(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連通溝は、前記第2チューブの内周面に設けられており、軸方向に直交する方向の断面が円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態によるリニアアクチュエータ100について説明する。
【0010】
リニアアクチュエータ100は、自動車や鉄道車両、建築物等における振動を抑制する制振用アクチュエータとして使用される。
【0011】
リニアアクチュエータ100は、第1チューブ10と、第1チューブ10内に摺動自在に挿入される第2チューブ20と、第1チューブ10の端部に固定され、永久磁石31を保持するロッド30と、第2チューブ20内に嵌合するように設けられ、永久磁石31と対向するコイル41を保持するコイルホルダ40と、を備える。リニアアクチュエータ100は、第1チューブ10に設けられた連結部1及び第2チューブ20に設けられた連結軸2を介して、相対移動する2つの部材間に配設される。
【0012】
リニアアクチュエータ100では、コイル41に流れる電流に応じてロッド30を軸方向に駆動する推力(電磁力)が発生し、この推力に基づいて第1チューブ10及び第2チューブ20が相対変位する。これにより、リニアアクチュエータ100は、
図1に示す最大収縮位置と
図2に示す最大伸長位置との間で伸縮する。
【0013】
第1チューブ10は、両端が開口する円筒状のアウターチューブ11と、アウターチューブ11の一端に取り付けられるキャップ12と、を備える。第1チューブ10の一端はキャップ12により閉塞され、第1チューブ10の他端は開口端として形成される。キャップ12の外側面には、連結部1が固定されている。
【0014】
第2チューブ20は、円筒状のベース部21と、ベース部21の一端側に固定されるインナーチューブ22と、ベース部21の他端側に固定されるガイドチューブ23と、を備える。
【0015】
ベース部21は、両端が開口する筒状部材である。ベース部21の外周には、径方向に突出する一対の連結軸2が固定されている。これら連結軸2は、相対向する位置に設けられる。第2チューブ20は連結軸2を介して相対移動する2つの部材の一方に連結され、第1チューブ10は連結部1を介して相対移動する2つの部材の他方に連結される。
【0016】
インナーチューブ22は、両端が開口する筒状部材である。インナーチューブ22は、ベース部21に設置された状態で、第1チューブ10のアウターチューブ11内に挿入される。インナーチューブ22の自由端の外周には、アウターチューブ11の内周に摺接する環状の軸受24が設けられる。なお、インナーチューブ22挿入側のアウターチューブ11の開口端の内周には、インナーチューブ22の外周に摺接する環状の軸受13が設けられる。第1チューブ10のアウターチューブ11及び第2チューブ20のインナーチューブ22は、これら軸受13,24を介して滑らかに摺動するように構成されている。
【0017】
ガイドチューブ23は、両端が開口する筒状部材である。ガイドチューブ23内には、ロッド30の先端に固定されるロッドガイド50が摺動自在に設けられる。
【0018】
ロッド30は、中空部30Aを有する棒状部材である。ロッド30の一端は、第1チューブ10の端部を構成するキャップ12に固定される。また、ロッド30の他端には、前述したロッドガイド50が固定されている。ロッド30の先端にロッドガイド50を設けることで、リニアアクチュエータ100伸縮時にロッド30の先端部分が径方向に振れることを防止することができる。
【0019】
ロッド30の中空部30Aには、複数の永久磁石31が軸方向に並んで保持される。永久磁石31は、円柱状に形成されており、軸方向にN極とS極が現れるように着磁されている。隣り合う永久磁石31は、同極同士が対向するように配置される。また、隣り合う永久磁石31の間には継鉄32が設けられる。なお、継鉄32は必ずしも設ける必要はなく、各永久磁石31を直接隣接するようにしてもよい。
【0020】
コイルホルダ40は、筒状部材であって、第2チューブ20のベース部21及びインナーチューブ22の内周に嵌合して設けられる。ベース部21の内径はインナーチューブ22の内径よりも大きく形成されており、コイルホルダ40は、ベース部21の内周に嵌合する大径部42と、インナーチューブ22の内周に嵌合する小径部43とを備えている。
【0021】
また、コイルホルダ40は、ロッド30を軸方向に挿通させる挿通孔44を有している。挿通孔44を構成する小径部43の内周面には環状凹部43Aが形成されており、この環状凹部43A内には複数のコイル41が固定されている。複数のコイル41は、永久磁石31に対向するように、軸方向に沿って並設されている。
【0022】
コイル41に通電される電流は、リニアアクチュエータ100の外部等に設置されるコントローラによって制御される。コントローラは、図示しない位置センサにより検出されるコイル41と永久磁石31との相対位置情報に基づいて、コイル41に通電する電流の大きさと方向を制御する。これにより、リニアアクチュエータ100が発生する推力と推力発生方向(伸縮方向)が調整される。
【0023】
なお、位置センサは、磁界の強度に応じたホール電圧を発生するホール素子であって、コイルホルダ40の大径部42内に埋め込まれている。
【0024】
リニアアクチュエータ100では、コイル41に所定方向の電流が通電されると、ロッド30を
図1において右方向に駆動する推力が発生する。ロッド30が右方向に駆動されると、第1チューブ10のアウターチューブ11が第2チューブ20のインナーチューブ22に対して摺動しながら右方向に移動して、リニアアクチュエータ100が伸長する。
【0025】
ガイドチューブ23の固定端には内側に突出する突出部23Aが形成されており、リニアアクチュエータ100が最大伸長位置(
図2参照)まで伸長すると、ロッドガイド50が突出部23Aの左側面に当接し、それ以上のロッド30の移動が規制される。このように、ロッドガイド50はストッパとして機能する。
【0026】
一方、コイル41に伸長時とは逆方向の電流が通電されると、ロッド30を
図2において左方向に駆動する推力が発生する。ロッド30が左方向に駆動されると、第1チューブ10のアウターチューブ11が第2チューブ20のインナーチューブ22に対して摺動しながら左方向に移動して、リニアアクチュエータ100が収縮する。
【0027】
リニアアクチュエータ100が最大収縮位置(
図1参照)まで収縮すると、アウターチューブ11の開口端がベース部21の右端部に当接し、それ以上のロッド30の移動が規制される。このように、アウターチューブ11の開口端はストッパとして機能する。
【0028】
上記のように構成されるリニアアクチュエータ100には、
図1に示すように、コイルホルダ40の一端と第1チューブ10のキャップ12の間の空間として第1室61が画成されており、コイルホルダ40の他端とガイドチューブ23内に配設されるロッドガイド50の間の空間として第2室62が画成されている。
【0029】
第1室61と第2室62とは、コイルホルダ40の挿通孔44を介して連通している。つまり、第1室61と第2室62とは、挿通孔44を構成するコイルホルダ40の内周とロッド30の外周との間に形成される環状隙間63を通じて連通している。
【0030】
また、第2チューブ20を構成するインナーチューブ22の内周面には、
図1及び
図3に示すように、第1室61と第2室62を連通するための連通溝22Aが凹設されている。連通溝22Aは周方向に等しい間隔をあけて4つ形成されており、これら連通溝22Aは軸方向に沿って延設されている。連通溝22Aの径方向断面は、円弧状断面として形成されている。
【0031】
連通溝22Aは、インナーチューブ22内にバイトが挿入されるようにインナーチューブ22を旋盤にセットし(取付工程)、その後バイトを回転させてインナーチューブ22の内周面を切削することで、
図3に示すように円弧状に形成される(切削工程)。
図3の破線は、バイトの刃先の軌跡を示している。インナーチューブ22のような円筒状部材の内周面に断面矩形状の溝加工等を行うことは比較的困難であるが、連通溝22Aは断面形状が円弧状であるので、上述のように切削することで容易に溝加工を行うことができる。
【0032】
図1に示すように、連通溝22Aは、第1室61に臨む位置からインナーチューブ22の端部にわたって延設されている。インナーチューブ22の端部における連通溝22Aは、コイルホルダ40の大径部42及びガイドチューブ23の突出部23Aを軸方向に貫通する貫通孔42A,23Bを介して、第2室62に通じている。貫通孔42A,23Bは、連通溝22Aが形成される位置に対応して設けられる。
【0033】
リニアアクチュエータ100が伸長すると、第1室61の容積が拡大するとともに第2室62の容積が縮小するので、第2室62の空気が環状隙間63、貫通孔42A,23B、及び連通溝22Aを介して第1室61に移動する。
【0034】
一方、リニアアクチュエータ100が収縮すると、第1室61の容積が縮小するとともに第2室62の容積が拡大するので、第1室61の空気が環状隙間63、連通溝22A、及び貫通孔42A,23Bを介して第2室62に移動する。
【0035】
なお、リニアアクチュエータ100では、コイルホルダ40の大径部42を省略し、インナーチューブ22の連通溝22Aのみにより第1室61及び第2室62を連通するようにしてもよい。この場合には、ガイドチューブ23の突出部23Aに貫通孔23Bを形成する必要はない。
【0036】
また、リニアアクチュエータ100では、ガイドチューブ23の突出部23Aを省略し、最大伸長時にロッドガイド50がコイルホルダ40の大径部42の左端面に当接するようにしてもよい。この場合には、第1室61と第2室62とは、インナーチューブ22の連通溝22A及び大径部42の貫通孔42Aを通じて連通することとなる。
【0037】
上記した本実施形態によるリニアアクチュエータ100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0038】
リニアアクチュエータ100では、ロッド30を挿通させるコイルホルダ40の挿通孔44及びインナーチューブ22に形成された連通溝22Aにより第1室61と第2室62とを連通させるので、第1室61及び第2室62の空気が相互に移動しやすくなり、リニアアクチュエータ100伸縮時における空気抵抗を低減することができる。これにより、リニアアクチュエータ100の伸縮動作が円滑に行われる。
【0039】
また、リニアアクチュエータ100では、インナーチューブ22の連通溝22Aの径方向断面は円弧状に形成される。このように円弧状断面とすることで、インナーチューブ22に対して容易に溝加工を行うことができ、溝加工時における工数等を低減することが可能となる。
【0040】
さらに、リニアアクチュエータ100では、コイルホルダ40は、インナーチューブ22に嵌合する小径部43と、ベース部21に嵌合する大径部42とを備えており、インナーチューブ22の連通溝22Aは、大径部42の貫通孔42Aを介して第1室61と第2室62を連通するように構成されている。このようにコイルホルダ40の挿通孔44、連通溝22A、及び貫通孔42Aにより第1室61と第2室62とを連通させることで、リニアアクチュエータ100伸縮時における空気抵抗を低減することができる。また、コイルホルダ40に大径部42に、コイル41と永久磁石31との相対位置を検出する位置センサ等を設置することが可能となる。
【0041】
本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなし得ることは明白である。
【0042】
本実施形態によるリニアアクチュエータ100では、ロッド30の中空部30A内に複数の永久磁石31を軸方向に並べて固定したが、永久磁石31の固定位置はこれに限られるものではない。例えば、リング状に形成した永久磁石31をロッド30の外周に外嵌めし、複数の永久磁石31を軸方向に並べて固定してもよい。この場合には、第1室61と第2室62とを連通する環状隙間63は、コイルホルダ40の挿通孔44と永久磁石31の外周との間に形成されることとなる。
【0043】
また、リニアアクチュエータ100では、第2室62を外部に連通させるための貫通孔をガイドロッド50に形成したり、第1室61を外部に連通させるための貫通孔をキャップ12に形成したりしてもよい。貫通孔には、塵や埃等の侵入を防止するため、メッシュ等のフィルタを設けることが好ましい。