特許第5926901号(P5926901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926901
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】生体組織回収袋
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20160516BHJP
   A61B 10/02 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   A61B17/00
   A61B10/00 103A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-166955(P2011-166955)
(22)【出願日】2011年7月29日
(65)【公開番号】特開2013-27616(P2013-27616A)
(43)【公開日】2013年2月7日
【審査請求日】2014年6月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511185531
【氏名又は名称】高山 悟
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 悟
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 卓也
(72)【発明者】
【氏名】袖山 光正
【審査官】 井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−529668(JP,A)
【文献】 特開2007−252951(JP,A)
【文献】 特開平08−336543(JP,A)
【文献】 特開平08−019544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61B 17/22
A61B 17/50
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有し、切除された生体組織を出し入れする開口部と、該生体組織を収容する収容部とを備える生体組織回収袋であって、
該収容部は、側面視において、底部と、底部と開口部との間隔が短い側端縁と、底部と開口部の間隔が長い側端縁とからなり、該底部は両側端縁の底部側の各端部を直線状に結んだテーパー状に形成され、
収容部に対して引っ張ることで該収容部を圧迫し該収容部の径を収縮させるとともに、該収容部に収容された生体組織を該収容部を介して圧迫し収縮させる収縮部材を備え、
該収縮部材は、該収容部のうち前記収容される生体組織が存在する領域の周囲であって、側面視において、前記収容部の底部と間隔が長い側端縁とを斜めに結ぶ方向に設けられていることを特徴とする生体組織回収袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡下外科手術において切除された生体組織を収容して体外に摘出し、回収する生体組織回収袋に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡下外科手術では、体腔内の手術において、最小限に切開された切開孔に内視鏡、鉗子、電気メスなどの処置具を挿入し、内視鏡で体腔内を観察しながら病変した生体組織を切除し、削除した生体組織を袋に詰めて体外に取り出す処置を行う。当該手術法によれば、切開する範囲を小さくすることができるので、術後の回復も早く、外部からの菌などの侵入も最小限に抑えることができる。
【0003】
従来、生体組織を取り出すための袋(以下、生体組織回収袋という)として、切除された生体組織を出し入れする開口部と、前記生体組織を収容する収容部とを備える有底筒状の生体組織摘出袋であって、前記開口部辺縁に列設された複数の紐通し孔と、該紐通し孔に挿通されて該収容部の開口部を開閉自在とする閉じ紐とを備えるものが知られている。
【0004】
前記生体組織回収袋は、肉薄柔軟な樹脂製であり、切除された生体組織を前記収容部に収容した後、前記閉じ紐を引くことにより、前記開口部を絞って閉じられるようになっている。そして、前記生体組織回収袋は、患者の切開孔を介して体外から前記閉じ紐を引くことにより、前記開口部から徐々に患者の切開孔を通過させ、体外に回収することができるようになっている。
【0005】
しかしながら、体外から前記閉じ紐を引いた場合には、切開孔の内壁で袋が開口部側から絞られることにより、収容された生体組織が収容部底部に集中し、切開孔方向からみた投影面積が広くなることがある。この場合には、小さな切開孔では前記生体組織回収袋を通過させることができないため、切開孔をより大きくする必要がある。
【0006】
この問題を解消するために、前記収容部の底部にテーパー部を介して縦長に連なり細絞り状に形成されたテール部を備えた改良生体組織回収袋が知られている(例えば、特許文献1参照)。当該改良生体組織回収袋では、切開孔からの取り出しの際、切開孔の内壁から絞られることにより、生体組織が前記収容部の底部に集中した後、さらに前記テール部へ移動される。
【0007】
その結果、前記改良生体組織回収袋によれば、生体組織を細絞り状のテール部に押し込むことができれば、切開孔方向からみた投影面積を狭くすることができるので、小さな切開孔であってもスムーズに通過させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−19544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、前記改良生体組織回収袋では、収容部とテール部とが縦長に連なっており、しかも可撓性の合成樹脂フィルムから構成されているため、体腔内において、前記テール部がテーパー部で折れ曲がり、生体組織がテール部まで移動しないことがあるという問題がある。
【0010】
また、テール部に生体組織が移動しようとする際、テール部の底部側に空気の溜りが生じ、この空気の逃げ場が生体組織自体によって封止され、当該空気溜りが生体組織のテール部への移動を阻止してしまうという問題点がある。
【0011】
このように、生体組織がテール部に移動できない状態で、前記改良生体組織回収袋を体外へ取り出そうとすると、切開孔方向からみた投影面積を狭くすることができず、切開孔を圧迫し傷つけるおそれがあった。
【0012】
本発明は、かかる不都合を解消して、小さな切開孔であっても確実に通過させることができる生体組織回収袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するために、本発明の生体組織回収袋は、可撓性を有し、切除された生体組織を出し入れする開口部と、該生体組織を収容する収容部とを備える生体組織回収袋であって、該収容部は、側面視において、底部と、底部と開口部との間隔が短い側端縁と、底部と開口部2の間隔が長い側端縁とからなり、該底部は両側端縁の底部側の各端部を直線状に結んだテーパー状に形成され、収容部に対して引っ張ることで該収容部を圧迫し該収容部の径を収縮させるとともに、該収容部に収容された生体組織を該収容部を介して圧迫し収縮させる収縮部材を備え、該収縮部材は、該収容部のうち前記収容される生体組織が存在する領域の周囲であって、側面視において、前記収容部の底部と間隔が長い側端縁とを斜めに結ぶ方向に設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の生体組織回収袋は、従来の生体組織回収袋と同様に、切除された生体組織を開口部から第1径の収容部に収容し、開口部を閉めることができる。そして、本発明の生体組織回収袋は収容部の周囲に沿って収縮部材を備えるので、生体組織を収容した状態で前記収容部を第1径より小径の第2径に収縮させることができる。この結果、本発明の生体組織回収袋によれば、前記収容部を収縮前より細長い棒状体に変形させることができるので、切開孔方向からみた投影面積を狭くすることができる。
【0015】
また、本発明の生体組織回収袋によれば、収縮前の収容部に収容された生体組織は、底部がテーパー状であることから側面視において縦長に配置されることになる。この状態で、収縮部材によって収容部を収縮させると、前記収容部を細長い棒状体に変形させることを容易にすることができる。
さらに、本発明の生体組織回収袋によれば、収縮前の収容部に収容された生体組織が、底部周辺に集中して側面視横方向に広がっている場合においても、当該生体組織を側面視縦方向に立ち上げながら細長い棒状体に変形させることができる。
したがって、本発明の生体組織回収袋によれば、小さな切開孔であっても確実に通過させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の生体組織回収袋の構成例を示す斜視図。
図2】本発明の生体組織回収袋の構成例の使用方法を示す説明図
図3】本発明の生体組織回収袋の第1の変形例を示す斜視図。
図4】本発明の生体組織回収袋の第2の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、添付の図面を参照しながら、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0025】
(本実施形態の構成)
図1に示すように、本実施形態の生体組織回収袋1は、切除された生体組織を出し入れする開口部2と、切除された組織を収容する収容部3と、開口部2に沿って設けられた紐通し孔4と、紐通し孔4に挿通されて収容部3の開口部2を開閉自在とする閉じ紐5と、閉じ紐5を挿通させる把持部6とを備えている。
【0026】
本実施形態では、開口部2の径と収容部3の径とは実質的に同一である。但し、本発明はこれに限られることなく、開口部2の径の方が収容部3の径より大きいロート状体であってもよく、逆に、収容部3の径の方が開口部2の径より大きくてもよい。
【0027】
収容部3は、例えばポリエチレン等の無毒性で肉薄柔軟な樹脂で形成され、可撓性を有している。また、収容部3は、側面視テーパー状の底部3kと、底部3kと開口部2との間隔が短い側端縁3lと、底部3kと開口部2との間隔が長い側端縁3mとからなる有底円筒状体である。特に本実施形態において、収容部3の底部は、側端縁3lの底部側端部と側端縁3mの底部側端部とが直線状に結ばれるテーパー状に形成されているが、本発明はこれに限られることなく、側端縁3lと側端縁3mとの長さが等しい側面視二等辺三角形のテーパー状でもよく、また、テーパーを設けずに側面視矩形状の有底筒状体であってもよい。
【0028】
また、収容部3は、底部近傍の径方向に沿って第1紐通し孔7aと、第1紐通し孔7aに挿通されて収容部3の径を収縮自在とする第1収縮紐8aと、第1収縮紐8aの第1把持部9aとを備えている(第1収縮部材)。また、収容部3は、第1収縮部材より開口部寄りの径方向に沿って第2紐通し孔7bと、第2紐通し孔7bに挿通されて収容部3の径を収縮自在とする第2収縮紐8bと、第2収縮紐8bの第2把持部9bとを備えている(第2収縮部材)。
【0029】
なお、第1収縮部材及び第2収縮部材は、いずれか一方のみを備えているだけでもよく、逆に、第3、第4の収縮部材等をより多く備えていてもよい。また、第1収縮部材(第2収縮部材)は、第1紐通し孔7a(第2紐通し孔7b)と第1収縮紐8a(第2収縮紐8b)の組合せに限られることはなく、例えば、収容部3の外周に径を収縮させるベルト状の部材を取り付けた構造であってもよい。
さらに、第1収縮部材及び第2収縮部材は、収容部3の径方向に沿って設けられることに限定されず、軸方向に設けられてもよい。
【0030】
(本実施形態の使用方法)
生体組織回収袋1は、例えば、底部3kから開口部2の方向に円柱状に巻き取られ、内径5mm程度の外套管(図示せず)内に収容される。そして、前記外套管を切開孔から体腔内に導入した後、別の切開孔から体腔内に挿入された鉗子によって、該外套管から引き出され展開される。
【0031】
次に、切除された生体組織Xが、生体組織回収袋1の開口部2から収容部3に収容される。
【0032】
そして、生体組織Xを収容部3に収容した状態で、他の鉗子(図示せず)を用いて把持部6を把持し、閉じ紐5を引く。この結果、閉じ紐5が把持部6の内部をスライドすることにより把持部6が生体組織回収袋を圧迫するので、図2(a)に示すように、生体組織回収袋1は、開口部2が絞られ封止される。
【0033】
このとき、収容部3は、底部3k近傍において第1径L11という大きさを有し、開口部2近傍において第1径L21という大きさを有する。なお、第1径L11と第1径L21とは、異なっていてもよく、同一であってもよい。
【0034】
なお、本実施形態の生体組織回収袋1では、底部3kがテーパー状になっていることから、術者が収容部3の奥に生体組織Xを無造作に押し込んだ場合であっても、生体組織Xは底部3kから一方の側端縁3lに沿って配置されやすい。
【0035】
次に、開口部2が封止された状態で、他の鉗子(図示せず)を用いて第1把持部9aを把持し、第1収縮紐8aを引く。この結果、第1収縮紐8aが第1把持部9aの内部をスライドすることにより第1把持部9aが生体組織回収袋を圧迫するので、図2(b)に示すように、収容部3の底部3k近傍の径は、第1径L11から、第1収縮紐8aを引いた後の径を示す第2径L12に収縮される。
【0036】
このとき、本実施形態の生体組織回収袋1では、生体組織Xが、収容部3の底部3k近傍において第2径L12未満の径に収縮されると共に、底部3kから一方の側端縁3lに沿って配置された状態から、他方の側端縁3mに向かって移動される。この結果、生体組織Xは、底部3kに横になった状態から側端縁3lまたは側端縁3mに沿って立った状態に、姿勢が矯正される。
【0037】
次に、他の鉗子(図示せず)を用いて第2把持部9bを把持し、第2収縮紐8bを引く。
【0038】
この結果、第2収縮紐8bが第2把持部9bの内部をスライドすることにより第2把持部9bが生体組織回収袋を圧迫するので、図2(c)に示すように、収容部3の開口部2近傍の径は、第1径L21から、第2収縮紐8bを引いた後の径を示す第2径L22に収縮される。なお、第2径L12と第2径L22とは、異なっていてもよく、同一であってもよい。
【0039】
これにより、本実施形態の生体組織回収袋1では、収容部3の形状を、幅広い有底筒状体から、細長い棒状体に変形させることができる。
【0040】
このとき、本実施形態の生体組織回収袋1では、生体組織Xが側端縁3lまたは側端縁3mに沿って立った状態に配置されており、その状態で第2収縮紐8bにより径を収縮させることができるので、生体組織Xは、収容部3内で局在化することがなく確実に細長い棒状体に変形される。
【0041】
この結果、本実施形態の生体組織回収袋1によれば、取り出す際における形状について、切開孔方向からみた投影面積を狭くすることができるので、小さな切開孔であっても確実に通過させることができる。
【0042】
なお、本実施形態の使用方法の説明では、第1収縮紐8aによって収容部3の底部3k近傍の径を収縮させた後に、第2収縮紐8aによって収容部3の開口部2近傍の径を収縮させる収縮操作の方法を説明したが、本実施形態の使用方法はこれに限定されるものではなく、上記収縮操作を同時に行ってもよく、あるいは、逆の順番で行ってもよい。
【0043】
(第1の変形例)
図3に示すように、第1の変形例の生体組織回収袋11は、前記本発明の実施形態である前記生体組織回収袋1と基本的に同様の構成を有しているので、以下、異なる点について説明する。
【0044】
第1の変形例の生体組織回収袋11では、第1紐通し孔17aが、側面視において、底部13kと側端縁13mとを斜めに結ぶ方向に沿って設けられている。このとき、側端縁13mの第1紐通し孔17aが設けられる位置は、底部13kの第1紐通し孔17aが設けられる位置より、開口部12寄りになるように配置することが好ましい。
【0045】
第1の変形例の生体組織回収袋11によれば、第1収縮紐18aを引いた際に、収縮によって、底部13k側と側端縁13mとが接近する。そのため、底部13kに沿って横になった状態の生体組織Xを、底部13k側から持ち上げることができるので、より確実に、側端縁13lまたは側端縁13mに沿って立った状態にすることができ、収容部13の形状を細長い棒状体に変形させることを容易に行うことができる。
【0046】
(第2の変形例)
図4に示すように、第2の変形例の生体組織回収袋21は、前記本発明の実施形態である前記生体組織回収袋1と基本的に同様の構成を有しているので、以下、異なる点について説明する。
【0047】
第2の変形例の生体組織回収袋21では、第1紐通し孔7a及び第2紐通し孔7bに換えて、第3紐通し孔27cが設けられている。第3紐通し孔27cは、収容部23の径方向に沿って、螺旋状に設けられている。螺旋状に設けるときは、開口部22の方向から収容部23の底部23K方向に向かって設けることが好ましい。また、第3紐通し孔27cには、第3紐通し孔27cに挿通されて収容部3の径を収縮自在とする第3収縮紐28cと、第3収縮紐28cの把持部29cとを備えている。
【0048】
第3収縮紐28cは、本変形例では、一方の端部が開口部22近傍において固定され、他方の端部が底部23k近傍において第3紐通し孔27cから延出されているが、本発明はこれに限られることなく、逆に、底部23k近傍で固定され、開口部22近傍で第3紐通し孔27cから延出されていてもよく、あるいは、開口部22近傍及び底部23k近傍の両方の第3紐通し孔27cからそれぞれ延出し両端に把持部29cを備えていてもよい。
【0049】
生体組織回収袋21では、開口部22が封止された状態で、他の鉗子(図示せず)を用いて第3把持部29cを把持し、第3収縮紐28cを引く。この結果、収容部3は、底部23kから開口部22方向に向かって、徐々に収縮していく。このとき、生体組織Xは、底部23kに横になった状態から側端縁23lまたは側端縁23mに沿って立った状態に、姿勢が矯正されながら、収縮されることになる。この結果、生体組織回収袋21によれば、生体組織Xが収容部23内で局在化することを防止しつつ、収容部23を収縮させることができるので、より確実に収容部23を細長い棒状体に変形することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…生体組織収容袋、 2…開口部、 3…収容部、 7a…第1紐通し孔、 7b…第2紐通し孔、 8a…第1収縮紐、 8b…第2収縮紐、 9a…第1把持部、 9b…第2把持部、X…生体組織。
図1
図2
図3
図4