【0012】
さらに、本発明に係る難燃性合成樹脂フィルムにおいて、燃焼時の樹脂垂れ(ドリップ)を防止するために、周知一般のドリップ防止剤を配合することが好ましい。
ドリップ防止剤の具体例としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系樹脂やパーフルオロメタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロ−n−ブタンスルホン酸カリウム塩、パーフルオロ−t−ブタンスルホン酸カリウム塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロ−2−エチルヘキサンスルホン酸カルシウム塩等のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩化合物又はパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ土類金属塩、シリコンゴム類が挙げられ、これらは1種類又は2種類以上混合で用いることができる。これらの中でも特にPTFEはドリップ防止効果に優れているため好適に用いられる。
PTFEの添加量は、少なくなると難燃性合成樹脂フィルムのドリップ防止効果が小さく、多くなると難燃性合成樹脂フィルムのコストが高くなることから、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部であり、好ましくは1〜5質量部である。
【0014】
また、本発明に係る難燃性合成樹脂フィルムは、例えばカレンダー成形などでフィルム状に成形する際の滑剤として、脂肪酸金属塩(金属石鹸)を配合することが好ましい。
脂肪酸金属塩の添加量は、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、0.05〜1質量部であり、好ましくは0.1〜0.5質量部である。
さらに必要に応じて、水酸化マグネシウム、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等により安定化したり、p−第三ブチル安息香酸アルミニウム、芳香族リン酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール類等の造核剤、帯電防止剤、ハイドロタルサイト、トリアジン環含有化合物、充填剤、顔料、滑剤、発泡剤等を添加したり、することも可能である。
【0015】
そして、本発明の実施形態に係る難燃性合成樹脂フィルムを生産するための製造方法は、厚さ0.1〜0.3mmのフィルム状に成形する方法として、例えばカレンダー成形や押出成形などが用いられる。
カレンダー成形の具体例としては、リボンブレンダーなどからなる混合(配合)工程と、バンバリーミキサーやミキシングロールなどからなる混練工程と、ストレーナーなどからなる濾別工程と、カレンダーロールなどからなる圧延工程と、冷却ロールなどからなる冷却工程と、巻取機などからなる巻取工程を有している。
特に、混練工程としてバンバリーミキサーにより配合物の混練を行った後に、圧延工程としてカレンダーロールにより0.1〜0.3mmのフィルム状に圧延することが好ましい。
また、その他の例として、カレンダー成形に代えて押出機による押出成形や他の既存の成形機で成形することも可能である。
【実施例】
【0016】
実施例1〜4及び比較例1〜9
表1に示す成分をそれぞれの割合で混合し、カレンダー成形により厚さ0.1mmのフィルムを得た。詳しくは、それぞれの成分をリボンブレンダーで混合し、バンバリーミキサー(排出時樹脂温度170〜180℃)とミキシングロールで混練した後、ストレーナーを経てカレンダーロール(設定温度175〜185℃)により圧延した。
表1において、「ホモポリプロピレン」は、住友化学社製のノーブレンFHX20E1である。「ランダムポリプロピレン」は、住友化学社製のノーブレンFS-3611である。「ピロリン酸ピペラジン」「メラミンシアヌレート」「PTFE」「酸化チタン」は、堺化学社製のリン窒素系難燃剤(SCRF-5N)を用い、「メラミンシアヌレート」の不足分として、日産化学社製のMC-4000を用いた。「水酸化マグネシウム」は、協和化学社製のキスマ5Jである。
得られた厚さ0.1mmのフィルムから、長さ200mm、幅50mmの試験片を複数枚作製し、UL−94薄手材料垂直燃焼試験(Thin Material Vertical Burning Test:VTM)−0試験をそれぞれ行った。
さらに、カレンダー成形の加工性についても評価した。
また、実施例1〜3及び比較例1,2については、各フィルムの風合い(硬さ)を実施例1に基づいて評価し、それぞれの硬さを数値化するためにヤング率(Mpa)を算出した。
その結果を併せて表1に示した。なお、表1において、評価項目における空欄は未測定である。
【0017】
【表1】
【0018】
UL−94VTM−0の試験方法、その判定基準は次のとおりである。
各フィルム試験片を直径13mmのマンドレルに巻き付けてクランプに垂直に取付け、20mm炎による3秒間接炎を2回行い、その燃焼挙動により合否の判定を行う。
判定基準は、各フィルム試験片の燃焼時間が10秒以下であること、5本の合計燃焼時間が50秒以下であること、各フィルム試験片の燃焼+グローイング時間が30秒以下であること、クランプまでの燃焼が無いこと、各フィルム試験片から落下する火種により下の綿の着火(滴下物による綿着火)が無いことを、総て満たす必要がある。
【0019】
表1から分かるように、ポリプロピレン樹脂の割合及び難燃剤の配合量が本発明の範囲内にある実施例1〜4は、UL−94VTM−0規格に合格した。
実施例1〜3における各フィルムの硬さは、それぞれのヤング率が2000〜3200MPaに収まっている。特に実施例1,2は、ヤング率が2000〜2500MPaに収まっている。実施例1〜4における各フィルムの風合い(硬さ)についても適度な柔軟性を有するものであった。
さらに、カレンダー成形の加工性についても問題が無かった。
【0020】
これに対して、比較例1,2は、ホモポリプロピレンの配合量が不足しているため、滴下物による綿着火が有りでUL−94VTM−0規格に不合格となった。
比較例3,4は、ピロリン酸ピペラジンの配合量が不足しているため、比較例3,5〜7は、メラミンシアヌレートの配合量が不足しているため、各フィルム試験片の燃焼時間が10秒よりも長く且つ滴下物による綿着火が有りでUL−94VTM−0規格に不合格となった。
比較例8は、メラミンシアヌレートの配合量が多いため、各フィルム試験片の燃焼時間が10秒よりも長くなってUL−94VTM−0規格に不合格となった。
比較例9は、ピロリン酸ピペラジン及びメラミンシアヌレートに代えて水酸化マグネシウムを配合した場合であり、各フィルム試験片の燃焼時間が10秒よりも長くなってUL−94VTM−0規格に不合格となり、且つカレンダー成形の加工性について、プレートアウト(加工の際に配合成分の一部が加工機表面に付着する現象)が発生し、ロールからの離型性にも問題があった。
【0021】
そして、このような本発明の実施例2のように、ポリプロピレン樹脂の配合比率が、ホモポリプロピレン50〜75質量%、ランダムポリプロピレン50〜25質量%である場合には、カレンダー成形法であっても何らの支障を生じることなく、柔軟性に優れた厚さ0.1mmのフィルムを確実に成形できた。
【0022】
さらに、実施例1〜4のように、カレンダー成形で厚さ0.1mmのフィルム状に圧延した場合には、ピロリン酸ピペラジンの凝集が無くなって粒とならなかった。
それにより、ピロリン酸ピペラジンの凝集による外観の異常と強度の低下を防止することができる。
【0023】
さらに、カレンダー成形の滑剤として脂肪酸金属塩(金属石鹸)を含有する場合には、メラミンシアヌレートに滑りを良くする作用があるため、脂肪酸金属塩のみでカレンダー成形が可能となる。
それにより、少量の滑剤でフィルム成形を行うことができる。
【0024】
また、本発明による難燃性合成樹脂フィルムの製造方法として、バンバリーミキサーで配合成分の混練を行ってからカレンダーロールで圧延した場合には、配合成分の分散力が高くなった。
それにより、配合成分の凝集による外観の異常と強度の低下を確実に防止することができる。