【文献】
RATANAJIAJAROEN Pakavadee, WATTHANAPHANIT Anyarat, RUJIRAVANIT Ratana, TAMURA Hiroshi, TOKURA Seiichi, RUJIRAVANIT Ratana,Release characteristic and stability of curcumin incorporated in β-chitin non-woven fibrous sheet using Tween 20 as an emulsifier,Eur Polym J ,英国,2012年 3月,Vol.48 No.3,Page.512-523
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるβ−ジケトン部にルテニウムが配位した高分子金属錯体は、色素増感太陽電池の色素として使用可能であり、所定の光起電圧が達成される。
一方、近年、ルテニウムなどは希少金属であるためコスト面および供給安定面で大きな課題があると共に、地球環境負荷の低減のためには、その使用量をなるべく減らすことが求められている。
そのため、ルテニウムなどの希少金属を含まず、簡便に製造することができ、長波長領域においても優れた光吸収特性を有する色素(化合物)が望まれていた。
【0005】
また、特許文献1に記載の高分子金属錯体は、有機溶媒に対して所定の溶解性を示すものの、水への溶解性に劣る。
各種デバイス(例えば、色素増感太陽電池)に使用される色素が水に溶解できれば、有機溶媒を使用することなく各種デバイスを製造できることが期待され、環境負荷の低減につながる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、簡便に製造することができ、水への溶解性に優れ、長波長領域においても優れた光吸収特性を示す、クルクミンを含む包接複合体およびその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、該包接複合体を含有する包接複合体含有組成物を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、クルクミンまたはその誘導体と非環状多糖類とを使用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、以下に示す手段により上記課題を解決し得る。
【0008】
(1) 非プロトン性極性溶媒中において、非環状多糖類および後述する式(1)で表されるクルクミン類を混合することにより得られる、非環状多糖類と非環状多糖類により包接されたクルクミン類とを含む包接複合体を含有する包接複合体含有組成物。
(2) 非環状多糖類が、α−グルカン類またはペクチン類である、(1)に記載の包接複合体含有組成物。
(3) 非環状多糖類が直鎖状である、(1)または(2)に記載の包接複合体含有組成物。
【0009】
(4) 非環状多糖類と、非環状多糖類により包接された後述する式(1)で表されるクルクミン類とを含む包接複合体。
(5) 非環状多糖類が、α−グルカン類またはペクチン類である、(4)に記載の包接複合体。
(6) 非環状多糖類が直鎖状である、(4)または(5)に記載の包接複合体。
【0010】
(7) 非プロトン性極性溶媒中において、非環状多糖類および後述する式(1)で表されるクルクミン類を混合することにより、非環状多糖類と非環状多糖類により包接されたクルクミン類とを含む包接複合体を製造する、包接複合体の製造方法。
(8) 非環状多糖類が、α−グルカン類またはペクチン類である、(7)に記載の包接複合体の製造方法。
(9) 非環状多糖類が直鎖状である、(7)または(8)に記載の包接複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡便に製造することができ、水への溶解性に優れ、長波長領域においても優れた光吸収特性を示す、クルクミンを含む包接複合体およびその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、該包接複合体を含有する包接複合体含有組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の包接複合体およびその製造方法、並びに、包接複合体含有組成物の好適実施態様について説明する。
まず、本発明の従来技術と比較した特徴点について詳述する。
上述したように、本発明の特徴点の一つとしては、クルクミンまたはその誘導体と非環状多糖類とを非プロトン性極性溶媒中で混合する点が挙げられる。この処理を実施することにより、クルクミンまたはその誘導体が会合(または凝集)し、その周りを非環状多糖類が覆うことにより、内部にクルクミンまたはその誘導体が包接(内包)された包接複合体を得ることができる。
得られた包接複合体は、長波長領域(特に、500〜700nm)において優れた光吸収特性を示すと共に、水に対しても溶解性が優れる。一般的に、長波長領域に吸収を有する色素を得るためには、複雑な合成ステップを繰り返し実施する必要があるが、上記包接複合体は非常に簡便な方法で得ることができ、製造適性に優れる。
また、得られた包接複合体に使用されるクルクミンまたは誘導体、および、非環状多糖類は、いずれも天然由来の成分であり、いわゆるカーボンニュートラルな植物由来の化合物であるため、地球環境保全の点からも好ましい。
【0014】
以下では、まず、包接複合体の製造方法で使用される材料(非環状多糖類、クルクミン類、非プロトン性極性溶媒など)について詳述し、その後、製造方法の手順、および、得られた包接複合体について詳述する。
【0015】
<非環状多糖類>
非環状多糖類は、環状でない多糖類である。より具体的には、直鎖状または分岐鎖状の多糖類を意図し、シクロデキストリンなどの環状の多糖類は含まれない。このような非環状多糖類であれば、クルクミン類を内部に包接することができ、その包接複合体自体の安定性にも優れる。
なかでも、包接複合体の諸特性(光吸収特性および水への溶解性)がより優れる点で、直鎖状の多糖類が好ましい。
【0016】
非環状多糖類としては、単糖類反復単位を含む骨格を有する直鎖状または分岐鎖状のポリマーであり、ホモ多糖類でもヘテロ多糖類であってもよい。例えば、キチン、キトサン等のキチン質類、アミロース、グリコーゲン、アミロペクチン、キサンタンガム等のα−グルカン類、例えば、ラミナラン、カードラン、セルロース等のβ−グルカン類、ローカストビーンガム、グアーガム、フェヌグリークガム等のガラクトマンナン類、ラムナン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルタマン硫酸、ヘパラン硫酸、フコイダン、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸等のようなグリコサミノグリカン類(ムコ多糖類)、イヌリン、レバン等のフルクタン類、ポリガラクツロン酸、ホモガラクツロナン、ラムノガラクツロナン−I、ラムノガラクツロナン−II等のペクチン類、キシラン、アラビノキシラン、キシログルカン等のヘミセルロース類などが挙げられる。なかでも、包接複合体の光吸収特性および水への溶解性がより優れる点で、α−グルカン類またはペクチン類が好ましく、アミロースまたはポリガラクツロン酸がより好ましい。
【0017】
また、本発明で使用される非環状多糖類は、上記例示のとおり、変性されていないものであってもよく、置換基等を導入した変性物であってもよい。変性された非環状多糖類としては、例えば、変性デンプン、変性アミロペクチン、変性アミロース、変性セルロース、変性ガラクトマンナン、変性グルコマンナン、変性キサンタンガム、変性カラギーナン等が挙げられる。これらの変性物を得るための変性手法としては、各非環状多糖類のアセチル化処理等のエステル化、カルボキシアルキル化等のエーテル化、リン酸化、酸化、硫酸化、リン酸架橋、アジピン酸架橋、酵素処理およびそれらの組み合わせにより得られるものである。
【0018】
非環状多糖類の質量平均分子量は特に制限されないが、取扱い性により優れる点で、500以上が好ましく、1000以上がより好ましく、2000以上がさらに好ましく、5000以上が特に好ましく、10000以上が最も好ましい。また、その上限は特に限定されないが、1000万以下が好ましく、800万以下がさらに好ましく、500万以下が特に好ましい。
なお、非環状多糖類は、単独で使用しても二種類以上を混合使用してもよい。
【0019】
<クルクミン類>
クルクミン類は、式(1)で表される。
【0021】
式(1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子、または、アルコキシ基を表す。
アルコキシ基中のアルキル部分の炭素数は特に制限されないが、包接複合体の各種特性(光吸収特性、水への溶解性)がより優れる点より、炭素数1〜6が好ましく、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルが挙げられる。
L
1およびL
2は、それぞれ独立に、−C=C−または−CH
2CH
2−を表す。
なかでも、包接複合体の各種特性(光吸収特性、水への溶解性)がより優れる点より、L
1およびL
2が、−C=C−であることが好ましい。
【0022】
上記式で表されるクルクミン類としては、例えば、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロジメトキシクルクミン、ビスジメトキシクルクミン、テトラヒドロビスジメトキシクルクミンなどが挙げられる。
【0023】
<非プロトン性極性溶媒>
非プロトン性極性溶媒としては公知の溶媒を使用することができ、例えば、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジオキサンなど)、カーボネート類(エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなど)、アミド類(ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、ピペリドン、N−メチルピペリドン、N−エチルピペリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、メチルオキサゾリジノン、エチルオキサゾリジノンなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、スルホン類(テトラメチレンスルホンなど)、イオン性液体などを挙げることができる。
【0024】
なお、イオン性液体とは、イオンのみ(アニオン、カチオン)から構成される塩であり、通常、常温で液体状であるという性質を持つ。
例えば、大野弘幸編「イオン性液体−開発の最前線と未来−」CMC出版(2003)、「イオン性液体の機能創製と応用」エヌ・ティー・エス(2004)等に記載されている第4級アンモニウム塩類、イミダゾリウム塩類、ピリジニウム塩類、ピロリジニウム塩類、ピペリジニウム塩類等を使用することができる。
【0025】
上記イオン性液体のカチオンとしては、例えば、ピリジニウム系カチオン、イミダゾリウム系カチオン、アンモニウム系カチオン、ピロリジニウム系カチオン、ピペリジニウム系カチオン、ホスホニウム系カチオンなどが挙げられる。
【0026】
一方、上記イオン性液体が有するアニオンとしては、具体的には、I
-、Br
-、AlCl
4-、Al
2Cl
7-、NO
3-、BF
4-、PF
6-、CH
3COO
-、CF
3COO
-、CF
3SO
3-、(CN)
4B
-、SCN
-、(CF
3SO
2)
2N
-、(FSO
2)
2N
-、(CN)
2N
-、(CF
3SO
2)
3C
-、(CN)
3C
-、AsF
6-、SbF
6-、F(HF)
n-、CF
3CF
2CF
2CF
2SO
3-、(CF
3CF
2SO
2)
2N
-、CF
3CF
2CF
2COO
-などが好適に例示される。
【0027】
<包接複合体の製造方法>
本発明の包接複合体の製造方法は、非プロトン性極性溶媒中において、上述した非環状多糖類および式(1)で表されるクルクミン類(以後、単にクルクミン類とも称する)を混合する工程を備える。非プロトン性極性溶媒中で2種の化合物を混合することにより、クルクミン類が非環状多糖類で包接(内包)された包接複合体が得られる。
以下に、工程の手順について詳述する。
【0028】
本工程で使用される非環状多糖類とクルクミン類との混合モル比は特に制限されないが、包接複合体の各種特性(光吸収特性、水への溶解性)がより優れる点で、混合モル比(非環状多糖類の繰り返し単位のモル数/クルクミン類のモル数)は0.1〜100が好ましく、1〜50がより好ましく、1.5〜10がさらに好ましい。
【0029】
本工程で使用される非プロトン性極性溶媒中におけるクルクミン類の濃度は特に制限されないが、包接複合体の各種特性(光吸収特性、水への溶解性)がより優れる点で、0.01〜100mMが好ましく、0.1〜50mMがより好ましく、0.5〜10mMがさらに好ましい。
【0030】
非環状多糖類とクルクミン類とを混合する手順は特に制限されず、例えば、非プロトン性極性溶媒中に非環状多糖類とクルクミン類とを添加して、混合する方法が挙げられる。非プロトン性極性溶媒中への化合物の添加順は特に制限されず、非環状多糖類とクルクミン類とを同時に添加してもよく、非環状多糖類およびクルクミン類のいずれか一方を先に添加して、所定時間経過後に他方を添加してもよい。
【0031】
非環状多糖類とクルクミン類との混合時間は特に制限されず、使用される非プロトン性極性溶媒の種類などに応じて適宜最適な条件が選択されるが、生産性・収率などの観点から、10〜360分であることが好ましく、30〜120分であることがより好ましい。
また、非環状多糖類とクルクミン類とを混合する際に、加熱処理を施してもよい。加熱処理を施すことにより、両者の化合物の溶解がより進行し、包接複合体の製造が促進される。加熱温度は特に制限されず、使用される非プロトン性極性溶媒の種類などに応じて適宜最適な条件が選択されるが、生産性・収率などの観点から、30〜100℃であることが好ましく、40〜80℃であることがより好ましい。
【0032】
<包接複合体、包接複合体含有組成物>
上記工程を経ることにより、非環状多糖類と非環状多糖類により包接されたクルクミン類とを含む包接複合体を含む組成物が得られる。
包接複合体は長波長領域(特に、500〜700nm)において優れた光吸収特性を示すと共に、水への溶解性が優れ、水への再分散が可能である。
組成物中の包接複合体には、その内部にクルクミン類が含まれ、クルクミン類を包む(内包する)ように非環状多糖類が配置される。包接複合体が長波長領域に優れた光吸収特性を示す理由は不明だが、包接複合体内部で複数(2つ以上)のクルクミン類が会合(または凝集)して会合体(または凝集体)を形成することにより、クルクミン類間で相互作用が生じ、長波長領域での吸収が生じたと考えられる。
【0033】
包接複合体および包接複合体含有組成物は種々の用途に使用することができ、例えば、光電子機能素子(例えば、太陽電池(特に、色素増感太陽電池や有機薄膜太陽電池))の材料、触媒(例えば、水の光分解による水素発生触媒)などへの利用が可能である。特に、色素増感太陽電池の色素として有用である。
【0034】
また、包接複合体中のクルクミン類に含まれるβ−ジケトン構造部は金属イオンの配位部位として利用可能である。つまり、包接複合体には、さらに金属イオンが含まれていてもよい。
β−ジケトン構造部に配位可能な金属イオンの金属種としては、例えば、Ru、Cr、Fe、Cu、B、Os、Ir、Pt、Eu、TbおよびTiなどが挙げられる。
また、クルクミン類のβ−ジケトン構造部に金属イオンが配位する場合、他の公知の配位子を合わせて使用してもよい。公知の配位子としては、例えば、アセチルアセトンなどのジケトン化合物、ジフェニルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノプロパン、ジフェニルホスフィノブタンなどのホスフィン系化合物、フェナントロリン、ビスビピリジル、ターピリジル、ピリジン、フェニルピリジン、2−アリールピリジンなどのアリール系置換基を有するピリジン、イミダゾール、トリアゾール、インドール、ピリミジン、キノリン、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
【0035】
例えば、Ruの配位子としては、ビスビピリジルなどが用いられ、Irの配位子としては、フェニルピリジン等が用いられ、Euの配位子としてはビピリジル、Tbの配位子としては、アセチルアセトンなどが用いられる。Ptの配位子としては、ピリジン、フェニルピリジン、イミダゾール、トリアゾール、インドール、ピリミジン、キノリン、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールなどの単座配位子が用いられる。
【0036】
包接複合体に金属イオンを含有させる方法は特に制限されず、例えば、上記工程で得られた包接複合体含有組成物中に所定の金属イオンを加えて、混合させ、クルクミン類のβ−ジケトン構造部に金属イオンを配位させる方法や、金属イオンが配位したクルクミン類を用いて上記工程を実施して、包接複合体を得る方法などが挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により、本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
<実施例1>
ジメチルスルホキシド(以後、DMSOとも称する)(10ml)中に、クルクミン(濃度:4mM)およびアミロース(アミロースの繰り返し単位のユニット換算モル濃度:10mM、SIGMA; Amylose from potato)を加え、70℃で120分間攪拌した。反応溶液は、攪拌と共に、溶液の色が黄色から黒色に変化していき、包接複合体が形成されていることが確認された。得られた反応溶液の紫外・可視吸収スペクトル測定を行ったところ、500〜700nmに付近にクルクミン類の会合体(または凝集体)由来と推測される新たな吸収ピークが生じていることが確認された(
図1参照)。
なお、その後70℃でDMSOを減圧留去後、70℃で加熱真空乾燥し黒色の固体である包接複合体を得た。得られた包接複合体を水中に添加したところ、可溶した。結果を表1にまとめて示す。
【0039】
<実施例2>
アミロースの繰り返し単位のユニット換算モル濃度を10mMから20mMに変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、包接複合体を製造した。各種測定結果を表1にまとめて示す。
【0040】
<実施例3>
アミロースの繰り返し単位のユニット換算モル濃度を10mMから30mMに変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、包接複合体を製造した。各種測定結果を表1にまとめて示す。
【0041】
<比較例1>
アミロースを使用せずに実施例1と同様の手順に従って、クルクミン類をジメチルスルホキシドに添加して混合した。得られた溶液では、長波長領域に新たなピークの上昇は見られたが、ジメチルスルホキシドを除去して得られた粉末は水に溶解しなかった。
【0042】
<比較例2>
ジメチルスルホキシドの代わりにメタノールを使用した以外は、比較例1の手順に従って、クルクミン類を添加した。得られた溶液では、長波長領域に新たなピークは見られなかった。
【0043】
<比較例3>
ジメチルスルホキシドの代わりにメタノールを使用した以外は、実施例1の手順に従って、クルクミン類およびアミロースを添加したが、アミロースがメタノールに溶解しなかった。
【0044】
以下の、表1中、「アミロース」欄では、溶媒中でのアミロースの繰り返し単位のモル濃度を表す。
表1中、「長波長領域での吸収ピーク」欄は、紫外・可視吸収スペクトル測定において500〜700nmの領域に新たなピークが確認された場合を「○」、確認されなかった場合を「×」として示す。
表1中、「水への溶解性」欄は、反応溶液から溶媒を除去して得られた粉末が水に溶解(可溶)する場合を「○」、溶解しない、または、一部粉末が残る場合を「×」として示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示すように、実施例1〜3において、アミロースとクルクミンとを非プロトン性極性溶媒中で混合することにより得られる包接複合体は、長波長領域における光吸収特性に優れると共に、水への溶解性にも優れていた。
一方、アミロースを使用していない比較例1においては、長波長領域での吸収ピークの上昇はみられるものの、得られた固形分は水への溶解性を示さなかった。これは、DMSO溶液中ではクルクミンの会合(または凝集)が生じているが、DMSOを除去して得られる固体(クルクミン)は非環状多糖に内包されていないので、水への溶解性に劣ると推測される。
また、比較例2および3に示すように、非プロトン性極性溶媒を使用しなかった場合は、長波長領域での吸収特性の改善は見られなかった。
【0047】
<実施例4>
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドを溶媒として使用し、この溶媒中にアミロース(アミロースの繰り返し単位のユニット換算モル濃度:20mM、SIGMA; Amylose from potato)を加えて、60℃で加熱撹拌し溶解させた。その後、得られた溶液にクルクミン(4mM)を加えて、60℃で1時間加熱撹拌して混合したところ、実施例1と同様に、溶液の色が黄色から黒色に変化していき、包接複合体が形成されていることが確認された。
得られた反応溶液の紫外・可視吸収スペクトル測定を行ったところ、500〜900nmに付近にクルクミン類の会合体(または凝集体)由来と推測される新たな吸収ピークが生じていることが確認された(
図2参照)。