特許第5927633号(P5927633)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5927633
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F25B 43/02 20060101AFI20160519BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   F25B43/02 A
   F25B1/00 387A
   F25B1/00 396Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-244492(P2012-244492)
(22)【出願日】2012年11月6日
(65)【公開番号】特開2014-92339(P2014-92339A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】515294031
【氏名又は名称】ジョンソンコントロールズ ヒタチ エア コンディショニング テクノロジー(ホンコン)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横関 敦彦
(72)【発明者】
【氏名】中山 進
(72)【発明者】
【氏名】坪江 宏明
【審査官】 鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−083704(JP,A)
【文献】 特開2004−263995(JP,A)
【文献】 特開2011−208860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 43/00、43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内機と室外機を配管を介して接続し、冷媒を循環させる空気調和機において、
前記冷媒として、R32単独の冷媒またはR32を所定の質量パーセント以上含む混合冷媒を使用し、
前記室外機の有する圧縮機には、液冷媒と潤滑油の二層分離が生じないように所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給する、
空気調和機。
【請求項2】
前記室外機は、
前記圧縮機と、
該圧縮機の吐出側に接続され、前記圧縮機から吐出された冷媒中の油を分離して回収する油分離器と、
前記圧縮機の流入側に接続され、冷媒から液冷媒を分離して蓄積し、ガス冷媒を前記圧縮機に供給するためのアキュムレータと、
前記油分離器で分離した潤滑油を前記アキュムレータに戻すことで、前記アキュムレータ内に蓄積される液冷媒と潤滑油との混合液における潤滑油混合率を前記所定値以上に調整するための供給油量調整部と、
を備える請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記供給油量調整部により前記油分離器から前記アキュムレータに戻される潤滑油の返油率をx(x=潤滑油流量/冷媒全流量)、
前記アキュムレータから前記圧縮機に流れる混合液の比率をR(R=(液冷媒流量+潤滑油流量)/冷媒全流量)、
前記アキュムレータ内の液冷媒と潤滑油との混合液が二層に分離する限界の潤滑油混合率をn(n=潤滑油量/液冷媒量)、
前記油分離器から冷凍サイクル流れる潤滑油の循環率をy(y=潤滑油流量/冷媒全流量)としたとき、x≧n・R−yが成立する、
請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記nの値を0.4以上に設定する、
請求項3に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の冷媒としてHFC系冷媒を用い、冷凍機油として冷媒と相溶性のあるエーテル油を用いる技術は知られている(特許文献1)。また、HFC系冷媒であるR32は、圧縮機の吐出温度が従来の冷媒R410Aよりも10〜15℃高くなるため、吐出温度を抑制すべく、圧縮機入口の冷媒かわき度を0.65以上かつ0.85以下にする技術も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−325620号公報
【特許文献2】特許第3956589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HFC系冷媒であるR32は、温暖化係数GWP(Global Warming Potentia)の値が低いため、環境に優しい冷媒として期待されている。しかし、冷媒R32と潤滑油との混合特性に着目すると、潤滑油の混合率が少ない場合に相溶性が低下して、潤滑油と液冷媒との二層に分離する領域がある。
【0005】
また、冷媒R32は、圧縮機入口側の冷媒かわき度を従来の冷媒であるR410Aよりも小さくなるように制御する。したがって、R32を用いる場合、圧縮機入口側に設けられたアキュムレータ内の液冷媒と潤滑油との混合液の潤滑油混合率が小さくなる。このため、アキュムレータ内で液冷媒と潤滑油とが二層分離しやすくなって、圧縮機へ潤滑油が戻りにくくなる。これによって、圧縮機内の潤滑油が不足して、潤滑不良などが発生し、信頼性が低下する。
【0006】
従って、本発明の目的は、液冷媒と潤滑油とが二層に分離するのを抑制し、潤滑不足の発生を低減できるようにした空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明に係る空気調和機は、室内機と室外機を配管を介して接続し、冷媒を循環させる空気調和機において、冷媒として、R32単独の冷媒またはR32を所定の質量パーセント以上含む混合冷媒を使用し、室外機の有する圧縮機には、液冷媒と潤滑油の二層分離が生じないように所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給する、ようになっている。
【0008】
室外機は、圧縮機と、該圧縮機の吐出側に接続され、圧縮機から吐出された冷媒中の油を分離して回収する油分離器と、圧縮機の流入側に接続され、冷媒から液冷媒を分離して蓄積し、ガス冷媒を圧縮機に供給するためのアキュムレータと、油分離器で分離した潤滑油をアキュムレータに戻すことで、アキュムレータ内に蓄積される液冷媒と潤滑油との混合液における潤滑油混合率を所定値以上に調整するための供給油量調整部と、を備えてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液冷媒と潤滑油の二層分離の発生を抑制することができ、潤滑不足を低減して信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】空気調和機の回路構成図である。
図2】アキュムレータの縦断面図である。
図3】冷媒R32と潤滑油の混合特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、以下に詳述するように、HFC系冷媒であるR32を少なくとも所定の質量パーセント以上含む冷媒を用いる場合において、所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を圧縮機に供給する。詳しくは、圧縮機の流入側に接続されるアキュムレータに蓄積される混合液(液冷媒と潤滑油との混合液)において、潤滑油の混合率を所定値以上に調整する。アキュムレータ内の混合液における潤滑油の混合率を調整するために、圧縮機の吐出側に接続された油分離器で分離された潤滑油をアキュムレータ内に所定の条件を満たすようにして戻す。ここで、本実施形態では、R32を70質量パーセント以上含む混合冷媒を使用する。R32の比率が70質量パーセント以上になると、GWPの値、吸入湿り、油との相溶性などの特性がR32と同等になるためである。
【0012】
本実施形態によれば、アキュムレータ内の冷媒R32と潤滑油との混合液における潤滑油の混合率を調整することで、アキュムレータ内において液冷媒と潤滑油とが二層分離するのを抑制することができる。この結果、アキュムレータから圧縮機に供給される冷媒中に含まれる潤滑油の量を増加させて、圧縮機内で潤滑油が不足する事態の発生を低減でき、圧縮機および空気調和機の信頼性を向上することができる。
【実施例1】
【0013】
図1図3を用いて実施例を説明する。図1は、本実施例に係る空気調和機1の冷凍サイクルの構成例を示す。
【0014】
空気調和機1の有する冷凍サイクルは、少なくとも一つの室外機100と、少なくとも一つの室内機200とを備える。図1では、複数の室内機200A,200Bを示すが、特に区別しない場合は、室内機200と呼ぶ。図1では、一つの室外機100と2つの室内機200とを接続する例を示すが、これに限らず、2つ以上の室外機100と3つ以上の室内機200とを接続する構成でもよい。
【0015】
室外機100は、例えば、室外熱交換器101、室外ファン102、室外膨張弁103、圧縮機104、アキュムレータ105、オイルセパレータ106、返油キャピラリ107、四方弁108、過冷却熱交換器109、過冷却バイパス膨張弁110および各配管112〜117を含んで構成されている。
【0016】
室内機200は、例えば、室内熱交換器201、室内ファン202、室内膨張弁203を含んで構成されている。室外機100と室内機200とは、液配管121とガス配管302で接続されている。
【0017】
ここで、本実施例では、R32だけから構成される冷媒、または、R32を70質量パーセント以上含む混合冷媒を使用する。次に動作を説明する。
【0018】
圧縮機104は、例えばクランクケースと、クランクケース内に設けられる圧縮機本体(いずれも図示せず)とを備え、クランクケースの底部側には潤滑油が蓄積される。圧縮機本体による圧縮動作中に、クランクケース内の潤滑油がポンプ作用で吸い上げられて、潤滑の必要な箇所に供給される。潤滑油の一部は、冷媒と一緒に吐出配管112に吐出される。
【0019】
圧縮機104には、アキュムレータ105から配管117を介して、低圧ガス状の冷媒が流入する。圧縮機104は冷媒を圧縮することで、高温で高圧のガス状冷媒を吐出口から吐出する。圧縮機104の吐出口から配管112内に吐出された高圧ガス状の冷媒は、配管112を介して「油分離器」としてのオイルセパレータ106に流入する。圧縮機104から吐出される高温で高圧のガス状冷媒には、潤滑油が混じっている。
【0020】
オイルセパレータ106は、高圧ガス状の冷媒に含まれる潤滑油を回収し、回収した潤滑油を返油キャピラリ107および配管116を介してアキュムレータ105に戻す。配管116は、四方弁108の圧縮機流入口側のポートとアキュムレータ105の流入口を接続するための管路である。「供給油量調整部」の例である返油キャピラリ107は、オイルセパレータ106からアキュムレータ105に戻される潤滑油の流量および圧力を調整するための装置である。
【0021】
四方弁108は、高圧ガス状の冷媒を室外熱交換器101に導くか、それとも室外機200内の室内熱交換器201に導くかを切り替えるための方向切替弁である。四方弁108は、冷房運転時には、図1中の矢印線Cの方向に高圧ガス状の冷媒を流す。高圧ガス状の冷媒は、四方弁108の室外熱交換器側ポートと室外熱交換器101の入口側とを接続する配管113を介して、凝縮器として働く室外熱交換器101に流入する。
【0022】
高温高圧のガス状冷媒は、室外熱交換器101を通過する間に、室外ファン102によって送られた室外空気と熱交換して凝縮し、高温高圧の液状冷媒(液冷媒)となる。高温で高圧の液冷媒は、室外熱交換器101の出口側に接続された配管114を介して、室外膨張弁103に流入する。室外膨張弁103から流れ出た低圧の液冷媒は分岐し、その一部の液冷媒は過冷却バイパス膨張弁110に流入する。他の液冷媒は、過冷却熱交換器109を介してさらに冷却されて、配管301に流れ込む。配管301は、室外機100の熱交換器101と室内機200の熱交換器201とを接続する配管である。
【0023】
過冷却バイパス膨張弁110へ流れ込んだ液冷媒は、過冷却バイパス膨張弁110で減圧されて、過冷却熱交換器109に流入する。過冷却熱交換器109に流入した液冷媒は、過冷却熱交換器109を通過する間に、他の液冷媒と熱交換して蒸発し、低圧ガス状の冷媒となる。低圧ガス状の冷媒は、配管116に接続される戻し管路115を介して、アキュムレータ105に流れ込む。
【0024】
室内機200へ送られた低圧の液冷媒は、室内膨張弁203で減圧されて、室内熱交換器201に流入する。室内熱交換器201に流入した低圧の液冷媒は、室内熱交換器201を通過する間に室内ファン202によって送られた室内空気と熱交換して蒸発し、ガス状の冷媒(ガス冷媒)となる。
【0025】
低圧の液冷媒が室内熱交換器201内で気化するときに、室内の空気が冷却されて、室内が冷房される。室内熱交換器201から流れ出たガス冷媒は、ガス配管302を介して室外機100に送られる。
【0026】
室外機100に入ったガス冷媒は、四方弁108および配管116を通って、アキュムレータ105に流入する。アキュムレータ105は、蒸発しなかった液冷媒を蓄積することで、液冷媒が圧縮機104に流入するのを阻止する。圧縮機104が液冷媒を圧縮すると、圧縮機104の部品が破損等する可能性があるためである。
【0027】
アキュムレータ105には、ガス状の冷媒、液冷媒、オイルセパレータ106から戻される潤滑油が流入する。アキュムレータ105内でガス冷媒と潤滑油とは混合し、圧縮機104に送られる。液冷媒は、アキュムレータ105に滞留する。
【0028】
暖房運転時の動作を説明する。暖房運転時の冷媒の流れを矢印線Hで示す。圧縮機104から吐出した高温高圧のガス冷媒は、オイルセパレータ106で潤滑油が分離された後、四方弁108を通ってガス配管302へ送られる。オイルセパレータ106で分離された潤滑油は、返油キャピラリ107を通ってアキュムレータ105へ送られる。
【0029】
室外機100からの高温高圧のガス冷媒は、ガス配管302を介して室内機200へ送られる。室内機200へ入った高温のガス冷媒は、室内熱交換器201内を流れる間に、室内ファン202によって送られた室内空気と熱交換して凝縮し、液冷媒となる。液冷媒は、室内膨張弁203を通って室内機200から出る。室内熱交換器200で高温高圧のガス冷媒と室内空気が熱交換することによって、暖房が行われる。
【0030】
室内機200を出た液冷媒は、液配管301を介して室外機100へ流れる。室外機100へ入った液冷媒は室外膨張弁103を通過後、2つに分岐する。一部の液冷媒は過冷却バイパス膨張弁110へ流れ、配管115,116を介してアキュムレータ105に送られる。
【0031】
他の液冷媒は室外膨張弁103で減圧された後、室外熱交換器101に流入する。室外熱交換器101に流入した液冷媒は、室外熱交換器101を流れる間に、室外ファン102によって送られた室外空気と熱交換して蒸発し、ガス冷媒になる。ガス冷媒は、四方弁108を通り、配管116を介してアキュムレータ105に流入する。アキュムレータ105には、上述の通り、ガス冷媒と潤滑油が流入して混合し、潤滑油の溶け込んだガス冷媒が圧縮機104に送られる。
【0032】
図2は、図1の冷凍サイクルの室外機100に示すアキュムレータ105を示すものである。
【0033】
アキュムレータ105内には、導入用の配管116(導入管)と導出用の配管117(導出管)とが挿入されて取り付けられている。導入管116は、ガス冷媒および/または潤滑油をアキュムレータ105内に導入するための配管である。
【0034】
導出管117は、先端側が略U字状となっており、アキュムレータ105から潤滑油の混合したガス冷媒を圧縮機104に送るための配管である。導出管117は、そのU字状の湾曲部がアキュムレータ105の底部側に位置するようにして取り付けられる。これにより、導出管117のU字状湾曲部は、アキュムレータ105に蓄積された液冷媒に浸される。
【0035】
導出管117のU字状湾曲部には、第1の液戻し口121Aが形成されている。さらに、導出管117には、第1の液戻し口121Aよりも上側に位置して、第2の液戻し口121Bが形成されている。導出管117の上側には、アキュムレータ105内の上側に位置して、導出管117内の圧力を調整するための均圧穴122が形成されている。
【0036】
導入管116からアキュムレータ105内に流入した冷媒と潤滑油は、液とガスとに分離する。ガス冷媒は、導出管117を介して圧縮機104に送られる。ガス冷媒の流通により、第1の液戻し口121Aから導出管117内に液が吸い込まれて、所定の液混合率でアキュムレータ105から圧縮機104へ送られる。
【0037】
アキュムレータ105の液面が第2の液戻し口121Bよりも上に位置すると、第2の液戻し口121Bからも液が吸い込まれて、液混合率が増加する。液混合率は、2つの液戻し口121A,121Bの穴径と、均圧穴122の穴径とによって調整される。
【0038】
ここで、本実施例では、冷媒を従来のR410Aから温暖化係数のより小さいR32に変更している。R32を冷媒として用いると、圧縮機104の吐出温度が10〜15℃高くなる。本実施例では、吐出温度の上昇を抑制するために、圧縮機104の入り口かわき度を従来よりも小さく設定する。
【0039】
そのために、本実施例のアキュムレータ105は、液冷媒を従来冷媒R410Aより多く蓄積する。アキュムレータ105が従来よりも多くの液冷媒を蓄積すると、アキュムレータ105内の下部に溜まる混合液における潤滑油混合率が小さくなる。
【0040】
図3は、冷媒としてR32を用いた場合の、冷媒と潤滑油の混合特性を示す。冷媒R32において、潤滑油の混合比率が40%以下になると、低温域で液冷媒と潤滑油との二層分離域が現れる。つまり、アキュムレータ105の下側に液冷媒が溜まり、液冷媒の層の上に潤滑油の層ができる。
【0041】
二層分離域の条件が成立すると、アキュムレータ105の下側で混合液が液冷媒と潤滑油とに分離する。潤滑油の密度が液冷媒の密度よりも小さければ、潤滑油が上側に浮くことになる。潤滑油が液冷媒の上側に浮くと、第1の液戻し口121Aから導出管117内に潤滑油が吸い込まれなくなり、圧縮機104に供給される潤滑油の量が低下する。圧縮機104に送られる潤滑油の量が少なくなると、潤滑不良などの問題を生じて信頼性が低下する可能性がある。
【0042】
そこで、本実施例では、オイルセパレータ106で回収した潤滑油が所定量以上、アキュムレータ105に戻るように、返油キャピラリ107の形状(管路面積、管路長など)を設定する。その調整方法を以下に示す。
【0043】
アキュムレータ105から圧縮機104へ流れる液比率をR(=(冷媒液流量+潤滑油流量)/(冷媒全流量)、アキュムレータ105内の液冷媒と潤滑油との混合液の二層分離限界(混合液の溶解域と分離域との境界)の潤滑油混合率をn(=潤滑油量/冷媒液量)、返油キャピラリ107を流れる潤滑油返油率x(=潤滑油流量/冷媒全流量)、オイルセパレータ106から冷凍サイクルへ流れる潤滑油循環率y(=潤滑油流量/冷媒全流量)とする。
【0044】
返油キャピラリ107を流れる潤滑油返油率xは、下記(1)式で求められる。
x≧n×R−y・・・(1)
【0045】
図3に示す特性の場合、潤滑油の混合比率を40%(n=0.4)以上、好ましくは50%(n=0.5)以上にすれば、二層分離の発生を抑制できると考えられる。そこで、上記の(2)式は、
x≧0.5×R−y・・・(2)
となる。
【0046】
なお、アキュムレータ105から圧縮機104に流れる液比率Rは、アキュムレータ105の導出管117の液戻し口121A、121Bの穴径と均圧穴122の穴径とによって調整される。また、オイルセパレータ106から冷凍サイクルへ流れる潤滑油循環率yは、圧縮機104とオイルセパレータ106の特性によって決まる。
【0047】
このように冷媒としてR32を使用すると、アキュムレータ105に蓄積する液冷媒量を増加させる必要があり、その結果、潤滑油混合率が低下する。しかし、本実施例では、オイルセパレータ106で回収した潤滑油を、従来よりも多くアキュムレータ105に戻すため、アキュムレータ105内の潤滑油混合率を所定値(40%以上、好ましくは50%以上)に高めることができる。したがって、本実施例によれば、アキュムレータ105内で二層分離域の発生条件が成立するのを阻止して、液冷媒と潤滑油が分離するのを抑制し、圧縮機104に十分な潤滑油を送り込むことができる。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。例えば、オイルセパレータからアキュムレータに潤滑油を戻す手段は、返油キャピラリに限定されず、他の手段を用いてもよい。また、本発明は、例えば「空気調和機に使用される室外機であって、冷媒として、R32単独の冷媒またはR32を所定の質量パーセント以上含む混合冷媒を使用し、圧縮機には、液冷媒と潤滑油の二層分離が生じないように所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給する、空気調和機用の室外機。」として表現することもできる。
【符号の説明】
【0049】
1:空気調和機、100:室外機、101:室外熱交換器、103:室外膨張弁、104:圧縮機、105:アキュムレータ、106:オイルセパレータ、107:返油キャピラリ、108:四方弁、109:過冷却熱交換器
図1
図2
図3