特許第5926902号(P5926902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5926902ゴム組成物、ゴム組成物の変色防止方法、及びタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926902
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】ゴム組成物、ゴム組成物の変色防止方法、及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20160516BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20160516BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20160516BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20160516BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20160516BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08L7/00
   C08L71/00 Y
   C08L9/06
   C08K5/17
   B60C1/00 A
   B60C1/00 B
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-175788(P2011-175788)
(22)【出願日】2011年8月11日
(65)【公開番号】特開2012-57153(P2012-57153A)
(43)【公開日】2012年3月22日
【審査請求日】2014年8月5日
(31)【優先権主張番号】特願2010-180480(P2010-180480)
(32)【優先日】2010年8月11日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(72)【発明者】
【氏名】田原 聖一
(72)【発明者】
【氏名】藤木 久美
(72)【発明者】
【氏名】土橋 正明
(72)【発明者】
【氏名】鷹野 哲男
【審査官】 山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−343963(JP,A)
【文献】 特開平05−194790(JP,A)
【文献】 特開2009−161667(JP,A)
【文献】 特開2002−103355(JP,A)
【文献】 特開2010−001388(JP,A)
【文献】 特開昭53−008643(JP,A)
【文献】 特開2001−098111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
C08K 3/00−13/08
B60C 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系合成ゴム及び天然ゴムから選択される少なくとも一種のゴム成分、ワックス及び老化防止剤、ならびに、下記式(I)で表される化合物から選択される少なくとも一種の非イオン系界面活性剤を配合してなるゴム組成物。
【化1】

[式(I)において、Rは、炭素数6〜15のアルキル基又はアルケニル基を表し、該アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分枝鎖状及び環状のいずれでもよく;Rは、炭素数2又は3のアルキレン基であり;nは平均付加モル数を意味し、16〜30である。ただし、ラウリルアルコールのエチレンオキシド19.0モル付加物を除く。
【請求項2】
前記老化防止剤がアミン系老化防止剤である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分100質量部に対し、前記非イオン系界面活性剤を0.1〜10質量部配合した請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム成分として天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム及びポリブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム成分がスチレン-ブタジエン共重合体ゴム単独、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム及びポリブタジエンゴム、天然ゴム及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム、又は天然ゴム及びポリブタジエンゴムである請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記ゴム成分100質量部のうちスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを50〜100質量部含む請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物をタイヤ外皮に適用したタイヤ。
【請求項8】
タイヤ外皮がトレッド部又はサイドウォール部である請求項7に記載のタイヤ。
【請求項9】
ジエン系合成ゴム及び天然ゴムから選択される少なくとも一種のゴム成分、ワックス及び老化防止剤を含有するゴム組成物に、下記式(I)で表される化合物から選択される少なくとも一種の非イオン系界面活性剤を配合するゴム組成物の変色防止方法。
【化2】

[式(I)において、Rは、炭素数6〜15のアルキル基又はアルケニル基を表し、該アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分枝鎖状及び環状のいずれでもよく;R1は、炭素数2又は3のアルキレン基であり;nは平均付加モル数を意味し、12〜30である。]
【請求項10】
前記平均付加モル数が16〜30であることを特徴とする請求項9に記載の変色防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、ゴム組成物の変色防止方法、及び該ゴム組成物を用いたタイヤに関し、タイヤ外皮ゴムの茶変を改善することが可能で、特にトレッドゴム用に好適に用いることができるゴム組成物、ゴム組成物の変色防止方法、及びこれを用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、天然ゴムやジエン系合成ゴムを原料としたゴム物品は、オゾンの存在下で劣化が進行し、表面に亀裂が生じる。この亀裂は、ゴム物品にかかる静的及び動的応力により進行し、その結果、ゴム物品が破壊に至ってしまう。
【0003】
上記オゾンによる亀裂の発生及び進行を抑制するために、ゴム物品には、老化防止剤として、N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン等のアミン系老化防止剤を配合したゴム組成物が適用されている。また、該ゴム組成物には、オゾンからの静的保護を目的として、ゴム物品の表面に保護膜を形成するためにワックスが配合されている。
【0004】
しかしながら、上記アミン系老化防止剤及びワックスは、オゾン存在下での亀裂の発生及び進行の抑制に有効であるものの、ゴム成分等のポリマー基質を通って移動しやすく、短期間でゴム物品、特にタイヤの表面に移行し、倉庫保管中及び使用中に該ゴム物品を変色させる等して外観を悪化させる。ここで、ワックスが表面に移行すると該表面が白変し、上記アミン系老化防止剤が表面に移行すると該表面が茶変してしまう。
【0005】
これに対し、タイヤサイドウォール用ゴム組成物ではポリオキシエチレンエーテル型非イオン系界面活性剤やソルビタン型界面活性剤を配合して、アミン系老化防止剤及びワックスによる変色を防止する技術が開示されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。しかしながら、これら技術では、トレッド用ゴム組成物に対しては、それら変色を十分に防止することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−194790号公報
【特許文献2】特開2004−307812号公報
【特許文献3】特開2001−200105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、タイヤのサイドウォール部のみならず、トレッド部に用いても耐オゾン性を悪化させることなく、アミン系老化防止剤及びワックスによる変色を防止し、タイヤの外観を良好に保つことができるゴム組成物、ゴム組成物の変色防止方法、及び該ゴム組成物を用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ゴム成分に特定構造の非イオン系界面活性剤を配合することにより、タイヤのトレッド部に用いても耐オゾン性を悪化させることなく、アミン系老化防止剤及びワックスによる変色を防止することができるゴム組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
[1]ジエン系合成ゴム及び天然ゴムから選択される少なくとも一種のゴム成分に対し、下記式(I)で表される化合物から選択される少なくとも一種の非イオン系界面活性剤を配合してなることを特徴とするゴム組成物、
【化1】
[式(I)において、R2は、炭素数1〜15のアルキル基又はアルケニル基を表し、該アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分枝鎖状及び環状のいずれでもよく;R1は、炭素数2〜4のアルキレン基であり;nは平均付加モル数を意味し、16〜30である。]
[2]ワックスを配合した上記[1]に記載のゴム組成物、
[3]老化防止剤を配合した上記[1]又は[2]に記載のゴム組成物、
[4]前記老化防止剤がアミン系老化防止剤である上記[3]に記載のゴム組成物、
[5]前記ゴム成分100質量部に対し、前記非イオン系界面活性剤を0.1〜10質量部配合した上記[1]〜[4]のいずれかに記載のゴム組成物、
[6]前記ゴム成分として天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム及びポリブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1種を含む上記[1]〜[5]のいずれかに記載のゴム組成物、
[7]前記ゴム成分がスチレン-ブタジエン共重合体ゴム単独、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム及びポリブタジエンゴム、天然ゴム及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム、又は天然ゴム及びポリブタジエンゴムである上記[1]〜[6]のいずれかに記載のゴム組成物、
[8]前記ゴム成分100質量部のうちスチレン-ブタジエン共重合体ゴムが50〜100質量部含む上記[1]〜[7]のいずれかに記載のゴム組成物、
[9]前記式(I)の非イオン系界面活性剤において、R2が炭素数6〜15のアルキル基又はアルケニル基であり、R1が炭素数2又は3のアルキレン基であり、且つnが16〜30である、請求項1〜8のいずれかに記載のゴム組成物。
[10]上記[1]〜[9]のいずれかに記載のゴム組成物をタイヤ外皮に適用したタイヤ、及び
[11]タイヤ外皮がトレッド部である上記[10]に記載のタイヤ、
[12]ジエン系合成ゴム及び天然ゴムから選択される少なくとも一種のゴム成分に対し、下記式(I)で表される化合物から選択される少なくとも一種の非イオン系界面活性剤を配合してなることを特徴とするゴム組成物の変色防止方法、
【化2】
[式(I)において、R2は、炭素数1〜15のアルキル基又はアルケニル基を表し、該アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分枝鎖状及び環状のいずれでもよく;R1は、炭素数2〜4のアルキレン基であり;nは平均付加モル数を意味し、12〜30である。]
[13]前記平均付加モル数が16〜30であることを特徴とする上記[12]に記載の変色防止方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ゴム成分に特定構造の非イオン系界面活性剤を配合してなり、タイヤのサイドウォール部のみならず、トレッド部に用いても耐オゾン性を悪化させることなく、アミン系老化防止剤及びワックスによる変色を防止することができるゴム組成物、ゴム組成物の変色防止方法、及び該ゴム組成物を用いたタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のゴム組成物及び変色防止方法は、ジエン系合成ゴム及び天然ゴムから選択される少なくとも一種のゴム成分に、上記式(I)で表される非イオン系界面活性剤の少なくとも一種を配合してなることを特徴とする。
タイヤ外皮の茶変は、老化防止剤及びワックスがゴム成分等のポリマー基質を通ってタイヤ表面に移行し、タイヤの表面にワックスが析出して凹凸面を形成し光散乱が起こり、その凹凸面に付着した老化防止剤が酸化されて着色成分になることで、茶変色に見えるものである。
本発明のゴム組成物及び変色防止方法においては、上記式(I)で表される非イオン系界面活性剤が、表面に析出したワックスの凹凸面を平滑面化することにより、光散乱状態を改善して茶変を改良する。すなわち、上記式(I)で表される非イオン系界面活性剤は、疎水基R2の長さ、親水基(R1O)nの長さが調整され、ゴム組成物との相溶性がコントロールされて、該ゴム組成物と適度の非相溶性を有しているために、タイヤ表面に析出して上記機能を発揮するものである。
ここで、本発明のゴム組成物及び変色防止方法において、上記非イオン系界面活性剤の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対し0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜7質量部であることが更に好ましく、0.5〜5質量部であることが極めて好ましい。0.1質量部以上では、アミン系老化防止剤やワックスによる変色を防止することができ、10質量部以下では、界面活性剤のブルームによる過度の光沢を抑制することができ、表面粘着性による作業性の低下を抑えることができる。
また、この界面活性剤を加えることによって耐オゾン性は低下しない。
【0012】
本発明のゴム組成物及び変色防止方法に用いるゴム成分としては、ジエン系合成ゴム及び天然ゴムが挙げられ、該ジエン系合成ゴムとしては、イソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)等が挙げられ、これらゴム成分は、1種単独で用いても2種以上をブレンドして用いてもよい。すなわち、ゴム成分として、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム及びポリブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。そして、ゴム成分がスチレン-ブタジエン共重合体ゴム単独、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム及びポリブタジエンゴムの混合物、天然ゴム及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴムの混合物、又は天然ゴム及びポリブタジエンゴムの混合物であることがさらに好ましい。
なお、通常、トレッド部に好ましく用いられるゴム成分はSBRが50〜100質量%とSBR主体であり、サイドウォール部に好ましく用いられるゴム成分は、天然ゴムとBRの混合物である。
【0013】
本発明のゴム組成物及び変色防止方法に用いる非イオン系界面活性剤は、上記式(I)で表される。該非イオン系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、市販品を好適に使用することができる。
【0014】
式(I)のR2は、炭素数1〜15のアルキル基又はアルケニル基を表し、該アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分枝鎖状及び環状の何れでもよい。これらアルキル基及びアルケニル基の炭素数は、主にタック性、接着性及び変色度の観点から、好ましくは6〜15、更に好ましくは6〜14、より更に好ましくは8〜12である。具体的には、ヘキシル基、イソヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、及びペンタデシル基からなる群から選ばれる一種以上のアルキル基が好ましく挙げられ、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基からなる群から選ばれる一種以上がより更に好ましく、ノニル基、イソノニル基、デシル基、及びウンデシル基からなる群から選ばれる一種以上がより更に好ましい。
【0015】
式(I)のR1は、炭素数2〜4のアルキレン基であり、好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基であり、更に好ましくは炭素数2のアルキレン基である。
式(I)のnは、主にタック性、接着性,変色度及び加硫速度(生産性)の観点から、16〜30であり、好ましくは16〜25である。ただし、必ずしも加硫速度(生産性)を考慮しなくてもよいゴム組成物の変色防止方法の場合には、式(I)のnは12〜30であり、好ましくは16〜30、より好ましくは16〜25である。
これらから、本発明のゴム組成物に用いられる前記式(I)の非イオン系界面活性剤において、R2が炭素数6〜15のアルキル基又はアルケニル基、R1が炭素数2又は3のアルキレン基、且つnが16〜30の組み合わせが好ましく、R2が炭素数8〜12のアルキル基又はアルケニル基、R1が炭素数2又は3のアルキレン基、且つnが16〜30の組み合わせがより好ましく、R2が炭素数8〜12のアルキル基又はアルケニル基、R1が炭素数2又は3のアルキレン基、且つnが16〜25の組み合わせが更に好ましい。
また、本発明の変色防止方法に用いられる前記式(I)の非イオン系界面活性剤において、R2が炭素数6〜15のアルキル基又はアルケニル基、R1が炭素数2又は3のアルキレン基、且つnが12〜30の組み合わせが好ましく、R2が炭素数8〜12のアルキル基又はアルケニル基、R1が炭素数2又は3のアルキレン基、且つnが12〜30の組み合わせがより好ましく、R2が炭素数8〜12のアルキル基又はアルケニル基、R1が炭素数2又は3のアルキレン基、且つnが16〜30の組み合わせが更に好ましく、R2が炭素数8〜12のアルキル基又はアルケニル基、R1が炭素数2又は3のアルキレン基、且つnが16〜25の組み合わせがより更に好ましい。
【0016】
上記式(I)で表される非イオン系界面活性剤は、HLB値(親水性と親油性のバランス値)が10〜19であるのが好ましい。ここで、HLB値は、下記に示すグリフィンの式で定義される。
HLB=20×Mw/M
(式中、Mは非イオン系界面活性剤の分子量で;Mwは該非イオン系界面活性剤の親水性部分の分子量である。)
【0017】
上記式(I)で表される非イオン系界面活性剤のHLB値が10以上では親油性が抑制され、ゴムとの相溶性を抑えて、表面に移行させることができ、19以下では、ゴムとの相溶性を高めて、混練を容易にし、かつ充填剤への吸着を抑制し、表面に移行させることができる。
上記式(I)で表される非イオン系界面活性剤のHLB値は、15〜19であるのが更に好ましく、15〜18がより更に好ましい。HLB値が15以上では、表面への移行速度を高めて、茶変防止効果を促進することができる。
【0018】
上記ゴム組成物には、オゾンによる亀裂の発生及び進行を抑制するために、アミン系老化防止剤及びワックスを配合するのが好ましい。ここで、アミン系老化防止剤としては、N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0019】
また、上記ゴム組成物には、補強用充填剤として、カーボンブラックやシリカを含有させることができる。カーボンブラックとしては特に制限はなく、シリカも市販のあらゆるものを使用でき、なかでも湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカを用いることが好ましく、湿式シリカを用いるのが特に好ましい。カーボンブラックやシリカは併用して用いてもよく、これら補強用充填剤の配合量は上記ゴム成分100質量部に対し30〜120質量部であることが好ましい。なお、補強用充填剤としてシリカを用いる場合は、補強性の観点から、シランカップリング剤をシリカ100質量部に対して1〜20質量部程度含有させることができ、発熱性の観点から6〜12質量部の範囲で用いるのが好ましい。
【0020】
該ゴム組成物には、更に、加硫剤、加硫促進剤、スコーチ防止剤、軟化剤、酸化亜鉛、ステアリン酸等のゴム業界で通常使用される配合剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択し配合することができる。これら配合剤は、市販品を好適に使用することができる。
【0021】
なお、上記ゴム組成物は、ゴム成分と、非イオン系界面活性剤と、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0022】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物をタイヤのゴム部材の何れかに適用したことを特徴とし、タイヤ外皮、特にトレッド部やサイドウォール部に適用したものが好ましい。かかるタイヤは、上記非イオン系界面活性剤を配合しているために、アミン系老化防止剤やワックスがタイヤ表面に移行して変色するのが防止されており、外観が長期に亘って良好である。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0024】
実施例1〜11及び比較例1〜10
第1表に示す配合処方(ゴム成分としてSBR主体)でかつ第2表に示す配合量の非イオン系界面活性剤を配合したゴム組成物を調製し、160℃で14分間加硫した。得られた加硫ゴムに対し、下記の方法で引張応力、耐オゾン性、タック性、接着性、加硫速度、変色度を測定、評価した。その結果を第2表に示す。
【0025】
(1)引張応力
ゴム物性の代表的指標として300%伸長時の引張応力を測定した。具体的には、JIS 3号ダンベル型試験片を用い、JIS K 6251:2004に従って300%伸長時の引張応力を測定し、比較例1を100として指数表示した。指数値が大きい程、300%伸長時の引張応力が大きいことを示す。
【0026】
(2)耐オゾン性
JIS K 6259:2004に従い、温度40℃、オゾン濃度50pphm、伸び20%の条件にして、実施例1〜10及び比較例1〜9の作成した試験片についてオゾン劣化試験を行ない、50時間後に試験片の劣化状態を観察し、クラック発生の有無で評価した。
【0027】
(3)タック試験
JIS−T9233−3.8.6(2)三橋法(ピクマタック試験)に準じて試験を実施した。各実施例、比較例の試験片として幅15mm、長さ100mmのものを1枚採取した。接着部円盤(直径50mm、厚さ14mm、アルミニウム製)の表面をヘキサンで洗浄し、室温で30分乾燥させた。試料(試験片)を両面テープで貼り付けた。測定装置のスタートボタンを押し、接着部円盤を下げ、試料と接触させた。荷重500gfで30秒間接触の後、30mm/秒で引き上げた。(試験片温度、接着部円盤温度、測定室温度:23℃)。接着部円盤と試料が離れるときの力の測定を5回行い、その平均値を求めた。比較例1のゴム組成物の値を100として指数表示した。指数値が大きい程、粘着性が高く、加工性に優れることを示す。
【0028】
(4)接着試験
黄銅めっき(Cu:63質量%、Zu:37質量%)したスチールコード(外径0.5mm×長さ300mm)3本を10mm間隔で平行に並べ、このスチールコードを上下両側から各ゴム組成物でコーティングして、これを160℃、20分間の条件で加硫し、サンプルを作製した。
得られた各サンプルの接着性について、ASTM−D−2229に従い、各サンプルに対してスチールコードを引抜き、ゴムの被覆状態を目視で観察し、0〜100%で表示し、接着性の指標とした。
【0029】
(5)加硫速度
JIS−K−6300−1994に従い、比較例1〜3を各配合のコントロール(100として指数表示)として評価した。指数が大きいほど、時間が長いことを意味する。
【0030】
(6)変色度
色度計(「日本電色工業(株)、機種名NF333」)を用いて、加硫ゴム試験片の変色度を評価した。測色したデータはL*、a*、b*で表わした。L*値は明度、a*、b*は色味を示している。a*値とb*値は0で無色、a*値が正であるほど赤、負であるほど緑、b*値が正であるほど黄、負であるほど青であることを示す。変色度については、加硫直後のb*値、目視による加硫直後の変色の度合いにより、加硫直後の変色度を評価し、夏季の屋外放置(雨は当たらない屋根の下1日のうち特定の時間のみ直射日光が当たる)の環境条件下に、加硫ゴム片を1ヶ月放置した後のb*値及び目視による変色の度合いにより放置後の変色度を評価した。
変色度は5段階評価を行い、変色がひどく認められる場合を5とし、全体の半分以上に変色が認められる場合を4とし、全体の半分以下に変色が認められる場合を3とし、わずかに変色が認められる場合を2とし、変色が認められない場合を1とした。
【0031】
また、化合物Aをタイヤトレッド用ゴム組成物に配合したものと界面活性剤無配合のものとから、それぞれタイヤサイズ205/65R15の乗用車用ラジアルタイヤを定法によって作製し、上記と同様の変色試験を行った。その結果を第3表に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
*1 JSR(株)製「SBR#1500」
*2 東海カーボン(株)製「シースト7HM」
*3 東ソーシリカ(株)製「ニプシールAQ」
*4 ビス(3−エトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
*5 マイクロクリスタリンワックス,日本精蝋社製「オゾエース−0701」
*6 大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
*7 精工化学社製「ノンフレックスRD−S」
*8 大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」
*9 大内新興化学工業(株)製「ノクセラーDM」
*10 三新化学工業社製「サンセラーCM−G」
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
なお、第2表において、化合物Aは、花王(株)製非イオン系界面活性剤、商標「エマルゲン1118」(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)で、上記式(I)において、R2が主としてC1123で、R1がC24、nが18で、HLB値が16.4の化合物であり;
化合物Bは、花王(株)製非イオン系界面活性剤、商標「エマルゲン123P」(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)で、上記式(I)において、R2がC1225で、R1がC24、nが23で、HLB値が16.9の化合物であり;
化合物Cは、花王株式会社製非イオン系界面活性剤試作サンプル、ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテルで、上記式(I)において、R2がC817で、R1がC24、nが20で、HLB値が17.7の化合物であり;
化合物Dは、花王株式会社製非イオン系界面活性剤試作サンプル、ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテルで、上記式(I)において、R2がC817で、R1がC24、nが30で、HLB値が18.4の化合物であり;
化合物Eは、花王株式会社製非イオン系界面活性剤、商標「エマルゲン130K」(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)で、上記式(I)において、R2がC1225で、R1がC24、nが30で、HLB値が18.1の化合物であり;
化合物Fは、花王(株)製ソルビタン系非イオン系界面活性剤、商標「レオドールTW−S106V」で、長鎖アルキル基がC1735で、酸化エチレン付加モル数が6で、HLB値が9.6である化合物であり;
化合物Gは、花王株式会社製非イオン系界面活性剤、商標「エマルゲン120」(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)で、上記式(I)において、R2がC1225で、R1がC24、nが12で、HLB値が15.3の化合物であり;
化合物Hは、上記式(I)において、R2がC1429で、R1がC24、nが4で、HLB値が9.4の化合物であり;
化合物Iは、上記式(I)において、R2がCH3で、R1がC24、nが9で、HLB値が19.2の化合物であり;
化合物Jは、花王(株)製非イオン系界面活性剤、商標「エマルゲン430」(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)で、上記式(I)において、R2がC1835で、R1がC24、nが30で、HLB値が16.7の化合物である。
【0038】
第2表から、化合物A〜Eを用いた実施例1〜10のゴム組成物は、いずれも、1ヶ月の屋外放置試験後の変色が認められず、外観が良好であり、かつ、他の物性も良好であった。さらに加硫速度も速くなり生産性にすぐれる。一方、非イオン系界面活性剤を配合しない比較例1〜3のゴム組成物、特許文献2、特許文献1でサイドウォール部の外観向上効果があるとされる化合物E、化合物Hや加工性改良用途の化合物Jは屋外放置試験後の変色度が著しく悪い。さらに、化合物Gは変色の外観が良好ではあるが、加硫速度が速くならず、生産性が優れない(変色防止方法の発明については、比較例6は実施例である)。加工性改良用途に用いられている特開2001−123016号公報に記載される化合物に類似の化合物Iでは、外観向上能力はあるものの、粘着力、接着力の低下により、使用が難しい。
また、加硫直後のb*値と放置試験後のb*値の差が少ないほうが、色の変化が少なく好ましい。
【0039】
また、変色抑制効果の高い化合物Aをタイヤトレッド用ゴム組成物に配合して乗用車用ラジアルタイヤを作製し、変色試験を行ったところ、第3表に示すように、タイヤでも高い変色抑制効果があることがわかった。