(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
絶縁不良の検査対象である被測定物に交流電圧を印加する交流電源と、前記交流電圧の印加により前記被測定物に生じる部分放電による放電電荷量を検出する検出手段と、前記検出された放電電荷量を基に前記被測定物の絶縁良否を判定する判定手段とを有し、前記被測定物の絶縁不良を検査する絶縁検査装置において、
前記被測定物に電流を供給する電源を有し、前記電源から前記被測定物に電流を供給して前記被測定物を発熱させ、前記被測定物の絶縁被膜温度を上昇させる温度上昇手段と、
前記温度上昇手段の作用により前記被測定物の絶縁被膜温度が雰囲気温度よりも相対的に高くなった後、前記交流電源による交流電圧の印加及び前記検出手段による放電電荷量の検出を行うように制御する制御手段とを備え、
前記被測定物が、前記交流電源側に接続された第1被測定部と、当該第1被測定部と絶縁され、アース側に接続された第2被測定部とを備え、
前記制御手段は、前記電源からの電流を前記第2被測定部に供給することを特徴とする絶縁検査装置。
前記制御手段は、前記被測定物の絶縁被膜温度及び当該絶縁被膜周囲の雰囲気温度を検出する温度センサを備え、前記絶縁被膜温度が前記雰囲気温度よりも相対的に高くなったことが前記温度センサで検出されるまで、前記温度上昇手段により前記被測定物の絶縁被膜温度を上昇させることを特徴とする請求項1に記載の絶縁検査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の特許文献1の絶縁検査装置は、被検モータの被測定部分である絶縁被膜周囲の相対湿度が高いと、絶縁
被膜の吸湿の影響により、部分放電開始電圧のバラツキが多くなり、安定的な放電電荷量の計測が行えず絶縁不良のない良品を不良品と誤判定する問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、被測定物の部分放電開始電圧のバラツキを低減して適正に絶縁検査を行うことができる絶縁検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、絶縁不良の検査対象である被測定物に交流電圧を印加する交流電源と、前記交流電圧の印加により前記被測定物に生じる部分放電による放電電荷量を検出する検出手段と、前記検出された放電電荷量を基に前記被測定物の絶縁良否を判定する判定手段とを有し、前記被測定物の絶縁不良を検査する絶縁検査装置において、前記被測定物に電流を供給する電源を有し、前記電源から前記被測定物に電流を供給して前記被測定物を発熱させ、前記被測定物の絶縁被膜温度を上昇させる温度上昇手段と、前記温度上昇手段の作用により前記被測定物の絶縁被膜温度が雰囲気温度よりも相対的に高くなった後、前記交流電源による交流電圧の印加及び前記検出手段による放電電荷量の検出を行うように制御する制御手段とを備え、前記被測定物が、前記交流電源側に接続された第1被測定部と、当該第1被測定部と絶縁され
、アース側に接続された第2被測定部とを備え、前記制御手段は、前記電源からの電流を前記第2被測定部に供給することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、次のような効果が得られる。従来技術では、前述したように絶縁被膜温度が雰囲気温度よりも低い場合、絶縁被膜表面の相対湿度が高くなるので、絶縁
被膜が吸湿する。このため、部分放電開始電圧のバラツキが多くなり、安定的な放電電荷量の計測が行えず適正な絶縁良否の判定が行えなかった。これに対し、本発明では温度
上昇手段が被測定物の絶縁被膜温度
を上昇させることにより被測定物の絶縁
被膜温度を雰囲気温度よりも高くするようにしたので、絶縁被膜表面の相対湿度が低下する。このため、絶縁被膜表面の相対湿度が低くなるため、絶縁
被膜の吸湿の影響が小さくなり、部分放電開始電圧の測定ばらつきを防止することができる。そして、温度
上昇手段の作用により被測定物の絶縁
被膜温度が雰囲気温度よりも相対的に高くなった後、制御手段が交流電源による交流電圧の印加及び検出手段による放電電荷量の検出を行うように制御するので、部分放電開始電圧のバラツキを無くすことができ、安定的な放電電荷量の計測が可能となり、適正に絶縁良否の判定を行うことができるようになる。
【0012】
また、この構成によれば、被測定物に電流を供給するだけの簡単な構成で被測定物の絶縁
被膜温度を上昇させて雰囲気温度よりも高くすることができるので、その分、低コストで絶縁検査装置を製作することが出来る。
【0014】
この構成によれば、第2被測定部はアース側に接続されているので、第2被測定部のアース側と逆の端部に電源からの電流を供給するように配線すれば、電源の電圧値はアースとの電位差で済む。これにより電源を安価な低圧のもので済ませることが出来る。
【0017】
請求項
2に記載の発明は、前記制御手段は、前記被測定物の絶縁被膜温度及び当該絶縁被膜周囲の雰囲気温度を検出する温度センサを備え、前記絶縁被膜温度が前記雰囲気温度よりも相対的に高くなったことが前記温度センサで検出されるまで、前記温度上昇手段により前記被測定物の絶縁被膜温度を上昇させることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、温度センサで絶縁被膜温度が雰囲気温度よりも高くなることを検出しながら温度上昇手段で被測定物の絶縁被膜温度を上昇させるので、正確に被測定物の絶縁
被膜温度を雰囲気温度よりも高くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。但し、本明細書中の全図において相互に対応する部分には同一符号を付す。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る絶縁検査装置の構成を示すブロック図である。
図1に示す絶縁検査装置1は、電気機器としての被測定物2の放電電荷量を測定することにより被測定物2の絶縁性の良否を判定するものであり、交流電源3と、放電電流遮断用のコイル4と、結合コンデンサ5と、放電電荷量検出部6と、絶縁判定部7と、制御部8と、直流電源9とを備えて構成されている。但し、被測定物2は、例えばモータのステータコイルであり、交流電源3に接続される第1コイル2aと、アース側に接続される第2コイル2bとを備える。第1コイル2aと第2コイル2bとは互いに絶縁されている。
【0025】
直流電源9は、第2コイル2bの両端に接続されており、制御部8の制御に応じてオンとされ、第2コイル2bに所定値の電流を流す。交流電源3は、制御部8の制御に応じてオンとされ、被測定物2に交流電圧を印加する。コイル4は、交流電源3による交流電圧の印加時に、被測定物2から交流電源3側への逆流を防止する。結合コンデンサ5は、コイル4及び被測定物2の接続間を放電電荷量検出部6に結合するコンデンサである。
【0026】
制御部8は、交流電源3による交流電圧の印加前に、直流電源9をオンとして被測定物2の第2コイル2bに直流電流を供給し、この供給により第1及び第2コイル2a,2bの絶縁被膜の温度が当該第1及び第2コイル2a,2bの周囲の雰囲気温度よりも所定以上高くなる設定時間を経過した後に、交流電源3をオンとして交流電圧を部分放電開始電圧の直前の所定検査電圧となるまで所定速度で昇圧しながら第1コイル2aへ印加する制御を行う。
【0027】
但し、上記の設定時間は、被測定物2の絶縁検査が行われる所定の雰囲気温度において、直流電源9から所定値の電流を供給した際に被測定物2の絶縁被膜の温度が雰囲気温度よりも高くなる時間を計測して定めた時間である。更に説明すると、単に絶縁被膜の温度が雰囲気温度よりも高くなるのではなく、絶縁被膜表面に雰囲気湿度の水分が付着しない程度高くなる時間とする。
【0028】
また、被測定物2に所定検査電圧を印加する際の所定速度とは、交流電源3から急激に交流電圧を印加した際に被測定物2に突出した電荷量の放電が生じるので、この突出放電が生じないように昇圧するための印加速度である。この印加速度(所定速度)は、例えば10V/secに設定される。
【0029】
放電電荷量検出部6は、交流電圧の印加時に被測定物2に放電が生じた際の放電電荷量を検出する。
【0030】
絶縁判定部7は、放電電荷量検出部6により検出された放電電荷量を、被測定物2の絶縁良否の判定基準である放電電荷量の閾値と比較し、放電電荷量が閾値未満であれば絶縁が良と判定し、放電電荷量が閾値以上であれば被測定物2の絶縁が否と判定する。この判定は、制御部8が交流電源3をオンとした以降実施されるように制御される。
【0031】
このような構成の絶縁検査装置1によって被測定物2の絶縁の良否を検査する際の動作を、
図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0032】
ステップS1において、交流電源3及び直流電源9が共にオフ時に、制御部8の制御により直流電源9がオンとされ、被測定物2の第2コイル2bに例えば30Aの直流電流が通電される。
【0033】
ステップS2において、その通電後から所定の設定時間待機状態となる。ここで、設定時間は、例えば雰囲気温度25°C、雰囲気湿度90%の環境下で、被測定物2に30Aの電流を流し、被測定物2の絶縁被膜温度が40°Cとなる3分に設定されているとする。このステップS2の待機において、設定時間の3分が経時したとすると、この時点では、被測定物2の絶縁被膜温度が雰囲気温度25°Cよりも高い40°Cとなっている。
【0034】
次に、ステップS3において、制御部8の制御により、交流電源3がオンとされて交流電圧が、所定検査電圧となるまで所定速度で昇圧されながら第1コイル2aに印加される。例えば、
図3の横軸に示すように、所定検査電圧がV4aと定められている際に、交流電源3の交流電圧を10V/secの速度でV1,V2,V3,V4と徐々に上昇させながら、所定検査電圧V4aまで到達させる。
【0035】
但し、
図3は同一種類の複数の被測定物2の各々に、交流電圧[V]を昇圧して印加しながら放電電荷量を測定した際の印加電圧と放電電荷量との関係を示す図である。
図3の横軸のV1〜V4,V4aは交流電源3から被測定物2に印加される交流電圧[V]、縦軸のP1〜P5は放電電荷量[pC]であり、Sa〜Snは各被測定物2の印加電圧と放電電荷量との特性曲線である。
【0036】
このように、被測定物2の絶縁被膜温度を40°Cと、雰囲気温度25°Cよりも高くした状況下においては、所定検査電圧V4aでは、
図3に示すように、被測定物2の放電電荷量は閾値th1未満の範囲Pwとなる。なお、所定検査電圧V4aを超えた部分放電開始電圧(例えば、1000V)では、被測定物2の放電電荷量は閾値th1以上の突出した放電電荷量となる。
【0037】
次に、ステップS4において、絶縁判定部7により所定検査電圧V4aでの放電電荷量が読み取られ、ステップS5において、絶縁判定部7で絶縁良否の判定が行われる。この
図3の例の場合、所定検査電圧V4a以下では、放電電荷量は閾値th1未満なので、絶縁判定部7では、被測定物2の絶縁性が良と判定される。なお、所定検査電圧V4a以下で、閾値th1以上の放電電荷量の放電が生じていれば、被測定物2の絶縁性が否と判定される。
【0038】
このように第1実施形態の絶縁検査装置1は、絶縁不良の検査対象である被測定物2に交流電圧を印加する交流電源3と、交流電圧の印加により被測定物2に生じる部分放電による放電電荷量を検出する検出手段としての放電電荷量検出部6と、その検出された放電電荷量を基に被測定物2の絶縁良否を判定する判定手段としての絶縁判定部7とを有し、被測定物2の絶縁不良を検査する。
【0039】
第1実施形態の特徴は、被測定物2の絶縁被膜温度を変化させる温度変化付与手段と、直流電源9の作用により被測定物2の絶縁
被膜温度が雰囲気温度よりも相対的に高くなった後、交流電源3による交流電圧の印加及び放電電荷量検出部6が放電電荷量の検出を行うように制御する制御手段としての制御部8とを備えて構成したことにある。
【0040】
但し、温度変化付与手段は、被測定物の絶縁被膜温度を上昇させる温度上昇手段としての直流電源9を備えてなる。
【0041】
この構成によれば、次のような効果が得られる。従来技術では、前述したように絶縁被膜温度が雰囲気温度よりも低い場合、絶縁被膜表面の相対湿度が高くなるので、絶縁
被膜が吸湿する現象が生じていた。このため、部分放電開始電圧のバラツキが多くなり、安定的な放電電荷量の計測が行えず適正な絶縁良否の判定が行えなかった。
【0042】
例えば、上述したと同様に雰囲気温度25°C、雰囲気湿度90%の環境下、即ち絶縁被膜表面の相対湿度が高い環境下で、交流電源3から被測定物2に交流電圧を昇圧しながら印加したとする。この場合、絶縁被膜表面の相対湿度が高いので、絶縁
被膜が吸湿し、部分放電開始電圧がばらつく。このため、
図4の従来の印加電圧と放電電荷量との関係図に符号Sbで示す被測定物2の特性曲線のように、本来の所定検査電圧V4aを超える部分放電開始電圧よりも低い電圧(V3付近)で、閾値th1以上の放電電荷量の部分放電が発生する。他にも、本来の部分放電開始電圧よりも低い電圧(V4a以下)で、特性曲線Sa,Smで示すように、閾値th1以上の放電電荷量の部分放電が発生する。つまり、部分放電開始電圧がバラツキ安定的な放電電荷量の計測が不可能となる。
【0043】
この場合、被測定物2の絶縁性が良であっても、本来の部分放電開始電圧よりも低い電圧で閾値th1以上の放電電荷量の部分放電が発生するので、絶縁判定部7は、被測定物2の絶縁性が否と判定してしまう。なお、
図4の特性曲線は、
図3と同様に同じ被測定物2に対して、同じ雰囲気温度25°C、雰囲気湿度90%の環境下で測定した結果であり、
図3と異なる点は、被測定物2の絶縁
被膜温度が雰囲気温度よりも低い状態で測定されたことにある。
【0044】
本実施形態では、制御手段によって被測定物2の絶縁
被膜温度を雰囲気温度よりも高くするようにしたので、絶縁被膜表面の相対湿度が低下し、これによって、絶縁
被膜の吸湿の影響を小さくできる。
【0045】
これにより、
図5に示すように、部分放電開始電圧のバラツキを低減させることが出来る。
図5のバラツキは、
図3及び
図4に示した本来の部分放電開始電圧未満(所定検査電圧V4a以下)における放電電荷量の特性曲線から求めたものである。従来は符号kで示すようにバラツキ幅がσ4近くであるのに対して、本実施形態では符号jで示すようにσ1をやや超えたバラツキ幅となっており、本実施形態では部分放電開始電圧のバラツキが大幅に低減されていることが分かる。このように本実施形態では、部分放電開始電圧のバラツキを低減させることができるので、安定的な放電電荷量の計測が可能となり、適正に絶縁良否の判定を行うことができる。
【0046】
また、温度上昇手段が、被測定物2に直流電流を供給する直流電源9である場合、直流電源9から被測定物2に直流電流を供給して被測定物2を発熱させ、これによって、被測定物2の絶縁
被膜温度を雰囲気温度よりも高くする。
【0047】
この構成によれば、被測定物2に直流電流を供給するだけの簡単な構成で被測定物2の絶縁
被膜温度を雰囲気温度よりも高くすることができるので、その分、低コストで絶縁検査装置1を製作することが出来る。
【0048】
更に、被測定物2が、アース側に接続された第1被測定部としての第1コイル2aと、当該第1コイル2aと絶縁され、交流電源3側に接続された第2被測定部としての第2コイル2bとを備える場合、制御手段が、直流電源9からの直流電流を第2コイル2bに供給するようにした。
【0049】
この構成によれば、第2コイル2bはアース側に接続されているので、そのアース側と対向する第2コイル2bの端部に直流電源9からの直流電流を供給するように配線すれば、直流電源9の電圧値はアースとの電位差で済む。これにより直流電源9を安価な低圧のもので済ませることが出来る。
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係る絶縁検査装置の構成を示すブロック図である。
図6に示す第2実施形態の絶縁検査装置11は、交流電源3と、コイル4と、結合コンデンサ5と、放電電荷量検出部6と、絶縁判定部7と、制御部18と、加熱装置12と、温度センサ13とを備えて構成されている。つまり、第1実施形態の絶縁検査装置1と異なる点は、直流電源9に代え、加熱装置12及び温度センサ13を備え、加熱装置12によって被測定物2の絶縁被膜を加熱し、これにより絶縁被膜温度を被測定物2の周囲の雰囲気温度よりも高くするようにしたことにある。
【0050】
加熱装置12は、ヒータや誘導加熱装置等であり、オン時に被測定物2を加熱する。温度センサ13は、赤外線温度センサ等であり、被測定物2の絶縁被膜表面の温度を検出すると共に、被測定物2周囲の空気などの雰囲気14の温度を検出する。
【0051】
制御部18は、交流電源3による交流電圧の印加前に、加熱装置12をオンとして被測定物2の絶縁被膜を加熱し、これにより絶縁被膜表面の温度が周囲の雰囲気14の温度よりも高くなったことが温度センサ13で検出された際に、交流電源3をオンとして交流電圧を、部分放電開始電圧の直前の所定検査電圧となるまで所定速度で昇圧しながら被測定物2へ印加する制御を行う。
【0052】
このような構成の絶縁検査装置11によって被測定物2の絶縁の良否を検査する際の動作を、
図7に示すフローチャートを参照して説明する。
【0053】
ステップS11において、交流電源3及び直流電源9が共にオフ時に、制御部18の制御により加熱装置12がオンとされ、被測定物2が加熱される。この加熱中の被測定物2の絶縁被膜表面の温度と、雰囲気14の温度とが温度センサ13によって検出される。
【0054】
ステップS12において、制御部18により、その加熱中の絶縁被膜表面の温度が雰囲気14の温度よりも高くなったか否かが判断される。ここでは、単に絶縁被膜表面の温度が雰囲気14の温度よりも高くなるのではなく、絶縁被膜表面に雰囲気湿度の水分が付着しない程度高くなったか否かが判断される。ここでは、例えば雰囲気14の温度25°C、雰囲気湿度90%の環境下で、被測定物2の絶縁被膜温度が40°Cとなったことを判断基準とする。
【0055】
このステップS12において、絶縁被膜表面の温度が40°Cと、雰囲気14の温度よりも高くなったことが温度センサ13で検出されると、ステップS13において、制御部18により、交流電源3がオンとされて交流電圧が、所定検査電圧V4aとなるまで所定速度で昇圧されながら被測定物2に印加される制御が行われる。
【0056】
次に、ステップS14において、絶縁判定部7により所定検査電圧V4aでの放電電荷量が読み取られ、ステップS15において、絶縁判定部7で絶縁良否の判定が行われる。この場合も上述で
図3を参照して説明した通り、所定検査電圧V4a以下では、放電電荷量は閾値th1未満なので、絶縁判定部7では、被測定物2の絶縁性が良と判定される。一方、所定検査電圧V4a以下で、閾値th1以上の放電電荷量の放電が生じていれば、被測定物2の絶縁性が否と判定される。
【0057】
このように第2実施形態の絶縁検査装置11においては、温度上昇手段が被測定物2を加熱する加熱装置12からなり、制御手段が、制御部18の他に、被測定物2の絶縁被膜温度及び当該絶縁被膜周囲の雰囲気14の温度を検出する温度センサ13を備え、絶縁被膜温度が雰囲気14の温度よりも高くなることが温度センサ13で検出されるまで、加熱装置12により被測定物2を加熱する制御を行うようにした。
【0058】
この構成によって、温度センサ13で被測定物2の絶縁被膜温度が雰囲気14の温度よりも高くなることを検出しながら加熱装置12で被測定物2を加熱するので、正確に被測定物2の絶縁
被膜温度を雰囲気14の温度よりも高くすることができる。
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態に係る絶縁検査装置の構成を示すブロック図である。
図8に示す第3実施形態の絶縁検査装置21は、交流電源3と、コイル4と、結合コンデンサ5と、放電電荷量検出部6と、絶縁判定部7と、制御部28と、温度センサ13と、エアコン等の冷却装置22とを備えて構成されている。つまり、第2実施形態の絶縁検査装置11と異なる点は、加熱装置12に代え、冷却装置22を備え、冷却装置22で雰囲気14を冷却し、これにより雰囲気14の温度を絶縁被膜温度よりも低くするようにしたことにある。逆に言えば、絶縁被膜温度が雰囲気14の温度よりも高くなるように、雰囲気14を冷却するようにした。
【0059】
制御部28は、交流電源3による交流電圧の印加前に、冷却装置22をオンとして雰囲気14を冷却し、これにより雰囲気14の温度が絶縁被膜表面の温度よりも低くなったことが温度センサ13で検出された際に、交流電源3をオンとして交流電圧を、部分放電開始電圧の直前の所定検査電圧となるまで所定速度で昇圧しながら被測定物2へ印加する制御を行う。
【0060】
このような構成の絶縁検査装置21によって被測定物2の絶縁の良否を検査する際の動作を、
図8に示すフローチャートを参照して説明する。
【0061】
ステップS21において、交流電源3及び直流電源9が共にオフ時に、制御部18の制御により冷却装置22がオンとされ、雰囲気14が冷却される。この冷却中の雰囲気14の温度と、被測定物2の絶縁被膜表面の温度とが温度センサ13によって検出される。
【0062】
ステップS22において、制御部18により、雰囲気14の温度が絶縁被膜表面の温度よりも低くなったか否かが判断される。ここでは、単に雰囲気14の温度を絶縁被膜表面の温度よりも低くするのではなく、絶縁被膜表面が結露しないように低くする。
【0063】
このステップS22において、雰囲気14の温度が絶縁被膜表面の温度よりも低くなったことが温度センサ13で検出されると、ステップS23において、制御部18により、交流電源3がオンとされて交流電圧が、所定検査電圧V4aとなるまで所定速度で昇圧されながら被測定物2に印加される制御が行われる。次に、ステップS24において、絶縁判定部7により所定検査電圧V4aでの放電電荷量が読み取られ、ステップS25において、絶縁判定部7で絶縁良否の判定が前述した通り行われる。
【0064】
このように第3実施形態の絶縁検査装置21においては、温度変化付与手段が、被測定物2の絶縁被膜周囲の雰囲気14を冷却する温度低下手段としての冷却装置22からなり、制御手段が、制御部28の他に、被測定物2の絶縁被膜温度及び雰囲気14の温度を検出する温度センサ13を備え、雰囲気温度が絶縁被膜温度よりも低くなったことが温度センサ13で検出されるまで、冷却装置22により雰囲気を冷却するようにした。
【0065】
この構成によって、冷却装置22で雰囲気14が冷却され、これにより雰囲気温度が絶縁被膜温度よりも低くされる。逆に言えば、絶縁被膜温度が雰囲気14の温度よりも高くなるように雰囲気を冷却する。従って、正確に被測定物2の絶縁
被膜温度を雰囲気14の温度よりも高くすることができる。