特許第5927679号(P5927679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5927679
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】ALDコーティングシステム
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20160519BHJP
   H01L 21/31 20060101ALN20160519BHJP
【FI】
   C23C16/455
   !H01L21/31 B
【請求項の数】22
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2013-534022(P2013-534022)
(86)(22)【出願日】2011年10月14日
(65)【公表番号】特表2013-544965(P2013-544965A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】US2011056268
(87)【国際公開番号】WO2012051485
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2014年10月10日
(31)【優先権主張番号】61/455,772
(32)【優先日】2010年10月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/466,885
(32)【優先日】2011年3月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/455,223
(32)【優先日】2010年10月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500509313
【氏名又は名称】ウルトラテック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジェイ・サーシェン
(72)【発明者】
【氏名】ガネシュ・エム・サンダラム
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー・アール・クウトゥ
(72)【発明者】
【氏名】ジル・スヴェーニャ・ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ジェイ・ダルバース
【審査官】 吉野 涼
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−515821(JP,A)
【文献】 特開2000−309869(JP,A)
【文献】 特開2004−235660(JP,A)
【文献】 特開2005−116900(JP,A)
【文献】 特開2004−072085(JP,A)
【文献】 特開平11−335868(JP,A)
【文献】 特表2009−540122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材のコーティング表面に層を堆積させる方法であって、
デポジションエンクロージュアを提供することであって、前記デポジションエンクロージュアは、その側壁を通過するアクセスポートと、前記デポジションエンクロージュア内に配置されるデポジションヘッドとを含み、前記デポジションヘッドが、第1のプリカーサノズルアセンブリと第2のプリカーサノズルアセンブリとを有するユニットセルを含む、デポジションエンクロージュアを提供すること、
前記デポジションエンクロージュア内に前記基材を提供すること、
前記第1のプリカーサノズルアセンブリから前記コーティング表面に対して実質的に垂直な方向に第1のプリカーサを放出すること、
前記第2のプリカーサノズルアセンブリから前記コーティング表面に対して実質的に垂直な方向に第2のプリカーサを放出すること、
前記アクセスポートを通して前記デポジションエンクロージュアの内部に不活性ガスのフローをポンピングすることによって、前記デポジションエンクロージュアの内部で加圧状態を維持すること、
前記コーティング表面の第1の領域に前記第1のプリカーサを向かわせた後に前記コーティング表面の前記第1の領域に前記第2のプリカーサを向かわせるように前記デポジションヘッドと前記基材とを相対的に移動させること
を含む、方法。
【請求項2】
前記ユニットセルは、前記第1のプリカーサノズルアセンブリと前記第2のプリカーサノズルアセンブリとの間に配置される不活性ガスノズルアセンブリを有し、前記方法は、前記不活性ガスノズルアセンブリから前記コーティング表面に実質的に垂直な方向に不活性ガスを放出することであって、前記第1のプリカーサが前記第2のプリカーサと混合するのを実質的に防止するバッファゾーンを形成するように前記不活性ガスを向かわせることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ユニットセルが、前記第1のプリカーサノズルアセンブリと前記不活性ガスノズルアセンブリとの間に配置される第1のエグゾーストチャネルと、前記第2のプリカーサノズルアセンブリと前記不活性ガスノズルアセンブリとの間に配置される第2のエグゾーストチャネルとを含み、前記方法は、第1のエグゾーストチャネルを通して、未反応の第1のプリカーサおよび反応副生成物の一方を除去することと、前記第2のエグゾーストチャネルを通して、未反応の第2のプリカーサおよび反応副生成物の一方を除去することとを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のプリカーサおよび前記第2のプリカーサが同時に放出される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コーティング表面の上方において、前記デポジションヘッドを横方向に移動させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記デポジションヘッドの下方において、前記基材を横方向に移動させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記デポジションヘッドが、前記コーティング表面から0.5〜5mmの距離で離れている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のプリカーサが、前記コーティング表面と反応して、化学的に改変された表面を形成し、前記第2のプリカーサが、前記化学的に改変された表面と反応して、固体の物質層を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記デポジションヘッドが複数のユニットセルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記デポジションヘッドが静止していて、前記相対的な移動が、前記基材のコーティング表面を移動させて10〜35m/分の範囲の速度で前記デポジションヘッドを通過させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
デポジションシステムであって、
デポジションエンクロージュアであり、その側壁を通過するアクセスポートを含む、デポジションエンクロージュアと、
前記デポジションエンクロージュア内に配置され、第1のプリカーサノズルアセンブリと第2のプリカーサノズルアセンブリとを有するユニットセルを含むデポジションヘッドであって、前記第1のプリカーサノズルアセンブリが、前記デポジションエンクロージュア内に基材があるとき、前記基材のコーティング表面に対して実質的に垂直な方向に第1のプリカーサを放出するように構成および配置され、前記第2のプリカーサノズルアセンブリが、前記コーティング表面に対して実質的に垂直な方向に第2のプリカーサを放出するように構成および配置される、デポジションヘッドと、
前記アクセスポートに接続される不活性ガスの供給源であり、前記アクセスポートを通して前記デポジションエンクロージュアの内部に不活性ガスを加圧状態までポンピングするように当該システムが構成される、不活性ガスの供給源と、
前記デポジションヘッドおよび/または前記基材と協同するアクチュエータであって、前記デポジションヘッドと前記基材との間で相対的な運動を発生させて、前記コーティング表面の第1の領域を前記第1のプリカーサに曝露させた後、前記コーティング表面の前記第1の領域を前記第2のプリカーサに曝露させるように構成されるアクチュエータと
を含む、デポジションシステム。
【請求項12】
前記ユニットセルが、前記第1のプリカーサノズルアセンブリと前記第2のプリカーサノズルアセンブリとの間に配置される不活性ガスノズルアセンブリを有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ユニットセルが、前記第1のプリカーサノズルアセンブリと前記不活性ガスノズルアセンブリとの間に配置される第1のエグゾーストチャネルと、前記第2のプリカーサノズルアセンブリと前記不活性ガスノズルアセンブリとの間に配置される第2のエグゾーストチャネルとを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1のエグゾーストチャネルが、前記第2のエグゾーストチャネルと分離されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記アクチュエータが、前記基材と協同する機械的な直線変位機構を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記デポジションヘッドが静止しており、これに対して、前記基材と協同する前記機械的な直線変位機構が、前記基材を進行させて3〜35メートル/分の範囲の速度で前記デポジションヘッドを通過させる、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記ユニットセルが、0.7〜1.5mmの範囲のチャネル幅を有するように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
前記デポジションシステムが、5〜50msecの範囲のドウェル時間で作動するように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
前記デポジションヘッドが、前記コーティング表面から0.5〜5mmの距離で離れている、請求項11に記載のシステム。
【請求項20】
各ノズルアセンブリが、プリカーサオリフィスプレートを含み、前記プリカーサオリフィスプレートは、該プリカーサオリフィスプレートを貫通する1以上のオリフィスを含み、前記1以上のオリフィスからガスが出る位置が、前記コーティング表面から、0.5〜5mmの距離で離れている、請求項12に記載のシステム。
【請求項21】
前記第1のプリカーサノズルアセンブリ、前記第2のプリカーサノズルアセンブリおよび前記不活性ガスノズルアセンブリが、それぞれ、プリカーサオリフィスプレートを含み、前記プリカーサオリフィスプレートが、前記コーティング表面に対して垂直な軸線に沿って該プリカーサオリフィスプレートを貫通する1以上のオリフィスを含み、前記プリカーサオリフィスプレートが、加圧されたガスで満たされたチャンバを大気の条件から分離し、前記1以上のオリフィスの各々は、前記加圧されたガスで満たされたチャンバから出るガスのフローを絞るような寸法とされている、請求項12に記載のシステム。
【請求項22】
前記デポジションヘッドが複数のユニットセルを含む、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1 関連米国特許出願の相互参照
本願は、35 U.S.C.119(e)のもと、2010年10月16日に出願されたタイトルが「Application of ALD Coatings to a Moving Substrate at Atmospheric Pressure」の仮出願番号61/455,223、さらに、2010年10月26日に出願されたタイトルが「Apparatus for Applying ALD Coatings to a Moving Substrate」の仮出願番号61/455,772、さらに、2011年3月23日に出願されたタイトルが「ALD Coating System」の仮出願番号61/466885に基づいて、優先権を主張するものであり、これらの全ては、その全体が本明細書中に参照により援用される。
【0002】
2 著作権についての注意
この特許文書の開示の一部は、著作権による保護の対象となるものを含み得る。著作権者は、この特許文書のいかなる者によるファクシミリによる複製または特許の開示について反対するものではない。なぜなら、このことは、特許商標庁における特許のファイルまたは記録において明らかであるからである。しかし、それら以外については、すべての著作権を全て留保する。以下の注意書き「Copyright 2011,Cambridge Nanotech,Inc.」は、この文書にも適用されるべきである。
【背景技術】
【0003】
3 発明の背景
3.1.1 発明の分野
本発明は、ガスデポジション(又はガス堆積)のための方法および装置に関する。より詳細には、本発明は、大気圧で実施される原子層堆積(又はアトミックレイヤーデポジション)(ALD)によって、移動する基材上に複数の薄膜の物質層(又は材料層もしくはマテリアル層)を付与するのに適した装置および方法に関する。
【0004】
3.1.2 関連技術の説明
ALDコーティング法を使用して、大気圧で、移動する基材をコーティングするシステムは公知であり、特許文献1(米国特許第7413982号)(Levyら、タイトル「PROCESS FOR ATOMIC LAYER DEPOSITION」)およびLevyらによる関連の開示物に開示されている。Levyらは、図2および5において、3つのガスインレットポートを有するガス分配マニホールドを開示し、これらは、その中に、第1のプリカーサ(又は第1の前駆体)ガス、第2のプリカーサ(又は第2の前駆体)ガスおよび不活性ガスを受容するためのものである。この分配マニホールドは、複数のアウトプットチャネルを有するアウトプット面とともに形成され、第1のアウトプットチャネルは、そこから、第1のプリカーサガスを放出し、第2のアウトプットチャネルは、そこから、第2のプリカーサガスを放出し、そして、第3のアウトプットチャネルは、そこから、不活性ガスを放出するものであり、第3のアウトプットチャネルは、第1のアウトプットチャネルと第2のアウトプットチャネルとの間にそれぞれ配置されているものである。このアウトプット面は、基材のコーティング表面に対向して配置され、距離Dだけ基材のコーティング表面から離れて均一に間隔を開けて配置されていて、そうすることで、各アウトプットチャネルは、距離Dだけコーティング表面から離れている。このアウトプットチャネルは、パーティションで分けられていて、このパーティションは、隣接するアウトプットチャネルで共有されている。このパーティションは、実質的には、対向するパーティションによって規定されるチャネルへとガスフローを制限する。ガスは、各アウトプットチャネルへと送達され、基材のコーティング表面と平行の方向に向けられ、このパーティションと、基材のコーティング表面とによって制限されて、アウトプットチャネル内に流される。
【0005】
操作において、この分配マニホールドおよび/または基材は、互いに相対的に移動させられる。この相対運動の方向は、アウトプットチャネルのガスフローの方向に対して、垂直方向である。この相対運動は、経時的に、各アウトプットチャネルをコーティング表面の上方に進める。従って、このコーティング表面を、まず、第1のアウトプットチャネルを通して流れてくる第1のプリカーサに曝露させる。このコーティング表面を第1のプリカーサに曝露させる期間の間に、第1のプリカーサを、基材のコーティング表面と反応させて、コーティング表面を変質させ、そして、反応副生成物が生じる。このコーティング表面を、次に、不活性ガスアウトプットチャネルを通して流れてくる不活性ガスに曝露させる。Levyらの図7Aおよび7Bに示されるように、この不活性ガスチャネルは、未反応の第1のプリカーサと反応副生成物とをコーティング表面から除去し、その流れ(アウトフロー)をエグゾーストポートに運ぶ。次に、このコーティング表面を、第2のアウトプットチャネルを通して流れてくる第2のプリカーサガスに曝露させる。このコーティング表面を第2のプリカーサに曝露させる期間の間に、第2のプリカーサを、基材のコーティング表面と反応させて、その上側に薄膜の固体(又は中実)のコーティングを形成し、そして、反応副生成物が生じる。次に、このコーティング表面を、不活性ガスアウトプットチャネルを通して流れる第2の不活性ガスに曝露させて、これにより、未反応の第2のプリカーサと反応副生成物とをこのコーティング表面から除去する。
【0006】
混合したプリカーサガスが、互いと容易に反応すること、およびそれらが接触することとなるほとんどの表面と容易に反応すること、ならびに、混合したプリカーサが、その上側で固体(又は中実)の物質層を形成することによって、その表面を汚染することは周知である。基材のコーティング表面を、混合されたプリカーサが汚染する場合、その物理的な特性および化学的な特性が、その表面が汚染されていることを示す目に見える非常に小さな兆候によって妥協され得る。Levyらによって開示された分配マニホールドの場合、混合されたプリカーサは、この不活性ガスチャネル中において、分配マニホールドの表面およびこのエグゾーストシステムの他の表面(ポンプバルブならびにその流れ(又はアウトフロー)と接触することになるセンサなど)を汚染し得る。混合されたプリカーサとの接触から生じる表面汚染は、通常は、性能の低下およびその結果として起こる故障をもたらす。
【0007】
Levyらにより開示された分配マニホールドに関する1つの問題は、コーティング表面と、分配マニホールドの外表面(又はアウトプット面)との間の分離距離Dが必ず小さいことである。特に、Levyらは、約0.025mm、すなわち25μmの分離Dが有利であることを開示する。なぜなら、それにより、分配ヘッドとコーティング表面との間のチャネルパーティションの周囲にプリカーサガスが流れるのを防止して、それによって、例えば不活性ガスチャネル内において、異なるプリカーサが一緒に混合されるのを防止するからである。さらに、Levyらは、図8Aおよび8Bにおいて、小さな距離Dは、有利には、プリカーサのコーティング表面との反応時間を減らすことを開示する。なぜなら、プリカーサがこのコーティング表面へとさらに迅速に到達するからである。しかし、本出願人は、小さな分離距離Dは、典型的なコーティングの付与においては実用的でないことを見出している。なぜなら、コーティングされる多くの基材の材料が、25μm(Levyらにより推奨される分離距離)を超える表面の変動を有するからである。特に、基材の厚み、基材を支持する構成要素(又はエレメント)の形状およびマニホールド自体における変動は、容易に25μmを超え得る。その結果として、所望のコーティング速度でコーティング表面が分配マニホールドを通過する移動の間に、コーティング表面と分配マニホールドとの間での接触が容易に起こり得、望ましくないコーティング表面および基材の損傷が生じる。
【0008】
Levyらは、この小さな分離Dが、特許文献2(米国特許第6821563号)(Yudovsky、タイトル「GAS DISTRIBUTION SYSTEM FOR CYCLICAL LAYER DEPOSITION」)に開示の従来のガスデポジションシステムにおける改良であると主張するが、Yudovskyのシステムは、500μmまたはそれ以上の分離距離を使用する。これは、移動する表面のコーティングにおいてさらに実用的な分離である。
【0009】
Yudovskyは、図1において、循環式のレイヤーデポジションシステム(又は層堆積システム)を開示し、このシステムは、密閉(又はシール)された処理チャンバを含み、このチャンバは、コーティングサイクルの間において、大気圧未満で維持される。このシステムは、ガス分配マニホールドを含み、このガス分配マニホールドは、処理チャンバの内側の固定された位置に支持されている。このシステムは、シャトルを含み、このシャトルは、コーティングされる基材を支持し、かつこの基材を輸送するものであり、これは、基材は、直線運動でガス分配マニホールドを通過する。この分配マニホールドは、第1のガスポートと、第2のプリカーサポートと、パージポートと、バキュームポートとを含む。第1のガスポートは、第1のプリカーサ供給(源)に接続されるものであり、これは、その中で第1のプリカーサガスを受容するためにある。第2のプリカーサポートは、第2のプリカーサガス供給(源)に接続されるものであり、これは、その中で第2のプリカーサガスを受容するためにある。パージポートは、不活性ガス供給(源)に接続されるものであり、これは、その中で不活性ガスを受容するためにある。バキュームポートは、バキュームシステムに接続されるものであり、これは、処理チャンバからガスを除去するためにある。ガスポートは、各プリカーサポートと整列され、かつパージポートと整列されるものであり、かかるプリカーサポートは、対向するポンプポートの側に配置されるものであり、かかるパージガスポートは、対向する第1のプリカーサポートと第2のプリカーサポートとの間に配置されるものである。
【0010】
各ガスポートは、隣接するガスポート同士がパーティションで分離されている。このパーティションは、基材のコーティング表面近くまで延び、隣接するガスポートからガス流を分離し、コーティング表面の方向に向けてガス流を向かわせる。各ガスポートは、コーティング表面に面する開口端部を有し、そうすることで、ガスポートから出るガスがコーティング表面に衝突して、プリカーサガスの場合のように、コーティング表面と反応するか、あるいは、パージポートから出る不活性ガスの場合のように、コーティング表面からプリカーサをパージする。各パーティションの下方の端部は、約500μmまたはそれ以上の分離スペースによって、コーティング表面から分離されていて、これにより、隣接するバキュームポートに対して、パーティションの下方の端部の周囲においてプリカーサポートから出るガス流が流れるのを可能にする。
【0011】
Yudovskyによって開示されるガス分配マニホールドは、各パーティションの下方の端部とコーティング表面との間において、さらに実用的な分離距離を提供するが、Yudovskyは、他の欠点を被る。特に、Yudovskyは、処理チャンバが密封(シール)され、減圧下または少なくとも大気圧よりも低い圧力下において、コーティング処理(またはプロセス)が実施されることを要求する。これは、ロードロックチャンバとこの処理チャンバとの間で輸送される基板の各コーティングサイクルの開始時および終了時のローディング(装填)およびアンローディング(脱離)を複雑にし、なおかつ、これによって、実質的にコーティングのサイクル時間が増加する。さらに、Yudovskyは、往復直線運動によって基材が移動して分配マニホールドを通過すること、あるいは、各ウエハが回転してガス分配マニホールドを通過することを要求する(図3および5を参照のこと)。これは、さらに、直線往復の場合には2つの直線運動の方向を要求することによって、あるいは、回転移動の場合にはウエハのローディング(装填)およびアンローディング(脱離)を要求することによって、処理(又はプロセス)のサイクル時間が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第7413982号
【特許文献2】米国特許第6821563号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
当該分野では、既存のALDコーティングのケミストリ(又は化学物質)によって簡便に提供され得るコーティングによって、ウェブまたはロールあるいは基材材料のウェブをコーティングする必要がある。さらに、このようなコーティングを大気圧で適用して、バキュームチャンバ内で基材をコーティングする際の高コストおよび煩雑さを回避し、バキュームチャンバまたは密封(シール)されたチャンバへの基材のローディング(装填)およびそこからの基材のアンローディング(脱離)に付随して増加するサイクル時間を回避することが望ましい。Levyらは、大気圧でのALDコーティング用のシステムを開示するが、Levyらによって開示されるシステムには、基材のコーティング表面と、ガスフローチャネルを形成するために使用されるパーティションの下方の端部との間において、小さな分離距離(25μm以下)が必要であり、この分離距離のより多くの変動性を必要とする多くの用途において、25μmの分離距離は実用的ではない。1つの問題は、コーティングされるいくつかの材料の厚みが25μmを超えて変動し得ることである。別の問題は、輸送の駆動力に起因する材料の伸張(又は延長)および位置の変動によって、この分離距離が25μmを超えて変動され得ることである。なぜなら、この材料がこのガス分配マニホールドを通過して進められるからである。このことは、ウェブの移動速度がこの発明のシステムおよび方法によって実現可能な速度の範囲である0.5〜20m/秒に到達するので、特に問題である。従って、当該分野において、基材とガスマニホールドとの分離距離が500μm〜3mmまたはそれ以上の範囲内である信頼性のあるコーティングALD特性を与えて、変動する材料の厚みに起因する分離距離の変動を受け入れることができ、さらに、材料輸送機構によってもたらされる材料の伸張(又は延長)および移動に起因する分離距離のダイナミックな変化を受け入れることができるシステムおよび方法を提供する必要がある。
【0014】
より一般には、ALDのコーティング速度(例えば、m/分で測定される速度)を増加させる必要がある。本発明は、大気圧でのALDコーティング用の改良されたシステムおよび方法を提供することによって上記の必要性を扱い、それによって、処理チャンバのロード(装填)およびアンロード(脱離)のサイクル時間を排除し、そして、従来のALDコーティングシステムにおいて使用される密封(シール)チャンバに関連するポンプダウンおよびパージサイクル(cayle)の時間を排除する。さらに、本発明は、ユニットセルの寸法を最適化することによって、そして、所望の基材速度で完全な飽和をもたらす基材へのガス容量の送達を最適化することによって、1分あたりのコーティング速度を増加させる。
【0015】
さらに、増加した基材速度で基材表面のより迅速な飽和を達成する必要がある。本発明は、各ガスチャネルに曝される基材の領域にわたって、より迅速かつより均一な処理ガスの送達および除去を提供することによって、上記の必要性を扱う。
【0016】
ALDプロセスを使用してコーティングされる基材表面の飽和を達成するために使用されるケミストリ(又は化学物質)の容量を低減するというさらなる必要性がある。本発明は、ユニットセルの寸法を最適化することによって、および所望の基材輸送速度に従って、基材へのガス容量の送達を最適化することによって第1の曝露の間に使用されるケミストリ(又は化学物質)の容量を減らすことによって、ならびにパージサイクルの間に除去される異種プリカーサを分離および回収して未反応のプリカーサを再使用する機会を提供することによって、上記の必要性を扱う。基材表面に近い反応ゾーン。
【課題を解決するための手段】
【0017】
4 発明の要旨
本明細書中には、コーティング表面に層を堆積させる方法および装置が記載される。
【0018】
1つの形態では、基材のコーティング表面に層を堆積(又はデポジション)させる方法が提供される。この方法は、
第1のプリカーサノズルアセンブリと第2のプリカーサノズルアセンブリとを有するユニットセルを含むデポジションヘッド(又は堆積ヘッド)を提供すること、
前記第1のプリカーサノズルアセンブリから前記コーティング表面に対して実質的に垂直な方向に第1のプリカーサ(又は第1の前駆体)を大気の条件に放出すること、および
前記第2のプリカーサノズルアセンブリから前記コーティング表面に対して実質的に垂直な方向に第2のプリカーサ(又は第2の前駆体)を大気の条件に放出すること
を含む。
この方法は、さらに、
前記コーティング表面の第1の領域に前記第1のプリカーサを向かわせた後に前記コーティング表面の前記第1の領域に前記第2のプリカーサを向かわせるように前記デポジションヘッドと前記基材とを相対的に移動させること
を含む。
【0019】
1つの形態においては、デポジションシステム(又は堆積システム)が提供される。このシステムは、コーティング表面を含む基材と;第1のプリカーサノズルアセンブリおよび第2のプリカーサノズルアセンブリを有するユニットセルを含むデポジションヘッドとを含む。前記第1のプリカーサノズルアセンブリは、前記コーティング表面に対して実質的に垂直な方向に第1のプリカーサを大気の条件に放出するように構成および配置され、そして、前記第2のプリカーサノズルアセンブリは、前記コーティング表面に対して実質的に垂直な方向に第2のプリカーサを大気の条件に放出するように構成および配置されている。このシステムは、さらに、前記デポジションヘッドおよび/または前記基材と協同(又は関連)するアクチュエータを含む。前記アクチュエータは、前記デポジションヘッドと前記基材との間で相対的な運動(又は移動)を発生させて、前記コーティング表面の第1の領域を前記第1のプリカーサに曝露させた後、前記コーティング表面の前記第1の領域を前記第2のプリカーサに曝露させるように構成されている。
【0020】
1つの形態においては、デポジションヘッド(又は堆積ヘッド)が提供される。このデポジションヘッドは、複数の第1のプリカーサノズルアセンブリと;複数の第2のプリカーサノズルアセンブリと;前記第1のプリカーサノズルアセンブリと前記第2のプリカーサノズルアセンブリとの間にそれぞれ配置される複数の不活性ガスノズルアセンブリとを含む。このデポジションヘッドは、さらに、前記第1のプリカーサノズルアセンブリと前記不活性ガスノズルアセンブリとの間に配置される複数の第1のエグゾーストチャネルと;前記第2のプリカーサノズルアセンブリと前記不活性ガスノズルアセンブリとの間に配置される複数の第2のエグゾーストチャネルとを含む。このデポジションヘッドは、さらに、前記複数の第1のプリカーサノズルのそれぞれに第1のプリカーサを送達する第1のプリカーサ送達システムと;前記複数の第2のプリカーサノズルのそれぞれに第2のプリカーサを送達する第2のプリカーサ送達システムと;前記複数の不活性ガスノズルのぞれぞれに不活性ガスを送達する不活性ガス送達システムとを含む。このデポジションヘッドは、さらに、前記第1のエグゾーストチャネルのぞれぞれを通して、および前記第2のエグゾーストチャネルのぞれぞれを通して、エグゾーストガスを吸引し、前記エグゾーストガスをデポジションヘッドから除去するエグゾーストガス除去システムを含む。
【0021】
これらおよび他の形態および利点は、添付の図面とともに以下の説明を読めば明らかとなる。
【0022】
5 図面の簡単な説明
本発明の特徴は、発明の詳細な説明、およびその例示を目的として選択され、かつ添付の図面に示される好ましい実施形態から、最も良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の1つの例示の実施形態における大気(中)でのALDに適したユニットセルの側面の概略断面図を示す。
図2】本発明の1つの例示の実施形態におけるガスデポジションシステムの底面の概略図を示し、このガスデポジションシステムは、移動する基材と、静止した(又は固定式の)シングルユニットセルのガス分配マニホールドとを含む。
図3】本発明の1つの例示の実施形態におけるガス分配マニホールドの側面の概略断面図を示し、このガス分配マニホールドは、移動する基材の上方に配置される4つのユニットセルを含む。
図4】本発明の1つの例示の実施形態における移動する基材の大気(中)でのALDコーティングに適した単一(又はシングル)のガスノズルおよびそれに結合したスペーサの側面の概略断面図を示す。
図5】本発明の1つの形態における3つの異なるノズル幅についてのドウェル時間(sec)と、基材の直線の速度(m/min)との対比を示すグラフのプロットを示す。
図6】本発明の1つの形態における3種のドウェル時間(msec)についてのチャネル幅(mm)と基材速度(m/min)との対比を示すグラフのプロットを示す。
図7】本発明の1つの形態においてALDコーティングサイクルを実施するのに適した基材の直線輸送機構の上方に支持されるガス分配マニホールドの等角図を示す。
図8】本発明におけるガス分配マニホールドの等角図を示す。
図9】本発明のガス分配マニホールドの等角図における断面を示す。
図10】本発明の実施形態におけるプリカーサオリフィスプレートのユニットセルの等角断面図を示す。
図11】本発明の別の実施形態におけるプリカーサオリフィスプレートのユニットセルの等角断面図を示す。
図12】本発明の1つの形態におけるインプット(注入)ガスの流れ(フロー)を示すガス分配マニホールドの等角断面図を示す。
図13】本発明の1つの形態におけるエグゾーストガスの流れ(フロー)を示すガス分配マニホールドのユニットセルの等角断面図を示す。
図14】本発明の1つの形態におけるガスコントロールシステムを示す概略図を示す。
図15】本発明の実施形態において移動する基材を含む大気(中)でのALDに適したデポジションシステムの側面の概略断面図を示す。
図16】本発明の実施形態において移動する基材を含む大気(中)でのALDに適したデポジションシステムの側面の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
名称(又は符号)
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】
【0025】
6 本発明のいくつかの実施形態の説明
図1および2を参照すると、ユニットセル(100)の概略断面図が示され、ユニットセル(100)は、ガスデポジションヘッドの一部を形成するものであり、ガスデポジションヘッドは、好ましくは複数のユニットセルを含む。このユニットセルは、固体(又は中実)の基材の上方に配置されて示され、この固体(又は中実)の基材は、トップ表面またはコーティング表面(110)を含み、この表面は、ユニットセル(100)によってコーティングされる表面(又はコーティングされている表面)である。以下に記載の例示の実施形態では、このガスデポジションのプロセス(又は方法)は、原子層堆積(又はアトミックレイヤーデポジション)(ALD)のプロセスである。しかし、本明細書中に記載の装置および方法は、そのまま使用できるか、あるいは他のガスデポジションプロセスを実施するために適合され得る(単一の気体または蒸気のプリカーサをコーティング表面に向かわせることによって、コーティング表面に薄膜コーティングを形成することなど;あるいは2よりも多くの異種プリカーサをコーティング表面に連続して向かわせることによって、コーティング表面に薄膜コーティングを形成することなど;あるいは2以上の気体または蒸気の異種プリカーサの混合物をコーティング表面の同じ領域に同時に向かわせることによって、薄膜コーティングを形成することなど)。
【0026】
基材は、ALDプロセスまたは他のガスデポジションプロセスまたはベーパーデポジションプロセスによってコーティングされるのに適した任意の材料を含んでいてよい。基材のいくつかの非限定的な例としては、金属、セラミック、プラスチック、半導体、誘電体、織物(又は織布)、および有機材料、例えば木、紙などが挙げられる。基材は、固体(又は中実)の材料の連続したウェブを含んでいてよく、あるいは、1またはそれよりも多くの別々の構成要素(エレメント)を含んでいてよい。好ましくは、ユニットセル(100)が静止していて(又は固定式であり)、基材が速度(V)でユニットセルを通過して移動する。しかし、ユニットセルは、静止した基材(単数または複数)に対して、相対的に移動してもよく、基材およびユニットセルの両方が移動してもよい。
【0027】
ユニットセル(100)は、幅(Wc)と、長手方向の長さ(L)とを有し、基材は、幅(Ws)を有する。両方を図2に示す。好ましくは、ユニットセルの長手方向の長さ(L)は、基材幅(Ws)と実質的に一致するか、またはそれよりも大きい。しかし、いくつかのコーティング用途において、ユニットセルの長手方向の長さ(L)が基材幅(Ws)よりも短いことが望ましくてもよい。ユニットセル(100)およびコーティング表面(110)は、少なくともユニットセルの幅(Wc)にわたって、互いに実質的に平行に配置され、分離距離(D)だけ離れている。
【0028】
ユニットセル(100)は、第1のプリカーサノズルアセンブリ(120)を含み、これは、コーティング表面(110)に第1の気体のプリカーサを向かわせるように構成される。ユニットセル(100)は、さらに、第2のプリカーサノズルアセンブリ(130)を含み、これは、表面(110)に第2の気体のプリカーサを向かわせるように構成される。好ましくは、第1および第2のプリカーサノズルアセンブリ(120,130)は、それぞれ、基材の全幅(Ws)にわたって、表面(110)に対して実質的に垂直な方向にプリカーサガスを向かわせるように構成される。さらに、第1および第2のプリカーサノズルアセンブリ(120,130)は、それぞれ、全幅(Ws)にわたって、表面(110)に実質的に均一な容量のプリカーサガスを向かわせるように構成されることが好ましい。
【0029】
ここで、図1〜3を参照すると、好ましい実施形態において、ユニットセルは、ALDコーティングサイクルを使用して操作するように構成される。操作において、コーティング表面(110)は、速度(V)でユニットセル(100)を通過して速度ベクトル(135)で示される方向に進み、そうすることで、基材の先端(140)が、第1のプリカーサノズルアセンブリ(120)を通過して進み、その後、第2のプリカーサノズルアセンブリ(130)を通過して進むようになる。従って、コーティング表面の先端(140)は、まず、第1のプリカーサノズルアセンブリ(120)から出る第1のプリカーサに曝露され、その後、第2のプリカーサノズルアセンブリ(130)から出る第2のプリカーサに曝露される。第1および第2のプリカーサノズルアセンブリ(120)および(130)は、それぞれ、実質的に連続するプリカーサガスの流れ(又はフロー)を送達する。当業者に認識される通り、ALD反応において、第1のプリカーサは、コーティング表面(110)と反応して、コーティング表面(110)を化学的に改変させて、その後、コーティング表面(110)は、第2のプリカーサノズル(130)から出る第2のプリカーサに曝露される。次に、この化学的に改変されたコーティング表面は、第2のプリカーサと反応し、この第2のプリカーサとの反応によって、コーティング表面(110)に第1の固体(又は中実)の物質層または薄膜が形成される。従って、好ましいユニットセル(100)は、2つのプリカーサ源を含み、そのそれぞれが、コーティング表面(110)の異なる領域の上方に配置され、そうすることで、このコーティング表面が、第1のプリカーサに実質的に曝露され、続いて第2のプリカーサに曝露され、そして、この2つが協同することによって、コーティング表面(110)に単一の固体(又は中実)の物質層を堆積するようになる。このとき、コーティング表面(110)は、ユニットセルを通過して進む。あるいは、ユニットセル(100)とコーティング表面(110)との間の相対的な運動の任意の組み合わせであって、表面(110)が、まず、第1のプリカーサノズルアセンブリ(120)を通過して進み、次いで、第2のプリカーサノズルアセンブリ(130)を通過して進むものを使用して、表面(110)に単一の固体(又は中実)の物質層を堆積させることができる。
【0030】
ユニットセル(110)は、さらに、第1と第2のプリカーサノズルアセンブリ(120)および(130)の間に配置される第1の不活性ガスまたは他の適切なパージノズルアセンブリ(150)と、第2のプリカーサノズルアセンブリ(130)に隣接して配置される第2の不活性ガスまたはパージノズルアセンブリ(160)とを含む(例えば、隣接するユニットセル(例えば、図3に示される通りである)の第2のプリカーサノズルアセンブリ(130)と第1のプリカーサノズルアセンブリとの間)。好ましくは、第1および第2のパージノズルアセンブリ(150,160)は、それぞれ、基材の全幅(Ws)にわたって、コーティング表面(110)に実質的に垂直な方向に不活性ガスを向かわせるように構成される。さらに、第1および第2のパージノズルアセンブリ(150,160)は、それぞれ、全幅(Ws)にわたって、実質的に均一な容量のプリカーサガスを表面(110)に向かわせるように構成されることが好ましい。さらに、パージノズルアセンブリ(150,160)のそれぞれによってコーティング表面(110)に送達される不活性ガスの圧力および容量は、プリカーサノズルアセンブリ(120,130)のそれぞれによってコーティング表面(110)に送達されるプリカーサの圧力および容量よりも大きく、それによって、コーティング表面に向けられる不活性ガスが、コーティング表面付近でのプリカーサガスの流れ(又はフロー)を、隣接するパージノズルアセンブリ(150,160)の間の領域に制限する傾向にあるようになることが好ましい。
【0031】
不活性ガスノズルアセンブリによって表面(110)に向けられる不活性ガスは、2つの目的に役立つ。第1の目的は、不活性ガスのバッファゾーンを形成することであり、この不活性ガスバッファゾーンは、コーティング表面(110)付近の第1と第2のプリカーサの間に配置されるものである。不活性ガスのバッファゾーンは、コーティング表面(110)付近のプリカーサガスを、ユニットセル(100)の長手方向の全寸法(L)に沿って配置される長手方向の領域(又はゾーン)へと実質的に制限し、それによって、不活性ガスバッファゾーンを提供し、かかる不活性ガスのバッファゾーンによって、コーティング表面(110)付近で第1と第2のプリカーサが混合されることを防止する。さらに、パージノズルアセンブリ(150,160)によってコーティング表面(110)に向けられる不活性ガスの連続フローは、未反応のプリカーサ、ならびに第1および第2のプリカーサとコーティング表面(110)との間の反応によって生成される反応副生成物が連続的にパージするのに役立つ。さらに詳細には、その先端(140)は、第1のプリカーサノズルアセンブリ(120)を通過し、これによって、かかる先端が第1のプリカーサに曝露され、第1のプリカーサとコーティング表面(110)との間で化学反応が生じ、その直後に、先端(140)が第1の不活性ガスノズルアセンブリ(150)を通過し、これによって、あらゆる反応副生成物および/または未反応の第1のプリカーサが先端(140)からパージされ、その後、先端(140)は、第2のプリカーサノズルアセンブリ(130)に到達する。同様に、先端(140)は、第2のプリカーサノズルアセンブリ(130)を通過し、これによって、第2のプリカーサとコーティング表面(110)との間で化学反応が起こり、その直後に、先端(140)が第2の不活性ガスノズルアセンブリ(160)を通過し、これによって、あらゆる反応副生成物および/または未反応の第2のプリカーサが先端(140)からパージされ、その後、先端(140)がユニットセルの端部に到達する。従って、ユニットセル(100)は、連続ALD物質層形成デバイスとして作用し、このデバイスは、同時に第1のプリカーサをコーティング表面(110)に向かわせて、その一方で、第1の不活性ガスノズルアセンブリ(150)によって、あらゆる未反応の第1のプリカーサおよび反応副生成物をコーティング表面(110)から連続的にパージし、その一方で、同時に第2のプリカーサをコーティング表面(110)に向かわせて、第2の不活性ガスノズルアセンブリ(160)によって、あらゆる未反応の第1のプリカーサおよび副生成物をコーティング表面(110)から連続的にパージする。好ましくは、ユニットセル(100)およびコーティング表面(110)は、実質的には大気圧におけるものであり、バキュームチャンバ内でALDプロセスを実施することに付随する費用、煩雑さ、および処理量(又はスループット)の減少を回避する。さらに、コーティング表面(110)がユニットセルを通過して進むので、第1および第2のプリカーサを同時に付与して、その一方でコーティング表面の様々な領域から反応副生成物を同時にパージするプロセスは、コーティングサイクルの間にチャンバを密封することが要求される減圧または低圧で維持される反応チャンバ内で実施されるALDプロセスと比べて、コーティングのサイクル時間を減少させる。なぜなら、本発明によれば、プリカーサの付与およびパージングのサイクルが同時に行われ、反応チャンバ内での一般的な場合のように、逐次的に行われないからである。
【0032】
ユニットセル(100)は、スペーサ(170)を含むか、あるいは、ノズルアセンブリ(120,150,130および160)を分割する不可欠なスペース(又はスペーシング)とともに形成され、さらに、隣接するユニットセルを互いに離して間隔を設けて配置するエンドスペーサ(172)を含む。各ノズルアセンブリは、互いに接続された構成要素(エレメント)または一体式のプレートもしくはバーの構造体(又はストラクチャ)を含み、これは、ノズルの底縁部(175)および1またはそれ以上のノズルの開口部(180)を含み、これは、そこからガスを放出するためにある。一般に、各ノズルの開口部は、ガス源と流体連通していて、ガス供給システムが、ノズルの開口部を通して、適切なガスまたは蒸気を強制的に放出し、そして、コーティング表面へと向かわせる。各ノズルアセンブリは、さらに、スペーサ(単数または複数)(170)を含み、これは、隣接するノズルの開口部(120および150など)の間に配置されるウォールまたはパーティションを含んでいてよい。図2に示されるように、長手方向の軸線において、各ノズルアセンブリは、ノズルの開口部の列を含み、各スペーサは、ユニットセル(100)の長手方向の全長(L)に沿って連続的に延びる市販のウォールまたはパーティションを含む。いくつかの実施形態において、ノズルの開口部(単数または複数)は、例えば図10に示されるように、スペーサの底縁部(175)と実質的に共面(coplanar)であってもよく、あるいは、例えば図11に示されるように、ノズルの開口部(120,150,130,160)は、底縁部(175)から凹んでいてよく、そうすることで、スペーサまたはセパレータが長手方向のフローチャネル(290)を形成し、それによって、ノズル開口部の列から出るガス流が、このスペーサまたはセパレータによって形成される対応する長手方向のフローチャネル(290)によって規定される容量部分へと制限されるようになる。スペーサの底縁部(175)は、コーティング表面(110)から分離距離(D)だけ離れて間隔を開けて配置され、この距離は、実質的にゼロから約5mmの範囲であり得るが、これは、好ましくは、0.5〜3mmである。図1の例において、各ノズルアセンブリ(120,150,130および160)ならびに各スペーサ(170,172)は、同一の幅寸法(w)を有する。他の実施形態では、ノズルおよびスペーサの幅寸法は、不均一であってもよく、所望のガスフローパターンを形成する様式で変動してもよい。
【0033】
ここで図2を参照すると、ユニットセル(200)および基材(210)は、底面図で示される。ユニットセル(200)は、セル幅(Wc)を有し、これは、実質的に、基材の速度ベクトル(V)の軸線に沿って延びるものである。ユニットセル(200)は、長手方向のセル長(L)を有し、これは、セル幅(Wc)に対して実質的に垂直方向のものである。基材(210)は、速度の軸線(V)に沿って、長さが実質的に制限されない材料のウェブを含んでいてもよい。あるいは、基材(210)は、移動ウェブなどの輸送表面に支持される複数の別個の基材を含んでいてもよく、この移動ウェブは、その輸送表面に支持される複数の別個の基材を速度(V)でユニットセル(200)を通過させて輸送するように構成されるものである。基材(210)は、基材幅(Ws)を有する。好ましくは、ユニットセル長(L)は、基材幅(Ws)と一致するか、それよりも長い。しかし、セル長(L) 対 基材幅(Ws)は、基材の全幅(Ws)未満のコーティングを含む特定のコーティング用途に従って、適合されてもよい。
【0034】
ユニットセル(200)は、第1のプリカーサノズルアセンブリ(220)、第2のプリカーサノズルアセンブリ(230)ならびに2つの不活性ガスまたはパージノズルアセンブリ(250)および(260)を含む複数のノズルアセンブリを含む。上記のように、複数のスペーサまたはセパレータ(170,172)は、ノズルアセンブリの間に配置されて、ノズルアセンブリを互いに分離し、場合によっては(図11に示されるように)、セル長(L)に沿って延びる長手方向のガスフローチャネル(290)を規定する場合もある。また、各ガスフローチャネル(290)は、1またはそれ以上のエグゾーストチャネルまたはプレナム(280)および(285)と相互に流体接続していてもよい。例示の実施形態では、エグゾーストチャネルまたはプレナム(280,285)は、各フローチャネル(290)の対向する端部に配置され、速度の軸線に沿って延びる。そして、一方または両方のエグゾーストチャネル(280,285)が、分離距離(D)によって規定されるユニットセルとコーティング表面との間に広がる容量部分と流体連通している。また、エグゾーストチャネルは、エグゾースト導管(295)を介して、バキュームポンプまたはファンなどのエグゾーストエレメント(265)と流体連通の状態である。エグゾーストエレメント(265)は、連続的に作動して、エグゾーストチャネル(280,285)からガスを除去し、そうすることで、ガスは、分離距離(D)によって規定されるユニットセルとコーティング表面との間に広がる容量部分から連続的に除去されるようになる。ユニットセル(200)が、実質的に平面の底面を含む場合、例えば、ノズルの開口部がスペーサの底縁部(175)と同じ高さである場合、分離距離(D)は、全ての処理面積にわたって、実質的に均一であり、エグゾーストチャネル(280,285)は、ユニットセルの全幅(Wc)に沿って、ガスを実質的に均一に除去するように位置決めされ、かつ構成され得る。他に、ノズルの開口部がスペーサの底縁部から凹んでいる場合、分離距離(D)は、均一ではなく、このエグゾーストチャネルは、長手方向のフローチャネル(290)のそれぞれからガスを実質的に除去するように位置決めされ、かつ構成され得る。いずれの場合においても、エグゾーストエレメント(265)が連続的に作動して、エグゾーストチャネル(280,285)からガスを除去する。さらに、いくつかのユニットセルが一緒に組み立てられて(アセンブリングされて)、図3に示すデポジションヘッドシステム(300)などのポジションヘッドを形成する場合、ユニットセル(200)のエグゾーストチャネル(280,285)は、隣接するユニットセルのエグゾーストチャネルと流体連通するように構成されてもよい。
【0035】
ユニットセル(200)のさらなる実施形態において、パージノズルアセンブリ(250,260)内のガスフローは、長手方向の軸線(L)に沿って向けられるか、あるいは、上記のように垂直の入射でコーティング表面に向けられる代わりに、コーティング表面(110)に平行して向けられる。このユニットセル(200)の実施形態においては、パージガスは、コーティング表面に平行して流れて、あらゆる未反応のプリカーサおよび反応副生成物をコーティング表面からエグゾーストチャネル(280)および(285)の一方または両方に向けて押し流す。次いで、エグゾーストチャネルからの流れ(アウトフロー)は、エグゾーストエレメント(265)へと運ばれ、ベントされるか、あるいは、そうでなければ、処理される。この実施形態において、パージノズルアセンブリ(220)および(230)のみがエグゾーストチャネル(280)および(285)と流体連通の状態であり、それによって、プリカーサノズルアセンブリ(220)および(230)において、ガスフローは、エグゾーストチャネル(280)および(285)には入らないが、その代わりに、パージノズルアセンブリへと吸引され、各パージノズルアセンブリの長手方向のフローによって、エグゾーストチャネルへと押し流されるようになる。また、以下のことに注目されたい。交互のパージノズルアセンブリにおいてガスフローは、同一の方向であっても、反対の方向であってもよい。あるいは、このパージガスは、長手方向の軸線の中心で各パージノズルアセンブリに入ってもよく、その中心から、対向するエグゾーストチャネル(280)および(285)のそれぞれに向けて、反対の方向に流れてもよい。
【0036】
図2にさらに示されるように、各ノズルアセンブリ(220,250,230および260)は、複数のノズルの開口部(292)を含み、これらを通して、圧力下でガスが放出される。ノズルアセンブリは、間隔を開けて接近して配置される複数の円形の孔または他の開口形状、あるいは長手方向の長さ(L)に沿って配置される1またはそれ以上の長手方向のスロットを含んでいてもよく、各円形の孔またはスロットは、適切な供給プレナムと流体連通の状態にある。いずれの場合においても、実質的に長手方向の全長(L)に沿って、適切な気体または蒸気がコーティング表面上に向けられ、ノズルの開口部の数および形状が最適化されて、各ノズルの開口部(292)から放出される実質的に均一なガスの容量を提供する。従って、コーティング表面は、その長手方向の全長(L)に沿って、実質的に均一な容量の処理ガスまたは不活性ガスに同時に曝露されて、基材幅(Ws)にわたる均一なコーティングが促進される。好ましくは、各ノズルアセンブリ(220,250,230および260)は、実質的に連続するガスのフローを放出し、各エグゾーストチャネルは、連続的に作動して、ユニットセルと基材との間の容量部分から、あるいは上記の場合であり得るようにパージノズルアセンブリから、実質的に連続するガスのフローを吸引する。
【0037】
ここで、図3によると、ガスデポジションヘッドシステム(300)の非限定的な実施形態は、エリアアレイで一緒に組み立てられた4つのユニットセル(310,320,330,340)を含み、各ユニットセルは、基材コーティング表面(110)の上方に距離(D)で配置されている。各ユニットセル(310,320,330および340)は、実質的には、図1に示されるように構成される。ただし例外として、エンドユニットセル(340)だけは、エンドチャネル(390)を形成するためのエンドスペーサ(372)を含む。各ユニットセル(310,320,330および340)は、第1のプリカーサ供給システム(360)からの第1のプリカーサガスの供給を受け、一定容量の第1のプリカーサを4つの第1のプリカーサノズルアセンブリのそれぞれに送達する。同様に、第2のプリカーサ供給アセンブリ(370)は、一定容量の第2のプリカーサを4つの第2のプリカーサノズルアセンブリのそれぞれに送達し、不活性ガス供給システム(380)は、一定容量の不活性ガスを8つのパージガスノズルアセンブリのそれぞれに送達する。各ガス供給システム(360,370,380)は、ガス供給コンテナ(1,i,2)と、ガス圧および/またはマスフローレイトを調整するガスフローレギュレータ(図示せず)と、プリカーサを所望の反応温度に加熱するための加熱エレメント(図示せず)とを含んでいてもよい。さらに、システム(300)は、基材輸送システム(図示せず)と、電子コントローラ(図示せず)と、温度、ガス圧およびガスフローレイト、基材輸送速度、薄膜コーティングの厚みならびに求められ得る限りの他の特性を感知して制御する様々なセンサおよびフィードバック回路(図示せず)とを含んでいてもよい。
【0038】
例示のデポジションヘッドシステム(300)は、4つのユニットセル(310,320,330および340)を含み、これらは、速度の軸線に沿って延びるユニットセル幅(Wc)で一緒に組み立てられていて(アセンブリングされていて)、それにより、この例示のヘッドシステム(300)は、基材がこの組み立て幅(Wd)を一回通過する間に、基材表面(110)に4つの物質層が堆積するように構成される。例示の実施形態(300)において、基材表面(110)に堆積される4つの全ての物質層は、実質的に同一の材料層であり、各物質層の組成および厚みは、実質的に均一であり、コーティング表面(110)に付与される第1および第2のプリカーサの組成に依存する。理想的には、プリカーサおよびコーティング表面(110)は、所望の反応に適した反応温度で維持され、その反応温度は、プリカーサおよび基材材料に依存して、20℃〜600℃の範囲であってもよい。他の例示の実施形態において、プリカーサの様々な組み合わせによって、1またはそれ以上のユニットセルが供給されてもよく、それにより、デポジションヘッドシステム(300)は、コーティング表面(110)をコーティングするために構成されていてもよく、固体(又は中実)の物質層は、本発明から逸脱することなく、様々な物質の組成および/または物質の厚みを有するようになる。さらなる例示の実施形態において、1またはそれ以上のプリカーサノズルアセンブリは、プラズマ、あるいはガスプリカーサの粒子をイオン化するのに適した他の高エネルギー源を含んでいてもよい。
【0039】
ここで、図4によると、シングルノズルアセンブリ(400)は、ノズルアセンブリ(410)と、その周囲のスペーサ(420)および(430)とを含む。ノズルアセンブリ(400)は、ユニットセル(100)の任意のガスノズルアセンブリを含んでいてもよい。このノズルアセンブリ(400)の例示の実施形態において、ノズル開口部の領域(410)およびスペーサ(420,430)の各々は、同一の幅(w)を有する。しかし、本発明から逸脱することなく、他の形状が有用であってもよい。速度(V)でコーティング表面(110)がノズルアセンブリ(410)を通過して進む場合、コーティング表面(110)の一部がノズルの下方を通過する時間の期間(デュレーション)は、ドウェル時間(td)と呼ばれ、以下の式で示される。
ドウェル時間 td = 2w/V [1]
【0040】
理想的には、ドウェル時間は、基板表面の面積を完全に飽和させるのに必要な期間(デュレーション)に等しいものであり、この基板表面は、ドウェル時間の間にノズルを通過するものである。さらに詳細には、完全な飽和は、プリカーサの分子と反応するのに利用できるコーティング表面の実質的に全ての分子が反応を完了するときに起こる。従って、理想の速度(V)は、増加した場合、基材表面の面積の完全な飽和が起こらないものであり、この基材表面は、ドウェル時間の間にノズルの組み立て幅(2w)を通過するものである。飽和のレベルに影響を与える他の変数としては、ノズル幅w、コーティング表面(110)と反応するのに利用できるプリカーサの容量、プリカーサおよび基材の温度、プリカーサの圧力、コーティング表面付近でのガスのタービュランス、およびコーティング表面に近い領域でのプリカーサガスの濃度が挙げられる。同様に、各プリカーサノズルアセンブリ(410)および結合されるスペーサ(420)および(430)は、ユニットセルの長手方向の全長(L)にわたって、基材表面(110)の付近において、実質的に均一なプリカーサの入手可能性および反応条件を提供して、確実に基材の全幅(Ws)にわたる完全な飽和が起こるように構成されることが好ましい。
【0041】
ここで図1を参照すると、1つの非限定的な例示の実施形態において、ユニットセル(100)は、複数の等幅のプリカーサノズルアセンブリ(120)および(130)と、パージノズルアセンブリ(150)および(160)と、等幅のスペーサ(170,172)と、速度(V)でユニットセル(100)を通過して進む基材のコーティング表面(110)とを含む。等式1のドウェル時間を使用すると、1回のALDサイクルを実施するのに(すなわち、表面(110)に1つの物質層を堆積させるのに)ユニットセル(100)に必要なサイクル時間(t)は、以下のように示される。
サイクル時間t=tprec1+tpurge+tprec2+tpurge=8w/V [2]
【0042】
複数のユニットセルが一緒に組み立てられる図3に示される例示の実施形態においては、デポジションヘッド(300)の幅(Wd)は、N個のユニットセル(100)の幅をあわせたものであり、以下の式で示される。
デポジションヘッド幅 Wd = N(8w) [3]
【0043】
各ユニットセル(310,320,330,340)がフィルムの厚みの成長(G)に寄与するので、幅(Wd)のデポジションヘッドによって付与される物質層の全体の厚み(Tm)は、以下の式で示される。
物質層の厚み Tm = NG = (Wc/8w)G [4]
【0044】
6.1 ドウェル時間および基材の速度
ここで、図5を参照すると、デポジションヘッドシステム(300)を用いて膜(又はフィルム)を堆積させることに関連する特徴的な時間および寸法がグラフで示されている。詳細には、図5は、0.7〜1.5mmの範囲の3つの異なるチャネル幅(w)について、ドウェル時間(td)(sec)を基材の速度との関数としてプロットするものである。挿入図(500)においてさらに示されるように、上記の等式2〜4は、1mmのチャネル幅に対応する5msのドウェル時間では、24m/minの物質コーティング速度が得られる能力を示す。
【0045】
6.1.1 例1
ドウェル時間の重要な局面をより明確に理解するためには、Alなどの従来のALD膜の堆積を考慮することが有益である。Alの堆積を、トリメチルアルミニウム(TMA)を含む第1のプリカーサと、水(HO)を含む第2のプリカーサとを用いて開始する。従前の堆積研究の経験に基づいて、Cambridge Nanotech Inc.(Cambridge MA)から入手可能なSAVANNAH ALDシステムなどの従来のALDバキュームリアクタにおいて、大気条件下で0.5msのドウェル時間が、減圧条件下の基材でのプリカーサの簡単な飽和で見受けられる条件を再現することが推定されている。従って、大気条件下で5msecのプリカーサのドウェル時間(これは、簡単な飽和に必要とされる要素(又はファクタ)よりも100倍大きなものである)は、20m/minを超える速度であっても、十分な飽和を提供すべきである。
【0046】
6.2 チャネル幅および基材の速度
ここで、図6を参照すると、チャネル幅と基材の速度との間の関係がグラフで示されている。詳細には、図6は、様々なドウェル時間(td)において、チャネル幅(w) 対 基材の速度(V)をプロットするものである。このプロットは、一般に、チャネル幅が大きい程、より緩和されたドウェル時間において、より大きな基材速度が許容されることを示すが、とりわけ、大きな全膜厚(すなわち、多数のユニットセル)が求められる場合にには、チャネル幅が大きい程、デポジションヘッドの寸法は、非実用的なものとなり得る。しかし、このプロットは、さらに、より短いドウェル時間を使用することによって、チャネル幅を減少させることが可能になることを示す。
【0047】
より詳細には、図6は、5.0、2.5および0.5msの3つのドウェル時間(td)について、チャネル幅(w) 対 基材の速度(V)をプロットしている。各曲線は、基材速度が増加するにつれて、固定されたドウェル時間を維持するのに必要なチャネル幅の変化を示す。この結果によって、20m/secのオーダーでの処理速度を達成するためには、チャネル幅が約1mmで維持される必要があることが示され、それによって、実用的なセルのフルサイズは、より厚い膜において維持され得る。
【0048】
より詳細には、本発明の1つの非限定的な実施形態は、0.1〜5msの範囲のドウェル時間、0.1〜10mmのチャネル幅および0.5〜20m/secの範囲の基材速度で作動するように構成されるデポジションシステム(300)を含む。
【0049】
6.3 ガスマニホールドおよび直線(リニア)輸送デバイスの例
図7を参照すると、非限定的な例示のALDコーティングシステム(700)は、ALDチャンバエンクロージュア(745)に固定して取り付けられるガスマニホールド(710)と、関連の直線輸送要素(又はリニア輸送エレメント)とを含む。エンクロージュア(745)は、その中に収容される直線変位機構を含み、これは、そこから外側に延びるドライブエレメント(又は駆動要素)を備えるものである。直線変位機構は、基材(単数または複数)を支持するように構成され、かかる基材は、直線変位機構上でコーティングされ、この直線変位機構は、基材(単数または複数)を、この固定されたガスマニホールド(710)を通過して輸送するものである。ALDチャンバエンクロージュア(745)は、アクセスハッチ(705)を通して、コーティングされる基材(単数または複数)を直線変位機構にロード(装填)するように構成され、アクセスハッチ(705)は、ALDチャンバ(745)へのアクセスを提供するものである。
【0050】
基材(単数または複数)がガスマニホールド(710)を通過して輸送される場合、ガスマニホールド(710)を適合させて、ALDプリカーサをALDチャンバに送達し、かつ様々な基材(単数または複数)のコーティング表面にALDプリカーサを向かわせる。ガスマニホールド(710)をさらに適合させて、上記の不活性ガスの分離ゾーンを用いて、コーティング表面でプリカーサを互いに分離し、未反応のプリカーサガスおよび反応副生成物がコーティング表面から離れるようにパージし、そして、ガスマニホールド(710)およびALDチャンバエンクロージュア(745)の外部のエグゾーストエリアに、未使用のプリカーサガス、反応副生成物および不活性ガスを排出する。
【0051】
チャンバエンクロージュア(745)は、このチャンバエンクロージュア(745)の側壁に開けられた様々なアクセスポート(720)とともに形成される。アクセスポートは、ガスおよび電気のフィッティングおよびコネクタなどを含み、ガスのインプット(注入または入口)導管およびアウトプット(注出または出口)導管をアクセスポート(720)へと接続し、そして、ゲージ、センサ、制御デバイス、ヒーター、または他の電気デバイスをこのアクセスポートに接続する。これらは、必要に応じて、ALDチャンバの内部で使用するためのものである。ALDチャンバの上部は、リムーバブルリッド(715)を有していてもよい。好ましくは、ALDチャンバは、実質的に大気圧で維持され、そして、ベントポート、ファンなどによって、大気中へとベントされてもよい。あるいは、アクセスポート(720)を通してALDチャンバエンクロージュア(745)の内部に不活性ガスのフローをポンピングすることによって、ALDチャンバは、わずかに加圧されていてもよく(例えば、大気圧の1.1倍)、それにより、ALDチャンバ内部のガスは、ガスマニホールド(710)に設けられた出口導管を通して、ALDチャンバから出る傾向にあるようになる。
【0052】
本発明の非限定的な例示の実施形態において、直線変位機構は、機械式のリニア変位システムを含み、このシステムは、ボールスクリューアセンブリ(740)、リニアトラック(735)、モータードライブまたはドライブカップリング(730)、およびリニアベロー(725)を含み、そして、輸送方向は、リニアベロー(725)の長手方向の軸線に沿う。このようなシステムは、ALDコーティングシステム(700)の性能を評価するのためには都合がよいが、さらなる実施形態において、ガスマニホールド(710)は、コンベアシステム(例えば、コンベアベルトなど)の上方に配置されていてもよく、このコンベアシステムは、ガスマニホールド(710)を通過して、コンベアベルト上に支持された複数の別個の基材を連続して進めるものである。システム(700)では、連続したウェブが、リニアベロー(725)の長手方向の軸線によって実質的に規定される輸送軸に沿って、基材を、マニホールド(710)を通過させて輸送する。さらなる実施形態において、このガスマニホールド(710)は、このガスマニホールドを通過させて輸送される基材材料のウェブの上方に配置されてもよく、それにより、この材料のウェブ全体を1またはそれ以上の薄膜層でコーティングするようになる。このとき、ガスマニホールドから出るプリカーサは、基材材料のウェブのコーティング表面と反応する。
【0053】
さらに、ALDコーティングシステム(100)は、電子コントローラ(図示せず)とインターフェイスで接続し、これは、少なくとも精密なリニア輸送ドライブシステムおよびリニア位置フィードバックシステムなどを含むものであり、これらは、様々な速度でモータードライブ(730)を操作して、基材がガスマニホールド(710)を通過するときに、コーティングされる基材の実質的に一定の1またはそれ以上の直線速度を維持するためのものである。さらに、電子コントローラは、図7に示されるガスフローコントロールシステムの構成要素(又はエレメント)、ならびにシステム(700)の性能を操作および評価することに関連する様々な他の電気的な構成要素(又はエレメント)とインターフェイスで接続する。
【0054】
6.4 ガスマニホールドの例
図7〜14を参照すると、本発明の非限定的な例示のガスマニホールド(710)は、コーティング表面(単数または複数)がプリカーサオリフィスプレート(930)を通過して進むとき、基材のコーティング表面(単数または複数)にプリカーサガスのフローを向かわせるように構成される。さらに、ガスマニホールド(710)は、異なるプリカーサが混合することを防止する様式で、プリカーサガスフローの間で、コーティング表面(単数または複数)に不活性ガスのフローを向かわせるように構成される。さらに、ガスマニホールド(710)は、コーティング表面(単数または複数)からガスのフローが離れるように吸引して、ガスマニホールド(710)からエグゾーストガスを除去するように構成される。図8に示されるように、ガスマニホールド(710)は、複数のインプット(又は注入もしくは入口)ポートを含み、これらは、様々なプリカーサをその中で受けるためにある。1またはそれ以上のインプット(又は注入もしくは入口)ポート(815)は、第1のプリカーサ源から第1の気体または蒸気のプリカーサAの供給を受け、1またはそれ以上のインプット(又は注入もしくは入口)ポート(820)は、第2のプリカーサ源からの第2の気体または蒸気のプリカーサBの供給を受ける。さらに、ガスマニホールド(710)は、窒素系ガス、ネオンガス、アルゴンガス、キセノンガス、ヘリウムガスまたはそれらの組み合わせなどの不活性ガス源とそれぞれ流体連通する1またはそれ以上のインプット(注入または入口)導管(825)を含む。さらに、ガスマニホールド(710)は、1またはそれ以上のアウトプット(注出または出口)導管またはエグゾースト導管(805,810)を含み、これらは、1またはそれ以上の流れ(アウトフロー)の保管部(又はデポジトリ)に接続されていてもよく、これは、回収用であり、いくつかの実施形態においては、エグゾーストガスを処理するためのものである。
【0055】
図9〜14に最も良く示されるように、エグゾーストガスは、プリカーサオリフィスプレート(930)を通過して、複数のエグゾーストインレット(1010A,1010B,1105A,1105B)を通して、コーティング表面(単数または複数)から回収される。エグゾーストインレットによって回収されるエグゾーストガスは、プレート(925)、(920)および(915)のそれぞれを通ってエグゾーストインレットから延びるエグゾーストフローチャネルによって、エグゾースト回収マニホールド(830)および(835)へと運ばれる。このエグゾーストガスは、未反応のプリカーサ、反応副生成物および不活性ガスの混合物を含む。好ましい実施形態では、エグゾーストガスは、エグゾーストガスが含む未反応のプリカーサに応じて分離される。さらに具体的には、本発明の1つの形態に従って、ガスマニホールド(710)は、別個の分離されたエグゾーストフローチャネルにおいて、未反応のプリカーサAおよび未反応のプリカーサBを含むガスを排出するように構成される。第1のエグゾーストフローチャネルは、未反応のプリカーサAを含むエグゾーストガスを、エグゾーストポート(805)を含む第1のエグゾースト回収マニホールド(835)へと運ぶように配置される。同様に、第2のエグゾーストフローチャネルは、未反応のプリカーサBを含むエグゾーストガスを、エグゾーストポート(810)を含む第2のエグゾースト回収マニホールド(830)へと運ぶように配置される。エグゾーストポート(805)および(810)は、それぞれ、ブロワー(1485)と流体連通していて、このブロワーが作動して、エグゾーストポート(805)および(810)の外側にエグゾーストガスを吸引し、このガスマニホールドから除去されるエグゾーストガスを、エグゾーストガス回収モジュール(1475)へと送達する。好ましくは、エグゾーストガス回収モジュール(1475)は、2つの別個のチャンバまたはチャネルを含み、これらは、エグゾーストポート(805)からの流れ(アウトフロー)およびエグゾーストポート(810)からの流れ(アウトフロー)を回収して分離するためのものであり、それぞれの流れ(アウトフロー)は、さらに処理されて、未反応のプリカーサAおよびBを、再使用のために別々に回収し得る。様々な実施形態において、単一のブロワー(1485)を使用して、エグゾースト回収マニホールド(835)および(830)の両方から外側にエグゾーストガスを吸引してもよく、あるいは、各エグゾースト回収マニホールドは、別個のブロワー(1485)と流体連通の状態であってもよい。さらなる実施形態において、ガスマニホールド(710)は、全てのエグゾーストガスの流れ(アウトフロー)を単一(又はシングル)のエグゾーストマニホールド中に合わせるように、例えば、エグゾーストマニホールド(830)および(835)を単一のエグゾーストマニホールド中に合わせることによって、構成されていてもよい。エグゾーストガスをエグゾーストガスマニホールド(830)および(835)の一方または両方から除去することに加えて、ブロワー(単数または複数)(1475)を操作して、エグゾーストガスマニホールドのそれぞれにおいてガス圧を低下させる。これは、プリカーサオリフィスプレート(930)を通過させて、複数のエグゾーストインレット(1010A,1010B,1105A,1105B)を通して、コーティング表面から離れるようにガスを吸引するように作用する。図1に示されるユニットセル(100)と比較すると、エグゾーストインレット(1010A,1010B,1105A,1105B)は、スペーサ(170,172)の位置に配置される。
【0056】
図9〜13に最も良く示されるように、処理ガスは、以下のように、ガスマニホールド(710)を通して入り、そして、そこから流れる。プリカーサAは、1またはそれ以上のプリカーサAのインプットポート(815)を通して入り、そしてプリカーサAのみを運ぶように供される第1のプリカーサフローチャネルを通して、基材のコーティング表面へと運ばれる。同様に、プリカーサBは、1またはそれ以上のプリカーサBのインプットポート(820)を通して入り、そしてプリカーサBのみを運ぶように供される第2のプリカーサフローチャネルを通して、基材のコーティング表面へと運ばれる。同様に、パージガスは、1またはそれ以上のパージガスのインプットポート(825)を通して入り、そしてパージガスのみを運ぶように供されるパージガスフローチャネルを通して、基材コーティング表面へと運ばれる。第1および第2のプリカーサチャネルおよびパージガスチャネルは、それぞれ、プリカーサオリフィスプレート(930)を貫通し、プレート(925)、(920)および(915)のそれぞれを貫通する。
【0057】
ガスマニホールド(710)の底面は、プリカーサオリフィスプレート(930)によって形成される。この底面は、好ましくは、長手方向の寸法(Lh)と、横切る方向(又は横方向)の寸法(Wc)とを有する四角形または矩形であり、長手方向の寸法(Lh)は、長手方向の軸線(L)に沿って延びるものであり、横切る方向の寸法(Wc)は、基材の速度によって規定される軸線である速度の軸線(V)に沿って、長手方向の寸法(Lh)に対して実質的に垂直方向に延びるものである。様々な実施形態において、プリカーサオリフィスプレート(930)は、4〜36インチの範囲の長手方向の寸法と、0.2〜36インチの範囲の横切る方向の寸法とを有する処理面積にわたって、ガス堆積層を付与するように構成され得る。当業者は、プリカーサオリフィスプレート(930)の底面および処理面積の他の機能的な寸法および形状が本発明の範囲内に含まれることを認識する。より一般的には、ガスマニホールド(710)は、その長手方向の寸法(Lh)が基材コーティング表面の幅寸法(Ws)と一致するか、またはそれよりも長く、そして、その横切る方向の寸法またはヘッド幅(Wc)が、ガスマニホールド(710)に含まれるユニットセルの数に対応するように、例えば、上記の等式3で示されるように構成される。上記のように、ヘッド幅(Wc)は、単一(又はシングル)のユニットセル(例えば、100)の数倍の幅を有し、ここで各ユニットセルは、コーティング表面に単一の薄膜の物質層を堆積させる。従って、ヘッド幅(Wc)は、結局、付与されるフィルムの所望の全厚(これは、1つのユニットセルで付与される製品の厚みに等しい)と、ユニットセルの数との関数である。ガスマニホールド(710)の長手方向の寸法(Lh)またはコーティング幅は、一般には、固定されているが、複数のガスマニホールド(710)を互いに結合させ得るか、あるいはそれぞれ軸線(V)に沿って並んで配置させてもよく、フィルムの所望の全厚を増加させることができることを当業者は容易に認識する。ここで、各ガスマニホールド(710)は、その下方で輸送される基材に、さらに薄膜層を付与する。より一般的には、単一(又はシングル)のガスマニホールド(710)は、プリカーサオリフィスプレート(930)の長手方向の寸法(L)および横切る方向(又は横方向)の寸法(Wd)を適合させて、特定の目的に合わせてパス(又は経路)ごとに堆積される薄膜層のコーティング幅および数を最適化するように構成され得る。また、同一のガスマニホールド(710)の下方の複数のパス(又は経路)を通して、例えば、物質のより大きな全厚を達成する往復直線移動によって、基材は、サイクル処理され得ることにも留意されたい。また、ガス分配マニホールドのコーティング面積が、特定のノンウェブ基材(ウェブではない基材)(例えば、大きなテレビのスクリーン)に適合され得ることにも留意されたい。これは、ガス分配マニホールドまたは基材のいずれかの反復移動、あるいはその両方の反復移動を使用して、この大きなノンウェブ基材をコーティングするためである。
【0058】
6.5 プリカーサオリフィスプレートの例
ここで、図10を参照すると、ガスオリフィスプレート(930)の第1の実施形態の単一(又はシングル)のユニットセル(1000)を切り取った概略断面図は、第1のガスオリフィスプレートの設計とガスフローのパターンとを示す。全体のガスオリフィスプレート(930)は、単一のユニットセル(1000)を含んでいてもよいが、ガスオリフィスプレート(930)は、好ましくは、複数のユニットセル(1000)を含む一体式のプレートとして構成され、複数のユニットセル(1000)は、並列で配置され、その横切る方向の寸法(Wd)に沿って、速度の軸線(V)に沿って延びる。上記で説明したように、各ユニットセル(1000)によって、このユニットセルを通過して輸送されるコーティング表面に単一(又はシングル)のALDコーティング層または薄膜が堆積される。図10において、基材(1025)は、速度の軸線(V)に沿って、ユニットセル(1000)を通過して輸送され、このユニットセルの底面から分離距離(1030)だけ離れて間隔を開けて配置され、この分離距離は、0.5〜5mmの寸法を有し得、好ましい分離距離の範囲は、0.5〜2mmである。基材のコーティング表面は、ユニットセル(1000)に面し、これは、好ましくは、ユニットセルの底面(1050)と共面(coplanar)にある。好ましい実施形態において、分離距離(1030)は、少なくとも0.5mmであり、底面(1050)とコーティング表面との間の十分なクリアランスを提供して、基材の厚みにおける変動(バリエーション)を収容し、そして基材がガスマニホールドを通過して輸送されるときの基材の位置における任意の望ましくない変動(フラクチュエーション)を収容する。さらに、最小の分離距離0.5mmは、底面(1050)とコーティング表面との間に十分なクリアランスを提供し、プリカーサノズルアセンブリおよびパージノズルアセンブリから出るガスが底面(1050)の下方に漏出して、エグゾーストインレット中に吸引され、かつコーティング表面付近の領域から除去される。本発明の最小の分離距離0.5mmは、Levyらによる先行技術に開示の0.025mmの操作する分離距離(これは移動ウェブのコーティングまたは移動ウェブ上に支持される基材のコーティングには実用的でない距離である)よりもかなり大きい。
【0059】
ユニットセル(1000)は、2つのプリカーサノズルアセンブリ(1005A,1005B)を含み、これらは、コーティング表面にプリカーサ(AおよびB)を向かわせるためにある。このユニットセルは、2つの不活性ガスノズルアセンブリまたはパージノズルアセンブリ(1015A,1015B)を含み、これらは、コーティング表面に不活性ガスまたはパージガス(例えば、窒素)を向かわせるためにあり、そして、各パージノズルアセンブリは、2つのプリカーサノズルアセンブリの間に配置される。ユニットセル(1000)は、3つのエグゾーストインレット(1010A,1010B,1010C)を含み、そのそれぞれが、長手方向のスロット(1060)を含み、これは、プリカーサオリフィスプレート(930)を通って垂直方向に延びる。各エグゾーストインレットは、適切なエグゾーストフローパス(又は通路)と流体連通の状態であり、この通路は、フロー分配プレート(925)、エグゾーストオリフィスプレート(920)およびエグゾースト回収プレート(915)を通って、エグゾースト回収マニホールド(830)または(835)の1つまで、垂直方向に延びる。各エグゾーストインレット(1010A,1010B,1010C)は、実質的にプリカーサオリフィスプレート(930)の長手方向の全寸法にわたって延び、分離距離(1030)からガスを吸引する。各エグゾーストインレットは、プリカーサノズルアセンブリ(1005A,1005B)とパージノズルアセンブリ(1015)との間に配置される。また、別のユニットセルをユニットセル(1000)に隣接してその左の縁部(又はエッジ)に配置する場合、プリカーサノズルアセンブリ(1005A)が、エグゾーストインレットと、その左側に配置されるパージノズルアセンブリとを有することについても留意されたい。
【0060】
基材のコーティング表面がユニットセル(1000)を通過して進むので、まず、基材は、コーティング表面にプリカーサAを向かわせる第1のプリカーサノズルアセンブリ(1005A)を通過する。プリカーサAは、コーティング表面と反応して、コーティング表面の化学的および物理的な特性を変化させて反応副生成物を生成する。未反応のプリカーサA、反応副生成物、およびパージノズルアセンブリ(1015A)から放出される不活性ガスは、プリカーサノズルアセンブリ(1005A)付近の分離距離(1030)において共に混合し、未反応のプリカーサA、不活性ガス、およびプリカーサAのコーティング表面との反応に関連する反応副生成物のガス混合物は、コーティング表面がエグゾーストインレット(1010A)を通過して進むとき、第1のエグゾーストインレット(1010A)へと実質的に完全に吸引される。さらに、各パージノズルアセンブリによって放出される不活性ガスのカーテンによって、未反応のプリカーサAおよび反応副生成物が他のプリカーサノズルアセンブリに向かってコーティング表面に対して平行に流れることを防止するか、あるいは、拡散することを防止する傾向にあり、その後、これは、エグゾーストインレット(1010A)に吸引される。別のエグゾーストポート(例えば、隣接するユニットセル(図示せず)のエグゾーストポート)が、エグゾーストインレット(1010A)に対向するプリカーサノズルアセンブリ(1005A)に隣接して位置決めされてもよく、そうすることで、2つのエグゾーストインレットが、プリカーサノズルアセンブリ(1005A)を囲み、分離距離(1030)からのガスを連続的に吸引するようになることに留意されたい。
【0061】
次いで、基材のコーティング表面は、不活性ガスをコーティング表面に向かわせるパージノズルアセンブリ(1015A)を通過して進む。不活性ガスのフローは、不活性ガスのカーテンを提供し、これは長手方向の軸線(L)に沿って延びるものであり、分離距離(1030)において、プリカーサAをプリカーサBと分離する。この分離距離(1030)は、未反応のプリカーサおよび反応副生成物がエグゾーストインレット中に吸引され得るのに十分に大きいが、隣接するプリカーサノズルアセンブリへのガスの拡散を防止するのには十分に小さいものである。さらに、パージノズルアセンブリ(1015A)からの不活性ガスのフローは、コーティング表面をパージする傾向がある。なぜなら、これが、パージノズルアセンブリ(1015A)の下方を通過して、あらゆる追加の未反応のプリカーサAおよび反応副生成物の分離距離(1030)をパージし続けるからである。その一方で、各エグゾーストインレット(1010A)および(1010B)によって、パージノズルアセンブリ(1015A)付近のコーティング表面および分離距離(1030)から、ガスは連続的に吸引される。
【0062】
次いで、このコーティング表面は、プリカーサBをコーティング表面に向かわせる第2のプリカーサノズルアセンブリ(1005B)を通過して進む。プリカーサBは、コーティング表面がプリカーサAとの反応によって改変された後、コーティング表面と反応し、プリカーサBとコーティング表面との間の反応によって、コーティング表面に新たな薄膜層を堆積させるが、また、その一方で、別の反応副生成物も生成する。未反応のプリカーサB、プリカーサBのコーティング表面との反応からの反応副生成物、および第1および第2のパージノズルアセンブリ(1015A,1015B)から放出される不活性ガスは、プリカーサノズルアセンブリ(1005B)付近の分離距離(1030)において共に混合され、そして、第2および第3のエグゾーストインレット(1010Bおよび1010C)へと吸引される。コーティング表面は、最終的には、不活性ガスをコーティング表面に向かわせる第2のパージノズルアセンブリ(1015B)を通過して進み、プリカーサAをプリカーサBと分離し、廃ガスをエグゾーストインレット(1010C)に向けて押し出す。別のエグゾーストインレット(例えば、隣接するユニットセル(図示せず)のエグゾーストインレット)は、エグゾーストインレット(1010C)に対向するパージノズルアセンブリ(1015B)の隣に位置決めされてもよく、そうすることで、2つのエグゾーストインレットがパージノズルアセンブリ(1015B)を囲み、分離距離(1030)からガスを連続して吸引するようになることに留意されたい。さらに、パージノズルアセンブリ(1015A)からの不活性ガスのフローは、さらに、コーティング表面をパージする。なぜなら、コーティング表面が、ポート(1015B)を通過して、分離距離(1030)のあらゆる未反応のプリカーサBおよび反応副生成物をパージし続けるからである。
【0063】
図11を参照すると、プリカーサオリフィスプレート(930)の第2の実施形態は、ユニットセル(1100)を含む。この実施形態において、ユニットセル(1100)は、3つの分離距離を有する。第1の分離距離(1140)は、プリカーサノズルアセンブリのベースウォール(1160A)および(1160B)の各々の底面と、コーティング表面との間に延び、そして、この第1の分離距離(1140)の寸法は、4〜10mmの範囲内であってもよい。第2の分離距離(1175)は、パージノズルアセンブリのベースウォール(1165)の各々の底面と、コーティング表面との間に延び、そして、この第2の分離距離の寸法は、2〜8mmの範囲内であってもよい。第3の分離距離(1145)は、プリカーサオリフィスプレートのベース表面(1150)と、コーティング表面との間に延び、この第3の分離距離の寸法は、0.5〜3mmの範囲内であってもよい。好ましい実施形態において、第3の分離距離(1145)は、少なくとも0.5mmであり、ベース表面(1150)とコーティング表面との間に十分なクリアランスを提供して、基材の厚みにおける変動を収容し、そして、基材がベース表面(1150)を通過して輸送されるときに、基材の位置のあらゆる所望でない変動(フラクチュエーション)を収容する。さらに、0.5mmの最小の分離距離は、底面(1150)とコーティング表面との間に十分なクリアランスを提供し、これは、パージノズルアセンブリから出るガスのためのものであり、ガスは、ベース表面(1150)の下方に漏出して、エグゾーストインレット中に吸引され、コーティング表面付近の領域から除去される。
【0064】
一般に、第2の分離距離(1175)は、第3の分離距離(1145)よりも大きく、第1の分離距離(1140)は、第2の分離距離(1175)よりも大きい。しかし、いくつかの実施形態において、第1および第2の分離距離(1140)および(1175)は、実質的に等しくてもよく、その両方が、第3の分離距離(1145)よりも大きくてもよい。この実施形態において、パージノズルアセンブリ(1115Aおよび1115B)は、ベースウォール(1165)を含み、その底面は、第2の分離距離(1175)を規定し、対向して平行するウォール(1162)を規定する。このウォール(1162)は、垂直に下方に延びて、ベース表面(1150)と一致するものである。このウォール(1162)は、パージノズルアセンブリ(1115Aおよび1115B)を、隣接するエグゾーストインレット(1105Aおよび1105B)と分離し、パージガスノズルアセンブリから出るパージガスをコーティング表面に向けて送達する。その一方で、このパージガスがコーティング表面に近接するまで(例えば、コーティング表面から0.5〜2mmまで)、パージガスが、隣接するエグゾーストインレット(1105Aおよび1105B)内に吸引されることを防止する。さらに、ウォール(1162)は、援助用のメカニカルバリアを提供して、プリカーサノズルアセンブリ(1110)から放出されるプリカーサAが、プリカーサノズルアセンブリ(1120)から放出されるプリカーサBと混合することを防止する。この実施形態において、各プリカーサノズルアセンブリ(1110)および(1120)は、ベースウォール(1160Aおよび1160B)を含み、その底面は、第3の分離距離(1140)を規定する。各プリカーサノズルアセンブリ(1110)および(1120)は、対向する側壁(1162)で囲まれていて、これは、プリカーサをコーティング表面に送達するのに役立ち、かかるプリカーサが、パージガスノズルアセンブリを通過して、拡散するのを防止する。
【0065】
ユニットセル(1100)は、第1のプリカーサノズルアセンブリ(1110)と、2つの対向するエグゾーストインレット(1105A)とを含み、この第1のプリカーサノズルアセンブリ(1110)は、コーティング表面(1130)にプリカーサAを向かわせるためのものであり、2つの対向するエグゾーストインレット(1105A)は、第1のプリカーサノズルアセンブリ(1110)の各側部に1個ずつ配置されるものであり、コーティング表面からのエグゾーストガス、ならびに分離距離(1140)および(1145)のそれぞれによって閉ざされた容量部分からのエグゾーストガスを回収するためのものである。この2つのエグゾーストインレット(1105A)によって回収されるエグゾーストガスは、未反応のプリカーサA、反応副生成物および不活性ガスを含む。同様に、ユニットセル(1100)は、第2のプリカーサノズルアセンブリ(1120)と、2つの対向するエグゾーストインレット(1105B)とを含み、この第2のプリカーサノズルアセンブリ(1120)は、コーティング表面(1130)にプリカーサBを向かわせるためのものであり、2つの対向するエグゾーストインレット(1105B)は、第2のプリカーサノズルアセンブリ(1120)の各側部に1個ずつ配置されるものであり、コーティング表面からのエグゾーストガス、ならびに分離距離(1140)および(1145)のそれぞれによって閉ざされた容量部分からのエグゾーストガスを回収するためのものである。この2つのエグゾーストインレット(1105B)によって回収されるエグゾーストガスは、未反応のプリカーサB、反応副生成物および不活性ガスを含む。4つのエグゾーストインレット(1105Aおよび1105B)の各々は、プリカーサオリフィスプレート(930)を貫通し、フロー分配プレート(925)、エグゾーストオリフィスプレート(920)およびエグゾースト回収プレート(915)を貫通するフローチャネルと流体連通の状態であり、これは、エグゾーストガスマニホールド(830)または(835)の1つに廃ガスを送達するものであり、エグゾースト回収マニホールド(830)および(835)の各々から、流れ(アウトフロー)をブロワー(1485)が吸引する。本発明の1つの局面によると、エグゾーストインレット(1105A)によって回収されるエグゾーストガスは、エグゾーストインレット(1105B)から回収されるエグゾーストガスと分離される。そうすることで、未反応のプリカーサAを含むエグゾーストガスのみがエグゾースト回収マニホールド(805)から出て、未反応のプリカーサBを含むエグゾーストガスのみがエグゾースト回収マニホールド(810)から出るようになる。
【0066】
ユニットセル(1100)は、さらに、第1のプリカーサノズルアセンブリ(1110)と第2のプリカーサノズルアセンブリ(1120)との間に配置される第1のパージノズルアセンブリ(1115A)と、第2のパージノズルアセンブリ(1115B)とを含む。各パージノズルアセンブリ(1115A,1115B)は、対向するウォール(1162)の間で、コーティング表面に不活性ガスを向かわせて、この不活性ガスは、第3の分離距離(1145)を通して、ウォール(1162)の下方に漏出して、プリカーサAが、プリカーサBと混合することを防止する。好ましい実施形態では、パージノズルアセンブリ(1115A,1115B)の各々から放出されるガスの圧力および/またはガスの容量は、プリカーサノズルアセンブリ(1110,1120)の各々から放出されるガスの圧力および容量よりも大きくてもよく、それによって、プリカーサガスおよび/または反応副生成物が、突出ウォール(1162)の下方に漏出しないことを確実にする。
【0067】
基材(1130)は、ユニットセル(1100)を通過して進むので、基材は、まず、コーティング表面にプリカーサAを向かわせる第1のプリカーサノズルアセンブリ(1110)を通過する。プリカーサAは、コーティング表面と反応して、コーティング表面の化学的および物理的な特性を変化させて反応副生成物を生成する。未反応のプリカーサAと、反応副生成物と、第1のパージノズルアセンブリ(1115A)から放出される不活性ガスとが、コーティング表面の付近で、かつ分離寸法(1145)および(1140)によって規定される容量部分で、一緒に混合される。第1のプリカーサノズルアセンブリ(1110)の各側部に1個ずつ配置される2つのエグゾーストインレット(1105A)によって、分離寸法(1145)および(1140)によって規定される容量部分から、およびコーティング表面から、この混合物は吸引される。各エグゾーストインレット(1105A)は、未反応のプリカーサBがこのエグゾーストガスと混合することなく、未反応のプリカーサA、反応副生成物および不活性ガスを除去する。次いで、このコーティング表面に不活性ガスを向かわせて、あらゆる反応副生成物または未反応のプリカーサAをコーティング表面からさらにパージするパージノズルアセンブリ(1115A)を通過して、基材は進む。上記のように、コーティング表面に放出される不活性ガスは、ガスのカーテンを形成し、これは、ベースウォール(1165)からコーティング表面まで延び、プリカーサAをプリカーサBと分離するものである。
【0068】
次いで、基材(1130)は、コーティング表面にプリカーサBを向かわせる第2のプリカーサノズルアセンブリ(1120)を通過して進む。プリカーサBは、コーティング表面がプリカーサAとの反応によって改変された後にこのコーティング表面と反応し、化学的および物理的に改変されたコーティング表面とプリカーサBとの反応によって、コーティング表面に固体(又は中実)の薄膜層が堆積される。また、その一方で、別の反応副生成物を生成する。未反応のプリカーサBと、反応副生成物と、パージノズルアセンブリ(1115Aおよび1115B)から放出される不活性ガスとが、このコーティング表面で一緒に混合される。第2のプリカーサノズルアセンブリ(1120)の各側部に1個ずつ配置されるエグゾーストインレット(1105B)によって、分離距離(1140および1145)によって規定される容量部分から、およびコーティング表面から、この混合物は吸引される。次いで、この基材は、コーティング表面に不活性ガスを向かわせるパージノズルアセンブリ(1115B)を通過して進む。コーティング表面に放出される不活性ガスは、ガスのカーテンを形成し、これは、ベースウォール(1165)とコーティング表面との間で延びて、プリカーサBをプリカーサAから分離し、さらに、反応副生成物および未反応のプリカーサBをコーティング表面から除去する。
【0069】
6.6 プリカーサおよび不活性ガスの送達
図12を参照すると、ガスマニホールド(710)は、上面等角分割図で部分的に切り取られて示され、これは、図の後方(リア)部分のハードウェアおよび図の前方(フロント)部分のガスフローを示し、ガスマニホールド(710)を通るプリカーサのフローを示す。プリカーサAのフローの経路(又はパス)は、明瞭化のためにパターン化している。図12は、エグゾースト回収プレート(915)、エグゾーストオリフィスプレート(920)およびフロー分配プレート(925)を通して切り取られた断面図を示す。プリカーサオリフィスプレート(930)は、図12には示されていない。プリカーサAは、複数のプリカーサポート(815)を通して、ガスマニホールド(910)に入る。プリカーサポート(815)は、エグゾースト回収プレート(915)を貫通し、エグゾーストオリフィスプレート(920)内に形成される第1の横切る方向(又は横方向)の流体用導管にプリカーサAを送達する。アイテム(1236)は、プリカーサAを含む。このとき、プリカーサAは、第1の横切る方向の導管を通過し得るようである。プリカーサAは、複数の長手方向のフローパス(1241)を介して、横切る方向の導管を出る。この複数の長手方向のフローパス(1241)は、フロー分配プレート(925)内に形成される複数の第1の長手方向の流体用導管によって形成されるものである。各々の複数のフローパス(1241)は、第1のプリカーサノズルアセンブリ(例えば、上記の(1005Aまたは1110))に供給し、複数の第1のプリカーサノズルアセンブリを通るガスのフローを、図12に(1250)として示す。
【0070】
プリカーサBは、複数のプリカーサポート(820)を通して、ガスマニホールド(910)に入る。プリカーサポート(820)は、エグゾースト回収プレート(915)を貫通し、エグゾーストオリフィスプレート(920)内に形成される第2の横切る方向(又は横方向)の流体用導管にプリカーサBを送達する。アイテム(1235)は、プリカーサBを含み、このとき、プリカーサBは、エグゾーストオリフィスプレート(920)内に形成される第2の横切る方向の導管を通過し得るようである。プリカーサBは、複数の第2の長手方向のフローパス(1240)を介して第2の横切る方向の導管を出る。この複数の第2の長手方向のフローパス(1240)は、フロー分配プレート(925)内の複数の第2の長手方向の流体用導管によって形成されるものである。各々の複数のフローパス(1240)は、第2のプリカーサノズルアセンブリ(上記の(1005Bまたは1120)など)に供給し、複数の第2のプリカーサノズルアセンブリを通るガスのフローを、図12に(1265)として示す。
【0071】
図12にさらに示されるように、不活性ガスは、不活性ガスポート(825)を通して、このマニホールドに入る。複数の不活性ガスポートは、エグゾースト回収プレート(915)を貫通し、エグゾーストオリフィスプレート(920)内に形成される第3の横切る方向(又は横方向)の流体用導管に不活性ガスのフローを送達する。アイテム(1237)は、不活性ガスを含み、このとき、不活性ガスは、エグゾーストオリフィスプレート(920)内に形成される第3の横切る方向の導管を通過し得るようである。パージガスは、複数の第3の長手方向のフローパス(1242)を介して、第3の横切る方向の導管を出る。この複数の第3の長手方向のフローパス(1242)は、フロー分配プレート(925)内の複数の第3の長手方向の流体用導管によって形成される。各々の複数のフローパス(1242)は、パージノズルアセンブリ(例えば、上記の(1015A,1015Bまたは1115Aおよび1115B))に供給し、パージガスは、フローパス(1242)の各々から長手方向に延びる複数のパージノズルアセンブリを通して流れる。
【0072】
6.7 エグゾーストガスの除去
ここで、図9および13を参照すると、図9は、図8の断面(900−900)で切り取った断面図であり、図13は、図9から取り出した展開図(1300)を示す。この展開図(1300)は、ユニットセルを示す。図9を参照すると、上部(トップ)から下部(ボトム)まで、エグゾーストマニホールド(835)の壁部(又はウォール)を示し、これは、エグゾースト回収プレート(915)のその基部(又はベース)に取り付けられることが示される。エグゾースト回収プレート(915)は、エグゾーストオリフィスプレート(920)と係合し、このエグゾーストオリフィスプレートは、フロー分配プレート(925)と係合し、このフロー分配プレートは、プリカーサオリフィスプレート(930)と係合する。エグゾースト回収プレート(915)、エグゾーストオリフィスプレート(920)、フロー分配プレート(925)およびプリカーサオリフィスプレート(930)は、それぞれ、実質的には、矩形または四角形のプレートの形状の構成要素(又はエレメント)であり、これらは、材料の厚みによって分割される対向する平行の表面を有し、実質的に等しい長手方向および横切る方向(又は横方向)の寸法を有する。この長手方向の寸法は、コーティング表面の幅(Ws)またはガス分配マニホールドのコーティング幅に対応する。この横切る方向(又は横方向)の寸法は、ガス分配マニホールドの幅(Wc)に対応し、これは、単一(又はシングル)のユニットセル(例えば100)の幅の数倍である。
【0073】
各プレートは、それと係合するプレートに対して、例えばOリング、ガスケットなど(図示せず)によってガスシールされ得て、プレートの間からガスが分配マニホールドに漏出するのを防止してもよい。また、各プレートは、様々なオリフィス、チャネルなどを含み、これらは、プレートを通して、またはプレートを部分的に通して広がり、そして、これらは、必要に応じて、ガスマニホールドを通してガスを送達するための流体用導管として役立つ。さらに、係合プレートは、対応する表面チャネルなどを含んでいてもよく、これらは、プレートが組み立てられて流体用導管を形成するときに、一緒に結合される。プレートの材料は、メタルアロー(例えば、アルミニウムまたはステンレス鋼)を含んでいてもよい。あるいは、プレートは、成形可能なポリマー材料(例えば、ABSまたはポリカーボネート)を含んでいてもよい。あるいは、プレートは、セラミック材料(石英またはガラスなど)を含んでいてもよい。
【0074】
図13を参照すると、例示のエグゾーストガスフローの経路(又はパス)が示され、ここで、プリカーサノズルアセンブリ(1340)は、対向するエグゾーストインレット(1355A)の間に配置される。示されるように、各エグゾーストインレット(1355A)は、長手方向のスロットを含み、これは、プリカーサオリフィスプレート(930)の全体を通して、かつフロー分配プレート(925)の全体を通して、エグゾーストオリフィスプレート(920)まで垂直方向に広がる。エグゾーストオリフィスプレート(920)は、対向する長手方向のスロット(1310)および(1315)を含み、これらは、エグゾーストオリフィスプレート(920)の対向する表面から広がる。この対向するスロットは、センターウォール(1305)で終了し、これは、それ自体を貫通する複数の円形のオリフィス(1320)を含む。エグゾーストガスは、複数の円形のオリフィス(1320)の各々を通過し、エグゾースト回収マニホールド(835)へと流れる。オリフィス(1320)は、センターウォール(1305)を通して、流れが絞られた状態を形成するように寸法が調整され、それによって、長手方向のスロット(1310)からスロット(1315)へのガスフローが、オリフィス(1320)によって制限されるようになる。この制限されたガスフローは、結果的に、中央ウォール(1305)の長手方向の長さに沿って、オリフィス(1320)のそれぞれを通る実質的に均一なエグゾーストガスのフローを吸引することになる。同様に、プリカーサノズルアセンブリ(1335)は、対向するエグゾーストインレット(1355)の間に配置され、これは、エグゾーストインレット(1355A)と構造および動作が実質的に同一である。ただし、例外的に、エグゾーストインレット(1355)は、それによって回収されたエグゾーストガスをもう一方のエグゾースト回収マニホールド(830)に送達し得る。
【0075】
ブロワー(1485)は、エグゾースト回収マニホールド(830)および(835)の各々と流体連通の状態であり、ブロワーの操作によって、エグゾースト回収マニホールド(830)および(835)の各々から出るエグゾーストガスを吸引する。エグゾースト回収マニホールド(830)および(835)の各々において生じる圧力の低下は、オリフィス(1320)の各々を通過するエグゾーストガスの容量を均一に吸引し、各エグゾーストインレット(1355A)内にエグゾーストガスを吸引する。同様に、プリカーサノズルアセンブリ(1335)は、エグゾーストインレット(1355A)と実質的に同一である対向するエグゾーストインレット(1355)の間に配置される。ただし、例外的に、エグゾーストインレット(1355)は、複数の円形のオリフィス(1325)の各々を通過し、エグゾースト回収マニホールド(830)ではなく、エグゾースト回収マニホールド(830)に流れる。
【0076】
6.8 ノズルアセンブリの例
ここで、図10〜13を参照すると、各プリカーサノズルアセンブリ(1005A,1005B,1110,1120,1335,1340)および各パージノズルアセンブリ(1015A,1015B,1115A,1115B,1350)は、長手方向のインプット(注入又は入口)チャンバ(1330)を含み、これは、ベースウォール(1045,1160A,1160B,1165,1345)によって、および対向する側壁(1035,1135,1375)によって包囲されている。図13に最も良く示されているように、長手方向のインプットチャンバ(1330)は、それぞれ、プリカーサオリフィスプレート(930)内に部分的に形成され、そして、フロー分配プレート(925)内に部分的に形成される。図12に最も良く示されるように、プリカーサノズルアセンブリに関連付けられる(又は結合される)長手方向のインプットチャンバの各々には、第1および第2の長手方向の導管(1240)または(1241)の1つを通して、プリカーサガスが供給され、そして、パージノズルアセンブリに関連付けられる(又は結合される)長手方向のインプットチャンバの各々には、第3の長手方向の導管(1242)の1つを通して、不活性ガスが供給される。このように、適切なガスが、各長手方向のインプットチャンバ(1330)にその一方の端部から入り、このチャンバを満たす。この長手方向のインプットチャンバ(1330)の各々は、プリカーサオリフィスプレート(930)の長手方向の寸法に沿って、実質的にはガスマニホールドの活性部分の長手方向の全寸法(L)に沿って、水平方向に延び、そしてガスマニホールドのコーティング幅(Ws)を規定する。
【0077】
ベースウォール(1045,1160A,1160B,1345)は、それぞれ、複数のオリフィス(1070,1170,1370)を含み、このオリフィスは、コーティング表面に対して実質的に垂直の軸線に沿って、ベースウォールを通して延びる。好ましい実施形態では、複数のオリフィス(1070,1170および1370)は、それぞれ、円形であり、その直径は、長手方向のチャンバ(1330)のそれぞれから出る絞られたガスフローを発生させるのに十分に小さいものである。より詳細には、長手方向のチャンバ(1330)から出るガスフローが円形のオリフィス(1070,1170および1370)によって制限されるとき、絞られたガスフローが発生する。この絞られたガスフローは、先行技術に対する利点を提供する。先行技術において、長手方向のインプットチャンバ(1330)のいずれかにおけるガスの圧力および/またはガス容量の小さな周期的な変動は、オリフィス(1070,1170,1370)を通過するガス容量の対応する変動においては生じない。さらに、この絞られたフローのコンディションは、長手方向のインプットチャンバ(1330)の長手方向の全長に沿って、円形のオリフィスの各々を通過する実質的に均一なガス容量をもたらす。このように、この絞られたフローのコンディションは、有利には、各ガスノズルアセンブリの下方を通過するコーティング表面を、長手方向の軸線(L)に沿って、単位時間ごとに、および単位長さごとに、実質的に均一な容量の処理ガスに曝露させて、それによって、所望のドウェル時間の間に、このシステムのコーティング幅(Ws)にわたって、完全な飽和(サチュレーション)をもたらす。従って、本発明によって提供されるこの絞られたフローのコンディションは、大気圧での向上したコーティングの均一性を提供し、また、その一方で、プリカーサの使用を減少させる。上記の例示の実施形態において、この所望の絞られたフローのコンディションを有するガスオリフィス(1050,1170,1370)は、直径が0.025〜0.127mm(0.0001〜0.005インチ)の範囲の円形の孔を含む。好ましくは、オリフィスの直径は、0.064〜0.0165mm(0.00025〜0.00065インチ)の範囲である。上記の例示の実施形態において、このガスオリフィスは、0.25〜10mm(0.010〜0.4インチ)の範囲、好ましくは約3mm(0.12インチ)の中心間(中心〜中心)またはピッチの寸法で間隔を開けて配置される。長手方向の軸線に沿う所望の均一なガスの分配を提供する他の間隔を開けた配列は、本発明から逸脱することなく、使用可能である。さらなる実施形態において、複数の円形の開口は、1またはそれ以上の長手方向のスロット、1またはそれ以上の楕円形または他の形状のオリフィスあるいは他のオリフィスパターンと置き換えられてもよく、これらは、本発明から逸脱することなく、長手方向の軸線に沿って、所望の均一なガスの分配を提供する。
【0078】
ガスオリフィス(1070,1170,1370)の各々から出るガスは、一定の分配パターンでコーティング表面に垂直方向のインシデントで衝突し、この分配パターンは、円形の直径を有していてもよいものである。この分配パターンの形状およびサイズは、少なくとも、そのガスの密度、分離距離、および他のフローの特徴に依存する。上記のように、絞られたフローのコンディションの結果として、この分配パターンは、長手方向のインプットチャンバ(1330)の内側のガス圧力または長手方向のインプットチャンバに入るガスのマスフローレイトに、より少なく依存し、そして、これは、コーティングの特徴を向上させる。好ましくは、オリフィス(1070,1170,1370)は、長手方向の軸線に沿って、中心間(中心〜中心)のピッチで均一に間隔を開けて配置され、これは、隣接するオリフィスの分配パターンのいくらかのオーバーラップを提供するものである。円形のオリフィス(1070,1170,1370)の中心間の間隔を開けた配置(またはスペーシング)および直径は、実質的に活性(又はアクティブ)な基材のコーティング幅(Ws)に対応するガスマニホールド(710)の長手方向の全長(L)に沿って、ガス容量を均一に分配するように選択される。
【0079】
パージノズルアセンブリ(1015A,1015B,1115A,1115B,1350)のベースウォールを貫通するオリフィスの寸法および形状は、コーティング表面に向けられるパージガスの容量とプリカーサガスの容量との間に差を設けるために、プリカーサノズルアセンブリ(1005A,1005B,1110,1120,1335,1340)のベースウォールを貫通するオリフィスの寸法および形状と異なっていてもよい。プリカーサノズルアセンブリ(1005A,1005B,1110,1120,1335,1340)のベースウォールを貫通するガスオリフィスの寸法および形状は、コーティング表面に向けられる1つのプリカーサの容量が別のプリカーサに対して異ならせるために、様々なプリカーサガスで異なっていてもよい。ベースウォールを貫通するオリフィスの中心間の間隔を開ける配置(又はスペーシング)またはピッチは、単位長あたりのコーティング表面へのガス容量の送達を異ならせるために、1つのノズルアセンブリと別のノズルアセンブリとが異なっていてもよい。例えば、プリカーサノズルアセンブリは、パージノズルアセンブリと比べて、オリフィスの全数は、大きくても、小さくてもよい。あるいは、1つのプリカーサノズルアセンブリは、同一ガスマニホールドの別のプリカーサノズルと比較して、オリフィスの全数は、大きくても、小さくてもよい。より一般的には、本発明の様々な実施形態によると、長手方向のインプットチャンバ(1330)から導かれるオリフィスの寸法、形状およびピッチは、コーティング表面におけるガスの分配パターンを調整してコーティング表面での完全な飽和をより頼もしく得るために、変更されてもよい。さらに、分離距離(1030,1145,1140および1175)は、ガスの分配パターンを調整して、コーティング表面での完全な飽和をより頼もしく得るために、変更されてもよい。
【0080】
6.9 コーティング表面でのガスフローの例
図10および11のそれぞれにおいて、ガスオリフィスから出て示されるガスフローのラインを参照すると、上記のユニットセルの実施形態のそれぞれにおいて、ベースウォール(1045,1160A,1160B,1325)を貫通するオリフィスは、実質的にコーティング表面に対して垂直方向の軸線に沿って配向され、この軸線は、直立方向の軸線であってもよい。円形のガスオリフィスを出るガスは、実質的に円錐形のパターンを形成してもよく、これは、ガスがコーティング表面に衝突する円形のゾーンを規定する。上記のように、円形ゾーンの直径は、分離距離(1030,1140)、ガスオリフィスの直径、ガスの圧力に依存し、そして、程度までは、ガスの温度、密度、基材の速度などに依存し得る。コーティング表面への衝突の後、このガスは、同一の円錐形パターンで、コーティング表面から離れるように偏向され、これは、コーティング表面からの距離が増大するのに伴って、連続して直径が広がるものである。従って、偏向されるガスの多くは、エグゾーストインレット(例えば、(1010B,1010C,1105A))に向けて向かわされ、ここで、ガスは、分離距離(1030,1140および1145)から、迅速に除去される。
【0081】
偏向されるガスの一部がコーティング表面に対して、平行またはほぼ平行に向けられる程度まで、プリカーサノズルアセンブリの対向する側部に配置されるパージノズルアセンブリ(1015A,1115A,1350)が、不活性ガスのカーテンを、分離距離(1030,1145)に送達し、そして、不活性ガスのカーテンによって、プリカーサガスが、コーティング表面に対して、平行に流されること、または平行に拡散されることを防止する傾向にあり、そして、好ましくは、未反応のプリカーサガスおよび反応副生成物を分離距離(1030,1140)から除去するエグゾーストインレット(1010A,1105A)によって生じる低圧エリアにプリカーサを制限する。いくつかの実施形態において、プリカーサがコーティング表面に対して、平行またはほぼ平行に流れることを防止するために、パージノズルアセンブリ(1015A,1115A)を通して、より大きな容量の不活性ガスを送達することが好ましくてもよい。従って、エグゾーストインレット、例えば(1010A,1105A)に吸引されるプリカーサガスに加えて、パージノズルアセンブリ(1015A,1015B,1115A,1115B)から放出され、そしてコーティング表面から偏向される不活性ガスの一部が、隣接するエグゾーストインレット(1010A)および(1105A)に向かって、分離距離(1030)および(1145)を通して流れることが望ましい。
【0082】
上記のユニットセルの実施形態の各々において、パージノズルアセンブリは、プリカーサノズルアセンブリの間に配置されて、異なるプリカーサが、ガスプリカーサオリフィスプレート(930)とコーティング表面との間の分離距離において、混合することを防止する。上記のユニットセルの実施形態の各々において、分離距離(1030,1145)を選択して、コーティング表面から偏向される未反応のプリカーサガスおよび反応副生成物を、エグゾーストインレット(1010)および(1105)に向けて案内(ガイド)して、異なるプリカーサが混合することを防止し、かつ、コーティング表面の全面積にわたって、プリカーサとコーティング表面との間における迅速かつ完全な反応を促進する。
【0083】
6.10 ガスコントロールシステム
ここで、図14を参照すると、本発明の一実施形態によるガスコントロールシステム(1400)を模式的に示す。ガスコントロールシステム(1400)は、ガスマニホールド(1460)(図8に示す上記のガスマニホールド(710)など)を含む。プリカーサおよび不活性ガスは、インプット(注入)ライン(1412)を介して、例えば、複数のインプット導管によって、ガスマニホールド(1460)へと送達される。インプットライン(1412)は、1またはそれ以上の圧力ゲージ(P)と、フローメータ(1425,1455)と、コントロールバルブ(1435,1440,1445)と、圧力レギュレータ(1410)および(1420)とを含んでいてよく、必要に応じて、ガスのインプット(注入)圧力およびマスフローレイトを調節し、そして、プリカーサのインプット(注入)を調節する。不活性ガスは、ガス圧力レギュレータ(1410)によって圧力が調節される不活性ガス供給(源)(1405)から送達される。
【0084】
ガスコントロールシステム(1400)は、さらに、マニホールド(1460)を通してエグゾーストガスを吸引するブロワー(1485)を含む。エグゾーストガスは、2つの分離エグゾーストライン(1465)および(1470)を通して吸引され得、一方のガスライン(1465)は、未反応のプリカーサAを含むエグゾーストガスに関連し、そして、他方のガスライン(1470)は、未反応のプリカーサBにそれぞれ関連する。エグゾーストガス回収モジュール(1475)は、エグゾーストガスを回収して処理するために、ブロワー(1485)とマニホールド(1460)との間に配置される。エグゾースト回収モジュール(1475)は、未反応のプリカーサを捕捉するためのトラップ、または未反応のプリカーサを再生(又は回収)するためのプリカーサ再生(又は回収)モジュール、あるいはその両方を含んでいてもよい。また、エグゾースト回収モジュール(1475)は、反応副生成物をエグゾーストガスから分離するためのトラップまたは濾過装置を含んでいてよい。また、ガスコントロールシステム(1400)は、スロットルバルブ(1480)などを含んでいてもよく、これは、ガスマニホールド(1460)とブロワー(1485)との間に配置されるものであり、エグゾーストガスの圧力および/またはマスフローレイトを調整するのに適している。
【0085】
ガスコントロールシステム(1400)は、液体または固体のプリカーサを気化させるために、1またはそれ以上の従来のガスバブラー(1450)を含んでいてもよい。あるいは、またはさらに、このシステムは、バブラーを必要としない1またはそれ以上の気体のプリカーサの容器を含んでいてもよい。ガスバブラー(1450)は、密閉された容器内に液体または固体のプリカーサを含み、そして、不活性ガスが、フローライン(1430)に沿って、容器内に送達される。バブラー(1450)への不活性ガスのインプット(注入)は、圧力レギュレータ(1410)およびマスフローコントローラ(1425)によって調節され得る。プリカーサの気体は、コントロールバルブ(1440)を通して、バブラーから放出される。コントロールバルブ(1435,1440および1445)を使用して、不活性ガスがバブラー(1450)に流入することを防止するか、および/または、プリカーサがバブラーから出ることを防止してもよい。
【0086】
ガスコントローラ(1400)は、不活性ガスをガスマニホールド(1460)(例えば、図8に示す不活性ガスインプットポート(825)の各々)へと直接に送達する。さらに、不活性ガスは、キャリアガスとして一方のまたは両方のプリカーサと混合されてもよく、そうすることで、混合物または不活性ガスおよびプリカーサの気体は、図8に示すプリカーサインプットポート(815),(820)の各々へと送達されるようになる。
【0087】
この実施形態は、2成分のプリカーサシステムを使用するが、本発明は、2種類のプリカーサに限定されない。本発明は、本発明から逸脱することなく、所望のコーティングの目的を達成するために必要なあらゆる数のプリカーサに開かれている。さらに、このガスコントロールシステム(1400)は、概略で示すものであり、複数の様々なプリカーサおよび不活性ガスの容器、バブラーおよびフローパス(又は流路)を含んでいてもよい。なぜなら、ユーザーは、複数の様々な基材に種々の異なる物質層を付与するようにガスマニホールドを構成することを求め得るからである。
【0088】
6.11 基材の輸送システムを含むデポジションシステム
図15および16は、ぞれぞれ、本発明の実施形態に従う様々な基材の輸送システムを含むデポジションシステムを示す。
【0089】
図15を参照すると、デポジションシステム(1500)は、基材の輸送システムを含み、これは、上記の技術に従って、基材にコーティングを堆積させるために、ガスデポジションヘッドシステムの下方で実質的に平らな形状で基材を輸送するように設計されるものである。基材がこのヘッドシステムの下方を通過するとき、各ユニットセルと、基材のコーティング表面との間の分離距離が実質的に同一となるように、デポジションヘッドシステムを設計および配置する。図15の実施形態は、4つのユニットセル(1510,1520,1530,1540)を含む図3に示されるガスデポジションヘッドシステムを利用するものである。
【0090】
図15の実施形態において、輸送システムは、コーティングされていない基材を供給する供給ロール(1550)と、コーティングされた基材を回収する巻取ロール(1560)とを含む。デポジションプロセスの間に、供給ロール(1550)は、例えば、反時計回り方向に回転して、基材を巻き出す。いくつかの実施形態において、示されるように、基材は任意の基材支持体(1570)の上方に輸送され得、これは、存在する場合、実質的に平らな形状で基材を維持するのを援助し得るものである。基材が、ガスデポジションヘッドシステムの下方を通過するとき、上記の技術に従って、コーティング表面に層を堆積させる。この実施形態において、ドライブ機構(1580)は、巻取ロール(1560)を回転させて、コーティングされた基材を回収し、これは、次に、供給ロール(1550)を回転させて、基材を供給する。しかし、他の実施形態では、ドライブ機構は、このドライブ機構が巻取ロール(1560)と関連付けられる(又は協同する)代わりに、あるいはこれに追加して、供給ロール(1550)と関連付けられて(又は協同して)もよい。さらに、輸送システム(1500)は、各ユニットセルのガスノズルアセンブリに対応するプリカーサおよび不活性ガスを送達するためのガス供給モジュール(1585)と、ユニットセルのエグゾーストチャネルを通してエグゾーストガスを回収するためのエグゾーストモジュール(1590)とを含む。好ましい実施形態では、基材は、約24m/minの速度でガスデポジションヘッドを通過して進み、各ガスノズルアセンブリは、約1mmのノズル幅を有し、コーティング表面とデポジションヘッドのベース表面との間の分離距離は、約0.5mmである。図15の例示の実施形態では、4個のユニットセルが示され、各ユニットセルが、ALDコーティングプロセスによって、コーティング表面に、単一の固体(又は中実)のフィルム層を堆積させる。他の実施形態では、システム(1500)は、デポジションヘッドシステムのユニットセルの数を増加させることによって、より多くの固体(又は中実)のフィルム層を堆積させるように構成されてもよい。
【0091】
図16を参照すると、デポジションシステム(1600)は、基材の輸送システムを含み、これは、上記の技術に従って、基材にコーティングを堆積させるように、湾曲した形状で基材を輸送するように設計されるものである。また、この実施形態においては、デポジションヘッドも湾曲していて、そうすることで、基材がこのヘッドの下方を通過するときに、各ユニットセル(1610,1620,1630,1640)とコーティング表面との間の分離距離が実質的に同一となるようになる。図15の実施形態と同様に、輸送システムは、コーティングされていない基材を供給する供給ロール(1650)と、コーティングされた基材を回収する巻取ロール(1660)とを含む。この輸送システムは、湾曲した基材支持要素(又は基材支持エレメント)(1670)を含み、これは、基材のコーティング表面を各ユニットセル(1610,1620,1630,1640)から等距離で維持するためにある。ドライブ機構(1680)は、巻取ロール(1660)を回転させて基材を回収し、これは、次いで、供給ロール(1650)を回転させて基材を供給する。しかし、他の実施形態では、この湾曲した基材支持要素(1670)は、コーティング表面を所望の速度でユニットセルを通過させて進めるために、ドライブ機構(1680)によって駆動されるローラを含んでいてもよい。さらに、ドライブ機構(1680)は、供給ロール(1610)を駆動させるための構成要素(又はエレメント)を含んでいてよい。
【0092】
上記の実施形態の全てにおいて、不活性ガスならびにプリカーサガスは、1またはそれ以上の不活性ガス入口ポート(825)を通して、あるいはコーティングプロセスで使用される各プリカーサに関する少なくとも1つのプリカーサ入口ポート(815)および(820)を通して、ガスマニホールド(710)に実質的に連続して送達される。上記の実施形態の全てにおいて、エグゾーストガスは、複数の出口ポート(805)および(810)の各々を通して、ガスマニホールド(710)から、実質的に連続的に除去される。他の実施形態において、単一のエグゾースト出口ポートの使用が可能である。出口ポート(805)および(810)は、三角形の形状の出口プレナム(830,835)からガスを吸引する。他の実施形態において、単一の出口プレナムの使用が可能である。各出口プレナムは、エグゾースト回収プレート(915)と係合し、そして、各出口プレナムとエグゾースト回収プレートとの間のインターフェイスは、ガスケット、Oリングなどでシーリングされる。さらに、プリカーサおよび不活性ガスの各々のマスフローレイト、圧力および温度は、所定のコーティングサイクルで完全な飽和(又はサチュレーション)を達成する必要に応じて、コントロールシステムによって変更されてもよい。本発明の他の実施形態において、ユーザーは、例えば、コーティング表面への自己組織化単分子膜の気相成長を促進するために、単一のプリカーサガスを基材のコーティング表面に送達することを選択してもよい。このような場合、単一のプリカーサガスは、1つまたは全ての入口ポート(815,820)に送達されてもよい。
【0093】
また、本発明は、好ましい実施形態について上記で記載されているが、本発明がこれらに限定されないことは、当業者が理解するであろう。上記の発明の様々な特徴および形態は、別々にまたは結合して使用され得る。さらに、本発明は、その特定の環境での実施、ならびに、特定の用途(例えば、ALD)に関連して記載されているが、当業者は、その有用性がこれらに限定されないこと、ならびに本発明が化学気相成長、物理気相成長、プラズマエッチング化学気相成長およびパルスレーザー堆積などの堆積方法のあらゆる環境および実施においても有益に使用できることを理解するであろう。従って、以下に記載の特許請求の範囲は、本明細書中に記載の本発明の全範囲および要旨に鑑みて解釈されるべきである。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
基材のコーティング表面に層を堆積させる方法であって、
第1のプリカーサノズルアセンブリと第2のプリカーサノズルアセンブリとを有するユニットセルを含むデポジションヘッドを提供すること、
前記第1のプリカーサノズルアセンブリから前記コーティング表面に対して実質的に垂直な方向に第1のプリカーサを大気の条件に放出すること、
前記第2のプリカーサノズルアセンブリから前記コーティング表面に対して実質的に垂直な方向に第2のプリカーサを大気の条件に放出すること、
前記コーティング表面の第1の領域に前記第1のプリカーサを向かわせた後に前記コーティング表面の前記第1の領域に前記第2のプリカーサを向かわせるように前記デポジションヘッドと前記基材とを相対的に移動させること
を含む、方法。
(態様2)
前記ユニットセルは、前記第1のプリカーサノズルアセンブリと前記第2のプリカーサノズルアセンブリとの間に配置される不活性ガスノズルアセンブリを有し、前記方法は、前記不活性ガスノズルアセンブリから前記コーティング表面に実質的に垂直な方向に不活性ガスを大気の条件に放出することであって、前記第1のプリカーサが前記第2のプリカーサと混合するのを実質的に防止するバッファゾーンを形成するように前記不活性ガスを向かわせることを更に含む、態様1に記載の方法。
(態様3)
前記ユニットセルが、前記第1のプリカーサノズルアセンブリと前記不活性ガスノズルアセンブリとの間に配置される第1のエグゾーストチャネルと、前記第2のプリカーサノズルアセンブリと前記不活性ガスノズルアセンブリとの間に配置される第2のエグゾーストチャネルとを含み、前記方法は、第1のエグゾーストチャネルを通して、未反応の第1のプリカーサおよび反応副生成物の一方を除去することと、前記第2のエグゾーストチャネルを通して、未反応の第2のプリカーサおよび反応副生成物の一方を除去することとを更に含む、態様2に記載の方法。
(態様4)
前記第1のプリカーサおよび前記第2のプリカーサが同時に放出される、態様1に記載の方法。
(態様5)
前記コーティング表面の上方において、前記デポジションヘッドを横方向に移動させることを含む、態様1に記載の方法。
(態様6)
前記デポジションヘッドの下方において、前記基材を横方向に移動させることを含む、態様1に記載の方法。
(態様7)
前記デポジションヘッドが、前記コーティング表面から0.5〜5mmの距離で離れている、態様1に記載の方法。
(態様8)
前記第1のプリカーサが、前記コーティング表面と反応して、化学的に改変された表面を形成し、前記第2のプリカーサが、前記化学的に改変された表面と反応して、固体の物質層を形成する、態様1に記載の方法。
(態様9)
前記デポジションヘッドが複数のユニットセルを含む、態様1に記載の方法。
(態様10)
前記デポジションヘッドが静止していて、前記相対的な移動が、前記基材のコーティング表面を移動させて10〜35m/分の範囲の速度で前記デポジションヘッドを通過させることを含む、態様1に記載の方法。
(態様11)
デポジションシステムであって、
コーティング表面を含む基材と、
第1のプリカーサノズルアセンブリと第2のプリカーサノズルアセンブリとを有するユニットセルを含むデポジションヘッドであって、前記第1のプリカーサノズルアセンブリが、前記コーティング表面に対して実質的に垂直な方向に第1のプリカーサを大気の条件に放出するように構成および配置され、前記第2のプリカーサノズルアセンブリが、前記コーティング表面に対して実質的に垂直な方向に第2のプリカーサを大気の条件に放出するように構成および配置される、デポジションヘッドと、
前記デポジションヘッドおよび/または前記基材と協同するアクチュエータであって、前記デポジションヘッドと前記基材との間で相対的な運動を発生させて、前記コーティング表面の第1の領域を前記第1のプリカーサに曝露させた後、前記コーティング表面の前記第1の領域を前記第2のプリカーサに曝露させるように構成されるアクチュエータと
を含む、デポジションシステム。
(態様12)
前記ユニットセルが、前記第1のプリカーサノズルアセンブリと前記第2のプリカーサノズルアセンブリとの間に配置される不活性ガスノズルアセンブリを有する、態様11に記載のシステム。
(態様13)
前記ユニットセルが、前記第1のプリカーサノズルアセンブリと前記不活性ガスノズルアセンブリとの間に配置される第1のエグゾーストチャネルと、前記第2のプリカーサノズルアセンブリと前記不活性ガスノズルアセンブリとの間に配置される第2のエグゾーストチャネルとを含む、態様12に記載のシステム。
(態様14)
前記第1のエグゾーストチャネルが、前記第2のエグゾーストチャネルと分離されている、態様13に記載のシステム。
(態様15)
前記アクチュエータが、前記基材と協同する機械的な直線変位機構を含む、態様11に記載のシステム。
(態様16)
前記デポジションヘッドが静止しており、これに対して、前記基材と協同する前記機械的な直線変位機構が、前記基材を進行させて3〜35メートル/分の範囲の速度で前記デポジションヘッドを通過させる、態様15に記載のシステム。
(態様17)
前記ユニットセルが、0.7〜1.5mmの範囲のチャネル幅を有するように構成される、態様11に記載のシステム。
(態様18)
前記デポジションシステムが、5〜50msecの範囲のドウェル時間で作動するように構成される、態様11に記載のシステム。
(態様19)
前記デポジションヘッドが、前記コーティング表面から0.5〜5mmの距離で離れている、態様11に記載のシステム。
(態様20)
各ノズルアセンブリが、プリカーサオリフィスプレートを含み、前記プリカーサオリフィスプレートは、該プリカーサオリフィスプレートを貫通する1以上のオリフィスを含み、前記1以上のオリフィスからガスが出る位置が、前記コーティング表面から、0.5〜5mmの距離で離れている、態様12に記載のシステム。
(態様21)
前記第1のプリカーサノズルアセンブリ、前記第2のプリカーサノズルアセンブリおよび前記不活性ガスノズルアセンブリが、それぞれ、プリカーサオリフィスプレートを含み、前記プリカーサオリフィスプレートが、前記コーティング表面に対して垂直な軸線に沿って該プリカーサオリフィスプレートを貫通する1以上のオリフィスを含み、前記プリカーサオリフィスプレートが、加圧されたガスで満たされたチャンバを大気の条件から分離し、前記1以上のオリフィスの各々は、前記加圧されたガスで満たされたチャンバから出るガスのフローを絞るような寸法とされている、態様12に記載のシステム。
(態様22)
前記デポジションヘッドが複数のユニットセルを含む、態様11に記載のシステム。
(態様23)
デポジションヘッドであって、
複数の第1のプリカーサノズルアセンブリと、
複数の第2のプリカーサノズルアセンブリと、
前記第1のプリカーサノズルアセンブリと前記第2のプリカーサノズルアセンブリとの間にそれぞれ配置される複数の不活性ガスノズルアセンブリと、
前記第1のプリカーサノズルアセンブリと前記不活性ガスノズルアセンブリとの間に配置される複数の第1のエグゾーストチャネルと、
前記第2のプリカーサノズルアセンブリと前記不活性ガスノズルアセンブリとの間に配置される複数の第2のエグゾーストチャネルと、
前記複数の第1のプリカーサノズルのそれぞれに第1のプリカーサを送達する第1のプリカーサ送達システムと、
前記複数の第2のプリカーサノズルのそれぞれに第2のプリカーサを送達する第2のプリカーサ送達システムと、
前記複数の不活性ガスノズルのそれぞれに不活性ガスを送達する不活性ガス送達システムと、
前記第1のエグゾーストチャネルのそれぞれを通して、および前記第2のエグゾーストチャネルのそれぞれを通して、エグゾーストガスを吸引し、前記エグゾーストガスをデポジションヘッドから除去するエグゾーストガス除去システムと
を含む、デポジションヘッド。
(態様24)
前記エグゾーストガス除去システムが、前記第1のエグゾーストチャネルから吸引されるエグゾーストガスと、前記第2のエグゾーストチャネルから吸引されるエグゾーストガスとを分離する、態様23に記載のデポジションヘッド。
(態様25)
前記第1のプリカーサノズルアセンブリおよび前記第2のプリカーサノズルアセンブリが、それぞれ、プリカーサオリフィスプレートを含み、前記プリカーサオリフィスプレートが、前記コーティング表面に対して垂直な軸線に沿って該プリカーサオリフィスプレートを貫通する少なくとも1つのオリフィスを含み、前記プリカーサオリフィスプレートが、加圧されたプリカーサおよび不活性ガスで満たされたチャンバを大気の条件から分離し、前記少なくとも1つのオリフィスは、前記加圧されたガスで満たされたチャンバから出るガスのフローを絞るような寸法とされている、態様23に記載のデポジションヘッド。
(態様26)
前記少なくとも1つのオリフィスが、複数の円形のオリフィスを含み、前記オリフィスのそれぞれが0.25〜0.127mmの範囲の直径を有する、態様25に記載のデポジションヘッド。
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