(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発射反動軽減手段は、前記発射筒に対して上方向に延び、横断面が前記発射筒の幅方向内側に揚力を発生させる翼形状をなしていることを特徴とする請求項1記載の自走飛翔体発射装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のように、偏向板を設けることでブラストが車両に及ぶのを防止することはできても、ブラストによって車両に作用する発射反動の影響を防ぐことはできない。当該発射反動は、飛翔体が発射機構の発射筒から発射される際に飛翔体のノズルから出る推力が、比較的大きな前面投影面積を有する発射筒前面に干渉して生じているものと考えられる。このような発射反動が斜め上方又は垂直上方に向いている発射筒に作用することでバランスが崩れて当該発射機構を支える車両ごと転倒するという問題がある。また、発射筒内に複数の飛翔体が幅方向に並んで収納されているような場合には、端側の飛翔体が発射されると、発射筒を回動する方向に発射反動が作用して発射機構のバランスが崩れるという問題ある。
【0005】
このため発射筒の傾斜角や回動角は、車両が転倒しない範囲に制限されている。しかし、このように飛翔体の発射可能な範囲を制限することは、発射機構としての性能を低下させることとなり好ましくない。また、自走飛翔体発射装置に設けられるアウトリガ等の支持脚の増加や大型化、又は自走飛翔体発射装置の構成物や駆動機構等の強度の増強により、車両を転倒しにくくして飛翔体の発射可能範囲を拡げることはできるが、これは重量増加等の問題が生じる。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、発射反動を軽減することができ、飛翔体の発射可能範囲を拡げることのできる自走飛翔体発射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1の自走飛翔体発射装置では、車両に搭載された発射機構から飛翔体を発射する自走飛翔体発射装置であって、前記飛翔体を収納する発射筒と、前記発射筒に設けられ、前記飛翔体発射時のブラストを受けて、前記飛翔体の発射反動により生じるモーメントと逆方向のモーメントを生じさせる発射反動軽減手段と、を備え
、前記発射反動軽減手段は翼形状をなしていることを特徴としている。
【0008】
請求項2の自走飛翔体発射装置では、請求項1において、前記発射反動軽減手段は、前記発射筒に対して幅方向に延び、縦断面が前記発射筒の下面側に揚力を発生させる翼形状をなしていることを特徴としている。
請求項3の自走飛翔体発射装置では、請求項1において、前記発射反動軽減手段は、前記発射筒に対して上方向に延び、横断面が前記発射筒の幅方向内側に揚力を発生させる翼形状をなしていることを特徴としている。
【0009】
請求項4の自走飛翔体発射装置では、請求項
1〜3のいずれかにおいて、前記翼形状をなした発射反動軽減手段は、折り畳み可能であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
上記手段を用いる本発明によれば、自走飛翔体発射装置において、飛翔体発射時のブラストを受けて、飛翔体の発射反動により生じるモーメントと逆方向のモーメントを生じさせる発射反動軽減手段
を発射筒に設け
、この発射反動軽減手段を、
好ましくは、発射筒に対し幅方向に延び発射筒下面側に揚力を生じる翼形状、又は発射筒に対し上方向に延び幅方向内側に揚力を生じる翼形状とする。
【0011】
このような発射反動軽減手段を設けることで、発射反動により生じるモーメントを、ブラストを利用して効率よく軽減し、当該発射反動により自走飛翔体発射装置のバランスが崩れるのを抑制することができる。そして、このように発射反動を軽減することで、飛翔体の発射可能範囲を拡げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1及び
図2を参照すると、本発明の一実施形態に係る自走飛翔体発射装置の走行時における側面図及び上面図がそれぞれ示されており、これらの図に基づき、自走飛翔体発射装置の基本的な構成について説明する。
自走飛翔体発射装置1は、車両2に飛翔体を発射する発射機構4が搭載されて構成されている。
【0014】
詳しくは、車両2はキャブ6の後方に荷台8を有するトラックであり、当該荷台8に発射機構4が搭載されている。また車両2には、荷台8の前部及び後部の側面にそれぞれアウトリガ10が設けられている。
発射機構4は、略立方体形状の発射筒12内に複数の飛翔体を収納している。発射筒12と荷台8との間には発射筒12を上下方向に傾斜させることが可能であるとともに、水平方向に回動可能な支持機構14が介装されている。
【0015】
また、発射筒12の前部両側面にはサイドウイング16(発射反動軽減手段)が設けられている。さらに発射筒12の上面には、前部の幅方向両側部分にトップウイング18(発射反動軽減手段)が設けられている。サイドウイング16及びトップウイング18の付け根部分にはそれぞれヒンジが設けられており、
図1、2に示す走行時の状態では、サイドウイング16は付け根部分から上方に発射筒12の側面と平行をなすように、トップウイング18は付け根部分から幅方向内側に発射筒12の上面と平行をなすように、それぞれ折り畳まれている。
【0016】
次に、
図3及び
図4を参照すると、本発明の一実施形態に係る自走飛翔体発射装置の飛翔体発射準備時における側面図及び上面図がそれぞれ示されており、これらの図に基づき、自走飛翔体発射装置の発射準備時における構成について説明する。
自走飛翔体発射装置1は、飛翔体の発射準備時には、各アウトリガ10を接地させ車両2を安定させる。
【0017】
また、自走飛翔体発射装置1は、支持機構14を駆動し、発射筒12下面の後端を支点として発射筒12を斜め上方に指向するよう傾斜させる。そして、折り畳まれているサイドウイング16を側面から幅方向に突出するように展開し、同じく折り畳まれているトップウイング18を上面から上方に突出するように展開する。
図3に示すように、各サイドウイング16は、縦断面が発射筒12の下面側に凸の翼形状をなしている。従って、各サイドウイング16は発射筒12の前方から後方へのブラストを受けることで発射筒12の下面側への揚力(以下ダウンフォースという)を発生させることとなる。
【0018】
一方、
図4に示すように、各トップウイング18は、断面形状が発射筒12の幅方向内側に凸の翼形状をなしている。従って、各トップウイング18は発射筒12の前方から後方へのブラストを受けることで発射筒12の幅方向内側への揚力(以下サイドフォースという)を発生させることとなる。
続いて、
図5及び
図6を参照すると、本発明の一実施形態に係る自走飛翔体発射装置の飛翔体発射時における発射筒の側面図及び上面図が示されており、飛翔体発射時における構成及び作用する力について説明する。
【0019】
図5では、
図4の発射準備状態から支持機構14を回動させ、車両2に対して左側方に飛翔体20を発射する姿勢を示している。発射筒12は飛翔体20のノズルから噴射されるブラストを前面で受けることで、白抜き矢印で示した発射筒12の軸方向後方への力である発射反動Frktを受ける。
一方、サイドウイング16は、黒太矢印で示したように、飛翔体20からのブラストを受けて発射筒12の下面側へのダウンフォースFdを生じさせる。
【0020】
これらの力は、
図5に示す発射状態においては、車両2と地面とが接地している右側下端を支点として、車両2のロール方向のモーメントを生じさせる。なお、
図5では説明を簡略化するためアウトリガ10を図示せず、車両2の車輪が地面と接地しているものとして、右後輪の右側下端を支点として以下説明する。
図5に示すように、発射反動Frktは図面に対して時計回りの方向(白抜き環状矢印)のモーメントとして、ダウンフォースFd及び自走飛翔体発射装置1の自重Fgが図面に対して反時計回りの方向(黒太環状矢印)のモーメントとして作用する。この発射反動Frktによるモーメントは自走飛翔体発射装置1のバランスを崩す方向(以下、反動方向という)のモーメントであり、これに対しダウンフォースFdによるモーメントは自走飛翔体発射装置1のバランスを安定させる方向(以下、安定方向という)のモーメントである。
【0021】
当該
図5における反動方向のモーメントの大きさMrkt1は、発射反動Frktと、支点から発射反動Frktの作用線までの距離Lrkt1とから、下記式(1)で表される。
Mrkt1=Frkt×Lrkt1・・・(1)
【0022】
一方、
図5における安定方向のモーメントの大きさMs1は、自重Fg、支点から自重Fgの作用線までの距離Lg、サイドウイング16により生じるダウンフォースFd、及び支点から当該ダウンフォースFdの作用線までの距離Ldから、下記式(2)で表される。
Ms1=Fg×Lg+Fd×Ld・・・(2)
【0023】
この反動方向のモーメントの大きさMrkt1より、安定方向のモーメントの大きさMs1が大であれば車両2の転倒を防ぐことができることとなる。
このように、車両2のロール方向においては、サイドウイング16を設けたことで、上記式(2)に示すように安定方向のモーメントMs1としてFd×Ldが付加され、反動方向のモーメントを軽減することができる。
【0024】
なお、発射筒12を回動させず、上記
図3で示したように車両2の正面方向へと飛翔体20を発射させるような発射状態においては、車両2と地面とが接地している後端部分を支点として、車両2のピッチ方向のモーメントが生じる。このような場合においても、サイドウイング16は飛翔体20からのブラストを受けることでダウンフォースを生じさせ、上記式(1)、(2)が成り立ち、反動方向のモーメントを軽減することができる。
【0025】
次に、
図6は
図5の発射筒12の上面図であり、発射筒12の右端側に収納されていた飛翔体20が発射された場合を示している。このように上面図においては、発射筒12は、白抜き矢印で示した発射筒12の軸方向後方への力である発射反動Frktを、発射筒12の前面右端側で受けることとなる。
この場合、各トップウイング18は、黒太矢印で示すように、飛翔体20からのブラストを受けて発射筒12の幅方向内側へのサイドフォースを生じさせる。ここで、右側のトップウイング18は、左側のトップウイング18よりも飛翔体20の発射位置に近いことからブラストの流速も速く、右側のトップウイング18により発生するサイドフォースFsr(以下、右サイドフォースFsrという)は、左側のトップウイング18により発生するサイドフォースFsl(以下、左サイドフォースFslという)よりも大きくなる。
【0026】
これらの力は、
図6に示す発射状態においては、発射筒12の回動中心を支点として、車両2のヨー方向のモーメントを生じさせる。詳しくは、発射反動Frktが図面に対して時計回りの方向(白抜き環状矢印)のモーメントとして作用し、右サイドフォースFsrと左サイドフォースFslとの差分が図面に対して反時計回りの方向(黒太環状矢印)のモーメントとして作用する。この発射反動Frktによるモーメントは自走飛翔体発射装置1のバランスを崩す方向(以下、反動方向という)のモーメントとなる。これは車両2のヨー方向の偏心モーメントとして作用し、接地の摩擦力によっては、飛翔体発射時の挙動を不安定とするものである。これに対しサイドフォースの差分によるモーメントは自走飛翔体発射装置1のバランスを安定させる方向(以下、安定方向という)のモーメントとなる。
【0027】
当該
図6における反動方向のモーメントの大きさMrkt2は、発射反動Frktと、回動中心から発射反動Frktの作用線までの距離Lrkt2とから、下記式(3)で表される。
Mrkt2=Frkt×Lrkt2・・・(3)
【0028】
一方、安定方向のモーメントの大きさMs2は、右サイドフォースFsr、左サイドフォースFsl、回動中心から右サイドフォースFsrの作用線までの距離Lsr、及び回動中心から左サイドフォースFslの作用線までの距離Lslから、下記式(4)で表される。
Ms2=Fsr×Lsr−Fsl×Lsl・・・(4)
【0029】
なお、本実施形態において、距離Lsrと距離Lslは両トップウイング18が前後方向において同じ位置にあることから同じ値となる。
この反動方向のモーメントの大きさMrkt2に、安定方向のモーメントの大きさMs2が近づくほど発射筒12の回動を防ぐことができることとなる。
車両2のヨー方向においては、トップウイング18を設けたことで上記式(4)に示すように、安定方向のモーメントを発生させることができ、反動方向のモーメントを軽減することができる。なお、発射筒12の左端側に収納されている飛翔体20が発射される場合には上述した関係は左右逆になる。
【0030】
以上のように、本実施形態における自走飛翔体発射装置1においては、発射筒12に飛翔体20発射時のブラストを受けて、発射反動Frktにより生じるモーメントに対して逆方向のモーメントを生じさせるサイドウイング16及びトップウイング18を設けることで、発射反動Frktにより生じるモーメントに対しブラストを利用して効率よく軽減し、当該発射反動Frktにより自走飛翔体発射装置1のバランスが崩れるのを抑制することができる。そして、このように発射反動を軽減することで、飛翔体20の発射可能範囲を拡げることができる。
【0031】
また、サイドウイング16及びトップウイング18はそれぞれ折り畳み可能であり、自動飛翔体発射装置1の走行時には当該サイドウイング16及びトップウイング18を折り畳むことで、当該サイドウイング16及びトップウイング18が走行時の障害となることを防止することができる。
以上で本発明に係る自走飛翔体発射装置の実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
【0032】
上記実施形態では、発射反動軽減手段として、発射筒12の側面にサイドウイング16を、発射筒12の上面にトップウイング18を設けているが、発射反動軽減手段はこれに限られるものではない。
例えば、
図7、8を参照すると、発射反動軽減手段の変形例を示した自走飛翔体発射装置の側面図及び上面図が示されている。なお、これらの図において上記実施形態と同じ構成については同じ符号を付し詳しい説明を省略する。
【0033】
図7、8に示すように、当該変形例における発射反動軽減手段は、上記実施形態のサイドウイングとトップウイングの機能を組み合わせた一体型ウイング30(発射反動軽減手段)である。
詳しくは、一体型ウイング30は発射筒12の上面に設けられており、発射筒12の幅方向に延びる水平部32と、当該水平部32の両端を支持する垂直部34から構成されている。
【0034】
水平部32は、縦断面が発射筒12の下面側に凸の翼形状をなしており、垂直部34はそれぞれ横断面が内側に凸の翼形状をなしている。従って、一体型ウイング30は発射筒12の前方から後方へのブラストを受けることで、水平部32において発射筒12の下面側への揚力(ダウンフォース)を発生させ、各垂直部34において幅方向内側への揚力(サイドフォース)を発生させることとなる。
【0035】
これにより、当該一体型ウイング30を備えた自走飛翔体発射装置1’においても上記実施形態と同様の効果を奏することができる。特に当該一体型ウイング30は、発射筒12の側面に突出するものがないことから、自走飛翔体発射装置1’の幅方向においてコンパクト化を図ることができる。
また、上記実施形態では、サイドウイング16及びトップウイング18は折り畳み可能な構成とすることで走行の障害となることを防止しているが、例えばサイドウイング及びトップウイングを走行時に取り外し可能な構成としてもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、支持機構14は発射筒12下面の後端を支点として、発射筒12を傾斜させているが、発射筒を傾斜させる支点はこの位置に限られるものでない。