(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5927628
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両におけるオイルポンプ構造
(51)【国際特許分類】
F01M 1/02 20060101AFI20160519BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20160519BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20160519BHJP
【FI】
F01M1/02 AZHV
B60K6/48
B60K6/40
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-286703(P2011-286703)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-133804(P2013-133804A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】窪田 隆
【審査官】
安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−339908(JP,A)
【文献】
特開2001−295618(JP,A)
【文献】
特開平10−089446(JP,A)
【文献】
特開平05−059924(JP,A)
【文献】
特開2010−208602(JP,A)
【文献】
特開2006−266207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 1/02
F02B 67/00 − 67/06
B60K 6/40
B60K 6/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ・ジェネレータおよびオイルポンプが、クランクシャフトの反トランスミッション側において、前記クランクシャフトと同軸上に設けられたハイブリッド車両におけるオイルポンプ構造であって、
前記オイルポンプは、
エンジンの反トランスミッション側に配設された、モータ・ジェネレータケースの一部を兼ねるタイミングチェーンカバーと、
前記タイミングチェーンカバーの所定部位に締結されたオイルポンプカバーと、
前記タイミングチェーンカバーおよび前記オイルポンプカバーの間に介設され、前記クランクシャフトの動力により駆動されるオイルポンプロータと、
を備え、
前記オイルポンプカバーが、前記タイミングチェーンカバーに対してモータ・ジェネレータ側に配設され、ボルトにて、前記タイミングチェーンカバーに締結され、該ボルト用の雌ねじを形成するために必要な裏ボスが、前記タイミングチェーンカバーのエンジン側の面に凸設されたことを特徴とするハイブリッド車両におけるオイルポンプ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源としてエンジンおよびモータ・ジェネレータを有し、モータ・ジェネレータがエンジンンのクランクシャフトの反トランスミッション側に直結されたハイブリッド車両において、クランクシャフトと同軸上に設けられたオイルポンプ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タイミングチェーンカバーと、オイルポンプカバーと、タイミングチェーンカバーおよびオイルポンプカバー間に介設されたインナーロータおよびアウターロータとで構成されるオイルポンプが開示されている。このオイルポンプでは、タイミングチェーンカバーに対してオイルポンプカバーがエンジン側に配設されている。
【0003】
図4は、クランクシャフト51の反トランスミッション側に設けられたオイルポンプ52等の従来構造例を示している。このオイルポンプ52は、タイミングチェーンカバー53と、オイルポンプカバー54と、タイミングチェーンカバー53およびオイルポンプカバー54に介設されたインナーロータ55およびアウターロータ56と、で構成されるオイルポンプである。その他、クランクシャフト51には、タイミングチェーンが巻き掛けられるクランクスプロケット57、補機類へクランクシャフト51の動力を伝達するためのプーリ59などが回転一体に設けられている。58はクランクシャフトを支持するクランク軸受であり、60はタイミングチェーンカバー53にオイルポンプカバー54を締結するためのボルトである。なお、タイミングチェーンカバー53に上記ボルト60用の雌ねじを形成したことで、タイミングチェーンカバー53の反エンジン側の面には、裏ボス61が凸設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−266207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5は、駆動源としてエンジン(不図示)およびモータ・ジェネレータ62を有し、モータ・ジェネレータ62がエンジンンのクランクシャフト51Aの反トランスミッション側に直結されたハイブリッド車両におけるオイルポンプ52およびその周辺構造を示す断面図である。このオイルポンプ52も、タイミングチェーンカバー53Aと、オイルポンプカバー54と、タイミングチェーンカバー53Aおよびオイルポンプカバー54に介設されたインナーロータ55およびアウターロータ56と、で構成されている。63はエンジン本体(シリンダブロック等)、64はオイルフィルタである。
【0006】
ところが、このオイルポンプ52の構造でも、タイミングチェーンカバー53Aのモータ・ジェネレータ62側に裏ボス61が凸設されているため、この裏ボス61が邪魔になってモータ・ジェネレータ62をエンジン側に近づけて設置することができない。その結果、このハイブリッド駆動装置全体の軸方向寸法の縮小化が図れなかった。
【0007】
また、オイルフィルタ64へオイルを行き来させるための油路65は、タイミングチェーンカバー53Aとオイルポンプカバー54とが合わさることにより形成された油路65aと、専らタイミングチェーンカバー53A内に設けられた貫通孔によって形成された油路65bとで主に構成され、油路65aから油路65bに切替わる部分等に油路の屈曲部65cが形成される。上記油路のうち、貫通孔によって形成される油路65bは、タイミングチェーンカバー53Aとオイルポンプカバー54との合わせ面Sよりタイミングチェーンカバー53A側に形成しなければならない。なぜなら、タイミングチェーンカバー53Aとオイルポンプカバー54との合わせ面Sより軸方向オイルポンプカバー54側に貫通孔による油路を形成しようとしても、合わせ面Sは、オイル油圧保持のためのシール機能を果たすため、一平面で形成しなければならず、貫通孔により形成される油路を合わせ面Sよりオイルポンプカバー54側に形成することができないからである。
また、オイルポンプカバー54は、タイミングチェーンカバー53Aとエンジン本体63とのシール面67より内側(クランクシャフト51A側)に設置されるため、油路の屈曲部65cも上記シール面67より内側に設ける必要がある。
【0008】
上記事情により、タイミングチェーンカバー53Aのモータ・ジェネレータ61側に当該油路65bに沿った膨らみ66が突出して形成されてしまい、この膨らみ66が邪魔になってモータ・ジェネレータ62をエンジン側に近づけて設置することができなかった。その結果、上記と同様に、このハイブリッド駆動装置全体の軸方向寸法の縮小化が図れなかった。
【0009】
本発明は既述の問題点に鑑みて創案されたものであり、駆動源としてエンジンおよびモータ・ジェネレータを有し、モータ・ジェネレータがクランクシャフトの反トランスミッション側に同軸上に設けられたハイブリッド車両におけるオイルポンプ構造において、タイミングチェーンカバーのモータ・ジェネレータ側に突出する裏ボスや、同側に突出する油路形成に伴う膨らみを解消することで、その分、モータ・ジェネレータをエンジン側に近づけて設置することができる、ハイブリッド車両におけるオイルポンプ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のハイブリッド車両におけるオイルポンプ構造は、モータ・ジェネレータおよびオイルポンプが、クランクシャフトの反トランスミッション側において、前記クランクシャフトと同軸上に設けられたものを前提としており、前記オイルポンプは、エンジンの反トランスミッション側に配設された、モータ・ジェネレータケースの一部を兼ねるタイミングチェーンカバーと、前記タイミングチェーンカバーの所定部位に締結されたオイルポンプカバーと、前記タイミングチェーンカバーおよび前記オイルポンプカバーの間に介設され、前記クランクシャフトの動力により駆動されるオイルポンプロータと、を備え、前記オイルポンプカバーが、前記タイミングチェーンカバーに対してモータ・ジェネレータ側に配設され
、ボルトにて、前記タイミングチェーンカバーに締結され、該ボルト用の雌ねじを形成するために必要な裏ボスが、前記タイミングチェーンカバーのエンジン側の面に凸設されたたことを特徴としている。
【0011】
かかる構成を備えるハイブリッド車両におけるオイルポンプ構造によれば、オイルポンプカバーに形成される裏ボス等の突出部がモータ・ジェネレータ側ではなく、エンジン側に形成されるので、モータ・ジェネレータをエンジン側に寄せて配置することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、裏ボス等の突出物がオイルポンプカバーのエンジン側に形成されるので、モータ・ジェネレータをエンジン側に寄せて配置することができ、その結果、ハイブリッド駆動装置全体の軸方向寸法の縮小化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両におけるオイルポンプ構造およびその周辺部を表した断面図であって、それらを上から視た図である。
【
図2】本発明の実施形態におけるタイミングチェーンカバー等をクランクシャフトの軸方向エンジン側から視た図である。但し、エンジン本体の図示は省略している。
【
図3】
図5に係るタイミングチェーンカバー等をクランクシャフトの軸方向エンジン側から視た図である。但し、エンジン本体およびオイルポンプカバーの図示は省略している。
【
図4】従来例に係るオイルポンプ等の構造例を示す断面図である。
【
図5】ハイブリッド車両におけるオイルポンプ構造およびその周辺部を表した断面図であって、それらを上から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両におけるオイルポンプ構造について説明する。本実施形態におけるハイブリッド車両は、駆動源としてエンジンおよびモータ・ジェネレータを有し、
図1に示すように、モータ・ジェネレータ1がエンジンンのクランクシャフト2の反トランスミッション側に同軸上に設けられたハイブリッド駆動装置を搭載したものである。
【0015】
図1に示すように、クランクシャフト2はエンジン本体3(シリンダブロック等)内のクランク軸受4に支持されており、当該クランクシャフト2には、モータ・ジェネレータ1のほか、クランクスプロケット5、補機類に回転動力を伝達するためのプーリ6などが回転一体に設けられている。クランクスプロケット5には、タイミングチェーン(不図示)が巻き掛けられており、タイミングチェーンを介してカムスプロケット(不図示)にクランクシャフト2の回転動力が伝達されるようになっている。なお、本明細書におけるモータ・ジェネレータ1は、詳細に図示しないが、電動機として機能するロータおよびステータのほか、電磁クラッチ、レゾルバなどを含んでいる。
【0016】
タイミングチェーンを覆うためのタイミングチェーンカバー7は、エンジン本体3に図外のボルトにより締結される。本実施形態では、タイミングチェーンカバー7は、モータ・ジェネレータ1のケースの一部を兼ねている。すなわち、タイミングチェーンカバー7は、モータカバー8とともに、モータ・ジェネレータ1の全体を覆うケースとして機能する。
【0017】
図1に示すオイルポンプ10は、タイミングチェーンカバー7において油路が形成された所定部分と、この所定部分に重ね合わせて締結されたオイルポンプカバー11と、タイミングチェーンカバー7およびオイルポンプカバー11の間に介設されたインナーロータ12およびアウターロータ13とを備えるトロコイド式オイルポンプとされている。オイルポンプカバー11は、タイミングチェーンカバー7に対してモータ・ジェネレータ1側(反エンジン側)に配設され、ボルト15にて、タイミングチェーンカバー7に締結されている。このため、上記ボルト15用の雌ねじを形成するために必要な裏ボス16は、タイミングチェーンカバー54のエンジン側の面に凸設されている。
【0018】
また、オイルフィルタ18へオイルを行き来させるための油路19は、タイミングチェーンカバー7とオイルポンプカバー11とが合わさることにより形成された油路19aと、専らタイミングチェーンカバー7内に設けられた貫通孔によって形成された油路19bとで主に構成されている。この貫通孔からなる油路19bは、タイミングチェーンカバー7とオイルポンプカバー11との合わせ面Sよりタイミングチェーンカバー7側に形成されている。
【0019】
従来例では、
図5に示したように、オイルポンプカバー52は、タイミングチェーンカバー53Aに対してエンジン側に配設され、裏ボス61がタイミングチェーンカバー53Aのモータ・ジェネレータ62側の面に凸設されていた。しかし、本実施形態では、
図1に示すように、オイルポンプカバー11は、タイミングチェーンカバー7に対してモータ・ジェネレータ1側に配設されているため、タイミングチェーンカバー7に凸設される裏ボス16は、エンジン側に突出し、かつ、タイミングチェーンの通過場所を避けた空きスペースに位置している。
【0020】
また、従来例では、
図5に示したように、オイルポンプカバー52は、タイミングチェーンカバー53Aに対してエンジン側に配設され、オイルフィルタ64への油路65bが合わせ面Sよりタイミングチェーンカバー53A側に形成されていたため、タイミングチェーンカバー53Aのモータ・ジェネレータ61側の面に当該油路65bに沿った膨らみ66が突出していた。しかし、本実施形態では、
図1に示すように、オイルポンプ10からオイルフィルタ18への油路19bは、上記合わせ面Sよりタイミングチェーンカバー7側に形成されるものの、オイルポンプカバー11が、タイミングチェーンカバー7に対してモータ・ジェネレータ1側に配設されたことで、油路19bの形成に伴って形成される膨らみ20は、タイミングチェーンカバー7のエンジン側の面に形成される。
【0021】
このように、本実施形態によれば、オイルポンプカバー7に形成される上記裏ボス16と上記膨らみ20がモータ・ジェネレータ1側ではなく、エンジン側に形成されるので、モータ・ジェネレータ1を矢印P(
図1参照)に示す方向に寄せて配置することが可能となり、クランクシャフト2およびモータ・ジェネレータ1のケース(モータカバー8およびタイミングチェーンカバー7で構成されるケース)を軸方向寸法を縮小してハイブリッド駆動装置全体の軸方向寸法を縮小することが可能となる。
【0022】
また、
図5に基づき説明した従来例では、オイルポンプカバー54が、タイミングチェーンカバー53Aとエンジン本体63とのシール面67より外側(径方向外側)まで延ばすことができなかったが、本実施形態では、
図1に示すように、オイルポンプカバー11が、タイミングチェーンカバー7に対してモータ・ジェネレータ1側に配設されたことにより、
図2に示すように、オイルポンプカバー11の一部を、タイミングチェーンカバー7とエンジン本体3とのシール面21より、外側まで延ばすことができる。さらに、タイミングチェーンカバー7の一部7aもシール面21より外側まで延ばすことで、油路19aと油路19bとの間の屈曲部19cをシール面21よりも外側に形成することができる。
【0023】
また、従来例に係る
図3に示すように、油路65は、タイミングチェーンカバー53をエンジンに取付けるボルト68の影響を受けるため(ボルト68のあるところに油路を形成できないため)、オイルフィルタ64は斜め方向に着脱するような設置位置に限定されていたが、オイルフィルタ64を斜め方向に着脱するように設置すれば、ラジエータサポートロアメンバ22等の障害物の存在により、オイルフィルタ64の着脱が困難となり、メンテナンス性が低下する場合がある。しかし、本実施形態では、
図2に示すように、油路19の屈曲部19cの位置をシール面21に制限されることなく設定でき、その結果、貫通孔からなる油路19bを上下方向にも形成することができる。これにより、オイルフィルタ18を上下方向に着脱可能に設置することができ、ラジエータサポートロアメンバ22等の障害物の存在により、オイルフィルタ18の着脱が困難となることもなく、メンテナンス性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、例えば、モータ・ジェネレータがクランクシャフトの反トランスミッション側に設けられたハイブリッド車両におけるオイルポンプの構造に適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 モータ・ジェネレータ
2 クランクシャフト
7 タイミングチェーンカバー
10 オイルポンプ
11 オイルポンプカバー
12 インナーロータ(オイルポンプロータ)
13 アウターロータ(オイルポンプロータ)