当有害な物質であると報告されている。
【0010】
したがって、前記先行技術は、体内に入り込む危険のない特定分野において工業的目的の菌体死滅工程以外には適用できないものであって、さらに、本願発明のように食品製造工程中に適用しようとする菌体死滅方法とはかけ離れた方法に該当する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者等は、前記の問題を解決するために、食品に使用可能なポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤を用いて菌体を死滅化させる方法を開発するに至った。
【0012】
具体的に、本願発明は、菌体または菌体が含有された培養物をポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤で処理することによって、菌体はほとんど完全に死滅し、菌体内に発現した酵素の活性は高く維持される菌体の死滅化方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本願発明は、ポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤を用いて菌体を死滅化させることによって、食品の製造に使用可能な死滅化菌体含有物を提供することを目的とする。
【0014】
また、本願発明は、ポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤を用いてガラクトース及び/またはアラビノース異性化酵素を生産するコリネバクテリウム(Corynebacterium)属菌体を死滅化させることによって、タガトースの製造に使用可能な死滅化菌体含有物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明は、ポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤で処理して菌体を死滅化させる方法及びその死滅化菌体含有物に関する。
【0016】
より具体的に、本願発明の一様態は、菌体または菌体が含有された培養物をポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤で処理するステップを含む、菌体の死滅化方法を提供する。
【0017】
本願発明の他の一様態によると、前記ポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤は、エーテル型、エステル型及び含窒素型からなる群より選ばれる1種以上である、菌体の死滅化方法を提供する。
【0018】
本願発明の更に他の一様態によると、前記ポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤は、前記菌体または前記菌体が含有された培養物の重量を基準して0.1%ないし10%の濃度で処理される、菌体の死滅化方法を提供する。
【0019】
本願発明の更に他の一様態によると、前記ステップは、0℃ないし70℃の温度範囲で行われる、菌体の死滅化方法を提供する。
【0020】
本願発明の更に他の一様態によると、前記菌体は、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属菌体である、菌体の死滅化方法を提供する。
【0021】
本願発明の更に他の一様態によると、前記菌体は、ガラクトース及び/またはアラビノース異性化酵素生産能を有するコリネバクテリウム属菌体である、菌体の死滅化方法を提供する。
【0022】
本願発明の更に他の一様態によると、前記方法は、タガトースを製造する工程に使用されることを特徴とする、菌体の死滅化方法を提供する。
【0023】
本願発明の更に他の一様態によると、前記の方法によって死滅化された菌体を含有する、死滅化菌体含有物を提供する。
【0024】
本願発明の更に他の一様態によると、前記死滅化菌体含有物の用途がタガトース製造用である、死滅化菌体含有物を提供する。
【0025】
本願発明の更に他の一様態によると、a)ポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤;及びb)ガラクトースまたはアラビノース異性化酵素;を含む、食品製造用死滅化菌体含有物を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本願発明の菌体死滅化方法は、菌体または菌体が含有された培養物をポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤で処理することによって、菌体はほとんど完全に死滅し、菌体内に発現した酵素の活性は高く維持されるという効果を有する。
【0027】
また、本願発明は、菌体を死滅化することによって、これを活用した食品などの製造工程において生菌体の漏れによる製品の2次的汚染を防止し、後続的な工程で菌体の取り扱いを容易にするという効果を有する。
【0028】
また、本願発明は、食品に使用可能なポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤を用いて菌体を死滅化させることによって、食品の製造に使用可能な死滅化菌体含有物を提供するという効果を有する。
【0029】
また、本願発明は、ポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤を用いてガラクトース及び/またはアラビノース異性化酵素を生産するコリネバクテリウム属菌体を死滅化させることによって、タガトースを製造できる死滅化菌体含有物を提供するという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施例2によって、30℃で菌体を死滅化処理した後の酵素の残存活性を測定した結果を示したグラフである。
図2】実施例2によって、50℃で菌体を死滅化処理した後の酵素の残存活性を測定した結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下では、本願発明についてより詳細に説明する。本願明細書に記載されていない内容は、本願発明の技術分野または類似分野で熟練した者であれば十分に認識して類推できるものであるので、それについての説明は省略する。
【0032】
本願発明の一様態は、菌体または菌体が含有された培養物をポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤で処理するステップを含む、菌体の死滅化方法を提供する。
【0033】
本願発明に使用される菌体は、特別に制限されるものではなく、野生型及び遺伝子が組み換えられた微生物を含む公知の微生物であり得る。
【0034】
本願発明に使用される菌体は、好ましくはコリネバクテリウム(Corynebacterium)属菌体であって、より好ましくはコリネバクテリウムグルタミクム(Corynebacterium glutamicum)ATCC13032であり得る。
【0035】
前記コリネバクテリウムグルタミクムATCC13032は、国際寄託機関であるATCC(American Type Culture Collection、Manassas、USA)に寄託されている公知の菌体である。
【0036】
本願発明で使用可能な前記コリネバクテリウムグルタミクムATCC13032は、ガラクトース及び/またはアラビノース異性化酵素生産能を有する菌体であって、前記異性化酵素を生産できるように遺伝子が組み換えられた菌体であり得る。
【0037】
本願発明で使用される前記培養物とは、菌体を培養した培養培地または培養液、及び前記培養培地または培養液で菌体を培養した結果物を含む概念を意味する。
【0038】
前記培養物には、菌体を培養するために必要な栄養供給源、例えば、炭素源、窒素源などの他に、無機塩成分、アミノ酸、ビタミン、核酸及び/またはその他の一般的に培養培地(または培養液)に含有され得る各成分を含ませることができる。
【0039】
また、前記培養物には、菌体を培養した結果物として菌体が生産・分泌した酵素などを含ませることができる。
【0040】
本願発明で意味する菌体の死滅化とは、比較的高濃度の菌体懸濁液中において、該当の菌体の生菌数が実質的に0に近いことを意味する。実質的に0に近いことは、菌体の生存率(死滅化処理後の生菌数/死滅化処理前の生菌数)が1/10以下になることを意味する。
【0041】
前記生菌数は、菌体懸濁液を所定の濃度に希釈し、前記菌体が生育可能な培養培地上に菌体懸濁液をスプレーディングした後、前記培地上に生育された菌体数と希釈倍率から算出することができる。
【0042】
本願発明の菌体死滅化方法は、菌体または菌体が含有された培養物をポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤で処理するステップを含む。ポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤で処理することは、具体的に、対象菌体にポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤を直接接触させたり、対象菌体が含有された培養物にポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤を添加して菌体に接触させる全ての処理を意味する。前記死滅化処理は、撹拌しながら行うことができる。
【0043】
本願発明で使用されるポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤は、ポリエチレングリコール系であれば特別な制限なく使用可能である。
【0044】
前記ポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤の非制限的な例としては、ポリオキシエチレンなどのエーテル型;ポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどのエステル型;またはポリオキシエチレン脂肪酸アミドなどの含窒素型などを挙げることができる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0045】
本願発明で使用されるポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤は、好ましくは、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドなどの含窒素型であり得る。
【0046】
前記ポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤で、菌体または菌体を含有する培養物を処理するにおいて、その濃度は特別に制限されないが、好ましくは、前記菌体または菌体を含有する培養物の重量を基準して0.1%ないし10%の濃度であって、より好ましくは0.5%ないし8%の濃度であって、例えば1%ないし8%の濃度であり得る。
【0047】
使用される界面活性剤の濃度が0.1%未満である場合は、十分な菌体死滅化効果を獲得することが難しく、濃度が10%を超える場合は、必要以上の界面活性剤を添加したことになり効率的でないだけでなく、むしろ酵素の活性を低下させるという問題が発生する。また、死滅化菌体に残存する界面活性剤の含量が高くなり、食品製造などの多様な分野に死滅化菌体を活用する場合において好ましくない。
【0048】
本願発明の菌体死滅化方法が行われる温度は、菌体が生産した酵素の安定性を阻害しない範囲内であれば特別に制限されないが、好ましくは0℃ないし70℃の温度範囲であって、より好ましくは10℃ないし60℃の温度範囲であり得る。
【0049】
菌体死滅化方法が行われる温度が0℃未満であるか70℃を超える場合は、菌体によって生産された酵素が変性され、酵素の活性が低下するおそれがある。
【0050】
本願発明の菌体死滅化方法を行うにおいて、対象菌体が生産して分泌した酵素の安定性を維持し、活性を低下させないために、前記酵素の基質及び/または基質類似体などを添加するステップをさらに含むことができる。
【0051】
本願発明の更に他の一様態によると、前記菌体の死滅化方法はタガトースを製造する工程に使用することができる。
【0052】
本願発明の更に他の一様態によると、前記の死滅化方法によって死滅化された菌体を含有する、死滅化菌体含有物を提供する。
【0053】
前記死滅化菌体含有物は、死滅化された菌体及び前記菌体が死滅化される前に生産して分泌した酵素などの物質を含む概念である。
【0054】
本願発明の死滅化菌体含有物は、好ましくは、コリネバクテリウム属菌体を死滅化処理して製造されたものであって、より好ましくはコリネバクテリウムグルタミクム菌体、最も好ましくはガラクトース及び/またはアラビノース異性化酵素生産能を有するコリネバクテリウムグルタミクムATCC13032菌体を死滅化処理して製造されたものであり得る。
【0055】
本願発明の死滅化菌体含有物には、ガラクトース及び/またはアラビノース異性化酵素を含ませることができる。
【0056】
本願発明の死滅化菌体含有物は、特別に制限されないが、好ましくは食品製造用に使用することができ、より好ましくはタガトースを製造する工程に使用することができる。
【0057】
タガトースは、ガラクトースの異性質体であって、フルクトースと類似する物理的・化学的性質を有していると知られている天然糖の一つである。
【0058】
タガトースは、米国食品医薬局(Food and Drug Administration;FDA)でGRAS(Generally Recognized As Safe)と認められ、食品、飲料、健康食品、ダイエット添加物などに甘味料として使用可能な許可を受けた物質である。タガトースは、体内摂取時に副作用がほとんどなく、ゼロカロリーに近い低カロリー糖であって、肥満、糖尿などの多様な成人病の一要因と見なされる砂糖に取って代わる重要な代替甘味料の一つである。
【0059】
前記タガトースは、ガラクトースまたはアラビノース異性化酵素を用いてガラクトースまたはアラビノースを異性化させる生物学的方法を通じて製造することができる。
【0060】
本願発明の更に他の一様態によると、a)ポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤;及びb)ガラクトースまたはアラビノース異性化酵素;を含む、食品製造用死滅化菌体含有物を提供する。
【0061】
前記食品製造用とは、食品の製造工程において直接または間接的に用いられる全ての場合を含む。
【0062】
以下では、実施例を記述することによって本願発明をより詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本願発明の一例示に過ぎなく、本願発明の内容がこれに限定されると解釈してはならない。さらに、本願発明の実施様態は、本願発明の属する技術分野で通常の知識を有する者によって多様な修正及び変形が可能である。
【0063】
実施例1
【0064】
ポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤の濃度による菌体の死滅化処理
【0065】
コリネバクテリウムグルタミクムATCC13032遺伝子組換え菌株に、それぞれ非イオン性界面活性剤である、含窒素型ポリエチレングリコール系界面活性剤としてポリオキシエチレン脂肪酸アミド (POESA)(ナイミンS―215、日本油脂(株))とTween 80(Polyoxyethylene sorbitan mono―oleate)を異なる濃度で処理し、コリネバクテリウムグルタミクムATCC13032の菌体死滅化位及び酵素活性を測定した。具体的な遂行方法は次の通りである。
【0066】
(1)コリネバクテリウムグルタミクムATCC13032の培養
【0067】
コリネバクテリウムグルタミクムATCC13032菌株をそれぞれ10μg/ml濃度のカナマイシンを含むMB培地(Bacto―trypton 10g/L、Bacto―yeast extract 5g/L、NaC l 5g/L、Soytone 5g/L)に初期濃度O.D.600が0.1になるように接種し、これを30℃で24時間培養することによって組換えガラクトース異性化酵素の発現を誘導した。
【0068】
前記の収得された培養液を、10μg/ml濃度のカナマイシンを含有した変異培地(ブドウ糖80g/L、ソイトン(soytone)20g/L、(NHSO10g/L、KHPO1.2g/L、MgSO1.4g/L)3Lを入れた5L発酵器(jar fermenter)にO.D.600=0.6で接種し、これを30℃で20時間培養した。
【0069】
(2)菌体の死滅化処理
【0070】
前記菌体が含有された培養物40mlの試料を11個準備し、第1の試料には界面活性剤を添加せず、第2ないし第6の試料にはポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤(POESA)を異なる濃度で(前記培養物の重量を基準して0.05%、0.1%、0.5%、1%及び5%)添加し、第7ないし第11の試料にはTween 80を前記のように異なる濃度で(0.05%、0.1%、0.5%、1%及び5%)添加した後、これを30℃で3時間放置することによって菌体を死滅化させた。
【0071】
(3)生菌数の測定
【0072】
前記菌体死滅化処理の終了後、11個の試料のそれぞれをカマイシンが含まれたMB寒天培地に塗布し、これを30℃で24時間培養することによって生菌数を調査した。
【0073】
(4)酵素の活性測定
【0074】
死滅化処理された菌体が含有された培養物(死滅化菌体含有物)を8000x g(=10,000rpm)で10分間遠心分離することによって菌体を収去した。その後、300g/Lのガラクトース基質が溶解された、pH7.5の50mM Tris―Hcl緩衝溶液(Sigma―Aldrich)に前記菌体が除去された培養物を懸濁し、55℃で2時間にわたってガラクトースのタガトースへの異性化反応を実施した。
【0075】
前記異性化反応後、ガラクトース異性化酵素の残存活性を測定した。
【0076】
死滅処理後の酵素の活性は、異性化反応初期のガラクトースの量と反応終了後に生成されたタガトースの量とを比較することによって測定した。
【0077】
下記の表1は、前記の死滅化処理後、生菌数及び酵素残存活性を測定した結果を示したものである。
【0078】
【表1】
【0079】
実施例2
【0080】
温度変化による、ポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤を用いた菌体の死滅化処理
【0081】
前記実施例1における界面活性剤の種類及び処理濃度による試料をそれぞれ2個ずつ製造し、合計22個の試料を準備した後、実施例1の(2)で死滅処理温度を30℃及び50℃に分けたことを除いては、前記実施例1と同一の方法によって死滅化処理を行った。
【0082】
死滅化処理後の生菌数及び酵素残存活性の測定結果は、下記の表2及び表3に示した。
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
前記表1ないし3を見ると、Tween 80の場合、5%の濃度で処理しても菌体の完全死滅を誘導できなかったが、ポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤の場合、濃度が0.5%である時点から生菌数が大きく減少し始め、濃度1%では菌体を完全に死滅化させたことが確認された。
【0086】
また、ポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤を使用して死滅化処理した場合は、同一の濃度でTween 80を処理した場合に比べて酵素の残存活性がより高く示されることを確認することができた。そして、界面活性剤を処理しない場合に比べて酵素活性がより高いと見なされ、界面活性剤が酵素の基質に対する接近性を容易にする作用をしたと判断された。
【0087】
一方、死滅化処理の温度による測定結果は、50℃で処理したときに菌体の死滅化がより効果的に行われることを確認することができた。
図1
図2